【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明との関係において、下記の特定の1,2-ジフェニルエチレングリコール誘導体は、AMPKの活性、特に、正常なヒトケラチノサイトによるリン酸化AMPKの産生を刺激することが可能であることを予想外に発見した。したがって、これらの化合物は、老化の間の皮膚細胞の生命力の低下を阻止すること、及びそれと関連する徴候の発現を遅らせることに特に有用である。
【0031】
本発明による使用は、非治療的使用、有利には美容的使用であり、「美容的(cosmetic)」という用語は、良好な健康状態の個体の、皮膚又は爪等の付属器の審美的外観を改善すること、特に年齢とともに生じる外観の生理学的変化を遅らせる又は減少させることを意図することを意味する。こうした変化は30〜35歳から現れるが、一般的には40歳を過ぎるとより明白になり、50歳以上で目立つようになる。
【0032】
本発明による化合物は、表皮の再生を改善することに効果的であり、皮膚老化の徴候をより効率的に阻止することに効果的である。
【0033】
その結果として、これらの化合物は、皮膚老化を予防及び/又は美容処置すること、特に、局所的な皮膚老化の徴候、より具体的には、皺の多い皮膚と関連している皮膚、その粘弾性特性又は生体力学的特性の障害を示す皮膚、その組織の結合における障害を示す皮膚、薄い皮膚、及び/又はその表面の外観の障害を示す皮膚の徴候を、特に、予防及び/又は処置することを意図する化粧用組成物において特定の用途が認められる。
【0034】
具体的には、1,2-ジフェニルエチレングリコール誘導体は、ケラチノサイトによるAMPKの活性化を刺激することが可能であることを、今回発見した。
【0035】
上記で説明されたように、AMPKを活性化すること、特にそのリン酸化型を増加させることは、ケラチノサイトの代謝機能を刺激することに相当し、その上、これらの細胞は、若年のケラチノサイト(young keratinocytes)の状態と類似している状態であり、皮膚の恒常性の生理学的機序を調節することに寄与する。
【0036】
本発明による化合物を用いることによって、より具体的には、皮膚の生体力学的特性の維持及び/又は復元ができるようになる可能性がある。
【0037】
本明細書における「皮膚の生体力学的特性(biomechanical properties of the skin)」という用語は、皮膚の伸縮性特性、張り特性、堅さ特性、柔軟性特性、及び/又は弾力性特性を意味する。
【0038】
本明細書における「皮膚老化の徴候(signs of aging of the skin)」という用語は、それが経時的なかつ/又は外因性の老化、特に、光誘発性又はホルモン性の老化であるかどうかにかかわらず、老化による皮膚の外観のあらゆる変化を意味し、これらの徴候のうち、
- 特に、皺及び/又は小皺の外観によって反映される、皺の多い皮膚、
- その粘弾性特性若しくは生体力学的特性の障害を示す皮膚、又は特に、皺だらけな、張りのない、弛緩した、若しくはたるんだ皮膚によって反映される、弾力性及び/若しくは伸縮性及び/若しくは堅さ及び/若しくは柔軟性及び/若しくは張りが低下していることを示す皮膚、
- その組織の結合の障害を示す皮膚、
- 薄い皮膚、並びに
- 皮膚のきめの障害、例えば、粗さによって特に反映される、その表面の外観の障害を示す皮膚
を識別することは可能である。
【0039】
本発明は、1つ又は複数の本発明による式(I)の化合物の、皮膚老化の徴候、特に、皺の多い皮膚、その粘弾性特性又は生体力学的特性の障害を示す皮膚、その組織の結合における障害を示す皮膚、薄い皮膚、及びその表面の外観の障害を示す皮膚から選ばれる皮膚の徴候を予防し、かつ/又は減少させる薬剤としての非治療的使用に関する。
【0040】
具体的には、本発明は、1つ又は複数の本発明による式(I)の化合物[式中、R3'は-OR基を表し、Rは水素原子又は直鎖状C1〜C6若しくは分岐状C3〜C6アルキル基又は直鎖状C1〜6アシル基を表す]の、皮膚老化の徴候、特に、皺の多い皮膚、その粘弾性特性又は生体力学的特性の障害を示す皮膚、その組織の結合における障害を示す皮膚、薄い皮膚、及びその表面の外観の障害を示す皮膚から選ばれる皮膚の徴候を予防し、かつ/又は減少させる薬剤としての、非治療的使用に関する。
【0041】
好ましくは、個体の皮膚はヒトの皮膚である。
【0042】
本発明はまた、生理学的に許容される媒体中に少なくとも1つの本発明による式(I)の化合物を含む組成物、特に、化粧用組成物に関する。
【0043】
本発明はまた、生理学的に許容される媒体中に少なくとも1つの式(I)の化合物を含む組成物、特に、化粧用組成物の使用に関する。
【0044】
本発明はまた、少なくとも1つの式(I)の化合物及び/又は少なくとも1つの本発明による式(I)の化合物を含む化粧用組成物を皮膚に塗布することを含む、皮膚を処置するための非治療的美容法に関する。本方法は、皮膚の、特に熟年の皮膚(mature skin)(少なくとも40歳の個体の皮膚)及び/又は皺の多い皮膚の、特に顔の、特に、額、首、襟足、及び/又は手の、処置において有利な用途が認められる。本発明の主題はまた、ケラチノサイトの再生の促進、並びに表皮が薄くなること、表面の皺、及びバリア機能の障害から選ばれる徴候の減少及び/予防を対象とすることを特徴とする美容処置法である。
【0045】
具体的には、本発明は、少なくとも1つの式(I)の化合物及び/又は少なくとも1つの本発明による式(I)の化合物を含む化粧用組成物を皮膚に塗布することを含み、その式(I)の化合物が、R3'は-OR基を表し、Rは水素原子又は直鎖状C1〜C6若しくは分岐状C3〜C6アルキル基又は直鎖状C1〜6アシル基を表す化合物である、皮膚を処置するための非治療的美容法に関する。本方法は、皮膚の、特に熟年の皮膚及び/又は皺の多い皮膚の、特に顔の、特に、額、首、襟足、及び/又は手の処置において有利な用途が認められる。本発明の主題はまた、ケラチノサイトの再生の促進、並びに表皮が薄くなること、表面の皺、及びバリア機能の障害から選ばれる徴候の減少及び/予防を対象とすることを特徴とする美容処置法である。
【0046】
したがって、本発明の主題はまた、以下に定義する式(IIIA)の新規な1,2-ジフェニルエチレングリコール化合物である。
【0047】
本発明の主題はまた、生理学的に許容される媒体中に少なくとも1つの式(IIIA)の化合物を含む組成物、特に化粧用組成物である。
【0048】
具体的には、本発明の主題はまた、生理学的に許容される媒体中に、以下に定義する化合物9を除く、少なくとも1つの式(IIIA)の化合物を含む組成物、特に化粧用組成物である。
【0049】
本発明はまた、新規な式(IIIA)の化合物の、又は組成物、特に化粧用組成物の、新規な式(IIIA)の化合物の、特に、皮膚老化の徴候、特に、皺の多い皮膚、その粘弾性特性若しくは生体力学的特性の障害を示す皮膚、その組織の結合における障害を示す皮膚、薄い皮膚、及びその表面の外観の障害を示す皮膚からから選ばれる皮膚の徴候を予防し、かつ/又は減少させる薬剤としての、非治療的使用に関する。
【0050】
本発明は、最終的には、少なくとも1つの新規な式(IIIA)の化合物及び/又は少なくとも1つの本発明による新規な式(IIIA)の化合物を含む化粧用組成物を皮膚に塗布することを含む、皮膚を処置するための非治療的美容法に関する。本方法は、皮膚の、特に熟年の皮膚及び/又は皺の多い皮膚の、特に、顔の、特に、額、首、及び/又は手の処置において有利な用途が認められる。
【0051】
具体的には、本発明は、1つ又は複数の、式(I)の化合物:
【化1】
[式中、R1、R1'、R2、R2'、R3、R4、R4'、R5、及びR5'は独立に、水素原子又は-OR基を表し、
R3'は-OR基を表し、
Rは水素原子又は直鎖状C1〜C6若しくは分岐状C3〜C6アルキル基又は直鎖状C1〜6アシル基を表す]、
並びに、その光学異性体、立体異性体、及び/又はジアステレオ異性体、及び/又は塩の、皮膚老化の徴候、特に、皺の多い皮膚、その粘弾性特性又は生体力学的特性の障害を示す皮膚、その組織の結合における障害を示す皮膚、薄い皮膚、及びその表面の外観の障害を示す皮膚から選ばれる皮膚の徴候を予防し、かつ/又は減少させる薬剤としての使用に関する。
【0052】
したがって、本発明による化合物は、以下の式(I):
【化2】
[式中、R1、R1'、R2、R2'、R3、R3'、R4、R4'、R5、及びR5'は独立に、水素原子又は-OR基を表し、
Rは水素原子又は直鎖状C1〜C6若しくは分岐状C3〜C6アルキル基又は直鎖状C1〜6アシル基を表す]、
並びに、その光学異性体、立体異性体、及び/又はジアステレオ異性体、及び/又は塩に相当する。
【0053】
優先的には、直鎖状で飽和の又は分岐状のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、及びtert-ブチル、より優先的にはメチルから選んでよい。
【0054】
好ましくは:
R1、R1'、R2、R2'、R3、R4、R4'、R5、及びR5'は独立に、水素原子又は-OR基を表し、
R3'は-OR基を表し、
Rは水素原子又は直鎖状C1〜C6若しくは分岐状C3〜C6アルキル基又は直鎖状C1〜6アシル基を表す。
【0055】
好ましくは:
R1、R1'、R5、及びR5'は水素原子を表し、
R2、R2'、R3、R4、及びR4'は独立に、水素原子又は-OT1基[式中、T1は水素原子又は直鎖状C1〜C4アルキル基を表し;好ましくはT1は水素原子又はメチル基を表す]を表し、
R3'は-OT1基[式中、T1は水素原子又は直鎖状C1〜C4アルキル基を表し;好ましくはT1は水素原子又はメチル基を表す]を表す。
【0056】
本発明の第1の好ましい変形形態において、式(I)の化合物、又は光学異性体、立体異性体、及び/又はジアステレオ異性体、及び/又はそれらの塩のうち、選ばれる化合物は、
- R1=R1'
- R2=R2'
- R3=R3'
- R4=R4'
- R5=R5'
の化合物、
すなわち、以下の式(II):
【化3】
[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は独立に、水素原子又は-OR基を表し、
Rは、水素原子又は直鎖状C1〜C6若しくは分岐状C3〜C6アルキル基又は直鎖状C1〜6アシル基を表す]
に相当する化合物である。
【0057】
好ましくは:
R1、R2、R4、及びR5は独立に、水素原子又は-OR基[Rは、水素原子又は直鎖状C1〜C6若しくは分岐状C3〜C6アルキル基、又は直鎖状C1〜6アシル基を表す]を表し、
R3は-OR基[Rは、水素原子又は直鎖状C1〜C6若しくは分岐状C3〜C6アルキル基又は直鎖状C1〜6アシル基を表す]を表す。
【0058】
好ましくは:
R1及びR5は水素原子を表し、
R2、R3、及びR4は独立に、水素原子又は-OT2基[式中、T2は水素原子又は直鎖状C1〜C4アルキル基を表す]を表す。
より具体的には、T2は、水素原子又はメチル基を表す。
【0059】
好ましくは:
R1及びR5は水素原子を表し、
R2及びR4は独立に、水素原子又は-OT2基[式中、T2は水素原子又は直鎖状C1〜C4アルキル基を表し、より具体的には、T2は水素原子又はメチル基を表す]を表し、
R3は-OT2基[式中、T2は水素原子又は直鎖状C1〜C4アルキル基を表し、より具体的には、T2は水素原子又はメチル基を表す]を表す。
【0060】
式(II)の化合物のうち、より特定すると、以下の化合物1〜3、その光学異性体、立体異性体、及びそのジアステレオ異性体、又はそれらの幾何異性体、又はその塩が選ばれる。
【0061】
【表1】
【0062】
本発明の第2の好ましい変形形態において、式(I)の化合物、又はその光学異性体、立体異性体、及び/又はジアステレオ異性体、及び/又は塩のうち、R1 = R3 = R5 = 水素である化合物、すなわち以下の式(III):
【化4】
[式中、
- R2及びR4は独立に、-OR基を表し、
- R1'、R2'、R3'、R4'、及びR5'は独立に、水素原子又は-OR基を表し、
- Rは、水素原子又は直鎖状C1〜C6若しくは分岐状C3〜C6アルキル基又は直鎖状C1〜6アシル基を表す]
に相当する化合物が選ばれる。
【0063】
特定の実施形態である本発明の第2の好ましい変形形態において、式(I)の化合物、又はその光学異性体、立体異性体、及び/又はジアステレオ異性体、及び/又は塩のうち、R1 = R3 = R5 = 水素である化合物、すなわち以下の式(III)に相当する化合物:
【化5】
[式中、
- R2及びR4は独立に、-OR基を表し、
- R1'、R2'、R4'、及びR5'は独立に、水素原子又は-OR基を表し、
- R3'は-OR基を表し、
- Rは、水素原子又は直鎖状C1〜C6若しくは分岐状C3〜C6アルキル基又は直鎖状C1〜6アシル基を表す]
が選ばれる。
【0064】
特に好ましい方式において、式(III)の化合物、又はその光学異性体、立体異性体、及び/又はジアステレオ異性体、及び/又は塩のうち、選ばれることが好ましい化合物は、R2 = R4 = OHである式(III)の化合物、すなわち、以下の式(IV)の化合物:
【化6】
[式中、R3'及びR4'は独立に、水素原子又は-OR基を表し、
ここで、Rは水素原子又は直鎖状C1〜C4アルキル基を表し、より好ましくは、ここで、Rは水素原子又はメチル基を表す]
である。
【0065】
好ましくは、上記の式(IV)の化合物は、
R4'は、水素原子又は-OR基を表し、
R3'は-OR基
[式中、Rは水素原子又は直鎖状C1〜C4アルキル基を表し、好ましくは、式中、Rは水素原子又はメチル基を表す]
を表す化合物である。
【0066】
式(III)の化合物のうち、更により特定すると、以下の化合物4〜10、その光学異性体、立体異性体、及びジアステレオ異性体、及び/又はその幾何異性体、及び/又はその塩が選ばれる。
【0067】
【表2】
【0068】
本発明の主題はまた、式(IIIA):
【化7】
[式中、
- R2及びR4は独立に、-OR基を表し、
- R1'、R2'、R3'、R4'、及びR5'は独立に、水素原子又は-OR基を表し、
- Rは、水素原子又は直鎖状C1〜C6若しくは分岐状C3〜C6アルキル基又は直鎖状C2〜C6アシル基を表す]
に相当し、但し以下の3つの化合物を除く、新規な化合物である。
【表3】
【0069】
本発明の主題はまた、式(IIIA):
【化8】
[式中、
- R2及びR4は独立に、-OR基を表し、
- R1'、R2'、R4'、及びR5'は独立に、水素原子又は-OR基を表し、
- R3'は-OR基を表し、
- Rは、水素原子又は直鎖状C1〜C6若しくは分岐状C3〜C6アルキル基又は直鎖状C2〜C6アシル基を表す]
に相当し、但し以下の2つの化合物を除く、新規な化合物である。
【表4】
【0070】
式(IIIA)の新規な化合物として、R2 = R4 = OHである式(IIIA)の化合物、すなわち、以下の式(IVA)の化合物:
【化9】
[式中、R3'及びR4'は独立に、水素原子又は-OR基を表し、
ここで、Rは、水素原子又は直鎖状C1〜C4アルキル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表すことが好ましい]
を挙げることができ、但し以下の化合物を除く。
【表5】
【0071】
式(IIIA)の新規な化合物として、R2 = R4 = OHである式(IIIA)の化合物、すなわち、以下の式(IVA)の化合物:
【化10】
[式中、R4'は独立に、水素原子又は-OR基を表し、ここで、Rは水素原子又は直鎖状C1〜C4アルキル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表すことが好ましく、
R3'は-OR基を表し、ここでRは水素原子又は直鎖状C1〜C4アルキル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表すことが好ましい]
を挙げることができ、但し以下の化合物を除く。
【表6】
【0072】
式(IIIA)の化合物のうち、以下の新規な化合物5〜10、光学異性体、立体異性体、及びジアステレオ異性体、及び/又は幾何異性体、及び/又は塩が、更により詳細には選ばれる。
【0073】
【表7】
【0074】
式(IIIA)の化合物のうち、更により特定すると、以下の新規な化合物5〜10、光学異性体、立体異性体、及びジアステレオ異性体、及び/又は幾何異性体、及び/又は塩が選ばれる。
【0075】
【表8】
【0076】
式(I)の化合物、特に、化合物(II)、(III)、(IIIA)、及び/又は(IV)の塩は、有機塩及び/又は無機塩であってよい。それらは金属塩、例えば、アルミニウム(Al3+)、亜鉛(Zn2+)、マンガン(Mn2+)、又は銅(Cu2+);アルカリ金属塩、例えば、リチウム(Li+)、ナトリウム(Na+)、又はカリウム(K+);及びアルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム(Ca2+)又はマグネシウム(Mg2+)から選んでよい。また、式NH4+の塩、又は式NHX3+の有機塩を挙げることもでき、NX3は有機アミンを示し、X基は同一若しくは異なっており、2つ若しくは3つのX基は対になってそれらが有する窒素原子とともに環を形成していてもよく、又はNX3は芳香族アミンを表す。有機アミンは、特に、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、又はエチルアミン等のアルキルアミン;2-ヒドロキシエチルアミン、ビス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、又はトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン等のヒドロキシアルキルアミン;ビシクロヘキシルアミン又はグルカミン、ピペリジン等のシクロアルキルアミン;ピリジン等、例えば、コリジン、キニーネ、又はキノリン;及び例えばリジン又はアルギニンなどの塩基性を有するアミノ酸を表す。
【0077】
好ましくは、式(I)の塩化合物、特に、化合物(II)、(III)、(IIIA)、及び/又は(IV)はカルシウム塩である。
【0078】
式(I)に相当する化合物は、対応する化合物(A)から3つの工程で調製することができる。
【0079】
- 当業者に既知の標準的な方法(例えば、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis、P.G.M.Wutz、T.Greene編、Wiley-Blackwellを参照されたい)に従って、例えば、保護基としてアセテート基又はベンジル基を用いることによって、遊離フェノール官能基を保護する工程。
【0080】
【化11】
R1〜R5及びR1'〜R5'は既に記載した意味を有する。
R1〜R5及び/又はR1'〜R5'のうちの少なくとも1つがヒドロキシル基OHを表すとき、対応するR1a〜R5a基及び/又はR1a'〜R5a'基は、O-Protを表し、Protはヒドロキシル官能基の保護基、特に、-CO-CH
3又は-CH
2-Phを表す。
置換基R1〜R5及び/又はR1'〜R5'の少なくとも1つがOHを表さないとき、対応するR1a〜R5a基及び/又はR1a'〜R5a'基は、R1〜R5及び/又はR1'〜R5'を表す。
【0081】
- 対応する保護された中間体(B)をジヒドロキシル化する工程。
【0082】
【化12】
R1〜R5、R1'〜R5'、R1a〜R5a、及びR1a'〜R5a'は既に記載した意味を有する。
反応は、市販のSharpless系AD-mix-α(供給会社Sigma社、USAから問い合わせ番号392758で市販されている)又はAD-mix-β(供給会社Sigma社、USAから問い合わせ番号392766で市販されている)を使用して実施することができる。
【0083】
酸化系AD-mix(0.004eqになるような量のオスミウス酸カリウムプレ触媒(precatalyst)が導入されている)を、1:1の比のt-BuOH/水混合物等の、アルカノール/水の二相混合物中に溶かし、完全に溶解するまで、その媒体を室温で撹拌する。次いで、以下のものを続けて添加する。
- メタンスルホンアミド(2当量)
- 第1の工程から得られた中間体(すなわち、保護された中間体(B))(1当量)
- ジクロロメタン等の非プロトン性溶媒。
反応媒体は、2〜96時間にわたって0〜70℃に保つ。室温に冷却した後、亜硫酸ナトリウムと接触させながら撹拌し、過酸化物を中和する。生成物を有機溶媒で抽出し、有機相を合わせ、乾燥させ、濃縮する。残渣を、一般的には、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0084】
- 当業者に既知の標準的な方法(例えば、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis、P.G.M.Wutz、T.Greene編、Wiley-Blackwellを参照されたい)に従って、あらかじめ保護されているフェノール官能基を脱保護する工程。
【0085】
【化13】
【0086】
R1〜R5、R1'〜R5'、R1a〜R5a、及びR1a'〜R5a'は既に記載した意味を有する。
【0087】
対応する化合物(A)が市販されていないときは、以下のメタセシス反応によって得てもよい。
【0088】
【化14】
【0089】
この反応は、Grubbs I錯体、Grubbs II錯体、Hoveyda-Grubbs錯体、Zhan B錯体、又はZhan 1C錯体等の市販のルテニウム錯体によって触媒することができる。
したがって、例えば、ルテニウム錯体(0.0005当量〜0.20当量)を、無水ジクロロメタン又は無水トルエン等の無水非プロトン性溶媒中のスチレン誘導体(1当量)の溶液に添加する。反応混合物を、不活性雰囲気下で、0.5〜24時間にわたって還流(50〜150℃)する。室温に冷却した後、溶媒を減圧下で留去し、残渣を精製し、予想される中間体(A)を、アセトニトリル等の極性非プロトン性溶媒からの再結晶によって、又はシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによってのいずれかで単離する。
【0090】
これらの経路に従って、式(I)、(II)、(III)、及び(IV)の化合物、特に、式(IIIA)及び(IVA)の新規な化合物、特に、既に記載の化合物5〜10が得られる。
【0091】
本発明はまた、生理学的に許容される媒体中に少なくとも1つの式(I)の化合物を含む組成物、特に、化粧用組成物に関する。
特に、組成物は、皮膚、特に、ヒト個体の皮膚への局所適用に適する。
【0092】
本発明はまた、生理学的に許容される媒体中に少なくとも1つの新規な式(IIIA)の化合物、好ましくは既に記載した化合物5〜10から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む組成物、特に、化粧用組成物に関する。
【0093】
本発明はまた、生理学的に許容される媒体中に少なくとも1つの新規な式(IIIA)の化合物、好ましくは既に記載の化合物5、6、7、8、及び/又は10のうちから選ばれる少なくとも1つの化合物を含む組成物、特に、化粧用組成物に関する。
【0094】
式(I)又は(IIIA)の化合物は、単独で又は混合物として、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して0.01質量%から30質量%の間、好ましくは0.1質量%から10質量%の間、特に0.5質量%から5質量%の間で存在してよい。
【0095】
本発明による組成物はまた、生理学的に許容される媒体を含み、この媒体は、優先的には、化粧品として許容される媒体、すなわち、不快な臭い、色、又は外観を有さず、使用者に許容できない刺痛、つっぱり感、又は発赤のいずれも引き起こさない媒体である。本発明の目的に関して、「生理学的に許容される媒体(physiologically acceptable medium)」という用語は、身体若しくは顔の皮膚、口唇、粘膜、まつげ、又は爪等のヒトのケラチン物質に適合する媒体を意味する。
【0096】
本発明による組成物は、想定される適用分野で一般的に用いられる、任意の化粧品成分を含んでいてよい。
【0097】
したがって、本発明による組成物は、水;有機溶媒、特に、C
1〜C
6アルコール及びC
2〜C
10カルボン酸エステル;炭化水素系油、シリコーン油、フッ素油(fluoro oils)、ワックス、顔料、充填剤、染料、界面活性剤、乳化剤、化粧用活性薬剤、UV遮蔽剤、フィルム形成ポリマー、親水性又は親油性ゲル化剤、親水性又は親油性増粘剤、保存剤、芳香剤、臭気吸収剤/中和剤、並びに抗酸化剤から選ばれる少なくとも1つの化粧品成分を含んでいてよい。
【0098】
これらの任意選択成分は、組成物中に、組成物の総質量に対して、0.001質量%〜99質量%、特に0.1質量%〜40質量%の割合で存在してよい。
【0099】
本発明による組成物は、脂肪相及び/又は水性相を含むことができる組成物であってよい。
【0100】
その性質に応じて、これらの任意選択成分は、組成物の脂肪相若しくは水性相へ、又は脂質小胞へ導入することができる。いずれの場合も、これらの成分及びそれらの割合は、想定した添加によって、本発明による化合物の有利な特性が悪影響を受けることも、又は実質的に悪影響を受けることもないように、当業者により選ばれる。
【0101】
本発明において用いることができる油として、流動ワセリン、植物由来の油、動物由来の油、合成油、及びシリコーン系油等の、鉱油、炭化水素系油を挙げることができる。その油が存在するとき、脂肪相は、脂肪アルコール、脂肪酸、又はワックスも含んでいてよい。
【0102】
親水性の増粘剤又はゲル化剤として、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、アクリレート/アルキルアクリレートコポリマー等のアクリルコポリマー、ポリアクリルアミド、多糖、天然ゴム、及びクレーを挙げることができ、親油性の増粘剤又はゲル化剤として、ベントン等の変性クレー、脂肪酸の金属塩、及び疎水性シリカを挙げることができる。
【0103】
本発明による組成物は、式(I)の化合物以外の少なくとも1つの化粧用活性薬剤、特に、剥離剤;モイスチャライザー;脱色素剤又は着色促進剤(propigmenting agents);抗グリケーション剤;NO合成阻害剤;真皮高分子若しくは表皮高分子の合成を刺激する、かつ/又はそれらの分解を予防する薬剤;線維芽細胞及び/若しくはケラチノサイトの増殖を刺激する、かつ/又はケラチノサイトの分化を刺激する薬剤;皮膚収縮防止剤(dermo-decontracting agents);テンショニング剤;毛細血管循環に作用する薬剤;細胞のエネルギー代謝に作用する薬剤;並びにそれらの混合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含んでいてよい。
【0104】
この組成物は、化粧品分野又は皮膚科学分野で通常用いられる任意のガレヌス製剤(galenical)の形態、特に、任意選択でゲル状の水性溶液若しくは水-アルコール性溶液、任意選択で二相分散体であるローションタイプの分散体、水性相中脂肪相(O/W)若しくは逆の相(W/O)の分散体によって得られるエマルション、又は三相(W/O/W又はO/W/O)のエマルション、又はイオン性及び/若しくは非イオン性タイプの小胞性分散体;水性又は油性のゲルとすることができる。これらの組成物は、通常の方法に従って調製される。
【0105】
この組成物は、多少は流動性であってよく、白色若しくは有色のクリーム、軟膏、乳液、ローション、セラム、ペースト、ゲル、又はムースの外観を有してよい。その組成物は、任意選択で、エアゾールの形態で適用してよい。その組成物は、固体形態、特にスティック形態でもよい。
【0106】
組成物がエマルジョンであるとき、脂肪相の割合は、組成物の総質量に対して、5質量%〜80質量%、好ましくは、8質量%〜50質量%の範囲とすることができる。乳化剤は、組成物の総質量に対して、0.3質量%〜30質量%、好ましくは0.5質量%〜20質量%の範囲の割合で存在することができる。
【0107】
本発明による組成物は、スキンケア組成物、特に、顔に対する、手に対する、足に対する、主要な解剖学的なひだに対する、若しくは身体に対する、クレンジング用、保護用、処置用、若しくはケア用のクリーム(例えば、日中用クリーム、夜用クリーム、メイクアップ除去クリーム、ファンデーションクリーム、日焼け止めクリーム);メイクアップ除去乳液、保護用若しくはケア用の体用乳液、又は日焼け止め乳液;又はクレンジングローション等のスキンケア用のローション、ゲル、若しくはフォームを構成することができる。
【0108】
本発明による組成物は、有利には抗老化組成物、特に、皮膚老化の外見的徴候を特に美容上、処置及び/又は阻止するケア組成物である。
【0109】
組成物は、より具体的には、熟年の皮膚をケアする組成物である。
【0110】
組成物は、メイクアップ組成物、特に、ファンデーションであってもよい。
【0111】
こうした記載において及びそれに続く実施例において、特に別の記述がない限り、百分率は質量百分率であり、「・・・から・・・の間」という形で書かれた値の範囲は、記述された下限値及び上限値を含む。成分は、当業者であればすぐに決定することができる順序で及び条件下で混合され、その後に形成される。
【0112】
以下の実施例は、本発明の技術分野の非限定的な例示として提示されるものである。