(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記炭酸塩源が炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、金属炭酸塩及び二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
前記炭酸塩源が炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムの炭酸塩混合物であり、該炭酸塩混合物において重炭酸アンモニウムの量がカルバミン酸アンモニウム又は炭酸アンモニウムの量以上である、請求項1に記載の方法。
前記炭酸塩源が炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムの炭酸塩混合物であり、該炭酸塩混合物において重炭酸アンモニウムの量がカルバミン酸アンモニウム又は炭酸アンモニウムの量未満である、請求項1に記載の方法。
前記シードが炭酸カルシウム、ドロマイト、ドロマイト質炭酸塩、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタニア、シリカ及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項12に記載の方法。
前記沈降炭酸カルシウムを脱水、乾燥、エージング、表面処理、サイズ減少及び選鉱からなる群から選択される少なくとも1つの方法によって加工して、加工炭酸カルシウムを作製することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここで、本開示の実施形態を以下により十分に説明する。
【0028】
煙道ガスを脱硫して石膏を形成するプロセス
本開示は、煙道ガスを脱硫するプロセスであって、i)二酸化硫黄を含む煙道ガスを、SO
2分離剤(sequestrating agent)で洗浄して、煙道ガス脱硫石膏と硫酸マグネシウムを含む水溶液とを含む懸濁液を得ること、ii)煙道ガス脱硫石膏を硫酸マグネシウム溶液から分離すること、iii)少なくとも1つの炭酸塩と硫酸マグネシウム溶液とを反応させて、マグネサイトの形態であってもよい炭酸マグネシウムを得ること、およびiv)炭酸マグネシウム又はマグネサイトを単離することからなるプロセスに関する。
【0029】
本明細書の特定の実施形態の各々において、脱硫される煙道ガスが石炭発電所、石油発電所、天然ガス発電所及び/又はバイオマス燃料プラントから得られることが想定される。
【0030】
煙道ガス脱硫プロセスに使用される炭酸カルシウムは純粋な炭酸カルシウムであっても、又はマグネシウム等の構成成分が添加されていてもよい。カルシウム及びマグネシウムのレベルに応じて、炭酸カルシウムはとりわけカルサイト又はドロマイトとして分類することができる。
【0031】
ドロマイトは炭酸カルシウムマグネシウム、例えばCaMg(CO
3)
2から構成される無水炭酸塩鉱物である。ドロマイトという単語は、主に鉱物ドロマイトから構成される堆積炭酸塩岩を説明するためにも使用される。鉱物ドロマイトは三方晶−菱面体晶系で結晶化する。ドロマイトは白色、黄褐色、灰色又はピンク色の結晶を形成する。ドロマイトは、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの交互構造配置を有する複炭酸塩である。
【0032】
本開示に関しては、マグネサイトは炭酸マグネシウムMgCO
3の結晶形又は非晶形を指す場合がある。
【0033】
幾つかの実施形態では、SO
2分離剤はドロマイト、カルサイト、バテライト、アラゴナイト、アンケライト、ハンタイト、ミンレコーダイト、バリトサイト(barytocite)、イカアイト、非晶質炭酸カルシウム、それらの水和物又はそれらの組合せを含むカルシウム含有炭酸塩鉱物であり得るが、これらに限定されない。或る特定の実施形態では、SO
2分離剤はドロマイト又はその水和物である。一実施形態では、SO
2分離剤は高表面積のバテライトである。
【0034】
ドロマイト又はドロマイト質石灰石で洗浄した後、使用済み炭酸塩流の硫酸マグネシウムに富んだ上清を、濾過又は遠心分離等の任意の従来の手段によって固体石膏副産物から分離し、任意に固体石膏から再結晶化して、より高純度の生成物を得る。濾過方法は真空濾過であり得るが、これに限定されない。単離される脱硫石膏の純度は、硫黄含有煙道ガスの出発純度に応じて異なり得る。
【0035】
幾つかの実施形態によると、ドロマイトの抽出による硫酸マグネシウム溶液に石膏及び/又は炭酸塩(炭酸カルシウム等)をシーディングし、ドロマイト組成物を制御することができる。例えば、石膏の相対量の増大によってドロマイト沈殿を減少させ、一方で比較的多くの炭酸アンモニウムによってドロマイト沈殿を増大することができる。
【0036】
次いで、上清を適切な炭酸塩で処理して、マグネサイト等の付加価値のある沈降炭酸マグネシウムを得る。一実施形態では、炭酸塩は炭酸アニオン又は重炭酸アニオンと、ナトリウム、カルシウム、コバルト、銅、カリウム、アンモニウム、クロム、鉄、アルミニウム、スズ、鉛、マグネシウム、銀、チタン、バナジウム、亜鉛、リチウム、ニッケル、バリウム、ストロンチウム及びヒドロニウムからなる群から選択される少なくとも1つのカチオンとを含む。添加する炭酸塩は固体形態、水溶液、又は懸濁液若しくはスラリーとすることができる。炭酸塩を溶液又は懸濁液として添加する条件下では、溶液又は懸濁液のpHは酸性(6.5未満のpH)、中性(pH6.5〜7.5)又は塩基性(7.5超のpH)であり得る。
【0037】
マグネサイトは化学式MgCO
3の鉱物(炭酸マグネシウム)である。天然に存在するマグネサイトは概して、三方晶−六方晶偏三角面体晶(scalenohedral)結晶系である。石灰の作製と同様に、マグネサイトを木炭の存在下で燃焼して、鉱物の形態ではペリクレースとして知られるMgOを作製することができる。大量のマグネサイトを燃焼することで、溶鉱炉、窯及び焼却炉の内張りとして使用される耐火材料である酸化マグネシウムが製作される。マグネサイトは床材の結合剤として使用することもできる。さらに、マグネサイトは合成ゴムの作製、並びにマグネシウム化学物質及び肥料の調製に触媒及び充填剤として使用されている。特に、本開示による単離マグネサイトは、特に或る程度の耐酸性が必要とされる用途(食品包装、人造大理石)のフィラー顔料としての価値を有する。一実施形態では、単離されるマグネサイトは表面積が20m
2/g超の非晶質であり得る。
【0038】
一実施形態では、煙道ガス脱硫石膏は硫酸マグネシウム溶液から濾過又は遠心分離によって分離される。
【0039】
本開示では、濾過又は遠心分離によって単離される石膏は任意に、1)壁板若しくは他の建設材料の製造に使用するか、2)埋め立てるか、又は3)従来技術の既知のプロセス若しくは以下に開示するプロセスによって炭酸カルシウムへと変換することができる。
【0040】
本開示に使用される石膏に関しては特に限定されず、石膏は天然石膏、合成(例えば化学的に作製された)石膏、FGD石膏、及び/又はリン酸石膏とすることができる。しかしながら、FGD石膏及び化学的に作製された石膏を例として言及する。
【0041】
幾つかの実施形態によると、石膏を粉砕又は磨砕してもよい。石膏の粉砕又は磨砕に続いて磁気分離、漂白、酸洗浄又は他の選鉱プロセスの1つ以上を行うことができる。
【0042】
純石膏は、化学式CaSO
4・2H
2Oの硫酸カルシウム二水和物から構成される軟らかい硫酸塩鉱物である。純石膏は肥料として使用することができ、多くの形態のプラスターの主要構成要素であり、広く採掘されている。石炭火力発電所の煙道ガス脱硫(FGD)によって生じる石膏又は化学的に製造された石膏は、不純な形態の硫酸カルシウムである。炭酸カルシウムへと変換する場合、これらの不純物は、石膏を炭酸塩源と反応させる際に得られる沈降炭酸カルシウムの品質及び多形に対して大きな影響を有する場合がある。硫酸マグネシウムは、例えば石膏に伴う副産物であり、その高い水溶性により硫酸マグネシウム副産物からの石膏を分離する難しさが増すことから問題がある。本開示では、US石膏は概して純度が80%〜90%の不純石膏を指す。この石膏は通例、カルサイト及びMgCO
3等の不純物を含有し、これらの不純物は約1:3の比率であり得る。生石膏又は非精製石膏は、供給源に応じて異なる純度を有し得る。
【0043】
石膏を沈降炭酸カルシウムへと変換するプロセス
本明細書で使用される場合、「沈降炭酸カルシウム」又は「PCC」は、その組成形態、純度、形態、粒径及び他の特徴(例えば粒径分布、表面積、立方度等)に関して特注であってもよい、様々な沈殿技法及び方法を用いて合成的に製造される炭酸カルシウム材料を指す。このため、沈降炭酸カルシウムは製造方法、並びに上述の及び以下により十分に説明される様々な組成/特徴の両方の点で天然炭酸カルシウム又は天然炭酸カルシウム含有鉱物(大理石、石灰石、チョーク、ドロマイト、貝殻等)又は重質炭酸カルシウム(粉砕した天然炭酸カルシウム)とは異なる。
【0044】
焼成天然炭酸カルシウムの使用による沈降炭酸カルシウム(PCC)の作製方法は既知であり、産業で広く使用されている。焼成により酸化カルシウムが生成され、それから水及び二酸化炭素への連続曝露時に沈降炭酸カルシウムが作製される。しかしながら、天然炭酸カルシウムの焼成において消費されるエネルギーは、その生産コストの大半を占める。したがって、発電所エネルギー生産又は他の非焼成石膏源からのバルク副生成物である不純FGD石膏をPCCへと変換することで、低エネルギーかつ経済的なPCC製造方法が提供され得る。本開示は、焼成工程なしに、またそれにより得られる沈降炭酸カルシウムの形態、サイズ及び特性を制御することなく石膏を沈降炭酸カルシウムへと変換するプロセスに関する。
【0045】
炭酸カルシウムは、バテライト、カルサイト、アラゴナイト、非晶質又はそれらの組合せからなる1つ以上の異なる組成形態で水溶液から沈殿させることができる。概して、バテライト、カルサイト及びアラゴナイトは結晶性組成物であり、種々の形態又は内部結晶構造、例えば斜方晶、直方晶、六方晶、偏三角面体晶又はそれらのバリエーションを有し得る。
【0046】
バテライトは地表での周囲条件で炭酸カルシウムの準安定相であり、六方結晶系に属する。バテライトはカルサイト又はアラゴナイトよりも不安定であり、これらの相のいずれかよりも高い溶解性を有する。したがって、バテライトは水に曝されると、カルサイト(例えば低温で)又はアラゴナイト(高温:約60℃で)へと変換され得る。バテライト形態は、概して熱力学的に不安定であるため稀である。
【0047】
カルサイト形態は最も安定した形態であり、自然界で最も豊富であり、幾つかの異なる形状、例えば斜方晶及び偏三角面体晶形状の1つ以上を有し得る。斜方晶形状が最もよく見られ、塊状であっても又は塊状でなくてもよい、ほぼ等しい長さ及び直径を有する結晶を特徴とし得る。カルサイト結晶は一般に三方晶−菱面体晶である。偏三角面体結晶は2つの2頂点の角錐と同様であり、概して塊状である。
【0048】
アラゴナイト形態は周囲温度及び圧力下で準安定性であるが、高温及び高圧でカルサイトへと変換される。アラゴナイト結晶形は、概して塊状であり、通例高い長さ対幅比、すなわちアスペクト比を有する針状、ニードル状又は紡錘状の結晶を特徴とし得る。例えば、アラゴナイトは約3:1〜約15:1の範囲のアスペクト比を有し得る。アラゴナイトは、例えば二酸化炭素と消石灰との反応によって作製することができる。
【0049】
本開示では、PCC組成物を作製する方法は、炭酸カルシウムの種々の多形、例えばバテライト、カルサイト、アラゴナイト、非晶質炭酸カルシウム又はそれらの組合せが得られるように変更することができる。この方法は反応速度、混合物のpH、反応温度、反応中に存在する炭酸塩種(例えば炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム)、反応中に存在する種々の炭酸塩種の濃度(例えば、炭酸アンモニウム及び/又は重炭酸アンモニウムの濃度)、供給材料の純度(例えば、供給石膏の純度)、及び供給材料の濃度(例えば、石膏及び/又は炭酸塩の濃度及び/又はシード及び他の添加剤の濃度)の1つ以上を変更することによって修正することができる。
【0050】
例示的な方法
本開示では、石膏から沈降炭酸カルシウムへの変換は、方法A〜方法I又はそれらの組合せを用いて達成される。方法及びプロセスパラメーターの選択により沈降炭酸カルシウムの構造、例えば結晶多形及び粒径の制御が可能となる。以下は方法A〜方法Iの概要である。
【0051】
方法A
この方法は、以下を含む:
i. 生石膏を、硝酸、硫酸又はリン酸を含むが、これらに限定されない鉱酸で処理して、脱硫プロセスから残存する任意の未反応の炭酸カルシウム又は炭酸マグネシウムを消費すること。石膏に添加する鉱酸の量は、任意に未反応の炭酸塩の量のモル当量であるか、又は過剰である。
ii. 鉱酸で処理した石膏と炭酸アンモニウムとを0℃〜60℃又は8℃〜50℃の範囲の低温で3分間〜300分間又は5分間〜250分間反応させて、バテライト結晶構造、カルサイト結晶構造、アラゴナイト結晶構造、非晶質炭酸カルシウム、又はそれらの混合物若しくはブレンドの炭酸カルシウムを作製すること。
iii. 任意に得られる炭酸カルシウムを乾燥又は湿潤状態で焼鈍して、所望の多形又は多形混合物を形成すること。
【0052】
方法B
この方法は、以下を含む:
i. 生石膏を硝酸、硫酸又はリン酸を含むが、これらに限定されない鉱酸で処理して、脱硫プロセスから残存する任意の未反応の炭酸カルシウム又は炭酸マグネシウムを消費すること。石膏に添加する鉱酸の量は、任意に未反応の炭酸塩の量に対して等モルである。
ii. 重質炭酸カルシウム(GCC)又はPCCのいずれかに由来するカルサイト(又はアラゴナイト)を、鉱酸で処理した石膏にシードとして添加し、炭酸アンモニウムと0℃〜60℃又は8℃〜50℃の範囲の低温で3分間〜300分間又は5分間〜250分間反応させて、得られるものから炭酸カルシウムを添加することなく種々の優勢形態(例えば、結晶又は非晶質)の炭酸カルシウムを作製すること。カルサイトは菱面体晶又は偏三角面体晶であり得る。
【0053】
方法C
この方法は、以下を含む:
i. 炭酸カルシウムを生石膏に添加して、明確に規定される炭酸カルシウムと硫酸カルシウムとの混合物を得ること。
ii. 石膏及び炭酸カルシウムの混合物と炭酸アンモニウムとを0℃〜60℃又は8℃〜50℃の範囲の低温で3分間〜300分間又は5分間〜250分間反応させて、得られるものから炭酸カルシウムを添加することなく種々の優勢結晶構造の炭酸カルシウムを作製すること。
【0054】
方法D
この方法は、以下を含む:
i. 上記方法B又は方法Cのプロセスによってシーディングされた石膏を調製し、ここでドロマイト、ドロマイト質炭酸塩(dolomitic carbonate)、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタニア(TiO
2)、シリカ(SiO
2)若しくは酸化亜鉛(例えばZnO)、又はそれらの混合物を炭酸カルシウムの代わりにシードとして添加すること。
ii. シーディングされた石膏と炭酸アンモニウムとを反応させて、バテライト結晶構造、カルサイト結晶構造、アラゴナイト結晶構造、非晶質炭酸カルシウム、又はそれらの混合物若しくはブレンドの炭酸カルシウムを作製すること。
【0055】
幾つかの実施形態によると、シードはシード形態及びPCC形態の両方と関連する形態を有するハイブリッド形態をもたらし得る。
【0056】
方法E
この方法は、以下を含む:
i. 添加剤を石膏に添加して、斜方晶若しくは偏三角面体晶カルサイト、バテライト、アラゴナイト、非晶質炭酸カルシウム又はそれらのブレンドを含むが、これらに限定されない他の規定の炭酸カルシウムの多形及び粒径を得る、方法A、方法B、方法C又は方法Dのプロセス。
【0057】
方法F
この方法は、以下を含む:
i. 重炭酸アンモニウムの量がカルバミン酸アンモニウム濃度以上となり、反応時にカルサイト又はカルサイト−バテライトブレンドが得られるように、炭酸アンモニウムが炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムの混合物を含む、方法A〜方法Eのプロセス。
【0058】
方法G
この方法は、以下を含む:
i. 重炭酸アンモニウムの量がカルバミン酸アンモニウム濃度以下となり、反応時にバテライト又はバテライト−カルサイトブレンドが得られるように、炭酸アンモニウムが炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムの混合物を含む、方法A〜方法Eのプロセス。
【0059】
方法H
この方法は、以下を含む:
i. 炭酸アンモニウムを水酸化アンモニウムとCO
2との反応によって作製する、方法A〜方法Gのプロセス。石膏スラリーに導入する炭酸アンモニウムはpHを適合させたものであり、及び/又は得られる多形及び粒径に影響を与えるために過剰なCO
2が用いられる。
【0060】
方法I
この方法は、以下を含む:
i. 金属炭酸塩を炭酸アンモニウムの代わりに石膏との反応に使用する、方法A〜方法Eのプロセス。
ii. 方法A〜方法EのFGD石膏と金属炭酸塩とを反応させて、バテライト結晶構造、カルサイト結晶構造又はカルサイト−バテライト−アラゴナイト結晶構造ブレンドの炭酸カルシウムを作製すること。
【0061】
下記表1及び表2に、上述の方法の様々な例から得られる生成物の特徴を特定する。
【0064】
本開示では、「反応」という用語は任意の完全又は部分的な反応を指す場合がある。部分的な反応は、反応が起こった後に或る量の試薬又は基質が反応混合物中に残存する任意の反応を指す。
【0065】
方法A〜方法Iについては、PCCの沈殿は反応速度、pH、イオン強度、反応温度、反応中に存在する炭酸塩種、シード種組成、シード種濃度、供給材料(例えば石膏)の純度、供給材料の濃度、供給材料の比率又は反応構成成分の熟成の1つ以上によって影響を与える又は制御することができる。
【0066】
方法A〜方法Iに関しては、反応混合物のpHを制御することができる。一実施形態では、反応混合物は酸性(6.5未満のpH)、中性(pH6.5〜7.5)又は塩基性(7.5超のpH)であり得る。方法A〜方法Iについては、反応混合物のイオン強度を制御することもできる。溶液のイオン強度Iは、その溶液中に存在する全てのイオンの濃度の関数である。
【数1】
式中、c
iはイオンiのモル濃度(M、mol/L)であり、z
iはそのイオンの電荷数であり、溶液中の全てのイオンについて合計をとる。一実施形態では、イオン強度はイオン性反応物の化学量論によって制御される。別の実施形態では、イオン強度はイオン添加剤の添加によって制御される。これらのイオン添加剤は関与する反応物、傍観イオン(すなわち、関与しない反応物)、及び/又は全イオン強度調整緩衝液であり得る。別の実施形態では、イオン強度は脱イオン(DI)水の使用によって制御される。
【0067】
方法A〜方法Iについては、炭酸塩源と反応させる前に溶媒を石膏に添加して石膏溶液、スラリー又は懸濁液を形成することができる。石膏溶液、スラリー又は懸濁液の形成に使用することができる好適な溶媒としては、非プロトン性極性溶媒、極性プロトン性溶媒及び非極性溶媒が挙げられる。好適な非プロトン性極性溶媒としては、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、ブチロラクトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、アセトニトリル、ニトロベンゼン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができるが、これらに限定されない。好適な極性プロトン性溶媒としては、水、ニトロメタン及び短鎖アルコールを挙げることができるが、これらに限定されない。好適な短鎖アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の1つ以上を挙げることができるが、これらに限定されない。好適な非極性溶媒としては、シクロヘキサン、オクタン、ヘプタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、四塩化炭素又はジエチルエーテルを挙げることができるが、これらに限定されない。共溶媒を使用してもよい。或る特定の実施形態では、石膏に添加する溶媒は水である。石膏は適度に水溶性である(25℃で2.0g/l〜2.5g/l)。したがって、石膏溶液を形成するために、十分な水を添加して反応前に全ての石膏を完全に溶解する。スラリー又は懸濁液を形成するためには、一部の石膏が完全に溶解し、一部の石膏が固体形態で残存するような量の水を添加して石膏を部分的に溶解する。別の実施形態では、水を石膏に添加して、スラリー中の固形分パーセントが10%〜50%、20%〜40%又は30%〜35%のスラリーを形成する。方法A〜方法Iでは、反応混合物の濃度も制御する。或る特定の実施形態では、反応溶液、混合物又はスラリーに水を添加するか又はそれらから水を取り去ることによって濃度を制御する。
【0068】
方法A〜方法Iに関しては、鉱酸、炭酸アンモニウム、カルサイト、アラゴナイト、炭酸カルシウム、ドロマイト、重炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、二酸化炭素若しくは任意の他の添加剤、又はそれらの組合せをバルクで、少量ずつ又は緩徐な添加プロセスによって石膏に添加して、PCC生成物の特徴を制御することができる。これらの構成成分の添加の速度によっても反応混合物の濃度が制御される。方法A〜方法Iに関しては、鉱酸、炭酸アンモニウム、カルサイト、アラゴナイト、炭酸カルシウム、ドロマイト、重炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、二酸化炭素、若しくは任意の他の添加剤若しくは炭酸塩源、又はそれらの組合せを溶液、固体、懸濁液若しくはスラリー、気体又は原液で添加する。気体の添加に関しては、気体を溶液に効果的な濃度までバブリングするか、又は所望の効果的な濃度に達するまで反応器をパージ若しくは加圧するために使用することができる。
【0069】
一実施形態では、炭酸塩源は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、金属炭酸塩及び二酸化炭素からなる群から選択され、金属炭酸塩は炭酸アニオン又は重炭酸アニオンと、ナトリウム、カルシウム、コバルト、銅、カリウム、アンモニウム、クロム、鉄、アルミニウム、スズ、鉛、マグネシウム、銀、チタン、バナジウム、亜鉛、リチウム、ニッケル、バリウム、ストロンチウム及びヒドロニウムからなる群から選択される少なくとも1つのカチオンとを含む。或る特定の実施形態では、石膏と反応させる前に水を炭酸塩源に添加してスラリーを形成する。次いで、炭酸塩源スラリーを石膏に添加して、1:1.1〜1:5、1:1.3〜1:2.5又は1:1.5〜1:2の石膏:炭酸塩源の反応のモル比を得る。選択される炭酸塩によって、石膏との反応後に生成する炭酸カルシウムよりも溶解性が高い硫酸塩生成物が得られるものとする。したがって、生成する硫酸塩を反応スラリーからの水相の除去によって炭酸カルシウム沈殿から分離することができる。例示的な金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム及び炭酸マグネシウムが挙げられる。硫酸塩生成物を必要に応じて処理し、適切な別の用途に使用することができる。例えば、炭酸アンモニウムを反応に使用する場合、硫酸アンモニウムが生成するが、これを分離し、肥料等の用途に使用することができる。加えて、一部を反応速度の制御、またその結果として作製されるPCCの制御を補助するために出発石膏スラリーに供給してもよい。PCCスラリーを水溶液から分離してPCCケーキを形成した後、ケーキを水で洗浄して残存する硫酸塩を除去することができる。炭酸塩源は予め形成するか又は反応中に生成することができる。例えば、CO
2をアンモニアガスとともにバブリングして、反応に使用される炭酸アンモニウムを生成することができる。概して、炭酸アンモニウムは炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムの混合物を含む混合塩として存在する。各々の種の量は炭酸アンモニウムの製造に用いられる反応条件に左右され得る。さらに、カルバミン酸アンモニウムは水の存在下で炭酸アンモニウムへと迅速に変換される。概して、重炭酸アンモニウムはカルバミン酸アンモニウム又は炭酸アンモニウムよりも緩徐に溶解し、緩徐に石膏と反応する。
【0070】
本開示の方法A〜方法IのPCC作製プロセスは、1つの形態のPCCのみを作製することを目的とする。しかしながら、少量の代替多形が存在することが多く、殆どの最終用途で容易に許容され得る。このため、結晶形の混合物(例えば、アラゴナイト及びカルサイト)を含むPCC組成物をコーティング配合物に容易に用いることができる。主に1つの形態(例えば、優勢的にバテライト)を含むPCC組成物の場合であっても、組成物は少量の少なくとも1つの他の結晶PCC構造(例えばカルサイト)を含有する可能性がある。結果として、本開示のPCC組成物は任意に、主要PCC形態とは異なる少なくとも1つの第2のPCC形態を含み得る。
【0071】
幾つかの実施形態では、PCC生成物のサイズ、表面積及び立方度は反応構成成分の供給濃度又は熟成によって影響を与えることができる。例えば、より低い供給濃度はより大きな粒径分布をもたらし得る。より大きな粒径分布はより小さな表面積を有し得る。例えば熟成によって、PCCの表面積を低減するか又はPCC粒子の立方度を改善することができる。幾つかの実施形態によると、熟成によって多形の一部又は全てを異なる多形へと変換することができる。例えば、熟成によってバテライト相をカルサイトへと変換することができる。石膏スラリー中に硫酸アンモニウムを含む幾つかの実施形態によると、供給によりPCCの多形及び粒径の制御を補助することができる。
【0072】
本開示の或る特定の実施形態では、PCC生成物の乾燥段階は、方法A〜方法Iのいずれかに続く脱水によって行うこともできる。生成物の乾燥は、得られる結晶生成物の多形にも寄与し得る。本開示の或る特定の実施形態では、PCC反応生成物は乾燥前に固形分含量が少なくとも70%である反応後の第1の組成物である。PCC反応生成物を乾燥段階後に第2の組成物へと変換してもよい。乾燥段階により第1の組成物の任意の非晶質PCC生成物を第2の組成物の結晶多形へと変換することができる(また、異なる乾燥方法により異なる多形が生じ得る)。第1の組成物の生成物は熟成及びシーディングしてもよい。乾燥生成物を熟成することもできる。乾燥プロセスと同様に、熟成により多形組成を変化させることもできる。PCCを形成する反応、シーディング、乾燥及び熟成は全て、バッチプロセス又は連続プロセスで(例えば、インライン静的ミキサー又はカスケードミキサーを備える管型反応器内で)用いることができる。一実施形態では、乾燥は30℃〜150℃の温度範囲で1時間〜15時間行う。
【0073】
幾つかの実施形態では、添加剤又はシード材料の添加は、PCCの構造に影響を及ぼす可能性がある。例えば、PCC形成工程へのクエン酸の添加により、形成されるPCC生成物の表面積が増大し得る。酸(例えばリン酸)等の酸性添加剤の使用によるpHの変更を用いて、PCCの形状、粒径又は表面積を制御又は変更し、特にPCCの形態を変更することができる。幾つかの実施形態では、シード組成物を用いて、得られるPCC形態を制御することができる。例えば、(供給材料の重量に対して)約5重量%超の粗い偏三角面体晶PCCをシード材料として使用することで、より大きな又はより粗いPCC生成物を得ることができ、より大きな表面積がもたらされ得る。例えば、約5%未満の微細菱面体晶PCCをシード材料として使用することで、PCC凝集体内でより微細な結晶サイズを有するPCC生成物が得られ、約5%超の微細菱面体晶PCCシード材料では、作製されるPCCのより微細なサイズの凝集体が得られる。さらに、純粋な(ドロマイト又はマグネシウムのレベルが2%未満である)カルサイトシードを反応混合物に添加するシーディング条件下では、得られるPCC生成物は斜方晶配置で形成される。同様に、マグネサイト又はドロマイトのシーディングにより斜方晶PCCも得られる。
【0074】
本開示では、「ハイブリッド構造」は、シード構成成分の表面の少なくとも一部に結合したPCC構成成分を指す。例えば、PCC構成成分は、シード構成成分に例えばイオン結合、配位共有(供与)結合又はファンデルワールス結合によって化学結合することができる。幾つかの実施形態によると、PCC構成成分をシード構成成分に物理的に結合又は付着することができる。幾つかの実施形態によると、PCC構成成分をシード構成成分に吸着又は物理吸着することができる。幾つかの実施形態によると、炭酸塩添加工程中にPCC構成成分によりシード構成成分上に炭酸塩層を形成することができる。例えば、PCC構成成分により、シード構成成分の少なくとも一部、大部分又は実質的に全てを覆う炭酸塩層、シェル又はコーティングを形成することができる。幾つかの実施形態によると、PCC構成成分はシード構成成分の実質的に全てをコーティングする、閉じ込める又は封入することができる。幾つかの実施形態によると、ハイブリッド構造はPCC構成成分、シード構成成分及び/又は界面構成成分を含み得る。界面構成成分は、例えばPCC構成成分とシード構成成分との間の境界領域であり得る。界面構成成分は、炭酸塩構成成分及び第2の構成成分の要素を含有する化学組成物を含み得る。例えば、ハイブリッド構造が炭酸カルシウムをPCC構成成分として、炭酸マグネシウムをシード構成成分として含む場合、界面領域は他の構成成分に拡散するカルシウム及び/又はマグネシウム、又は炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムとの混合物を含有する領域を含み得る。界面領域は、例えばハイブリッド構造の熱処理(例えば焼結)時に生じ得る。
【0075】
本明細書で「非晶質」として記載される構造は短鎖又は長鎖ではない順序を指し、結晶構造は少なくとも幾らかのレベルの順序を指す。したがって、半結晶として記載され得る材料は本開示では結晶性とみなすことができる。本明細書の生成物は通例、100%結晶性又は100%非晶質若しくは非結晶ではなく、これらの点間の範囲に存在する。幾つかの実施形態では、PCCは主に非晶質、又は非晶相と結晶相との組合せ(カルサイト、バテライト又はアラゴナイト等)であり得る。
【0076】
「直接作製される」は本明細書で使用される場合、生成物多形(例えばカルサイト)が、単離され、第2の独立した工程において本明細書で言及される加工法(例えば湿式熟成)を用いて生成物多形へと変換される中間体多形(例えばバテライト)を形成することなく形成されるプロセスを指す。言い換えると、「直接作製される」は生成物が1つの反応操作で形成されるプロセスを指す。「直接作製されない」反応生成物の一例は、中間体多形を本明細書で言及する反応法を用いて形成することと、続いて中間体多形単離し、中間体多形を異なる生成物多形へと変換する加工条件にそれを供することとを含み得る。
【0077】
本プロセスに使用する石膏は精製石膏又は未精製石膏であり得る。一実施形態では、石膏を反応前に濾過、篩分又は遠心分離して不純物を除去する。
【0078】
石膏をカルサイトへと変換する例示的なプロセス
別の態様によると、本開示は、石膏とシード、鉱酸又はその両方とを含む混合物と少なくとも1つの炭酸塩源とを反応させて、沈降炭酸カルシウムを作製することを含む、石膏を沈降炭酸カルシウムへと変換するプロセスに関する。反応物及びシード及び/又は鉱酸により沈降炭酸カルシウムの結晶多形及び/又は粒径が制御され、沈降炭酸カルシウムはカルサイトの形態であり、カルサイトはバテライト多形から変換されることなく反応物から直接作製される。
【0079】
A. 一実施形態では、カルサイト多形は鉱酸がクエン酸、硝酸又はリン酸である場合に直接作製される。代替実施形態では、鉱酸はpKaが3以下の酸である。一実施形態では、石膏出発物質は炭酸塩不純物を含む場合があり、この状況では、鉱酸を石膏中の炭酸塩不純物のモル当量以上のモル当量で添加する。或る特定の実施形態では、鉱酸は石膏の乾燥重量をベースとして0.1重量%〜20重量%又は0.5重量%〜10重量%又は1重量%〜5重量%の範囲の量で存在し得る。
【0080】
B. 方法Bでは、カルサイトPCC生成物は、石膏を方法Aに関して記載される鉱酸で処理し、カルサイトシードをシーディングした場合に形成することができる。一実施形態では、例えば石膏をベースとして25重量%未満、10重量%未満、5重量%未満又は1重量%未満の炭酸カルシウムシードを石膏に添加する。例えば、シードは石膏をベースとして0.1重量%〜25重量%又は0.5重量%〜15重量%又は1重量%〜10重量%の範囲の量で存在し得る。一実施形態では、作製されるPCCは斜方晶を含む配置を有するカルサイトと一致する優勢結晶多形を有する。別の実施形態では、作製されるPCCは1ミクロン〜28ミクロンの範囲のPSD(d
50)を有する。別の実施形態では、PCCは30〜100又は53〜71又は59〜63の範囲の峻度(steepness)(d
30/d
70×100)を有する。別の実施形態では、PCCは1m
2/g〜30m
2/g又は3m
2/g〜9m
2/gの範囲の表面積(BET及び/又はステアリン酸取込み)を有する。幾つかの実施形態によると、PCCは比較的急な粒径分布、例えば約46超の峻度を有し得る。幾つかの実施形態によると、PCCは比較的広い粒径分布、例えば約40未満の峻度を有し得る。
【0081】
C. 一実施形態では、カルサイト多形PCCはシードがカルサイトシードである場合に作製される。幾つかの実施形態では、石膏をベースとして少なくとも25重量%、少なくとも5重量%、少なくとも2重量%又は少なくとも1重量%の炭酸カルシウムを石膏に添加する。例えば、シードは石膏をベースとして1重量%〜25重量%又は2重量%〜30重量%又は5重量%〜40重量%の範囲の量で存在し得る。一実施形態では、作製されるPCCは斜方晶を含む配置を有するカルサイトと一致する優勢結晶多形を有する。別の実施形態では、PCCは0.1m
2/g〜8m
2/g又は2.5m
2/g〜30m
2/gの範囲の表面積を有する。
【0082】
D. シードはドロマイト、ドロマイト質炭酸塩、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタニア、シリカ及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つとすることもできる。例えば、シードはドロマイト質炭酸カルシウムであってもよい。幾つかの実施形態では、作製されるPCCは斜方晶カルサイトのニードル形態、及び他の形態を含む結晶配置を有し得る。さらに、PCCは非PCCシード材料、例えばチタニア、シリカ、酸化亜鉛又はそれらの混合物をシーディングする場合にハイブリッド構造を有し得る。幾つかの実施形態では、石膏に炭酸カルシウムの代わりに硫酸マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムをシーディングしてもよい。
【0083】
E. 添加剤は緩衝剤、分散剤、増粘剤、固化防止剤、消泡剤、レオロジー剤、湿潤剤、結晶シード、共溶媒、明度エンハンサー、又は生成物の結晶形/配置に影響を及ぼす任意の作用物質であり得るが、これらに限定されない。添加剤の例としては、クエン酸、リン酸、糖、BaCl
2、MgO、MgCO
3、H
2SO
4、H
3PO
4、HCl、様々なリン酸塩、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム及びNO
3化合物が挙げられるが、これらに限定されない。明度エンハンサーの例としては、蛍光増白剤が挙げられるが、これに限定されない。幾つかの実施形態によると、添加剤が酸、例えばクエン酸である場合、得られるPCC形態の表面積が増大し得る。様々な量の酸、例えばリン酸の選択を用いて、PCCの形状、粒径及び/又は表面積を制御することができる。一実施形態では、混合物がクエン酸、リン酸、硫酸アンモニウム又はチオ硫酸ナトリウムを更に含む場合にカルサイト多形が作製される。一実施形態では、添加剤の重量%は石膏に対して0.1%〜20%又は0.5%〜10%又は1%〜6%の範囲である。幾つかの実施形態では、硫酸アンモニウムを反応混合物に添加して、反応速度を制御する。幾つかの実施形態では、チオ硫酸ナトリウムを硫酸アンモニウムの代わりに添加する。例えば、硫酸アンモニウムを石膏スラリーに添加することができる。硫酸アンモニウムの濃度を変更してPCCの多形型及び粒径を制御することができる。
【0084】
F. 炭酸塩源は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、金属炭酸塩及び二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。炭酸アンモニウムの混合物が石膏を含む溶液であり、反応が溶液中で行われる場合、PCC生成物はカルサイトである傾向がある。一実施形態では、炭酸塩源は炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムの炭酸塩混合物であり、重炭酸アンモニウムの量は炭酸塩混合物中のカルバミン酸アンモニウム又は炭酸アンモニウムの量以上である。一実施形態では、重炭酸アンモニウムを炭酸アンモニウムに添加し(又はその逆)、混合物を生成した後、混合物を石膏に添加する。別の実施形態では、水酸化アンモニウムを含有するスラリーにCO
2ガスをバブリングし、バブリングにより炭酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウム及び/又はカルバミン酸アンモニウムがin situで形成された後、得られる炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムの混合物を石膏に添加する。
【0085】
或る特定の実施形態では、反応温度は30℃以上とすることができ、形成される多形はカルサイトである。
【0086】
他の実施形態では、石膏は天然石膏であり、形成される多形はカルサイト及び/又はバテライト生成物である。例えば、炭酸カルシウム生成物は少なくとも30%のカルサイト及びバテライトを含み得る。
【0087】
或る特定の実施形態では、反応を10以上のpHで行い、形成される多形はカルサイトである。
【0088】
H. 一実施形態では、炭酸塩源は二酸化炭素であり、二酸化炭素を石膏とシード、鉱酸又はその両方とを含む混合物との反応前又は反応中にアンモニア又は水酸化アンモニウムと反応させる。混合物のpHを10以上に適合させ、それによりカルサイト多形を形成することができる。そのプロセス中に、二酸化炭素又はアンモニアの濃度を調整することによってpHを調整することができる。本開示では、添加する炭酸塩源の量は混合物中に存在する石膏の量を超え、石膏と炭酸塩源とのモル比は約1:1.1〜1:5、1:1.3〜1:2.5又は約1:1.5〜1:2の範囲であり得る。二酸化炭素は純粋な二酸化炭素ガス、15%〜90%の二酸化炭素ガスを含有する煙道ガス、又は二酸化炭素ガスに富んだ煙道ガス(例えば90%超のCO
2)とすることができる。一実施形態では、石膏をCO
2の添加前にアンモニアと混合する。水酸化アンモニウムはアンモニアを水に添加することによって予め形成してもよく、水酸化アンモニウムをCO
2の添加前にスラリー化した石膏に供給してもよい。代替的には、炭酸アンモニウムを完全に生成した後、スラリー化した石膏に導入して反応させることができる。水酸化アンモニウムを室温〜40℃でCO
2と反応させることで、炭酸アンモニウムと重炭酸アンモニウムとの混合物が得られ、これを予想されるようにシーディングした石膏と反応させ、カルサイトを作製する。石膏の存在下で、水酸化アンモニウムとCO
2とにより炭酸アンモニウムと重炭酸アンモニウムとの混合物が得られ、これが重炭酸アンモニウム及び炭酸アンモニウムの生成中に石膏と反応し始め、硫酸アンモニウムが得られる。代替的な実施形態では、アンモニア及びCO
2を初めに混合し、反応させた後、反応した混合物を石膏と混合する。一実施形態では、CO
2を溶液にバブリングすることによって添加する。代替的な実施形態では、CO
2をドライアイスとして添加する。調製中に炭酸カルシウムの核形成速度及び結晶サイズを反応時間及び温度の制御によって制御することができる。或る特定の実施形態では、二酸化炭素又は二酸化炭素同等物は石膏反応物と等モルであるか又はそれ以上である。反応時間は0.2時間〜10時間又は0.5時間〜3時間とすることができ、温度は8℃〜98℃又は10℃〜90℃の範囲とすることができる。幾つかの実施形態によると、煙道ガス等のCO
2含有ガスを、アンモニアとの反応期間中に連続的に添加することができる。幾つかの実施形態によると、CO
2含有ガスの添加はアンモニアとの反応期間中に停止することができる。CO
2添加を停止する場合、CO
2添加は濾過工程前に任意に再開してもよい。幾つかの実施形態によると、炭酸塩を硫酸アンモニウムから分離する前に反応生成物を貯蔵し、反応生成物を熟成させることができる。熟成は貯蔵中にCO
2を添加して又は添加せずに行うことができる。幾つかの実施形態によると、CO
2を炭酸カルシウム及び硫酸アンモニウムへの変換後に添加することができる。幾つかの実施形態によると、CO
2を炭酸カルシウムの単離後に添加することができる。幾つかの実施形態によると、例えば炭酸カルシウムの単離後又は再スラリー化工程後のCO
2の導入を用いて炭酸カルシウムの粒径を制御することができる。
【0089】
I. 代替的な実施形態では、炭酸塩源はナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム、フランシウムであるアルカリ金属炭酸塩である。一実施形態では、金属炭酸塩の金属は一価イオン(例えばアルカリ金属)である。一実施形態では、作製されるPCCはアラゴナイトのニードル形態、斜方晶カルサイト及び他の形態を含む結晶配置を有し得る。一実施形態では、金属炭酸塩の金属は二価イオン、例えばマグネシウム、ストロンチウム、ベリリウム、バリウム又はラジウムである。炭酸マグネシウムは、マグネシウムカチオンが石膏又は金属炭酸塩(例えば炭酸マグネシウム、ドロマイト等)中に存在する条件下で得ることもできる。
【0090】
石膏を沈降炭酸カルシウムへと変換するプロセスは、沈降炭酸カルシウムを脱水、乾燥、熟成、表面処理、サイズ減少及び選鉱からなる群から選択される少なくとも1つの方法によって加工することを更に含む。カルサイト多形を用いたPCCの加工によりカルサイトの上述の特性が変化し得る。しかしながら、加工はカルサイトを別の多形へと変換するものではない。
【0091】
石膏をアラゴナイトへと変換する例示的なプロセス
第1の態様によると、本開示は、石膏とシード、鉱酸又はその両方とを含む混合物と少なくとも1つの炭酸塩源とを反応させて、沈降炭酸カルシウムを作製することを含む、石膏を沈降炭酸カルシウムへと変換するプロセスに関する。反応物及びシード及び/又は鉱酸により沈降炭酸カルシウムの結晶多形及び/又は粒径が制御され、沈降炭酸カルシウムはアラゴナイトの形態であり、アラゴナイトはバテライト多形から変換されることなく反応物から直接作製される。
【0092】
C. 一実施形態では、シードがアラゴナイト又はブレンドシードである場合にアラゴナイト多形PCCが作製される。ブレンドシードは、例えば5:1又はより好ましくは3:1の比率でブレンドされた炭酸マグネシウム及び炭酸カルシウムを含み得る。幾つかの実施形態では、石膏をベースとして少なくとも10重量%、少なくとも5重量%、少なくとも2重量%又は少なくとも1重量%のシードを石膏に添加する。例えば、シードは石膏をベースとして1重量%〜25重量%又は2重量%〜30重量%又は5重量%〜40重量%の範囲の量で存在し得る。一実施形態では、作製されるPCCはアラゴナイトと一致する優勢結晶多形を有する。別の実施形態では、PCCは2m
2/g〜30m
2/g又は5m
2/g〜15m
2/g又は2m
2/g〜8m
2/gの範囲の表面積を有する。
【0093】
D. シードはドロマイト質炭酸塩、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタニア、シリカ、ストロンチウム及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。例えば、シードは高マグネシウム含量のドロマイト質炭酸カルシウムであり得る。さらに、PCCは非PCCシード材料、例えばチタニア、シリカ、酸化亜鉛、ストロンチウム又はそれらの混合物をシーディングする場合にハイブリッド構造を有し得る。幾つかの実施形態では、石膏に炭酸塩の代わりに硫酸マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムをシーディングしてもよい。
【0094】
E. 添加剤は緩衝剤、分散剤、増粘剤、固化防止剤、消泡剤、レオロジー剤、湿潤剤、結晶シード、共溶媒、明度エンハンサー、又は生成物の結晶形/配置に影響を及ぼす任意の作用物質であり得るが、これらに限定されない。添加剤の例としては、クエン酸、リン酸、糖、BaCl
2、MgO、MgCO
3、H
2SO
4、H
3PO
4、HCl、様々なリン酸塩、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム及びNO
3化合物が挙げられるが、これらに限定されない。明度ダンプナー(dampeners)の例としては、Fe
2O
3、MnO及びPb
+2が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態によると、添加剤が酸、例えばクエン酸である場合、得られるPCC形態の表面積が増大し得る。様々な量の酸、例えばリン酸の選択を用いて、PCCの形状、粒径及び/又は表面積を制御することができる。一実施形態では、添加剤の重量%は石膏に対して0.1%〜25%又は0.5%〜15%又は1%〜10%の範囲である。幾つかの実施形態では、硫酸アンモニウムを反応混合物に添加して、反応速度を制御する。幾つかの実施形態では、チオ硫酸ナトリウムを硫酸アンモニウムの代わりに添加する。例えば、硫酸アンモニウムを石膏スラリーに添加することができる。硫酸アンモニウムの濃度を変更してPCCの多形型及び粒径を制御することができる。
【0095】
F. 炭酸塩源は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、金属炭酸塩及び二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。一実施形態では、重炭酸アンモニウムを炭酸アンモニウムに添加し(又はその逆)、混合物を生成した後、混合物を石膏に添加する。別の実施形態では、水酸化アンモニウムを含有するスラリーにCO
2ガスをバブリングし、バブリングにより炭酸アンモニウム及び/又は重炭酸アンモニウム及び/又はカルバミン酸アンモニウムがin situで形成された後、得られる炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムの混合物を石膏に添加する。
【0096】
H. 一実施形態では、炭酸塩源は二酸化炭素であり、二酸化炭素を石膏とシード、鉱酸又はその両方とを含む混合物との反応前又は反応中にアンモニア又は水酸化アンモニウムと反応させる。そのプロセス中に、二酸化炭素又はアンモニアの濃度を調整することによってpHを調整することができる。本開示では、添加する炭酸塩源の量は混合物中に存在する石膏の量を超え、石膏と炭酸塩源とのモル比は約1:1.1〜1:5、1:1.3〜1:2.5又は約1:1.5〜1:2の範囲であり得る。二酸化炭素は純粋な二酸化炭素ガス、15%〜90%の二酸化炭素ガスを含有する煙道ガス、又は二酸化炭素ガスに富んだ煙道ガス(例えば90%超のCO
2)とすることができる。一実施形態では、石膏をCO
2の添加前にアンモニアと混合する。水酸化アンモニウムはアンモニアを水に添加することによって予め形成してもよく、水酸化アンモニウムをCO
2の添加前にスラリー化した石膏に供給してもよい(又はその逆)。代替的には、炭酸アンモニウム又は重炭酸アンモニウムを含む炭酸アンモニウムを完全に生成した後、スラリー化した石膏に導入して反応させることができる。石膏の存在下で、水酸化アンモニウムとCO
2とにより炭酸アンモニウムと重炭酸アンモニウムとが得られ、これが重炭酸アンモニウム及び炭酸アンモニウムの生成中に石膏と反応し始め、硫酸アンモニウムが得られる。代替的な実施形態では、アンモニア及びCO
2を初めに混合し、反応させた後、反応した混合物を石膏と混合する。一実施形態では、CO
2を溶液にバブリングすることによって添加する。代替的な実施形態では、CO
2をドライアイスとして添加する。調製中に炭酸カルシウムの核形成速度及び結晶サイズを反応時間及び温度の制御によって制御することができる。或る特定の実施形態では、二酸化炭素又は二酸化炭素同等物は石膏反応物と等モルであるか又はそれ以上である。反応時間は0.2時間〜10時間又は0.5時間〜3時間とすることができ、温度は8℃〜90℃又は10℃〜98℃の範囲とすることができる。幾つかの実施形態によると、煙道ガス等のCO
2含有ガスを、アンモニアとの反応期間中に連続的に添加することができる。幾つかの実施形態によると、CO
2含有ガスの添加はアンモニアとの反応期間中に停止することができる。CO
2添加を停止する場合、CO
2添加は濾過工程前に任意に再開してもよい。幾つかの実施形態によると、炭酸塩を硫酸アンモニウムから分離する前に反応生成物を貯蔵し、反応生成物を熟成させることができる。熟成は貯蔵中にCO
2を添加して又は添加せずに行うことができる。幾つかの実施形態によると、CO
2を炭酸カルシウム及び硫酸アンモニウムへの変換後に添加することができる。幾つかの実施形態によると、CO
2を炭酸カルシウムの単離後に添加することができる。幾つかの実施形態によると、例えば炭酸カルシウムの単離後又は再スラリー化工程後のCO
2の導入を用いて炭酸カルシウムの粒径を制御することができる。
【0097】
I. 代替的な実施形態では、炭酸塩源はナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム、フランシウムであるアルカリ金属炭酸塩である。一実施形態では、金属炭酸塩の金属は一価イオン(例えばアルカリ金属)である。一実施形態では、作製されるPCCはアラゴナイトのニードル形態及び他の形態を含む結晶配置を有し得る。一実施形態では、金属炭酸塩の金属は二価イオン、例えばマグネシウムである。炭酸マグネシウムは、マグネシウムカチオンが石膏又は金属炭酸塩(例えば炭酸マグネシウム、ドロマイト等)中に存在する条件下で得ることもできる。
【0098】
石膏を沈降炭酸カルシウムへと変換するプロセスは、沈降炭酸カルシウムを脱水、乾燥、熟成、表面処理、サイズ減少及び選鉱からなる群から選択される少なくとも1つの方法によって加工することを更に含む。
【0099】
石膏をバテライトへと変換する例示的なプロセス
第2の態様によると、本開示は、i)石膏及びii)シード、又は10℃〜60℃若しくは18℃〜45℃若しくはより好ましくは25℃〜35℃の反応温度からなる群から選択される少なくとも1つのプロセス条件を準備することと、石膏と少なくとも1つの炭酸塩源とを反応させて、沈降炭酸カルシウムをバテライトの形態で作製することとを含む、石膏を沈降炭酸カルシウムへと変換するプロセスに関する。反応物及びシード及び/又はプロセス条件によりバテライトの粒径が制御される。
【0100】
作製されるPCCは、球状「コーラル」及び幾らかの斜方晶を含む配置を有するバテライトと一致する優勢結晶多形を有する。幾つかの実施形態では、バテライトPCCは花形配置、バラ形配置、ニードル状配置、ボール状又は球状配置又は六方晶配置を有し得る。バテライトの配置又は構造は、供給石膏の反応速度、pH、反応温度又は純度の1つ以上を変更することによって変更することができる。例えば、高純度の石膏(例えば99%)の供給によりボール状配置を有するバテライトが得られ、アンモニアベースの炭酸塩前駆体及びPCCの同時生成では、より花形のバテライトが得られる傾向がある。幾つかの実施形態によると、ボール状バテライトPCCは、PCC反応中に予め形成されたアンモニアベースの炭酸塩及びより低純度の石膏を用いて作製される。作製されるPCCは、2.0ミクロン〜12.0ミクロン又は3.0ミクロン〜7.0ミクロンの範囲のPSD(d
50)を有する。別の実施形態では、PCCは30〜100又は50〜100又は56〜83又は59〜71の範囲の峻度(d
30/d
70×100)を有する。別の実施形態では、PCCは5m
2/g〜75m
2/g又は5m
2/g〜20m
2/g又は7m
2/g〜15m
2/gの範囲の表面積(BET及び/又はステアリン酸取込み)を有する。
【0101】
他の実施形態では、30℃未満の反応温度はバテライト多形をもたらす。
【0102】
E. 添加剤は緩衝剤、分散剤、増粘剤、固化防止剤、消泡剤、レオロジー剤、湿潤剤、結晶シード、共溶媒、明度エンハンサー若しくはダンプナー、又は生成物の結晶形/配置に影響を及ぼす任意の作用物質であり得るが、これらに限定されない。添加剤の例としては、クエン酸、リン酸、糖、BaCl
2、MgO、MgCO
3、H
2SO
4、H
3PO
4、HCl、様々なリン酸塩、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム及びNO
3化合物が挙げられるが、これらに限定されない。明度ダンプナーの例としては、Fe
2O
3、MnO、並びにPb
+2及び他の鉛化合物が挙げられるが、これに限定されない。幾つかの実施形態によると、添加剤が酸、例えばクエン酸である場合、得られるPCC形態の表面積が増大し得る。様々な量の酸、例えばリン酸の選択を用いて、PCCの形状、粒径及び/又は表面積を制御することができる。一実施形態では、添加剤は硫酸アンモニウムであり、硫酸アンモニウムは0.5wt/vol%〜50wt/vol%又は2wt/vol%〜35wt/vol%又は4重量%〜20重量%で混合物中に存在する。幾つかの実施形態では、硫酸アンモニウムを反応混合物に添加して、反応速度を制御する。幾つかの実施形態では、チオ硫酸ナトリウムを硫酸アンモニウムの代わりに添加する。例えば、硫酸アンモニウムを石膏スラリーに添加することができる。硫酸アンモニウムの濃度を変更してPCCの多形型及び粒径を制御することができる。代替的には、有機酸はクエン酸であり、混合物中のクエン酸の重量%は石膏の重量に対して0.1%以上、10%以上又は25%以上である。
【0103】
G. 炭酸塩源は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、金属炭酸塩及び二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも1つである。一実施形態では、炭酸塩源は炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムの炭酸塩混合物であり、重炭酸アンモニウムの量は炭酸塩混合物中のカルバミン酸アンモニウム又は炭酸アンモニウムの量未満である。概して、炭酸塩源と石膏との間の反応がスラリー中で行われる条件下で、得られるPCCはバテライトである。一実施形態では、重炭酸アンモニウムを炭酸アンモニウムに添加し(又はその逆)、混合物を生成した後、混合物を石膏に添加する。別の実施形態では、水酸化アンモニウムを含有するスラリーにCO
2ガスをバブリングし、バブリングにより炭酸アンモニウム及び/又はカルバミン酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムがin situで形成された後、得られる炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムの混合物を石膏に添加する。
【0104】
H. 更に別の実施形態では、炭酸塩源は二酸化炭素であり、二酸化炭素を石膏とシード、鉱酸又はその両方とを含む混合物との反応前又は反応中にアンモニア又は水酸化アンモニウムと反応させる。混合物のpHを10未満のpHに適合させ、それによりバテライト多形を形成する。二酸化炭素は純粋な二酸化炭素ガス、15%〜90%の二酸化炭素ガスを含有する煙道ガス、又は二酸化炭素ガスに富んだ煙道ガス(例えば90%超のCO
2)とすることができる。一実施形態では、石膏をCO
2の添加前にアンモニアと混合する。水酸化アンモニウムはアンモニアを水に添加することによって予め形成してもよく、水酸化アンモニウムをCO
2の添加前にスラリー化した石膏に供給してもよい。代替的な実施形態では、アンモニア及びCO
2を初めに混合し、反応させた後、反応した混合物をFGD石膏と混合する。水酸化アンモニウムを室温又は最大で少なくとも40℃でCO
2と反応させることで、炭酸アンモニウムと重炭酸アンモニウムとの混合物が得られ、これを予想されるようにシーディングしていない石膏と反応させ、カルサイトを作製する。代替的には、炭酸アンモニウムを完全に生成した後、スラリー化した石膏に導入して反応させることができる。石膏の存在下で、水酸化アンモニウムとCO
2とにより炭酸アンモニウムと重炭酸アンモニウムとが得られ、これが重炭酸アンモニウム及び炭酸アンモニウムの生成中に石膏と反応し始め、硫酸アンモニウムが得られる。一実施形態では、CO
2を溶液にバブリングすることによって添加する。代替的な実施形態では、CO
2をドライアイスとして添加する。調製中に炭酸カルシウムの核形成速度及び結晶サイズを反応時間及び温度の制御によって制御することができる。或る特定の実施形態では、二酸化炭素又は二酸化炭素同等物は石膏反応物と等モルであるか又はそれ以上である。反応時間は0.2時間〜10時間又は0.5時間〜3時間であり、温度は8℃〜90℃又は10℃〜98℃の範囲である。幾つかの実施形態によると、煙道ガス等のCO
2含有ガスを、アンモニアとの反応期間中に連続的に添加することができる。幾つかの実施形態によると、CO
2含有ガスの添加はアンモニアとの反応期間中に停止することができる。CO
2添加を停止する場合、CO
2添加は濾過工程前に任意に再開してもよい。幾つかの実施形態によると、炭酸塩を硫酸アンモニウムから分離する前に反応生成物を貯蔵し、反応生成物を熟成させることができる。熟成は貯蔵中にCO
2を添加して又は添加せずに行うことができる。幾つかの実施形態によると、CO
2を炭酸カルシウム及び硫酸アンモニウムへの変換後に添加することができる。幾つかの実施形態によると、CO
2を炭酸カルシウムの単離後に添加することができる。幾つかの実施形態によると、例えば炭酸カルシウムの単離後又は再スラリー化工程後のCO
2の導入を用いて炭酸カルシウムの粒径を制御することができる。
【0105】
I. 代替的な実施形態では、炭酸塩源は炭酸ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム又はフランシウムベースの炭酸塩等のアルカリ金属炭酸塩である。一実施形態では、金属炭酸塩の金属は一価イオン(例えばアルカリ金属)である。一実施形態では、作製されるPCCは、例えば球状バテライトを含む結晶配置を有し得る。一実施形態では、金属炭酸塩の金属はマグネシウム、ストロンチウム、ベリリウム、バリウム又はラジウム等の二価イオンである。炭酸マグネシウムは、マグネシウムカチオンが石膏又は金属炭酸塩(例えば炭酸マグネシウム、ドロマイト等)中に存在する条件下でも得ることができる。
【0106】
石膏を沈降炭酸カルシウムへと変換するプロセスは、バテライトを脱水、乾燥、熟成、表面処理、サイズ減少及び選鉱からなる群から選択される少なくとも1つの方法によって加工することを更に含み、加工によりバテライトがカルサイト又はアラゴナイト多形へと変換される。一実施形態では、pHが4〜9又は5〜8又は6〜7.7の範囲の水中でのバテライトPCCへの重質炭酸カルシウム(GCC)のシーディングにより、バテライトがカルサイト多形へと変換される。この変換については、GCCシードをバテライトに対して0.1重量%〜25重量%又は0.5重量%〜15重量%又は1重量%〜10重量%準備し、温度を35℃未満に維持する。さらに、水酸化アンモニウム、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム若しくは水酸化カルシウム等の他の塩基をバテライトと水との混合物に添加し、pHを10以上又は10.5以上又は11以上に調整することによってバテライトをカルサイト多形へと変換することができる。この変換プロセスについては、温度を約23℃〜約80℃、約25℃〜約50℃又は約30℃〜約40℃の範囲の温度に維持する。幾つかの実施形態によると、変換プロセスの温度は約30分間〜約12時間の範囲の期間にわたって維持することができる。幾つかの実施形態によると、実質的に全てのバテライトをカルサイトへと変換することができる。一実施形態では、2%〜10%、4%〜9%又は6%〜8%の重炭酸アンモニウムをバテライトPCCへと添加することで、カルサイト多形への変換も補助される。バテライトからカルサイトへの変換に関しては、バテライトと水との混合物をウェットケーキ又はスラリーの形態とすることができる。対照的に、バテライトの乾燥によりバテライト多形が安定化し、カルサイトへの変換が妨げられる。
【0107】
代替的には、バテライトは硫酸アンモニウムの存在、及び/又は鉄材料の存在、又は重炭酸アンモニウム及び硫酸アンモニウムの非存在によって安定化させることができる。例えば、バテライトは、重炭酸アンモニウムが重炭酸アンモニウムと硫酸アンモニウムとの比率が0:100〜1:15であるように存在する場合であっても硫酸アンモニウムの存在によって安定化させることができる。或る特定の実施形態では、バテライトは1日若しくは1週間若しくは1ヶ月又はそれ以上安定化させることができる。
【0108】
第3の態様によると、本開示は、石膏を準備することと、i)ウェットバテライトのpHが8以下であり、ii)バテライトが乾燥するように石膏を少なくとも1つの炭酸塩源と反応させて、沈降炭酸カルシウムをバテライトの形態で作製することとを含む、石膏を沈降炭酸カルシウムへと変換するプロセスに関する。
【0109】
沈降炭酸カルシウム(PCC)の形態及び特性
本開示では、PCC組成物の結晶含量は、例えば走査型電子顕微鏡又はX線回折を用いる目視検査によって容易に決定することができる。かかる決定は結晶形の特定に基づくものであってもよく、当業者に既知である。
【0110】
本開示のPCC組成物は、組成物の総重量に対して30重量%以上、40重量%以上、60重量%以上、約80重量%以上又は約90重量%以上の単結晶多形含量を特徴とする。
【0111】
PCC組成物又は生成物を提供する。本明細書で使用される場合、安定したとは、少なくとも24時間又は少なくとも48時間又は少なくとも72時間又は1週間又は1ヶ月の期間にわたってその多形(すなわちバテライト、カルサイト、アラゴナイト及び非晶質炭酸カルシウム)のいずれかの1%未満の変換、又はその多形のいずれかの0.75%未満若しくは0.5%未満若しくは0.25%未満若しくは0.2%未満若しくは0.1%未満の変換を有する多形組成を指す。例えば、PCC組成物の総重量に対して95重量%のカルサイト多形を含む安定したPCC組成生成物は、少なくとも24時間の期間に94重量%〜96重量%のカルサイト又は94.5重量%〜95.5重量%のカルサイトを維持する。幾つかの実施形態では、安定性はPCCの形態によって異なる場合がある。
【0112】
PCC組成物は、それらの粒径分布(PSD)によっても特徴付けることができる。本明細書で使用される場合、当該技術分野で一般に規定されるように、メジアン粒径(d
50とも呼ばれる)は、粒子重量の50パーセントが指定値以下の直径を有する粒子によって占められるサイズとして規定される。
【0113】
PCC組成物は約0.1ミクロン〜約30ミクロン、例えば、約2ミクロン〜約14ミクロン、約2ミクロン〜約8ミクロン、約1ミクロン〜約4ミクロン又は約0.1ミクロン〜約1.5ミクロンの範囲のd
50を有し得る。d
50はPCCの形態によって異なる場合がある。例えば、カルサイトPCCは約1ミクロン〜約28ミクロン、例えば約1ミクロン〜約2ミクロン、約1ミクロン〜約5ミクロン、約2ミクロン〜約4ミクロン又は約4ミクロン〜約6ミクロンの範囲のd
50を有し得る。バテライトPCCは約0.1ミクロン〜約30ミクロン、例えば約0.1ミクロン〜約2ミクロン、約1ミクロン〜約5ミクロン又は約2ミクロン〜約8ミクロンの範囲のd
50を有し得る。
【0114】
幾つかの実施形態によると、PCC粒子の約0.1パーセント〜約60パーセントが直径約2ミクロン未満である。他の実施形態では、PCC粒子の約55パーセント〜約99パーセントが直径2ミクロン未満である。幾つかの実施形態によると、PCC粒子の約1パーセント未満が直径10ミクロン超であり、例えばPCC粒子の0.5パーセント未満が直径10ミクロン超であるか、又はPCC粒子の0.1%未満が直径10ミクロン超である。
【0115】
PCC組成物は、それらのアスペクト比によって更に特徴付けることができる。本明細書で使用される場合、アスペクト比は形状係数を指し、それに直交する粒子の最小寸法(例えば幅)で除算した粒子の最大寸法(例えば長さ)に等しい。PCC組成物の粒子のアスペクト比は、様々な方法によって決定することができる。かかる方法の1つは、初めにPCCスラリーを標準SEMステージ上に堆積させることと、スラリーを白金でコーティングすることとを含む。次いで、画像を得て、粒子の厚さ及び幅が等しいと仮定したコンピュータによる分析を用いて粒子寸法を決定する。次いで、個々の粒子の長さ対幅のアスペクト比の50回の算出値を平均することによってアスペクト比を決定することができる。
【0116】
PCC組成物は、それらの立方度、すなわち表面積と粒径との比率(すなわち、材料が立方体、直方柱又は菱面体にどの程度近いか)に関しても特徴付けることができる。本開示の或る特定の実施形態では、より低い表面積が有利である。より小さな粒子は通例、はるかに高い表面積を有するが、小さな粒径が多くの種々の用途に有利である。このため、小粒径材料を含み、「通常の」表面積よりも低いPCC生成物が特に有利である。斜方結晶形が、概して立方度に関して好ましい。
【0117】
幾つかの実施形態によると、PCC組成物の立方性(cubic nature)はPCC粒子の「直角度」によって決定することができる。直角度の測定値は概して、PCC粒子の面によって形成される角度を表すものである。直角度は本明細書で使用される場合、面が実質的に平面であるPCCの隣接面間の角度を算出することによって決定することができる。直角度は、測定される面に平行な観点から見た場合の平面のPCC粒子面の端部によって形成される角度を決定することによってSEM画像を用いて測定することができる。
図41に直角度の例示的な測定を示す。幾つかの実施形態によると、PCC組成物は約70度〜約110度、の範囲の直角度を有し得る。
【0118】
本開示では、生成物の単分散性は結晶サイズ及び多形の均一性を指す。峻度(d
30/d
70×100)は粒径分布の釣鐘曲線を指し、単分散性の指標である。d
xはx重量%の粒子がそれよりも細かい直径に相当する球状直径である。幾つかの実施形態によると、PCC組成物は約30〜約100の範囲、例えば約33〜約100、約42〜約76、約44〜約75、約46〜約70、約50〜約66、約59〜約66又は約62〜約65の範囲の峻度を有し得る。幾つかの実施形態によると、PCC組成物は約20〜約71の範囲、例えば約25〜約50の範囲の峻度を有し得る。幾つかの実施形態では、峻度はPCCの形態によって異なる場合がある。例えば、カルサイトはバテライトとは異なる峻度を有し得る。
【0119】
幾つかの実施形態によると、PCC組成物は約25ミクロン未満、例えば約17ミクロン未満、約15ミクロン未満、約12ミクロン未満又は約10ミクロン未満のトップカット(d
90)粒径を有し得る。幾つかの実施形態によると、PCC組成物は約2ミクロン〜約25ミクロンの範囲、例えば約15ミクロン〜約25ミクロン、約10ミクロン〜約20ミクロン又は約3ミクロン〜約15ミクロンの範囲のトップカット粒径を有し得る。
【0120】
幾つかの実施形態によると、PCC組成物は約4ミクロン未満、例えば約2ミクロン未満、約1ミクロン未満、約0.7ミクロン未満、約0.5ミクロン未満、0.3ミクロン未満又は0.2ミクロン未満のボトムカット(d
10)粒径を有し得る。幾つかの実施形態によると、PCC組成物は約0.1ミクロン〜約4ミクロンの範囲、例えば約0.1ミクロン〜約1ミクロン、約1ミクロン〜約4ミクロン又は約0.5ミクロン〜約1.5ミクロンの範囲のボトムカット粒径を有し得る。
【0121】
PCC組成物はそれらのBET表面積によって付加的に特徴付けることができる。本明細書で使用される場合、BET表面積は固体表面に対する気体分子の物理吸着を説明するBrunauer−Emmett−Teller(BET)を指す。BET表面積は多層吸着を指し、通常は非腐食性ガス(すなわち窒素、アルゴン、二酸化炭素等)を吸着質として採用し、表面積データを決定するものである。BET表面積はPCCの形態によって異なる場合がある。幾つかの実施形態によると、PCCは80m
2/g未満、例えば、50m
2/g未満、20m
2/g未満、15m
2/g未満、10m
2/g未満、5m
2/g未満、4m
2/g未満又は3m
2/g未満のBET表面積を有し得る。幾つかの実施形態では、カルサイトPCC組成物粒子は1m
2/g〜30m
2/g、例えば2m
2/g〜20m
2/g、3m
2/g〜10m
2/g、3m
2/g〜5.0m
2/gの範囲のBET表面積を有し得る。他の実施形態では、カルサイトPCCは1m
2/g〜6m
2/g、1m
2/g〜4m
2/g、3m
2/g〜6m
2/g、又は1m
2/g〜10m
2/g、2m
2/g〜10m
2/g、又は5m
2/g〜10m
2/gの範囲のBET表面積を有し得る。幾つかの実施形態によると、カルサイトPCCは30m
2/g以下のBET表面積を有し得る。バテライトPCCは5m
2/g〜75m
2/g、の範囲のBET表面積を有し得る。或る特定の実施形態では、バテライトPCC組成物粒子は7m
2/g〜18m
2/g、5m
2/g〜20m
2/g又は7m
2/g〜15m
2/gの範囲のBET表面積を有し得る。アラゴナイトPCCはの範囲のBET表面積を有し得る。
【0122】
PCC組成物は、BET表面積とd
50との比率によって付加的に特徴付けることができる。或る特定の実施形態では、バテライトPCC組成物粒子は、1〜6.5、2〜5.5又は2.5〜5のBET表面積とd
50との比率を有する。別の実施形態では、カルサイトPCC組成物粒子は、0.6〜2、0.7〜1.8又は0.8〜1.5のBET表面積とd
50との比率を有する。
【0123】
PCC組成物は、それらのステアリン酸取込み表面積によって付加的に特徴付けることができる。本明細書で使用される場合、ステアリン酸取込み表面積は、ステアリン酸によるPCC組成物の表面処理を指す。制御条件下で、ステアリン酸はPCCの表面上に単分子層を形成するため、ステアリン酸の吸着又は取込みによって表面積に関する情報を与えることができる。ステアリン酸取込み表面積はPCCの形態によって異なる場合がある。幾つかの実施形態によると、PCCは80m
2/g未満、例えば、50m
2/g未満、20m
2/g未満、15m
2/g未満、10m
2/g未満、5m
2/g未満、4m
2/g未満又は3m
2/g未満のステアリン酸取込み表面積を有し得る。幾つかの実施形態では、カルサイトPCC組成物粒子は1m
2/g〜30m
2/g、例えば2m
2/g〜20m
2/g、3m
2/g〜6.0m
2/g、3m
2/g〜5.0m
2/gの範囲のステアリン酸取込み表面積を有する。他の実施形態では、カルサイトPCCは1m
2/g〜6m
2/g、1m
2/g〜4m
2/g、3m
2/g〜6m
2/g、又は1m
2/g〜10m
2/g、2m
2/g〜10m
2/g、又は5m
2/g〜10m
2/gの範囲のステアリン酸取込み表面積を有し得る。幾つかの実施形態によると、カルサイトPCCは30m
2/g以下のステアリン酸取込み表面積を有し得る。バテライトPCCは5m
2/g〜75m
2/g、の範囲のステアリン酸取込み表面積を有し得る。或る特定の実施形態では、バテライトPCC組成物粒子は7m
2/g〜18m
2/g、5m
2/g〜20m
2/g又は7m
2/g〜15m
2/gの範囲のステアリン酸取込み表面積を有する。いくつかの態様においては、アラゴナイトPCCは2m
2/g〜30m
2/gの範囲のBET表面積を有する。
【0124】
幾つかの実施形態では、本明細書のプロセスを用いたPCCの収率は50%超、60%超、80%超又は90%超である。
【0125】
本開示のPCC組成物は粉末、結晶性固体又は分散形態を含むが、これらに限定されない任意の所望の形態とすることができ、すなわち、PCC組成物は液体、例えば水性媒体中に分散させることができる。一実施形態では、分散PCC組成物は分散液の総重量に対して少なくとも約50重量%のPCC、少なくとも約70重量%のPCCを含む。分散PCC組成物は、当該技術分野で現在既知の又は今後発見されるPCCの分散のための分散剤から選ばれ得る少なくとも1つの分散剤を含んでいてもよい。好適な分散剤の例としては、ポリカルボキシレートホモポリマー、少なくとも1つのカルボン酸基及びその水溶性塩で置換されたビニル基及びオレフィン基から選ばれる少なくとも1つのモノマーを含むポリカルボキシレートコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。好適なモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、アンゲリカ酸及びヒドロキシアクリル酸が挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも1つの分散剤が、分散液の総重量に対して約0.01重量%〜約2重量%、約0.02重量%〜約1.5重量%の範囲の量で分散PCC組成物中に存在していてもよい。
【0126】
FGD石膏及び天然炭酸カルシウムから得られた石膏は通常、汚染物質を含有し、白色度及び明度が低い。変色の主要原因には、パイライト及び様々な有機種等の不溶性不純物が含まれ得る。本開示では、石膏は炭酸塩源との反応の前に前処理することができる。一実施形態では、この前処理として濾過又は篩分工程及び/又は鉱酸処理工程が挙げられるが、これらに限定されない。濾過方法は真空濾過であり得るが、これに限定されない。
【0127】
完全に溶解した石膏を濾過又は遠心分離して、低い白色度及び明度をもたらす不純物を除去することができる。濾過方法は真空濾過であり得るが、これに限定されず、当該技術分野で一般的な任意の脱水プロセスを指す場合がある。さらに、大きな汚染物質を篩分によって石膏から除去することができる。代替的には、変色を引き起こす種を除去することによって石膏の白色度及び明度を改善するために硝酸等の鉱酸を用いることができる。鉱酸は石膏中に残存する炭酸塩種を除去するために用いることもできる。したがって、鉱酸を添加して過剰な炭酸塩を除去する方法A及び方法Bに関して、付加的な鉱酸を添加して非炭酸塩汚染物質を除去することができる。付加的に、炭酸塩不純物を除去する方法A及び方法Bの鉱酸添加工程は、低い白色度及び明度をもたらす汚染物質を除去するために使用される鉱酸とは異なっていてもよく、炭酸塩不純物を除去する工程は低い白色度及び明度をもたらす汚染物質を除去する工程の前に行っても、その逆であってもよい。このため、方法A〜方法Iにおいて、完全に溶解した石膏からの濾過、篩分、及び/又は鉱酸の利用によって不純物を除去する工程及び/又は石膏の白色度及び明度を改善する工程を含むように方法を修正し得ることが本開示の範囲内で想定される。幾つかの実施形態によると、PCC組成物は低イオン性不純物を有し得る。幾つかの実施形態によると、低イオン性不純物はPCC又はPCCを含有する最終生成物の電気的特性を改善することができる。この前処理工程が石膏と炭酸塩源、添加剤又はシードとを反応させる前に行われ、白色度及び明度が改善された石膏により、炭酸塩源との反応後に白色度及び明度が清浄石膏と同様のPCC生成物を得ることができることが想定される。得られるPCCの多形及び粒径は、本明細書で開示される方法をそれらの実施形態の1つ以上で用いることで制御することができる。
【0128】
明度は、或る特定の波長(単数又は複数)での物質からの光の方向反射率の尺度を指す。本明細書で使用される場合、ISO明度は、冷白色蛍光と幾らか和らいだ日光との混合光、具体的には特定のスペクトル特徴及び幾何学的特徴、概して約457nmの青色光が当てられる環境において知覚される、実質的に白色又はほぼ白色の物質(すなわち紙)の明度を定量化するISO標準を指す。幾つかの実施形態では、ISO明度は明度の標準試験、例えばASTM D985−97によって決定することができる。幾つかの実施形態によると、PCC組成物又はそれらを含む紙若しくは板紙材料は54以上、例えば65以上、85以上、88以上、90以上、92以上、94以上又は95以上のISO明度を有し得る。
【0129】
特定のサイズ分布の斜方晶沈降炭酸カルシウムは、炭酸カルシウム結晶シードの存在下で炭酸アンモニウムと反応させ、本明細書で開示される反応パラメーターを制御することによって石膏から得ることができる。この方法によって生成する斜方晶PCCは、従来の方法によって作製される斜方晶又は重質炭酸カルシウム(GCC)と同様の特性を有する。
【0130】
斜方晶PCCを得る添加剤の存在又は非存在下での石膏と炭酸塩との反応は、バッチ又は連続プロセスで行うことができる。反応条件の具体的な選択により、生成するPCCの特性の微調整が補助される。以下の点を本明細書で開示される斜方晶PCC作製について制御することができる:石膏及び他の反応物の濃度、各反応物の出発温度、反応温度及び反応時間、乾燥温度、用いられる場合に生成するPCCの焼鈍温度、各溶液についてのpH及びイオン強度の選択及び維持、各々の添加される構成成分の添加速度、並びに用いられる場合にCO
2添加の速度。
【0131】
PCCをステアリン酸、他のステアリン酸塩又は炭化水素種で表面処理して、特定の疎水性レベルを得ることができる。疎水性は、PCC粉末を高相対湿度の雰囲気に24時間以上曝し、水分収着による重量変化を記録する水分取込み(MPU)法を用いて測定することができる。概して、表面処理によって達成可能なMPUの最大の低減が特に有利である。疎水性は接触角によっても測定することができ、試験液(例えば水)の液滴をPCC粉末に垂らし、観察して、液滴が吸収されるか(湿潤)又は測定可能な接触角で安定した液滴が得られるかを確認する。表面処理は、C
6〜C
22脂肪酸又は脂肪酸塩によるドライ又はウェットコーティングを含み得る。かかる処理は当該技術分野で既知であり、ステアリン酸に加えてステアリン酸アンモニウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸等のような材料を含む。脂肪酸/脂肪酸塩は、大半のPCC粒子の表面の大部分をコーティングするのに十分な量で準備する。PCC表面の大部分をコーティングするのに必要とされる疎水化剤の量は、PCC表面積と関連付けられる。一実施形態では、本開示のカルサイトPCCは表面のコーティングに0.5%〜1.0%の疎水化剤を必要とする。別の実施形態では、バテライトPCCは表面のコーティングに2.0%〜3.0%の疎水化剤を必要とする。単一又はブレンドのサイズ分布の処理した及び未処理のPCC又はそのブレンドを様々な用途、例えばレオロジー改質剤としての接着剤及びシーラント、不透明性のための及びエクステンダーとしての塗料及びインクに、紙充填剤として、表面仕上げ及び明度のために、プラスチック中の機能性充填剤、またエクステンダーとして使用することができる。幾つかの実施形態によると、疎水化剤はPCCの表面上に単分子層を形成することができる。幾つかの実施形態によると、疎水化剤の量は、粒子のコーティングのために約0.15m
2/g〜約18m
2/gの範囲、例えば約0.15m
2/g〜約8m
2/g又は約10m
2/g〜約17m
2/gの範囲であり得る。疎水化剤の量はPCCの形態に左右され得る。例えば、カルサイトPCCは粒子のコーティングのために約0.15m
2/g〜約20m
2/gの範囲の量の疎水化剤を有し、バテライトPCCは粒子のコーティングのために約10m
2/g〜約80m
2/gの範囲の量の疎水化剤を有し得る。
【0132】
幾つかの実施形態では、サイズ低減方法はin situで又は回収後に生成物に対して用いられる。サイズ低減方法は超音波処理又は粉砕を含み得る。生成物が凝集として説明することができる可能性が最も高い「部分構造」を示すようであるため、サイズ低減方法により凝集体をそれらの構成要素のビルディングブロックへと分解することができる。幾つかの実施形態によると、超音波を用いて凝集塊を破壊することができる。
【0133】
幾つかの実施形態によると、PCCは粉砕又は磨砕によって選鉱することができる。幾つかの実施形態では、選鉱は磁気分離、漂白又は酸洗浄の1つ以上を含み得る。分離、漂白又は酸洗浄は粉砕/磨砕の前、粉砕/磨砕の後又はその両方で行うことができる。
【0134】
本開示のPCC組成物は任意に少なくとも1つの添加顔料を含み得る。好適な顔料は現在既知のものであっても又は今後発見され得るものであってもよい。例示的な顔料としては、二酸化チタン、焼成粘土、離層粘土、タルク、硫酸カルシウム、他の炭酸カルシウム、カオリン粘土、焼成カオリン、サチン白、プラスチック顔料、アルミニウム水和物及びマイカが挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
顔料は組成物の総重量に対して約70重量%未満の量で本開示のPCC組成物中に存在し得る。本明細書で開示されるPCC組成物の有利な特性に影響を及ぼすことなく又は実質的に影響を及ぼすことなく様々な所望の特性が得られるように、任意の量の任意の少なくとも1つの第2のPCC形態及び任意の少なくとも1つの顔料が当業者により選択されることを理解されたい。
【0136】
天然炭酸カルシウムを沈降炭酸カルシウムへと変換するプロセス
【0137】
本発明は、石膏を製造するために硫酸で天然炭酸カルシウムを処理し、その石膏を沈降炭酸カルシウムための少なくとも一つの炭酸塩源と反応させて、天然炭酸カルシウムを沈降炭酸カルシウムへ変換するためのプロセスに関する。天然炭酸カルシウムは焼成されない。一つの態様においては、炭素フットプリントは、天然炭酸カルシウムを焼成することを含む方法に対して少なくとも5%減少する。
【0138】
天然炭酸カルシウムは、石灰石、大理石又はチョークであり得るが、それらに限定されない。他の態様においては、天然炭酸カルシウムは、ドロマイト石灰石である。ドロマイト生石灰は、水分補給された焼成ドロマイトである(例えば、MgOH及びCaOH)。
【0139】
沈降炭酸カルシウムを製造する従来の方法は、天然炭酸カルシウムを焼成する工程を含み、次いで、消和及び炭酸化を含む。天然炭酸カルシウムを焼成することが要求されるたびに、高温室ガス放出を導き、したがって、そのような従来の焼成法は、ここに記載された方法と比較して高炭素フットプリントを有する。
【0140】
本開示の他の態様においては、天然炭酸カルシウムは焼成されない。本開示はしたがって、天然炭酸カルシウムを硫酸塩で処理し、炭化源との反応を行うことにより、カルシウム源として石灰石、大理石、又はチョークを用いて、制御された多形及び粒径の沈降炭酸カルシウムを製造する低エネルギー方法に関する。一つの態様においては、炭素フットプリントは、天然炭酸カルシウムを焼成することを含む方法に対して、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、及び50%まで、45%まで、40%まで、減少される。
【0141】
硫酸塩で不純物混入炭酸カルシウム源は、硫酸カルシウム及び(石膏)及びいくつかの場合の硫酸マグネシウム(例えば、ドロマイト石灰石は、天然炭酸カルシウムとして用いられる。))を含む、硫酸塩生成物を生じる。一実施態様では、硫酸塩は、硫酸である。天然炭酸カルシウムは、天然炭酸カルシウムに存在するカルシウムのモル当量以上である硫酸のモル当量で処理される。一実施態様では、天然炭酸カルシウム源に存在する炭酸カルシウムの少なくとも50重量%が、処理の際に、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%、石膏へ変換される。
【0142】
石膏を精製するための硫酸及び天然炭酸カルシウム(例えば、石灰石)の使用は、従来知られている。しかしながら、一又はそれ以上の種々のPCC多形を生成するための制御された沈降炭酸カルシウムは、従来記載されていない。例えば、処理方法は、溶液又はニートな硫酸へ、固体、溶液、又は懸濁液としての天然炭酸カルシウムを加える工程を含み得る。別法として、溶液又はニートな硫酸は、固体、溶液又は懸濁液のいずれかとしての天然炭酸カルシウムへ加えられ得る。溶液形態においては、溶液中の硫酸の濃度は、硫酸の少なくともモル当量が天然炭酸カルシウムを処理するために用いられる限り、可変であり得る。例えば、硫酸の溶液は、約5重量%約80重量%のH
2SO
4、又は約20重量%約60重量%のH
2SO
4、又は約30重量%約50重量%のH
2SO
4を含むことができる。硫酸は、純粋又は精製されることができ、別法として、例えば、二酸化チタン製造から得られた硫酸又はFGD副生成物硫酸のような副産物硫酸でもあり得る。処理前に、天然炭酸カルシウムは、重質であり、粗引き(350メッシュより大きい)炭酸カルシウムが用いられ得るとはいえ、350メッシュ未満、325メッシュ未満、300メッシュ未満のメッシュサイズを有する重質であってもよい。天然炭酸カルシウム及び硫酸は、適切な反応容器に流され、2つの流れが接触して反応し得る。別法として、2つの流れは、例えば機械的攪拌により攪拌され得る。硫酸での天然炭酸カルシウムを処理工程は、連続プロセスリアクタ又はバッチリアクタにおけるバッチにおいて連続工程として実行できる。上記した反応工程が、硫酸での天然炭酸カルシウムの処理のために用いられる一方で、多くの他の工程及びパラメーターが使用でき、従来技術として知られている。
【0143】
処理工程が完了した後、製造された石膏は、天然炭酸カルシウムに存在する不純物硫酸に存在する不純物及び形成されるべきPCCの多形のレベルに従って、脱水され、洗浄され、又は双方が行われることができる。
【0144】
石膏は次いで、本記載の方法(方法A〜I)の一つを用いて炭酸塩源と反応され、PCC及び硫酸塩−ベース溶液−フェイズ副産物を製造する。
【0145】
炭酸塩源は、炭酸アンモニウム、ドロマイト、金属炭酸塩、及び二酸化炭素からなる群より選択される少なくとも一つである。一実施態様においては、炭酸塩源は、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、及び重炭酸アンモニウムの炭酸塩混合物であり、重炭酸アンモニウムの量は、炭酸アンモニウムの量以上、又は炭酸塩混合物中の炭酸アンモニウムの量以上である。別の態様においては、炭酸塩源は、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムの炭酸塩混合物であり、重炭酸アンモニウムの量は、炭酸アンモニウムの量又は炭酸塩混合物中の炭酸アンモニウムの量未満である。本開示においては、炭酸塩源に対する石膏のモル比は、1:1.1〜1:3、1:1.3〜1:2.5又は1:1.5〜1:2である。
【0146】
本開示の方法は、さらに、沈降炭酸カルシウムの結晶多形及び粒径を制御する反応前又は反応の際にシードと石膏をシーディングする工程を含み得る。シードは、炭酸カルシウム、ドロマイト、ドロマイト質炭酸塩、硫酸マグネシウム、ヒドロキシマグネシウム、チタニア、シリカ、及び酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも一つである。一態様においては、シードは、石膏に対して、10重量%を超えず、又は、5重量%を超えず、1重量%を超えない。別の態様においては、シードは、石膏に対して、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、又は少なくとも30重量%である。
【0147】
本開示の方法は、さらに、石膏へ少なくとも一つの添加剤を加える工程を含み得る。添加剤は、緩衝剤、分散剤、増粘剤、凝固防止剤、消泡剤、流動剤、湿潤剤、共溶媒、明度エンハンサー又は明度ダンプナー、又は顔料である。特定に態様においては、添加剤は、クエン酸、リン酸、硫酸アンモニウム、又はチオ硫酸ナトリウムである。一態様においては、添加剤の重量%は、石膏に対して、0.1%〜20%、又は0.5%〜10%、又は1%〜6%である。
【0148】
沈降炭酸カルシウムへ天然炭酸カルシウムを変換する方法は、さらに、脱水、乾燥、エージング、表面処理、サイズ減少、加工された炭酸カルシウムを選鉱する工程からなる群より選択された少なくとも一つの方法により沈降炭酸カルシウムを加工する工程を含み得る。一実施態様においては、沈降炭酸カルシウムは、バテライトであり、加工された炭酸カルシウムは、カルサイト又はアラゴナイト又は多角体のブレンドである。
【0149】
本方法により製造された石膏から発生したPCCの多形及び粒径は、一又はそれ以上の態様において、いずれの工程を含む、範囲に開示された方法により制御されることができる。
【0150】
本開示の他の態様によれば、本方法は、炭酸塩源と石膏を反応させる溶液にコア又はシード材料を提供し、該コア材料又はシード材料上へ炭酸カルシウムを沈殿させる工程を含ませ得る。該コア又はシード材料は、例えば、塩酸(HCL)のような希酸に溶解性である。
【0151】
コア材料又はシード材料は、増量剤、を含み得る。いくつかの態様によれば、コア材料は、硫酸バリウムを含み得る。他の局面によれば、コア材料又はシード材料は、AgI、AgCl、AgBr、AgCuS、AgS、Ag
2S、Al
2O
3、AsSb、AuTe
2、BaCO
3、BaSO
4、BaCrO
4、BaO、BeO、BiOCl、(BiO)
2CO
3、BiO
3、Bi
2S
3、Bi
2O
3、CaO、CaF
2、CaWO
4、CaCO
3、(Ca,Mg)CO
3、CdS、CdTe、Ce
2O
3、CoAsS、Cr
2O
3、CuO、Cu
2O、CuS、Cu
2S、CuS
2、Cu
9S
5、CuFeS
2、Cu
5FeS
4、CuS・Co
2S
3、Fe
2+Al
2O
4、Fe
2SiO
4、FeWO
4、FeAs
2、FeAsS、FeS、FeS
2、FeCO
3、Fe
2O
3、α−Fe
2O
3、α−FeO(OH)、Fe
3O
3、FeTiO
3、HgS、Hg
2Cl
2、MgO、MnCO
3、Mn
2S、MnWO
4、MnO、MnO
2、Mn
2O
3、Mn
3O
3、Mn
2O
7、MnO(OH)、CaMoO
4、MoS
2、MOO
2、MOO
3、NbO
4、NiO、NiAs
2、NiAs、NiAsS、NiS、PbTe、PbSO
4、PbCrO
4、PbWO
4、PbCO
3、(PbCl)
2CO
3、Pb
2+2Pb
4+O
4、Sb
2SnO
5、Sc
2O
3、SnO、SnO
2、SrO、SrCO
3、SrSO
4、TiO
2、UO
2、V
2O
3、VO
2、V
2O
5、VaO、Y
2O
3、YPO
4、ZnCO
3、ZnO、ZnFe
2O
4、ZnAl
2O
4、ZnS、ZrSiO
4、ZrO
2、ZrSiO
4、又はそれらの組合せの少なくとも一つを含み得る。さらにらの局面によれば、シード材料又はコア材料は、例えば、(Ba,Sr)SO
4、(Ba,Sr)CO
3又はBa(SO
4,CrO
3)のような、2又はそれ以上の同種ドメインを含み得る。
【0152】
いくつかの態様においては、沈降炭酸カルシウムは、組み合わされた炭酸カルシウム及びシード材料又はコア材料の約10重量%と約25重量%の間であり、例えば、組み合わされた炭酸カルシウム及びシード材料又はコア材料の10重量%と約15重量%の間、約15重量%と約20重量%の間、約20重量%と約25重量%の間、約12重量%と約重量18%の間、又は、約18重量%と約23重量パーセントであり得る。
【0153】
いくつかの態様においては、沈降炭酸カルシウム−コア組成物は、約2.6、3、4、4.5、5又は5.5の下限から、20,15、10、9、8又は7の上限及びそれらの並べ替えの範囲にける比重を有し得る。
【0154】
天然炭酸カルシウムがドロマイト石灰石のような実質的マグネシウム含有物を含む場合、処理は溶液相に溶解された石膏及びマグネシウムを製造する。本開示の方法は、さらに、硫酸マグネシウムと少なくとも一つの炭酸塩源を反応させて、炭酸マグネシウムを製造する工程を含み得る。一態様において、炭酸マグネシウムは、20m
2/g以上、又は25m
2/g以上、又は30m
2/g以上、又は35m
2/g以上、又は40m
2/g以上の表面積を有する。
【0155】
他の局面によれば、本開示は、石膏中間体を介して第1の沈降炭酸カルシウムへ天然炭酸カルシウムを変換することを含む、減少したカーボンフットプリント有する沈降炭酸カルシウムを製造する方法であって、該変換は、第2の沈降炭酸カルシウムへ天然炭酸カルシウムを変換するための前記天然炭酸カルシウムの焼成を含む工程から放出された二酸化炭素の第2の量より少ない二酸化炭素の第1の量を放出する、方法に関する。
【0156】
例示的な沈降炭酸カルシウム化合物
本開示は、バテライト多形を有する沈降炭酸カルシウム化合物に関する。本書に記載されるバテライト沈降炭酸カルシウムは、これまで既知のバテライト沈降炭酸カルシウムと比較して粒径分布(PSD)、峻度及びBET表面積等の新規の構造的特徴を有する。バテライトの特徴については下記表3を参照されたい。
【0158】
PCC組成物は、それらの立方度、すなわち表面積と粒径との比率(すなわち、材料が完全立方にどの程度近いか)に関しても特徴付けることができる。本開示の或る特定の実施形態によると、より低い表面積が有利である。より小さな粒子は通例、はるかに高い表面積を有するが、小さな粒径が多くの種々の用途に有利である。このため、小粒径材料を含み、「通常の」表面積よりも低いPCC生成物が特に有利である。斜方結晶形が、概して立方度に関して好ましい。
【0159】
立方度の定性的な理解の一例が
図14と
図24とを比較することによって示され得る。
図14に、比較的滑らかな平面の粒子面のために比較的低い表面積と粒径との比率を有するPCC組成物を示す。
図24に、対照的に粒子面上の突出のために比較的平面でない面を有するPCC組成物を示し、したがって、示される組成物はより高い表面積及びより低い立方度を有する。
【0160】
図41に直角度の例示的な測定を示す。幾つかの実施形態によると、PCC組成物は約70度〜約110度の範囲の直角度を有し得る。
図41の平面のPCC粒子面同士の角度の5回の測定をIMAGE J分析ソフトウェアを用いて行ったが、その1つを
図41に示す。角度は、画像の面に垂直な面を有する粒子から粒子を無作為に選択することによって測定した。端部間の測定角度は74.6度、105.2度、109.6度、82.6度及び74.3度であった。幾つかの実施形態によると、PCC粒子の直角度は約70度〜約110度、例えば約75度〜約105度又は約80度〜約110度の範囲であり得る。
【0161】
本開示では、生成物の単分散性は結晶サイズ及び多形の均一性を指す。峻度(d
30/d
70×100)は上記で規定されるように粒径分布の釣鐘曲線を指し、単分散性の指標である。本開示では、好ましいPCC生成物は、峻度が30超又は40超又は50超かつ60未満又は更には65未満の単分散である。幾つかの実施形態によると、PCCは約30〜約100の範囲、例えば約34〜約100、約42〜約77の範囲の峻度を有し得る。幾つかの実施形態では、峻度はPCCの形態によって異なる場合がある。例えば、カルサイトはバテライトとは異なる峻度を有し得る。
【0162】
本開示は、バテライト、アラゴナイト、カルサイト(例えば、斜方晶又は偏三角面体晶カルサイト)又は非晶質炭酸カルシウムとして形成され得るPCC生成物の様々なPSD(d
50)及び多形の生成を可能にする。概して、より低い反応温度では、より小さな/より微細な、より高表面積のバテライト「ボール」が得られる。概して、より低過剰の炭酸アンモニウムでは、凝集体内のより小さな/より微細な結晶及びカルサイト/バテライトブレンドからなることが多いより高表面積の生成物が得られる。
【0163】
一実施形態では、本開示のPCC組成物は、組成物の総重量に対して30重量%以上、40重量%以上、60重量%以上、約80重量%以上又は約90重量%以上の単一バテライト結晶多形含量を特徴とする。
【0164】
一実施形態では、バテライトPCCは球状コーラル、楕円形コーラル、斜方晶、花形又はそれらの混合物を含む配置を有する。
【0165】
別の実施形態では、バテライトPCCは2.0ミクロン〜7.0ミクロン、2.4ミクロン〜6.0ミクロン又は2.6ミクロン〜5.5ミクロンの範囲のPSD(d
50)を有する。
【0166】
別の実施形態では、バテライトPCCは30〜100、37〜100、40〜83、42〜71の範囲の峻度(d
30/d
70×100)を有する。
【0167】
別の実施形態では、バテライトPCCは8m
2/g〜18m
2/g、10m
2/g〜17m
2/g又は10.4m
2/g〜16.1m
2/gの範囲のBET表面積を有する。
【0168】
別の実施形態では、バテライトPCCは粒子をコーティングするために約10m
2/g〜約17m
2/gの範囲の量の疎水化剤を有し得る。
【0169】
本開示は、カルサイト多形を有する沈降炭酸カルシウム化合物にも関する。本書に記載のカルサイト沈降炭酸カルシウムは、これまで既知のカルサイト沈降炭酸カルシウムと比較して改善された粒径分布(PSD)、峻度及びBET表面積等の構造的特徴を有する。本明細書のプロセスにより製造されるカルサイトと既知のPCCカルサイトとの比較については表3を参照されたい。
【0170】
一実施形態では、本開示のPCC組成物は組成物の総重量に対して30重量%以上、40重量%以上、60重量%以上、約80重量%以上又は約90重量%以上の単一カルサイト結晶多形含量を特徴とする。
【0171】
一実施形態では、カルサイトPCCは斜方晶配置を有する。概して、結晶化炭酸カルシウムによる石膏のシーディングでは、一貫して斜方晶PCCが得られる。カルサイト、ドロマイト又はマグネサイトによるシーディングでは、斜方晶PCCが得られる。概して、5%超の粗偏三角面体晶PCCによるシーディングでは、より大きな/より粗い、より高表面積の生成物が得られる。概して、5%未満の微細菱面体晶PCCによるシーディングでは、凝集体内でより微細な結晶サイズが得られ、5%超ではより微細な凝集体が得られる。シーディングの非存在下で、炭酸アンモニウム条件は斜方晶PCC形成に影響を与える。
【0172】
一実施形態では、得られる斜方晶PCCは、1μm〜6μmのd
50、91〜56の峻度、及び2m
2/g〜5m
2/gの表面積を有する一貫性がない又は一貫した粒子形状を形成する300nm〜500nmの小さな積層プレートであり得る。
【0173】
下記表4に、上述の方法の様々な例から得られる生成物の特徴を特定する。
【0175】
別の実施形態では、カルサイトPCCは1.8ミクロン〜6.0ミクロン、2.2ミクロン〜5.8ミクロン又は2.8ミクロン〜5.6ミクロンの範囲のPSD(d
50)を有する。
【0176】
別の実施形態では、カルサイトPCCは30〜100、40〜100、50〜83、56〜71の範囲の峻度(d
30/d
70×100)を有する。
【0177】
別の実施形態では、カルサイトPCCは3.0m
2/g〜7.0m
2/g、3.1m
2/g〜6.0m
2/g又は3.5m
2/g〜5.0m
2/gの範囲のBET表面積を有する。
【0178】
別の実施形態では、カルサイトPCCは粒子をコーティングするために約0.15m
2/g〜約8m
2/gの範囲の疎水化剤の量を有し得る。
【0179】
本開示は、アラゴナイト多形を有する沈降炭酸カルシウム化合物にも関する。本書に記載のアラゴナイト沈降炭酸カルシウムは、これまで既知のアラゴナイト沈降炭酸カルシウムと比較して改善された粒径分布(PSD)、峻度及びBET表面積等の構造的特徴を有する。
【0180】
一実施形態では、本開示のPCC化合物は組成物の総重量に対して30重量%以上、40重量%以上、60重量%以上、約80重量%以上又は約90重量%以上の単一アラゴナイト結晶多形含量を特徴とする。
【0181】
幾つかの実施形態によると、本開示のPCC化合物を形成した後、形態を熟成等の後加工技法によって変化させることができる。例えば、幾つかの実施形態によると、非晶質PCCを前駆体として使用して、バテライト、アラゴナイト又はカルサイト等の結晶形態へと変換することができる。幾つかの実施形態によると、バテライト又はアラゴナイト等の準安定性PCCを熟成、例えば湿式熟成によってカルサイトへと変換することができる。熟成によってカルサイトへと変換されるバテライトの量は、熟成条件の特性を調整することによって変更することができる。例えば、熟成は硫酸アンモニウムの量、熟成温度及びウェットケーキ固体の濃度を含む硫酸アンモニウムの存在又は非存在によって変更することができる。幾つかの実施形態によると、約90%未満のバテライトが存在する場合、バテライトはカルサイトへと変換される。約90%以上のバテライトが存在する場合、バテライトは乾燥粉末又はウェットケーキで保持することができる。保持されるバテライトの量は熟成パラメーターに応じて異なり得る。幾つかの実施形態によると、バテライトはバテライトの粉砕又はボールミル粉砕等の機械的プロセスによってカルサイトへと変換することができる。
【0182】
幾つかの実施形態によると、石膏及び炭酸アンモニウムの濃度はバテライトからカルサイトへの変換に影響を与える可能性がある。例えば、より高濃度の石膏及び炭酸アンモニウムでは、より低濃度の石膏及び炭酸アンモニウムを用いて作製されたバテライトPCCよりも安定した(例えば、カルサイトへの変換に耐性を示す)バテライトPCCを作製することができる。例えば、10.7%の石膏及び12.5%の炭酸アンモニウム(1:1.7のモル比(石膏:炭酸アンモニウム))を室温で反応させる場合、反応により硫酸アンモニウムの存在下で24時間以内にカルサイトへと変換されるバテライトが形成される。より高濃度の石膏及び炭酸アンモニウムを反応に使用する場合、作製されるバテライトはより安定している可能性がある。例えば、35%の石膏及び33%の炭酸アンモニウム(1:1.7のモル比(石膏:炭酸アンモニウム))を室温で反応させる場合、反応によりバテライトが形成するが、バテライトは硫酸アンモニウムの存在下で少なくとも24時間安定している。他の実施形態では、石膏又はアンモニウムベースの炭酸塩中に存在する不純物、例えば鉄は本明細書に記載の方法によって作製されるバテライトPCCの安定化を補助し得る。幾つかの実施形態によると、バテライトからカルサイトへの変換はバテライトの貯蔵によって制御することができる。例えば、硫酸アンモニウムを含む液体懸濁液中のバテライトはカルサイトへと変換され得るが、硫酸アンモニウムを含まない固形分約40%〜60%のバテライトのケーキに対して阻害され得る。幾つかの実施形態によると、バテライトからカルサイトへの変換により、形成されるPCCの表面積が低減し得る。例えば、バテライトからカルサイトへの変換によりPCCの表面積が10m
2/g超(バテライト)から1m
2/g未満(カルサイト)へと低減し得る。幾つかの実施形態によると、バテライトからカルサイトへの変換によりPCCの粒径が増大し得る。他の実施形態では、バテライトからカルサイトへの変換はPCCの粒径を顕著に変化させない。他の添加剤、例えばクエン酸はバテライトからカルサイトへの変換を阻害し得る。例えば、バテライト上の約5重量%のクエン酸はカルサイトへの変換を阻害し得る。幾つかの実施形態によると、重炭酸アンモニウムの添加はバテライトからカルサイトへの変換を加速し、約0.5重量%〜約10重量%の濃度の硫酸アンモニウムは、カルサイトへの変換を遅らせる又は阻害する可能性がある。
図39に供給濃度及び熟成プロセスを変更することによるPCCの形態に対する例示的な影響を示す。
図40にPCCに対する供給組成物の例示的な影響を示す。
【0183】
幾つかの実施形態によると、PCC化合物を形成する方法は、例えば管型反応器を用いて連続プロセスで行うことができる。幾つかの実施形態では、連続プロセスにおいて、キャビテーションを生じるように反応物を混合することができる。
【0184】
商業的用途
或る特定の実施形態によると、本開示は、その実施形態の1つ以上における本明細書に記載のバテライト、カルサイト及び/又はアラゴナイト沈降炭酸カルシウム化合物の商業的用途に関する。
【0185】
第1の態様によると、本開示は、その実施形態の1つ以上におけるバテライト、カルサイト及び/又はアラゴナイト沈降炭酸カルシウム化合物を含有するポリマーフィルム又は通気性ポリマーフィルムに関する。
【0186】
第2の態様によると、本開示は、その実施形態の1つ以上におけるバテライト、カルサイト及び/又はアラゴナイト沈降炭酸カルシウム化合物を含有するパルプ又は紙の材料に関する。幾つかの実施形態では、紙製品は沈降炭酸カルシウムを充填剤又はコーティングとして含む。幾つかの実施形態では、紙材又は紙製品は紙タオル、吸水クロス(absorbent cloth)又は生理用ナプキンであり得る。
【0187】
第3の態様によると、本開示は、その実施形態の1つ以上におけるバテライト、カルサイト及び/又はアラゴナイト沈降炭酸カルシウム化合物を含有する通気性ポリマーフィルムを含むおむつに関する。
【0188】
第4の態様によると、本開示は、その実施形態の1つ以上における本開示のPCCを充填剤として含む充填ポリマー組成物に関し、ポリマーは任意の所望のポリマー又は樹指とすることができる。
【0189】
幾つかの実施形態によると、PCC組成物は様々な用途の充填剤として使用することができる。例示的な用途としては、プラスチック用の充填剤又は添加剤、紙コーティング、接着剤、シーラント、コーキング材、紙、モールディング、コーティング、塗料、ゴム製品及びコンクリートが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、PCC組成物はポリ塩化ビニル(PVC)、可塑化PVC(pPVC)、ポリプロピレン(PP)、ゴム、コーティング、塗料、セラミック、紙又はコンクリートの充填剤又は添加剤として使用することができる。幾つかの例示的な使用としては、PVCパイプ又はモールディング、pPVC、塗料(例えば、外装塗料又は路面塗料)、タイルコーティング(例えば天井タイルコーティング)、装飾コーティング、モールディング(例えばPVCモールディング、pPVCモールディング又はPPモールディング)、シート成形化合物、バルク成形化合物、接着剤、コーキング材、シーラント、ゴム製品、紙、紙充填剤、紙コーティング又はコンクリートの充填剤又は添加剤としての使用が挙げられる。幾つかの実施形態によると、PCC組成物の比較的低い表面積は充填剤として好適であり、改善された分散性を有し得る。PCC組成物は概して、比較的低い明度(例えば、65のISO明度)から比較的高い明度(例えば、90超のISO明度)を有し、一貫した明度を有し得るため、或る用途での所与の製品の色を改善することができる。本明細書で開示されるPCC組成物は、他の炭酸カルシウム生成物、例えば重質炭酸カルシウム(GCC)と比較した場合に比較的低い表面積を有し得る。比較的低い表面積は、PCCによる添加剤の低い吸着、PCCの表面の処理のための添加剤の量の低減、及び/又はPCCによる低い吸湿性に寄与し得る。幾つかの実施形態によると、比較的低い表面積は、PCCを添加する材料の比較的低い粘度及び/又は例えばポリマーフィルム中の充填剤又は添加剤として使用する場合の「活性」粒子の量の増大に寄与し得る。幾つかの実施形態によると、PCCの広い粒径分布は粒子充填を増大し、PCCの急な又は狭い粒径分布は粒子充填を減少させ得る。幾つかの実施形態によると、比較的小さなPCC粒径はPCC組成物を含有するコーティング、例えば紙コーティング又は塗料の光沢を改善し、比較的小さな粒径はまた、PCC組成物を含有する材料、例えば成形物又はコーティングの耐衝撃性を改善し得る。
【0190】
幾つかの実施形態によると、本明細書に記載のPCC粒子の峻度及び/又は立方度により粉末の取扱い特性を改善することができ、例えばPCC粒子の峻度及び/又は立方度により粉末の流動性を改善することができる。
【0191】
幾つかの実施形態によると、本明細書に記載のPCC組成物は油吸収特性を改善し得る。油吸収の改善により、例えばPCC組成物を組み込む塗料又は粉末の流動性が改善し得る。
【0192】
幾つかの実施形態によると、バテライトPCC組成物等のPCC組成物は、薬物送達、医療機器、バイオセンシング、封入、追跡、ポリマーフィルター、フィルムにおけるキャビテーション増強、重金属分離、造核剤(例えば発泡造核剤)、研磨剤、FGD供給材料、合成紙構成成分又はエマルション系充填剤を含むが、これらに限定されない様々な用途に使用することができる。幾つかの実施形態では、バテライトPCC等のPCCは、薬物送達剤又は構成成分として使用することができる。例えば、バテライトは、例えばバテライトの細孔への小分子又はタンパク質の吸収又は吸着のプラットホームとして使用することができる。バテライトは、幾つかの実施形態では、薬物封入又は薬物送達用の微小粒子又はマイクロカプセルとして使用することもでき、例えば、バテライトはインスリン、ウシ血清アルブミン及びリゾチームを含むが、これらに限定されない分子を封入するために使用することができる。幾つかの実施形態では、封入はバテライトからカルサイトへのPCCの相転移中に行うことができる。かかる封入により封入された分子の制御放出が促進され得る。幾つかの実施形態では、封入はバテライトの細孔への分子の吸収又は吸着によって行うことができる。他の実施形態では、封入はPCC粒子の形成中の直接封入によって行うことができる。他の実施形態では、封入は中空PCC粒子によって行うことができる。
【0193】
幾つかの実施形態によると、バテライト等のPCCは制御放出剤として使用することができる。例えば、バテライトを強酸性環境に曝して放出を制御することができる。かかる環境に曝されたバテライトは破壊され、それにより封入剤又は封入、吸収若しくは吸着分子を放出し得る。幾つかの実施形態によると、バテライトは分子の放出を制御する鋳型タンパク質構造として働くことができる。幾つかの実施形態によると、バテライトは架橋ポリマー、例えばバイオポリマーの鋳型として使用することができる。幾つかの実施形態では、ポリマーはバテライトを鋳型として用いて架橋することができる。その後のバテライトの除去は、バテライト鋳型と同様の構造(例えば球状)を有する架橋ポリマーをもたらし得る。
【0194】
幾つかの実施形態によると、バテライト等のPCCは医療機器、例えば埋め込み型医療機器に使用することができる。幾つかの実施形態では、バテライトは、例えばバテライトの高い表面積により迅速な生体吸収を示し得る。迅速な吸収のために、バテライトは生物学的用途、例えば骨再生のためのカルシウム源として使用することができる。バテライトはリン酸骨塩、例えばヒドロキシアパタイト等の骨塩の生成を補助することもできる。幾つかの実施形態では、ヒドロキシアパタイト又は他の小分子はバテライト若しくはPCCに封入するか、又はバテライトの表面に(化学的又は物理的に)結合することができる。バテライトからカルサイトへの変換は、幾つかの実施形態では、PCCの骨への結合も促進し得る。
【0195】
幾つかの実施形態によると、バテライト等のPCCをバイオセンシング用途に使用することができる。例えば、バテライトをpH変化のバイオセンシング又はイオンセンシングに使用することができる。幾つかの実施形態では、蛍光pHセンサーを例えば追跡用途においてバテライトに封入することができる。
【0196】
幾つかの実施形態によると、バテライト等のPCCはポリマーの充填剤として使用することができる。例えば、バテライトはポリマーフィルム、例えばキャビテーション増強に使用することができる。幾つかの実施形態では、バテライトは細孔のより均一なキャビテーションを促進し、フィルムの通気性を増大し得る。
【0197】
幾つかの実施形態によると、バテライト等のPCCにより重金属等の金属を封入することができる。例えば、封入はバテライトからカルサイトへの相変化によって行うことができる。
【0198】
幾つかの実施形態によると、バテライト等のPCCは、造核剤として使用することができる。幾つかの実施形態では、バテライトは発泡造核剤として働くことができる。
【0199】
幾つかの実施形態によると、バテライト等のPCCを研磨剤、例えば洗浄用研磨剤として使用することができる。
【0200】
幾つかの実施形態によると、バテライト等のPCCをFGDプロセスの供給材料として使用することができる。幾つかの実施形態では、バテライトの表面積を増大することで反応性を改善し、及び/又は反応速度を増大することができる。例えば、バテライトによりFGDプロセスにおいて生成する硫酸を中和することができる。
【0201】
幾つかの実施形態によると、本開示に記載されるようなバテライトPCC組成物の特性は様々な用途に有益であり得る。例えば、多形シフトは剪断及び/又は熱の下で誘導することができる。例えば、バテライトをニードル状粒子又は斜方晶粒子へと変換することができる。多形シフトは、幾つかの実施形態では、界面活性剤又は高分子の存在によって影響を受ける場合がある。多形シフトは、バテライト構造への金属又は他のイオン等の混入によっても影響を受ける場合がある。例えば、多形変化は界面活性剤の使用、金属の存在下でのバテライトの反応又は添加剤の使用によって軽減し得る。添加剤としては、バイオミネラリゼーションのための酸又は添加剤、例えばオボアルブミン、グルタミン酸又はアスパラギン酸を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0202】
下記実施例は、煙道ガスを脱硫して石膏を形成し、それにより得られる石膏又は天然炭酸カルシウムから得られた石膏を所望の多形及び結晶サイズを有する沈降炭酸カルシウムへと変換するプロセスの例を更に説明することを意図したものである。
【実施例】
【0203】
実施例1
石膏又は他の硫酸塩を、固形分35%の水又は30%〜35%硫酸アンモニウム溶液中でスラリー化した。炭酸アンモニウムを、反応のために高温で水に1:1.7の(石膏:炭酸アンモニウム)モル比をもたらす濃度で溶解した。代替的な炭酸塩供給材料は、反応のために室温で水に1:1.7の(硫酸塩:炭酸塩)モル比をもたらす量で溶解した。硫酸塩スラリーと炭酸塩溶液とを混合し、少なくとも10分間反応させた。次いで、スラリーを濾過し、スラリーケーキを水で洗浄した。反応ケーキ及びデカントした液体をFTIR、DSC、SEM、Sedigraph及びBET表面積分析によって化学的及び物理的に分析した。このプロセスに関与する反応を表1及び表2に記載する。
【0204】
実施例2
水酸化アンモニウム及びCO
2からの炭酸アンモニウム作製に関与する反応のために、硫酸塩を上記のように周囲温度及び圧力でスラリー化した。水酸化アンモニウムを、混合物を反応器に投入する直前に硫酸塩スラリーに添加した。反応器を覆った後、選択温度まで撹拌しながら加熱又は冷却した。CO
2を撹拌しながら最低1時間反応器にバブリングした。1時間の反応時間の後、スラリーのごく一部を取り出し、PCCへの完全な変換をフェノールフタレイン色変化によって確認した。反応の完了時に、スラリーを反応器から取り出し、濾過し、洗浄し、上記のように分析した。このプロセスに関与する反応を表1に記載する。
【0205】
沈降炭酸カルシウムを有する例示的なコア材料
幾つかの実施形態によると、本開示に開示される方法の1つ以上を用いて、PCCをコア材料に沈殿させることができる。例えば、PCCにより有益な特性をコア材料に付与する表面層又はコーティングを形成することができる。プロセスは、幾つかの実施形態では、コア材料を溶液から沈殿させるために用いることができ、ここで沈殿するコア材料はPCC層又はコーティングを有する。「層」又は「コーティング」という単語の使用は、コア材料の表面の少なくとも一部に形成される沈降炭酸カルシウム相を含むことが理解される。幾つかの実施形態では、PCC層又はコーティングはコア材料の表面の半分又は実質的に全てを覆うことができる。コア材料は、炭酸カルシウムでコーティングされた組成物のコアを形成することができる。
【0206】
幾つかの実施形態によると、コア材料は掘削流体に使用される増量剤を含み得る。増量剤は酸化鉄、例えばヘマタイト(Fe
2O
3)を含み得る。しかしながら、他の増量剤、例えばAgI、AgCl、AgBr、AgCuS、AgS、Ag
2S、Al
2O
3、AsSb、AuTe
2、BaCO
3、BaSO
4、BaCrO
4、BaO、BeO、BiOCl、(BiO)
2CO
3、BiO
3、Bi
2S
3、Bi
2O
3、CaO、CaF
2、CaWO
4、CaCO
3、(Ca,Mg)CO
3、CdS、CdTe、Ce
2O
3、CoAsS、Cr
2O
3、CuO、Cu
2O、CuS、Cu
2S、CuS
2、Cu
9S
5、CuFeS
2、Cu
5FeS
4、CuS・Co
2S
3、Fe
2+Al
2O
4、Fe
2SiO
4、FeWO
4、FeAs
2、FeAsS、FeS、FeS
2、FeCO
3、Fe
2O
3、α−Fe
2O
3、α−FeO(OH)、Fe
3O
3、FeTiO
3、HgS、Hg
2Cl
2、MgO、MnCO
3、Mn
2S、MnWO
4、MnO、MnO
2、Mn
2O
3、Mn
3O
3、Mn
2O
7、MnO(OH)、CaMoO
4、MoS
2、MOO
2、MOO
3、NbO
4、NiO、NiAs
2、NiAs、NiAsS、NiS、PbTe、PbSO
4、PbCrO
4、PbWO
4、PbCO
3、(PbCl)
2CO
3、Pb
2+2Pb
4+O
4、Sb
2SnO
5、Sc
2O
3、SnO、SnO
2、SrO、SrCO
3、SrSO
4、TiO
2、UO
2、V
2O
3、VO
2、V
2O
5、VaO、Y
2O
3、YPO
4、ZnCO
3、ZnO、ZnFe
2O
4、ZnAl
2O
4、ZnS、ZrSiO
4、ZrO
2、ZrSiO
4、又はそれらの組合せを使用することができる。幾つかの実施形態によると、コア材料は2つ以上の均一なドメイン、例えば(Ba,Sr)SO
4、(Ba,Sr)CO
3又はBa(SO
4,CrO
3)を含み得る。幾つかの実施形態では、硫酸バリウムは炭酸カルシウムを沈殿させる増量剤として使用することができる。
【0207】
増量剤への炭酸カルシウムの沈殿により増量剤に有益な特性を付与することができる。例えば、酸化鉄及び硫酸バリウム等の増量剤は炭酸カルシウムよりも密度が高く、したがって掘削流体等の流体に添加した場合に望ましい高密度化剤をもたらす。これらの増量剤は単独で高い硬度も有するため、地中の機械類及び層に対して研磨性である。結果として、増量剤は使用中に機械類の摩耗又は腐食を引き起こす可能性がある。炭酸カルシウムを酸化鉄又は他の増量剤上に沈殿させることによって、炭酸カルシウム層の比較的低い硬度(例えば、炭酸カルシウムの約3モース硬度に対してヘマタイトの約5.5モース硬度)のために増量剤の研磨性が低減することで、増量剤の使用中に引き起こされる研摩が低減し得る。
【0208】
幾つかの実施形態によると、炭酸カルシウムコーティングの量は、得られる作用物質の所望の比重をもたらすように適合させることができる。例えば、PCCでコーティングされたヘマタイト増量剤は、炭酸カルシウムとコア材料との比重の間のPCCでコーティングされたヘマタイトの比重をもたらす量のPCCを有し得る。増量剤の比重の修正により増量剤を特定の用途に適合させることが可能となり得る。
【0209】
増量剤の選択は、対象とする用途に基づいて決定してもよい。例えば、炭酸カルシウム及び酸化鉄は希酸、例えば希塩酸(HCl)に溶解可能である。同様の溶解特性を有する増量剤及びコーティングを選択することで、増量剤及びコーティングの両方の除去が可能となり、増量剤を除去するために井戸に希酸で「衝撃を与える」ことによって炭化水素流を増大することができる。
【0210】
様々なコア材料への炭酸カルシウムの沈殿により、増量剤のより広い粒径分布も可能となる。粒径分布は、粒子のコーティングに使用する増量剤のサイズ又はPCCの量によって制御され得る。
【0211】
幾つかの実施形態によると、炭酸カルシウムを沈殿させる方法は、溶液中にコア材料を準備することと、硫酸カルシウムを溶液に添加することと、炭酸塩源を溶液に添加することと、炭酸カルシウムをコア材料に沈殿させることとを含み得る。幾つかの実施形態によると、炭酸塩源は炭酸アンモニウムを含み得る。
【0212】
幾つかの実施形態によると、沈降炭酸カルシウムはカルシウムと少なくとも1つの他の金属とを含有する炭酸塩材料を含み得る。例えば、沈降炭酸カルシウムはドロマイト(CaMg(CO
3)
2)を含み得る。
【0213】
幾つかの実施形態によると、コア材料は希酸、例えば塩酸(HCl)に溶解可能であり得る。
【0214】
幾つかの実施形態によると、コア材料は増量剤を含み得る。幾つかの実施形態によると、コア材料は酸化鉄、例えばヘマタイトを含み得る。幾つかの実施形態によると、コア材料は硫酸バリウムを含み得る。
【0215】
幾つかの実施形態によると、沈降炭酸カルシウムは、炭酸カルシウム及びコア材料を合わせて約10重量%〜約25重量%、例えば炭酸カルシウム及びコア材料を合わせて約10重量%〜約15重量%、約15重量%〜約20重量%、約20重量%〜約25重量%、約12重量%〜約18重量%又は約18重量%〜約23重量%であり得る。
【0216】
幾つかの実施形態によると、沈降炭酸カルシウム−コア組成物は約2.6、3、4、4.5、5又は5.5の下限から約20、15、10、9、8又は7の上限及びその組合せを有する範囲の比重を有し得る。
【0217】
幾つかの実施形態によると、沈降炭酸カルシウム−コア組成物は掘削用途への使用に好適であり得る。例えば、沈降炭酸カルシウム−コア組成物は掘削流体中の増量剤、例えば掘削泥水への添加剤としての使用に好適であり得る。
【0218】
実施例3
例示的な炭酸カルシウムでコーティングされたヘマタイトを、硫酸カルシウムを炭酸アンモニウム溶液と反応させることによって調製した。まず、シグマアルドリッチ社製の6.30グラムの硫酸カルシウムを250mLの水と25℃で30分間混合し、スラリーを形成した。次に、20グラムのヘマタイトをスラリーに添加し、混合して、84.5重量%対15.5重量%のヘマタイトとPCCとの特定の比率を維持した。次いで、5.97グラムの炭酸アンモニウムを250mLの水に溶解し、即座にスラリーに添加した。最終混合物を1時間混合し、PCCをヘマタイト上に沈殿させた。混合後に混合物を濾過し、洗浄して、過剰な硫酸アンモニウムを除去した。PCCでコーティングされたヘマタイトを含有する得られるケーキを回収した。
【0219】
上記の記載のいずれも、特許請求の範囲を任意の特定の構成成分の組成又は構造に限定することを意図するものではない。多くの置換、付加又は修正が本開示の範囲内で企図され、当業者に明らかである。本明細書に記載の実施形態は単に例示として提示され、特許請求の範囲を限定するために用いられないものとする。