特許第6802174号(P6802174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802174
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/06 20060101AFI20201207BHJP
   A42B 3/12 20060101ALI20201207BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20201207BHJP
   F16F 7/108 20060101ALI20201207BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   A42B3/06
   A42B3/12
   F16F7/00 B
   F16F7/108
   F16F15/02 C
【請求項の数】44
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-544354(P2017-544354)
(86)(22)【出願日】2016年2月17日
(65)【公表番号】特表2018-511711(P2018-511711A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(86)【国際出願番号】IB2016000333
(87)【国際公開番号】WO2016132227
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2019年2月14日
(31)【優先権主張番号】2015900577
(32)【優先日】2015年2月19日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】517287785
【氏名又は名称】ストラテジック スポーツ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】STRATEGIC SPORTS LIMITED
(73)【特許権者】
【識別番号】509353975
【氏名又は名称】モーガン、 ドナルド エドワード
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【弁理士】
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】モーガン、 ドナルド エドワード
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0115686(US,A1)
【文献】 国際公開第2006/022680(WO,A1)
【文献】 特表2013−529263(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0198604(US,A1)
【文献】 米国特許第05794272(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/00− 3/32
F16F 7/00− 7/14
F16F 15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットであって、
硬質の外殻と、
前記硬質の外殻の内面と接触する圧縮性ライナーと、
前記圧縮性ライナーの内面と接触するコンフォートライナーであって、少なくとも前記圧縮性ライナーを通って画定される少なくとも1つの緩衝穴が、長軸を中心として第1の端部から第2の端部まで延在し、長軸が前記硬質の外殻、前記圧縮性ライナーおよび前記コンフォートライナーを通って延びている、コンフォートライナーと、
対応する緩衝穴に配置される少なくとも1つのエネルギー緩衝装置であって第1の端部から第2の端部まで長軸と共軸に延び、前記硬質の外殻から内側に間隔をおいて配置されかつ対応する緩衝穴内で横方向に変位可能であるつり下げられた振子塊と、振子塊に弾性的に結合されると共に振子塊から内側に間隔をおいて配置された頭部安定手段とを有し、頭部安定手段はヘルメットの着用者の頭部と係合するように構成されている、少なくとも1つのエネルギー緩衝装置と、を備え
前記硬質の外殻に対して外側から第1の方向に加えられた斜めの力に応じて、前記硬質の外殻、前記圧縮性ライナー、前記コンフォートライナーおよび前記対応する緩衝穴が、それらの間で相互に横変位することなく第1の方向に共に変位するように構成されており、前記緩衝穴の中心は前記振子塊から離れて第1の方向に横変位するが、前記頭部安定手段は静止状態を保つ、ヘルメット。
【請求項2】
前記少なくとも1つのエネルギー緩衝装置がさらに
前記対応する緩衝穴に対して固着される外側固定具と、
前記外側固定具前記振子塊に弾性的に結合する外側可撓首部と、
前記振子塊に接続される内側可撓首部と、
前記内側可撓首部において前記振子塊に弾性的に結合され、該内側可撓首部と前記頭部安定手段との間に延在する弾性部材と、を含む、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項3】
前記弾性部材が長手方向および横方向おいて長軸と位置合わせされる中立位置を有し、長軸に沿ってその長さを減少させるように中立位置から長手方向に圧縮可能であり、長軸に沿ってその長さを増加させるように長手方向に拡張可能であり、その両端を互いに横方向に変位させるように長軸の周りで可撓である、請求項に記載のヘルメット。
【請求項4】
前記外側固定具、前記振子塊、前記頭部安定手段、前記弾性部材のそれぞれが各自の剛性を有し、前記外側固定具が前記振子塊、前記弾性部材、前記頭部安定手段よりも高い剛性を有する、請求項に記載のヘルメット。
【請求項5】
前記少なくとも1つのエネルギー緩衝装置がゴム、ポリウレタン、ウレタンフォーム、膨張性非ニュートン流体、および粘弾性非ニュートンシリコーンのうちの少なくとも1つから成る、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項6】
前記外側固定具が該外側固定具を通る少なくとも1つの通気穴を画定し、前記対応する緩衝穴に空気を通過させる、請求項2に記載のヘルメット。
【請求項7】
衝撃時に前記外殻に対して外側から加えられた前記斜めの力に応じて、前記振子塊が前記緩衝穴に対して横方向に変位して、前記弾性部材が長軸に対して斜めに偏向する、請求項に記載のヘルメット。
【請求項8】
前記外殻に外側から加えられた前記斜めの力に応じて、前記振子塊が前記ヘルメットの着用者の頭部と係合する前記頭部安定手段に対して横方向に変位する、請求項に記載のヘルメット。
【請求項9】
加えられた斜めの力に応じて、前記振子塊が前記緩衝穴内で横方向に振動して、衝撃のエネルギーの放散を促進する、請求項に記載のヘルメット。
【請求項10】
加えられた斜めの力に応じて、前記振子塊が前記緩衝穴の内面に接触する、請求項に記載のヘルメット。
【請求項11】
前記振子塊が前記圧縮性ライナーと接する、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項12】
前記弾性部材の角変位が、衝撃のエネルギーを部分的に放散させる、請求項に記載のヘルメット。
【請求項13】
停止状態において、前記振子塊が前記緩衝穴から横方向に離して配置される、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項14】
複数の緩衝穴にそれぞれ配置される複数の緩衝装置と、
前記複数の緩衝装置を共に連結する複数の可撓ストラップと、
をさらに備える、請求項2に記載のヘルメット。
【請求項15】
各ストラップの各端が、前記頭部安定手段の一つにそれぞれ連結される、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項16】
複数の緩衝穴にそれぞれ配置される複数の緩衝装置と、
前記複数の緩衝装置を共に連結する複数の非弾性ストラップと、
をさらに備える、請求項に記載のヘルメット。
【請求項17】
前記複数の緩衝装置が少なくとも5つの緩衝装置を含み、1つの緩衝装置が前記ヘルメットの冠部に配置され、4つの緩衝装置が前記冠部の周囲に正方形パターンで配置される、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項18】
前記弾性部材が管状である、請求項に記載のヘルメット。
【請求項19】
前記少なくとも1つのエネルギー緩衝装置が、前記硬質の外殻に接触した状態で前記第1の端部から前記コンフォートライナーにおける前記第2の端部まで長手方向に延び、前記振子塊が該第1の端部と第2の端部の中間に位置する、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項20】
前記振子塊が、前記長軸を中心とする円形ディスクであり、前記対応する緩衝穴内で前記外側可撓首部から外側に延びる、請求項2に記載のヘルメット。
【請求項21】
ヘルメットであって、
硬質の外殻と、
前記硬質の外殻の内面と接触する圧縮性ライナーと、
前記圧縮性ライナーの内面と接触するコンフォートライナーであって、緩衝穴が長軸に沿って長手方向に前記硬質の外殻、前記圧縮性ライナー、前記コンフォートライナーを通って画定されるコンフォートライナーと、
前記緩衝穴に配置され、前記外殻から前記コンフォートライナーまで長手方向に延在する振子型緩衝システムと、を備え、
前記振子型緩衝システムが、
前記外殻に装着される外側圧縮性ディスクと、
前記外側圧縮性ディスクに結合されるシャフトまたはロッドであって、シャフトまたはロッドに結合される内側圧縮性ディスクまで長手方向内方に延在するシャフトまたはロッドと、
前記圧縮性ライナーに装着される前記内側圧縮性ディスクと、
前記内側圧縮性ディスクに弾性的に結合され、前記内側圧縮性ディスクから長手方向かつ内側に間隔をおいて配置され、前記ヘルメットの着用者の頭部と係合するように構成される頭部安定手段と、を備える、ヘルメット。
【請求項22】
前記シャフトまたはロッドが剛体であるまたは圧縮性を有する、請求項21に記載のヘルメット。
【請求項23】
前記外側圧縮性ディスクと前記内側圧縮性ディスクが、前記緩衝穴の内面に装着される、請求項21に記載のヘルメット。
【請求項24】
前記内側圧縮性ディスクと前記頭部安定手段との間に延在する弾性部材をさらに備え、前記弾性部材が前記コンフォートライナー内の空間に埋め込まれる、請求項21に記載のヘルメット。
【請求項25】
前記弾性部材が、長手方向および横方向において長軸と位置合わせされる中立位置を有し、長軸に沿ってその長さを減少させるように中立位置から長手方向に圧縮可能であり、長軸に沿ってその長さを増加させるように長手方向に拡張可能であり、その両端を互いに横方向に変位させるように長軸の周りで可撓である、請求項24に記載のヘルメット。
【請求項26】
前記振子型緩衝システムが、ゴム、ポリウレタン、ウレタンフォーム、膨張性非ニュートン流体、および粘弾性非ニュートンシリコーンのうちの少なくとも1つから成る、請求項21に記載のヘルメット。
【請求項27】
前記シャフトまたはロッド、前記内側圧縮性ディスク、および前記外側圧縮性ディスクが、共軸に配列される、請求項22に記載のヘルメット。
【請求項28】
停止状態において、前記内側圧縮性ディスクが、前記緩衝穴と共軸に配列され、かつ、該緩衝穴内で非圧縮状態である、請求項21に記載のヘルメット。
【請求項29】
複数の緩衝穴にそれぞれ配置される複数の振子型緩衝システムと、
前記複数の振子型緩衝システムを共に連結する複数の可撓ストラップと、
複数の頭部安定手段と、
をさらに備える、請求項21に記載のヘルメット。
【請求項30】
各可撓ストラップのそれぞれの端部が、前記複数の頭部安定手段の1つに接続される、請求項29に記載のヘルメット。
【請求項31】
前記硬質の外殻に対して外側から第1の方向に加えられた斜めの力に応じて、前記硬質の外殻、前記圧縮性ライナー、前記コンフォートライナーおよび前記緩衝穴が、それらの間で相互に横変位することなく第1の方向に共に変位するように構成されており、前記内側圧縮性ディスクは第1の方向とは反対の第2の方向に圧縮されるが、前記頭部安定手段は静止状態を保つ、請求項21に記載のヘルメット。
【請求項32】
前記加えられた斜めの力に応じて、前記シャフトまたはロッドが前記第2の方向に横変位し、前記内側および外側圧縮性ディスクが該第2の方向において横方向に圧縮される、請求項31に記載のヘルメット。
【請求項33】
前記加えられた斜めの力に応じて、圧縮された前記内側圧縮性ディスクが前記緩衝穴内で横方向に振動して、衝撃のエネルギーの放散を促進する、請求項31に記載のヘルメット。
【請求項34】
ヘルメットであって、
外殻と、
前記外殻の内面と接触する圧縮性ライナーと、
前記圧縮性ライナーの内面と接触するコンフォートライナーであって、前記圧縮性ライナーおよびコンフォートライナーの少なくとも一方を通って画定される少なくとも1つの緩衝穴が、前記圧縮性ライナーを貫通する長手方向に延びる中央軸を有しかつ該中央軸を中心に延在する、コンフォートライナーと、
対応する緩衝穴に配置される少なくとも1つのエネルギー緩衝装置であって、第1の端部と第1の端部から長手方向に離間した第2の端部とを有し、第1の端部と第2の端部との間で対応する緩衝穴と共軸に長手方向に延び、第1の端部と第2の端部との間に位置する振子塊を有し、振子塊は長手方向に延びる前記中央軸を横断する方向において対応する緩衝穴内で変位可能である、少なくとも1つのエネルギー緩衝装置と、を備え、
前記少なくとも1つのエネルギー緩衝装置が、
前記対応する緩衝穴に対して固着される外側固定具と、
前記外側固定具を前記振子塊に弾性的に結合する外側可撓首部と、
前記振子塊に結合され、前記振子塊から長手方向かつ内側に間隔をおいて配置され、前記ヘルメットの着用者の頭部と係合するように構成される頭部安定手段と、
前記振子塊を前記頭部安定手段に弾性的に結合する内側可撓首部と、を備え、
前記外殻に対して外側から第1の方向に加えられた斜めの力に応じて、前記外殻、前記圧縮性ライナー、前記コンフォートライナーおよび前記対応する緩衝穴が、それらの間で相互に横変位することなく第1の方向に共に変位するように構成されており、前記緩衝穴の中心は前記振子塊から離れて第1の方向に横変位するが、前記頭部安定手段は静止状態を保つ、ヘルメット。
【請求項35】
前記少なくとも1つのエネルギー緩衝装置がさらに、
前記外側可撓首部と振子塊との間で弾性的に結合されるシャフトまたはロッドであって、中立位置において、シャフトまたはロッドが結合される前記振子塊に対して、長手方向内側および前記中央軸と共軸に延在するシャフトまたはロッドをさらに含む、請求項34に記載のヘルメット。
【請求項36】
前記振子塊が、前記中央軸を中心に位置し、かつ、前記対応する緩衝穴内で前記シャフトまたはロッドから外側に延びる、請求項35に記載のヘルメット。
【請求項37】
弾性部材が、前記内側可撓首部と頭部安定手段との間に延び、長手方向および横方向において長手方向に延びる前記中央軸と位置合わせされる中立位置を有し、前記中央軸に沿ってその長さを減少させるように中立位置から長手方向に圧縮可能であり、前記中央軸に沿ってその長さを増加させるように長手方向に拡張可能であり、その両端を互いに横方向に変位させるように前記中央軸の周りで可撓である、請求項34に記載のヘルメット。
【請求項38】
ヘルメットであって、
外殻と、
前記外殻の内面と接触する圧縮性ライナーと、
前記圧縮性ライナーの内面と接触するコンフォートライナーであって、少なくとも前記圧縮性ライナーを通って画定される少なくとも1つの緩衝穴が、長軸を中心として第1の端部から第2の端部まで延在し、長軸が前記外殻、前記圧縮性ライナーおよび前記コンフォートライナーを通って延びている、コンフォートライナーと、
対応する緩衝穴に配置される少なくとも1つのエネルギー緩衝装置であって、前記外殻から内側に間隔をおいて配置されたつり下げられた振子塊を有し、振子塊は中立位置にあるときに前記緩衝穴の内面と接触し、中立位置において前記振子塊の中心は長軸と共軸にあり、前記振子塊の中心は、対応する緩衝穴の長軸に対して横方向に変位可能である、少なくとも1つのエネルギー緩衝装置と、
前記振子塊に弾性的に結合され、前記振子塊から内側に間隔をおいて配置され、前記ヘルメットの着用者の頭部と係合するように構成される頭部安定手段と、を備え、
前記外殻に対して外側から第1の方向に加えられた斜めの力に応じて、前記外殻、前記圧縮性ライナー、前記コンフォートライナーおよび前記対応する緩衝穴は、それらの間で相互に横変位することなく第1の方向に共に横変位するように構成されており、前記緩衝穴の中心は前記振子塊の中心から離れて第1の方向に横変位するが、前記頭部安定手段は静止状態を保つ、ヘルメット。
【請求項39】
前記中立位置において前記振子塊が前記圧縮性ライナーと係合する、請求項38に記載のヘルメット。
【請求項40】
前記振子塊が、前記斜めの力に応じて、前記第1の方向とは反対の第2の方向に前記圧縮性ライナーに当たって圧縮するように構成された圧縮性材料から形成される、請求項39に記載のヘルメット。
【請求項41】
前記少なくとも1つのエネルギー緩衝装置が、
前記対応する緩衝穴に対して固着される外側固定具と、
前記外側固定具を前記振子塊に弾性的に結合する外側可撓首部と、
前記振子塊に接続される内側可撓首部と、
前記内側可撓首部において前記振子塊に弾性的に結合され、該内側可撓首部と前記頭部安定手段との間に延在する弾性部材と、を含む、請求項38に記載のヘルメット。
【請求項42】
前記弾性部材が、長手方向および横方向において長軸と位置合わせされる中立位置を有し、長軸に沿ってその長さを減少させるように中立位置から長手方向に圧縮可能であり、長軸に沿ってその長さを増加させるように長手方向に拡張可能であり、その両端を互いに横方向に変位させるように長軸の周りで可撓である、請求項41に記載のヘルメット。
【請求項43】
前記加えられた斜めの力に応じて、前記弾性部材が前記内側可撓首部の周りで偏向して、長軸に対して斜めに偏向する、請求項41に記載のヘルメット。
【請求項44】
前記加えられた斜めの力に応じて、前記振子塊の中心が、前記ヘルメットの着用者の頭部と係合する前記頭部安定手段に対して横方向に変位する、請求項38に記載のヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衝撃の保護に関し、より具体的には、頭部の衝撃の保護に関する。
【背景技術】
【0002】
移動する頭部への衝撃が頭部を迅速に減速させる可能性がある一方で、慣性が脳を前方へ移動させ続けて、頭蓋骨の内面に衝撃を与える。このような頭蓋骨に対する脳への衝撃は、脳への打撲傷(挫傷)および/または出血(大量出血)を引き起こす場合がある。したがって、頭部の減速は、頭部への衝撃によって引き起こされる脳損傷の重症度を判定する際に検討すべき重要な要因である。
【0003】
頭部に対するあらゆる種類の衝撃では、頭部は線形加速と回転加速の組み合わせを受ける。線形加速は局所性脳損傷の原因となると考えられ、回転加速は局所性および広汎性脳損傷の両方の原因となると考えられる。
【0004】
ヘルメットは、衝撃から頭部を保護するために使用することができる。しかしながら、すべてのヘルメットは、少なくともいくらかの質量を着用者の頭部に追加する。後で詳述するように、ヘルメットに質量を追加すると、より小さな質量のヘルメットと比較して、頭部および脳への回転加速および減速作用を増大する可能性がある。
【0005】
線形および/または回転加速に対応するためにヘルメットで使用される様々な衝撃保護技術が提案されている。上記技術は、Omini Directional Suspension(商標)(ODS(商標))、複数衝撃保護システム(MIPS(登録商標))、SuperSkin(登録商標)、360度タービン技術を含む。
【0006】
Omini Directional Suspension(商標)(ODS(商標))ヘルメットでは、外殻とライナーがODS(商標)部品によって分離される。しかしながら、ODS(商標)部品は、ヘルメットに質量と体積を追加する。また、ODS(商標)部品は、外殻の内部に固着される硬質の部品を含む。その結果、ODS(商標)システムは、硬質の部品を収容する硬質の頑丈なライナーを使用する必要がある。さらに、摩耗と破損のために、個々のODS(商標)部品を取り外す可能性がある。
【0007】
MIPS(登録商標)を組み込んだヘルメットでは、ヘルメットが外殻、内側ライナー、低摩擦層を含む。低摩擦層が頭部に接する発泡ライナーの内側に配置されるため、緩衝発泡ライナーは頭部に直接接触しない。しかしながら、摩擦層とその付属物の使用によって、ヘルメットの衝撃力を有効に吸収する能力が低下する。さらに、MIPS(登録商標)技術はヘルメットに質量と体積を追加する。
【0008】
SuperSkin(登録商標)ヘルメットでは、膜と潤滑剤との層がヘルメットの外殻に貼付される。該層は外殻と衝撃面との間の摩擦を低減することによって、頭部および脳への角(回転)作用を低下させる。
【0009】
360度タービン技術を備えたヘルメットでは、複数の円形タービンが、頭部に接する発泡ライナーの内側に配置される。この技術はヘルメットに最小限の質量を追加する一方で、タービン部分を摩耗および破損から守るが、衝撃時にヘルメットの着用者を保護することはできない。
【0010】
SuperSkin(登録商標)技術を例外とすると、上記のヘルメット技術は、減速を制限する要因として、ヘルメットの全厚と質量を考慮に入れていない。また、上述のヘルメット技術は、より硬質で頑丈なライナー(発泡ポリスチレンまたはその他の発泡体)の導入を奨励している。しかしながら、より硬質で頑丈なライナーは、並進および角衝撃力を吸収するヘルメットの有効性に悪影響を及ぼす場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記したヘルメットをより向上させたヘルメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
高および低衝撃に関する並進力または角力を吸収するヘルメットの能力を損なわずに、頭部および脳への角加速および減速作用を低減することによってヘルメットを改良する振子型緩衝システムについて記載する。本開示は、頭部への回転および角加速および減速作用に対する保護用のすべてのヘルメットに関する。
【0013】
一実施形態によると、振子型緩衝システムは、斜めからの衝撃の保護のためにヘルメット厚内に設けられて、ヘルメットの着用者の脳への角加速および減速作用を低減する。
振子型緩衝システムは、外側からヘルメットの外殻面だけでなくヘルメットの内部にも印加されるトルクに反応する。斜めからの衝撃時、緩衝システムは、トルクが最初にヘルメットの外殻に印加されたとき、ヘルメット内にトルクが伝播するのを待つ代わりに即座に反応する。対照的に、既存のシステムは、ヘルメットの内部に遅れて印加されるトルクにのみ反応する。
【0014】
一実施形態によると、ヘルメットは、硬質の外殻と、硬質の外殻の内面と接触する圧縮性ライナーと、圧縮性ライナーの内面と接触するコンフォートライナーとを備える。緩衝穴は、長軸に沿って長手方向に硬質の外殻、圧縮性ライナー、コンフォートライナーを通って画定される。ヘルメットは、緩衝穴に配置され、外殻からコンフォートライナーまで長手方向に延在する振子型緩衝システムをさらに含む。振子型緩衝システムは、緩衝穴内を横方向に変位可能な振子塊を有する。
【0015】
振子型緩衝システムは、硬質の外殻に装着される外側固定具と、外側固定具に弾性的に結合されるロッドであって、ロッドに結合される振子塊まで長手方向内方に延在するロッドと、振子塊に弾性的に結合され、前記振子塊から長手方向かつ内側に間隔をおいて配置される頭部安定手段とを含むことができる。頭部安定手段は、ヘルメットの着用者の頭部と直接係合し、振子塊を着用者の頭部に結合するように構成される。振子型緩衝システムは、振子塊と頭部安定手段との間に延在する弾性部材も含むことができる。衝撃中に外殻に外側から印加されるトルクに応じて、振子塊は緩衝穴で横方向および/または長手方向に振動して、衝撃のエネルギーの放散を促進する。
【0016】
別の実施形態によると、ヘルメットは、硬質の外殻と、硬質の外殻の内面と接触する圧縮性ライナーと、圧縮性ライナーの内面と接触するコンフォートライナーと、を備える。緩衝穴は、長軸に沿って長手方向に硬質の外殻、圧縮性ライナー、コンフォートライナーを通って画定される。ヘルメットは、緩衝穴に配置され、外殻からコンフォートライナーまで長手方向に延在する振子型緩衝システムをさらに含む。緩衝システムは、外殻に装着される外側圧縮性ディスクと、外側ディスクに結合されるロッドであって、ロッドに結合される内側圧縮性ディスクまで長手方向内方に延在するロッドと、圧縮性ライナーに装着される内側圧縮性ディスクと、内側圧縮性ディスクに弾性的に結合され、内側圧縮性ディスクから長手方向かつ内側に間隔をおいて配置される頭部安定手段とを含む。頭部安定手段は、ヘルメットの着用者の頭部と係合するように構成される。ロッドは剛体であっても、あるいは圧縮性を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ユーザが着用するヘルメットと地面との衝撃に伴う力を示す図である。
図2】斜めからの衝撃の結果、ヘルメットに印加されるトルクを示す図である。
図3】斜めからの衝撃中の図2のヘルメットの着用者の脳を示す概略断面図である。
図4図2のヘルメット内の頭部の角加速および減速中心を示す図である。
図5】2つのレベルの衝撃慣性に関して、死体頭部に加えられる質量が死体の回転加速に及ぼす影響を示すグラフである。
図6a】本開示に係る振子型衝撃緩衝システムの一実施形態の概略断面図である。
図6b図6aに示す振子型衝撃緩衝システムの上部の分解概略断面図である。
図6c図6aの緩衝装置の実施例を示す等角図である。
図6d図6cの6−6に沿った図6cの緩衝装置の断面図である。
図7a】複数の緩衝装置とストラップを採用するシステムの一実施形態を示す図である。
図7b図7aに示すストラップの一部を示す図である。
図8a】斜めからの衝撃によって生成される第1の段階(加速「スピンアップ」)中の反応を示す、図6aの振子型衝撃緩衝システムの概略断面図である。
図8b図8aの振子型衝撃緩衝システムの上部の分解概略断面図である。
図9a】第1の段階後の第2の段階(加速「スピンダウン」)中の反応を示す、図8aの振子型衝撃緩衝システムの概略断面図である。
図9b図9aの振子型衝撃緩衝システムの上部の分解概略断面図である。
図10a】本開示に係る振子型緩衝システムの第2の実施形態の概略断面図である。
図10b図10aに示す振子型衝撃緩衝システムの上部の分解概略断面図である。
図11a】本開示に係る緩衝システムの第3の実施形態の概略断面図である。
図11b】斜めからの衝撃によって生成される第1の段階(加速「スピンアップ」)中の反応を示す、図10aの緩衝システムの概略断面図である。
図11c】第2の段階(加速「スピンダウン」)中の反応を示す、図10aの緩衝システムの概略断面図である。
図12】拘束システムの別の実施形態を含むヘルメットの一実施形態の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
衝撃の種類は、並進(線形)力を伴う衝撃と回転力を伴う衝撃として分類することができ、それらは共にまたは別々に発生する場合がある。純並進力を伴う衝撃の場合、ヘルメットをかぶったライダーの頭部は、脳の松果体領域に位置する脳の重心を中心とした回転ではなく、直線状の急速な加速または減速運動を受ける。純回転力を伴う衝撃の場合、ヘルメットをかぶった頭部は、脳の重心を中心とした急速な回転加速または減速を受ける。
【0019】
図4は、頸椎下部の第六頸椎辺りの角加速(および減速)の中心を示す。純角加速を伴う衝撃の場合、脳の重心は、角加速の中心から前方、後方、または側方に急激に傾く。頸椎の上部または頭蓋骨の基部に位置する角加速の中心を巻き込む衝撃の場合、頭部は脳により大きな回転加速および減速作用を受ける。後で詳述するように、ヘルメットをかぶった頭部が受ける回転加速度が大きくなるほど、脳が受ける剪断損傷が大きくなる。後で詳述するように、角加速および減速の大きさと継続期間が、受けた脳損傷の重篤度を決定する。
【0020】
多くの衝撃は並進力と回転力の組み合わせを伴う。衝撃に関する力を図1に示す。これらは、ヘルメットをかぶった頭部(+身体)の重量である重力による下向き力+Fと、ヘルメットをかぶった頭部に作用する衝撃面による反力である上向き力−F(ニュートンの運動の第三法則:すべての作用には、等しく逆向きの反作用が生じる)と、ヘルメットをかぶったライダーの頭部に作用する合成力の並進成分であり、常に前方に作用する水平印加力Fappliedと、ヘルメットの外殻に作用する道路面により、常に水平印加力の反対に作用する水平摩擦力Ffrictionとを含む。
【0021】
図2を参照すると、ヘルメットの右側でバイザーの上に示される斜めからの衝撃の結果、ライダーの頭部(および身体)は、回転点を中心に作用する合成力の回転成分である激しい捻れ力を受ける。ヘルメットの外殻と道路面との間で生成される摩擦によって、ヘルメットに瞬間的な把持作用が生成される結果、ヘルメットをかぶったライダーの頭部がトルクを受けて脳に減速または加速作用が生じる。(たとえば、オートバイのライダーやサイクリストが経験する)多くの外傷性頭部損傷は一般的に、ヘルメットをかぶった頭部が硬い道路面または他の固定物による斜めからの衝撃を受ける結果として生成される回転力が原因である。
【0022】
図3は、図2のヘルメットの着用者の脳の概略図であり、説明の明瞭化のために頭蓋骨の頂部を除いている。脳は頭蓋骨内で脳脊髄液に浮遊しているゼリー状の軟組織である。脳は3つの膜層で覆われ、硬膜と呼ばれる最外層が、頭蓋骨内で脳を浮遊させる役目を果たす様々な縫合点で頭蓋骨の内部に接続される。急速な回転加速または減速が生じると、剪断力が様々な縫合点および脳の異なる塊に影響を及ぼして、神経軸索線維を伸張し引裂き、架橋血管を破断させる。回転加速の2つの許容限度が、脳震盪では1800rad/s、架橋血管の破断では5000rad/sと報告されている。剪断力は、異なる密度の脳組織間の接合部で主に発生する。たとえば、灰白質は白質よりも密度が高いため、脳の各部は頭蓋骨内で異なる速度で移動する。たとえば、脳の内部は脳の外部よりも遅れる。脳組織は許容限度を超えて加速または減速されるときに損傷を受ける可能性がある。
【0023】
さらに、角加速および減速の大きさと継続時間は、受けた脳損傷の重症度に影響を及ぼす可能性のある要因である。概して、ヘルメットの衝撃力の印加時間が長いほど、ヘルメットが衝撃力を吸収するために行わなければならない仕事量は少なくなる。これは以下の力積の式に基づく。
【0024】
F×t=m×Δv (1)
ここで、Fは衝撃力、tは力の印加時間(衝撃相互作用時間)、mはヘルメットの質量、Δvは速度変化を表す。言い換えると、ヘルメットは衝撃の相互作用時間全体にわたって衝撃力を吸収するために機能する。
【0025】
一部の発泡ヘルメットは単密度硬質発泡体から成る(たとえば、自転車のヘルメットに使用される発泡体と同様)。このような硬質の発泡ヘルメットでは、衝撃を受けたときに短い衝撃時間と大きな減速が頭部にかかるため、ヘルメットは衝撃力を吸収するのに比較的大きな仕事量を実行しなければならない。通常、硬質の発泡ヘルメットは衝撃力を吸収できず、ヘルメットを通じて頭部に伝わる力をほとんど低減しない。
【0026】
また、一部のヘルメットは、圧縮性発泡材料を含み、発泡体の圧縮により、漸次的な減速を提供する。このような材料の圧縮は頭部の減速を低下させることができるため、衝撃の相互作用時間が長くなる。衝撃時間が長引く結果として、ヘルメットを通じて頭部に伝わる力が(ヘルメットに硬質発泡ライナーが使用された場合の頭部衝撃と比較して)低減される。
【0027】
上述したように、脳の回転加速は、衝撃の大部分で単独では発生しない。しかしながら、頭部と首部間の相互作用は、衝撃時に角加速を生成する方を可とする。並進と回転加速の組み合わせの場合、角加速は頭部の慣性損傷の最も一般的な形である。図4は、頸椎下部の第六頸椎辺りの角加速(および減速)中心を示す。角加速を含む衝撃の場合、脳の重心は、首部の角中心を中心として前方、後方、または側方に急激に傾く。頸椎の上部または頭蓋骨の基部での角加速中心を巻き込む衝撃の場合、頭部は脳にさらに大きな回転加速および減速作用を受ける。
【0028】
ライダーの頭部上のヘルメット1の質量が大きいほど、大きな回転加速または減速作用が脳に作用する。図5は、2つのレベルの衝撃慣性に関して、死体の頭部に追加される質量が死体の回転加速に及ぼす影響を示す。平均的なヒトの頭部の重量は約1.5キログラムである。図5に示すように、ヘルメットに加えられる質量の回転加速への影響は緩やかに1000グラムまで増大するが、その後、1000グラムを超えるとより高い割合で増大する。また、ヘルメットに追加される質量が回転加速に及ぼす影響は、高い衝撃慣性レベルよりも低い衝撃慣性レベルで顕著である。したがって、ヘルメットに加えられる質量を最小限に抑えることは、脳への回転加速および減速作用を低減するのに有効である。
【0029】
図6aおよび6bは、着用者の頭部2に装着され、1以上の振子型衝撃緩衝装置3の一実施形態に組み込むように構成されるヘルメット1の概略断面図である。まず、振子型衝撃緩衝装置3の断面図である図6aを参照すると、振子型衝撃緩衝装置3は、ヘルメット1の厚さを貫通して画定される円形緩衝穴4内に少なくとも部分的に配置される。一実施形態では、穴4はヘルメット1の外側からヘルメット1の内側まで長軸A−Aを中心にして長手方向に延在する。図6aでは、振子型緩衝装置3は、長軸A−Aに略平行に延在する中立の非変形位置で示されている。緩衝装置3は外側端3aから内側端3bまで延在する。
【0030】
本明細書で使用するとき、「内側」、「内方」、「内方に」という文言は、ヘルメットの外側から着用者の頭部2に向かう方向を指し、「外側」、「外方」、「外方に」という文言は、ヘルメットの内側から着用者の頭部2から離れてヘルメットの外側に向かう方向を指す。また、本明細書で使用するとき、長手方向と横方向という文言はそれぞれ、緩衝穴4の長軸A−Aに平行な方向と緩衝穴の軸を横断する方向とを指す。
【0031】
ヘルメット1は、硬質の外殻5と、外殻5の内側接触面に接して延在する緩衝ライナー6とをさらに含むことができる。緩衝ライナー6は、たとえば、発泡ポリスチレン(EPS)などの発泡体から作製することができる。もしくは、緩衝ライナー6は粘弾性材料で作製することができる。緩衝装置3の外側端3aは外殻5に装着される。緩衝装置3は、オートバイ、自転車、スキー、スケート、フットボール、乗馬を含む所望のヘルメットだけでなく、建設労働者、救急救命士、軍人らが使用するヘルメットと共に利用することができる。
【0032】
ヘルメット1は、緩衝ライナー6の内側接触面6aに接して延在するコンフォートライナー7も含む。コンフォートライナーは、椅子用パッドに似た緩衝性発泡体で作製してもよい。コンフォートライナー7の内側は、緩衝装置3の内側端3bに装着される頭部安定手段12から離して配置される。
【0033】
緩衝穴4は、長軸A−Aを中心に共軸に配列された、第1の長手方向に延在する部分4aと第2の長手方向に延在する部分4bによって画定される。図6aに示す実施形態では、2つの部分4a、4bは異なる直径を有する。すなわち、第2の部分4bは、第1の部分4aよりも大きな直径を有する。一実施形態では、第1の部分4aは、硬質の外殻5の外側から緩衝ライナー6内に位置する遷移点4cまで内方に延在する。別の実施形態では、緩衝穴4は硬質の外殻5を貫通して延在することができない。遷移点4cは、緩衝穴4の2つの部分4a、4bの直径が変動する点である。第2の部分4bは、遷移点4cからコンフォートライナー7の内側7aまで延在する。
【0034】
緩衝装置3は概念上、以下の部分:1)外側固定具8、2)外側首部14、3)シャフト9、4)振子塊10、5)弾性部材11、6)頭部安定手段12に分割することができる。
【0035】
外側固定具8は、ヘルメット1の外殻5および/または緩衝ライナー6に装着(たとえば、粘着、融合、接着など)することができる。図6aに示す実施形態では、外側固定具8の側面8aは、緩衝ライナー6の外側厚内の穴4の第1の部分4aの補完接触面に装着することができる。一実施形態では、固定具8の外側端8bは、硬質の殻5の外面5aと面一にする、あるいは外面5aから突出させることができる。もしくは、穴4が硬質の外殻5を貫通して延在しない場合、固定具の外側端は硬質の外殻5の内面5bと接触することができる。
【0036】
可撓首部14は外側固定具8から内方に延在する。可撓首部14は少なくとも1つの狭部または先細部を含み、図6aに示すように略砂時計の形状で形成することができる。外側首部14はシャフト9の外側端9aにも連結される。シャフト9および可撓首部14は穴4の内面から離して配置され、接触しない。首部14はシャフト9と外側固定具8との間に弾性の可撓接続部を提供し、後で詳述するように、シャフト9が少なくとも1つの構成において長軸A−Aに対して斜めに偏向するように首部14を中心に旋回することができる。図6aに示す中立の非変形位置では、シャフト9は円形緩衝穴4内で長軸A−Aと平行に可撓首部14からだらりと垂れ下がる。また、図6aに示す中立位置では、外側固定具8、首部14、シャフト9が長軸A−Aに沿って共軸に延在する。
【0037】
シャフト9の内側端9bは振子塊10に連結される。図6aに示す実施形態では、振子塊10の直径は、固定具8とシャフト9の直径よりも大きいが、緩衝穴4の第2の部分4bの直径よりも小さい。よって、図6aに示す中立位置では、振子塊10は緩衝穴4の第2の部分4bから横方向に間隔をおいて、緩衝穴4の第2の部分4bから遷移点4cのちょうど内側に緩く垂れ下がる。
【0038】
振子塊10は弾性部材11の外側端11aに連結される。振子塊10と弾性部材11との間の接続部は可撓であり、弾性を有する。弾性部材11は拡張可能であり、圧縮可能であり、長軸A−Aを中心に旋回可能であり、振子塊10が穴4の第2の部分4b内を長手方向および横方向に移動することができる。弾性部材11は、緩衝装置3が中立位置から偏向するとき、たとえば、後で詳述するように衝撃時に振子塊10が長軸A−Aに対して横方向に移動するとき、剪断、回転滑り、圧縮のうちの1つ以上の形で弾性変形するように構成される。弾性部材11は、本明細書において後で詳述するように、長軸A−Aに対して斜めに偏向してから、図6aに示す非偏向位置に戻る。弾性部材11は中実とすることができる、あるいは管状および中空として、長手方向の圧縮を促進することができる。
【0039】
弾性部材11の内側端11bが頭部安定手段12に接続される。頭部安定手段12と弾性部材11との間の接続部は可撓であり弾性を有するため、弾性部材11は、頭部安定手段12に対して横方向斜めに偏向し、頭部安定手段12に対して長手方向に延在し圧縮させることができる。頭部安定手段12の内面は、頭部の冠部などの頭部2の所定位置またはその近傍で頭部2と接触する、あるいはその以外の形で頭部2と係合するように構成される。頭部安定手段12は、コンフォートライナー7の緩衝作用を向上させ、ヘルメット1内に頭部2を保持するための安定性も追加することができる。間隙22は、頭部安定手段12とコンフォートライナー7の内面7aとの間で画定される。間隙22は、気流が穴4を出入りするアクセスを提供する。使用中のヘルメット1と頭部2との間の相対移動により、間隙22は寸法を変更する、あるいは一時的に閉鎖することさえできる。
【0040】
図6bは、図6aの上部の分解図である。図6bに示すように、外側固定具8は2つの通気孔13を画定することができる。通気孔13は、外側固定具8を通って長手方向に延在する円柱状貫通孔として形成することができる。通気孔13は、外殻5に形成される穴と並べることができる。通気孔13を使用して、ヘルメット1の外部とヘルメット1の内部との間で空気を通す。これに関連し、通気孔13は、空気が通気孔13と間隙22との間の穴4を流れるように間隙22と連通する。
【0041】
一実施形態では、緩衝穴4の第1の部分4aの直径は10mm〜30mmとし、緩衝穴4の第2の部分4bの直径は20mm〜40mmとすることができる。また、円柱状シャフト9と緩衝穴4の第1の部分の間の横方向距離は2mm〜10mmとし、振子塊10の外周と緩衝穴4の第2の部分との間の距離は最大10mm、好ましくは5〜10mmとすることができる。一実施形態では、第1の部分4aの長は25mm〜60mmとすることができる。
【0042】
図6cは緩衝装置3の一実施形態の等角図であり、図6dは図6cの線6−6に沿った緩衝装置3の断面図である。図示する実施形態では、首部14の外面間に含まれる角度αは約127±10度であり、弾性部材11の外面間に含まれる角度βは約110±10度である。また、図6cでは、頭部安定手段12は60mmの直径を有し、振子塊10は30mmの直径を有し、円柱状外側固定具8は30mmの直径を有する。振子塊10は頭部安定手段12から長手方向に約15mm離して配置され、円柱状部8から長手方向に約20mm離して配置される。
【0043】
緩衝装置3は、緩衝装置3の部分全体を通じて均一な密度のゴムまたはポリウレタン(PU)で一部または全部を作製することができる。また、緩衝装置3は、ウレタンフォーム(poron(登録商標)粘弾性非ニュートンシリコーン(armourgel膨張性非ニュートン流体(D30(登録商標)、またはその他の適切な材料のうちの少なくとも1つで一部または全部を作製することができる。緩衝装置3は、一体化部材、あるいは外側固定具8、外側首部14、シャフト9、振子塊10、弾性部材11、頭部安定手段12のうちの1つ以上のアセンブリとして構築することができる。一実施形態では、振子型緩衝装置3の上記部分はそれぞれ同一または異なる圧縮性または剛性を有することができ、剛性は圧縮性に反比例する関係を有する。一実施形態では、外側固定具8とシャフト9が最も高い剛性を有し、振子塊10、弾性部材11、頭部安定手段12が比較的低い剛性を有することができる。本開示の教示によると、緩衝装置3の各部の圧縮性または剛性に合わせて採用される材料と選択される値により、緩衝装置3は斜めからの衝撃または並進衝撃時の角加速および減速を吸収する際に所望の効果を実現することができる。
【0044】
図7aは、複数の緩衝装置103がヘルメット1などのヘルメットの搭載パターンで配列される構造例を示す平面図である。図7aの実施例では、ヘルメットは説明の明瞭化のために図示しない。緩衝装置103は緩衝装置3と同じであるが、頭部安定手段112が穴18aの複数セット18を画定することで頭部安定手段12から変更されている点で異なる。穴18aの機能は後で詳述する。穴18aの各セット18は相互に放射方向に間隔をおいて配置される。また、各セット18は、隣接セット18から周方向に均等に間隔をおいて配置される。図7aに示す実施形態では、穴18aの隣接セット18は約45度間隔をおいて配置される。
【0045】
緩衝装置103は複数の可撓連結手段17によって接続される。本実施例では、図示される5つの緩衝装置103は、搭載パターンで異なる位置に搭載される。緩衝装置103は、1つの中央安定手段112aがヘルメットに配置されて頭部の冠部と接触し、2つの頭部安定手段112b、112cが頭部の右前部および左前部に接触し、2つの頭部安定手段112d、112eが頭部の右後部および左後部に接触するように位置決めされる。図7aに示すように、4つの頭部安定手段112b、112c、112d、112eは、中央安定手段112aを中心に正方形パターンで配列される。
【0046】
5つの頭部安定手段112a〜112eは可撓連結手段(たとえば、バンドまたはストラップ)17によってまとめて連結され、そのうちの1つを図7bでさらに詳細に示す。具体的には、中央安定手段112aを囲む4つの安定手段112b〜112eが連結手段17によって正方形パターンで連結され、これら4つの安定手段112b〜112eはそれぞれ、xパターンで他の連結手段17によって中央安定手段に連結される。可撓連結手段17は、対応する穴(たとえば、ヘルメット1の穴4)への各緩衝装置103の振子塊110の位置決めを簡易化することによって、頭部に対して各頭部安定手段112a〜112eを正確に位置決めする。各連結手段17は、両端部で一対の安定手段112に連結される。
【0047】
図7bにさらに詳細に示すように、各連結手段17は、連結手段17の内側対向面20から内方に延在する突起19aの複数セット19を有する。突起19aの各セット19は、連結手段17の穴18aの対応するセット18に収容されるように構成される。一実施形態では、連結手段17は可撓プラスチックから成り、野球帽の跳ね返りストラップのように構成することができる。各連結手段17は、連結手段17の端部間の中心に貫通孔21(図7a)も有する。頭部安定手段112a〜112eは、連結手段17を通じて保持システム(図示せず)に結合されて、ヘルメットをユーザの頭部または顎に装着する。たとえば、一実施形態では、図12に示すような顎ストラップを頭部安定手段112a〜112eに連結される連結手段17の穴21に連結することができる。
【0048】
様々な寸法の頭部に適合するヘルメットの寸法差によって、頭部安定手段112間の間隔が変動する可能性がある。したがって、このような寸法差を調整するため、連結手段17は、連結手段17が結合されるヘルメットの寸法に基づいて長さを調節できるように製造することができる。一実施形態では、たとえば、連結手段17は、均等に間隔をおいて配置された突起のセット19が延在する連持続ストリップ材で作製することができ、そのストリップ材を、ヘルメットの寸法に合わせて頭部安定手段112の間隔に基づく長さに切断することができる。もしくは、別の実施形態では、連結手段17は、たとえば、上述した2ピース型の調節可能な跳ね返り式野球帽と同様に、突起19aの一連のセット19を有する1ピースと、突起19aを収容することができる貫通孔18aの一連のセット18を有する別の嵌合ピースとで2ピースのアセンブリとして作製することによって、切断することなく調節可能に構成することができる。
【0049】
ヘルメット1に対して衝撃がかかる場合、緩衝装置3と上述するヘルメット1との間で相対運動が生じ、緩衝装置3は6aに示す中立位置から偏向する。図2に示すようにヘルメット1に斜めからの衝撃がかかる場合、衝撃は2段階の事象、すなわち、第1のスピンアップ段階と、第1のスピンアップ段階後の第2のスピンダウン段階とみなすことができる。
【0050】
図8aは、第1のスピンアップ段階中、中立位置から偏向した後の図6aの緩衝装置3の状態を示す。ヘルメット1は、斜めからの衝撃を受けると、ヘルメット1の外殻5に印加される外部トルクにより角加速(「スピンアップ」と称する)を受ける。外部トルクは、図8aで左方に向く矢印で表される。印加された外部トルクに応じて、印加トルクに対抗する緩衝装置3の慣性反応が生じ、この反応は図8aで右方に向く矢印で表される。これに関連し、緩やかに垂れ下がる振子塊10は同じ運動状態(停止)を維持する一方、外殻5、ライナー6、コンフォートライナー7は左方に移動することによって、シャフト9の狭い首部14、弾性部材11、シャフト9と振子塊10との間、振子塊10と弾性部材11との間で屈曲/撓み/剪断が生じる。トルクが十分に大きい場合、振子塊10は、図8aに示すように、穴4の第2の部分4bを囲むライナー6の内面と接触することができる。緩衝装置3の慣性作用の結果、頭部安定手段12は頭部2と係合するため、頭部2がヘルメット1内で静止し続けることによって、脳にかかる角加速作用が低減される。図8bは、図8aに示すヘルメット1の上部の分解図であって、通気穴13と首部14の撓みを示す。
【0051】
スピンアップ段階後、「スピンダウン」段階が開始され、その間、ヘルメット1は角(回転)減速を受け、スピンアップ段階中とは反対方向のトルク(図9aで右方に向く矢印で表される)を受ける。外殻5、ライナー6、コンフォートライナー7が右方に移動することによって、シャフト9の狭い首部14、弾性部材11、シャフト9と振子塊10との間、振子塊10と弾性部材11との間で屈曲/撓み/剪断が生じる。スピンダウン段階中、塊10はスピンアップ段階中と反対の長軸A−Aの側に移動する。緩衝装置3、特に振子塊10の慣性反応により、頭部安定手段12は、ヘルメット1内で静止状態を保つことによって脳への角減速作用を低減するように頭部2と係合する。図9bは、図9aに示すヘルメット1の上部の分解図であり、通気穴13を示す。スピンダウン段階後、振子塊10は図6aに示すように長軸A−Aに沿って中立位置に戻るため、振子塊は斜めからの衝撃を受けた後の長軸A−Aを中心とした最大限の揺れを既に完了している。
【0052】
ヘルメット1は、純粋な斜めからの衝撃ではない外部からの力を受ける場合もある。たとえば、ヘルメット1は、長手方向に向けられる分解成分を備える外部からの力を受ける場合もある。上述したように、緩衝装置3の少なくとも弾性部材11は圧縮性を有し、長手方向に拡張可能であるため、ヘルメットが長手方向の外部からの力を受ける場合、外殻5とコンフォートライナー7との間の相対運動によって、緩衝装置3がばねの様に圧縮して、発泡ライナー6と共に衝撃力の一部を吸収する。
【0053】
図10aは、振子型衝撃緩衝装置203の別の実施形態を示す断面図であり、この緩衝装置203は緩衝装置3と構造上類似するが、類似の構成要素には「200」を追加する。弾性部材211は、撓み、屈曲し、剪断変形するように構成される。緩衝装置203と緩衝装置3との主な差異は、緩衝装置203の振子塊210の直径が塊10の直径より大きいために、図10aに示す中立位置では、塊210が緩衝穴204の第2の部分204aの内面と接触することである。塊210はゴムなどの圧縮性材料で形成することができる。中立位置で塊210が第2の部分204aの内面と接触することを鑑みると、塊10が緩衝装置3で首部14を中心に揺動するよりも塊210は首部214を中心に小さく揺動する。その代わり、図8a〜9bを参照して上述したように、斜めからの衝撃事象中、シャフト209が長軸A−Aに対して斜めに偏向し、塊210は発泡ライナー205に当たって横方向に圧縮し易くなり、エネルギーを吸収するように働く。塊210の材料特性は、スピンアップおよびスピンダウン段階中に所望の慣性を達成するように選択することができる。たとえば、より長いスピンアップ時間を達成するには、塊210に圧縮性が高い材料を選択し、より短いスピンアップ時間を達成するには、塊210に圧縮性が低い材料を選択することができる。
【0054】
図10bは、円柱状上部208の対向側に2つの縦型円柱状通気孔213を任意で組み込んだ図10aの上部の分解断面図である。通気孔213は円柱状貫通孔として形成することができる。円柱状通気孔213を使用して、緩衝穴204を介してヘルメットの外側とヘルメットの内側との間で空気を通すことができる。
【0055】
図11aは、ヘルメット501の厚さを貫通する円形緩衝穴504に少なくとも部分的に配置される振子型衝撃緩衝装置503のさらに別の実施形態の断面図である。穴504は、ヘルメット501の外部からヘルメット501の内部まで長手方向に延在する。
【0056】
ヘルメット501は、硬質の外殻505と、外殻505の内側接触面と接して延在する緩衝ライナー506とを含む。緩衝ライナー506は、たとえば、発泡ポリスチレン(EPS)などの発泡体で作製することができる。もしくは、緩衝ライナー506は粘弾性材料で作製することができる。緩衝装置503の外側端503aは外殻505に連結することができる。ヘルメット501は、緩衝ライナー506の内側接触面に接して延在するコンフォートライナー507をさらに含む。コンフォートライナー507は、緩衝装置503の内側端503bに連結される頭部安定手段512から離して配置される。図11aに示す実施形態はコンフォートライナー507と直接接触する弾性部材511を示しているが、弾性部材511はコンフォートライナー507から横方向に離して、弾性部材511の横幅よりもわずかに大きい掘削穴504bに配置することもできる。
【0057】
長手方向に延在する穴504は、図11aおよび11bに示すように、直径が同一であっても異なっていてもよい第1の部分504aと第2の部分504bから成る2つの部分によって画定される。図11aでは、第1の部分504aは硬質の外殻505の外側から、緩衝ライナー506とコンフォートライナー507との界面に位置する遷移点504cまで内方に延在する。第2の部分504bは、遷移点504cからコンフォートライナーを通って、コンフォートライナー507の内側507aまで延在する。遷移点504cは、穴504の2つの部分504aおよび504bの直径が変動する点である。これに関連し、第2の部分504bは第1の直径504aよりも小さな直径を有する。
【0058】
緩衝システム503は概念上、1)外側ディスク508、2)シャフト509、3)内側ディスク510、4)弾性部材511、5)頭部安定手段512に分割することができる。
【0059】
外側ディスク508はヘルメット501の外殻505に装着される(たとえば、粘着、融合、接着など)。図11aに示すように、縁部またはフランジ508aは外殻505の外面と係合する外側ディスク508の周囲から延在することができる。外側ディスク508はゴムなどの圧縮性材料で作製される。外側ディスク508は、緩衝穴504に部分的に埋め込まれるように、緩衝穴504の第1の部分504aと略同じ直径を有する。外側ディスク508は外殻505および/または発泡ライナー506に装着することができる。外側ディスク508は、外側ディスク508の長手方向中央に形成される穴508bを有する。中央穴508bは、シャフト509の上端509aを収容し固定する。少なくとも1つの実施形態では、緩衝システム503全体がアセンブリではなく一体ピースとして形成することができる。
【0060】
シャフト509は、外側ディスク508から、内側ディスク510に形成される中央開口部510aに収容され固定される内側端509bまで内方に延在する。シャフト509は、硬質ゴムで作製することができる剛体ロッドであってもよい。シャフト509は穴504の内面から間隔をおいて配置され、内面とは接触しない。図11aに示す中立の非変形位置で、外側ディスク508、シャフト509、内側ディスク510は長軸A−Aに沿って共軸で延在する。
【0061】
縁部またはフランジ510bは、内側ディスク510の周囲から延在して、発泡ライナー506の内面に係合することができる。内側ディスク510はゴムなどの圧縮性材料で作製することができる。内側ディスク510は、緩衝穴504の第1の部分504aと略同一の直径を有するため、外側ディスク510は緩衝穴504の内面と接触する。内側ディスク510は発泡ライナー506に装着することができる。
【0062】
弾性部材511は緩衝穴504の第2の部分504bを通って延在する。ロッド509の内側端509bは、弾性部材511の外側端511aに連結することができる。弾性部材511は、長手方向に圧縮し、長軸A−Aに対して旋回するように構成される。弾性部材511は、ゴム、ウレタンフォーム(poron(登録商標)粘弾性非ニュートンシリコーン(armourgel膨張性非ニュートン流体(D30(登録商標)、またはその他の適切な圧縮性材料のうちの少なくとも1つで形成することができる。少なくとも1つの実施形態では、部材508、509、510、511、512は、PU、ゴム、ウレタンフォーム(poron(登録商標)粘弾性非ニュートンシリコーン(armourgel膨張性非ニュートン流体(D30(登録商標)、またはその他の適切な圧縮性材料のうちの1つから成る一体ピースとしてまとめて形成することができる。
【0063】
頭部安定手段512は弾性部材511の内側端511bに連結される。頭部安定手段512は、コンフォートライナー507の内面507bから離して配置される。頭部安定手段512の内面は、頭部502の所定位置またはその近傍で頭部502と接触する、あるいはそれ以外の形で係合するように構成される。一実施形態では、ヘルメット501は、図7aに示すパターンのようなパターンでヘルメット501内に配置される複数の緩衝装置503を含むことができる。
【0064】
図11bは、斜めからの衝撃のスピンアップ段階後の緩衝装置503の位置決めを示す。図11bに示すように、斜めからの衝撃は、右方への矢印で示されるトルクを印加して、ロッド509を除くヘルメット501の構成要素を右方に移動させる。ロッド509は静止状態を保ち、頭部安定手段512を介して頭部502に結合される。相対運動および頭部安定手段512と頭部502との係合の結果、外側ディスク508と内側ディスク510は、剛体ロッド509によって穴504内で横方向に圧縮され、弾性部材511は長軸A−Aに対して屈曲/撓み/剪断のうち少なくとも1つが生じる。圧縮性ディスク508および510と弾性部材511によって吸収されたエネルギーは、頭部502に伝達されるトルクを低減する。
【0065】
図11cは、斜めからの衝撃のスピンダウン段階の緩衝装置503の位置決めを示す。「スピンダウン」段階中、ヘルメット501は角(回転)減速を受け、図11cで左方を向く矢印によって示される(すなわち、スピンアップ段階中と反対方向の)トルクを受ける。外殻505、ライナー506、コンフォートライナー507が左方に移動する一方、ロッド509は静止状態を保ち、頭部安定手段512を介して頭部502に結合される。相対運動および頭部安定手段512と頭部502との係合の結果、外側ディスク508と内側ディスク51が剛体ロッド509によって穴504内で横方向に圧縮される一方、弾性部材511は長軸A−Aに対して屈曲/撓み/剪断のうちの少なくとも1つを受ける。よって、スピンダウン段階中、ロッド509はスピンアップ段階中と反対の長軸A−Aの側に移動する。圧縮性ディスク508および510と弾性部材511によって吸収されたエネルギーは、頭部502に伝達されるトルクを低減する。
【0066】
スピンダウン段階後、ディスク508および510は弾性的に拡張し、ロッド509は図11aに示すように長軸A−Aに沿った中立位置に戻るため、ロッド509は斜めからの衝撃を受けた後、長軸A−Aを中心にした最大限の揺れを既に完了している。
【0067】
ロッド509は、比較的剛体である代わりに長手方向に圧縮性を有してもよいため、ロッド509と弾性部材511の両方とも長手方向に偏向することができる。ロッド509を圧縮性材料に変更することで、たとえば長手方向衝撃の際の緩衝システム503によるエネルギーの吸収を提供することができる。弾性部材511は、長手方向/並進衝撃中のエネルギー吸収も行う。
【0068】
図12は、着用者の頭部602に着用されたヘルメット601の別の実施形態を示す。ヘルメット601は、図6a〜6dのヘルメット1とほぼ同じように構成されるが、緩衝装置603がヘルメット601に搭載される点で異なる。緩衝装置603は緩衝装置3と同じ構造を共有し、類似の構成要素に「600」が追加される。しかしながら、緩衝装置603は、図7aに示すように構成される複数の緩衝装置のうちの1つに代えて、ヘルメット601で単独で使用できるように緩衝装置3よりも大きい寸法を有する。具体的には、このように大きな緩衝装置3は、図7aに示すようにヘルメットで複数の構成要素を使用することの代替として、ヘルメットの冠部に配置することができる。緩衝装置603は頭部安定手段612を有し、該手段は、顎ストラップ615とユーザの顎の周囲に巻くことができる顎パッド616とに装着されて、頭部602にヘルメット601を保持し、頭部602に対する緩衝装置603の位置決めを簡易化する。頭部安定手段612は緩衝装置3の頭部安定手段12よりもかなり大きく、頭蓋帽として形成することができる。頭蓋帽は額(生え際)の頂部と耳の上まで延在させることができる。顎ストラップ615は弾性を有し、ユーザの顎の下への顎パッド616の位置決めを簡易化することができる。顎ストラップ615を使用して、頭部602に対してヘルメット601を位置決めすることができるが、顎ストラップ615は、ヘルメット601を頭部602により確実に固定するために主顎ストラップ(図示せず)と併せて使用される副顎ストラップであってもよい。上記主顎ストラップは、外殻601の内面の両側(たとえば、頭部602の耳の下)に粘着させることができる。
【0069】
振子型衝撃緩衝システムのいくつかの実施形態を説明および図示した。本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものではなく、本発明は当該技術が許容する範囲の広さを有し、明細書も同様に解釈すべきであることが意図される。よって、特定の材料および構成を開示したが、他の材料および構成も利用することができると認識される。したがって、当業者であれば、請求されている発明の趣旨と範囲を逸脱せずに提供されている発明に対してさらに他の変更も行うことができると認識するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図11c
図12