(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の縦軸型機械式曝気装置の運転方法としては、連続運転方式、間欠運転方式(または間欠曝気運転方式)、および溶存酸素量に基づく制御運転方式などがある。連続運転式では、インペラを一定の回転数で回転させることで連続運転を行っていた。間欠運転方式では、必要に応じてインペラを回転させ、必要がないときはインペラを停止させていた。間欠曝気運転方式では、インペラを高速で回転させて酸素を供給し、インペラを低速で回転させて被処理水をゆっくり掻き回し、インペラの回転数を高速又は低速に交互に切り替えていた。連続運転方式、間欠運転方式及び間欠曝気運転方式では、流入する被処理水の負荷変動に応じて、被処理水に供給される酸素量を調整できなかった。
【0005】
また、溶存酸素量に基づく制御運転方式では、制御目標となる被処理水中の溶存酸素濃度を設定し、測定された溶存酸素濃度が設定値よりも高い場合にはインペラの回転を低下させて酸素供給量を減少させ、測定された溶存酸素量が設定値よりも低い場合にはインペラの回転数を増加させていた。このような溶存酸素量に基づく制御運転方式では、被処理水の汚染度が低く酸素供給が不要な場合であっても反応槽内の溶存酸素濃度を一定に保つように運転されるので、エネルギ削減の余地があった。
【0006】
本発明は、流入する被処理水の負荷変動に対応して運転を制御し処理水の水質を安定させると共に省エネルギを図ることができる曝気撹拌システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の曝気撹拌システムは、循環する被処理水を硝化または脱窒させる反応槽と、上下方向に延在し軸線回りに回転する縦軸を有し縦軸に設けられたインペラを回転させ反応槽内の被処理水を曝気、撹拌する縦軸型機械式曝気攪拌機と、反応槽内の被処理水の窒素量を測定する測定部と、測定部で測定された窒素量に基づいて縦軸型機械式曝気攪拌機の運転を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この曝気撹拌システムによれば、反応槽内の被処理水の窒素量が測定部によって測定され、制御部は測定された窒素量に基づいて縦軸型機械式曝気攪拌機の運転を制御する。これにより、反応槽に流入する被処理水の負荷に応じて、インペラの回転数を制御して、被処理水に供給される酸素量を増加または減少させることができる。そのため、曝気撹拌システムは、必要に応じて酸素供給量を調整して処理水の水質を安定させることができ、酸素の供給が不要な場合には、インペラの回転を抑えることができ、エネルギの消費を抑制することができる。
【0009】
ここで、測定部は、窒素量として、アンモニア性窒素量及び硝酸性窒素量を測定し、制御部は、曝気運転において、アンモニア性窒素量が第1の判定閾値以上である場合に、インペラの回転数を増加させると共に、アンモニア性窒素量が第1の判定閾値未満であり且つ硝酸性窒素量が第2の判定閾値以上である場合に、インペラの回転数を減少させてもよい。これにより、アンモニア性窒素量が第1の判定閾値以上である場合に、インペラの回転数を増加させて、酸素供給量を増加させて硝化を促進させることができる。アンモニアの硝化が促進されると被処理水中のアンモニアが減少して硝酸が増加する。また、曝気撹拌システムは、アンモニア性窒素量が第1の判定閾値未満であり且つ硝酸性窒素量が第2の判定閾値以上である場合に、インペラの回転数を減少させて、酸素供給量を減少させることができる。被処理水中のアンモニアの減少及び硝酸の増加に合わせて、酸素供給量を減少させて脱窒を促進させることができ、硝酸を窒素ガスに変えることができる。これらにより、曝気撹拌システムでは、被処理水中のアンモニア性窒素量に応じて、運転を制御して処理水の水質を安定させると共に省エネルギを図ることができる。
【0010】
また、測定部は、窒素量として、アンモニア性窒素量を測定し、制御部は、曝気運転において、アンモニア性窒素量が第1の判定閾値以上である場合に、インペラの回転数を増加させると共に、アンモニア性窒素量が第1の判定閾値未満である場合に、インペラの回転数を減少させてもよい。これにより、アンモニア性窒素量が増えた場合には、インペラの回転数を増加させて酸素供給量を増加させ、アンモニア性窒素量が減った場合には、インペラの回転数を減少させて酸素供給量を減少させることができる。
【0011】
ここで、測定部は、窒素量として、アンモニア性窒素量を測定し、制御部は、曝気運転において、アンモニア性窒素量が上限値以上の場合に、インペラを第1の回転数で回転させ、アンモニア性窒素量が上限値未満であり且つ下限値以上の場合に、インペラを第1の回転数より少ない第2の回転数で回転させ、アンモニア性窒素量が下限値未満の場合に、インペラを第2の回転数より少ない第3の回転数で回転させてもよい。これにより、アンモニア性窒素量に応じて、インペラの回転数を3段階に変化させて、酸素供給量を制御することができる。
【0012】
また、測定部は、窒素量として、アンモニア性窒素量を測定し、制御部は、アンモニア性窒素量が下限値以上である場合に曝気運転を実行し、アンモニア性窒素量が下限値未満である場合に、曝気運転を終了して、無酸素運転を実行してもよい。これにより、アンモニア性窒素量に応じて、酸素供給量を制御することができるとともに、制御を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流入する被処理水の負荷変動に対応して運転を制御し処理水の水質を安定させると共に省エネルギを図ることができる曝気撹拌システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る曝気撹拌システムが適用されたオキシデーションディッチの実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1に示されるオキシデーションディッチ1は、例えば小規模下水処理場などの水処理設備として採用されているものである。オキシデーションディッチ1は、平面視長円形状を成す反応槽2を備え、この反応槽2の中央部に長手方向に延在する隔壁3が配設されている。この隔壁3の周囲の領域が無終端状の循環水路4となっている。循環水路4には導入口2aを通して汚水などの被処理水が導入されていると共に、この循環水路4からは当該循環水路4で処理された処理水が導出口2bを通じて導出されている。
【0017】
オキシデーションディッチ1は、反応槽2内の被処理水を曝気、撹拌する縦軸型機械式曝気攪拌機11を備え、縦軸型機械式曝気攪拌機11は反応槽2の長手方向の中央部に配置されている。この縦軸型機械式曝気攪拌機11は
図2に示されるように上下方向に延在し軸線回りに回転する縦軸21を有し、この縦軸21の下端にはインペラ22が設けられている。縦軸型機械式曝気攪拌機11は、インペラ22を回転させるための駆動源としてインペラ回転用電動機と、インペラ回転用電動機の回転駆動力を減速して伝達する駆動力伝達装置と、縦軸21を回転自在に支持して昇降可能とする昇降装置と、を備えている。この昇降装置は、縦軸21を昇降するための駆動源として、シリンダを有する。
【0018】
複数の羽根状のインペラ22(本実施形態では8枚)は、縦軸21の外周面から放射状に取り付けられている。各インペラ22は、側面としてのインペラ対向面にコーン状板22aを備えると共にその上部に折り曲げ部22bを備え、回転時には被処理水を容易に撹拌できる。好気運転時には、インペラ22の回転数を増やして適度の飛沫を発生させて被処理水に空気を供給して曝気する。無酸素運転時にはインペラ22を下降させて回転数を減らして被処理水を撹拌する。
【0019】
オキシデーションディッチ1では2つの縦軸型機械式曝気攪拌機11が設けられ、各縦軸型機械式曝気攪拌機11は、反応槽2の隔壁3を挟んで形成されて循環水路4の上流側に配置されている。反応槽2内の被処理水は、インペラ22が浸漬するように水量が調整され、インペラ回転用電動機の駆動によるインペラ22の回転に従って反応槽2内を図示反時計回りに循環する。
【0020】
オキシデーションディッチ1では、インペラ22の水面付近で回転させることで好気状態が形成され、インペラ22を水中に降下させてゆっくり回転させることで嫌気状態が形成される。
【0021】
オキシデーションディッチ1の曝気撹拌システムは、上記の反応槽2と、縦軸型機械式曝気攪拌機11と、反応槽2内への酸素供給を制御する酸素供給システム10と、を備えている。酸素供給システム10は、反応槽2内の被処理水中の窒素量を測定する窒素モニタ(測定部)12と、窒素モニタ12で測定された測定結果に基づいて、縦軸型機械式曝気攪拌機11の運転を制御する制御盤13とを有する。
【0022】
窒素モニタ12は、反応槽2内の被処理水中の窒素量として、アンモニア性窒素量(アンモニア性窒素の濃度)及び硝酸性窒素量(硝酸性窒素の濃度)を各々測定する。反応槽2内の窒素量は略均一であるため、窒素モニタ12は反応槽2内のいずれの位置に配置されていてもよい。窒素モニタ12によって検出された検出信号は制御盤13に送信される。
【0023】
制御盤(制御ユニット)13は、演算処理を行うCPU、記憶部17となるROMおよびRAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などを含むものである。制御盤13では、記憶部17に記憶されたプログラムを実行することで、運転条件設定部14、判定部15、制御部16が構築されている。制御盤13には、窒素モニタ12及び縦軸型機械式曝気攪拌機11が電気的に接続されている。
【0024】
運転条件設定部14は、例えば操作者による入力操作に基づいて曝気撹拌システムの運転条件を設定する。運転条件としては、1サイクル時間、曝気時間、アンモニア性窒素量の目標値、曝気運転開始時刻などがある。その他の運転条件として、アンモニア性窒素量の上限値、アンモニア性窒素量の下限値、硝酸性窒素量の上限値、硝酸性窒素量の下限値などを設定してもよい。1サイクル時間とは、繰返し実行される1周期の時間であり、曝気時間および無酸素運転時間の合計時間である。例えば、1サイクル時間を4時間と設定した場合には、1日6サイクルの運転が行われることになり、曝気運転及び無酸素運転が交互に6回ずつ実行される。
【0025】
判定部15は、窒素モニタ12による測定値と目標値(判定閾値)とを比較して、反応槽2内の被処理水中の窒素量が目標値以上であるか否かを判定する。また、判定部15は、運転時間が設定された曝気時間未満であるか否かを判定すると共に、運転時間が設定された1サイクル時間未満であるか否かを判定する。
【0026】
制御部16は、判定部15による判定の結果に基づいて、縦軸型機械式曝気攪拌機11を制御する。制御部16は、縦軸型機械式曝気攪拌機11に制御信号を出力し、インペラ22の回転数を増加または減少させる。また、縦軸型機械式曝気攪拌機11に制御信号を出力し、インペラ22を上昇または降下させることで、曝気運転と無酸素運転との切替を実行する。
【0027】
記憶部17は、運転条件設定部14によって設定された運転条件に関する情報を記憶する。また、記憶部17は、窒素モニタ12による測定値を記憶する。
【0028】
次に、
図3〜
図9を参照して曝気撹拌システムの制御手順(運転例)について説明する。
【0029】
(第1実施例)
図3は、第1実施例に係る曝気撹拌システムの制御手順を示すフローチャートである。まず、運転条件設定部14が曝気撹拌システムの運転条件を設定する。運転条件設定部14は、例えば、1サイクル時間を6時間、曝気時間を3時間、曝気運転の開始時刻を6時と設定する。アンモニア性窒素量の目標値は、求められる水質基準に応じて決定される。
【0030】
運転条件が設定された後、曝気撹拌システムは、1サイクルの運転を開始し(ステップS1)、曝気運転(ステップS2)を開始し、運転時間の計測を開始する。制御部16は、縦軸型機械式曝気攪拌機11に制御信号を送信して、インペラ22を水面付近に配置すると共に所定の回転数で回転させる。これにより、被処理水中に酸素を供給し、反応槽2内を好気状態とする。
【0031】
次に、判定部15は、運転時間が曝気時間未満であるか否かを判定する(ステップS3)。運転時間が曝気時間未満であると判定した場合(ステップS3:YES)には、ステップS6に進み、運転時間が曝気時間に達した場合(ステップS3:NO)には、ステップS4に進む。
【0032】
ステップS6では、被処理水中の窒素量を測定する(ステップS6)。制御盤13は、窒素モニタ12によって測定されたデータに基づいて、被処理水中のアンモニア性窒素量(測定値)を算出し、ステップS7に進む。
【0033】
ステップS7では、判定部15は、アンモニア性窒素量の測定値が目標値を超えているか否かを判定する。アンモニア性窒素量の測定値が目標値を超えていると判定した場合(ステップS7:YES)には、ステップS8に進み、アンモニア性窒素量の測定値が目標値未満である場合(ステップS7:NO)には、ステップS9に進む。
【0034】
ステップS8では、制御部16は、制御信号を縦軸型機械式曝気攪拌機11に送信して、インペラ22の回転数を増加させて、被処理水に供給される酸素量を増加させる。ステップS9では、制御部16は、制御信号を縦軸型機械式曝気攪拌機11に送信して、インペラ22の回転数を減少させて、被処理水に供給される酸素量を減少させる。ステップS8,S9の処理の実行後、再びステップS2に戻り、曝気運転が継続される。
【0035】
制御盤13は、ステップS3で運転時間が曝気時間に達したと判定するまで、ステップS6〜S9までの処理を繰り返す。すなわち、アンモニア性窒素量の測定値が目標値を超えている状態では、インペラ22の回転数が増加されて、酸素の供給量が増加され続けることになる。そして、アンモニア性窒素量の測定値が目標値を下回れば、インペラ22の回転数が減少され、酸素の供給量も減少する。
【0036】
ステップS3で、運転時間が設定された曝気時間に達したら(ステップS3:NO)、ステップS4に進み間欠曝気運転を行う。ここでは、制御部16は、縦軸型機械式曝気攪拌機11に制御信号を送信して、インペラ22を降下させて水中に沈めると共に、回転数を下げて、無酸素運転を実行する。
【0037】
続くステップS5では、判定部15は運転時間が設定された1サイクル時間未満であるか否かを判定する。運転時間が1サイクル時間未満であると判定した場合(ステップS5:YES)には、ステップS4に戻り、間欠曝気運転が継続される。運転時間が1サイクル時間に達した場合(ステップS5:NO)には、1サイクル運転を終了させ、再びステップS1に進み、次のサイクルの運転を開始して曝気運転を開始する(ステップS2)。
【0038】
このような曝気撹拌システムでは、反応槽2内の被処理水のアンモニア性窒素量が窒素モニタ12によって測定され、制御部16は測定されたアンモニア性窒素量に基づいて縦軸型機械式曝気攪拌機11の運転を制御する。これにより、反応槽2内に流入する被処理水の負荷(汚染度や流量)に応じてインペラ22の回転数を制御して、被処理水に供給される酸素量を増加または減少させることができる。アンモニア性窒素量が多く、被処理水の負荷が大きい場合には、酸素の供給量を増やして水質を安定させることができる。一方、アンモニア性窒素量が少なく、被処理水の負荷が小さい場合には、無駄な酸素の供給を減らして、インペラ22の回転を抑えることができ、エネルギの消費を抑制することができる。
【0039】
(第2実施例)
図4は、第2実施例に係る曝気撹拌システムの制御手順を示すフローチャートである。上記の第1実施例と同じ説明は省略する。第2実施例が第1実施例と違う点は、曝気運転において、ステップS6を実行した後の処理である。また、第2実施例では、第1実施例と異なる運転条件を設定している。
【0040】
運転条件設定部14は、アンモニア性窒素量の目標値として、アンモニア性窒素量の下限値と、アンモニア性窒素量の上限値とを設定する。また、運転条件設定部14は、曝気運転時における酸素供給量の最大値(酸素供給量100%運転)及び酸素供給量の最小値を設定する。
【0041】
曝気撹拌システムの制御盤13は、被処理水中のアンモニア性窒素量(測定値)を算出し(ステップS6)、ステップS11に進む。ステップS11では、判定部15は、アンモニア性窒素量の測定値が設定された下限値より大きいか否かを判定する。アンモニア性窒素量の測定値が下限値よりも大きいと判定した場合(ステップS11:YES)には、ステップS12に進み、アンモニア性窒素量の測定値が下限値未満である場合(ステップS11:NO)には、ステップS13に進む。
【0042】
ステップS13では、制御部16は縦軸型機械式曝気攪拌機11に制御信号を送信して、インペラ22の回転数をインペラ回転数下限値に設定して、酸素供給停止運転を実行する。ステップS13の処理が実行された後、再びステップS2に戻り曝気運転が継続される。
【0043】
ステップS12では、判定部15は、アンモニア性窒素量の測定値が設定された上限値より大きいか否かを判定する。アンモニア性窒素量の測定値が上限値よりも大きいと判定した場合(ステップS12:YES)には、ステップS15に進み、アンモニア性窒素量の測定値が上限値未満であると判定した場合(ステップS12:NO)には、ステップS14に進む。
【0044】
ステップS15では、制御部16は縦軸型機械式曝気攪拌機11に制御信号を送信して、インペラ22の回転数をインペラ回転数上限値に設定して、酸素供給量100%運転を実行する。これにより、被処理水への酸素供給量を最大値として、好気状態における処理を促進することができる。ステップS15の処理が実行された後、再びステップS2に戻り曝気運転が継続される。
【0045】
ステップS14では、制御部16は縦軸型機械式曝気攪拌機11に制御信号を送信して、インペラ22の回転数をインペラ回転数上限値の半分の値に設定して、酸素供給量50運転を実行する。これにより、被処理水への酸素供給量を最大値の50%として、好気状態における処理を行うことができる。ステップS14の処理が実行された後、再びステップS2に戻り曝気運転が継続される。
【0046】
このような曝気撹拌システムでは、曝気運転において、アンモニア性窒素量が設定された上限値より大きい場合に、インペラ22をインペラ回転数上限値(第1の回転数)で回転させ、アンモニア性窒素量が設定された上限値未満であり且つ下限値よりも大きい場合に、インペラ22をインペラ回転数上限値の50%(第2の回転数)で回転させ、アンモニア性窒素量が設定された下限値未満である場合に、インペラ22をインペラ回転数下限値(第3の回転数)で回転させることができる。これにより、被処理水中におけるアンモニア性窒素量に応じて、酸素供給量を3段階に切り替えて酸素供給量を制御することができる。その結果、流入する被処理水の負荷変動に対応して運転を制御し処理水の水質を安定させると共に省エネルギを図ることができる。
【0047】
(第3実施例)
図5は、第3実施例に係る曝気撹拌システムの制御手順を示すフローチャートである。上記の第1実施例と同じ説明は省略する。第3実施例が第1実施例と違う点は、曝気運転において、ステップS6を実行した後の処理である。また、第3実施例では、第1実施例と異なる運転条件を設定している。
【0048】
運転条件設定部14は、アンモニア性窒素量の目標値としてアンモニア性窒素量の下限値を設定する。また、運転条件設定部14は、1サイクル内における最大曝気時間を設定する。
【0049】
曝気撹拌システムの制御盤13は、被処理水中のアンモニア性窒素量(測定値)を算出し(ステップS6)、ステップS11に進む。ステップS11では、判定部15は、アンモニア性窒素量の測定値が設定された下限値より大きいか否かを判定する。アンモニア性窒素量の測定値が下限値よりも大きいと判定した場合(ステップS11:YES)には、ステップS2に戻り曝気運転を継続し、アンモニア性窒素量の測定値が下限値未満である場合(ステップS11:NO)には、ステップS16に進む。
【0050】
制御盤13は、曝気運転時において、運転時間が最大曝気時間未満であるか否かを判定する(ステップS3)。運転時間が最大曝気時間未満であり、アンモニア性窒素量の測定値が設定された下限値より大きい場合には、ステップS2、S3、S6、S11の処理が繰り返されて、曝気運転が継続される。
【0051】
運転時間が曝気時間に達したと判定された場合(ステップS3:NO)及びアンモニア性窒素量の測定値が下限値より小さい場合(ステップS11:NO)には、ステップS16に進み曝気運転を終了して無酸素運転を実行する。ここでは、制御部16は、縦軸型機械式曝気攪拌機11に制御信号を送信してインペラ22を降下させると共に、インペラ22の回転数を低下させる。これにより、反応槽2内に嫌気状態を形成する。
【0052】
ステップS16の後、ステップS5に進み、運転時間が1サイクル時間より小さいか否かを判定し、運転時間が1サイクル時間に達しているか否かを判定する。運転時間が1サイクル時間に達していない場合には(ステップS5:YES)、無酸素運転を継続する。運転時間が1サイクル時間に達した場合には(ステップS5:NO)、無酸素運転を終了して1サイクルの運転を終了し、再びステップS1に戻って次のサイクルの運転を開始して、インペラ22を水面付近に上昇させると共に、インペラ22の回転数を増加させて曝気運転を開始する(ステップS2)。
【0053】
このような曝気撹拌システムでは、曝気運転時においてアンモニア性窒素量が下限値より大きい場合に曝気運転を継続し、アンモニア性窒素量が下限値より小さい場合に曝気運転を終了して無酸素運転に切り替えることができる。これにより、アンモニア窒素量が下限値を下回った場合には、設定された最大曝気時間が経過する前に、無酸素運転に切り替わるので、無駄な酸素供給を抑えて省エネルギを図ることができる。
【0054】
(第4実施例)
図6は、第4実施例に係る曝気撹拌システムの制御手順を示すフローチャートである。上記の第1実施例と同じ説明は省略する。第4実施例が第1実施例と違う点は、曝気運転において、ステップS6を実行した後の処理である。また、第4実施例では、第1実施例と異なる運転条件を設定している。第4実施例では、アンモニア性窒素(NH
4−N)量及び硝酸性窒素(NO
3−N)量に基づいて、酸素の供給量を変えることができる。
【0055】
運転条件設定部14は、アンモニア性窒素量の目標値として、アンモニア性窒素量の下限値と、アンモニア性窒素量の上限値とを設定し、硝酸性窒素量の目標値として硝酸性窒素量の上限値を設定する。
【0056】
曝気撹拌システムの制御盤13は、被処理水中のアンモニア性窒素量(測定値)及び硝酸性窒素量(測定値)を算出し(ステップS6)、ステップS21に進む。ステップS21では、判定部15は、アンモニア性窒素量の測定値が設定された上限値より大きいか否かを判定する。アンモニア性窒素量の測定値が上限値よりも大きいと判定した場合(ステップS21:YES)には、ステップS24に進み、アンモニア性窒素量の測定値が上限値未満である場合(ステップS21:NO)には、ステップS22に進む。
【0057】
ステップS24では、制御部16は縦軸型機械式曝気攪拌機11に制御信号を送信して、インペラ22の回転数を増加させる。ステップS24の処理が実行された後、再びステップS2に戻り曝気運転が継続される。
【0058】
ステップS22では、判定部15は、アンモニア性窒素量の測定値が設定された下限値より大きいか否かを判定する。アンモニア性窒素量の測定値が下限値よりも大きいと判定された場合(ステップS22:YES)には、ステップS23に進み、アンモニア性窒素量の測定値が下限値未満であると判定された場合(ステップS22:NO)には、ステップS25に進む。
【0059】
ステップS23では、判定部15は、硝酸性窒素量の測定値が設定された上限値よりも大きいか否かを判定する。硝酸性窒素量の測定値が上限値よりも大きいと判定された場合(ステップS23:YES)には、ステップS25に進み、硝酸性窒素量の測定値が上限値未満である場合(ステップS23:NO)には、インペラ22の回転数を変更せずにステップS2に戻り曝気運転を継続する。
【0060】
ステップS25では、制御部16は縦軸型機械式曝気攪拌機11に制御信号を送信してインペラ22の回転数を減少させる。ステップS25の処理が実行された後、再びステップS2に戻り曝気運転が継続される。
【0061】
図7は、第4実施例に係る曝気撹拌システムの曝気運転時における運転状況を示す表であり、アンモニア性窒素量及び硝酸性窒素量に応じた酸素供給量の増減について示している。アンモニア性窒素量が上限値より大きい場合には、硝酸性窒素量に関わらず、インペラ22の回転数が増加されて、酸素供給量が増加される。アンモニア性窒素量が下限値未満である場合には、硝酸性窒素量に関わらず、インペラ22の回転数が減少されて、酸素供給量が減少される。
【0062】
アンモニア性窒素量が上限値未満であり下限値より大きい場合であり、且つ、硝酸性窒素量が上限値より大きい場合には、インペラ22の回転数が減少されて、酸素供給量が減少される。
【0063】
アンモニア性窒素量が上限値未満であり下限値より大きい場合であり、且つ、硝酸性窒素量が上限値未満である場合には、インペラ22の回転数は変更されず、酸素供給量を維持したまま曝気運転が継続される。
【0064】
このような曝気撹拌システムでは、アンモニア性窒素量及び硝酸性窒素量を測定し、曝気運転において、アンモニア性窒素量が設定された上限値(第1の判定閾値)より大きい場合に、インペラ22の回転数を増加させ、アンモニア性窒素量が上限値未満であり且つ硝酸性窒素量が設定された上限値(第2の判定閾値)より大きい場合に、インペラ22の回転数を減少させることができる。これにより、アンモニア性窒素量が上限値より大きい場合に、酸素供給量を増加させて硝化を促進させることができる。アンモニアの硝化が促進されると被処理水中のアンモニアが減少して硝酸が増加する。曝気撹拌システムは、アンモニア性窒素量が上限値未満であり且つ硝酸性窒素量が上限値以上である場合に、インペラの回転数を減少させて、酸素供給量を減少させることができるので、被処理水中のアンモニアの減少及び硝酸の増加に合わせて、酸素供給量を減少させて脱窒を促進させることができ、硝酸を窒素ガスに変えることができる。これらにより、曝気撹拌システムでは、被処理水中のアンモニア性窒素量に応じて、運転を制御して処理水の水質を安定させると共に省エネルギを図ることができる。
【0065】
(第5実施形態)
図8は、第5実施例に係る曝気撹拌システムの制御手順を示すフローチャートである。上記の第1及び第4実施例と同じ説明は省略する。第5実施例が第4実施例と違う点は、曝気運転において、ステップS21〜S23を実行した後の処理である。
【0066】
運転条件設定部14は、曝気運転時におけるインペラ22の回転数を、高速運転、中速運転及び低速運転の3段階に分けて設定する。高速運転、中速運転及び低速運転におけるインペラ22の回転数は、例えば、過去の運転データや試験結果に基づいて設定することができる。高速運転における酸素供給量は中速運転における酸素供給量よりも多く、中速運転における酸素供給量は低速運転における酸素供給量よりも多い。
【0067】
曝気撹拌システムの制御盤13は、アンモニア性窒素量の測定値が上限値よりも大きいと判定した場合(ステップS21:YES)には、ステップS27に進み、アンモニア性窒素量の測定値が上限値未満である場合(ステップS21:NO)には、ステップS22に進む。
【0068】
ステップS27では、制御部16は縦軸型機械式曝気攪拌機11に制御信号を送信して、インペラ22を高速運転させる。ステップS27の処理が実行された後、再びステップS2に戻り曝気運転が継続される。
【0069】
ステップS22では、判定部15は、アンモニア性窒素量の測定値が設定された下限値より大きいか否かを判定する。アンモニア性窒素量の測定値が下限値よりも大きいと判定された場合(ステップS22:YES)には、ステップS23に進み、アンモニア性窒素量の測定値が下限値未満であると判定された場合(ステップS22:NO)には、ステップS29に進む。
【0070】
ステップS23では、判定部15は、硝酸性窒素量の測定値が設定された上限値よりも大きいか否かを判定する。硝酸性窒素量の測定値が上限値よりも大きいと判定された場合(ステップS23:YES)には、ステップS29に進み、硝酸性窒素量の測定値が上限値未満である場合(ステップS23:NO)には、ステップS28に進む。
【0071】
ステップS28では、制御部16は縦軸型機械式曝気攪拌機11に制御信号を送信して、インペラ22を中速運転させる。ステップS29では、制御部16は縦軸型機械式曝気攪拌機11に制御信号を送信して、インペラ22を低速運転させる。ステップS28,S29の処理が実行された後、再びステップS2に戻り曝気運転が継続される。
【0072】
図9は、第5実施例に係る曝気撹拌システムの曝気運転時における運転状況を示す表であり、アンモニア性窒素量及び硝酸性窒素量に応じたインペラの運転状況をについて示している。アンモニア性窒素量が上限値より大きい場合には、硝酸性窒素量に関わらず、インペラ22は高速運転され、酸素供給量が多くなるように設定される。アンモニア性窒素量が下限値未満である場合には、硝酸性窒素量に関わらず、インペラ22は低速運転され、酸素供給量が少なくなるように設定される。
【0073】
アンモニア性窒素量が上限値未満であり下限値より大きい場合であり、且つ、硝酸性窒素量が上限値より大きい場合には、インペラ22は低速運転され、酸素供給量が少なくなるように設定される。
【0074】
アンモニア性窒素量が上限値未満であり下限値より大きい場合であり、且つ、硝酸性窒素量が上限値未満である場合には、インペラ22は中速運転され、酸素供給量が中程度になるように設定される。
【0075】
このような第5実施例に係る曝気撹拌システムにおいても、被処理水の負荷に応じて縦軸型機械式曝気攪拌機11の運転を制御して、水質を安定させると共に無駄な酸素供給を抑制してエネルギの削減を図ることができる。
【0076】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
【0077】
上記実施形態では、例えば、インペラ22の速度を高速運転、中速運転、低速運転の3段階に設定しているが、4段階以上に速度を設定してもよい。また、上記実施形態では、インペラ22の速度を変えることで、酸素供給量を変更しているが、作動させる縦軸型機械式曝気攪拌機11の個数を変更することで、酸素供給量を変えるようにしてもよい。例えば酸素供給量を増加させる場合には、縦軸型機械式曝気攪拌機11を2機作動させ、酸素供給量を低下させる場合には、縦軸型機械式曝気攪拌機11を1機作動させるようにしてもよい。
【0078】
また、縦軸型機械式曝気攪拌機11は反応槽2内のどの位置に配置されているものでもよい。例えば、
図10に示されるように、反応槽2の長手方向の端部に縦軸型機械式曝気攪拌機11が設けられたオキシデーションディッチ1Bに本発明を適用してもよい。