特許第6802204号(P6802204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6802204ハニカム構造体の製造方法、及び搬送用パレット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802204
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法、及び搬送用パレット
(51)【国際特許分類】
   B28B 3/20 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
   B28B3/20 B
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-41411(P2018-41411)
(22)【出願日】2018年3月8日
(65)【公開番号】特開2019-155618(P2019-155618A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】奥村 健介
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−001238(JP,A)
【文献】 実開昭57−056112(JP,U)
【文献】 特開2013−121703(JP,A)
【文献】 特開平04−297783(JP,A)
【文献】 特開昭57−139278(JP,A)
【文献】 特開平03−055207(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/024326(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 3/20 − 3/26
B28B 5/00 − 5/12
B28B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料を鉛直下方向に押し出してハニカム成形体を形成する縦押し成形工程を具備するハニカム構造体の製造方法であって、
前記縦押し成形工程は、
押出成形機に取設された押出ダイから前記成形材料を鉛直下方向に押し出す押出工程と、
前記押出ダイに近接する位置に搬送用パレットを配置するとともに、前記押出工程によって前記成形材料が連続的に押し出され、形成されたハニカム成形体を前記搬送用パレットによって下方から受け止めて支持するハニカム成形体受止工程と、
前記成形材料の前記押出ダイからの押出速度に連動し、前記ハニカム成形体を受け止め及び支持しながら前記搬送用パレットを下降させるパレット下降工程と
を備え、
前記搬送用パレットは、
パレット基体と、
前記パレット基体の上に重ねて載置され、複数のメッシュ孔を有するメッシュ素材で形成された平板状のメッシュプレートと
前記パレット基体及び前記メッシュプレートの間に挿設され、複数のパンチング孔が所定の間隔で穿設された平板状のパンチングプレートと
を備える積層構造で構成されるハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記メッシュプレートは、
1インチ当たりのメッシュ数が30個〜100個の範囲である請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記搬送用パレットは、
前記メッシュプレートの下に重ねて配設され、複数のメッシュ孔を有するメッシュ素材で形成された1または複数の平板状の中間メッシュプレートを更に備える請求項1または2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記中間メッシュプレートは、
1インチ当たりのメッシュ数が16個〜80個の範囲であり、
かつ、
前記メッシュプレートよりも1インチ当たりのメッシュ数が同一若しくは小さい、及び、複数の前記中間メッシュプレートを積重して備える場合、上段位置の中間メッシュプレートより下段位置の前記中間メッシュプレートの1インチ当たりのメッシュ数が同一若しくは小さい請求項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記パレット基体、前記メッシュプレート、前記パンチングプレート、及び前記中間メッシュプレートの全て、または少なくとも一つは、
導電性材料で構成されている請求項またはに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法に使用される搬送用パレットであって、
パレット基体と、
前記パレット基体の上に重ねて載置され、複数のメッシュ孔を有するメッシュ素材で形成された平板状のメッシュプレートと
前記パレット基体及び前記メッシュプレートの間に挿設され、複数のパンチング孔が所定の間隔で穿設された平板状のパンチングプレートと
を具備する搬送用パレット。
【請求項7】
前記メッシュプレートは、
1インチ当たりのメッシュ数が30個〜100個の範囲である請求項に記載の搬送用パレット。
【請求項8】
前記メッシュプレートの下に重ねて配設され、複数のメッシュ孔を有するメッシュ素材で形成された平板状の1または複数の中間メッシュプレートを更に備える請求項6または7に記載の搬送用パレット。
【請求項9】
前記中間メッシュプレートは、
1インチ当たりのメッシュ数が16個〜80個の範囲であり、
かつ、
前記メッシュプレートよりも1インチ当たりのメッシュ数が同一若しくは小さい、及び、複数の前記中間メッシュプレートを具備する場合、上段位置の中間メッシュプレートより下段位置の中間メッシュプレートの1インチ当たりのメッシュ数が同一若しくは小さい請求項に記載の搬送用パレット。
【請求項10】
前記パレット基体、前記メッシュプレート、前記パンチングプレート、及び前記中間メ
ッシュプレートの全て、または少なくとも一つは、
導電性材料で構成されている請求項またはに記載の搬送用パレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法、及び搬送用パレットに関する。更に詳しくは、成形材料(坏土)を鉛直下方向(重力方向)に押し出してハニカム成形体を形成する「縦押し成形工程」を具備するハニカム構造体の製造方法、及び縦押し成形工程の際に使用されるハニカム成形体の搬送用パレットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックス製のハニカム構造体は、自動車排ガス浄化用触媒担体、ディーゼル微粒子除去フィルタ(DPF)、ガソリン微粒子除去フィルタ(GPF)、或いは燃焼装置用蓄熱体等の種々の用途に採用されている。
【0003】
セラミックス製のハニカム構造体(以下、単に「ハニカム構造体」と称す。)は、各原料成分の配合比率や粘度等を調整した成形材料を、押出成形機を用いて連続的に押し出し、円柱状や角柱状のハニカム成形体を形成する成形工程と、得られたハニカム成形体を所定のハニカム長さに切断する切断工程と、ハニカム成形体を乾燥させる乾燥工程と、乾燥後のハニカム成形体の端面を整える端面仕上げ工程と、乾燥後のハニカム成形体を高温の焼成炉内で焼成処理する焼成工程とを経ることで主に製造されている。その結果、一方の端面から他方の端面まで延びる、流体の流路となる複数のセルを区画形成するセラミックス製の多孔質の隔壁を備えるハニカム構造体が得られる。
【0004】
ここで、成形工程は押出成形機に投入された成形材料を押出ダイ(または口金)から所定の圧力を加え、押し出すことでハニカム成形体を形成するものである。この場合、押出方向を水平方向に一致させ、成形材料(ハニカム成形体)を横方向に押し出すことが一般的に行われる。
【0005】
最終製品として製造されるハニカム構造体は、一般的な自動車以外にも、大型自動車、建設機械、或いは船舶などの大型機械において、排ガス等を浄化処理する目的で使用されることがある。そのため、上記大型機械等に対応するため、大きなハニカム径等の大型サイズのハニカム構造体が求められることがあった。
【0006】
しかしながら、前述したような通常の成形工程を採用し、押出方向を水平方向(横方向)に一致させて大型サイズのハニカム成形体を形成しようとする場合、押出ダイから押し出されたハニカム成形体はその自重によってセルが潰れたり、端面形状が変形したりするなどの不具合を生じる可能性があった。
【0007】
このような不具合を解消するため、大型サイズのハニカム構造体を製造するため成形工程では、成形材料を鉛直下方向(重力方向)に押し出す「縦押し成形工程」が行われることがある(例えば、特許文献1〜3参照)。これにより、成形材料を横方向に押し出す場合と比べ、押し出されたハニカム成形体が自重等によって変形するなどの不具合を解消することができる。そのため、寸法安定性に優れた大型サイズのハニカム成形体の形成が可能となり、大型サイズのハニカム構造体を得ることができる。
【0008】
ここで、縦押し成形工程において、押出成形機から鉛直下方向に押し出され、形成されたハニカム成形体100は、押出成形機の下方に配設された搬送用パレット101によって受け止められ、支持される。そして、当該搬送用パレット101に載置された状態で次工程の乾燥工程等に送られることになる。なお、図5は、押出成形され、所定のハニカム長さに切断されたハニカム成形体100と、搬送用パレット101の構成とを模式的に示すものである。
【0009】
搬送用パレット101は、図5及び図6に示されるように、例えば、金属製(アルミニウム製等)の板状部材で構成されたパレット基体102と、当該パレット基体102の上に重ねて載置され、複数のパンチング孔103aが穿設された板状のパンチングプレート103とによって構成される二重構造(積層構造)のものが多く採用されている。
【0010】
ここで、パレット基体102は、図5のように、複数のフレームを組み合わせた格子状の構造のものであっても、或いは通常の板部材のものであっても構わない。更に、次工程として実施される乾燥工程は、主に誘電加熱による乾燥方式が採用される。そのため、パレット基体102と同様、パンチングプレート103自体もアルミニウム等の導電性材料で構成し、搬送用パレット101及びハニカム成形体の間で放電現象が発生しないようにすることが好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭63−230304号公報
【特許文献2】特開2003−311726号公報
【特許文献3】国際公開第2014/148401号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記した縦押し成形工程を採用したハニカム成形体の形成は、下記に掲げる不具合を生じる可能性があった。その結果、最終製品となるハニカム構造体の性能に影響を及ぼすおそれがあった。
【0013】
すなわち、縦押し成形工程によって形成されるハニカム成形体100は、流体の流路となる一方の端面104aから他方の端面104bまで延びる複数のセル105を区画形成する隔壁106を備えている(図5参照)。ここで、隔壁106によって区画形成されたそれぞれのセル105のサイズは、非常に微細なものである。これに対し、ハニカム成形体100の下部側の端面(図5における他方の端面104b)と当接し、ハニカム成形体100を下方から支持するパンチングプレート103のパンチング孔103a互いに隣接するパンチング孔103aの間の連結部103bの幅は、当該セル105のサイズよりも大きいことがある。
【0014】
そのため、ハニカム成形体100をパンチングプレート103の上に載せると、セル105は、その一部がパンチングプレート103の連結部103bに重なって配置される可能性がある(図6参照)。すなわち、ハニカム成形体100の他方の端面104b側の一部のセル105連結部103bによって塞がれた状態となる(図6における閉塞領域H参照)。ここで、図6は、ハニカム成形体100の端面中心から垂直方向に沿って切断したハニカム成形体100の断面、及び、パンチングプレート103のパンチング孔103a及び連結部103bの配置関係を模式的に示した拡大参考図である。
【0015】
図6に示される閉塞領域Hのように、セル105の他方の端面104b側が閉塞されると、押出成形機によって上方から連続的に成形材料が押し出されているために、セル105の内部の空気(流体)の流通が阻害され、セル105の内部の空間と外部との間で圧力差が発生し、例えば、隔壁106が変形し、セル105の幅が狭くなったり、変形した隔壁106によってセル105が完全に潰れるなどの不具合が発生することがあった。その結果、製造されたハニカム構造体の内部を流れる流体(図示しない)の流れが乱れ、ハニカム構造体の浄化性能等の各種性能及び効果が低下する可能性があった。
【0016】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、縦押し成形工程における搬送用パレットの使用に起因するハニカム成形体のセルの閉塞及び変形等を防ぎ、寸法安定性に優れたハニカム構造体を製造可能なハニカム構造体の製造方法、及び縦押し成形工程に使用する搬送用パレットの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、以下に掲げるハニカム構造体の製造方法、及び搬送用パレットが提供される。
【0018】
[1] 成形材料を鉛直下方向に押し出してハニカム成形体を形成する縦押し成形工程を具備するハニカム構造体の製造方法であって、前記縦押し成形工程は、押出成形機に取設された押出ダイから前記成形材料を鉛直下方向に押し出す押出工程と、前記押出ダイに近接する位置に搬送用パレットを配置するとともに、前記押出工程によって前記成形材料が連続的に押し出され、形成されたハニカム成形体を前記搬送用パレットによって下方から受け止めて支持するハニカム成形体受止工程と、前記成形材料の前記押出ダイからの押出速度に連動し、前記ハニカム成形体を受け止め及び支持しながら前記搬送用パレットを下降させるパレット下降工程とを備え、前記搬送用パレットは、パレット基体と、前記パレット基体の上に重ねて載置され、複数のメッシュ孔を有するメッシュ素材で形成された平板状のメッシュプレートと、前記パレット基体及び前記メッシュプレートの間に挿設され、複数のパンチング孔が所定の間隔で穿設された平板状のパンチングプレートとを備える積層構造で構成されるハニカム構造体の製造方法。
【0020】
] 前記メッシュプレートは、1インチ当たりのメッシュ数が30個〜100個の範囲である前記[1]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0021】
] 前記搬送用パレットは、前記メッシュプレートの下に重ねて配設され、複数のメ
ッシュ孔を有するメッシュ素材で形成された1または複数の平板状の中間メッシュプレー
トを更に備える前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0022】
] 前記中間メッシュプレートは、1インチ当たりのメッシュ数が16個〜80個の範囲であり、かつ、前記メッシュプレートよりも1インチ当たりのメッシュ数が同一若しくは小さい、及び、複数の前記中間メッシュプレートを積重して備える場合、上段位置の中間メッシュプレートより下段位置の前記中間メッシュプレートの1インチ当たりのメッシュ数が同一若しくは小さい前記[]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0023】
] 前記パレット基体、前記メッシュプレート、前記パンチングプレート、及び前記中間メッシュプレートの全て、または少なくとも一つは、導電性材料で構成されている前記[]または[]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0024】
] 前記[1]〜[]のいずれかにハニカム構造体の製造方法に使用される搬送用パレットであって、パレット基体と、前記パレット基体の上に重ねて載置され、複数のメッシュ孔を有するメッシュ素材で形成された平板状のメッシュプレートと、前記パレット基体及び前記メッシュプレートの間に挿設され、複数のパンチング孔が所定の間隔で穿設された平板状のパンチングプレートとを具備する搬送用パレット。
【0026】
] 前記メッシュプレートは、1インチ当たりのメッシュ数が30個〜100個の範囲である前記[6]に記載の搬送用パレット。
【0027】
] 前記メッシュプレートの下に重ねて配設され、複数のメッシュ孔を有するメッシュ素材で形成された平板状の1または複数の中間メッシュプレートを更に備える前記[
]または[]に記載の搬送用パレット。
【0028】
] 前記中間メッシュプレートは、1インチ当たりのメッシュ数が16個〜80個の範囲であり、かつ、前記メッシュプレートよりも1インチ当たりのメッシュ数が同一若しくは小さい、及び、複数の前記中間メッシュプレートを具備する場合、上段位置の中間メッシュプレートより下段位置の中間メッシュプレートの1インチ当たりのメッシュ数が同一若しくは小さい前記[]に記載の搬送用パレット。
【0029】
10] 前記パレット基体、前記メッシュプレート、前記パンチングプレート、及び前
記中間メッシュプレートの全て、または少なくとも一つは、導電性材料で構成されている
前記[]または[]に記載の搬送用パレット。
【発明の効果】
【0030】
本発明のハニカム構造体の製造方法によれば、縦押し成形時の不良の発生を抑制し、形状安定性に優れたハニカム構造体を製造することができる。更に、本発明の搬送用パレットによれば、セルの変形等の不良が発生することなく、縦押し成形による押出直後のハニカム成形体を受け止め、支持しながら次工程まで搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態のハニカム構造体の製造方法における縦押し成形工程及び次工程への搬送の一例を模式的に示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態の搬送用パレットの構成を示す分解斜視図である。
図3】本発明の搬送用パレットの別例構成を示す分解斜視図である。
図4】搬送用パレット及び搬送用パレットに載置されたハニカム成形体の構成を模式的に示す一部拡大断面図である。
図5】従来の搬送用パレット及び搬送用パレットに載置されるハニカム成形体の構成を示す分解斜視図である。
図6】従来の搬送プレートによるハニカム成形体のセルの閉塞を模式的に示す拡大参考斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しつつ、本発明のハニカム構造体の製造方法、及び当該ハニカム構造体の製造方法に使用される搬送用パレットの実施の形態について説明する。なお、本発明のハニカム構造体の製造方法、及び搬送用パレットは、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良等を加え得るものである。
【0033】
本発明の一実施形態のハニカム構造体の製造方法1(以下、単に「製造方法1」と称す。)は、図1に主として示されるように、予め粘度等の調整された成形材料Kを縦押し成形用の押出成形機2によって押し出し、ハニカム成形体3を形成する成形工程の一種である縦押し成形工程S1を具備するものである。
【0034】
本実施形態の製造方法1における縦押し成形工程S1は、図1に示すように、成形材料Kが内部に投入された押出成形機2から鉛直下方向A(重力方向)に当該成形材料Kを押し出す押出工程と、押出成形機2に取設された押出ダイ4(口金)に近接するように搬送用パレット10を配置するとともに、成形材料Kが連続的に押し出され、押出ダイと繋がった未切断のハニカム成形体3aを搬送用パレット10によって受け止め、支持するハニカム成形体受止工程と、成形材料Kの押出速度に連動し、未切断のハニカム成形体3aを受け止め、支持した状態で搬送用パレット10を徐々に下降させ、所定のハニカム長さのハニカム成形体3を形成するためのパレット下降工程とを主に備えている。なお、図1において、搬送用パレット10は簡略化して図示している。
【0035】
更に、本実施形態の製造方法1は、縦押し成形工程S1によって形成されたハニカム成形体3aを、所定のハニカム長さのハニカム成形体3に切断するための切断工程、切断されたハニカム成形体3を乾燥工程の実施される乾燥炉(図示しない)まで搬送用パレット10に載置したままで水平方向(搬送方向B)に沿って搬送する搬送工程等を備えている。
【0036】
縦押し成形工程S1には、上記示したように、押出成形機2及び搬送用パレット10の構成の他に、搬送用パレット10を昇降台11の上に載せ、押出成形機2の押出ダイ4に近接する位置まで当該昇降台11を上昇(図1における上昇方向C1参照)させる、及び、成形材料Kの鉛直下方向Aへの押出速度に応じて搬送用パレット10を載せた昇降台11を徐々に下降(図1における下降方向C2参照)させる機能を有するパレット昇降機構12と、搬送用パレット10を予め規定した下降位置まで下降させた状態で、未切断のハニカム成形体3aに対してワイヤーカッター13を水平方向に一致する切断方向Dに沿って移動させ、所定のハニカム長さのハニカム成形体3を形成するためのワイヤー切断部14等の各構成が使用される。
【0037】
ここで、搬送用パレット10及び昇降台11の下降方向C2は、成形材料Kの押し出される鉛直下方向Aと一致している。なお、パレット昇降機構12及びワイヤー切断部14に係る構成は、従来の縦押し成形工程においても使用される周知のものであるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0038】
本発明の一実施形態の搬送用パレット10は、図2に示すように、複数のフレームを格子状に重ね合わせて形成された平板状のパレット基体20と、パレット基体20の上に重ねて載置され、複数のメッシュ孔を有するメッシュ素材で形成された平板状のメッシュプレート30とを具備して主に構成されている。なお、本実施形態の製造方法1で使用される搬送用パレット10は、上記構成に加え、パレット基体20及びメッシュプレート30の間に挿設され、複数のパンチング孔41が所定の間隔で穿設されるとともに、互いに隣接するパンチング孔41の間に連結部42を有する平板状のパンチングプレート40を備えている。すなわち、本実施形態の搬送用パレット10は、パレット基体20、パンチングプレート40、及びメッシュプレート30の三つの平板状の部材によって構成された三層構造を呈するものである。
【0039】
本実施形態の搬送用パレット10において、パレット基体20、メッシュプレート30、及びパンチングプレート40は、それぞれアルミニウムを材料として用いて構成されている。ここで、搬送用パレット10を構成するパレット基体20等は、上記アルミニウムを材料とするものに限定されるものではなく、ステンレスや鉄、その他の金属材料を用いることができる。
【0040】
ここで、縦押し成形工程後に実施される乾燥工程は、主として誘電加熱乾燥方式が採用されることが多い。そのため、搬送用パレットを構成する材料として、非導電性の非金属材料を用いると、乾燥工程時に発生する放電現象によって、ハニカム成形体3の乾燥分布に偏りが生じたり、一部に焼損等の不具合が発生することがある。更に、局所的に高温となることで、ハニカム成形体の乾燥時における乾燥収縮が偏り、乾燥後のハニカム成形体が変形するおそれがある。そのため、上記のようなアルミニウム等の金属材料、換言すれば導電性材料を搬送用パレットに用いることが好適である。なお、誘電加熱乾燥方式以外の乾燥工程を実施する場合は、上記に限定されるものではなく、例えば、アラミド樹脂等の樹脂材料(非導電性の材料)を用いて、パレット基体等を構成するものであっても構わない。
【0041】
更に、本発明の搬送用パレット10は、図2に示したような、三層構造のものに限定されるものではない。例えば、パンチングプレート40の構成を省略し、パレット基体20及びメッシュプレート30で構成される二層構造の搬送用パレット(図示しない)であっても、或いは、図3に示すように、メッシュプレート30の下に更に中間メッシュプレート31を重ねて配設したものであっても構わない。
【0042】
ここで、中間メッシュプレート31は、複数のメッシュ孔を有するメッシュ素材で形成された平板状の部材であり、搬送用パレット10の最上段に位置するメッシュプレート30と略同一の構成である。すなわち、中間メッシュプレート31を更に備える四層構造の搬送用パレット10aとするものであっても構わない。なお、メッシュプレート30及びパンチングプレート40の間に挿設される中間メッシュプレート31の数は、一枚に限定されるものではなく、複数の中間メッシュプレート31を挿設し、多層構造の搬送用パレットとしてもよい。以下、四層構造の搬送用パレット10aを用いて説明を行うものとする。
【0043】
上記に示した搬送用パレット10aは、流体の流路となる一方の端面7aから他方の端面7bまで延びる複数のセル5を区画形成する隔壁6を備え、押出成形機から押し出された直後の未切断のハニカム成形体3aを下方から受け止め、支持する。このとき、受け止めた未切断のハニカム成形体3aの端面(ここでは、他方の端面7bに相当)と、搬送用パレット10aの最上段に位置するメッシュプレート30の上面とが接する(図4参照)。
【0044】
その結果、未切断のハニカム成形体3aの他方の端面7bにおけるセル5は閉塞されることはない。すなわち、メッシュプレート30のメッシュ孔によって、セル5の内部の空間と、外部との間に空気の流れる流路が確保される。これにより、上方から成形材料Kが連続的に押し出されても、セル5の内部の空間が減圧状態とならず、隔壁6の変形やセル5が押し潰される等の不具合を生じることがない。
【0045】
上記のように、空気の流れを確保するため、メッシュプレート30のメッシュ孔のサイズが重要となる。ここで、メッシュ素材の場合、1インチ当たりのメッシュ数(メッシュ孔の数)によって、メッシュの粗さや細かさが一般的に規定される。本実施形態の搬送用パレット10において使用されるメッシュプレート30は、1インチ当たりのメッシュ数が30個〜100個の範囲にできる。
【0046】
メッシュ数が30個未満の小さい、換言すれば、メッシュ孔が大きなサイズのメッシュプレートを使用した場合、既に説明したパンチングプレートと同様に、メッシュ孔を形成するワイヤーの線径が太くなるため、未切断のハニカム成形体3aのセル5の一部がメッシュプレートのワイヤーによって閉塞され、セル5の内部が減圧状態となる。そのため、寸法安定性に係る問題を解決することができない。
【0047】
一方、メッシュ数が100個超の大きい、換言すれば、メッシュ孔が小さいサイズのメッシュプレートを使用した場合、セル5の内部の空間と外部との空気の流れの流通性(通気性)が損なわれる可能性が高く、更に、誘電加熱乾燥方式による加熱工程の際の放電現象の発生が生じ易くなる等の問題がある。そこで、本実施形態の搬送用パレット10aにおいては、1インチ当たりのメッシュ数が上記規定した範囲内のメッシュ素材を用いたメッシュプレート30が使用される。
【0048】
一方、メッシュプレート30の下に配設される中間メッシュプレート31は、1インチ当たりのメッシュ数が16個〜80個の範囲のものが使用される。更に、中間メッシュプレート31は、多層構造の搬送用パレット10の最上段に位置するメッシュプレート30のメッシュ数よりも同一若しくは小さいメッシュ数のものが選択される。
【0049】
例えば、メッシュプレート30のメッシュ数が「30」の場合、その下に配置された中間メッシュプレート31のメッシュ数が「16」のものを選択することができる。中間メッシュプレート31は、未切断のハニカム成形体3aの他方の端面7bと直に接するものではないため、上記のようなワイヤーの線径が太くなっても、セル5を閉塞することがない。そのため、セル5の内部の空間との通気性を良好とするために、メッシュ孔の大きなメッシュ素材で構成された中間メッシュプレート31を採用することができる。なお、メッシュプレート30及び中間メッシュプレート31のメッシュ数を同一としてもよい。しかしながら、メッシュプレート30より中間メッシュプレート31のメッシュ数を大きくすると、外部との通気性が損なわれるため、本発明の搬送用パレットにおいて採用することはできない。
【0050】
更に、メッシュプレート30及びパンチングプレート40(またはパレット基体20)の間に、複数枚の中間メッシュプレート31を積重して配設する場合は、同様に上段位置にある中間メッシュプレート31より下段位置にある中間メッシュプレート31のメッシュ数を同一若しくは小さくする必要がある。上記メッシュプレート30及び中間メッシュプレート31と同様の理由からである。
【0051】
このようにして、三層或いは四層のような多層構造(積層構造)を呈し、かつ、最上段に規定のメッシュ数で構成されたメッシュプレート30を備える搬送用パレット10,10aを用いることで、当該搬送用パレット10等で受け止めた未切断のハニカム成形体3aは、セル5が閉塞されることがなく、セル5の内部の空間が減圧とならない。その結果、従来のパンチングプレートが最上段に位置する搬送用パレットで発生するセルや隔壁の潰れや変形等の不具合が生じることがない。
【0052】
すなわち、本実施形態の製造方法1及びこれに用いられる搬送用パレット10,10aによって、ハニカム径が大きく、或いはハニカム長さが長い大型のハニカム成形体を形成する際に、縦押し成形であっても優れた形状安定性を保持することができ、セルの変形のない寸法安定性の高いハニカム構造体を製造することができる。これにより、ハニカム構造体の内部を流れる流体の流れを安定させることができ、浄化性能等の優れた効果を発揮するハニカム構造体とすることができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法、及び搬送用パレットについて、下記の実施例に基づいて説明するが、本発明の製造方法は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
(1)縦押し成形によるハニカム構造体の製造
本発明の搬送用パレットによるハニカム構造体のセルの変形等の影響を確認するため、実施例1〜8、及び比較例1の条件で作成された複数の搬送用パレットを用い、ハニカム構造体を縦押し成形工程により製造した。ここで、使用する成形材料、押出成形機による基本的な押出条件、ハニカム成形体の乾燥及び焼成等の処理は、特に断りのない限り、いずれも同一とした。ここで、実施例1〜8、比較例1は、製造するハニカム構造体のハニカム径、ハニカム長さ、及びハニカム構造体の製品重量、搬送用パレットの構成(パンチングプレートの有無、メッシュプレートの有無、メッシュ数、中間メッシュプレートの有無)等について条件を変化させたものである。また、搬送用パレットにおけるパレット基体及びパンチングプレートはいずれも同一のものを用いた。
【0055】
実施例1は、パレット基体、パンチングプレート、及びメッシュプレート(メッシュ数:30個)の三層構造の搬送用パレットを用い、縦押し成形により、セル密度:300cpsi、ハニカム径:320mm、ハニカム長さ:550mm、製品重量:≒35000gのハニカム構造体を製造したものである。実施例2は、実施例1とほぼ同条件で製品重量:≒33000gのハニカム構造体を製造するものである。ここで、メッシュ(メッシュ数)の測定は、JIS G3555(2004)の「11.2 メッシュ」の測定方法に準拠して行った(以下、同じ)。
【0056】
実施例3は、メッシュプレート(メッシュ数:30個)の下に、中間メッシュプレート(メッシュ数:16個)を配設し、パレット基体及びパンチングプレートとともに四層構造の搬送用パレットを用い、縦押し成形により、セル密度:600cpsi、ハニカム径:380mm、ハニカム長さ:400mm、製品重量:≒17000gのハニカム構造体を製造したものである。実施例4は、実施例1,2と同一の搬送用パレットを用い、ハニカム径:320mm、ハニカム長さ:300mm、製品重量:≒8700gのハニカム構造体を製造したものである。
【0057】
実施例5は、パレット基体及びメッシュプレート(メッシュ数:30個)の二層構造の搬送用パレットを用い、縦押し成形により、セル密度:600cpsi、ハニカム径:380mm、ハニカム長さ:400mmのハニカム構造体を製造したものであり、実施例6は、パレット基体、パンチングプレート、及びメッシュプレート(メッシュ数:80個)の三層構造の搬送用パレットを用い、縦押し成形により、実施例5と同一のハニカム構造体を製造したものである。実施例1〜6は、いずれも本発明の製造方法及び搬送用パレートにおいて規定された要件を満たすものである。
【0058】
実施例7は、実施例6と略同一の条件で、メッシュ数が16個のメッシュプレートを使用する点で、実施例8はメッシュ数が120個のメッシュプレートを使用する点で、本発明に規定された要件を逸脱するものである。比較例1は、パレット基体及びパンチングプレートで構成される二層構造の従来の搬送用パレットを用いてハニカム構造体を製造したものである。
【0059】
(2)評価
実施例1〜8、及び比較例1によって製造されたハニカム構造体について、セルや隔壁等の潰れの有無、乾燥時の焼損等の不良について目視で確認し、“良”、“可”、及び“不可”の評価を行った。実施例1〜8、及び比較例1について、製造されたハニカム構造体の仕様、搬送用パレットの構成、及び評価の結果をまとめたものを下記表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示されるように、メッシュプレートを有しない既存の搬送用パレット(比較例1)に対し、最上段にメッシュプレートを有する実施例1〜6は、いずれも押出成形時のセルの閉塞が発生することなく、セルの潰れや変形等のない寸法安定性に優れたハニカム構造体を得ることができることが確認された。また、実施例7及び実施例8に示されるように、メッシュプレートのメッシュ数が30個未満、或いは100個超の場合、いずれも評価が実施例1〜6よりも多少落ちるが、実用上の問題のない“可”となることが確認された。すなわち、本発明において規定したメッシュ数が30個〜100個の範囲のメッシュプレートを使用することが特に好適であることが確認された。
【0062】
加えて、実施例3に示されるように、メッシュプレートの下に、更に中間メッシュプレートを配する場合でも良好な評価を得ること示され、メッシュプレートよりも中間メッシュプレートのメッシュ数を小さくしてもよいことが確認された。更に、実施例5に示されるように、パンチングプレートを有しない、パレット基体及びメッシュプレートの二層構造の搬送用パレットであっても良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、縦押し成形工程を具備する大型のハニカム構造体を製造するのに好適に使用することができる。更に、本発明の搬送用パレットは、上記縦押し成形工程の際にハニカム成形体を受け止め、支持するのに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1:製造方法(ハニカム構造体の製造方法)、2:押出成形機、3,100:ハニカム成形体、3a:未切断のハニカム成形体、4:押出ダイ、5,105:セル、6,106:隔壁、7a,104a:一方の端面、7b,104b:他方の端面、10,10a:搬送用パレット、20,102:パレット基体、30:メッシュプレート、31:中間メッシュプレート、40,103:パンチングプレート、41,103a:パンチング孔、42,103b:連結部、A:鉛直下方向、B:搬送方向、C1:上昇方向、C2:下降方向、D:切断方向、K:成形材料、H:閉塞領域、S1:縦押し成形工程。
図1
図2
図3
図4
図5
図6