(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の熱変位補正システム1の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】実施例2の熱変位補正システム1の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】実施例3の熱変位補正システム1の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】実施例4の熱変位補正システム1の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】実施例4の熱変位補正システム1の一変形例の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】実施例5の熱変位補正システム1の機能構成を示すブロック図である。
【
図7】実施例1の熱変位補正システム1の動作を示すフローチャートである。
【
図8】実施例2及び実施例3の熱変位補正システム1の動作を示すフローチャートである。
【
図9】実施例4及び実施例5の熱変位補正システム1の動作を示すフローチャートである。
【
図10】実施例4の熱変位補正システム1の一変形例の動作を示すフローチャートである。
【
図11】熱変位補正装置10のハードウェア構成図である。
【0009】
本発明の実施の形態にかかる熱変位補正システム1の構成について説明する。
熱変位補正システム1は、熱変位補正装置10及び計算機20を含む。熱変位補正装置10は、典型的には機械の制御装置であり、例えば数値制御装置やロボット制御装置等である。計算機20は、典型的にはサーバ又はパーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。なお計算機20は単一の情報処理装置であってもよく、分散処理を行う複数の情報処理装置により構成されても良い。熱変位補正装置10と計算機20とは通信ネットワークを介して互いに通信可能に接続される。熱変位補正システム1は、1以上の熱変位補正装置10及び1以上の計算機20を含みうる。
【0010】
図11は、熱変位補正装置10の要部の概略的なハードウェア構成図である。熱変位補正装置10は、CPU11、バス12、揮発性メモリ13、不揮発性メモリ14、インタフェース15、インタフェース16、インタフェース17、入出力装置18を有する。
【0011】
CPU11は、熱変位補正装置10を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、不揮発性メモリ14に格納されたプログラムをバス12を介して読み出し、プログラムに従って熱変位補正装置10全体を制御する。
【0012】
不揮発性メモリ14は、例えば図示しないバッテリでバックアップされるなどして、熱変位補正装置10の電源が遮断されても記憶状態が保持されるメモリとして構成される。不揮発性メモリ14に記憶されているプログラムやデータは、利用時には揮発性メモリ13に展開されても良い。揮発性メモリ13には、不揮発性メモリ14から展開されたプログラムやデータの他、一時的な計算データや表示データ、入出力装置18を介して入力されたデータ等が格納される。
【0013】
入出力装置18は例えばディスプレイやキーボード等である。入出力装置18のキーボードから入力された指令やデータは、インタフェース15を介してCPU11に渡される。また、CPU11から出力された表示データは、インタフェース15を介して入出力装置18のディスプレイに表示される。
【0014】
機械30は産業用機械であり、例えば工作機械等である。1以上の機械30が、インタフェース16を介して熱変位補正装置10に接続される。機械30から送信されるデータはインタフェース16を介してCPU11に渡される。
【0015】
計算機20は、インタフェース17を介して熱変位補正装置10に接続される。通信ネットワークを介して計算機20から送信されるデータは、インタフェース17により受信されてCPU11に渡される。また、CPU11から出力されたデータは、インタフェース17により通信ネットワークを介して計算機20に送信される。
【0016】
図12は、計算機20の要部の概略的なハードウェア構成図である。計算機20は、CPU21、バス22、揮発性メモリ23、不揮発性メモリ24、インタフェース25、インタフェース27、入出力装置28を有する。
【0017】
CPU21は、計算機20を全体的に制御するプロセッサである。CPU21は、不揮発性メモリ24に格納されたプログラムをバス22を介して読み出し、プログラムに従って計算機20全体を制御する。
【0018】
不揮発性メモリ24は、例えば図示しないバッテリでバックアップされるなどして、計算機20の電源が遮断されても記憶状態が保持されるメモリとして構成される。不揮発性メモリ24に記憶されているプログラムやデータは、利用時には揮発性メモリ23に展開されても良い。揮発性メモリ23には、不揮発性メモリ24から展開されたプログラムやデータの他、一時的な計算データや表示データ、入出力装置28を介して入力されたデータ等が格納される。
【0019】
入出力装置28は例えばディスプレイやキーボード等である。入出力装置28のキーボードから入力された指令やデータは、インタフェース25を介してCPU21に渡される。また、CPU21から出力された表示データは、インタフェース25を介して入出力装置28のディスプレイに表示される。
【0020】
熱変位補正装置10は、インタフェース27を介して計算機20に接続される。通信ネットワークを介して熱変位補正装置10から送信されるデータは、インタフェース27により受信されてCPU21に渡される。また、CPU21から出力されたデータは、インタフェース27により通信ネットワークを介して熱変位補正装置10に送信される。
【0021】
<実施例1>
実施例1として、計算機20が外部センサ40等から取得する環境データに基づいて補正値の計算を行い、熱変位補正装置10が計算機20から補正値を取得して熱変位補正を実行する熱変位補正システム1について説明する。
【0022】
図1は、実施例1にかかる熱変位補正システム1の概略的な機能構成を示すブロック図である。計算機20は、データ取得部201、補正値推論部202、補正値出力部203を有する。熱変位補正装置10は、補正値取得部101、補正実行部102を有する。
【0023】
図7は、実施例1にかかる熱変位補正システム1の動作を示すフローチャートである。このフローチャートに沿って、熱変位補正システム1の各構成要素の動作について説明する。
【0024】
S101:計算機20のデータ取得部201は、1以上の外部センサ40等から環境データ(典型的には数値データ)を受信する。外部センサ40は、典型的には機械が設置されている環境に関するデータを取得可能なデバイスである。外部センサ40と計算機20とを共に工場内ネットワーク等に接続し、外部センサ40から計算機20に環境データが送られるよう構成するなら、計算機20に環境に関するデータを集約できる。外部センサ40が取得するデータには、例えば工場の出入口のシャッターの開閉状態、室温、工場内における機械の位置(所定の基点(例えばシャッター)からの距離、所定の基点からの相対位置を示す座標値、工場内の概略位置を示す区画番号等)、季節、温度、工場の立地(緯度及び経度等)、工場内の機械の稼働状況(稼働台数等)、作業員の出勤人数等が含まれ得る。
【0025】
データ取得部201は、外部センサ40から取得される環境データ以外にも、補正値の計算に使用することのできる任意のデータを取得することができる。例えば、作業者が入出力装置28を介して入力するデータを取得しても良い。
【0026】
S102:補正値推論部202は、データ取得部201が取得した環境データを使用して補正値を算出する。補正値推論部202は、典型的には補正式を予め保持しており、環境データを補正式に投入することにより補正値を得る。なお補正値の単位は距離(μm)又は角度である。
【0027】
S103:補正値出力部203は、補正値推論部202が計算した補正値を、通信ネットワークを介して熱変位補正装置10の補正値取得部101に対し出力する。
【0028】
S104:熱変位補正装置10の補正値取得部101は、補正値出力部203が出力した補正値を通信ネットワークを介して取得する。補正実行部102は、補正値取得部101が取得した補正値を使用して熱変位補正を実行する。なお熱変位補正の実行方法については公知であるため詳細な説明を省略する。
【0029】
実施例1においては、計算機20が、熱変位補正装置10からはデータを取得することなく、外部センサ40等から取得した環境データを使用して補正値を計算する。熱変位補正装置10は、計算機20が計算した補正値を使用して熱変位補正を行う。
【0030】
よって実施例1によれば、補正値の計算処理にネットワーク上の計算機20の計算リソースを利用できる。補正値の計算処理に必要な環境データも熱変位補正装置10を経由せずに計算機20が取得できるから、熱変位補正装置10の負荷は従来に比べ大幅に軽減される。また、計算機20においては、熱変位補正装置10に比べて比較的容易に補正式の更新や変更が可能であるから、技術革新等にも柔軟に追従できる。また、計算機20は、熱変位補正装置10単体では取得が困難であった環境に関するデータを集約することが容易であるので、従来使用できなかったデータを使用して高精度な補正値を求めることができる。環境データ及び補正値は、計算機20と熱変位補正装置10との間でネットワークを介して送受信されるが、熱変位の進行は比較的緩やかであり、補正に厳密なリアルタイム性は必要とされないから、ネットワークの遅延は一定程度許容され得る。換言すれば、熱変位補正はネットワーク上での処理に適性がある。
【0031】
<実施例2>
実施例2として、計算機20が外部センサ40等から取得する環境データ及び熱変位補正装置10から取得する装置データに基づいて補正値の計算を行い、熱変位補正装置10が計算機20から補正値を取得して熱変位補正を実行する熱変位補正システム1について説明する。
【0032】
図2は、実施例2にかかる熱変位補正システム1の概略的な機能構成を示すブロック図である。計算機20は、データ取得部201、補正値推論部202、補正値出力部203を有する。熱変位補正装置10は、補正値取得部101、補正実行部102を有する。実施例2の特徴として、熱変位補正装置10はさらに、装置データ取得部103、装置データ出力部104を有する。
【0033】
図8は、実施例2にかかる熱変位補正システム1の動作を示すフローチャートである。このフローチャートに沿って、熱変位補正システム1の各構成要素の動作について説明する。
【0034】
S201:熱変位補正装置10の装置データ取得部103は、制御装置の機能を利用して機械の状態に関するデータ(装置データ)を取得する。装置データ取得部103が取得する装置データには、例えば機械の各所の温度、クーラントON/OFFの状態、クーラントの温度、モータ回転数、モータの温度、機械のドアの開閉状態、加工速度、運転時間、ワーク材質等が含まれ得る。
【0035】
装置データ出力部104は、装置データ取得部103が取得した装置データを、通信ネットワークを介して計算機20のデータ取得部201に対し出力する。
【0036】
計算機20のデータ取得部201は、装置データ出力部104が出力した装置データを通信ネットワークを介して取得する。また実施例1のS101と同様に、データ取得部201は、1以上の外部センサ40等から環境データを受信する。データ取得部201は、作業者が入出力装置28を介して入力するデータ等を取得しても良い。
【0037】
S202:補正値推論部202は、データ取得部201が取得した環境データ及び装置データを使用して補正値を算出する。補正値推論部202は、典型的には補正式を予め保持しており、環境データ及び装置データを補正式に投入することにより補正値を得る。
【0038】
S203:補正値出力部203は、補正値推論部202が計算した補正値を、通信ネットワークを介して熱変位補正装置10の補正値取得部101に対し出力する。
【0039】
S204:熱変位補正装置10の補正値取得部101は、補正値出力部203が出力した補正値を通信ネットワークを介して取得する。補正実行部102は、補正値取得部101が取得した補正値を使用して熱変位補正を実行する。
【0040】
実施例2においては、計算機20が、熱変位補正装置10から取得した装置データと、外部センサ40等から取得した環境データとを使用して補正値を計算する。熱変位補正装置10は、計算機20が計算した補正値を使用して熱変位補正を行う。
【0041】
よって実施例2によれば、補正値の計算処理にネットワーク上の計算機20の計算リソースを利用できる。また、計算機20においては、熱変位補正装置10に比べて比較的容易に補正式の更新や変更が可能であるから、技術革新等にも柔軟に追従できる。また、計算機20は、熱変位補正装置10単体では取得が困難であった環境に関するデータを集約することが容易であるとともに、熱変位補正装置10が取得する機械個々の状態を反映した装置データを使用できるので、実施例1よりさらに高精度な補正値を求めることができる。
【0042】
<実施例3>
実施例3として、計算機20が外部センサ40等から取得する環境データ及び熱変位補正装置10から取得する装置データに基づいて補正値の計算を行い、熱変位補正装置10が計算機20から補正値を取得して熱変位補正を実行する熱変位補正システム1について説明する。計算機20は、機械学習により生成された学習モデルを使用して補正値を計算する。
【0043】
図3は、実施例3にかかる熱変位補正システム1の概略的な機能構成を示すブロック図である。計算機20は、データ取得部201、補正値推論部202、補正値出力部203を有する。熱変位補正装置10は、補正値取得部101、補正実行部102、装置データ取得部103、装置データ出力部104を有する。
【0044】
実施例3の補正値推論部202は、事前に機械学習によって生成された学習モデルを保持している。学習モデルは、典型的には、環境データ及び装置データと、補正値と、のセットを教師データとして多数学習器に入力し、環境データ及び装置データと、補正値と、の相関関係を学習させる教師あり学習により生成できる。教師あり学習による学習モデルの生成手法については公知であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0045】
補正値推論部202は、後述の実施例4で示すように、オンライン学習により逐次更新される学習モデルを使用して補正値を算出することとしても良い。
【0046】
実施例2と同じく
図8のフローチャートに沿って、実施例3にかかる熱変位補正システム1の各構成要素の動作について説明する。
【0047】
S201:熱変位補正装置10の装置データ取得部103は、制御装置から機械に関するデータ(装置データ)を取得する。装置データ出力部104は、装置データ取得部103が取得した装置データを、通信ネットワークを介して計算機20のデータ取得部201に対し出力する。
【0048】
計算機20のデータ取得部201は、装置データ出力部104が出力した装置データを通信ネットワークを介して取得する。また実施例1のS101と同様に、データ取得部201は、1以上の外部センサ40等から環境データを受信する。データ取得部201は、作業者が入出力装置28を介して入力するデータ等を取得しても良い。
【0049】
S202:補正値推論部202は、データ取得部201が取得した環境データ及び装置データを使用して補正値を算出する。実施例3の補正値推論部202は、環境データ及び装置データと、補正値と、の相関関係を機械学習により事前に学習した学習モデルを保持している。この学習モデルに、データ取得部201が取得した環境データ及び装置データを入力することにより、対応する補正値を出力として得ることができる。
【0050】
S203:補正値出力部203は、補正値推論部202が計算した補正値を、通信ネットワークを介して熱変位補正装置10の補正値取得部101に対し出力する。
【0051】
S204:熱変位補正装置10の補正値取得部101は、補正値出力部203が出力した補正値を通信ネットワークを介して取得する。補正実行部102は、補正値取得部101が取得した補正値を使用して熱変位補正を実行する。
【0052】
実施例3においては、計算機20が、熱変位補正装置10から取得した装置データと、外部センサ40等から取得した環境データとを、事前に機械学習により生成された学習モデルに入力することにより補正値を計算する。熱変位補正装置10は、計算機20が計算した補正値を使用して熱変位補正を行う。
【0053】
よって実施例3によれば、補正値の計算処理にネットワーク上の計算機20の計算リソースを利用できる。特に、機械学習による補正値の推論は処理負荷が重く、熱変位補正装置10での計算は困難である場合が多いから、実施例3の構成が好適である。また、計算機20は、熱変位補正装置10単体では取得が困難であった環境に関するデータを集約することが容易であるとともに、熱変位補正装置10が取得する機械個々の状態を反映した装置データを使用できるので、実施例1よりさらに高精度な補正値を求めることができる。
【0054】
実施例3の変形例として、実施例1の構成を前提として、学習モデルを使用して補正値を算出することも可能である。すなわち、計算機20は、装置データを使用せず、外部センサ40等から取得した環境データを事前に機械学習により生成された学習モデルに入力することにより補正値を計算する。熱変位補正装置10は、計算機20が計算した補正値を使用して熱変位補正を行う。
【0055】
この変形例によっても、補正値の計算処理にネットワーク上の計算機20の計算リソースを利用できる。特に、機械学習による補正値の推論は処理負荷が重く、熱変位補正装置10での計算は困難である場合が多いから、変形例の構成は好適である。また、計算機20は、熱変位補正装置10単体では取得が困難であった環境に関するデータを集約することが容易であるので、従来より高精度な補正値を求めることができる。
【0056】
補正値の推定及びオンライン学習のために学習モデルに入力されるデータは、環境データ及び装置データの両方であっても良く、いずれか一方のみであっても良く、環境データ及び装置データの一部のみであっても良い。例えば、環境データ又は装置データの一方については学習モデルを使用した補正値の推定及びオンライン学習を行い、他方については従来の補正式を使用した補正値の計算を行っても良い。また、例えば環境データ又は装置データのうち補正式により十分な精度が得られるデータについては補正式を使用して補正値を計算し、その他のデータについては学習モデルを使用した補正値の推定及びオンライン学習を行っても良い。これにより、精度と計算効率とを両立させることが可能である。この場合、補正値推論部202は、複数の方法で算出された複数の補正値を統合(例えば平均等の統計量を算出)し、補正値出力部203は、この統合された補正値を出力することができる。
【0057】
<実施例4>
実施例4として、計算機20が外部センサ40等から取得する環境データ及び熱変位補正装置10から取得する装置データに基づいて補正値の計算を行い、熱変位補正装置10が計算機20から補正値を取得して熱変位補正を実行する熱変位補正システム1について説明する。計算機20は、事前に機械学習により生成された学習モデルを使用して補正値を計算する。また、取得した環境データ及び装置データを使用してオンライン学習(追加学習)を行い、学習モデルを更新する。
【0058】
図4は、実施例4にかかる熱変位補正システム1の概略的な機能構成を示すブロック図である。計算機20は、データ取得部201、補正値推論部202、補正値出力部203を有する。実施例4の特徴として、計算機20はさらに学習部204を有する。熱変位補正装置10は、補正値取得部101、補正実行部102、装置データ取得部103、装置データ出力部104を有する。
【0059】
図9は、実施例4にかかる熱変位補正システム1の動作を示すフローチャートである。このフローチャートに沿って、熱変位補正システム1の各構成要素の動作について説明する。
【0060】
S301:熱変位補正装置10の装置データ取得部103は、制御装置の機能を利用して機械に関するデータ(装置データ)を取得する。装置データ出力部104は、装置データ取得部103が取得した装置データを、通信ネットワークを介して計算機20のデータ取得部201に対し出力する。
【0061】
計算機20のデータ取得部201は、装置データ出力部104が出力した装置データを通信ネットワークを介して取得する。また実施例1のS101と同様に、データ取得部201は、1以上の外部センサ40等から環境データを受信する。データ取得部201は、作業者が入出力装置28を介して入力するデータ等を取得しても良い。
【0062】
S302:補正値推論部202は、データ取得部201が取得した環境データ及び装置データを使用して補正値を算出する。実施例3と同様に、補正値推論部202は、環境データ及び装置データと、補正値と、の相関関係を機械学習により事前に学習した学習モデルを保持している。この学習モデルに、データ取得部201が取得した環境データ及び装置データを入力することにより、対応する補正値を出力として得ることができる。
【0063】
S303:学習部204は、データ取得部201が取得した環境データ及び装置データ、並びに補正値推論部202が算出した補正値を使用してオンライン学習を行う。すなわち、データ取得部201が取得する環境データ及び装置データ、並びに補正値推論部202が算出した補正値を追加データとして使用し、学習モデルを逐次更新する。なおオンライン学習の具体的手法については公知であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0064】
S304:補正値出力部203は、補正値推論部202が計算した補正値を、通信ネットワークを介して熱変位補正装置10の補正値取得部101に対し出力する。
【0065】
S305:熱変位補正装置10の補正値取得部101は、補正値出力部203が出力した補正値を通信ネットワークを介して取得する。補正実行部102は、補正値取得部101が取得した補正値を使用して熱変位補正を実行する。
【0066】
実施例4においては、計算機20が、熱変位補正装置10から取得した装置データと、外部センサ40等から取得した環境データとを、事前に機械学習により生成された学習モデルに入力することにより補正値を計算する。熱変位補正装置10は、計算機20が計算した補正値を使用して熱変位補正を行う。加えて、計算機20がオンライン学習により学習モデルを逐次更新する。
【0067】
よって実施例4によれば、補正値の計算処理にネットワーク上の計算機20の計算リソースを利用できる。特に、機械学習による補正値の推論は処理負荷が重く、熱変位補正装置10での計算は困難である場合が多い。またオンライン学習によるモデルの逐次更新にも相応のリソースを要するから、実施例3の構成が好適である。また、計算機20は、熱変位補正装置10単体では取得が困難であった環境に関するデータを集約することが容易であるとともに、熱変位補正装置10が取得する機械個々の状態を反映した装置データを使用できる。加えて、オンライン学習により学習モデルの精度を逐次維持又は向上させることが可能であるので、実施例3よりさらに高精度な補正値を求めることができる。
【0068】
実施例4においても変形例として、実施例1の構成を前提として、学習モデルを使用して補正値を算出するとともに、学習モデルを逐次更新するよう構成ことも可能である。すなわち、計算機20が、外部センサ40等から取得した環境データを、事前に機械学習により生成された学習モデルに入力することにより補正値を計算する。熱変位補正装置10は、計算機20が計算した補正値を使用して熱変位補正を行う。加えて、計算機20がオンライン学習により学習モデルを逐次更新する。
【0069】
実施例4の第2の変形例として、計算機20はオンライン学習による学習モデルの逐次更新のみを実行することも可能である。
図5は、実施例4の第2の変形例にかかる熱変位補正システム1の概略的な機能構成を示すブロック図である。計算機20は、データ取得部201、学習部204を有する。熱変位補正装置10は、装置データ取得部103、装置データ出力部104を有する。
【0070】
図10は、実施例4の第2の変形例にかかる熱変位補正システム1の動作を示すフローチャートである。このフローチャートに沿って、熱変位補正システム1の各構成要素の動作について説明する。
【0071】
S401:熱変位補正装置10の装置データ取得部103は、制御装置の機能を利用して機械に関するデータ(装置データ)を取得する。装置データ出力部104は、装置データ取得部103が取得した装置データを、通信ネットワークを介して計算機20のデータ取得部201に対し出力する。
【0072】
計算機20のデータ取得部201は、装置データ出力部104が出力した装置データを通信ネットワークを介して取得する。また実施例1のS101と同様に、データ取得部201は、1以上の外部センサ40等から環境データを受信する。データ取得部201は、作業者が入出力装置28を介して入力するデータ等を取得しても良い。
【0073】
S402:補正値推論部202は、データ取得部201が取得した環境データ及び装置データを使用して補正値を算出する。実施例3と同様に、補正値推論部202は、環境データ及び装置データと、補正値と、の相関関係を機械学習により事前に学習した学習モデルに、データ取得部201が取得した環境データ及び装置データを入力することにより、対応する補正値を出力として得ることができる。
【0074】
S403:学習部204は、データ取得部201が取得した環境データ及び装置データ、並びに補正値推論部202が算出した補正値を使用してオンライン学習を行う。すなわち、データ取得部201が取得する環境データ及び装置データ、並びに補正値推論部202が算出した補正値を追加データとして使用し、学習モデルを逐次更新する。
【0075】
実施例4の第2の変形例においては、計算機20が、熱変位補正装置10から取得した装置データと、外部センサ40等から取得した環境データと使用して、オンライン学習により学習モデルを逐次更新する。
【0076】
よって実施例4の第2の変形例によれば、ネットワーク上の計算機20の計算リソースを利用して学習モデルを逐次更新し、学習モデルの精度を逐次維持又は向上させることが可能である。オンライン学習によるモデルの逐次更新には相応のリソースを要するから、実施例4の第2の変形例の構成は好適である。
【0077】
<実施例5>
実施例5として、計算機20が外部センサ40等から取得する環境データや、複数の熱変位補正装置10から取得する装置データに基づいて、学習モデルの更新や学習モデルを使用した補正値の推定を行い、熱変位補正装置10が計算機20から補正値を取得して熱変位補正を実行する熱変位補正システム1について説明する。
【0078】
図6は、実施例5にかかる熱変位補正システム1の概略的な機能構成を示すブロック図である。計算機20は、データ取得部201、補正値推論部202、補正値出力部203、学習部204を有する。実施例5の特徴として、複数の熱変位補正装置10が計算機20に接続されている。それぞれの熱変位補正装置10は、補正値取得部101、補正実行部102、装置データ取得部103、装置データ出力部104を有する。
【0079】
複数の熱変位補正装置10はそれぞれ、計算機20との関係において実施例4に従って動作する(
図9参照)。
すなわち、熱変位補正装置10各々の装置データ取得部103は、制御装置から機械に関するデータ(装置データ)を取得する。装置データ出力部104は、装置データを計算機20のデータ取得部201に対し出力する。計算機20のデータ取得部201は、熱変位補正装置10各々の装置データ出力部104が出力した装置データを取得する。またデータ取得部201は、1以上の外部センサ40等から環境データを受信する。データ取得部201は、作業者が入出力装置28を介して入力するデータ等を取得しても良い。(S301)
【0080】
補正値推論部202は、データ取得部201が取得した環境データ及び装置データを学習モデルに入力し、対応する補正値を出力として得る。(S302)
【0081】
学習部204は、データ取得部201が取得した環境データ及び装置データ、並びに補正値推論部202が算出した補正値を使用してオンライン学習を行う。(S303)
【0082】
補正値出力部203は、補正値推論部202が出力した補正値を熱変位補正装置10各々の補正値取得部101に対し出力する。(S304)
【0083】
熱変位補正装置10各々の補正値取得部101は、補正値出力部203が出力した補正値を取得する。補正実行部102は、取得した補正値を使用して熱変位補正を実行する。(S305)
【0084】
実施例5においては、計算機20が、複数の熱変位補正装置10から取得した装置データと、外部センサ40等から取得した環境データとを、事前に機械学習により生成された学習モデルに入力することにより補正値を計算する。複数の熱変位補正装置10各々は、計算機20が計算した補正値を使用して熱変位補正を行う。
【0085】
よって実施例5によれば、補正値の計算処理にネットワーク上の計算機20の計算リソースを利用できる。特に、実施例5のような分散環境における機械学習は処理負荷が重く、熱変位補正装置10での計算は困難である場合が多いから、実施例5の構成が好適である。また、計算機20は、熱変位補正装置10単体では取得が困難であった環境に関するデータを集約することが容易であるとともに、熱変位補正装置10が取得する機械個々の状態を反映した装置データを使用できるので、実施例1よりさらに高精度な補正値を求めることができる。
【0086】
実施例5で使用及び更新される学習モデルは、複数の熱変位補正装置10に共通であっても良く、熱変位補正装置10ごとに独立であっても良い。例えば複数の熱変位補正装置10の特性が共通している(例えば機械の形式が共通しており熱変位の発現傾向に類似性がある、工場内における機械の設置環境に類似性がある等)なら、共通の学習モデルを利用することにより、学習モデルの精度を効率的に向上させることができる。一方、熱変位補正装置10ごとに独立の学習モデルを利用することにより、機械ごとに異なる特性を反映した緻密な補正値の推定が可能となる。
【0087】
学習モデルを、入力されるデータの性質に応じて複数使用しても良い。例えば工場内の環境がほぼ一様である場合等には、環境データについては複数の熱変位補正装置10で共通の学習モデルを使用及び更新することで効率化し、装置データについては熱変位補正装置10ごとに独立の学習モデルを使用及び更新することで個別の特性を反映できるよう構成しても良い。また、例えば環境データ及び装置データのうち機械間で共通性の高いデータ(例えば環境データのうち、工場の出入口のシャッターの開閉状態、工場内の概略位置を示す区画番号、季節、温度、工場の立地(緯度及び経度等)、工場内の機械の稼働状況(稼働台数等)、作業員の出勤人数等。装置データのうち、ワーク材質等)については複数の熱変位補正装置10で共通の学習モデルを使用及び更新することで効率化し、個別性の強いデータ(例えば環境データのうち、室温、工場内における機械の位置(所定の基点(例えばシャッター)からの距離、所定の基点からの相対位置を示す座標値等。装置データのうち機械の各所の温度、クーラントON/OFFの状態、クーラントの温度、モータ回転数、モータの温度、機械のドアの開閉状態、加工速度、運転時間等)については熱変位補正装置10ごとに独立の学習モデルを使用及び更新することで個別の特性を反映できるよう構成しても良い。
【0088】
複数の学習モデルを併用する場合、補正値推論部202は、複数の方法で算出された複数の補正値を統合(例えば平均等の統計量を算出)し、補正値出力部203は、この統合された補正値を出力することができる。
【0089】
学習モデルとして、他の熱変位補正システム1において生成された学習モデルを蒸留して生成される新たな学習モデル(蒸留モデル)を採用しても良い。特に、複数の機械間で共通性の高いデータを使用する学習モデルについては、1つの熱変位補正システム1において上述の実施の形態により学習モデルを生成した後、当該学習モデル(複雑モデル)と同じ出力となるように学習させた簡略モデルを作成し、他の熱変位補正システム1では簡略モデルを利用することができる。
【0090】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。例えば、上述の実施の形態で示した学習用パラメータや機械学習手法(教師あり学習、オンライン学習等)はあくまで一例であり、必要に応じ他の任意の学習用パラメータや機械学習手法を採用しても良い。また、上述の実施の形態で示した処理の順序等は、本発明の趣旨を損なわない範囲において適宜入れ替えても良い。