(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802221
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】エアコンシステム
(51)【国際特許分類】
F24F 1/40 20110101AFI20201207BHJP
F24F 1/32 20110101ALI20201207BHJP
F24F 1/0057 20190101ALI20201207BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
F24F1/40
F24F1/32
F24F1/0057
F16F15/04 F
F16F15/04 E
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-138861(P2018-138861)
(22)【出願日】2018年7月24日
(65)【公開番号】特開2020-16375(P2020-16375A)
(43)【公開日】2020年1月30日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】増田 洋人
(72)【発明者】
【氏名】本郷 藤樹
(72)【発明者】
【氏名】岡本 篤典
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
【審査官】
田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−227779(JP,A)
【文献】
特開2016−033396(JP,A)
【文献】
特開2011−163447(JP,A)
【文献】
実開平01−153423(JP,U)
【文献】
実開昭54−092645(JP,U)
【文献】
特開2001−021203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/40
F24F 1/0057
F24F 1/32
F24F 1/0057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
据付対象とする建屋の構造と独立して免震効果を得ることのできる免震装置を構成する架台に、室内機および/または室外機を搭載して設置し、
前記免震装置上に設置した室内機及び室外機と、建屋と一体に固定された冷媒配管とをフレキシブル部材を介して接続したことを特徴とするエアコンシステム。
【請求項2】
前記免震装置は、水平方向免震手段の上部に、鉛直方向免震手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のエアコンシステム。
【請求項3】
前記鉛直方向免震手段は、
前記室内機および/または前記室外機を搭載する架台である鉛直免震架台と、
定荷重ばねと、動滑車と固定滑車による滑車機構に巻き回されると共に一端を前記定荷重ばねに接続されて、他端を前記定荷重ばねを支持する鉛直支持フレームに接続した索体により、前記室内機および/または前記室外機を搭載した前記鉛直免震架台の荷重を支持する荷重支持部と、
コイルばねと鉛直ダンパにより前記鉛直免震架台の制振を図る制振部と、を備えることを特徴とする請求項2に記載のエアコンシステム。
【請求項4】
前記コイルばねは、
索条を介して前記鉛直免震架台と接続されると共に、前記鉛直免震架台を引き上げる方向に作用する引き上げばねと、
索条を介して前記鉛直免震架台と接続されると共に、前記鉛直免震架台を引き下げる方向に作用する引き下げばねとから成り、
前記索条はそれぞれ滑車を介して折り返されると共に、前記引き上げばねと前記引き下げばねは、前記水平方向免震手段を基点として立設された鉛直ばねフレームに沿って配置されていることを特徴とする請求項3に記載のエアコンシステム。
【請求項5】
前記鉛直ダンパは、鉛直方向に配置された第1ラックギアと、前記第1ラックギアに噛み合うようにして前記鉛直免震架台に配置された第1ピニオンギアとから成り、前記第1ピニオンギアは、回転軸支持部に充填されたオイルやグリスに起因した抵抗によりダンパ機能を付与されていることを特徴とする請求項3または4に記載のエアコンシステム。
【請求項6】
前記水平方向免震手段は、
リニアガイドにより、前記鉛直方向免震手段を搭載した水平架台をスライドさせる摺動部と、
復元用ばねと水平ダンパにより、前記水平架台を原点復帰させると共に、制振させる制振部と、を備えることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のエアコンシステム。
【請求項7】
前記復元用ばねは、前記水平架台の配置高さに合わせて配置されると共に、前記水平架台の配置高さに合わせた支柱の先端部に配置した滑車に巻き回した索体を介して前記水平架台と接続され、
前記水平ダンパは、ベースと水平架台との間に配置されているリニアガイドに配置されていることを特徴とする請求項6に記載のエアコンシステム。
【請求項8】
前記ダンパは、前記リニアガイドの長手方向に配置された第2ラックギアと、
前記第2ラックギアにかみ合う第2ピニオンギアと、
前記第2ピニオンギアの回転軸支持部に充填され、前記第2ピニオンギアの回転に抵抗を生じさせるオイルやグリスを備えて成ることを特徴とする請求項7に記載のエアコンシステム。
【請求項9】
前記支柱を前記ベースの四隅に配置すると共に、各支柱に備えられた前記滑車に巻き回した索体の一端に係止されている前記復元用ばねを前記ベースの辺に沿って配置し、
前記各支柱に備えられた前記滑車に巻き回された前記索体のそれぞれを前記水平架台の対応した四隅に接続したことを特徴とする請求項7または8に記載のエアコンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンシステムに係り、特に、地震発生後におけるエアコン機能停止を防ぐのに好適なエアコンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力設備やバイオクリーンルーム、およびスーパーコンピュータ設置施設等は、正常な稼働状態を維持するために冷却が不可欠であり、安全性確保の観点からも、地震等の天災が生じた場合にも、その冷却機能を維持する必要がある。
【0003】
地震に対するエアコンシステムの破損防止に関する技術としては、特許文献1に開示されているような取付構造が知られている。特許文献1に開示されている取付構造は、エアコンシステムを構成する室外機に関するものである。その具体的な構造は、免震構造を備えた建物の免震部分に、室外機を載置する載置台を付帯させ、この載置台に室外機を載置するというものである。
【0004】
ここで、免震装置に関しては大別して、特許文献2に開示されているような水平方向の振動に対する免震装置と、特許文献3に開示されているような垂直方向の振動に対する免震装置とが知られている。
【0005】
特許文献2に開示されている免震装置は、支持部に対して滑走可能な床部材を、定荷重ばねで牽引支持するというものであり、牽引のための索条に滑車を介在させることで、使用する定荷重ばねの許容荷重を小さくすることができるように構成されている。
【0006】
また、特許文献3に開示されている免震装置は、一端を天井に締結され、他端をカウンターウェイトに締結された索条を、動滑車と、天井に固定された固定滑車に巻き回させ、動滑車に免震床を支持させるという構造である。カウンターウェイトは、免震床の重量を相殺する重さとした上で、ばねとダンパによって支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−207703号公報
【特許文献2】特許第6065220号公報
【特許文献3】特許第3800699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されているような載置形態は、免震という観点からは有効であると考えられる。一方で、施設全体を免震構造とすることが困難な大規模施設では、採用することができないという問題がある。また、免震機構のうち特に特許文献3に開示されている垂直方向の振動に対する構造は、床下への索条の引き回しや、カウンターウェイトの設置など、大掛かりなものとなり、エアコンシステムの設置構造としての適用には不向きであると考えられる。
【0009】
そこで本発明では、上記問題を解決し、建屋の構造とは独立し、かつ比較的コンパクトな構造で、免震効果を得ることのできるエアコンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るエアコンシステムは、据付対象とする建屋の
構造と独立して免震効果を得ることのできる免震装置を構成する
架台に、室内機および/または室外機を搭載して設置したことを特徴とする。
【0011】
また、上記のような特徴を有するエアコンシステムにおいて前記免震装置は、水平方向免震手段の上部に、鉛直方向免震手段を備えているようにすると良い。このような特徴を有することによれば、水平方向の振動と鉛直方向の振動の双方に対する免震効果を得ることができる。
【0012】
また、上記のような特徴を有するエアコンシステムにおいて前記鉛直方向免震手段は、前記室内機および/または前記室外機を搭載する架台である鉛直免震架台と、定荷重ばねと、動滑車と固定滑車による滑車機構に巻き回されると共に一端を前記定荷重ばねに接続されて、他端を前記定荷重ばねを支持する鉛直支持フレームに接続した索体により、前記室内機および/または前記室外機を搭載した前記鉛直免震架台の荷重を支持する荷重支持部と、コイルばねと
鉛直ダンパにより前記鉛直免震架台の制振を図る制振部と、を備える構成とすることができる。このような特徴を有することにより、カウンターウェイト等の大掛かりな質量体を備えることなく、鉛直方向免震手段を構成することができる。よって、よりコンパクトな装置とすることができる。
また、上記のような特徴を有するエアコンシステムにおいて前記コイルばねは、索条を介して前記鉛直免震架台と接続されると共に、前記鉛直免震架台を引き上げる方向に作用する引き上げばねと、索条を介して前記鉛直免震架台と接続されると共に、前記鉛直免震架台を引き下げる方向に作用する引き下げばねとから成り、前記索条はそれぞれ滑車を介して折り返されると共に、前記引き上げばねと前記引き下げばねは、前記水平方向免震手段を基点として立設された鉛直ばねフレームに沿って配置されているようにすることができる。このような特徴を有することによれば、コイルばね(引き上げばねと引き下げばね)の配置スペースと、鉛直免震架台の移動スペースを確保することができる。
また、上記のような特徴を有するエアコンシステムにおいて前記鉛直ダンパは、鉛直方向に配置された第1ラックギアと、前記第1ラックギアに噛み合うようにして前記鉛直免震架台に配置された第1ピニオンギアとから成り、前記第1ピニオンギアは、回転軸支持部に充填されたオイルやグリスに起因した抵抗によりダンパ機能を付与されている構成とすることができる。このような特徴を有することによれば、制振効果を奏することとなり、振幅動を抑制することができる。
【0013】
また、上記のような特徴を有するエアコンシステムにおいて前記水平方向免震手段は、リニアガイドにより、前記
鉛直方向免震手段を搭載した水平架台をスライドさせる摺動部と、
復元用ばねと
水平ダンパにより、前記水平架台を原点復帰させると共に、制振させる制振部と、を備える構成とすることができる。このような特徴を有することによれば、水平方向の免震効果を得ることができると共に、搭載する室内機や室外機を原点位置に復帰させることができる。
また、上記のような特徴を有するエアコンシステムにおいて前記復元用ばねは、前記水平架台の配置高さに合わせて配置されると共に、前記水平架台の配置高さに合わせた支柱の先端部に配置した滑車に巻き回した索体を介して前記水平架台と接続され、前記水平ダンパは、ベースと水平架台との間に配置されているリニアガイドに配置される構成とすることができる。このような特徴を有することによれば、水平架台の移動可能スペースを大きく採ることが可能となる。また、水平架台の移動可能スペースを同一とする場合には、ベースをコンパクトなものとすることができる。さらに、ばねのストロークを大きくすることが可能となり、ばね定数を小さく、すなわち、固有振動数を大きくすることが可能となる。
また、上記のような特徴を有するエアコンシステムにおいて前記ダンパは、前記リニアガイドの長手方向に配置された第2ラックギアと、前記第2ラックギアにかみ合う第2ピニオンギアと、前記第2ピニオンギアの回転軸支持部に充填され、前記第2ピニオンギアの回転に抵抗を生じさせるオイルやグリスを備えて成るものとすることができる。このような特徴を有することによれば、制振効果を奏することとなり、振幅動を抑制することができる。
さらに、上記のような特徴を有するエアコンシステムにおいて前記支柱を前記ベースの四隅に配置すると共に、各支柱に備えられた前記滑車に巻き回した索体の一端に係止されている前記復元用ばねを前記ベースの辺に沿って配置し、前記各支柱に備えられた前記滑車に巻き回された前記索体のそれぞれを前記水平架台の対応した四隅に接続する構成とすると良い。このような特徴を有することによれば、水平架台が水平方向のどの方向に移動した場合であっても、原点位置に回帰する方向に力が働くこととなる。
【発明の効果】
【0014】
上記のような特徴を有するエアコンシステムによれば、建屋の構造とは独立し、かつ比較的コンパクトな構造で、免震効果を得ることのできるエアコンシステムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るエアコンシステムの設置形態の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る免震装置の構成を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係る免震装置の構成を示す正面図である。
【
図4】水平方向免震手段における復元用ばねの配置構成の例を示す斜視図である。
【
図5】水平方向免震手段におけるクロスリニアベアリング、およびロータリーダンパの配置構成の例を示す図である。
【
図6】鉛直方向免震手段における荷重支持部の構成例を示す斜視図である。
【
図7】鉛直方向免震手段におけるコイルばねの配置構成の例を示す斜視図である。
【
図8】鉛直方向免震手段におけるロータリーダンパの配置構成の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のエアコンシステムに係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、
図1は、実施形態に係るエアコンシステムの設置形態の一例を示す図であり、
図2は、実施形態に係る免震装置の構成を示す斜視図である。また、
図3は、実施形態に係る免震装置の構成を示す正面図である。
【0017】
[構成]
本実施形態に係るエアコンシステム10は、建屋の内部に配置される室内機60と、建屋の外部に配置される室外機62との双方が、それぞれ免震装置12を備えた架台に搭載されている。また、室内機60と室外機62とを接続する冷媒配管64は、建屋と一体に固定されており、少なくとも一部にフレキシブル部材66を備えた配管としている。室内機60と室外機62の双方に接続されている冷媒配管64にフレキシブル部材66を備えることにより、接続配管を免震装置12の動きに追従させることができるようになる。
【0018】
以下、室内機60と室外機62とを搭載する免震装置12について、両者は共通な構成を備えているものとして、その構成について説明する。本実施形態に係る免震装置12は、水平方向免震手段14と、鉛直方向免震手段32とを備えている。
【0019】
[水平方向免震手段]
水平方向免震手段14は、いわゆる横揺れに対する免震手段であり、少なくとも摺動部と、制振部とを備えている。本実施形態の場合、摺動部は、
図4、
図5に詳細を示すように、ベース16と、このベース16の上に配置されたクロスリニアベアリング18、およびクロスリニアベアリング18により支持される水平架台20により構成されている。ベース16は、クロスリニアベアリング18の設置面の水平度を保つための役割を担う要素であり、その構成は、特に限定されるものではない。例えば本実施形態では、鋼フレームにより、各部の水平度を保つように構成されている。
【0020】
クロスリニアベアリング18は、下部リニアガイド18aと、上部リニアガイド18cとを長手方向が交差するように配置すると共に、両者の間にスライダ18bを配置することで構成されている。このような構成のクロスリニアベアリング18によれば、スライダ18bは、下部リニアガイド18aの長手方向に沿って摺動可能となり、上部リニアガイド18cは、スライダ18bを基点として、自身の長手方向への摺動が可能となる。よって、クロスリニアベアリング18により支持される水平架台20は、水平方向全方位への摺動が可能となる。
【0021】
制振部は、水平方向の振動を受ける事により、ベース16に対して相対的に移動することとなる水平架台20を原点位置に回帰させる役割を担う要素である。本実施形態では、復元用ばね22と、水平方向ロータリーダンパ24により構成している。復元用ばね22と水平方向ロータリーダンパ24の具体的な配置構成は、次の通りである。
【0022】
まず、復元用ばね22は、水平方向の振動を受けて移動した水平架台20を元の位置、すなわち原点位置に回帰させるための引張力を生じさせる役割を担う要素である。本実施形態では、ベース16の四隅に支柱26を立設すると共に、ベース16の長手方向縁部に、各支柱26に対応した、ばね支持部28を立設している。支柱26の高さは、水平架台20の配置高さに合わせ、その先端部に水平方向に受け部を配置した滑車26aを備えている。ばね支持部28の高さも、支柱26と同様に、水平架台20の高さに合わせている。ばね支持部28には、復元用ばね22の一端部が係止され、復元用ばね22の他端部には、ワイヤ等の索体30の一端が係止されている。復元用ばね22の他端に一端が係止された索体30は、支柱26に備えられた滑車26aに巻き回された後、それぞれ水平架台20の四隅に他端が接続されている。このような構成とすることで、水平架台20が水平方向のどの方向に移動した場合であっても、原点位置に回帰する方向に力が働くこととなる。また、ベース16の四隅に直接復元用ばね22を配置する場合に比べ、支柱26を介して索体30を巻き回す構成としたことで、水平架台20の移動可能スペースを大きく採ることが可能となる。また、水平架台20の移動可能スペースを同一とする場合には、ベース16をコンパクトなものとすることができる。さらに、ばねのストロークを大きくすることが可能となり、ばね定数を小さく、すなわち、固有振動数を大きくすることが可能となる。
【0023】
水平方向ロータリーダンパ24は、復元用ばね22の振幅動を抑制し、水平方向振動に伴う水平架台20の移動の収束を図る役割を担う要素である。本実施形態では、スライダ18bと下部リニアガイド18aとの間、およびスライダ18bと上部リニアガイド18cとの間に、それぞれ水平方向ロータリーダンパ24を備える構成としている。具体的には、下部リニアガイド18aと上部リニアガイド18cの長手方向に沿って、それぞれラックギアを配置する。スライダ18bには、下部リニアガイド18aの長手方向に配置したラックギアに噛み合うピニオンギアと、上部リニアガイド18cの長手方向に配置したラックギアに噛み合うピニオンギアをそれぞれ配置する。なお、各ピニオンギアのダンパ機能は、回転軸支持部に充填されたオイルやグリスに起因した抵抗によって奏される。このような構成とすることで、水平方向ロータリーダンパ24は、水平架台20に対して制振効果を奏することとなり、振幅動を抑制することができる。
【0024】
このような構成の水平方向免震手段14によれば、摺動部を構成するクロスリニアベアリング18により水平架台20に対する水平方向の振動に対する免震を図ると共に、制振部を構成する水平方向ロータリーダンパ24により、振幅動の収束を図り、水平架台20を原点回帰させることができる。なお、本実施形態では、クロスリニアベアリング18を用いたが、同様な機能を担う要素であれば、滑り支承等を用いても良い。
【0025】
[鉛直方向免震手段]
鉛直方向免震手段32は、いわゆる縦揺れに対する免震機構であり、少なくとも、鉛直免震架台34と、荷重支持部、および制振部を備えている。鉛直免震架台34は、室内機60や室外機62を搭載する台である。基本的には、搭載を予定する室内機60や室外機62を載せることができる平面を有するものであれば良いが、必要に応じて室内機60や室外機62等の搭載機器を固定する固定金具(不図示)を備えるようにしても良い。
【0026】
荷重支持部は、室内機60や室外機62を搭載した鉛直免震架台34の重量を支持する役割を担う要素である。本実施形態では、上述した水平架台20を基礎として、鉛直免震架台34を支持する構成としている。本実施形態における荷重支持部は、
図6に詳細を示すように、鉛直支持フレーム36と、動滑車38、固定滑車40、定荷重ばね42、および索体(不図示)により構成されている。なお、本実施形態では、定荷重ばね42を鉛直支持フレーム36に配置する構成としているが、定荷重ばね42を鉛直免震架台34に配置する構成としても良い。
【0027】
鉛直支持フレーム36は、水平架台20を基礎として立設され、鉛直免震架台34を吊下する役割を担うフレームである。鉛直支持フレーム36は、少なくとも鉛直免震架台34の2つの端部を支持できる位置に配置されていれば良いが、本実施形態では、鉛直免震架台34の四隅を支持する位置に立設されている。鉛直免震架台34の支持状態の安定化を図ることができるからである。
【0028】
動滑車38は、鉛直免震架台34に取り付けられ、鉛直免震架台34の移動と共に移動する滑車である。また、固定滑車40は、鉛直支持フレーム36に取り付けられ、索体を介して鉛直免震架台34を鉛直支持フレーム36によって定められる移動範囲に吊下する役割を担う滑車である。定荷重ばね42は、鉛直支持フレーム36に配置され、索体を介して吊下された鉛直免震架台34を予め定められた荷重で牽引する役割を担う要素である。
【0029】
本実施形態では、鉛直支持フレーム36に一端を固定した索体を動滑車38と固定滑車40に巻き回し、他端を定荷重ばね42の引き出し部分(ばね部分)に接続する構成としている。定荷重ばね42により牽引する索体を動滑車38と固定滑車40に巻き回すことで、その組み合わせや巻き回数により、鉛直免震架台34の牽引荷重を低減することができる。本実施形態では、定荷重ばね42による索体の牽引で、鉛直免震架台34の重量を相殺するように構成している。
【0030】
ここで、鉛直免震架台34にはガイドローラ44が備えられている。ガイドローラ44は、鉛直免震架台34の四隅の位置に配置された鉛直支持フレーム36に転接可能な状態で配置されることで、鉛直免震架台34の水平方向への移動を規制することができる。これにより、鉛直免震架台34の鉛直方向への移動をスムーズなものとすることができる。
【0031】
制振部は、鉛直支持フレーム36に対して相対的に移動する鉛直免震架台34の移動を抑制する(収束させる)と共に、予め定められた原点位置に回帰させる役割を担う要素である。本実施形態の場合、
図7、
図8に詳細を示すように、コイルばね46(46a,46b)と、鉛直方向ロータリーダンパ54により構成している。
【0032】
コイルばね46は、鉛直免震架台34を引き上げる方向に作用するばね(引き上げばね46a)と、鉛直免震架台34を引き下げる方向に作用するばね(引き下げばね46b)とを備える。引き上げばね46aと引き下げばね46bは、それぞれ、ばねの配置スペースと、鉛直免震架台34の移動スペースを確保するために、滑車48を介した折り返し支持を採用している。具体的には、引き上げばね46aと引き下げばね46bはそれぞれ、水平架台20を基点として立設された鉛直ばねフレーム50により支持されている。一方で、引き上げばね46aと引き下げばね46bとでは、その支持形態が逆となり、引き上げばね46aは、その一端が鉛直ばねフレーム50の下端部に係止されており、引き下げばね46bは、その一端が鉛直ばねフレーム50の上端に係止されている。鉛直ばねフレーム50におけるばねを係止している側と反対側の端部には、索条52を巻き回すための滑車48が備えられている。そして、引き上げばね46aと引き下げばね46bのそれぞれの他端に一端を係止した索条52を滑車48に巻き回し、他端をそれぞれ鉛直免震架台34に係止する。このような構成とすることで、鉛直免震架台34を引き上げる方向と引き下げ方向のそれぞれに対する抗力を生じさせることができる。なお、積載重量と定荷重ばね42とのバランスにより、引き上げばね46a、あるいは引き下げばね46bのいずれか一方のみを備える構成としてもよい。
【0033】
鉛直方向ロータリーダンパ54は、コイルばね46の反力を吸収し、鉛直免震架台34が原点位置を基点として振幅を繰り返すことを抑制する役割を担う要素である。本実施形態の場合、鉛直方向に配置されたラックギア54aと、鉛直免震架台34に配置されたピニオンギア54bにより構成されている。ラックギア54aは、上述した鉛直支持フレーム36や鉛直ばねフレーム50と同様に、水平架台20を基点として立設されたラック支持フレーム56に配置されている。そして、ピニオンギア54bは、ラックギア54aに噛み合うようにして、鉛直免震架台34に配置されている。なお、鉛直免震架台34は、上述したガイドローラ44により水平方向の移動を規制されているため、ラックギア54aとピニオンギア54bの噛み合いが外れる虞は無い。なお、ピニオンギア54bのダンパ機能は、回転軸支持部に充填されたオイルやグリスに起因した抵抗によって奏される。
【0034】
このような構成の鉛直方向免震手段32によれば、室内機60や室外機62を搭載した鉛直免震架台34の重量は、荷重支持部によってほぼ相殺されることとなり、質量体としての鉛直支持剛性を低減することができる。このため、鉛直方向免震手段32に縦方向の振動が伝達された際、鉛直支持フレーム36に対する鉛直免震架台34の相対移動がスムーズなものとなり、同方向への固有振動数を容易に低減することができ、免震効果を向上させることができる。また、室内機60や室外機62を搭載した鉛直免震架台34の重量を相殺することにより、制振部を構成するコイルばね46のばね定数を小さなものとすることができる。これにより、長周期の縦振動が付与された場合であっても免震効果を奏することができるようになる。なお、本実施形態では、鉛直支持フレーム36と、鉛直ばねフレーム50、およびラック支持フレーム56をそれぞれ独立構造として示しているが、これらの鉛直方向に立設されているフレームを一体化した構成としても良い。
【0035】
[効果]
上記のような構成のエアコンシステム10によれば、建屋68の構造とは独立した免震構造を採ることができる。また、システムを構成する免震装置12は、比較的コンパクトな構造とすることができるので、室内機60、室外機62とも、その設置台として適用し、室内、および室外に設置するエアコンシステム10の一部とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
上記実施形態では、室内機60と室外機62の双方を免震装置12に搭載する旨記載している。しかしながら、室内機60と室外機62の少なくとも一方が免震装置12に搭載されていれば、本発明の一部とみなすことができる。
【符号の説明】
【0037】
10………エアコンシステム、12………免震装置、14………水平方向免震手段、16………ベース、18………クロスリニアベアリング、18a………下部リニアガイド、18b………スライダ、18c………上部リニアガイド、20………水平架台、22………復元用ばね、24………水平方向ロータリーダンパ、26………支柱、26a………滑車、28………ばね支持部、30………索体、32………鉛直方向免震手段、34………鉛直免震架台、36………鉛直支持フレーム、38………動滑車、40………固定滑車、42………定荷重ばね、44………ガイドローラ、46………コイルばね、46a………引き上げばね、46b………引き下げばね、48………滑車、50………鉛直ばねフレーム、52………索条、54………鉛直方向ロータリーダンパ、54a………ラックギア、54b………ピニオンギア、56………ラック支持フレーム、60………室内機、62………室外機、64………冷媒配管、66………フレキシブル部材、68………建屋。