(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0011】
〔実施の形態〕
図1は、旋盤機10の外観構成を示す概略図である。旋盤機10は、工具を用いて加工対象物を加工するものであり、基礎ベッド12、主軸支持部14、テーブル支持部16、テーブル18および主軸装置20を有する。
【0012】
主軸支持部14は、基礎ベッド12上に設けられており、基礎ベッド12に対して左右方向へ移動可能に主軸装置20を支持するものである。なお、主軸装置20における主軸シャフト22が延びている方向(軸方向)を前後方向とし、当該主軸装置20が載置される載置面Fに平行な面内で軸方向に対して直交する方向を左右方向とし、当該面および軸方向に対して直交する方向を上下方向とする。下方向は、重力が働く方向である。また、主軸装置20においてチャック部30が設けられる主軸シャフト22の一端側を前側とし、当該主軸シャフト22の他端側を後側とする。
【0013】
主軸支持部14は、基礎ベッド12上に左右方向に沿って設けられる第1スライド部14aと、第1スライド部14aに沿って移動可能な主軸移動台14bと、主軸移動台14bを駆動する不図示の第1駆動機構とを有する。
【0014】
第1駆動機構には、モータ、および、モータの回転力を直進運動に変換するボールねじなどの部材が含まれる。第1駆動機構によって主軸移動台14bが第1スライド部14aに沿って移動することで、その主軸移動台14b上に設けられる主軸装置20が基礎ベッド12に対して左右方向へ移動する。
【0015】
テーブル支持部16は、基礎ベッド12上に設けられており、基礎ベッド12に対して前後方向へテーブル18を移動可能に支持するものである。このテーブル支持部16は、基礎ベッド12上に前後方向に沿って設けられる第2スライド部16aと、第2スライド部16aに沿って移動可能なテーブル18を駆動する不図示の第2駆動機構とを有する。
【0016】
第2駆動機構には、モータ、および、モータの回転力を直進運動に変換するボールねじなどの部材が含まれる。第2駆動機構によってテーブル18が第2スライド部16aを通じて基礎ベッド12に対して前後方向へ移動する。テーブル18は、上下方向の軸を回転軸として回転可能に設けられてもよい。
【0017】
なお、本実施の形態では、主軸装置20におけるチャック部30に加工対象物が保持され、テーブル18に工具が保持されるものとする。ただし、主軸装置20におけるチャック部30に工具が保持され、テーブル18に加工対象物が保持されてもよい。
【0018】
図2は、
図1の主軸装置20の断面を示す図である。本実施の形態の主軸装置20は、加工対象物を回転可能に保持するものであり、加工対象物に対する加工をナノ単位で制御する場合などに使用される。この主軸装置20は、主軸シャフト22、主軸ハウジング24、主軸取付台26およびカバー部材28を主な構成要素として備える。
【0019】
主軸シャフト22は、棒状の部材であり、この主軸シャフト22の一端側(前側)にはチャック部30が設けられ、他端側(後側)にはモータ40が設けられる。
【0020】
チャック部30は、主軸シャフト22の回転に連動して主軸ハウジング24の前側で回転する回転部材であり、主軸シャフト22の一端に設けられる。なお、
図1では、チャック部30が円盤状に形成されているが、他の形状であってもよい。このチャック部30は、主軸シャフト22の前側に固定されたベース30aと、ベース30aに対して着脱可能に取り付けられた吸着パッド30bとを有する。ベース30aおよび吸着パッド30bには、外部から吸引された空気が流れる吸引流路30cが形成される。この吸引流路30cの吸引口OPは、吸着パッド30bの吸着面側に複数設けられる。
【0021】
モータ40は、主軸シャフト22を回転させるものであり、主軸ハウジング24の後側に取り付けられるモータケース40aと、モータケース40a内に収容されるロータ40bおよびステータ40cとを有する。ロータ40bには主軸シャフト22が固定される。したがって、ロータ40bの回転に連動して主軸シャフト22が回転する。
【0022】
主軸ハウジング24は、貫通孔24Hを有し、その貫通孔24Hに挿通された主軸シャフト22を回転可能に支持するものである。この主軸ハウジング24は、ハウジング本体24aを有する。
【0023】
ハウジング本体24aの前側には、ハウジング本体24aの外周面から外側に向かって突出する環状のフランジ部50が設けられ、当該ハウジング本体24aの後端面には、モータ40のモータケース40aが固定される。なお、
図2に示す例では、フランジ部50は、ハウジング本体24aと一体に成形されているが、ハウジング本体24aとは別体として所定の固定具によりハウジング本体24aに固定されていてもよい。
【0024】
ハウジング本体24aには、ハウジング本体24aを前後方向に沿って貫通する貫通孔24Hが形成される。この貫通孔24Hには主軸シャフト22が挿通され、当該貫通孔24Hに挿通された主軸シャフト22は軸受60により回転可能に支持される。
【0025】
軸受60は、主軸シャフト22を圧縮ガスにより回転可能に支持する静圧軸受であり、ハウジング本体24aに設けられる。本実施の形態では、軸受60は、スラスト軸受60aおよびラジアル軸受60bを有する。スラスト軸受60aは、主軸シャフト22の左側と右側とにそれぞれ設けられ、ラジアル軸受60bは、スラスト軸受60aよりも主軸シャフト22の一端側において、当該主軸シャフト22の前後にそれぞれ設けられる。
【0026】
軸受60には、ハウジング本体24aに形成された不図示の流路を介して圧縮ガスが供給される。軸受60に供給された圧縮ガスは、軸受60からその軸受60の内輪と主軸シャフト22の外壁との間の軸受隙間に流れて主軸シャフト22の支持体として作用する。したがって、軸受60と主軸シャフト22とは圧縮ガスを介して非接触の状態である。なお、軸受隙間に流れた圧縮ガスは、ハウジング本体24aに形成された不図示の排出経路を通じて外部に排出される。
【0027】
主軸取付台26は、主軸移動台14bの載置面F(
図1)上に載置される。この主軸取付台26は、主軸シャフト22の軸方向に沿って主軸ハウジング24が挿通される挿通孔26Hを有する。挿通孔26Hに挿通された主軸ハウジング24の前側は、ハウジング本体24aに設けられるフランジ部50を介して主軸取付台26の前側に固定される。具体的には、フランジ部50は、主軸取付台26における前側(挿通孔26Hの一方の開口側)に対してボルトなどの棒状締結部材で着脱可能に固定される。
【0028】
カバー部材28は、フランジ部50における前側の表面と、その表面から前側に延在するハウジング本体24aの外周面と、チャック部30の外周面の一部とを覆うように設けられる。なお、カバー部材28は、チャック部30の外周面の一部を覆っているが、当該外周面の全体を覆っていてもよく、チャック部30の外周面の少なくとも一部を覆っていればよい。
【0029】
カバー部材28には、シール部をシールするシールガスを流すためのガス用の流路28aが形成される。シール部は、チャック部30とカバー部材28との間およびチャック部30とハウジング本体24aとの間の隙間である。シールガスは、所定圧にまで圧縮されていてもよい。具体的には、例えば、空気などが挙げられる。シール部にシールガスが供給されることで、加工対象物の加工時に生じる屑、あるいは、加工時に用いられるクーラントなどがシール部を介して主軸ハウジング24の内部に入ることが抑制される。なお、シール部に流れたシールガスは主軸装置20の前側などから外部に排出される。
【0030】
また、カバー部材28には、冷媒を流すための不図示の冷媒用の流路が形成されており、その冷媒用の流路を流れる冷媒によってカバー部材28の温度が調整される。この冷媒は、例えば、水あるいは空気などとされる。
【0031】
図3は、
図1の主軸シャフト22の一部を示す概略図である。本実施の形態における主軸シャフト22では、その主軸シャフト22の外周面側の外壁に溝部70が形成される。溝部70は、主軸シャフト22の軸周りに沿って環状に形成される。この溝部70の底には、第1案内流路72の流出口74が設けられる。なお、溝部70の底は、その溝部70を形成している主軸シャフト22の外壁の凹んだ部位である。
【0032】
第1案内流路72は、
図2および
図3に示すように、チャック部30の吸引流路30cを流れる空気を、主軸シャフト22の内部を通じて、内外壁間隙に導くものである。内外壁間隙は、主軸シャフト22が挿通される貫通孔24Hを形成する主軸ハウジング24の内壁と、その内壁に対向する主軸シャフト22の外壁との間の隙間である。
【0033】
第1案内流路72は、具体的には、第1通路部72aおよび第2通路部72bを有する。第1通路部72aは、主軸シャフト22の軸方向に沿って主軸シャフト22の内部を延在しており、チャック部30の吸引流路30cと連通する。なお、
図2および
図3に示す例では、第1通路部72aにおける前側部分が後側部分よりも広く形成されている。
【0034】
第2通路部72bは、主軸シャフト22の径方向に沿って主軸シャフト22の内部を延在しており、第1通路部72aと、内外壁間隙とを連通する。この第2通路部72bの流出口が第1案内流路72の流出口74である。なお、主軸ハウジング24の内壁は、具体的には、
図2に示すように、貫通孔24Hを形成するハウジング本体24aの壁部分である。
【0035】
図4は、
図2の主軸装置20の一部を拡大して示す概略図である。主軸ハウジング24は、
図2および
図4に示すように、ハウジング本体24aの他に、ジョイント部24bを有する。ジョイント部24bは、主軸シャフト22に形成された第1案内流路72とジョイントするためのハウジング部分であり、モータケース40aの内部に配置される。つまり、ジョイント部24bは、モータケース40aに覆われている。
【0036】
このジョイント部24bは、ハウジング本体24aから後側に突出する主軸シャフト22の一部の外周面を覆うように設けられ、ハウジング本体24aの後端面に取り付けられる。このジョイント部24bによって覆われる主軸シャフト22の外壁には溝部70が含まれる。なお、
図2および
図4に示す例では、ジョイント部24bは、ハウジング本体24aとは別体とされているが、当該ハウジング本体24aと一体に成形されていてもよい。
【0037】
ジョイント部24bおよびハウジング本体24aには、第2案内流路76が形成される。第2案内流路76は、内外壁間隙に導かれる空気を主軸ハウジング24の外部に導くものである。この第2案内流路76は、具体的には、ジョイント部24bに形成されるジョイント通路部76aと、ハウジング本体24aに形成されるハウジング通路部76bとを有する。
【0038】
ジョイント通路部76aは、主軸シャフト22に形成される第1案内流路72の第2通路部72bと連通する。このジョイント通路部76aの流入口は、第2案内流路76の流入口78であり、主軸シャフト22の溝部70が対向するジョイント部24bの壁部分に設けられる。
【0039】
ハウジング通路部76bは、ジョイント通路部76aと主軸ハウジング24の外部とを連通する。このハウジング通路部76bの流出口は、第2案内流路76の流出口80であり、ハウジング本体24aの外壁部分に設けられる。
【0040】
また、ジョイント部24bには第3案内流路82が形成される。この第3案内流路82は、主軸ハウジング24の外部の空気を内外壁間隙に導くものであり、第2案内流路76のジョイント通路部76aとは非連通になる状態で形成される。
【0041】
第3案内流路82の流入口84は、モータケース40aの内部に設けられ、当該第3案内流路82の流出口86は
、第2案内流路76の流
入口
78とスラスト軸受60aとの間の
ジョイント部24bの内壁に設けられる。第3案内流路82の流出口86には、図示しない吸引源(真空ポンプ)のチューブが接続される。
【0042】
次に、吸引源(真空ポンプ)が駆動したときの空気の流れについて説明する。
図5は、吸引時の空気の流れを矢印で示した図である。吸引源(真空ポンプ)が駆動すると、吸着パッド30b(
図2)の前面側の空気は、吸引口OP(
図2)から吸引流路30c(
図2)に吸引され、その吸引流路30cを流れて、主軸シャフト22に形成された第1案内流路72の第1通路部72aに流入する。
【0043】
第1通路部72aに流入した空気は、主軸シャフト22の他端側(後側)に向かって流れて第2通路部72bに流入し、第2通路部72bに流入した空気は、主軸シャフト22の外壁に設けられる流出口74から溝部70に流出する。
【0044】
溝部70は主軸シャフト22の軸周りに沿って環状に形成されているため、流出口74から流出した空気は主軸シャフト22の軸周りに沿って流れる。したがって、主軸シャフト22の回転に応じて、第1案内流路72の流出口74と、第2案内流路76の流入口78とが非対向になっていても、第1案内流路72の流出口74から流出した空気は、ジョイント部24bに設けられる流入口78から第2案内流路76に流入する。
【0045】
一方、吸引源(真空ポンプ)の吸引力に応じて、モータケース40aの内部の空気は、ジョイント部24bの後端から内外壁間隙に引き込まれるとともに、当該ジョイント部24bに形成される第3案内流路82を流れて、内外壁間隙に引き込まれる。
【0046】
第3案内流路82を流れて内外壁間隙に引き込まれた空気は、主軸シャフト22とスラスト軸受60aとの間に供給された軸受用の圧縮ガスが内外壁間隙を通じて第2案内流路76に吸引されることを抑制するように働く。つまり、第3案内流路82を流れて内外壁間隙に引き込まれたモータケース40aの内部の空気が優先的に第2案内流路76に流入することで第2案内流路76に向かう軸受用の圧縮ガスはシールされ、第2案内流路76への圧縮ガスの流入量がごく少量となる。したがって、軸受用の圧縮ガスが第2案内流路76へ過度に流入することで主軸シャフト22と軸受60との間の隙間が変化することが抑制される。
【0047】
第2案内流路76に流入した空気は、第2案内流路76を流れ、当該第2案内流路76の流出口80から流出する。この流出口80から流出した空気は、吸引源(真空ポンプ)に吸引され、当該吸引源から排出される。
【0048】
以上のように本実施の形態の主軸装置20では、外部から吸引された空気が第1案内流路72から第2案内流路76を流れるときに、主軸シャフト22の外壁を軸周りに沿って流れる。このため、外部から吸引された空気によって主軸シャフト22の外壁側が冷却される。また、モータ40から主軸シャフト22の前側への伝熱が低減される。
【0049】
したがって、本実施の形態の主軸装置20によれば、主軸シャフト22と、その主軸シャフト22が挿通される主軸ハウジング24との間に生じる温度差を低減することができ、この結果、加工精度の低下を抑制することができる。
【0050】
〔変形例〕
以上、本発明の一例として上記の実施の形態が説明されたが、本発明の技術的範囲は上記の実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記の実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることはもちろんである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。上記の実施の形態に変更または改良を加えた例を以下に記載する。
【0051】
(変形例1)
図6は、変形例1の第1案内流路72A、第2案内流路76Aおよび第3案内流路82Aを示す概略図である。なお、
図6では、上記実施の形態において説明した構成と同様の構成については同一の符号が付されており、既に説明した上記実施の形態の構成については適宜省略する。
【0052】
変形例1の第1案内流路72Aは、主軸シャフト22の前後に設けられるラジアル軸受60bの間に第2通路部72bが配置される点で、上記実施の形態と異なる。
【0053】
変形例1では、溝部70は、主軸シャフト22の前後に設けられるラジアル軸受60bの間における主軸シャフト22の外周面側の外壁に形成されており、その溝部70の底に第1案内流路72Aの流出口74が設けられる。
【0054】
また、第2案内流路76Aおよび第3案内流路82Aは、ハウジング本体24aに形成される点で、上記実施の形態と異なる。
【0055】
具体的に第2案内流路76Aは、主軸シャフト22の前後に設けられるラジアル軸受60bの間に形成されており、その間に形成された主軸シャフト22の溝部70が対向するハウジング本体24aの内壁に、第2案内流路76Aの流入口が設けられる。第2案内流路76Aの流出口は、上記実施の形態と同様に、ハウジング本体24aの外壁部分に設けられる。
【0056】
第3案内流路82Aは、第2案内流路76Aを境として前側と後側との双方に形成されおり、前側および後側の各々の第3案内流路82Aの流入口は、ハウジング本体24aの外壁部分に設けられる。前側の第3案内流路82Aの流出口は
、第2案内流路76Aの流入口と前側のラジアル軸受60bとの間におけるハウジング本体24aの内壁に設けられる。後側の第3案内流路82Aの流出口は、第2案内流路76Aの流
入口と後側のラジアル軸受60bとの間におけるハウジング本体24aの内壁に設けられる。
【0057】
変形例1では、外部から吸引されて第1案内流路72Aを流れる空気は、上記実施の形態と同様に、第1案内流路72Aの流出口から流出し、溝部70を通じて、第2案内流路76Aの流入口から第2案内流路76Aに流入する。
【0058】
一方、吸引源(真空ポンプ)の吸引力に応じて、ハウジング本体24aと主軸取付台26との間の空気が、第3案内流路82Aを流れて、内外壁間隙に引き込まれる。この内外壁間隙に引き込まれた空気は、主軸シャフト22とラジアル軸受60bとの間に供給された軸受用の圧縮ガスが内外壁間隙を通じて第2案内流路76Aに吸引されることを抑制するように働く。つまり、上記実施の形態と同様に、内外壁間隙に引き込まれた空気が優先的に第2案内流路76Aに流入することで第2案内流路76
Aに向かう軸受用の圧縮ガスはシールされ、第2案内流路76Aへの圧縮ガスの流入量がごく少量となる。
【0059】
このように、変形例1の第1案内流路72A、第2案内流路76Aおよび第3案内流路82Aであっても、上記の実施の形態と同様の空気の流れが確保される。したがって、上記実施の形態と同様に、主軸シャフト22の外壁側を冷却することができる。
【0060】
(変形例2)
図7は、変形例2の溝部70Aを示す概略図である。なお、
図7では、上記実施の形態において説明した構成と同様の構成については同一の符号が付されており、既に説明した上記実施の形態の構成については適宜省略する。
【0061】
変形例2の溝部70Aは、主軸ハウジング24(ジョイント部24b)に形成されている点で、上記実施の形態の溝部70と異なる。具体的に溝部70Aは、第1案内流路72の流出口74が対向する主軸ハウジング24(ジョイント部24b)の内壁に、主軸シャフト22の軸周りに沿って環状に形成される。この溝部70Aの底には、第2案内流路76の流入口78が設けられる。なお、溝部70Aの底は、その溝部70Aを形成しているジョイント部24bの内壁の凹んだ部位である。
【0062】
変形例2では、主軸シャフト22の外壁に設けられる流出口74から流出した空気は、ジョイント部24bの内壁に形成された溝部70Aを通じて、主軸シャフト22の外壁の周りを流れる。したがって、ジョイント部24bの内壁に溝部70Aが形成されていても、上記実施の形態と同様に、外部から吸引された空気によって主軸シャフト22の外壁側を冷却することができる。
【0063】
(変形例3)
上記実施の形態では主軸シャフト22の外周面側の外壁に溝部70が形成され、上記変形例2ではジョイント部24bの内壁に溝部70Aが形成された。しかし、主軸シャフト22の外周面側の外壁に形成された溝部70と、ジョイント部24bの内壁に形成された溝部70Aとが対向するようにしてもよい。要するに、内外壁間隙に溝部70および70Aの少なくとも一方が設けられていればよい。
【0064】
なお、溝部70および70Aは、主軸シャフト22の軸周りに沿って環状に形成されたが、主軸シャフト22の軸周りに沿ってらせん状に形成されていてもよい。
【0065】
(変形例4)
上記実施の形態では、主軸シャフト22の外周側の外壁に溝部70が形成された。しかし、溝部70はなくてもよい。溝部70をなくす場合、例えば、第1案内流路72の第2通路部72bと、第2案内流路76のジョイント通路部76aとを、主軸シャフト22の軸周り方向に間隔をあけて複数配置する。また、各々の第2通路部72bを第1通路部72aと連通させ、各々のジョイント通路部76aをハウジング通路部76bと連通させる。
【0066】
このようにすれば、上記実施の形態と同様に、外部から吸引された空気が第1案内流路72から第2案内流路76を流れるときに、外部から吸引された空気によって主軸シャフト22の外壁側を冷却することができる。ただし、主軸シャフト22の外壁側を軸周りに沿って冷却するためには、上記実施の形態のように溝部70が形成されていることが好ましい。
【0067】
(変形例5)
上記実施の形態では、主軸ハウジング24のジョイント部24bに第3案内流路82が形成された。しかし、第3案内流路82はなくてもよい。第3案内流路82をなくす場合、例えば、第2案内流路76の流入口78から吸引される軸受用の圧縮ガスがごく少量となるように、所定の調整対象を調整すればよい。
【0068】
この調整対象としては、例えば、吸引源(真空ポンプ)の吸引圧や、軸受60に供給される圧縮ガスのガス圧などが挙げられる。ただし、調整対象の調整は複雑化し易いため、当該調整をなくすためには、主軸ハウジング24のジョイント部24bに第3案内流路82が形成されることが好ましい。
【0069】
(変形例6)
上記の実施の形態および上記変形例は、矛盾の生じない範囲で任意に組み合わされてもよい。
【0070】
〔技術的思想〕
上記の実施の形態および変形例から把握し得る技術的思想について、以下に記載する。
【0071】
主軸装置(20)は、貫通孔(24H)を有する主軸ハウジング(24)と、貫通孔(24H)に挿通される主軸シャフト(22)と、主軸シャフト(22)の一端に設けられ、主軸シャフト(22)の回転に連動して回転する回転部材(30)と、主軸シャフト(22)の他端に設けられ、主軸シャフト(22)を回転させるモータ(40)とを備える。
回転部材(30)には、外部から吸引される空気が流れる吸引流路(30c)が形成される。
主軸シャフト(22)には、吸引流路(30c)を流れる空気を、主軸シャフト(22)の内部を通じて、貫通孔(24H)を形成する主軸ハウジング(24)の内壁とその内壁に対向する主軸シャフト(22)の外壁との間の隙間(内外壁間隙)に導く第1案内流路(72、72A)が形成される。
主軸ハウジング(24)には、隙間に導かれた空気を、主軸ハウジング(24)の外部に導く第2案内流路(76、76A)が形成される。
このような主軸装置(20)によれば、外部から吸引された空気が第1案内流路(72、72A)から第2案内流路(76、76A)を流れるときに、主軸シャフト(22)の外壁側を冷却することができる。したがって、主軸シャフト(22)と、その主軸シャフト(22)が挿通される主軸ハウジング(24)との間に生じる温度差を低減することができ、この結果、加工精度の低下を抑制することができる。
【0072】
隙間には、主軸シャフト(22)の軸周りに沿って溝部(70、70A)が設けられ、溝部(70、70A)は、第1案内流路(72、72A)と第2案内流路(76、76A)とを連通するようにしてもよい。
このようにすれば、主軸シャフト(22)の外壁側を軸周りに沿って冷却することができる。したがって、主軸シャフト(22)と、その主軸シャフト(22)が挿通される主軸ハウジング(24)との間に生じる温度差をより一段と低減することができる。
【0073】
主軸ハウジング(24)には、主軸ハウジング(24)の外部の空気を隙間に導く第3案内流路(82、82A)が第2案内流路(76、76A)と非連通の状態で形成され、その第3案内流路(82、82A)の流出口(86)は、主軸シャフト(22)を圧縮ガスにより回転可能に支持する軸受(60)と第2案内流路(76、76A)の流入口(78)との間に設けられるようにしてもよい。
このようにすれば、吸引源(真空ポンプ)の吸引圧に応じて、第3案内流路(82、82A)を通じて外部から内外壁間隙に引き込まれる空気によって、第2案内流路(76、76A)に流れる軸受用の圧縮ガスを低減することができる。したがって、主軸シャフト(22)と軸受(60)との間の隙間が変化することを抑制することができる。
【0074】
主軸ハウジング(24)は、軸受(60)が設けられるハウジング本体(24a)と、ハウジング本体(24a)とモータ(40)との間における主軸シャフト(22)の一部の外周面を覆うように設けられるジョイント部(24b)とを有し、第2案内流路(76)は、ジョイント部(24b)に形成され第1案内流路(72)と連通するジョイント通路部(76a)と、ハウジング本体(24a)に形成されジョイント通路部(76a)と主軸ハウジング(24)の外部とを連通するハウジング通路部(76b)とを有するようにしてもよい。
このようにすれば、モータ(40)から伝熱する主軸シャフト(22)を効率よく冷却することができる。
【0075】
ジョイント部(24b)は、モータ(40)のロータ(40b)およびステータ(40c)を収容するモータケース(40a)に覆われるようにしてもよい。
このようにすれば、ロータ(40b)から伝熱する主軸シャフト(22)を効率よく冷却することができる。
【0076】
第3案内流路(82)は、モータ(40)のロータ(40b)およびステータ(40c)を収容するモータケース(40a)の内部と連通するようにしてもよい。
このようにすれば、吸引源(真空ポンプ)の吸引圧に応じて、主軸シャフト(22)が取り付けられるロータ(40b)から生じる熱で温められる空気を、第3案内流路(82、82A)を通じて内外壁間隙に引き込み、その内外壁間隙を通じて第2案内流路(76)に流すことができる。したがって、主軸シャフト(22)に対するロータ(40b)からの伝熱を抑制し易くなる。