特許第6802252号(P6802252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6802252軸方向位置調整機作を有する回転切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802252
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】軸方向位置調整機作を有する回転切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/24 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
   B23C5/24
【請求項の数】30
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-502213(P2018-502213)
(86)(22)【出願日】2016年8月9日
(65)【公表番号】特表2018-530438(P2018-530438A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】IL2016050866
(87)【国際公開番号】WO2017042798
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2019年6月25日
(31)【優先権主張番号】14/847,258
(32)【優先日】2015年9月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】セルブトフスキー スヴィトスラフ
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−519776(JP,A)
【文献】 特開平11−048022(JP,A)
【文献】 特開平08−071829(JP,A)
【文献】 特開2009−095894(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0178136(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/00 − 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方から後方への方向(D、D)を画定し、その周りを回転切削工具(20)が回転方向(R)に回転可能な工具長手軸(A)を有する、回転切削工具(20)であって、前記回転切削工具(20)は、
工具ホルダ(24)であって、前記工具ホルダ(24)は、
前記工具長手軸(A)に沿って円周形に延び、工具ホルダ(24)のホルダ前端(50)でホルダ前面(48)との境界を形成するホルダ周面(46)、および
前記工具ホルダ(24)に可動に取り付けられ、付勢部分(64)を包含する付勢部材(62)を含む調整機作(60)、を含む、工具ホルダ(24)と、
前記ホルダ前端(50)で前記工具ホルダ(24)に着脱可能に取り付けられた工具本体(22)であって、前記工具本体(22)は、
相反対側の本体前面(26)および本体背面(28)、ならびにその間に延びる本体周面(30)、および
各々が前記本体周面(30)に配置されて切削インサートを保持するように構成されたインサートポケット(34)を含む、角度を取って相隔てられた複数の切削部分(32)であって、調整可能切削部分(32A)を含む複数の切削部分(32)、を含み、
前記調整可能切削部分(32A)は、非屈曲位置と屈曲位置との間で調整可能であり、
前記屈曲位置において、前記調整可能切削部分(32A)は、前記インサートポケット(34)に固定された切削インサートに直接接触せずに前記工具本体(22)の前記本体背面(28)に対して前記付勢部分(64)が押すことによって、前記前方方向(D)に弾性変形させられる、工具本体(22)と、を含む、回転切削工具(20)。
【請求項2】
前記非屈曲位置において、前記調整可能切削部分(32A)の位置にある本体背面(28)は、前記工具長手軸(A)に垂直な本体面(BP)を画定し、
前記屈曲位置において、前記付勢部分(64)は、前記本体面(BP)よりもさらに軸方向前方に延びる、請求項1に記載の回転切削工具(20)。
【請求項3】
前記調整可能切削部分(32A)が、少なくとも前記本体の前面(26)と背面(28)とに開口する弾性陥凹部(66)を含む、請求項1に記載の回転切削工具(20)。
【請求項4】
前記弾性陥凹部(66)が、前記本体周面(30)に開口する、請求項3に記載の回転切削工具(20)。
【請求項5】
前記弾性陥凹部(66)が、前記本体周面(30)の、前記調整可能切削部分(32A)の前記インサートポケット(34)の回転方向前方部分に開口する、請求項4に記載の回転切削工具(20)。
【請求項6】
前記回転切削工具(20)の前面図において、前記弾性陥凹部(66)が半径方向に延びる、請求項3に記載の回転切削工具(20)。
【請求項7】
前記ホルダ前面(48)が、ホルダ当接面(52)を含み、
前記ホルダ前面(48)は、その中に陥凹された少なくとも1つのホルダネジ孔(54)を含み、
前記工具本体(22)は、前記本体前面と背面と(26、28)に開口する少なくとも1つの本体貫通孔(56)を含み、
保持ネジ(58)が、各本体貫通孔(56)中に配置され、それぞれのホルダネジ孔(54)中にネジ受けされ、
前記ホルダの当接面(52)が、前記本体背面(28)の一部に当接する、請求項1〜6の何れか一項に記載の回転切削工具(20)。
【請求項8】
前記複数の切削部分(32)が、前記非屈曲位置と前記屈曲位置との間で調整可能でない調整不能切削部分(32B)をさらに含み、
各本体貫通孔(56)は、それぞれの調整不能切削部分(32B)に配置される、請求項7に記載の回転切削工具(20)。
【請求項9】
前記工具本体(22)が表裏逆向きにできる、請求項1〜8の何れか一項に記載の回転切削工具(20)。
【請求項10】
前記付勢部材(62)が、前記工具ホルダ(24)に枢動可能に取り付けられたレバー(68)である、請求項1〜9の何れか一項に記載の回転切削工具(20)。
【請求項11】
前記レバー(68)が、レバー作動部分(80)、および前記付勢部分(64)と前記レバー作動部分(80)との間に位置するレバー中間部分(82)を含み、
前記レバー中間部分(82)が、前記工具ホルダ(24)上の少なくとも1つの支点面(86)に枢支搭載された少なくとも1つのレバーの旋回面(84)を含み、
前記レバー(68)が、前記レバー作動部分(80)に作動力(AF)を加えることによって、前記レバー(68)が旋回軸(P)周りに枢動されると、前記付勢部分(64)が前記調整可能切削部分(32A)と付勢係合するように構成される、請求項10に記載の回転切削工具(20)。
【請求項12】
前記調整機作(60)は、前記ホルダ前面(48)で前記工具ホルダ(24)中に陥凹されたレバーチャネル(96)をさらに含み、前記レバーチャネル(96)は、2つの相反対側のレバーチャネル側面(98)およびその間に延びるレバーチャネル中央面(100)を含み、
前記少なくとも1つの支点面(86)は前記レバーチャネル(96)中に配置される、請求項11に記載の回転切削工具(20)。
【請求項13】
前記調整機作(60)は、作動されると前記レバー(68)を枢動するように構成された作動部材(106)をさらに含む、請求項12に記載の回転切削工具(20)。
【請求項14】
前記作動部材(106)が作動ネジ(108)である、請求項13に記載の回転切削工具(20)。
【請求項15】
前記レバー(68)がレバーネジ孔(92)を含み、
前記作動ネジ(108)が、一端にネジ接触面(110)を含み、
前記屈曲位置において、前記作動ネジ(108)は前記レバーネジ孔(92)中にネジ係合され、前記ネジ接触面(110)が前記レバーチャネル中央面(100)を押し付け、これにより前記レバー(68)の枢動を誘発する、請求項14に記載の回転切削工具(20)。
【請求項16】
前記レバー(68)が、前記レバーの上面と底面と(74、76)の間に抜けるレバー貫通孔(94)を含み、
前記レバーチャネル中央面(100)が、その中に陥凹された軸方向に向いたチャネルネジ孔(102)を含み、
前記屈曲位置において、前記作動ネジ(108)は、前記レバー貫通孔(94)中に配置され、前記チャネルネジ孔(102)中にネジ係合され、これにより前記レバー(68)の枢動を誘発する、請求項14に記載の回転切削工具(20)。
【請求項17】
前記工具本体(22)が、前記作動ネジ(108)へのアクセスのため、前記本体前面と背面と(26、28)に開口するアクセス貫通孔(112)を含み、
前記アクセス貫通孔(112)は、前記作動ネジ(108)に回転して配列される、請求項16に記載の回転切削工具(20)。
【請求項18】
前記レバーチャネル(96)が、前記ホルダ周面(46)中に陥凹され、前記ホルダ前面(48)に開口する、請求項12に記載の回転切削工具(20)。
【請求項19】
前記レバー(68)が、2つの相反対側のレバー端面(70)およびその間に延びるレバー周面(72)を含み、前記レバー周面(72)は、相反対側のレバー上面および底面(74、76)と、前記レバー上面および底面(74、76)をつなぐ2つの相反対側のレバー側面(78)と、を含み、
前記レバー(68)は、前記レバー端面(70)の1つに隣接する前記2つの相反対側のレバー側面(78)からそれぞれ外に延びる2つのレバーアーム(88)を含み、
前記レバー(68)は、1つずつ各レバーアーム(88)に配置されたきっかり2つのレバー旋回面(84)を含み、
前記レバーチャネル(96)は、それぞれが前記2つの相反対側のレバーチャネル側面(98)から外に延びて前記ホルダ前面(48)に開口する2つのチャネル溝(104)を含み、
前記レバーチャネル(96)は、1つずつ各チャネル溝(104)に配置されたきっかり2つの支点面(86)を含む、請求項12に記載の回転切削工具(20)。
【請求項20】
前記レバーチャネル(96)が前記軸方向に延びる、請求項12に記載の回転切削工具(20)。
【請求項21】
屈曲位置において、前記レバー(68)が、前記ホルダ周面(46)を超えて半径外部方向には延びない、請求項12に記載の回転切削工具(20)。
【請求項22】
前記レバーチャネル(96)が、前記ホルダ前面(48)に陥凹される、請求項12に記載の回転切削工具(20)。
【請求項23】
前記レバーチャネル(96)が、前記ホルダ周面(46)に開口する、請求項22に記載の回転切削工具(20)。
【請求項24】
前記レバー(68)が、2つの相反対側のレバー端面(70)およびその間に延びるレバー周面(72)を含み、前記レバー周面(72)は、相反対側のレバー上面および底面(74、76)と、前記レバー上面および底面(74、76)をつなぐ2つの相反対側のレバー側面(78)と、を含み、
前記レバー底面(76)は、前記2つのレバー側面(78)の間を横断方向に延びるレバー突出部(90)を含み、
前記レバー(68)は、前記レバー突出部(90)上に配置されたきっかり1つのレバー旋回面(84)を含み、
前記レバーチャネル(96)は、前記レバーチャネル中央面(100)中に陥凹され、前記2つのレバーチャネル側面(98)の間を横断方向に延びる、チャネル溝(104)を含み、
前記レバーチャネル(96)は、前記チャネル溝(104)中に配置されたきっかり1つの支点面(86)を含む、請求項12に記載の回転切削工具(20)。
【請求項25】
前記レバーチャネル(96)が前記半径方向に延びる、請求項12に記載の回転切削工具(20)。
【請求項26】
前記回転切削工具(20)の側面図において、
前記レバー作動部分(80)はレバー幅(W1)を有し、
前記レバーチャネル(96)の中間部分はレバーチャネル幅(W2)を有し、
前記レバーチャネル幅(W2)は前記レバー幅(W1)よりも小さい、請求項12に記載の回転切削工具(20)。
【請求項27】
前記調整機作(60)が、前記工具ホルダ(24)に着脱可能に取り付けられた径方向阻止部材(118)を含み、
前記レバー(68)は、その一端にカットアウト(120)を含み、
前記径方向阻止部材(118)は、前記レバー(68)が半径外側方向に変位されたとき、前記径方向阻止部材(118)が、前記レバー(68)の経路を前記カットアウト(120)で遮るように構成される、請求項12に記載の回転切削工具(20)。
【請求項28】
前記複数の切削部分(32)が、前記非屈曲位置と前記屈曲位置との間で調整可能でない調整不能切削部分(32B)をさらに含む、請求項1〜27の何れか一項に記載の回転切削工具(20)。
【請求項29】
前記複数の切削部分(32)が、複数の調整可能切削部分(32A)と複数の調整不能切削部分(32B)と、を含み、
前記工具ホルダ(24)が、複数の調整機作(60)を含み、
前記複数の調整可能切削部分(32A)と前記複数の調整不能切削部分(32B)とが前記本体周面(30)に沿って交互に配置される、請求項28に記載の回転切削工具(20)。
【請求項30】
各調整可能切削部分(32A)の前記インサートポケット(34)が、前記本体前面(26)で横向きに開口し、各調整不能切削部分(32B)の前記インサートポケット(34)が、前記本体背面(28)で横向きに開口する、請求項29に記載の回転切削工具(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の主題は、一般に、外周に保持された複数の切削インサートを有する回転切削工具に関し、具体的には、それら切削インサートの軸方向位置を調整するための機作を備えたかかる切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
回転切削工具は、切削インサートを保持する複数の外周インサートポケットを有し、該工具には、前記ポケットのしかしてその中に固定されたそれぞれ切削インサートの何れかの軸方向位置を調整するための調整メカニズムを備えることができる。かかる回転切削工具の例が、例えば、特許文献1〜5に開示されている。
【0003】
さらに、この回転切削工具が例えば溝フライスである場合、軸方向位置調整メカニズムは、切削工具の切削利き幅を調整する能力を提供し、この切削利き幅は、回転切削工具の全切削インサートの(軸方向への)重なりスパンによって画定される。かかる回転切削工具の例は、例えば、特許文献6および7で開示されており、この文献の後者は、インサートポケットにインサートを固定するためのカートリッジも含む。
【0004】
本出願の主題の目的は、これら切削インサートのどれかの軸方向位置を調整するための調整メカニズムを備えた回転切削工具を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,056,484号
【特許文献2】米国特許第8,092,124号
【特許文献3】米国特許第6,604,894号
【特許文献4】米国特許出願公開第2013/0022414号
【特許文献5】米国特許第6,030,153号
【特許文献6】米国特許出願公開第2014/0178136号
【特許文献7】米国特許第6,971,823号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の主題の第一態様によれば、前方から後方への方向を画定しその周りを回転切削工具が回転方向に回転可能な工具長手軸を有する、回転切削工具が提供され、該回転切削工具は、
工具長手軸に沿って円周形に延び、工具ホルダのホルダ前端でホルダ前面との境界を形成するホルダ周面、および
工具ホルダに可動に取り付けられ、付勢部分を包含する付勢部材を含む調整機作、
を含む、該工具ホルダと、
ホルダ前端で工具ホルダに着脱可能に取り付けられた工具本体であって、該工具本体は、
相反対側の本体前面および背面、ならびにその間に延びる本体周面、および
各々が本体周面に配置されたインサートポケットを含む、角度を取って相隔てられた複数の切削部分であって、該複数の切削部分は調整可能切削部分を含む、該切削部分、
を含み、
この調整可能切削部分は、非屈曲位置と屈曲位置との間で調整可能であり、
屈曲位置において、調整可能切削部分は、付勢部分との付勢係合によって前方方向に弾性変形される、
該工具本体と、
を含む。
【0007】
本出願の主題の第二態様によれば、前方から後方への方向を画定しその周りを回転切削工具が回転方向に回転可能な工具長手軸を有する、回転切削工具が提供され、該回転切削工具は、
ホルダ長手軸を有する工具ホルダと、
本体中央軸を有する工具本体であって、該工具本体は、本体中央軸およびホルダ長手軸と工具長手軸とを合致させて工具ホルダの前方端に脱着可能に取り付けられる、該工具本体と、
工具本体に搭載された少なくとも1つの切削インサートと、
工具ホルダに枢支搭載され、工具本体上に搭載された少なくとも1つの切削インサートの軸方向位置を調整するように構成されたレバーと、
を含む。
【0008】
当然のことながら前述は要約であり、以降に説明する特徴が、任意の組み合せで本出願の主題に適用でき、例えば、以下の特徴の何れもこの回転切削工具に適用が可能である。
【0009】
非屈曲位置において、調整可能切削部分の位置にある本体背面は、工具長手軸に垂直な本体面を画定し、
屈曲位置において、付勢部分は、本体面よりもさらに軸方向前方に延びることができる。
【0010】
調整可能切削部分は、少なくとも本体の前面と背面とに開口する弾性陥凹部を含むことが可能である。
【0011】
この弾性陥凹部は本体周面に開口することができる。
【0012】
該弾性陥凹部は、本体周面の調整可能切削部分のインサートポケットの回転方向前方部分に開口が可能である。
【0013】
回転切削工具の前面図では、弾性陥凹部は半径方向に延びることができる。
【0014】
ホルダ前面は、ホルダの当接面を含むことが可能であり、
ホルダ前面は、その中に陥凹された少なくとも1つのホルダネジ孔を含むことが可能であり、
工具本体は、本体前面と背面とに開口する少なくとも1つの本体貫通孔を含むことが可能であり、
保持ネジが、各本体貫通孔中に配置され、それぞれのホルダネジ孔中にネジ受けされることが可能であり、
ホルダの当接面は、本体背面の一部に当接することが可能である。
【0015】
複数の切削部分は、非屈曲位置と屈曲位置との間で調整可能でない調整不能切削部分をさらに含んでよく、
各本体貫通孔は、それぞれの調整不能切削部分に配置することができる。
【0016】
付勢部材は、工具ホルダに枢動可能に取り付けられたレバーとすることが可能である。
【0017】
レバーは、レバー作動部分、および付勢部分とレバー作動部分との間に位置するレバー中間部分を含むことができ、
このレバー中間部分は、工具ホルダ上の少なくとも1つの支点面に枢支搭載された少なくとも1つのレバーの旋回面を含むことができ、
該レバーは、レバー作動部分に作動力を加えることによってレバーが旋回軸周りに枢動されると、付勢部分が調整可能切削部分と付勢係合するように構成することができる。
【0018】
該少なくとも1つのレバーの旋回面は、円筒軸を有する想像上の円筒表面の部分に横たわることが可能であり、
旋回軸とこの円筒軸とを合致させることが可能である。
【0019】
調整機作は、工具ホルダ中に陥凹されたレバーチャネルをさらに含むことが可能で、このレバーチャネルは、2つの相反対側のレバーチャネル側面およびその間に延びるレバーチャネル中央面を含み、
少なくとも1つの支点面はレバーチャネル中に配置することが可能である。
【0020】
この調整機作は、作動されるとレバーを枢動するように構成が可能な作動部材をさらに含むことができる。
【0021】
この作動部材は作動ネジとすればよい。
【0022】
該レバーは、レバーの上面と底面との間に抜けるレバー貫通孔を含むことが可能である。
【0023】
レバーチャネル中央面は、その中に陥凹された軸方向に向いたチャネルネジ孔を含むことができ、
屈曲位置において、作動ネジはレバー貫通孔中に配置され、チャネルネジ孔中にネジ係合され、これによりレバーの枢動を誘発することが可能である。
【0024】
工具本体は、作動ネジへのアクセスのため、本体前面と背面とに開口するアクセス貫通孔を含むことが可能である。
【0025】
アクセス貫通孔は、作動ネジを回転できるように配列することができる。
【0026】
レバーはレバーネジ孔を含むことができ、
作動ネジは、一端にネジ接触面を含み、
屈曲位置において、作動ネジはレバーネジ孔中にネジ係合され、ネジ接触面がレバーチャネル中央面を押し付け、これによりレバーの枢動を誘発する。
【0027】
レバーチャネルはホルダ前表面に陥凹することができる。
【0028】
このレバーチャネルはホルダの周面に開口することもできる。
【0029】
このレバーは、2つの相反対側のレバー端面、およびその間に延びるレバー周面を含むことができ、レバー周面は、相反対側のレバー上面および底面と、これらレバー上面および底面をつなぐ2つの相反対側のレバー側面とを含むことが可能であり、
レバー底面は、該2つのレバー側面の間を横断方向に延びることが可能なレバー突出部を含むことができ、
該レバーは、レバー突出部上に配置が可能な、きっかり1つのレバー旋回面を含むことができ、
レバーチャネルは、レバーチャネル中央面中に陥凹され、2つのレバーチャネル側面の間を横断方向に延びることが可能な、チャネル溝を含むことができ、
該レバーチャネルは、チャネル溝中に配置されたきっかり1つの支点面を含むことができる。
【0030】
レバーチャネルは、半径方向に延びることが可能である。
【0031】
レバーチャネルは、ホルダ周面中に陥凹することが可能で、ホルダ前面に開口することができる。
【0032】
該レバーは、2つの相反対側のレバー端面、およびその間に延びるレバー周面を含むことができ、レバー周面は相反対側のレバー上面および底面と、これらレバー上面および底面をつなぐ2つの相反対側のレバー側面を含むことができ、
レバーは、レバー端面の1つに隣接する2つの相反対側のレバー側面からそれぞれ外に延びる2つのレバーアームを含むことができ、
レバーは、1つずつが各レバーアームに配置された、きっかり2つのレバー旋回面を含むことができ、
レバーチャネルは、それぞれが2つの相反対側のレバーチャネル側面から外に延びてホルダ前面に開口する2つのチャネル溝を含むことができ、
レバーチャネルは、1つずつ各チャネル溝に配置されたきっかり2つの支点面を含むことができる。
【0033】
レバーチャネルは、半径方向に延びることが可能である。
【0034】
屈曲位置において、レバーは、ホルダ周面を超えて半径外部方向に延びることはできない。
【0035】
回転切削工具の側面図では、
レバー作動部分はレバー幅を有することができ、
レバーチャネルの中間部分はレバーチャネル幅を有することができ、
このレバーチャネル幅はレバー幅よりも小さくすることできる。
【0036】
本調整機作は、工具ホルダに着脱可能に取り付けられた径方向阻止部材を含むことが可能であり、
レバーは、その一端にカットアウトを含むことが可能であり、
径方向阻止部材は、レバーが半径外側方向に変位されたとき、該径方向阻止部材が、レバーの通り抜けをカットアウトで遮るように構成することが可能である。
【0037】
工具本体はディスク形状にすればよい。
【0038】
本回転切削工具は溝フライスであってよい。
【0039】
複数の切削部分は、非屈曲位置と屈曲位置との間で調整可能でない調整不能切削部分をさらに含んでよい。
【0040】
これら複数の切削部分は、複数の調整可能切削部分と複数の調整不能切削部分とを含むことができ、
本回転切削工具は、複数の調整機作を含むことができ、
複数の調整可能切削部分と複数の調整不能切削部分とは本体周面に沿って交互に配置することができる。
【0041】
各調整可能切削部分のインサートポケットは、本体前面に横向きに開口させることが可能で、各調整不能切削部分のインサートポケットも、本体背面に横向きに開口させることが可能である。
【0042】
工具本体は、表裏逆向きに用いることができる。
【0043】
レバーは、付勢部分、レバー作動部分、およびその間に位置するレバー中間部分を含むことができ、
このレバー中間部分は、工具ホルダ上の少なくとも1つの支点面に枢支搭載された少なくとも1つのレバーの旋回面を含むことができ、
該レバーは、レバー作動部分に作動力を加えることによってレバーが旋回軸周りに枢動されると、付勢部分が工具本体の一部と付勢係合するように構成することができる。
【0044】
工具ホルダは、工具長手軸に沿って円周形に延び、工具ホルダのホルダ前端でホルダ前面との境界を形成するホルダ周面を含むことが可能であり、
本回転切削工具は、ホルダの前面で工具ホルダ中に陥凹されたレバーチャネルをさらに含むことが可能で、該レバーチャネルは、2つの相反対側のレバーチャネル側面とこの間に延びるレバーチャネル中央面とを含み、
該少なくとも1つの支点面はこのレバーチャネル中に配置することが可能である。
【0045】
本出願のより良い理解のため、およびそれがどのように実用面で実行できるかを示すために、以降において添付の図面を参照することとする。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本出願の第一実施形態による、回転切削工具の透視図である。
図2図1に示された回転切削工具の分解透視図である。
図3図1および2に示された回転切削工具の側面図である。
図4図3に示された回転切削工具の前面図である。
図5図1および2に示された工具ホルダの透視図である。
図5a】レバーを取り除いた図5の工具ホルダである。
図6図5に示された工具ホルダの前面図である。
図7図5に示されたレバーの分解透視図である。
図8】調整可能切削部分が非屈曲位置にあるときの、図1の回転切削工具の詳細な長手方向断面図である。
図9】調整可能切削部分が屈曲位置にあるときの、図8に示されたものと類似の図である。
図10】本出願の第二実施形態による、切削工具の分解透視図である。
図10a】レバーを取り除いた図10中の工具ホルダである。
図11図10に示されたレバーの分解透視図である。
図12】調整可能切削部分が非屈曲位置にあるときの、図10中の回転切削工具の、図8に示されたものと類似の図である
図13】調整可能切削部分が屈曲位置にあるときの、図12に示されたものと類似の図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
当然のことながら、図の簡明化と明瞭化のため、諸図に示された要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。例えば、これら要素の一部の寸法は、明瞭化のため他の要素に対し拡大されていることがあり、複数の物理コンポーネントが1つの機能ブロックまたは要素に含まれていることがある。さらに、適切と考えられる場合、一致するまたは類似の要素を示すために、諸図面に亘って参照符号が繰り返されることがある。
【0048】
以下の説明において、本出願の主題の様々な態様が説明されることになる。説明目的のため、本出願の主題の徹底した理解と提供すべく特定の構成および細部が十分詳細に述べられる。但し、これも当業者には当然のことながら、本出願の主題は、本明細書に提示された特定の構成および細部がなくても実践が可能である。
【0049】
最初に、本出願の或る態様を表した、回転切削工具20を示す図1および2に注目する。これら図面に示された非限定の例において、回転切削工具20は、ミリング切削工具である。具体的には、このミリング切削工具は、溝入れ切削作業に適した溝フライスである。但し、本出願の主題は、溝フライスだけに限定されるものでなく、例えば、正面フライスにも適用可能であろうがこれに限らない。回転切削工具20は、前方から後方への方向D、Dを画定する工具長手軸Aを有し、回転切削工具20はその周り一回転方向Rに回転可能である。これらの図面に示されたこの非限定の例では、回転切削工具20は右旋回用回転切削工具ある。回転切削工具20は、通常、鋼鉄で作製が可能な工具本体22を有する。また、回転切削工具20は、工具ホルダ24を有し、これが工具本体22を補足している。工具ホルダ24も、通常、鋼鉄で作製が可能である。
【0050】
なお、本明細書で用いる用語「溝フライス」は、例えば、「溝削りフライス」、「溝切カッター」、「溝切フライス」、「溝削りカッター」、「溝ミリングフライス」、「側ミリングフライス」、「ディスクミリングフライス」など、金属切削分野でかかる切削工具に適用される他の用語で置き換えてもよい。
【0051】
また、明細書および特許請求の範囲の全体を通して、用語「前方」および「後方」の使用は、それぞれ、図3では、工具長手軸Aの左方および右方を指すことに留意すべきである。本開示において「前方」は、工具の切削端に関連付けられる。
【0052】
また、明細書および特許請求の範囲全体を通して、用語「軸方向」および「半径方向」の使用は、別段のことわりがなければ、工具長手軸Aに対するものであることにもさらに留意すべきである。
【0053】
ここで、図3および4を参照する。工具本体22は、本体中央軸Bを有し、その周りを工具本体22が回転方向Rに回転可能である。工具本体22が着脱可能に工具ホルダ24に取り付けられたとき、本体中央軸Bは工具長手軸Aと合致する。工具本体22は、本体前面および背面26、28、ならびに本体前面と背面と26、28の間に延びる本体周面30を含む。本体中央軸Bは、本体前面および背面26、28を通り抜けて延びる。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、この前面と背面と26、28は相互に対し平行にすることができる。工具本体22はディスク形状であってよい。工具本体22は、本体中央軸B周りに回転対称性を有することができる。これら図面に示された非限定の例において、工具本体22は本体中央軸B周りに三重回転対称性を有することが可能である。
【0054】
図4に具体的に示されるように、工具本体22は複数の切削部分32を含む。複数の切削部分32は、工具長手軸Aの周りに角度をつけて完全に等しく間隔取りされている。各切削部分32は、本体周面30に配置されたインサートポケット34を含む。各インサートポケット34は、切削インサート36を保持するように構成される。これら図面に示された非限定の例において、切りくず排出のため、各インサートポケット34の回転方向Rに隣接して切りくず通し38を設けることができる。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、工具本体22は、ユニット式統合一体化構造に作製することが可能で、各切削インサート36は、工具本体22のそれぞれのインサートポケット34に直接に固定すればよい。本出願の主題の他のいくつかの実施形態によれば、上記に換えて、各切削インサート36は、工具本体22に着脱可能に取り付けられるそれぞれのインサートキャリッジ(図示せず)の中に形成されたインサートポケット34中で、工具本体22に間接的に固定することもできる。
【0055】
図2に戻って、各切削インサート36は、例えば、それぞれのインサートネジ孔42にネジ係合されたインサートネジ40によって、それぞれのインサートポケット34に堅固に保持することが可能である。各インサートネジ孔42は、本体の前面および背面26、28のうちの少なくとも1つに開口すればよい。各切削インサート36はそれぞれの刃先44を有する。各切削インサート36がそれぞれのインサートポケット34に保持されると、その刃先44は、軸方向位置、すなわち、一般に工具長手軸Aに平行な方向をとることができる。
【0056】
図3に戻って、回転切削工具20は、金属加工品の溝切削に用いられる。切削の幅Wは、回転切削工具20の全切削インサート36の(軸方向への)重なりスパン(すなわち、工具長手軸Aと平行な方向)によって決まる。回転切削工具20の切削の幅Wの制御は、刃先44の少なくとも1つの軸方向位置を調整することによって達成が可能である。なお、切削の幅Wを調整するために、全ての切削インサート36の軸方向位置を調整する必要はない。また、図4に見られるように、工具本体22がディスク形状を有する場合、複数の刃先44は、工具長手軸A周りの切削直径CDを画定することができる。
【0057】
ここで、工具ホルダ24を示す図5および6を参照する。工具ホルダ24は、ホルダ長手軸Hを有し、工具ホルダ24はその周りを回転方向Rに回転可能である。工具本体22が着脱可能に工具ホルダ24に取り付けられると、ホルダ中央軸Hは工具長手軸Aと合致する。工具ホルダ24は、工具長手軸Aに沿って円周形に延びるホルダ周面46を含む。ホルダ周面46は、工具ホルダ24のホルダ前端50で、ホルダ前面48との境界を形成する。ホルダ長手軸Hはホルダ前面48を通って延びる。工具ホルダ24は、工具長手軸Aの方向に延長することができる。工具ホルダ24は、ホルダ長手軸H周りに回転対称性を有することができる。これら図面に示された非限定の例において、工具ホルダ24は、ホルダ長手軸H周りに三重回転対称性を有することが可能である。また、工具ホルダ24のホルダ周面46は切削インサート36に対して半径内側方向にオフセットされ、これにより、工具ホルダ24が加工品を妨げることなく、溝の切削を可能にしていることに留意すべきである。
【0058】
図1および2に戻って、工具本体22は、ホルダ前端50で工具ホルダ24に着脱可能に取り付けられる。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ホルダ前面48は、ホルダの当接面52を含むことが可能である。ホルダ前面48は、その中に陥凹された少なくとも1つのホルダネジ孔54を含むことができる。工具本体22は、本体前面と背面と26、28に開口する少なくとも1つの本体貫通孔56を含むことが可能である。保持ネジ58を各本体貫通孔56に配置しそれぞれのホルダネジ孔54にネジ受けさせることができる。ホルダの当接面52は、本体背面28の部分に当接させることが可能である。
【0059】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、工具本体22は表裏逆向きにできる。すなわち、本体前面26は、本体背面28として(その逆向きにも)機能することが可能で、工具本体22と工具ホルダ24とが着脱可能に一緒に取り付けられるとき、ホルダの当接面52は本体前面26の部分にも当接することが可能である。この構成において、回転切削工具20は左旋回用回転切削工具となる。
【0060】
図5および6を再度参照すると、工具ホルダ24は、それぞれのインサートポケット34の軸方向位置、したがってそれぞれのインサートポケット34中に固定された切削インサート36の軸方向位置を調整するための調整機作60を含む。この調整機作60は付勢部材62を含む。付勢部材62は付勢部分64を含む。付勢部材62は、工具ホルダ24に可動に取り付けられる。付勢部分64はホルダ前面48に対して可動である。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、付勢部材62は、工具ホルダ24に着脱可能に取り付けることができる。工具ホルダ24の前面図(すなわち図6)では、付勢部分64は、工具ホルダ24の周辺部に(すなわち、ホルダ外周面46に隣接して)配置することが可能である。付勢部材62は、工具ホルダ24と一体形成できないことを指摘しておく。明らかに、付勢部材62は工具本体22とも一体形成されていない。
【0061】
複数の切削部分32は、調整可能切削部分32Aを含む。調整可能切削部分32Aは、調整機作60と回転的に配列され、これと一体的であると見なしてもよい。調整可能切削部分32Aは、調整機作60によって、非屈曲位置と屈曲位置との間で調整可能である。調整可能切削部分32Aが非屈曲位置にあるとき、調整可能切削部分32Aは付勢部分64と付勢係合することができず、弾力変形されない。調整可能切削部分32Aの位置にある本体背面28は、工具長手軸Aに垂直な本体面BPを画定する。調整可能切削部分32Aが屈曲位置にあるとき、付勢部分64は本体面BPを超えて軸方向前方に延びる。しかして、調整可能切削部分32Aは、付勢部分64との付勢係合によって前方方向Dに弾力変形される。調整可能切削部分32Aを、非屈曲位置と屈曲位置との間で調整する方法については、当明細書でさらに詳しく説明する。
【0062】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、複数の切削部分32は、非屈曲位置と屈曲位置との間で調整されない調整不能切削部分32Bを含むことができる。調整不能切削部分32Bはどの調整機作60とも関連付けられない。工具本体22が工具ホルダ24に着脱可能に取り付けられる際の各本体貫通孔56および各保持ネジ58を、それぞれの調整不能切削部分32Bに配置することが可能である。これにより、調整可能切削部分32Aが制限なく屈曲される。
【0063】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、複数の切削部分32は、少なくとも1つのさらなる調整可能切削部分32Aを含むことが可能で、しかして複数の調整可能切削部分32Aを形成する。複数の切削部分32は、少なくとも1つのさらなる調整不能切削部分32Bを含むことが可能で、しかして複数の調整不能切削部分32Bを形成する。工具ホルダ24は、少なくとも1つのさらなる調整機作60を含むことが可能で、複数の調整機作60を形成する。各調整機作60は、それぞれの調整可能切削部分32Aと関連付けられる。複数の調整可能切削部分32Aと複数の調整不能切削部分32Bとは、本体周面30沿いに交互に配置することができる。各調整可能切削部分32Aのインサートポケット34は、本体前面26に横向きに開口することが可能で、各調整不能切削部分32Bのインサートポケット34は、本体背面28に横向きに開口することが可能である。
【0064】
なお、各調整可能切削部分32Aがそれぞれの調整機作60に関連付けられていたとしても、全ての調整可能切削部分32Aの切削インサート36の軸方向位置を調整する必要はない。
【0065】
また、調整可能切削部分32Aに関する本明細書中の何れの特徴も、複数の調整可能切削部分32Aの何れの別の1つにも随意に関係付けることが可能なことに留意すべきである。同様に、調整不能切削部分32Bに関する本明細書中の何れの特徴も、複数の調整不能切削部分32Bの何れの別の1つにも随意に関係付けることが可能であり、調整機作60に関する本明細書中の何れの特徴も、複数の調整機作(adjustable cutting portions)60の何れの別の1つにも随意に関係付けることが可能である。
【0066】
図1〜2および4に注目する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、調整可能切削部分32Aは弾性陥凹部66を含むことができる。弾性陥凹部66は、調整可能切削部分32Aが、付勢部分64によって加えられた付勢力BFによって屈曲されるのを可能にするため設計されている。弾性陥凹部66は、少なくとも本体前面および背面26、28に開口することができる。また、弾性陥凹部66は、本体周面30に開口することも可能である。或る特定の実施形態において、弾性陥凹部66は、調整可能切削部分32Aのインサートポケット34の回転方向前方部分で本体周面30に開口することができる。
【0067】
図4に示されるように、いくつかの実施形態では、回転切削工具20の前面図において、弾性陥凹部66は半径方向に延びることが可能である。調整不能切削部分32Bは、この部分が調整機作60に関係付けられていず屈曲されるよう設計されていないので、弾性陥凹部66がなくてもよい。弾性陥凹部66は、調整可能切削部分32Aと、回転方向Rの隣接調整不能切削部分32Bとの間に形成することができる。弾性陥凹部66は、半径方向内側に、本体中央軸Bから切削直径CDに関連する半径の約三分の一の距離だけ離れた工具本体22の領域に延ばすことが可能である。
【0068】
ここで図7を参照する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、付勢部材62は、工具ホルダ24に枢動可能に取り付けられたレバー68であってもよい。レバー68は、鋼鉄で作製することができる。レバー68は、レバー長手軸LAに沿って長手方向に延びることが可能である。レバー68は、レバー長手軸LAと交差する2つの相反対側のレバー端面70、およびレバー両端面70の間に延びるレバー周面72を含むことが可能である。レバー周面72は、相反対側のレバー上面および底面74、76、ならびにレバー上面と底面と74、76を結ぶ2つの相反対側のレバー側面78を含むことができる。レバー68は、レバー作動部分80、および付勢部分64とレバー作動部分80との間に位置するレバー中間部分82を含むことが可能である。付勢部分64は、レバー68の一方の端に配置することができ、レバー作動部分80は、レバー68の他方の端に配置することができる。レバー中間部分82は、工具ホルダ24上の少なくとも1つの支点面86に枢支搭載するよう設計することが可能な、少なくとも1つのレバー旋回面84を含むことが可能である。
【0069】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、レバー68は、レバー作動部分80に作動力AFを加えることによってレバー68が旋回軸P周りに枢動されたとき、付勢部分64が調整可能切削部分32Aと付勢係合できるように構成することができる。すなわち、付勢部分64は、レバー68が枢動されると、調整可能切削部分32Aに付勢力BFを加えることができる。付勢力BFの方向は、工具長手軸Aとほぼ平行にすることができる。旋回軸Pは工具長手軸Aに垂直にできる。少なくとも1つのレバー旋回面84は、円筒軸Cを有する想像上の円筒表面CSの一部に横たわることができる。旋回軸Pとこの円筒軸Cと合致させることが可能である。同様に、少なくとも1つのレバー支点面86は、想像上の円筒表面CS上に横たわることができる。しかして、該少なくとも1つの支点面86と少なくとも1つの旋回面84とは、レバー68が旋回軸P周りに枢動されると、相互の上をスムースにスライドすることができる。
【0070】
図5および7にさらに示されるように、本出願の主題の第一実施形態によれば、レバー68は、レバー端面70の1つに隣接する2つの相反対側のレバー側面78からそれぞれ外に延びる2つのレバーアーム88を含むことができる。図7だけを参照すると、レバー68は、各レバーアーム88に1つずつ配置されたきっかり2つのレバー旋回面84を含むことが可能である。レバー68は、レバーネジ孔92を含むことができる。レバーネジ孔92は、レバー68を枢動するのに使われ、当明細書でさらに詳しく説明する。
【0071】
図11に示されるように、本出願の主題の第二実施形態によれば、レバー底面76は、2つのレバー側面78の間を横方向に(すなわち、レバーの長手軸LAに対し横断方向に)延びるレバー突出部90を含むことが可能である。レバー68は、レバー突出部90上に配置されたきっかり1つのレバー旋回面84を含むことができる。レバー68は、レバー上面と底面74、76との間を通り抜けるレバー貫通孔94を含むことが可能である。レバー貫通孔94は、レバー68を枢動するのに使われ、当明細書でさらに詳しく説明する。
【0072】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、調整機作60は、レバー68を収容するため設計されたレバーチャネル96をさらに含むことが可能である。レバーチャネル96は、ホルダ前面48で工具ホルダ24に陥凹される。レバーチャネル96は長手方向に延びることができる。レバーチャネル96は、2つの相反対側のレバーチャネル側面98、およびこれら2つのレバーチャネル側面98の間に延びるレバーチャネル中央面100を含むことが可能である。少なくとも1つの支点面86は、レバーチャネル96中に配置することができる。
【0073】
図5aに見られるように、本出願の主題の第一実施形態によれば、レバーチャネル96は、ホルダ周面46中に陥凹することが可能で、ホルダ前面48に開口することができる。レバーチャネル96は、工具長手軸Aに対し軸方向に延びることができる。
【0074】
図10aに見られるように、本出願の主題の第二実施形態によれば、レバーチャネル96は、ホルダ前面48に陥凹することができる。レバーチャネル96は、ホルダ周辺面46に開口することが可能である。レバーチャネル96は、工具長手軸Aに対し半径方向に延びることができる。レバーチャネル中央面100は、レバーチャネル中央面100中に陥凹された軸方向のチャネルネジ孔102を含むことが可能である。このチャネルネジ孔102の使途は、当明細書でさらに詳しく説明する。第一実施形態と違って、第二実施形態の構成では、レバーチャネル96しかしてレバー68の長さLは、ホルダ前面48の半径寸法によって制限される。
【0075】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、レバーチャネル96は、少なくとも1つのチャネル溝104を含むことができる。
【0076】
本出願の主題の第一実施形態によれば、レバーチャネル96は、2つの相反対側のレバーチャネル側面98からそれぞれ延び出て、ホルダ前面48に開口する2つにチャネル溝104を含むことが可能である。この2つのチャネル溝104は、ホルダ周面46に開口することができる。レバーチャネル96は、きっかり2つの支点面86を含むことが可能で、各チャネル溝104に1つの支点面86が配置される。
【0077】
本出願の主題の第二実施形態によれば、レバーチャネル96は、レバーチャネル中央面100中に陥凹された1つのチャネル溝104を含むことができる。チャネル溝104は、2つのレバーチャネル側面98の間を横断方向に延びることが可能である。レバーチャネル96は、チャネル溝104中に配置されたきっかり1つの支点面86を含むことができる。
【0078】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、調整機作60は、作動されたときレバー68の枢動を誘発するように構成された作動部材106を含むことが可能である。作動部材106は作動ネジ108とすればよい。
【0079】
ここで図10を参照すると、本出願の主題の第二実施形態によれば、工具本体22は、本体前面と背面と26、28に開口するアクセス貫通孔112を含むことが可能である。アクセス貫通孔112は、作動ネジ108を回転できるよう配列することができ、これにより、作動ネジ108にこれを締めたり弛めたりするためのアクセス可能性を提供する。
【0080】
本出願の主題の第一実施形態によれば、作動ネジ108は、一端にネジ接触面110を含むことができる。調整可能切削部分32Aの非屈曲位置から屈曲位置への調整は、以下のステップを実施することによって達成される。レバー68をレバーチャネル96に設置する。ネジ接触面110がレバーチャネル中央面100に最初に接触して非屈曲位置を画定するまで、作動ネジ108をレバーネジ孔92の中にネジ係合する(図8参照)。この位置では、付勢部分64は、本体面BPよりも軸方向後方に位置する。作動ネジ108をさらに締めると、レバー作動部分80が、レバーチャネル中央面100からさらに押し進められ、付勢部分64が最初に調整可能切削部分32Aに接触するまで、レバー68が旋回軸P周りを回転旋回方向Dに枢動する。この位置で、ネジ接触面110がレバーチャネル中央面100を押し付け始める。作動ネジ108がさらに締付けられると、レバー68は旋回軸P周りを回転旋回方向Dにさらに枢動する。この旋回動きの過程で、付勢部分64は、付勢部分64が本体面BPよりも軸方向前方にさらに延びて屈曲位置を画定するまで、前方成分を有する方向に変位される(図9参照)。しかして、調整可能切削部分32Aは、付勢部分64との付勢係合によって、前方方向Dに弾力変形される。
【0081】
本出願の主題の第二実施形態によれば、作動ネジ108はネジヘッド114を含むことができ、レバー貫通孔94はレバーネジ接触面116を含むことができる。調整可能切削部分32Aの非屈曲位置から屈曲位置への調整は、以下のステップを行うことによって達成される。レバー68をレバーチャネル96に設置する。作動ネジ108がレバー貫通孔94中に配置され、チャネルネジ孔102中にネジ係合されて非屈曲位置を画定する(図12参照)。この位置では、付勢部分64は、本体面BPよりも軸方向後方に位置する。作動ネジ108をさらに締めると、ネジヘッド114がレバーネジ接触面116に押し付けられて、レバー作動部分80がレバーチャネル中央面100に向け押し進められ、その結果、付勢部分64が最初に調整可能切削部分32Aに接触するまで、レバー68が旋回軸P周りを回転旋回方向Dに旋回する。作動ネジ108がさらに締付けられると、レバー68は旋回軸P周りを回転旋回方向Dにさらに枢動する。この枢動の過程で、付勢部分64は、付勢部分64が本体面BPよりも軸方向前方にさらに延びて屈曲位置を画定するまで、前向き成分を有する方向に変位される(図13参照)。しかして、調整可能切削部分32Aは、付勢部分64との付勢係合によって、前方方向Dに弾力変形される。
【0082】
本出願の主題の第一実施形態によれば、調整機作60は、レバー68の軸方向前方変位を防ぐための第一メカニズムを含むことができる。レバー作動部分80はレバー幅W1を有する。レバーチャネル96の中間部分はレバーチャネル幅W2を有する。レバーチャネル幅W2をレバー幅W1よりも小さくし、これによりレバー68の軸前方方向への変位を防ぐことが可能である。さらに、調整機作60は、レバー68の半径外方向への変位を防ぐための第二メカニズムを含むことができる。図9に見られるように、調整機作60は、工具ホルダ24に着脱可能に取り付けられた径方向阻止部材118を含むことが可能である。レバー68はその一端にカットアウト120を含むことができる。径方向阻止部材118は、レバー68が半径外側方向に変位したとき、径方向阻止部材118がレバー68を通り抜けるのをカットアウト120で遮るように構成することが可能である。
【0083】
なお、調整機作60、具体的には付勢部材62が、工具本体22と一体化されたりまたはその中に組み込まれたりすることはない。すなわち、調整機作60は工具本体22とは別物ある。このことは、回転切削工具20が小さい場合(例えば、切削直径CDが約40mm以下で、切削の幅Wが訳3mm以下)、工具本体22にはいかなる種類の調整機作60をも収容するための十分な領域がないので有利である。
【0084】
前述のように、回転工具20は、工具の回転長手軸Aを有し、該工具は、ホルダ長手軸Hを有する第一工具部分(すなわち工具ホルダ24)と、本体中心軸Bを有する第二工具部分(すなわち工具本体22)であって、工具本体22は、本体中心軸Bおよびホルダ長手軸Hを工具長手軸Aに合致させながら、着脱可能に工具ホルダ24に取り付けられる、該第二工具部分と、工具本体22に搭載された少なくとも1つの切削インサート36と、工具ホルダ24に枢支搭載され、工具本体22上に搭載された少なくとも1つの切削インサート36の軸方向位置を調整するように構成されたレバー68と、を含む。
【0085】
屈曲位置において、レバー68は、ホルダ周面46を超えて半径外側方向に(すなわち、レバーチャネル96の外側に)延びることができないことにもさらに留意する。しかして、有利には、レバー68が回転切削工具20の切削の深さに干渉することはない。
【0086】
また、本出願の主題の1つの特徴は、切削インサート36の軸方向位置付けが極めて正確なことにも留意すべきである。しかして、溝フライスとして、本回転切削工具20の切削の幅Wは極めて正確に制御することができる。
【0087】
本出願の主題をある程度の具体性をもって説明してきたが、当然のことながら、別途請求される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変形および修改を加えることができよう。

図1
図2
図3
図4
図5
図5a
図6
図7
図8
図9
図10
図10a
図11
図12
図13