【実施例】
【0070】
以下に本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0071】
(実施例1)化合物(1)〜(11)の分離及び同定
(抽出および粗分画)
ゴーヤ乾燥チップ(20kg)をメタノール(MeOH)で抽出し、MeOH抽出物を得た。得られたMeOH抽出物を50%MeOH水溶液−ヘキサン(1:1,60L)で分配した。50%MeOH水溶液可溶部をイオン交換樹脂[三菱化学社製、Diaion HP−20(樹脂量:30L)]に吸着させ、50%MeOH水溶液(100L)およびMeOH(100L)で溶出し、減圧下溶媒を留去することにより50%MeOH画分およびMeOH画分(114g)を得た。
なお、ゴーヤ乾燥チップは、加熱風乾品であるため、加熱処理がなされている。
【0072】
(MeOH画分の精製)
MeOH画分(5.0g)を中圧分取液体クロマトグラフ(MPLC)(ODS,水−MeOH)およびMPLC(ODS,20mM CH
3COONH
4水溶液−CH
3CN,アセトン)で19画分に分画した。
画分7を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)(YMC社製、Triart C18,水−CH
3CN)で精製し、化合物(3)(25.0mg)を得た。また、画分9をHPLC(YMC社製、Triart C18,水−CH
3CN)で精製し、化合物(7)(18.3mg)を単離した。また、画分12および16も同様にHPLC(YMC社製、Triart C18,水−CH
3CN)で精製し、画分12から化合物(11)(0.8mg)を、画分16から化合物(6)(1.0mg)を得た。
【0073】
(MeOH画分の加熱処理および加熱処理物の精製)
MeOH画分(10.2g)に、2%酢酸・70%CH
3CN水溶液を加え、5時間加熱還流した反応物を、MPLC(ODS,20mM CH
3COONH
4水溶液−CH
3CN,アセトン)で17画分に分画した。
画分4をHPLC(YMC社製、Triart C18,水−CH
3CN)で精製し、化合物(9)(10.0mg)を得た。画分8をHPLC(YMC社製、Triart C18,水−CH
3CN)で精製し、化合物(4)(19.7mg)を単離した。画分9および10も同様にHPLC(YMC社製、Triart C18,H
2O−CH
3CN)で精製し、画分9から化合物(5)(17.1mg)を、画分10から化合物(1)(43.5mg)を得た。画分16および17をあわせて、MPLC(ODS,20mM CH
3COONH
4水溶液−CH
3CN,アセトン)、HPLC(YMC社製、Triart C18,水−CH
3CN)およびHPLC(ナカライテスク社製、Cosmosil PBr,水−CH
3CN)で精製し、化合物(2)(10.7mg)、化合物(10)(3.8mg)、および化合物(8)(4.6mg)を得た。
【0074】
なお、化合物(1)〜(11)の構造は、質量分析及びNMRにより同定し、それぞれ、前記の通りの構造であることを確認した。構造分析データの一例を下記に示す。
【0075】
[化合物(1)]
【0076】
【化3】
【0077】
1H−NMR(Pyridine−d5):δ0.77(3H,s),0.85(3H,s),0.95(3H,s),0.97(3H,d,J=5.6Hz),1.56(3H,s),1.569(3H,s),1.573(3H,s),2.28(2H,m),2.32(1H,br s),2.43(1H,br d,J=10.0Hz),3.62(1H,d,J=7.9Hz),3.72(1H,br s),3.75(1H,d,J=7.9Hz),4.01(1H,m),4.04(1H,m),4.24(2H,m),4.44(1H,dd,J=5.2,11.5HHz),4.61(1H,dd,J=2.0,11.5HHz),4.94(1H,d,J=7.7Hz),5.59(1H,dd,J=3.6,9.7Hz),5.95(3H,m),6.22(1H,d,J=9.7Hz)
【0078】
13C−NMR(Pyridine−d5):δ15.5,19.35,19.41,20.7,21.6,24.3,26.1,28.1,28.7,31.4,31.5,33.9,37.0,39.6,40.0,40.6,45.8,45.9,49.3,50.7,52.7,63.5,70.2,72.3,76.3,78.8,78.9,80.6,86.0,86.3,107.4,124.7,130.5,134.6,142.2
【0079】
HRMS(ESI,[M+Na]
+)calcd for C
36H
58NaO
8 641.4024, found 641.4025.
【0080】
[化合物(2)]
【0081】
【化4】
【0082】
1H−NMR(Pyridine−d5):δ0.85(3H,s),0.92(3H,d,J=5.4Hz),0.97(3H,s),1.00(3H,s),1.51(3H,s),1.58(6H,s),2.30(1H,m),2.34(1H,br s),2.46(1H,dd,J=6.0,12.1Hz),3.64(1H,br s),5.37(1H,m),5.59(1H,dd,J=3.4,9.7Hz),5.96(2H,m),6.28(1H,br d,J=9.7Hz)
【0083】
13C−NMR(Pyridine−d5):δ15.6,18.4,19.4,21.8,23.1,24.9,28.4,28.6,28.7,31.4,34.4,37.1,37.9,39.1,40.0,45.8,49.4,50.5,50.8,70.2,76.8,86.7,108.3,124.7,131.0,134.4,142.2
【0084】
HRMS(ESI,M+Na
+)calcd for C
30H
48NaO
4 495.3445, found 495.3427.
【0085】
[化合物(3)]
【0086】
【化5】
【0087】
1H−NMR(Pyridine−d5):δ0.84(3H,s),0.94(3H,s),1.04(3H,m),1.17(3H,s),1.34(3H,s),1.72(3H,s),1.73(3H,s),2.07(1H,m),2.11(1H,m),2.37(1H,m),2.70(1H,m),3.69(1H,m),3.70(1H,m),4.34(1H,m),4.83(1H,m),5.09(1H,m),5.62(1H,m),6.23(1H,m),10.59(1H,s)
【0088】
13C−NMR(Pyridine−d5):δ15.5,18.59,18.61,19.6,22.3,23.1,25.6,26.3,26.8,27.5,28.5,30.0,33.4,35.3,36.8,40.6,43.4,45.9,46.4,48.8,51.0,51.2,51.7,65.6,65.9,80.1,125.2,131.4,132.4,144.4,168.0,170.3,208.1
【0089】
HRMS(ESI,M+Na
+)calcd for C
33H
50NaO
7 581.3449, found 581.3444.
【0090】
[化合物(4)]
【0091】
【化6】
【0092】
1H−NMR(CD
3OD):δ0.90(3H,s),0.94(3H,s),0.94(3H,d,J=5.6Hz),0.95(3H,s),1.17(3H,s),1.28(6H,s),2.18(1H,m),2.48(1H,dd,J=5.4,12.4Hz),2.94(1H,br s),3.25(1H,m),3.26(1H,m),3.31(1H,m),3.39(1H,m),3.41(1H,br s),3.68(1H,dd,J=5.4,11.7Hz),3.86(1H,br d,J=11.7Hz),4.27(1H,d,J=7.8Hz),5.10(2H,s),5.61(3H,m),6.11(1H,br d,J=9.7Hz)
【0093】
13C−NMR(CD
3OD):δ13.8,17.8,17.9,18.8,19.1,22.6,24.3,26.5,27.6,28.6,28.8,30.4,33.3,36.2,38.3,38.9,41.2,41.3,44.8,47.3,49.9,61.4,69.8,70.4,73.9,76.2,76.4,84.9,85.6,104.6,106.1,124.5,131.2,132.7,139.4
【0094】
HRMS(ESI,M+Na
+)calcd for C
36H
58NaO
9 657.3973, found 657.3985.
【0095】
[化合物(5)]
【0096】
【化7】
【0097】
1H−NMR(CD
3OD):δ0.78(3H,s),0.81(3H,s),0.81(3H,d,J=5.6Hz),0.82(3H,s),1.06(3H,s),1.16(6H,s),2.06(1H,m),2.36(1H,dd,J=5.4,12.4Hz),2.82(1H,br s),3.24(1H,dd,J=2.8,7.9Hz),3.29(1H,br s),3.37(1H,dd,J=2.8,9.2Hz),3.53(1H,m),3.56(1H,m),3.72(1H,m),3.97(1H,dd,J=2.8,2.8Hz),4.56(1H,d,J=7.9Hz),4.98(2H,s),5.48(3H,m),5.99(1H,dd,J=1.7,9.7Hz)
【0098】
13C−NMR(CD
3OD):δ13.8,17.8,17.9,18.8,19.3,22.6,24.3,26.5,27.6,28.6,28.7,30.4,33.3,36.2,38.3,38.9,41.2,41.3,44.8,47.3,49.9,61.8,67.6,69.8,71.2,71.3,73.9,84.9,85.6,103.4,104.6,124.5,131.2,132.7,139.4
【0099】
HRMS(ESI,M+Na
+)calcd for C
36H
58NaO
9 657.3973, found 657.3975.
【0100】
[化合物(6)]
【0101】
【化8】
【0102】
1H−NMR(CDCl
3):δ0.88(3H,s),0.91(3H,s),0.91(3H,d,J=5.8Hz),0.94(3H,s),1.24(3H,s),1.72(3H,s),1.74(3H,s),2.50(1H,m),2.86(1H,m),3.43(1H,br s),4.49(1H,m),5.16(1H,m),5.23(1H,d,J=8.4Hz),5.69(1H,dd,J=3.8,9.8Hz),6.11(1H,dd,J=2.2,9.7Hz)
【0103】
HRMS(ESI,M+Na
+)calcd for C
30H
48NaO
4 495.3445, found 495.3439.
【0104】
[化合物(7)]
【0105】
【化9】
【0106】
1H−NMR(CD
3OD):δ0.72(3H,s),0.84(3H,s),0.90(3H,d,J=5.6Hz),0.98(3H,s),1.22(3H,s),1.57(3H,s),1.60(3H,s),1.83(2H,m),1.84(1H,br s),1.98(1H,m),2.30(1H,m),2.49(1H,dd,J=3.5,8.7Hz),3.05(1H,dd,J=7.7,8.0Hz),3.13(1H,m),3.16(1H,m),3.23(1H,m),3.45(1H,br s),3.53(1H,dd,J=4.5,11.7Hz),3.72(1H,d,J=11.7Hz),3.91(1H,d,J=5.0Hz),4.21(1H,d,J=7.7Hz),4.31(1H,dt,J=3.2,8.5Hz),5.06(1H,d,J=8.5Hz),5.77(1H,d,J=5.0Hz),9.75(1H,s)
【0107】
13C−NMR(CD
3OD):δ13.9,16.7,17.3,17.9,21.6,21.9,24.5,24.6,26.1,27.3,28.9,32.3,34.2,35.8,41.1,44.2,45.4,47.6,49.9,50.1,50.6,61.4,65.1,65.3,70.3,74.2,76.3,76.6,85.8,105.0,122.0,129.0,132.0,146.3,208.6
【0108】
HRMS(ESI,M+Na
+)calcd for C
36H
58NaO
9 657.3973, found 657.3978.
【0109】
[化合物(8)]
【0110】
【化10】
【0111】
1H−NMR(Pyridine−d5):0.87(3H,s),0.93(6H,s),0.98(3H,d,J=5.8Hz),1.53(3H,s),1.89(3H,s),2.30(1H,m),2.31(1H,m),2.49(1H,dd,J=5.4,12.4Hz),3.64(1H,br s),3.89(1H,m),4.18(1H,m),4.39(1H,m),4.45(1H,m),4.51(1H,m),4.68(1H,m),5.39(1H,d,J=7.7Hz),5.01(2H,br s),5.64(1H,m),5.75(1H,ddd,J=6.3,8.2,15.5Hz),6.23(1H,dd,J=2.2,9.8Hz),6.29(1H,d,J=15.5Hz)
【0112】
13C−NMR(Pyridine−d5)δ14.7,18.65,18.70,19.7,21.0,23.1,24.8,27.3,28.2,30.9,33.8,36.7,38.8,39.9,41.6,45.2,47.7,48.2,50.6,63.0,69.0,72.1,73.1,75.9,84.2,103.5,104.8,114.4,129.8,131.1,133.9,134.4,142.3
【0113】
HRMS(ESI,M+Na
+)calcd for C
36H
56NaO
8 639.3867, found 639.3868.
【0114】
[化合物(9)]
【0115】
【化11】
【0116】
1H−NMR(Pyridine−d5):δ0.76(3H,s),0.84(3H,s),0.95(3H,d,J=6.0Hz),1.13(3H,s),1.31(3H,s),1.526(3H,s),1.531(3H,s),2.07(1H,m),2.22(1H,m),2.33(1H,s),2.66(1H,m),3.64(1H,d,J=15.4Hz),3.69(1H,d,J=15.4Hz),4.31(1H,d,J=4.8Hz),5.07(1H,m),5.91(1H,m),5.93(1H,m),6.19(1H,d,J=4.8Hz),10.57(1H,s)
【0117】
13C−NMR(Pyridine−d5):δ14.8,17.8,18.7,21.6,22.3,24.9,26.0,26.8,27.4,29.1,30.6,34.6,36.1,36.3,39.3,39.8,42.7,45.5,47.9,49.9,50.2,50.5,65.2,69.5,79.4,123.9,124.5,141.5,143.7,167.3,169.5,207.3
【0118】
HRMS(ESI,M+Na
+)calcd for C
33H
50NaO
7 581.3449, found 581.3433.
【0119】
[化合物(10)]
【0120】
【化12】
【0121】
1H−NMR(Pyridine−d5):0.88(3H,s),0.93(6H,s),0.98(3H,d,J=5.8Hz),1.53(3H,s),1.90(3H,s),2.30(1H,m),2.31(1H,m),2.49(1H,dd,J=5.4,12.4Hz),3.69(1H,br s),4.00(2H,m),4.20(1H,dd,J=8.7,8.7Hz),4.24(1H,dd,J=8.7,8.8Hz),4.40(1H,dd,J=2.0,11.4Hz),4.57(1H,dd,J=5.0,11.4Hz),4.93(1H,d,J=7.7Hz),4.96(2H,br s),5.65(1H,m),5.75(1H,ddd,J=6.3,8.2,15.5Hz),6.24(1H,dd,J=2.2,9.8Hz),6.30(1H,d,J=15.5Hz)
【0122】
13C−NMR(Pyridine−d5):δ14.6,18.65,18.70,19.7,21.0,23.1,24.8,27.2,28.1,30.8,33.7,36.7,38.9,39.9,41.6,45.2,47.7,48.2,50.6,62.8,71.6,75.8,78.0,78.3,84.2,85.0,104.9,106.2,114.4,129.8,131.1,133.9,134.4,142.3
【0123】
HRMS(ESI,M+Na
+)calcd for C
36H
56NaO
8 639.3867, found 639.3847.
【0124】
[化合物(11)]
【0125】
【化13】
【0126】
1H−NMR(Pyridine−d5)(Pyridine−d5):0.76(3H,s),0.83(3H,s),0.88(3H,s),0.95(3H,d,J=5.7Hz),1.52(3H,s),1.54(6H,s),1.88(1H,m),2.23(1H,m),3.65(1H,br s),3.88(1H,m),4.10(1H,m),4.36(1H,m),4.45(1H,m),4.54(1H,m),4.62(1H,m),5.29(1H,d,J=7.7Hz),5.60(1H,d,J=3.3,9.7Hz),5.91(1H,m),5.93(1H,m),6.30(1H,d,J=2.0,9.7Hz)
【0127】
13C−NMR(Pyridine−d5):δ14.4,18.5,18.7,19.1,20.8,23.6,28.0,30.6,30.8,33.7,36.3,38.1,39.2,40.5,44.6,47.7,48.2,50.1,50.5,63.1,68.9,72.1,72.9,75.7,84.9,86.9,104.7,123.9,132.3,132.7,141.4,181.9
【0128】
HRMS(ESI,M+Na
+)calcd for C
36H
56NaO
9 655.3817, found 655.3823.
【0129】
(実施例2)GLP−1分泌促進作用の確認
ゴーヤ乾燥チップ(10.5g)に水150mlを加え、1時間加熱還流した。反応物にアセトン150mlを加えて抽出後、ろ過した。残渣にアセトン100mlを加え再抽出した。ろ過後、ろ液をあわせて減圧濃縮し、アセトン抽出物3.46gを得た。
実施例1で得られた化合物(1)〜(11)及び上記のようにして得られたアセトン抽出物がGLP−1分泌活性作用を有することを確認した。
【0130】
一例として、化合物(1)〜(5)及び(7)について、コントロールと比較した結果を下記表に示す。表では、GLP−1分泌活性化作用を有することが知られているTPA(3μM)の結果についても合わせて示す。
なお、GLP−1分泌活性化作用は、以下のようにして確認した。
ポリ−L−リジン(Poly−L−Lysine) 96−well プレートはBD社、PBS(+)、抗生物質、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM))、グルコース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC−Na)はナカライテスク社製、TPA[12−O−テトラデカノイルホルボル−13−アセテート(Tetradecanoylphorbol−13−Acetate)]はCell Signaling社製、活性型GLP−1 ELISAキットはMerck Millipore社製、Fetal bovine serum(FBS)はSigma社製、シタグリプチンリン酸塩(Sitagliptin phosphate)はSanta Cruz Biotechnology社製、NCI−H716細胞はATCC社より譲渡されたものを用いた。
DMEM培地(10%FBS、2mMグルタミン、1%抗生物質を添加済)に懸濁させたNCI−H716細胞をPoly−L−Lysine 96−well プレートに0.5×105cells/wellで100μLずつ播種し、CO2インキュベーター(espec社製)で48時間培養した。
PBS(+)で洗浄後、最終濃度として、化合物(1)=0.71μg/mL、化合物(2)=1.03μg/mL、化合物(3)=0.52μg/mL、化合物(4)=1.92μg/mL、化合物(5)=1.43μg/mL、化合物(7)=6.35μg/mL ゴーヤアセトン抽出物=1mg/ml、10μMのSitagliptin phosphate を添加したPBS(+)溶液100μLを細胞に添加した。1時間後に添加溶液を回収し、ELISAキットを用いて溶液中の活性型GLP−1量を測定した。
【0131】
【表2】
【0132】
(実施例3)GLP−1分泌促進活性成分を多く含む画分の調製法
ゴーヤ乾燥チップ(10.5g)に水150mlを加え、1時間加熱還流した。反応物にアセトン150mlを加えて抽出後、ろ過した。残渣にアセトン100mlを加え再抽出した。ろ過後、ろ液をあわせて減圧濃縮し、アセトン抽出物3.46gを得た。
得られたアセトン抽出物をMPLC(ODS)で分画し、水溶出画分(画分1:3.1g)、アセトニトリル溶出画分(画分2:210mg)およびアセトン溶出画分(画分3:140mg)を得た。
各画分及びアセトン抽出物について、実施例2と同様にして、GLP−1分泌活性作用を有することを確認した。
【0133】
コントロールと比較した結果を
図1に示す。なお、図では、GLP−1活性化作用を有することが知られているTPA(3μM)についても合わせて示し、Frは「画分」、「ゴーヤ」はアセトン抽出物を意味する。
【0134】
図1の結果から明らかなように、アセトン抽出物(ゴーヤ)および各分画物(画分1−3)のGLP−1分泌促進活性を確認したところ、画分2で最も強い活性を示し、活性成分は画分2に多く含まれていることが分かった。
【0135】
また、アセトン抽出物および画分2のLC−MS分析を行った。結果を
図2に示す。
【0136】
図2の結果から明らかなように、アセトン抽出物と画分2の2つのMSクロマトグラムがほぼ一致していることから、加熱処理後のアセトン抽出物中に存在し、画分2に効率的に濃縮されていることが分かった。
【0137】
そして、画分2には、化合物(1)〜(11)が含まれていることも確認した。
【0138】
(実施例4)化合物(1)〜(5)の定量
下記に示す各サンプルにおいて、化合物(1)〜(11)の中から、化合物(1)〜(5)をピックアップし、LC−MS分析により定量した。
【0139】
(加熱処理ゴーヤ)
ゴーヤの凍結乾燥粉末(50mg)をフタ付き試験管に量り取り、水3mlを加え密閉した。マイクロ波合成装置(CEM社製Discover)を用い、120℃で20分間加熱した。加熱後、反応物にアセトニトリル7mlを加えて超音波で2分間抽出した。静置後、上清を0.45μmのフィルターでろ過し、分析サンプルとした。
【0140】
(生ゴーヤ、ゴーヤピューレ、ゴーヤジュース)
生ゴーヤ、ゴーヤピューレ又はゴーヤジュースの凍結乾燥物各50mgをフタ付き試験管に量り取り、水3ml、アセトニトリル7mlを加えて超音波で2分間抽出した。静置後、上清を0.45μmのフィルターでろ過し、分析サンプルとした。
なお、生ゴーヤ、ゴーヤピューレ、ゴーヤジュースのサンプルは、次のようにして得た。
生ゴーヤ:ゴーヤを1/2〜1/4程度にカットし、綿と種子を除去したものを生ゴーヤとした。
ピューレ:ゴーヤを1/2〜1/4程度にカットし、綿と種子を除去した。ゴーヤ:水=4:1となるように加水し、ミキサーにより破砕し、ピューレ原液を得た。なお、ピューレは、殺菌後、冷却し使用まで冷凍保存した。
ピューレ原液を密閉した耐熱容器にいれ、水を入れた恒温槽に浸した。恒温層の設定温度を95℃に設定し、水の状態から徐々に加熱した。恒温槽の温度が95℃に達した時点から15分間維持し、ピューレを得た。
ジュース:上記で得たピューレに加水をして、ゴーヤピューレ:水=2:3となるように加水した。80メッシュ以上のストレーナーを通し、108℃〜111℃で約65秒殺菌した。88℃以上で充填し冷却した。
【0141】
また、分析条件は以下の通りとした。
(LCMS測定)
各サンプルをLCMS−IT−TOFで分析し、定量した。定量値は、あらかじめ標品を用いて作成した検量線より求めた。
(LC条件)
カラム: Triart C18 (YMC製、150×2.1mmI.D.,3μm)
カラム温度:40°C
流速:0.3ml/min
グラジエント:30%→100%(30−39分)B in A
A:0.1%ギ酸水溶液
B:0.1%ギ酸アセトニトリル
インジェクション量:2μl
【0142】
各サンプル中における化合物(1)〜(5)を定量した結果を下記表に示す。
【0143】
【表3】
【0144】
上記表の結果から明らかなように、化合物(1)〜(5)は、加熱処理されていない生のゴーヤにはほとんど含まれておらず、加熱処理を経たゴーヤ又はゴーヤ加工品に顕著に含まれることがわかった。
【0145】
(実施例5)加熱温度の違いによる化合物(1)〜(5)含有量の比較
ゴーヤの凍結乾燥粉末(50mg)をフタ付き試験管に量り取り、水3mlを加え密閉した。マイクロ波合成装置(CEM製Discover)を用い、100、120、140または160℃で10分間加熱した。加熱後、反応物にアセトニトリル7mlを加えて超音波で2分間抽出した。静置後、上清を0.45μmのフィルターでろ過し、分析サンプルとした。
得られた各サンプルにおいて、実施例4と同様にして、LC−MS分析により化合物(1)〜(5)を定量した。
【0146】
各サンプル中における化合物(1)〜(5)を定量した結果を下記表に示す。
【0147】
【表4】
【0148】
上記表の結果から明らかなように、加熱温度の上昇とともに各成分量が増大し、その後減少する傾向があることから、化合物(1)〜(5)を高割合で得るには、加熱温度の調整も必要であることがわかった。
【0149】
(実施例6)加熱処理条件下における化合物(1)〜(5)含有量の経時変化
ゴーヤの凍結乾燥粉末(50mg)をフタ付き試験官に量り取り、水3mlを加え密閉した。マイクロ波合成装置(CEM社製Discover)を用い、100℃及び120℃で2、5、10、20、40または60分間加熱した。加熱後、反応物にアセトニトリル7mlを加えて超音波で2分間抽出した。静置後、上清を0.45μmのフィルターでろ過し、分析サンプルとした。
得られた各サンプルにおいて、実施例4と同様にして、LC−MS分析により化合物(1)〜(5)を定量した。
【0150】
各サンプル中における化合物(1)〜(5)を定量した結果を
図3(100℃)及び
図4(120℃)に示す。
【0151】
図3及び4の結果から明らかなように、加熱時間とともに各成分量が増大し、その後減少する傾向があることから、化合物(1)〜(5)を高割合で得るには、加熱時間の調整も必要であることがわかった。
【0152】
(実施例7)化合物(1)〜(5)の安定性試験
化合物(1)〜(5)をそれぞれ4μg/mLの濃度で含む70%アセトニトリル混合水溶液0.5mLと0.2N塩酸水溶液0.5mLの混合溶液を調製し、40℃で放置したときの化合物(1)〜(5)の量を経時的に測定した。なお、測定は、実施例4と同様にして、LC−MS分析により行った。
【0153】
そして、調製直後の量を100%として、サンプル中の化合物(1)〜(5)の量がどのように変化するかをプロットした。結果を
図5に示す。
【0154】
図5の結果から明らかなように、胃内に相当する条件下において、化合物(1)〜(5)の半減期は2時間以上を示しており、安定であることがわかった。
【0155】
(実施例8)加熱ピューレによるGLP−1活性化作用の確認
実施例4で得られたゴーヤピューレ(加熱ピューレ)を用い、以下の条件で、インビボにおけるGLP−1活性化作用を確認した。
【0156】
1.使用動物
Wistar系ラット 雄 8週齢
2.群構成
水、ゴーヤピューレ
3.投与物質及び例数
Control(水)20mL/kg 9例
加熱ピューレ 20g(投与液量20mL)/kg 9例
4.採血部位
イソフルラン麻酔下でラットの右頚静脈にカニューレを挿入し、カニューレを皮下を通して背部より出し、経時的に採血が出来るようにした。カニュレーション手術後1日以上あけて、実験を行った。また、カニューレにはヘパリンを充填し、血液が凝固しないようにした。
5.採血及び投与
採血はイソフルランの軽麻酔下で行い、投与前及び投与後1時間とした。投与は投与前の採血を行った直後に経口投与した。
6.測定項目
GLP−1の測定はGLP−1ELISAキット(Wako High Sensitive)を用いてTotal GLP−1の測定を行った。
7.評価
評価は投与前を100%とし、投与後の上昇率により対照群と加熱ピューレ群で比較した。
【0157】
【表5】
【0158】
上記表の結果から明らかなように、加熱ピューレ群では、インビボにおいてGLP−1の分泌を活性化する作用を有することがわかった。
【0159】
(実施例9)加熱ピューレによる血糖値上昇抑制作用の確認
実施例4で得られた加熱ピューレを用い、以下の条件で、インビボにおけるGLP−1活性化作用を確認した。
【0160】
1.使用動物
C57BL系/6マウス 雄 6週齢
2.投与量、投与液量
投与量は10及び20g/kgの2用量とし、投与液量は20mL/kgとした。投与量20g/kgは加熱ピューレ原液を投与液とし、10g/kgは原液を精製水で2倍希釈し、投与液とした。
3.群構成
下記表の通りとした。
【0161】
【表6】
4.経口糖負荷試験(OGTT)
約5時間絶食させたマウスの血糖値を測定し、対照群、低用量群、高用量群に、血糖値を用いて層化抽出法により振り分け、均一化した。各群に投与物質を経口投与し、その0.5時間後に2g/kgのグルコース(20%溶液、10mL/kg)を経口投与した。血糖値は投与物質投与前(−0.5時間)、グルコース投与直前(0時間)、グルコース投与後0.5、1、2及び3時間に非麻酔下で尾静脈から採血し、簡易血糖値測定装置(グルテストNeoスーパー、(株)三和化学研究所)を用いて測定した。
【0162】
結果を
図6に示す。
【0163】
図6の結果から明らかなように、対照群の血糖値はグルコース投与後0.5時間をピークとする上昇が認められ、その後減少する推移を示した。加熱ピューレ投与の低用量群及び高用量群共に、対照群と同様な推移を示したが、低用量群では血糖値上昇抑制傾向が、高用量群では有意な血糖値の低値が認められ、その傾向はグルコース投与後1時間まで認められた。
【0164】
(実施例10)茶飲料の製造
茶抽出液(市販の粉末緑茶に水を加え0.3質量%に調製したもの)200mlに、実施例4で得られたゴーヤピューレを20g添加し、煎茶飲料を製造した。
【0165】
(実施例11)コーヒー飲料の製造
5gの粉砕した市販のコーヒー粉に65gの沸騰水を用いて常法によりコーヒー抽出物を調整し、実施例4で得られたゴーヤピューレ5gを加えて、コーヒー飲料を製造した。
【0166】
(実施例12)野菜飲料の製造
フードプロセッサーにバナナ1本、にんじん1本、サラダ菜 1束、実施例4で得られたゴーヤピューレ30g、水200ml、砂糖大さじ3を加えて、ミキサーにかけ野菜飲料を得た。
【0167】
(実施例13)ビスケットの製造
小麦粉85g、砂糖30g、ベーキングパウダー1g、塩1g、ごま油25g、牛乳20g、実施例4で得られたゴーヤピューレを凍結乾燥したゴーヤピューレ粉末1gを用いて常法によりビスケットを製造した。
【0168】
(実施例14)豆腐の製造
よく冷やした豆乳(無調整)600ml、にがり15ml、水30ml、実施例4で得られたゴーヤピューレ5gを耐熱性のタッパーに注ぎ、混ぜ合わせた。ラップをして、蒸気のあがった蒸し器により弱火で約15分蒸し、豆腐を製造した。