(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802258
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】信号パルスを検出するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 15/14 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
G01N15/14 J
G01N15/14 P
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-506518(P2018-506518)
(86)(22)【出願日】2016年8月12日
(65)【公表番号】特表2018-532101(P2018-532101A)
(43)【公表日】2018年11月1日
(86)【国際出願番号】EP2016069193
(87)【国際公開番号】WO2017025619
(87)【国際公開日】20170216
【審査請求日】2019年5月14日
(31)【優先権主張番号】A50716/2015
(32)【優先日】2015年8月12日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】398055255
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】ブルンホーファー・ゲオルク
【審査官】
右田 純生
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−505132(JP,A)
【文献】
国際公開第1993/022692(WO,A1)
【文献】
特表2010−522328(JP,A)
【文献】
特表2011−503550(JP,A)
【文献】
特表2011−503524(JP,A)
【文献】
特表2010−538245(JP,A)
【文献】
米国特許第04837437(US,A)
【文献】
特表2013−506822(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/073071(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0109958(US,A1)
【文献】
特表2014−501916(JP,A)
【文献】
米国特許第06470285(US,B1)
【文献】
特開昭61−240143(JP,A)
【文献】
特表2004−529367(JP,A)
【文献】
特開2011−215005(JP,A)
【文献】
米国特許第06525323(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00−15/14
H01J 47/00
G01T 1/17
G01R 19/00
H03K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子計数器の1つのアナログ測定信号(1)中の複数の信号パルス(2)を検出するための設備であって、この設備は、AD変換器(6)と評価装置(10)とを有する当該設備において、
前記評価装置(10)が、勾配評価器(16)を有し、この勾配評価器(16)は、前記AD変換器(6)のデジタルデータストリーム(7)中の隣接した複数のサンプリング(8)間の複数の勾配を評価することによってリアルタイムで複数の信号パルス(2)を認識すること、及び
前記評価装置(10)は、検出器(17)を有し、連続する複数のサンプリング(8)が、1つのパラメータセットの複数の条件を充足するときに、この検出器(17)は、1つの信号パルス(2)を検出し、このパラメータセットは、最小立ち上がりエッジ(min_incr)、最小勾配期間(peak_valid)及び/又は最小立ち下がりエッジ(min_decr)から選択されている少なくとも1つのパラメータを含むことを特徴とする設備。
【請求項2】
前記AD変換器(6)は、前記デジタルデータストリーム(7)を、50MSPSを超える、特に50〜105MSPSの範囲内のサンプリング速度(fS)で生成することを特徴とする請求項1に記載の設備。
【請求項3】
複数の信号パルス(2)の検出が、集積回路、特にフィールドプログラマブルゲートアレイ(11)内で実行されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の設備。
【請求項4】
前記評価装置(10)は、1つの閾値器(18)を有し、この閾値器(18)は、所定の1つの検出閾値(thrhld)を下回ったときにサンプリング(8)をその評価から除外することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の設備。
【請求項5】
前記評価装置(10)は、ドリフト検出部を有し、このドリフト検出部は、前記測定信号(1)のドリフト挙動を検出し及び/又は評価するための基準を認識し評価することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の設備。
【請求項6】
前記ドリフト挙動を検出し及び/又は評価するための基準は、背景光(Vcomp)の変化、平均の信号パルス振幅(Apeak)及び/又は平均の信号パルス期間(Tpeak)を含むことを特徴とする請求項5に記載の設備。
【請求項7】
前記設備は、前記粒子計数器内のドリフト挙動を補償するための補償器(5)を有し、この補償器(5)の制御変数(Vcomp)が、前記測定信号(1)のドリフト挙動を検出し及び/又は評価するために前記評価装置(10)に伝送されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の設備。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の設備によって1つのアナログ測定信号(1)中の複数の信号パルス(2)を検出するための方法において、
評価装置(10)が、AD変換器(6)のデジタルデータストリーム(7)中の隣接した複数のサンプリング(8)間の複数の勾配を評価することによってリアルタイムで複数の信号パルス(2)を認識すること、
連続する複数のサンプリング(8)が、1つのパラメータセットの複数の条件を充足するときに、1つの信号パルス(2)が検出され、このパラメータセットは、最小立ち上がりエッジ(min_incr)、最小勾配期間(peak_valid)及び/又は最小立ち下がりエッジ(min_decr)から選択されている少なくとも1つのパラメータを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
サンプリング(8)が、所定の1つの検出閾値(thrhld)を超えたときだけ評価される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
測定されるパルス群(1)のドリフト挙動を検出し及び/又は評価するための基準が認識され、前記ドリフト挙動を検出し及び/又は評価するための基準は、特に、背景光(Vcomp)の変化、平均の信号パルス振幅(Apeak)及び/又は平均の信号パルス期間(Tpeak)を含むことを特徴とする請求項8〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
サンプリング間隔(tS)に対する平均の信号パルス期間(Tpeak)の最小比は、40未満、好ましくは20未満、特に6未満であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
部分的に重なっている複数の信号パルスを検出するため、理想的な信号波形からの偏差が、定量化され、その後に考慮されることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子計数器の1つのアナログ測定信号中の複数の信号パルスを検出するための設備に関する。この場合、当該設備は、AD変換器と評価装置とを有する。さらに、本発明は、この設備の使用、及びこのような設備によって1つのアナログ測定信号中の複数の信号パルスを検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子計数器は、一般には光の絨毯を有する。ほとんどの散乱粒子の流れが、この光の絨毯を通過される。この場合、それぞれの粒子が、この光の絨毯の通過時に散乱光を生成する。この散乱光は、光センサによって検出される。当該測定性能を改良するため、当該粒子は、通常は予め凝縮装置を通過する。この凝縮装置内では、凝縮滴が、粒子に成長する。当該凝縮滴のより大きい寸法と均一性とに起因して、粒子を直接に測定するのとは違う計数が可能になる。
【0003】
当該光の絨毯の光強度のガウス分布によって、通過する1つの粒子が、同様にガウス分布状の信号パルスを生成する。最適な場合には、それぞれの個別粒子が、ただ1つの散乱光パルスを提供する。このことは、散発的に発生する複数の信号パルスの時間推移に相当する。この場合、複数の離散イベントの統計学的な確率分布が、ポアソン分布によって算出され得る。
【0004】
複数の粒子間の時間間隔が非常に小さい場合、同時発生が起こる。この場合、狭い間隔で前後して続く複数の粒子によって生成された複数の信号パルスが、信号技術的に単一の信号パルスに重なり、もはや2つの個別イベントとして分離され得ない。
【0005】
光センサは、複数の信号パルスを検出し計数するために使用されるアナログ測定信号を生成する。この場合、一般に、1つの閾値が規定される。この場合、通過する1つの粒子の生成された信号パルスが、比較器によって取得され、この閾値が超えられるときに、当該粒子が、認識されたとみなされる。非常に高く選択された閾値の場合、非常に小さい信号パルスが、間違って計数されないことが起こり得る。しかしながら、この閾値が、非常に低く選択される場合、密に隣り合っていて、(同時に)部分的に重なっている複数の信号パルスが、ただ1つの個別信号パルスとして認識され、それ故に多数の信号パルスが検出されない。非常に低い閾値の場合、バックグラウンドノイズも、間違った結果を引き起こし得る。
【0006】
特に、測定されるパルス群が、ドリフト挙動を有することが欠点である。その結果、当該パルス群が、その測定中に閾値によって規定された測定範囲から外れるように移動する。このとき、当該閾値による信号評価は、気づかれずに間違った結果を引き起こし得る。
【0007】
当該信号評価は、通常はアナログ領域内で実行される。何故なら、測定信号中の複数の信号パルスは、非常に短く、通常は80〜200nsの範囲内にあるので、デジタル化は、非常に速いサンプリング速度を必要とするからである。確かに、十分に高いサンプリング速度を非常に短い信号パルスに対しても可能にするAD変換器が任意に構成できるものの、デジタル領域内で閾値を用いて評価することには、アナログ領域に比べて顕著な利点がない。したがって、通常は、アナログ領域内での評価が、より簡単で且つそれ故に好適な解決策である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第3635477号明細書
【特許文献2】国際公開第9322692号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007065179号パンフレット
【特許文献4】米国特許第4803701号パンフレット
【特許文献5】特開平05−149866
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、従来の技術では、同時発生のより良好な認識と、より高い計数精度とを可能にし、測定信号のドリフト挙動を認識し評価し補償することを可能にする、複数の信号パルスを検出するための設備及び方法が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、従来の技術のこの課題及びその他の課題は、冒頭で述べた種類の設備によって解決される。当該設備の場合、当該評価装置が、勾配評価器を有し、この勾配評価器は、当該AD変換器のデジタルデータストリーム中の隣接した複数のサンプリング間の複数の勾配を評価することによってリアルタイムで複数の信号パルスを認識する。すなわち、換言すれば、本発明は、粒子計数器の1つのアナログ測定信号において部分的に重なっている複数の信号パルスを検出し計数するための設備又は方法を可能にする。これにより、固定された閾値の代わりに、当該測定信号の推移が簡単に評価され得る。変曲点が、パルスピークを認識するために評価され得る。このことは、ドリフト挙動を認識し補償することも可能にする。リアルタイムの評価が、連続する測定方法の場合に必要であり、本発明の設備によって達成され得る。
【0011】
本発明の好適な実施の形態では、当該AD変換器は、当該デジタルデータストリームを、50MSPS(毎秒メガサンプル)を超える、特に50〜105MSPSの範囲内のサンプリング速度で生成する。このことは、ナノ秒の範囲内での複数の信号パルスの検出を可能にする。
【0012】
本発明によれば、好ましくは、複数の信号パルスの検出が、集積回路、特にフィールドプログラマブルゲートアレイ内で実行されている。このことは、認識アルゴリズムの組み込み式にもかかわらずフレキシブルな実装を可能にし、これによりリアルタイムの信号評価を簡単に可能にする。
【0013】
本発明の別の好適な構成では、当該評価装置が、検出器を有し得る。連続する複数のサンプリングが、1つのパラメータセットの複数の条件を充足するときに、この検出器は、1つの信号パルスを検出する。この場合、このパラメータセットは、最小立ち上がりエッジ、最小勾配期間及び/又は最小立ち下がりエッジから選択された少なくとも1つのパラメータを含む。このようなパラメータセットは、簡単に比較する計算操作に基づく複数の信号パルスの速い検出を可能にする。この場合、積分器又は微分器は必要でない。
【0014】
バックグラウンドノイズをフィルタリングするため、当該評価装置は、1つの閾値器を有益に有し得る。この閾値器は、所定の1つの検出閾値を下回ったときにサンプリングをその評価から除外する。
【0015】
別の実施の形態では、当該評価装置が、ドリフト検出部を有し得る。このドリフト検出部は、当該測定されるパルス群のドリフト挙動を検出し及び/又は評価するための基準を認識し評価する。これにより、誤差の原因が、早期に認識され、誤認が回避され得る。
【0016】
好ましくは、本発明によれば、当該ドリフト挙動を検出し及び/又は評価するための基準は、背景光の変化、平均の信号パルス振幅及び平均の信号パルス期間を含み得る。このような基準は、発生するドリフト挙動の原因に関する的確な情報提供を可能にする。その結果、対応する整備対策が、早期に計画され得る。
【0017】
好ましくは、当該設備が、当該粒子計数器内のドリフト挙動を補償するための補償器を有し得る。この場合、この補償器の制御変数が、当該測定信号のドリフト挙動を検出し及び/又は評価するために当該評価装置に伝送される。特に測定セル内の背景光の変化が、補償器によって補償され得る。この場合、この補償器は、アナログ領域又はデジタル領域内に設けられ得る。当該ドリフト挙動の補償は、測定信号の零線が移動しないことを保証する。これにより、例えば、バックグラウンドノイズをフィルタリングするための検出閾値の実効性が保証される。同時に、当該評価装置の制御変数が、ドリフト挙動を検出し及び/又は評価するための複数の特性値のうちの1つの特性値として使用される。
【0018】
全ての設備要素、特にAD変換器、評価装置、勾配評価器、検出器、閾値器、ドリフト検出部及び/又は補償器、並びにその他の全ての機能単位である当該設備の構成要素はそれぞれ、必要に応じて、固有のハードウェア装置として構成され得る。これらは、下位のグループのハードウェア装置に任意に組み合わせられてもよく、これらはそれぞれ、別の装置内に組み込まれてもよく、又は、これらは、部分的に若しくは全体としてソフトウェアで実装されてもよい。
【0019】
本発明の設備は、整備時点がドリフト挙動に基づいて算出されるように有益に使用され得る。この場合、必要な整備の種類に関する具体的な情報も、それぞれの基準に基づいて導き出され得る。
【0020】
1つのアナログ測定信号中の複数の信号パルスを検出するための冒頭で述べた方法は、複数の信号パルスが、AD変換器のデジタルデータストリーム中の隣接した複数のサンプリング間の複数の勾配を評価することによってリアルタイムで認識されることを提唱する。
【0021】
好ましくは、連続する複数のサンプリングが、1つのパラメータセットの複数の条件を充足するときに、当該方法が、1つの信号パルスを検出し得る。この場合、このパラメータセットは、最小立ち上がりエッジ、最小勾配期間及び/又は最小立ち下がりエッジから選択されている少なくとも1つのパラメータを含む。
【0022】
場合によっては、異なる複数のパラメータセットが、例えば、計数精度に関して最適なパラメータセットを動的に決定するために、複数の粒子特性を分類するために、又は同時発生を検出するために、並行して評価され比較され得る。これらの並行するパラメータセットは、例えば自動補正のために使用され得る。
【0023】
この場合、好ましくは、バックグラウンドノイズをフィルタリングするため、サンプリングが、所定の1つの検出閾値を超えたときだけ本発明にしたがって評価される。
【0024】
本発明の方法の好適な構成では、測定されるパルス群のドリフト挙動を検出し及び/又は評価するための基準が認識され得る。この場合、当該ドリフト挙動を検出し及び/又は評価するための基準は、特に、背景光の変化、平均の信号パルス振幅及び平均の信号パルス期間を含む。
【0025】
好ましくは、サンプリング間隔に対する平均の信号パルス期間の最小比は、40未満、好ましくは20未満、特に6未満である。安定な評価アルゴリズムに起因して、複数の信号パルスが、幾つかのサンプリングに基づくだけで確実に認識され得る。このことは、粒子の最大許容通過速度も向上させる。本発明の方法によれば、例えば100MSPSのサンプリング周波数の場合に、ほんの30nsの期間の信号パルスが認識され得る。これは、サンプリング間隔(1*10
−8s)に対する信号パルス期間(3*10
−8s)の比3に相当する。平均の信号パルス振幅又は平均の信号パルス期間によってドリフト挙動を十分に且つ有意義に評価するためには、より高いサンプリング速度が重要になり得る。
【0026】
部分的に重なっている複数の信号パルスを検出するため、理想的な信号波形からの偏差が、定量化され、その後に考慮され得る。当該理想的な信号波形からの偏差の程度が、発生する同時発生を推定させる。
【0027】
以下に、本発明を、本発明の好適な構成を概略的に且つ限定しないで例示する
図1〜3を参照して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】複数の信号パルスを有する1つのアナログ測定信号を示す。
【
図2】検出装置と評価装置とによって信号パルスを検出するための本発明の設備のブロック図である。
【
図3】評価アルゴリズムのためのパラメータを説明するためのデジタル化された信号パルス群のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、光検出器によって記録された測定信号1の推移を示す。この場合、光強度Iが、時間tにわたって描かれている。当該測定信号は、例えば、凝縮核計数器のセンサセルから出力され得る。この場合、測定信号1に示された3つの信号パルス2のそれぞれは、測定セルの光の絨毯を通過する粒子によって生成されたものである。粒子又は粒子状に凝縮したエアロゾル粒子が、光の絨毯を横切るときに、当該粒子によって散乱された光が、光検出器3上に当たり(
図2参照)、信号パルス2を生成する。
図1では、初期の2つの信号パルスが、非常に狭い時間間隔で発生し得るような重なり部分を示す。
【0030】
一般に、−粒子の(最終的な)大きさと光の絨毯の幅とによって決まる−このような信号パルスの期間は、短いナノ秒の範囲内にあり、例えば80〜200nsの範囲内にある。
【0031】
信号パルスの高さは、散乱光の強度に関連し、したがって粒子の大きさに関連する。パルス幅は、粒子が光学検出装置を横切るために必要とする期間に関する情報を提供する。
【0032】
図2は、本発明の本発明の設備の1つの実施の形態を示す。当該設備は、光検出器3とトランスインピーダンスアンプ4と補償器5とAD変換器6とを有する検出装置9と、フィールドプログラマブルゲートアレイ11を有する評価装置10とを備える。
【0033】
電圧信号1′が、AD変換器によってデジタル化される前に、光検出器3によって生成された電流(すなわち、測定信号1)が、トランスインピーダンスアンプ4によって増幅され、当該電圧信号1′に変換される。
図2では、当該電圧信号1′は、補償器5の上方のグラフで示されている。この場合、当該デジタル化のためのサンプリング8が、概略的に描かれている。当該電圧信号は、そのAD変換前に公知の方法でアンチエイリアス処理を施され得る。
【0034】
ナノ秒の範囲内の信号パルスの短い期間は、当該信号のデジタル化時に、非常に速いサンプリングと、速いデジタル信号評価アルゴリズムと、アナログ信号経路のこれに応じた高い帯域幅とを必要とする。このため、高い帯域幅を有する光束光検出器が、例えば光検出器3として使用され得る。これに適応するように、後続接続されたトランスインピーダンスアンプ4が、十分に高い増幅率を有する必要がある。この場合、同様に必要な信号帯域幅が、十分に高い利得帯域幅積によって保証されることが配慮される必要がある(増幅器の利得が高い程、当該増幅器の帯域幅が制限される)。
【0035】
補償器5が、検出チャンバ内の背景光の変動を補償する。さらに、補償器5によって使用される制御変数V
compが、評価装置10に転送され、ドリフトを検出するための複数の基準のうちの1つの基準として使用される。測定システムの汚れ又は未較正が、背景光の増大した変化によって推定され得る。以下に、当該ドリフトの検出を説明する。
【0036】
トランスインピーダンスアンプ4又は補償器5からAD変換器6までの信号線が、特に、電磁結合に対するシグナルインテグリティにさらに配慮した差動ペア配線によって構成されてもよい。
【0037】
信号パルスの十分に高い分解能を後続する信号の評価に対して保証するため、サンプリング周波数が、特に50MHz〜105MHzの範囲内にあり得る。
【0038】
デジタル信号が、デジタルデータストリームとして評価装置10に転送される。粒子の計数は、複数の信号パルスを連続して検出することに基づくので、これらの信号パルスが、評価装置10によってリアルタイムで検出され評価される必要がある。それ故に、評価装置10に対する主な要求は、特に、速いデータ取得であり、したがって評価アルゴリズムのリアルタイム性の確保である。それ故に、50MSPS〜105MSPSのサンプリング速度f
SによるAD変換器のサンプリングの読み取りと、散乱光パルスの検出及び評価とが、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)11内で処理される。
【0039】
評価装置10によって実行される機能は、信号パルス検出評価13と、計数アルゴリズム14と、ドリフトを検出し評価するためのドリフト検出15とを含み得る。これらの機能単位は、FPGA11内で直接に実行され得るか又はFPGA11に後続して設置された部内で実行され得る。選択される手段が、十分な処理速度を保証する限り、場合によっては、評価装置10は、別の方式で(例えば、FPGAなしで)構成されてもよい。さらに、信号パルス検出評価部13は、隣接した複数のサンプリング間の勾配を評価するための勾配評価器16と、信号パルスをパラメータセットに基づいて検出するための検出器17と、閾値器18とを有する。この閾値器18は、サンプリングが所定の検出閾値を超えたときにだけ評価されることを保証する。
【0040】
当該評価アルゴリズムの速い処理及びリアルタイム性が要求されるので、数学的な複雑さは、僅かに抑えられる必要がある。複数の信号パルスを検出し、互いに分離できるようにするため、FPGA11が、異なる複数のパラメータ又はこれらのパラメータに結合した複数の条件を有し、当該パラメータ又は条件によって1つの出力信号(又は複数の出力信号)を生成してもよい。次いで、当該出力信号は、計数とさらなる処理とのために処理され得る。
【0041】
図3には、デジタル測定信号1に基づく幾つかのパラメータが例示されている。
【0042】
1.検出閾値(thrhld)
デジタル信号を評価するシステムのノイズ成分を遮断するため、検出閾値が、閾値として採用される。1つの信号パルスの検出が、この閾値の上で開始する。当該検出閾値によって確定された条件が、それぞれ個々のサンプリングに対して確認され得る。当該検出閾値の機能が、従来の技術において計数イベントを生成するために使用されるような閾値とは違う点に留意すべきである。何故なら、当該検出閾値は、専ら粒子を計数するための基準として使用されないからである。
【0043】
2.最小立ち上がりエッジ(min_incr)
連続する2つのデータ点間の最小の信号立ち上がりを確定する1つのパラメータが、1つの信号パルスの立ち上がりと、この信号パルスの周波数とに対する特性値として使用される。連続する複数のサンプリング間の勾配が、当該最小の信号立ち上がりの上方に存在するときに、1つの信号パルスを検出するための第1条件が充足されている。このパラメータ(又はこのパラメータに関連する条件)を評価するためには、2つのサンプリング間の勾配を算出することが必要である。このパラメータに関する情報は、1つのサンプリングのただ1つの値に基づいて取得され得ない。
【0044】
3.最小勾配期間(peak_valid)
勾配の値に加えて、1つの信号パルスの振幅も、この信号パルスを正確に検出するために重要である。当該最小勾配期間のパラメータは、連続して上昇する複数のデータ点の最小数を規定する。これらのデータ点は、信号パルスとして検出され得る信号推移を示す必要がある。組み合わせることで、当該最小立ち上がりエッジ(min_incr)のパラメータと当該最小勾配期間(peak_valid)とに基づいて検査された条件が、低域通過フィルタとして使用される。この場合、重畳したノイズから生成される信号ピークがフィルタリングされる。
【0045】
4.最小立ち下がりエッジ(min_decr)
1つの信号パルスを検出するためには、この信号パルスが、1つのピーク値に達したか否かがさらに確認される必要がある。最小立ち下がりエッジに関する値を下回る降下が、上昇に続くときに、1つのピーク値に到達する。したがって、当該最小立ち下がりエッジ(min_decr)は、最小立ち上がりエッジ(min_incr)と対を成すものである。時間的に狭く続くか又は部分的に重なった複数の信号パルスを分離する場合、このパラメータ(又はこの部分条件)は非常に重要になる。
【0046】
1つの信号パルスを検出するための条件として充足される必要のある1つのパラメータセットが、これらのパラメータに基づいて作成される。最適なパラメータセットを見つけ出すためには、計数精度と評価の速さと雑音感度との間で妥協点を見出す必要がある。簡単なパラメータセットは、1×min_incr+1×min_decrである。当該パラメータセットは、信号パルスの識別をただ3つのサンプリングの成す範囲内で可能にする。
【0047】
パラメータであるmin_incとpeak_validとの組み合わせも、最小の条件として可能である。当該パラメータであるmin_incとpeak_validとが十分に高く選択されている場合、ノイズフロアが遮断され、重要な信号パルスが非常に強く減衰していない限り、当該重要な信号パルスは正確に認識される。パラメータであるmin_decrも考慮される場合、追加の低域通過フィルタ機能が得られる。
【0048】
したがって、複数の信号パルスを検出するために上記の全てのパラメータを使用する1つのパラメータセットが、当該検出のための条件として、検出閾値の上方の連続する複数のサンプリング値を規定する。これらのサンプリング値の場合、連続する複数の勾配において、最小立ち上がりエッジが、少なくとも1回上回られ、当該複数の勾配が、最小勾配期間を超え、この最小勾配期間の最大値後に、少なくとも1つの(負の)勾配が、最小立ち下がりエッジを下回る。さらに、どの期間中に、この立ち下がりエッジが下回られる必要があるかが規定され得る。
【0049】
当該信号を評価するために1つのパラメータセットに構成される別のパラメータ(例えば、値peak_validと同様な、立ち下がりエッジに対する最小期間)が、これらの勾配値に基づいて規定されてもよい。
【0050】
例えば同時発生を認識するように、複数の補正係数を算出するため、場合によっては、複数のパラメータセットが並行して評価されてもよい。
【0051】
さらに、本発明の方法は、測定設備のドリフト挙動の簡単な検出及び評価を可能にする。当該ドリフト挙動は、複数の基準に基づいて評価され得る。背景光V
compの変化、平均の信号パルス振幅A
peak及び平均の信号パルス期間T
peakが、これらの基準に挙げられる。
【0052】
背景光V
compの変化が、検出装置及び/又は光源の未較正を示唆し得る。この場合、当該背景光は、整備間隔を決定するための重要なパラメータである。当該背景光は、例えば補償器5の調整パラメータによって監視され得る。
【0053】
平均の信号パルス振幅A
peakは、特に粒子の大きさによって影響される。凝縮核計数器内では、複数の粒子が、光学検出装置(すなわち、測定設備の測定セル)を通過する前に、当該複数の粒子は、所定の一定の大きさに成長する。確かに、光の絨毯のビーム形状と、散乱角度の変動とが、個々の散乱光を偏向させ得るものの、平均すると、当該複数の粒子は、ほぼ一定の強度を有する散乱光パルスを光検出器上に投影する。信号の視点から見ると、このことは、平均して一定のパルス振幅を意味する。それ故に、当該散乱光の変化は、凝縮装置内の動作媒体の成長特性が劣化したことを推定させる。
【0054】
平均の信号パルス期間T
peakは、光の絨毯中の粒子の滞在期間に対する目安である。より長い平均の信号パルス期間T
peakが、当該光の絨毯中により長く滞在する粒子を示唆する。このことは、測定チャンバの汚れ又は動作媒体の流れの変化又は当該光の絨毯の変化を示唆する。この値の変化は、整備間隔を決定するために重要である。
【符号の説明】
【0055】
1 測定信号
2 信号パルス
3 光検出器
4 トランスインピーダンスアンプ
5 補償器
6 AD変換器
7 デジタルデータストリーム
8 サンプリング
9 検出装置
10 評価装置
11 フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)
12 アナログ信号経路
13 信号パルス検出評価部
14 計数アルゴリズム部
15 ドリフト検出器
16 勾配評価部
17 検出部
18 閾値部