(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルキル(メタ)アクリレートA)が、A)の総重量を基準にして10〜60重量%の少なくとも一種のアルキル(メタ)アクリレートAii)を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
前記アルキル(メタ)アクリレートA)が、40重量%までの一種または複数の更なるモノマーAiii)を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
更なるモノマーAiii)が、炭素原子数1〜20のカルボン酸のビニルエステル、炭素原子数6〜40のα−オレフィン、ビニル芳香族類、エチレン性不飽和ジカルボン酸並びにそれの無水物及びC10〜C30脂肪アルコールとのエステル、アクリル酸、メタクリル酸、更に別の官能性基含有エチレン性不飽和化合物、並びにビニル−及びアリルポリグリコールから選択されることを特徴とする、請求項6に記載のポリマー組成物。
前記エチレンコポリマーが、エチレンの他に、4〜18モル%の少なくとも一種のビニルエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アルキルビニルエーテル及び/またはアルケンを含む、請求項1〜9のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
前記エチレンコポリマーが、エチレンと、次の式(6)の少なくとも一種のビニルエステルとからなるコポリマーである、請求項1〜11のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
CH2=CH−OCOR11 (6)
式中、
R11は、C1〜C16アルキルを意味する。
前記エチレンコポリマーが、エチレンと、次の式(7)の少なくとも一種のアクリル酸−またはメタクリル酸エステルとからなるコポリマーである、請求項1〜11のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
CH2=CR12−COOR13 (7)
式中、
R12は水素またはメチルであり、そして
R13は、C1〜C16アルキルを意味する。
前記エチレンコポリマーが、DIN53735に従い190℃及び2.16kgの荷重で測定した0.1g/10分と1,200g/10分との間のMFI190値を有する、請求項1〜14のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
溶剤の存在下でのA及びBのラジカル重合によって得ることができる、請求項1〜15のいずれか一つに記載のポリマー組成物であって、A、B及び溶剤、場合により並びに他の助剤の総量中の前記溶剤の割合が35重量%と80重量%との間である、前記ポリマー組成物。
原油、残渣油及び鉱油蒸留製品から選択される、パラフィン含有鉱油の低温特性を向上するための、請求項1〜19及び23〜26のいずれか一つに記載のポリマー組成物または濃厚物の使用。
請求項1〜19のいずれか一つに記載のポリマー組成物10〜10,000重量ppmを前記パラフィン含有鉱油に加えることを特徴とする、請求項27または28に記載の使用。
【背景技術】
【0002】
原油、並びにそれから製造される蒸留物及び蒸留残渣は、様々な種類の物質、例えば飽和及び不飽和炭化水素、芳香族化合物、樹脂及びアスファルトの複雑な混合物である。例えば製造、輸送、貯蔵及び/または再加工の時にこれらの油が冷却される時に、原油中に含まれる様々な物質が問題を起こす虞がある。特に長鎖n−パラフィンは、油毎に特異的な温度を下回った後に析出し得、及び比較的多量の液状構成分がインターカレート及び固定されているフレーク及び/または微細なニードル状物からなる三次元ネットワークを形成し得る。そうなると、油の大部分はなおも液状であるが、油はその流動性を失って、それにより、例えばパイプライン中での輸送が停止し得、及び貯蔵タンク中で、特にタンクの壁上に晶出するパラフィンの間にかなりの量の油が閉じ込められる虞がある。この問題は、原油の他、それから製造されるより重質の製品、例えば比較的多量のn−パラフィンを含む、中間蒸留物、重質加熱油、船舶用ディーゼル、バンカー油及び残渣油にも関連する。
【0003】
それ故、パラフィン含有鉱油には、輸送及び貯蔵のために、低温での油の流動性を向上すべき添加剤が多くの場合に加えられる。これらの所謂パラフィン防止剤は、主には、油溶性の合成ポリマー性化合物である。これらは、冷却された時に析出したパラフィンの結晶構造を変化させ、そしてパラフィン結晶からなる三次元ネットワークの形成を妨げる。場合により、これらの添加剤は、微細で、十分に結晶化されているが、凝集性ではないパラフィン結晶の形成も促進する。このような添加剤は、油の流動点(Stockpunkt)を低下させるので、これらは、流動点降下剤(PPD)とも称される。油の試料が冷却時にまだぎりぎり流動する最も低い温度のことを流動点と言う。油の流動点は、例えばDIN ISO 3016及びASTM D97を用いて決定することができる。
【0004】
多くの場合、パラフィン防止に使用される材料は、エチレンとビニルエステル及び/またはアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー、並びに異なる作用機序を持つポリ(アルキル(メタ)アクリレート)である。前記エチレンコポリマーの場合は、パラフィンとの共結晶化が、主鎖のポリ(エチレン)シーケンスを介して起こり、それの平均長は、コモノマー含有率により制御することができる。これに対して、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)の場合は、それの側鎖の長さが本質的であり、これは、平均鎖長と及びそれ故、添加剤配合する油中のn−アルカンの結晶化挙動と適合させる必要がある。この際、炭素原子数が18以上の線状アルキル残基が特に効果がよい。例えば2−テトラデシルオクタデシル残基などの分岐状アルキル残基を持つポリ(アルキルアクリレート)は、WO2010/003892(特許文献1)によればPPDとして効果がない。
【0005】
両方の部類のポリマーの特性プロフィルを組み合わせるために、両ポリマーの混合物も提案された。両方のポリマーを混合することによって調製されたこのような添加剤濃厚物を取り扱う際には、ポリマーの不相溶性の故に相分離の問題がしばしば生じる。
【0006】
上記の相分離の問題を解消するために、アルキルアクリレートの重合を、溶液状態で及びエチレン−ビニルエステルコポリマーの存在下に行うことが提案された。この際、一般的に受け入れられているセオリーによれば、アルキルアクリレートモノマーの少なくとも一部がエチレン−ビニルエステルコポリマー上にグラフトし、他方、他の部分は、グラフトせずに重合して、ホモポリマーをまたは(複数のモノマーが使用されている場合は)コポリマーを形成する。この少なくとも部分的なグラフト化は、その結果、ポリマーが添加物濃厚物中で分離することを妨げ、それ故、常に同一の組成の添加剤で油を処理することを可能にする。
【0007】
US4608411(特許文献2)は、エチレン−コポリマーにポリ(アルキルアクリレート)がグラフトしたグラフトポリマーを開示している。グラフト化に使用されるアルキルアクリレートは、炭素原子数が22以上のアルキル残基を少なくとも20重量%の割合で及びC
12〜C
16アルコールを10重量%未満の割合で有するアルコール混合物から誘導される。
【0008】
EP0384367(特許文献3)は、燃料油用のPPDとして、高分子量及び低分子量グラフトポリマー、中でもエチレン−ビニルエステルコポリマーにアルキル(メタ)アクリレートがグラフトした高分子量及び低分子量グラフトポリマーからなる混合物を開示している。グラフト化に使用されるアルキルアクリレートの製造のためには、例えば、20重量%のC
16−、40重量%のC
18−、10重量%のC
20−、及び30重量%のC
22−アルコールからなるアルコール混合物が使用される。一般的な記載によれば、(メタ)アクリレートのアルキル鎖の20重量%までが分岐状であることができるが、これらの実施形態については、実施例または利点は示されていない。
【0009】
EP0406684A(特許文献4)は、少なくとも二種の異なるエチレン−ビニルアセテートコポリマー、場合により及びポリ(アルキル(メタ)アクリレート)を含む、中間蒸留物用の添加剤を開示している。例9では、ポリ(イソ−デシルメタクリレート)を、二種のEVAコポリマーの混合物の存在下に製造しており、それにより、EVAとポリ(アルキルメタクリレート)との混合物が生じるとのことである。
【0010】
EP0486836A1(特許文献5)は、低温下での流動特性を向上するためにポリマー性添加剤を含む原油中間蒸留物、例えばガス油、ディーゼル油または加熱油を開示している。上記ポリマー性添加剤は、エチレンベースの通例の流動性向上剤、例えばエチレンと酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルもしくはエチルヘキシルアクリレートとのコポリマー、並びに40:60〜95:5の重量比で線状もしくは分岐状C
8〜C
18アルキル(メタ)アクリレートと線状もしくは分岐状C
18〜C
28アルキルビニルエーテルからなるコポリマーの組み合わせである。上記アルキル(メタ)アクリレートとアルキルビニルエーテルからなるコポリマーと上記慣用の流動性向上剤とが混合物として存在し得るか、または前記アルキル(メタ)アクリレート及び/またはアルキルビニルエーテルからなるコポリマーを、慣用の流動性向上剤上に完全にもしくは部分的にグラフトすることができる。この際、前記アルキル残基は、好ましくは直鎖状及び非分岐状であるが、20重量%までの環状及び/または分岐状部分が含まれていることができる。グラフトコポリマーを製造する唯一の例では、n−ドデシルアクリレート及びn−オクタデシルビニルエーテルが、エチレンとプロピオン酸ビニルとからなりかつ約2,500の平均分子量を有するコポリマー上にグラフトされている。
【0011】
WO2005/023907(特許文献6)は、エチレン−酢酸ビニルコポリマーと、アルキルアクリレートがグラフトしたエチレンコポリマー及び/またはポリ(アルキルアクリレート)とを含む流動点降下剤を開示している。前記アルキル(メタ)アクリレートは、アルキル残基中に6〜40個、好ましくは14〜30個の炭素原子を有する。これらの混合物は、水中の分散液として調製される。
【0012】
WO2005/097953(特許文献7)は、アミン及び場合によりアルコールと反応させた、マレイン酸無水物及びオレフィンからなるコポリマーをベースとする流動点降下剤を開示している。この際、適したアルコールのリスト中には、C
12〜C
36ゲルベアルコールが挙げられているが、これらは実施例からの裏付けがない。
【0013】
EP1808450A(特許文献8)は、エチレン、酢酸ビニル及び更に別のビニルエステルからなりかつアルキルアクリレートがグラフトしたコポリマー、並びに燃料油の低温流動性を向上するためのそれの使用を開示している。好ましいグラフト土台は、アクリル酸とn−もしくはiso−C
8〜C
22アルコールとのエステルである。
【0014】
WO2011/035947(特許文献9)は、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)と、C
1〜C
30アルキル(メタ)アクリレートから誘導される構造単位を含むエチレン−酢酸ビニルコポリマーとを含む組成物、並びに燃料油中での流動性向上剤としてのそれらの使用を開示している。実施例では、C
12/C
15アルキルメタクリレートもしくはC
6〜C
18アルキルメタクリレートがグラフトしたEVAコポリマーが証明されている。
【0015】
WO2014/095412(特許文献10)は、少なくとも一種のEVAコポリマーの存在下でのアルキル(メタ)アクリレートのラジカル重合によって得ることができるポリマー組成物を開示している。この際、前記アルキル(メタ)アクリレートは、(A1a)線状C
12〜C
60アルキル残基を有する少なくとも一種のアルキル(メタ)アクリレート50〜99モル%と、(A1b)線状C
1〜C
11アルキル残基、分岐状C
4〜C
60アルキル残基及び/または環状C
5〜C
20アルキル残基を有する少なくとも一種のアルキル(メタ)アクリレート1〜49モル%との混合物である。これらの組成物は、トルエン中で48重量%濃度に調節した場合、室温下に、相分離を示すことなく液状である。
【0016】
慣用のポリマー性パラフィン防止剤は、通常は、有機系、主には芳香族系の溶剤中での溶液重合によって製造される。十分な有効性のために必要なパラフィン様構造要素の故に及びしばしばこれらのポリマーの大きい分子量の故にも、それらの濃縮された溶液は固有流動点を有し、この固有流動点は、多くの場合に、それらの使用時に優勢な周囲温度よりを上回る。そのため、使用するためには、これらの添加剤は、強く希釈し及び/または高められた温度下で扱う必要があり、これは、両方とも、望ましくない超過支出を招く。代替的に、パラフィン防止剤が、極性の非溶剤、例えば水及び/またはアルコール中に分散もしくは懸濁した状態で存在する二相型調合物が提案された。所望のパラフィン防止を達成するためには、ポリマーは、添加した時にその極性マトリックスから非極性の油中に移行する必要があり、これは、特に低温下に、しばしば難点を示し、効果が弱まることから表面化する。
【0017】
従来技術のグラフトポリマーでは、例えば10℃、5℃または0℃などの非常に低い温度下での濃厚物のしばしば不十分な流動性が問題であり、これは、例えば、辺鄙な生産地域中で多く見られるような加熱されていない貯蔵タンク中での貯蔵の時に、添加剤の高度の希釈を必要とする。例えば深海掘削やまたはターミナルなどにおける低温下での添加剤の使用の場合も、中断無く使用するためには、添加剤の高度の希釈及び/または輸送ラインの加熱が必要である。加えて、添加剤は、比較的長期の貯蔵、例えば数日間乃至数週間の間に、流動点以上の温度下でもしばしばゲル相を形成し、これは、それらの流動性を失わせる。幾つかの場合では、特殊な油中での効果も不十分である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施形態の一つでは、該ポリマー組成物は、更に、溶剤または分散剤として炭化水素を含む。特に好ましい溶剤または分散剤は芳香族炭化水素である。
【0024】
本発明の更に別の対象の一つは、AとBとの混合物を、場合により溶剤の存在下に、ラジカル鎖開始剤の添加によって重合する、上記ポリマー組成物の製造方法である。
【0025】
本発明の更に別の対象の一つは、好ましくは炭化水素中の溶液または分散液としての上記ポリマー組成物の、低温特性の改善、例えば流動点及び/または降伏点の降下の改善のための、あるいは原油、残渣油及び更には鉱油製品中でのパラフィン分散の改善のための使用である。
【0026】
この際、アルキル(メタ)アクリレートという用語は、全ての場合において、アクリル酸のエステル、並びにメタクリル酸のエステルを包含する。
【0027】
好ましいモノマーAi)は、次の一般式(1)を有する:
H
2C=C(R
2)−COOR
3 (1)
式中、
R
2は、Hまたはメチル基を表し、好ましくはHを表し、そして
R
3は、炭素原子数16〜40、好ましくは炭素原子数18〜36、特に好ましくは炭素原子数18〜30、例えば炭素原子数18〜26の線状アルキル残基を表す。
【0028】
好ましいモノマーAi)は、アクリル酸のエステルであり、ここでR
2は水素を表す。
【0029】
好ましい残基R
3の例は、1−ヘキサデシル残基、1−オクタデシル残基、1−ノナデシル残基、1−エイコシル残基、1−ヘンエイコシル残基、1−ドコシル残基、1−テトラコシル残基、1−ヘキサコシル残基、1−オクタコシル残基及び1−トリコンチル残基である。好ましいモノマーAi)の例は、ヘキサデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、ノナデシルアクリレート、エイコシルアクリレート、ヘンエイコシルアクリレート、ドコシルアクリレート、テトラコシルアクリレート及びヘキサコシルアクリレートである。
【0030】
特に好ましくは、異なるアルキル(メタ)アクリレートAi)の混合物が使用される。例えば、R
3がC
16及びC
18残基を表すかまたはC
18、C
20及びC
22残基を表す混合物を使用することができる。好ましい実施形態の一つでは、使用されるアルキル(メタ)アクリレートAi)のうちの少なくとも一つは、1−ドコシル(メタ)アクリレートであり、特に1−ドコシルアクリレートであり、すなわちR
3が、炭素原子数22の線状アルキル残基を表す。本発明の特に好ましい実施形態の一つでは、使用するアルキル(メタ)アクリレートAi)の少なくとも25重量%が1−ドコシルアクリレートである。1−オクタデシル−(メタ)アクリレート、1−エイコシル(メタ)アクリレート及び1−ドコシル(メタ)アクリレートを含む混合物を有利に使用できる。様々な(メタ)アクリレートのこのような混合物は、例えば、対応する脂肪アルコール混合物をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化することによって得ることができる。これらの一部は、商業的にも入手できる。これらは、上記のC
18/C
20/C
22−(メタ)アクリレートの他に、炭素原子数がより多いかまたはより少ない少量の(メタ)アクリレートを副生成物として更に含み得る。これは、例えば、30〜50重量%の1−オクタデシル(メタ)アクリレート、10〜20重量%の1−エイコシル(メタ)アクリレート並びに30〜60重量%の1−ドコシル(メタ)アクリレートを含む混合物であることができる。上記のアクリレートの混合物が特に好ましい。
【0031】
好ましいアルキル(メタ)アクリレートAii)は次の一般式(2)を有する:
【0032】
【化1】
式中、
R
2は既に定義した意味を有し、及び
R
4及びR
5は、互いに独立して、炭素原子数6〜20の飽和状線状アルキル残基を表し、及びR
4及びR
5中の炭素原子の合計は16〜40である。
【0033】
好ましくは、前記アルキル(メタ)アクリレートAii)は、炭素原子数6〜20のアルキル残基をヒドロキシル基に対して2位に有するC
8〜C
22アルコールから誘導される。式(2)のエステルを製造するための好ましいアルコールは、合計で18〜36個、特に18〜32個の炭素原子を有する、すなわち残基R
4及びR
5中の炭素原子の合計は、好ましくは16〜34個、特に16〜30個である。アルキル(メタ)アクリレートAii)のアルキル残基R
4及びR
5は、炭素原子数が異なっていることが好ましい。特に好ましい実施形態の一つでは、残基R
4及びR
5のうちの一つは、他方よりも4つ多い炭素原子を有する。これらの2−アルキル−1−アルカノールは、ゲルベアルコールとも称される。上記のアルキルアクリレートAii)が特に好ましい。
【0034】
アルキル(メタ)アクリレートAii)は、アルキル(メタ)アクリレートAi)とは異なり、場合によりAiii)とも異なる。
【0035】
アルキル(メタ)アクリレートA)は、20〜95重量%、好ましくは25〜90重量%、特に30〜60重量%、例えば20〜90重量%、20〜60重量%、25〜95重量%、25〜60重量%、30〜95重量%または30〜90重量%の少なくとも一種のアルキル(メタ)アクリレートAi)を含む。更にこれらは、5〜80重量%、特に好ましくは10〜60重量%、特に20〜55重量%、例えば5〜60重量%、5〜55重量%、10〜80重量%、10〜55重量%の少なくとも一種のアルキル(メタ)アクリレートAii)を含む。特殊な実施形態の一つでは、アルキル(メタ)アクリレートAi)及びアルキル(メタ)アクリレートAii)の量が合わせて100%となる。
【0036】
場合によっては、アルキル(メタ)アクリレートA)は、0〜40重量%、好ましくは2〜35重量%、特に5〜30重量%、例えば0〜35重量%、0〜30重量%、2〜40重量%、2〜30重量%、5〜40重量%または5〜35重量%の、更に別のエチレン性不飽和化合物Aiii)から誘導される一種または複数の構造単位を含むことができる。
【0037】
適当な更に別のエチレン性不飽和化合物Aiii)は、例えば次の一般式(3)のエチレン性不飽和エステルである:
H
2C=C(R
2)−COOR
6 (3)
式中、
R
2は既に定義した意味を有し、及び
R
6は、炭素原子数が1〜11、好ましくは2〜10、特に2〜6の線状アルキル残基、炭素原子数4〜17、好ましくは4〜16、特に好ましくは4〜15の分岐状アルキル残基、または炭素原子数5〜20、好ましくは6〜12、特に好ましくは6〜10の環状アルキル残基を表す。
【0038】
線状アルキル残基R
6の例には、メチル、エチル−、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル−、n−オクチル−、n−ノニル−、n−デシル−及びn−ウンデシル残基が包含され、好ましくはn−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル−、n−ノニル−及びn−デシル残基であり、特に好ましくはエチル−、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル及びn−ヘキシル残基であり、就中好ましくはn−ブチル残基である。線状アルキル残基を有する適当なアルキル(メタ)アクリレートの例は、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート及びヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0039】
分岐状アルキル残基R
6は、単分岐状または多分岐状であることができる。分岐状アルキル残基R
6の例には、i−ブチル−、t−ブチル−、2,2’−ジメチルプロピル−、2−エチルヘキシル−、2−プロピルヘプチル−、i−ノニル−、i−デシル−、i−トリデシル−、i−ヘプタデシル残基、並びにプロペン、n−ブテン及びイソブテンのオリゴマーから誘導されるアルキル残基、例えばトリプロペニル−、テトラプロペニル−、ペンタプロペニル−、トリブテニル−及びテトラブテニル残基が包含される。好ましいものは、t−ブチル−、2−エチルヘキシル−、2−プロピルヘプチル残基、並びにテトラプロペニル−及びトリブテニル残基である。分岐状アルキル残基を有する適当なアルキル(メタ)アクリレートの例は、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−プロピルヘプチル(メタ)アクリレート並びにテトラプロペニル(メタ)アクリレート及びトリブテニル(メタ)アクリレートである。
【0040】
環状アルキル残基R
6は、単環式または多環式であることができ、好ましくは二環式である。これらは、更に、線状及び/または分岐状アルキル残基で置換されていることができる。環状アルキル残基R
6の例には、シクロペンチル残基、シクロヘキシル残基、4−メチルシクロヘキシル残基、シクロヘプチル残基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル残基、ビシクロ[2.2.2]オクチル残基または2−(1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプチル残基などが挙げられる。環状アルキル残基を有する適当なアルキル(メタ)アクリレートの例は、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びビシクロ[2.2.1]ヘプチル(メタ)アクリレートである。
【0041】
エチレン性不飽和化合物Aiii)の他の例は、炭素原子数1〜20のカルボン酸のビニルエステル、炭素原子数6〜40のα−オレフィン、ビニル芳香族化合物、エチレン性不飽和ジカルボン酸並びにそれらの無水物及びC
10〜C
30脂肪アルコールとのエステル、アクリル酸、メタクリル酸、及び特に他の官能基含有エチレン性不飽和化合物、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、p−アセトキシスチレン、アクリル酸ベンジルエステル、メトキシ酢酸ビニルエステル、ジメチルアミノエチルアクリレート、パーフルオロアルキルアクリレート、ビニルピリジンの異性体及びそれらの誘導体、N−ビニルピロリドン、並びに(メタ)アクリルアミド及びそれらの誘導体、例えばC
1〜C
20アルキル残基を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドである。
【0042】
式(4)のビニル−及びアリルポリグリコールも、更に別のエチレン性不飽和化合物Aiii)として適している。
【0043】
【化2】
式中、
R
7は水素またはメチルを表し、
Zは、C
1〜C
3アルキレン、またはR
7を有する炭素原子と酸素原子との間の単結合を表し、
R
8は、水素、C
1〜C
30アルキル、シクロアルキル、アリールまたは−C(O)−R
10を表し、
R
9は、水素またはC
1〜C
20アルキルを表し、
R
10は、C
1〜C
30アルキル、C
3〜C
30アルケニル、シクロアルキルまたはアリールを表し、そして
nは、1〜50、好ましくは1〜30の数を意味する。
【0044】
「アリール」という用語は、他に記載がなければ、単核または二核の炭素環式芳香族残基を表す。
【0045】
「シクロアルキル」という用語は、他に記載がなければ、炭素原子数4〜8のシクロアルキル残基を表す。
【0046】
複数の異なるエチレン性不飽和化合物Aiiiの混合物も本発明において使用することができる。異なるモノマーAiii)の混合物が使用される場合には、それの全量は、上記にAiii)について記載した範囲内である。
【0047】
本発明の好ましい実施形態の一つでは、前記アルキル(メタ)アクリレートA)は前記モノマーAiii)を含む。アルキル(メタ)アクリレートAiii)がアルキル(メタ)アクリレートA)に含まれる場合には、個々のアルキル(メタ)アクリレートAi)、Aii)及びAiii)は、それぞれの好ましい量範囲内で含まれることができる。
【0048】
アルキル(メタ)アクリレートAiii)が存在する場合には、アルキル(メタ)アクリレートA)は、好ましくは20〜93重量%、特に25〜85重量%、特に30〜65重量%、例えば20〜85重量%、20〜65重量%、25〜93重量%、20〜65重量%、30〜93重量%または30〜85重量%のAi)を含む。
【0049】
アルキル(メタ)アクリレートAiii)が存在する場合には、アルキル(メタ)アクリレートA)は、好ましくは5〜78重量%、特に10〜65重量%、特に15〜55重量%、例えば5〜65重量%、5〜55重量%、10〜78重量%、10〜55重量%、15〜78重量%または15〜65重量%のAii)を含む。
【0050】
アルキル(メタ)アクリレートAiii)が存在する場合には、アルキル(メタ)アクリレートA)は、好ましくは2〜40重量%、特に5〜40重量%、特に5〜30重量%、例えば2〜30重量%のAiii)を含む。
【0051】
特に好ましい実施形態の一つでは、アルキル(メタ)アクリレートA)は、
20〜93重量%のAi)、5〜78重量%のAii)及び2〜40重量%、特に5〜40重量%、及び就中5〜30重量%のAiii)、
20〜93重量%のAi)、10〜65重量%のAii)及び2〜40重量%、特に5〜40重量%、及び就中5〜30重量%のAiii)、
20〜93重量%のAi)、15〜55重量%のAii)及び2〜40重量%、特に5〜40重量%及び就中5〜30重量%のAiii)、
25〜85重量%のAi)、5〜78重量%のAii)及び2〜40重量%、特に5〜40重量%及び就中5〜30重量%のAiii)、
25〜85重量%のAi)、10〜65重量%のAii)及び2〜40重量%、特に5〜40重量%及び就中5〜30重量%のAiii)、
25〜85重量%のAi)、15〜55重量%のAii)及び2〜40重量%、特に5〜40重量%及び就中5〜30重量%のAiii)、
30〜65重量%のAi)、5〜78重量%のAii)及び2〜40重量%、特に5〜40重量%及び就中5〜30重量%のAiii)、
30〜65重量%のAi)、10〜65重量%のAii)及び2〜40重量%、特に5〜40重量%、及び就中5〜30重量%のAiii)、及び
30〜65重量%のAi)、15〜55重量%のAii)及び2〜40重量%、特に5〜40重量%及び就中5〜30重量%のAiii)、
を含む。
【0052】
エチレンと、エチレン性不飽和エステル、エーテルまたはアルケン(B)とのコポリマーとしては、エチレンの他に、4〜18モル%、特に7〜15モル%、とりわけ8〜14モル%、例えば4〜17モル%、4〜14モル%、7〜18モル%、7〜14モル%、8〜18モル%または8〜15モル%の少なくとも一種のビニルエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アルキルビニルエーテル及び/またはアルケンを含むものが特に適している。コモノマーとしてはビニルエステル、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルが好ましい。エチレンコポリマーが、二つ(ターポリマー)またはそれ超の、例えば三つ(テトラポリマー)または四つ(ペンタポリマー)の異なるコモノマーを含む場合には、先に特定したコモノマーモル含有率は、全コモノマー含有量の合計をベースとする。
【0053】
エチレンとの共重合に好ましいビニルエステルは、次式(6)のものである。
【0054】
CH
2=CH−OCOR
11 (6)
式中、
R
11は、C
1〜C
30アルキル、好ましくはC
4〜C
16アルキル、特にC
6〜C
12アルキルを意味する。
【0055】
前記アルキル残基は線状または分岐状であることができる。好ましい実施形態の一つでは、これは、炭素原子数1〜18の線状アルキル残基、例えばC
1〜C
16アルキルまたはC
1〜C
12アルキル残基である。更なる好ましい実施形態の一つでは、R
11は、炭素原子数3〜30、好ましくは炭素原子数5〜16、例えば炭素原子数5〜30または3〜16の分岐状アルキル残基を表す。特に好ましいビニルエステルは、第二級及び特には第三級カルボン酸であって、それの分岐がカルボニル基に対してアルファ位置にあるカルボン酸から誘導される。この際、炭素原子数5〜11、特に炭素原子数8、9または10のネオアルキル残基を有する、(バーサティック酸ビニルエステルとも呼ばれる)第三級カルボン酸のビニルエステルが特に好ましい。更に別の実施形態の一つでは、上記のアルキル基は、一つまたは複数のヒドロキシル基で置換されていることができる。
【0056】
適当なビニルエステルには、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ヘプタン酸ビニル、オクタン酸ビニル、ピバリン酸ビニルエステル、2−エチルヘキサン酸ビニルエステル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、並びにバーサティック酸エステル、例えばネオノナン酸ビニルエステル、ネオデカン酸ビニルエステル、ネオウンデカン酸ビニルエステルなどが挙げられる。ビニルエステルとして特に好ましいものは酢酸ビニルである。
【0057】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、該エチレンコポリマーB)は、酢酸ビニルと、R
11がC
4〜C
30アルキル、好ましくはC
4〜C
16アルキル、特にC
6〜C
12アルキル、例えばC
4〜C
12アルキルを表す式6の少なくとも一種の更に別のビニルエステルとを含む。この際、更に別のビニルエステルとしては、上記鎖長範囲の上記のビニルエステル、例えば酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ヘプタン酸ビニル、オクタン酸ビニル、ピバリン酸ビニルエステル、2−エチルヘキサン酸ビニルエステル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、並びにバーサティック酸エステル、例えばネオノナン酸ビニルエステル、ネオデカン酸ビニルエステル、ネオウンデカン酸ビニルエステルが好ましい。
【0058】
エチレンとの共重合に好ましいアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルは、次式(7)のものである:
CH
2=CR
12−COOR
13 (7)
式中、
R
12は水素またはメチルであり、そして
R
13は、C
1〜C
30アルキル、好ましくはC
4〜C
16アルキル、特にC
6〜C
12アルキルを意味する。
【0059】
前記アルキル残基R
13は、線状または分岐状であることができる。好ましい実施形態の一つでは、これらは線状である。更に別の好ましい実施形態の一つでは、これらは、エステル基に隣接する炭素原子のところに分岐を持つ。適当なアクリルエステルには、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−及びiso−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル−、オクチル−、2−エチルヘキシル−、デシル−、ドデシル−、テトラデシル−、ヘキサデシル−、オクタデシル(メタ)アクリレート並びにこれらのコモノマーの混合物などが挙げられる。
【0060】
エチレンとの共重合に好ましいアルキルビニルエーテルは、次式(8)の化合物である:
CH
2=CH−OR
14 (8)
式中、
R
14は、C
1〜C
30アルキル、好ましくはC
4〜C
16アルキル、特にC
6〜C
12アルキルを意味する。
【0061】
前記アルキル残基R
14は、線状または分岐状であることができる。例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、iso−ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0062】
エチレンとの共重合に好ましいアルケンは、炭素原子数3〜30、特に炭素原子数4〜16、就中炭素原子数5〜12、例えば炭素原子数3〜16または3〜12の単不飽和炭化水素である。適当なアルケンには、プロペン、ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘキセン、4−メチルペンテン−1、ヘプテン、オクテン、デセン、ジイソブチレン並びにノルボルネン、及びそれの誘導体、例えばメチルノルボルネン及びビニルノルボルネンなどが挙げられる。特に好ましいものは、プロペン、4−メチルペンテン−1及びジイソブチレンである。
【0063】
アルキル残基R
11、R
13及びR
14は、副次的な量で官能基、例えばアミノ基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、ケト基、カルボニル基、カルボキシ基、エステル基、スルホ基及び/またはハロゲン原子を含むことができるが、これらが、上記の残基の炭化水素としての特性を本質的に失わせないことが条件である。特に好ましくは、前記アルキル残基R
11、R
13及びR
14は、互いに独立して、上記の官能基を多くとも一つ有する。しかし、特に好ましい実施形態の一つでは、アルキル残基R
11、R
13及びR
14は、塩基反応性の官能基及び特に窒素含有官能基を持たない。
【0064】
特に好ましいターポリマーは、エチレンの他に、3〜15モル%、特に5〜13モル%、例えば3〜13モル%または3〜15モル%の酢酸ビニル、及び0.1〜12モル%、特に0.2〜10モル%、就中0.5〜8モル%、例えば0.1〜10モル%、0.1〜8モル%、0.2〜12モル%、0.2〜8モル%、0.5〜12モル%または0.5〜10モル%の少なくとも一種の長鎖ビニルエステル、(メタ)アクリルエステル及び/またはアルケン(ターモノマー)を含み、ここで全コモノマー含有率は、4モル%と18モル%との間、好ましくは7モル%と15モル%との間、例えば4〜17モル%、4〜14モル%、7〜18モル%、7〜14モル%、8〜18モル%または8〜15モル%である。この際、特に好ましいターモノマーは、2−エチルヘキサン酸ビニルエステル、ネオノナン酸ビニルエステル、ネオデカン酸ビニルエステル、2−エチルヘキシルアクリレート、2−プロピルヘプチルアクリレート及び4−メチル−2−プロピルヘキシルアクリレートである。
【0065】
更に別の特に好ましいコポリマーは、エチレン及び3〜15モル%、特に5〜13モル%、例えば3〜13モル%または5〜15モル%のビニルエステルの他に、0.1〜6モル%、好ましくは0.2〜5モル%、例えば0.1〜5モル%または0.2〜6モル%の、炭素原子数3〜8の少なくとも一種のオレフィン、例えばプロペン、ブテン、イソブテン、ヘキセン、4−メチルペンテン、オクテン、ジイソブチレン、ノルボルネン及び/またはスチレンを含む。
【0066】
適当なターポリマーの例は、エチレンの他に、二種の異なるビニルエステル、二種の異なるアルキル(メタ)アクリレート、ビニルエステルとアルキル(メタ)アクリレート、ビニルエステルとオレフィン、またはアルキル(メタ)アクリレートとオレフィンを含む。
【0067】
前記エチレンコポリマーB)の数平均分子量は、好ましくは100g/モルと100,000g/モルとの間、特に250g/モルと20,000g/モルとの間、例えば100g/モルと20,000g/モルとの間または250g/モルと100,000g/モルとの間である。DIN53735に従い190℃及び2.16kgの荷重で測定した、エチレンコポリマーB)のMFI190値は、好ましくは0.1g/10分と1,200g/10分との間、特に1g/分と900g/分との間、例えば0.1g/10分と900g/10分との間または1g/10分と1,200g/10分との間である。
1H−NMR分光分析を用いて決定した分岐度は、コモノマーに由来するものではないものとして、好ましくは1CH
3/100CH
2基と9CH
3/100CH
2基との間、特に2CH
3/100CH
2基と6CH
3/100CH
2基との間、例えば1CH
3/100CH
2基と6CH
3/100CH
2基との間または2CH
3/100CH
2基と9CH
3/100CH
2基との間である。
【0068】
好ましくは、上記のエチレンコポリマーの二種以上からなる混合物が使用される。特に好ましくは、上記の混合物のベースとなるポリマーは、少なくとも一つの特徴が異なっている。例えば、これらは、異なるコモノマーを含む、異なるコモノマー含有率を有する、異なる分子量を有する及び/または異なる分岐度を有することができる。好ましい混合物では、個々のエチレンコポリマーは、B)の総質量を基準として少なくとも5重量%の質量割合をそれぞれ有する。
【0069】
コポリマーB)の製造は、既知の方法に従い行われる(これに関しては例えばUllmanns Encyclopaedie der Technischen Chemie,5.Auflage,Vol.A21,pp.305−413(非特許文献1)参照)。適切なのは、溶液重合、懸濁重合、気相重合及び高圧塊状重合である。好ましくは、50〜400MPa、好ましくは100〜300MPaの圧力及び50〜350℃、好ましくは100〜300℃の温度で行われる高圧塊状重合が使用される。コモノマーの反応は、ラジカル形成開始剤(ラジカル鎖開始剤)によって開始される。この物質群には、例えば酸素、ヒドロペルオキシド、過酸化物及びアゾ化合物、例えばクメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(2−エチルヘキシル)−ペルオキシドジカーボネート、過マレイン酸t−ブチル、過安息香酸t−ブチル、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−(t−ブチル)ペルオキシド、2,2’−アゾ−ビス(2−メチルプロパノニトリル)、2,2’−アゾ−ビス(2−メチルブチロニトリル)などが属する。開始剤は、単独でまたは二種以上の物質の混合物として、コモノマー混合物を基準にして0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜10重量%の量で使用される。
【0070】
望ましい分子量は、通常はコポリマーB)のメルトフローインデックスMFI(190℃/2.16kg)により測定して、コモノマー混合物の所与の組成において、反応パラメータの圧力及び温度の変更、及び場合により調節剤の添加によって、調整される。調節剤としては、水素、飽和もしくは不飽和炭化水素、例えばプロパン及びプロペン、アルデヒド、例えばプロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド及びイソブチルアルデヒド、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン、またはアルコール、例えばブタノールが適していることが判明した。目的の粘度に依存して、調節剤は、コモノマー混合物を基準にして20重量%まで、好ましくは0.05〜10重量%の量で使用される。
【0071】
高圧塊状重合は、既知の高圧反応器、例えばオートクレーブまたは管状反応器中で、断続的にまたは連続的に行われ、管状反応器が特に適していることが判明した。溶剤、例えば脂肪族炭化水素または炭化水素混合物、トルエンまたはキシレンが反応混合物中に含まれていることができるが、溶剤を用いない作業方式が特に適していることが分かった。該重合の特に好ましい実施形態の一つによれば、前記コモノマー、開始剤、及び使用する場合には調節剤からなる混合物を、反応器の入口を介して並びに一つまたは複数の側枝を介して管状反応器に供給する。この場合、各モノマー流は、異なる組成を有することができる(EP−B−0271738(特許文献11))。
【0072】
本発明によるポリマー組成物は、エチレンコポリマーB)の存在下でモノマーA)をラジカル共重合することによって得ることができる。ラジカル重合の実行法は当業者には基本的に既知である。
【0073】
このラジカル重合は、例えば、アルキル(メタ)アクリレートA)とエチレンコポリマーB)との混合物を、ラジカル鎖開始剤の添加によって重合することによって塊状重合として行うことができる。エチレンコポリマーの粘度に基づいて、塊状重合は、好ましくはエチレンコポリマーB)の融点よりも高い温度、例えば60℃を超える温度、特に80℃を超える温度、就中90℃と150℃との間の温度で行われる。
【0074】
本発明の好ましい実施形態の一つでは、本発明によるポリマー組成物の製造は、ラジカル重合によって溶液状態で行われる(溶液重合)。このためには、原則的に、前記モノマーA)、エチレン−酢酸ビニルコポリマーB)並びに生成したポリマー組成物が、重合に予定された温度において、望ましい濃度でも、十分に可溶性であるか、または少なくとも均一に分散した状態で存在するような全ての溶剤が適している。更に、これらは、重合の間に、望ましくない反応に関与すべきではない。適当な溶剤は、特に、自己重合性であるべきではなく、かつ選択された重合条件において、最小の調節性/連鎖移動作用しか持たないべきである。
【0075】
溶液重合では、溶剤の量は、通常は、A)とB)との合計量の0.1〜10倍、好ましくは0.5〜5倍である。特に好ましくは、A)、B)及び溶剤、並びに場合により存在する更に別の助剤の合計量中の溶剤の割合は、35重量%と80重量%との間、特に40重量%と70重量%との間、例えば35重量%と70重量%との間または40重量%と80重量%との間である。
【0076】
好ましくは、該溶液重合に適した溶剤は、炭化水素、好ましくは脂肪族、環状脂肪族及び/または芳香族炭化水素及びこれらの混合物である。適当な溶剤の例は、トルエン、キシレン、より高級の芳香族化合物、並びに高沸点芳香族類混合物、及び/またはイソ脂肪族溶剤もしくは溶剤混合物である。該溶液重合では、直ぐに使用できる状態の溶剤含有ポリマー組成物が得られ、これは、直接または他の溶剤で希釈した後で、重合後の更なる仕上げステップを必要とすることなく、流動点降下剤として使用することができる。
【0077】
該溶液重合のためには、好ましい実施形態の一つでは、先ず、選択した溶剤中の使用するアルキル(メタ)アクリレートAi)、Aii)、及び任意選択の更に別のモノマーAiii)、並びにコポリマー(B)の溶液を調製する。その溶解は、例えば攪拌することで、各成分の強力な混合によって行われる。例えば、先ず、モノマー(A)を溶解し、次いでこの溶液に固形のエチレン−ビニルエステルコポリマー(B)を加えることができるか、または先ず、エチレン−ビニルエステルコポリマー(B)を溶解し、そしてモノマー(A)を加えることができる。この溶解は、温度を例えば約50〜80℃に高めることによって加速することができる。
【0078】
特に好ましい実施形態の一つでは、(メタ)アクリル酸を、式R
3−OH及びR
4R
5CH−CH
2−OHのアルコールと、後での重合のためにも適した先に記載した溶剤中でエステル化し、そして得られた溶液を、エチレン−コポリマーB)と混合した後に重合に使用することによって、前記溶剤中の、アルキル(メタ)アクリレートAi)及びAii)及び任意選択に更に別のモノマーAiii)の溶液を調製する。前記エステル化は、当業者には原則既知の方法に従い行うことができる。式(3)のエステルモノマーは、式R
6−OHのアルコールを、式R
3−OH及びR
4R
5CH−CH
2−OHのアルコールと一緒に(メタ)アクリル酸でエステル化することによって、モノマーAi)及びAii)及び任意選択に更に別のモノマーAiii)と一緒に調製することができる。これらは、別々に調製して、次いで重合混合物に供給することもできる。
【0079】
更に別の特に好ましい実施形態の一つでは、アルキル(メタ)アクリレートAi)及びAii)及び任意選択の更に別のモノマーiii)の製造、その後のそれらの重合は、低い調節性作用を持つ脂肪族炭化水素または炭化水素混合物、例えば150℃超、特に180℃超の初留点及び少なくとも60℃の引火点を有するイソパラフィン系溶剤または溶剤混合物中で、エチレンコポリマーB)の存在下で行われる。それ故、ポリマー組成物の輸送及び貯蔵が簡素化される。
【0080】
そのラジカル重合は、該ラジカル重合のための熱分解性開始剤の使用下に行われる。通常は一種の開始剤のみが使用されるものの、様々なケースにおいて、(例えば異なる半減期を有する)二種以上の異なる開始剤の混合物を使用することが好適であることが分かった。好ましくは、使用される開始剤は、これらが重合媒体中に可溶性であるように選択される。好ましい重合開始剤には、油溶性過酸化物及びアゾ化合物、特に70℃未満、好ましくは50℃未満の10時間半減期を有するこれらの化合物などが挙げられる。このような開始剤は、原則的に既知であり、商業的に入手できる。モノマーA)を基準にして、これらは好ましくは0.1〜2.0重量%の量、例えば0.2〜1.5重量%の量で使用される。
【0081】
更に、原則的に既知の様に、分子量調節剤を加えることができる。調節剤の例には、アルコール、例えばイソプロパノール、アリルアルコールまたはブテン−2−オール、チオール、例えばエタンチオールまたはドデカンチオールまたはアルデヒド、例えばクロトンアルデヒドなどが挙げられる。分子量調節剤の量は、モノマーA)の全量を基準にして一般的に1〜4重量%、好ましくは1.5〜3重量%である。
【0082】
そのラジカル重合は、原則的に既知の様に、反応混合物を加温することによって引き起こされる。重合温度は、開始剤の10時間半減期を超えるのがよく、一般的には少なくとも50℃である。特に、50〜120℃、就中55〜100℃の重合温度が適していることが判明した。一般的に、重合は、原則的に既知の様に、保護ガス、例えば窒素下に行われる。溶液重合は、原料の溶液を適当な、好ましくは攪拌された反応容器中に仕込むことによって行うことができる。望ましい場合には、この溶液に、一種以上の分子量調節剤を加える。所望の重合温度に達した後、開始剤の溶液を、重合すべき混合物に加える。この際、開始剤の全量を重合の初めに加えることができるが、10分間から5時間、好ましくは30分間から2時間かけて開始剤を加えることが好ましい。この添加は、規定の数に分けてまたは連続的に行うことができる。開始剤を完全に添加した後は、通常は、更なる後重合期間が続くのがよい。これは例えば0.5〜5時間であることができる。
【0083】
モノマーAとエチレン−ビニルエステルコポリマーB)との量比は、合成すべきポリマー組成物に望まれる特性に応じて選択され、この際、それぞれアルキル(メタ)アクリレートA)とエチレン−ビニルエステルコポリマーB)との合計を基準にして、モノマーA)の割合は40〜95重量%、好ましくは50〜90重量%、特に好ましくは60〜80重量%、例えば40〜90重量%、40〜80重量%、50〜95重量%、50〜80重量%、60〜95重量%または60〜90重量%であり、エチレン−コポリマーB)の量は、5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%、及び特に好ましくは20〜40重量%、例えば50〜50重量%、5〜40重量%、10〜60重量%、10〜40重量%、20〜60重量%または20〜50重量%である。特別な実施形態の一つでは、A)及びB)の量は合わせて100重量%である。本発明による組成物を与えるA及びBの上記の量は、塊状の量、すなわち溶剤を含まない量である。
【0084】
本発明によるポリマー組成物は、原油及びそれから製造されるパラフィン含有製品、例えば中間蒸留物、加熱油、バンカー油及び残渣油の低温特性の向上のために特に適している。これらは、原油及び残渣油に対して特に有利な作用を有する。これらは、低温下に生じるパラフィンの構造を変化させ、それよって原油並びにそれから製造される製品の流動点が低下する。このためには、本発明によるポリマー組成物を、処理すべき原油またはそれから誘導されるパラフィン含有成製品に加える。本発明によるポリマーが、他の目的のためにも使用できることは明らかである。
【0085】
鉱油添加剤としての該ポリマー組成物の使用は、該ポリマー組成物の少なくとも一種を原油またはそれから製造されるパラフィン含有製品に加えることによって行われる。通常の使用量は、該ポリマー組成物の10〜10,000重量ppm、好ましくは50〜2,000重量ppm、例えば10〜2,000ppmまたは50〜10,000重量ppmである。
【0086】
本発明による使用のためには、該ポリマー組成物をそのままで使用することができる。有利には、本発明によるポリマー組成物は、有機溶剤中の濃厚物として使用される。溶液重合の時に直接生じる濃厚物の他に、ポリマー組成物を、それの製造後に他の溶剤で希釈することもできる。この際、該ポリマー組成物は均一に分散、好ましくは溶解した状態で存在するのがよい。これらの要件を満たすものであれば原則的に全ての溶剤が適している。異なる溶剤の混合物も使用できる。
【0087】
本発明によるポリマー組成物の濃厚物の製造のための好ましい溶剤は、溶液重合に使用可能な上記の溶剤の他に、特に脂肪族、環状脂肪族及び/または芳香族炭化水素及び炭化水素混合物である。特に好ましいものは、60℃超の引火点を有する溶剤であり、というのも、この種の溶剤の使用は、濃厚物の輸送及び貯蔵のために考慮すべき制限がより少ないからである。
【0088】
適当な溶剤または溶剤混合物は、例えば飽和脂肪族炭化水素である。この際、これらはパラフィン系炭化水素や、ナフテン系、すなわち飽和環状炭化水素であることができる。好ましくは、これらは少なくとも175℃の沸点及び好ましくは60℃超の引火点を有する高沸点脂肪族炭化水素である。60℃超の引火点を有する適当な炭化水素には、例えばn−ウンデカン(引火点60℃、沸点196℃)またはn−ドデカン(引火点71℃、沸点216℃)が包含される。炭化水素の工業的な混合物、例えばパラフィン系炭化水素の混合物、パラフィン系炭化水素とナフテン系炭化水素との混合物、またはイソパラフィンの混合物が好ましい。工業的混合物が、芳香族または不飽和炭化水素も副次的な割合で含み得ることは当業者には明らかである。芳香族及び/または不飽和炭化水素の含有率は、好ましくは20重量%未満、多くの場合に10重量%未満、一部では1重量%未満である。飽和脂肪族溶剤の工業的混合物は、商業的に入手可能であり、例えばShellsol(登録商標)Dシリーズ、Isopar(登録商標)シリーズまたはExxsol(登録商標)Dシリーズの工業的混合物などがある。ケロシンも、脂肪族炭化水素混合物として適している。
【0089】
濃厚物の製造に適した炭化水素は、更に、芳香族溶剤または溶剤混合物であることもできる。本発明の実施形態の一つでは、これらは、少なくとも175℃の沸点及び好ましくは60℃超の引火点を有する高沸点芳香族炭化水素である。60℃超の引火点を有する適当な芳香族炭化水素には、例えばアルキル化された芳香族類及びナフタレンなどが挙げられる。好ましくは、芳香族炭化水素の工業的混合物が使用される。芳香族溶剤の工業的混合物は商業的に入手可能であり、例えばShellsol(登録商標)AシリーズまたはSolvesso(登録商標)シリーズの工業的混合物などがある。
【0090】
適当な溶剤のための他の例は、飽和脂肪族炭化水素、飽和脂肪族アルコール、及び飽和脂肪族カルボン酸と飽和脂肪族アルコールとのエステルである。適当なアルコールの例には、少なくとも8つの炭素原子を有する脂肪族アルコール、例えば1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−デカノール、1−ドデカノール及びイソトリデカノールなどが挙げられる。適当なエステルの例には、少なくとも8つの炭素原子を有する飽和脂肪酸と飽和脂肪族アルコールとのエステル、例えばラウリン酸メチルエステルまたはステアリン酸メチルエステルなどが挙げられる。異なる脂肪族エステルの工業的混合物は商業的に入手可能である。本発明の更に別の実施形態の一つでは、脂肪族または環状脂肪族ジカルボン酸のエステル、例えばシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のジアルキルエステル、例えばシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸−ジイソノニルエステルを使用できる。特に好ましい溶剤は、60℃超の引火点を有する。
【0091】
濃厚物中の該ポリマー組成物の濃度は、製造すべき調合物の所望の特性に合わせて当業者によって選択される。好ましい濃厚物は、ポリマー組成物及び使用した溶剤の合計を基準として、20〜60重量%、特に好ましくは25〜50重量%、特に25〜40重量%、例えば20〜50重量%、20〜40重量%または25〜60重量%の割合で本発明によるポリマー組成物を含有する。このような調合物は、非常に低い固有流動点を特徴とし、それ故、低い貯蔵及び輸送温度での簡素化された取り扱いを特徴とする。適当な濃厚物は、溶液重合の上記の方法を用いて直接製造することができる。多くの場合に、重合は溶剤を用いずに行うかまたは比較的高い濃度で溶液重合を行い、次いで更なる溶剤で、好ましくは上記の脂肪族及び/または芳香族炭化水素で希釈することが好適であることが判明した。本発明によるポリマー組成物を、同一のまたは異なる目的のための他の有効物質と一緒に調合することもできる。
【0092】
分岐状アルコールAii)は、WO2010/003892(特許文献13)の教示に従い予期し得るように、流動点降下剤としての作用を過度に損ねることなく、本発明によるポリマー組成物に、特にそれの濃厚物に、驚くべき程に低い固有流動点を与える。これは、貯蔵容器及び/または輸送ラインを加熱することなく、例えば10℃未満、多くの場合に5℃未満、一部では0℃未満の低い温度下でもそれを使用することを可能にする。これらの液状の低粘性濃厚物は、比較的長い期間、例えば数日間から数週間を超えても均一な状態のまま維持され、すなわちポリ(アルキル(メタ)アクリレート)とエチレンコポリマーとの混合物に典型的な相分離またはゲル化が起こらない。これは、恐らくは、エチレンコポリマーB)へのアルキル(メタ)アクリレートAi)及びAii)の少なくとも部分的なグラフト化の故であろうと考えられる。
【0093】
本発明によるポリマー組成物及び特に、炭化水素中のそれらの濃厚物は、50重量%までの高い有効物質含有率にもかかわらず、低粘性の粘性液体である。20℃でのそれらの粘度は1Pas未満である。それらの固有流動点は、通常は10℃未満であり、多くの場合には0℃未満、例えば−10℃未満でもある。それ故、これらは、望ましくない気候条件、例えば極寒の地域、例えば沖合の用途においても、添加剤の貯蔵に対して予防措置を施すことなく、使用することができる。また、ダウン・ザ・ホール用途も、添加剤を予め希釈することなく及び輸送ラインを加熱することなく可能である。更に、これらは、30℃超の高められた温度、例えば45℃超の温度でも、優れた長期安定性を示す、すなわち数週間の貯蔵及び一部では数ヶ月の貯蔵の後でも、本発明による懸濁液は、凝固物または沈下した溶剤を示さないかまたは無視し得る程度の量でしか示さない。加えて、場合によっては生じる不均一さは、単に攪拌することによって再び均一化することができる。
【0094】
本発明によるポリマー組成物をそのままでまたは濃厚物として使用する他、これらは、他の成分と調合することもできる。例えば、該調合物には、本発明によるポリマー組成物とは化学的性質の点で異なる追加的なワックス分散剤を加えることができ、これらは、生成したパラフィン結晶を安定化させ、そしてこれらが沈降することを防ぐ。ワックス分散剤としては、例えばアルキルフェノール、アルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂及び/またはドデシルベンゼンスルホン酸を使用できる。更に、本発明によるポリマー組成物は、多環式炭化水素の沈殿を防止するアスファルト分散剤と一緒に使用できる。
【0095】
該ポリマー組成物は、特許請求の範囲に記載の範囲で、低い固有流動点の他、パラフィン含有鉱油の流動点の非常に良好な降下も示す。これは、特にWO2010/003892(特許文献13)を考慮して予期できなかった。というのも、そこでは、分岐状アルコールは、応用技術上の作用を示さないからである。
【実施例】
【0096】
ポリマーの製造
本発明によるポリマー組成物、並びに比較例は、線状アルコールと分岐状アルコールとの混合物をアクリル酸またはメタクリル酸とキシレン中で、反応水を共沸蒸留して除去しながらエステル化することによって製造した。次いで、EVAコポリマーを、更なる溶剤(キシレン)を添加してアクリレート中に溶解して、全部で60重量%濃度の溶液が生じるようにした。窒素で不活性化した後、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(AMBN)を用いて80℃でラジカル重合した。表1に、様々なポリマー組成物の製造のために使用した原料をリストする。
【0097】
【表1】
【0098】
例1:EVA1の存在下でのベヘニルアクリレート及び2−ドデシル−ヘキサデシルアクリレート(1:1)からのコポリマーの製造
テフロン製攪拌機、強力冷却機、温度計、ガラス注入管及び滴下漏斗を備えた重合容器中で、182.9gのベヘニルアクリレート(BA1)及び237.7gの2−ドデシル−ヘキサデシルアクリレート(GA1)を188gのキシレン中に90℃で溶解した。攪拌しながら、141.6gのエチレン−酢酸ビニルコポリマーEVA1及び更に108.1gのキシレンを、均一な溶液が生じるまで加えた。70℃で、1.78gの開始剤としての2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(Peroxan AIVN)を80.0gのキシレン中に溶解して、1時間かけて計量添加した。70℃での更に4時間の反応時間の後に、開始剤残渣を分解するために1時間90℃で後攪拌した。
【0099】
得られた溶液は、ポリマー組成物を60重量%の濃度で含んだ。流動性を評価するために、反応生成物を185〜215℃の沸点範囲を有する高沸点芳香族炭化水素混合物であるソルベントナフサで35重量%のポリマー含有率となるように希釈し、そして90℃で均一化した。この調整の時に、40℃での動的粘度をDIN ISO3219に従い、そして生成物の固有流動点をDIN ISO3016に従い決定した。求めた値を表2に記載する。
【0100】
更なる例並びに比較例を、同一の指示に従い、表2に記載の原料及び量比を用いて行った。百分率表示は、他に記載がなければ重量割合である。
【0101】
【表2】
【0102】
それらの有効性を決定するために、ポリマー組成物を原油または残渣油に添加し、そしてそれによって達成される油の流動点降下(ASTM D97による流動点)を決定した。試験油O1、O2及びO4は、西アフリカ地域の原油であり、O3は、北アフリカ地方の原油であった。試験油5は、原油蒸留の残渣であった。使用した原油の特徴付けを表3に示す。油の組成は、IP469−01に従うSARA分析を用いて行った。この際、飽和炭化水素(Sat.)、芳香族類(Arom.)、樹脂(Res.)及びアスファルト(Asph.)の原油中の割合を決定した。ワックス外観温度(WAT)の決定は、動的示差熱測定(DSC)を用いて行った。この際、測定の開始温度は、これがWATよりも少なくとも10℃高いように選択した。試料は、−2.5K/分の冷却速度で冷却した。発熱性パラフィン結晶化の開始はWATを示唆する。原油O1〜O4で達成された流動点降下を表4〜7に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
【表6】
【0107】
【表7】
【0108】
【表8】
【0109】
低温下での比較的長期の貯蔵の間の該新規ポリマー組成物の濃厚物の流動性の評価のために、該ポリマー組成物を、50℃でソルベントナフサ(沸点範囲が185〜215℃の高沸点芳香族化合物混合物)中でポリマー含有率35重量%で溶解し、そして室温まで徐冷した。100mlの試料を室温で15時間貯蔵した後、流動性を、ASTM D79に類似して試料容器を傾けることによって試験した。試料杯を傾ける時に表面が動くことが試料の流動可能性を示し、これを「OK」と記録し、ゲル構造が存在する場合には追加的に「ゲル」と記録した。これらの生成物を次いで0℃で気候調節室中で貯蔵した。流動性の第一の評価は、0℃での6時間の貯蔵後に行い、貯蔵時間−流動性/−ポンプ輸送可能性の評価は、同じ試験及び評価根本方針に従い0℃下の更に10日間の後に行った。加えて、流動性の評価の時、起こり得るゲル形成/分均一性についても試験した。
【0110】
【表9】
【0111】
本発明による添加剤は、濃厚物として、低温下に非常に良好な流動性を有し、また同時に、原油の流動点に対し優れた作用を有する。類似の関連で提案された、WO2014/095412(特許文献11)の短鎖または分岐状アルキルアクリレートは、添加剤の固有流動点を僅かにしか下げないが、添加剤配合すべき油から沈殿するパラフィンと共結晶化できず、それ故、添加剤の効果を比較的強い程度で弱める。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
A)次のAi)及びAii)、
Ai)アルキル残基中に16〜40個の炭素原子を有する少なくとも一種のアルキル(メタ)アクリレート20〜95重量%、及び
Aii)ヒドロキシル基に対して2位にC
6〜C
20アルキル残基を有するC
8〜C
22アルコールの少なくとも一種の(メタ)アクリル酸エステル5〜80重量%、
を含むアルキル(メタ)アクリレート95〜40重量%を、
B)エチレンコポリマー5〜60重量%、
の存在下にラジカル重合することによって得ることができる、ポリマー組成物。
2.
前記アルキル(メタ)アクリレートAi)が次の一般式(1)を有することを特徴とする、上記1に記載のポリマー組成物。
H
2C=C(R
2)−COOR
3 (1)
式中、
R
2は水素またはメチル基を表し、
R
3は、炭素原子数16〜40、好ましくは炭素原子数18〜36の線状アルキル残基を表す。
3.
前記アルキル(メタ)アクリレートAii)が次の一般式(2)を有することを特徴とする、上記1または2に記載のポリマー組成物。
【化3】
式中、
R
2は水素またはメチル基を表し、
R
4及びR
5は、互いに独立して、炭素原子数6〜20の飽和状線状アルキル残基を表し、及びR
4及びR
5中の炭素原子の合計は16〜40である。
4.
前記アルキル(メタ)アクリレートA)が、A)の総重量を基準にして25〜90重量%、好ましくは30〜60重量%の少なくとも一種のアルキル(メタ)アクリレートAi)を含むことを特徴とする、上記1〜3のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
5.
前記アルキル(メタ)アクリレートA)が、A)の総重量を基準にして10〜60重量%、好ましくは20〜55重量%の少なくとも一種のアルキル(メタ)アクリレートAii)を含むことを特徴とする、上記1〜4のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
6.
前記アルキル(メタ)アクリレートA)が、40重量%までの一種または複数の更なるモノマーAiii)を含むことを特徴とする、上記1〜5のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
7.
更なるモノマーAiii)が、炭素原子数1〜20のカルボン酸のビニルエステル、炭素原子数6〜40のα−オレフィン、ビニル芳香族類、エチレン性不飽和ジカルボン酸並びにそれの無水物及びC
10〜C
30脂肪アルコールとのエステル、アクリル酸、メタクリル酸、更に別の官能性基含有エチレン性不飽和化合物、並びにビニル−及びアリルポリグリコールから選択されることを特徴とする、上記6に記載のポリマー組成物。
8.
更に別のモノマーAiii)が次の式(3)に相当することを特徴とする、上記6に記載のポリマー組成物。
H
2C=C(R
2)−COOR
6 (3)
式中、
R
2は、水素またはメチル基を表し、
R
6は、炭素原子数1〜11の線状アルキル残基、炭素原子数4〜17の分岐状アルキル残基、または炭素原子数5〜20の環状アルキル残基を表す。
9.
更に別のモノマーAiii)が、以下の式(4)のビニル−またはアリルポリグリコールであることを特徴とする、上記6に記載のポリマー組成物。
【化4】
式中、
R
7は水素またはメチルを表し、
Zは、C
1〜C
3アルキレン、またはR
7を有する炭素原子と酸素原子との間の単結合を表し、
R
8は、水素、C
1〜C
30アルキル、シクロアルキル、アリールまたは−C(O)−R
10を表し、
R
9は、水素またはC
1〜C
20アルキルを表し、
R
10は、C
1〜C
30アルキル、C
3〜C
30アルケニル、シクロアルキルまたはアリールを表し、そして
nは、1〜50、好ましくは1〜30の数を意味する。
10.
前記エチレンコポリマーが、エチレンの他に、4〜18モル%の少なくとも一種のビニルエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アルキルビニルエーテル及び/またはアルケンを含む、上記1〜9のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
11.
前記エチレンコポリマーが、エチレンと、C
1〜C
24カルボン酸のビニルエステル、C
1〜C
22アルキル(メタ)アクリレート及び/またはC
3〜C
24オレフィンとからなるコポリマーである、上記1〜10のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
12.
前記エチレンコポリマーが、エチレンと、次の式(6)の少なくとも一種のビニルエステルとからなるコポリマーである、上記1〜11のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
CH
2=CH−OCOR
11 (6)
式中、
R
11は、C
1〜C
30アルキル、好ましくはC
4〜C
16アルキル、特にC
6〜C
12アルキルを意味する。
13.
前記エチレンコポリマーが、コモノマーとして酢酸ビニルを含む、上記1〜12のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
14.
前記エチレンコポリマーが、エチレンと、次の式(7)の少なくとも一種のアクリル酸−またはメタクリル酸エステルとからなるコポリマーである、上記1〜13のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
CH
2=CR
12−COOR
13 (7)
式中、
R
12は水素またはメチルであり、そして
R
13は、C
1〜C
30アルキル、好ましくはC
4〜C
16アルキル、特にC
6〜C
12アルキルを意味する。
15.
前記エチレンコポリマーが、DIN53735に従い190℃及び2.16kgの荷重で測定した0.1g/10分と1,200g/10分との間、好ましくは1g/分と900g/分との間のMFI190値を有する、上記1〜14のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
16.
溶剤の存在下でのA及びBのラジカル重合によって得ることができる、上記1〜15のいずれか一つに記載のポリマー組成物であって、A、B及び溶剤、場合により並びに他の助剤の総量中の前記溶剤の割合が35重量%と80重量%との間である、前記ポリマー組成物。
17.
前記アルキル(メタ)アクリレートA)が、20〜93重量%、特に25〜85重量%、就中30〜65重量%のモノマーAi)を含む、上記6〜16のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
18.
前記アルキル(メタ)アクリレートA)が、5〜78重量%、特に10〜65重量%、就中15〜55重量%のモノマーAii)を含む、上記6〜17のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
19.
前記アルキル(メタ)アクリレートA)が、2〜40重量%、特に5〜40重量%、就中5〜30重量%のモノマーAiii)を含む、上記6〜18のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
20.
上記1〜19のいずれか一つに記載のポリマー組成物を製造する方法であって、
A)次のAi)及びAii)、
Ai)アルキル残基中に16〜40個の炭素原子を有する少なくとも一種のアルキル(メタ)アクリレート20〜95重量%、及び
Aii)ヒドロキシル基に対して2位にC
6〜C
20アルキル残基を有するC
8〜C
22アルコールの少なくとも一種の(メタ)アクリル酸エステル5〜80重量%、
を含むアルキル(メタ)アクリレート(A)95〜40重量%、及び
B)エチレンコポリマー5〜60重量%
の混合物を、ラジカル鎖開始剤の添加によって共重合する、前記方法。
21.
前記重合を、A)及びB)の量を基準に0.1〜10倍の量の溶剤の存在下に行う、上記20に記載の方法。
22.
前記溶剤が、少なくとも60℃の引火点を有する脂肪族炭化水素または脂肪族炭化水素混合物である、上記20または21に記載の方法。
23.
上記1〜19のいずれか一つに記載のポリマー組成物10〜80重量%及び有機溶剤90〜20重量%を含む、濃厚物。
24.
前記有機溶剤が、脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素との混合物である、上記23に記載の濃厚物。
25.
前記有機溶剤が、少なくとも20重量%の芳香族炭化水素を含む、上記23または24に記載の濃厚物。
26.
ポリマー組成物の他に、ワックス分散剤及び/またはアスファルト分散剤を含む、上記23〜25のいずれか一つに記載の濃厚物。
27.
原油、残渣油及び鉱油蒸留製品から選択される、パラフィン含有鉱油の低温特性を向上するための、上記1〜19及び23〜26のいずれか一つに記載のポリマー組成物または濃厚物の使用。
28.
パラフィン含有鉱油が原油である、上記27に記載の使用。
29.
上記1〜19のいずれか一つに記載のポリマー組成物10〜10,000重量ppmを前記パラフィン含有鉱油に加えることを特徴とする、上記27または28に記載の使用。