【文献】
SHAMSEH Mohammad Bani, et al.,A Robust Equal-Load-Sharing Control Scheme for Parallel UPS Units with Time Delay Consideration,2016 IEEE 8th International Power Electronics and Motion Control Conference(IPEMC-ECCE Asia),米国,IEEE,2016年 7月14日,P.3453-3460
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記信号生成回路は、前記LCLフィルタの前記交流負荷に接続されるリアクトルのインピーダンスと前記リアクトルを流れる電流とのベクトル積と、前記交流負荷の電圧指令値とをベクトル加算する、請求項7記載の電力供給システム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。本例においては、一例として電力供給システムとして、無停電電源システム(以降、UPS(Uninterruptible Power Supply))について説明する。
【0022】
(実施形態1)
本実施形態においては、無停電電源システムにおいて、2つの交流出力変換器の並列構成を用いて説明する。
【0023】
図1は、実施形態1に基づく無停電電源システム1の構成を説明する図である。
図1を参照して、無停電電源システム1は、交流出力変換器(第1の交流出力変換器)10Aと、交流出力変換器(第2の交流出力変換器)10Bとを含む。交流出力変換器10A,10B(総称して交流出力変換器10とも称する)は、交流電源2と接続されるとともに、共通の負荷3に対して並列運転する。
【0024】
本実施形態1に基づく交流出力変換器10A,10Bは、他方の交流出力変換器からの信号伝達手段の入力無しに自律的に制御する。
【0025】
以下、各交流出力変換器10A,10Bの構成について説明する。
交流出力変換器10Aは、変圧器12Aと、交流電圧を直流電圧に変換する順変換器14Aと、直流コンデンサ15Aと、PWM(Pulse Width Modulation)変換器16Aと、出力インピーダンス17Aと、制御装置20Aとを含む。
【0026】
順変換器14Aの後段には、直流コンデンサ15Aが設けられ、直流電圧を略一定に維持する構成となっている。順変換器14Aと直流コンデンサ15Aとは直流回路を形成する。
【0027】
また、本例においては、図示しないが直流回路はバッテリーに接続される。これにより、交流電源喪失時にはバッテリーから負荷に電力を供給することが可能となる。
【0028】
通常時は、順変換器14Aにより交流電源2からの電力を得て、直流電圧に変換する。
また、PWM変換器16Aは、直流コンデンサ15Aの後段に接続される。
【0029】
PWM変換器16Aは、制御装置20Aからのゲート信号に従って、直流電力を交流電力に変換する。
【0030】
本例においては、交流出力変換器の主回路を簡略化しているが、実際には3相回路で構成される場合が多い。
【0031】
交流出力変換器10Bの構成についても交流出力変換器10Aの構成と基本的に同様である。交流出力変換器10Bは、変圧器12Bと、交流電圧を直流電圧に変換する順変換器14Bと、直流コンデンサ15Bと、PWM変換器16Bと、出力インピーダンス17Bと、制御装置20Bとを含む。
【0032】
出力インピーダンスは、リアクトルで構成される。
図2は、実施形態1に基づく3相回路の交流出力変換器10の構成を説明する図である。
【0033】
図2には、順変換器14Aとして複数個(6個)のスイッチング素子例えばIGBTとこれと逆並列接続されたダイオードからなる半導体素子が設けられる。当該スイッチング素子はブリッジ接続されている。
【0034】
また、PWM変換器16Aは、複数個(6個)のスイッチング素子例えばIGBTとこれと逆並列接続されたダイオードからなる半導体素子が設けられる。
【0035】
スイッチング素子は、制御装置20Aからのゲート信号に従ってオンオフ制御される。
なお、本例においては説明を簡易にするため、三相回路を一括して表現できる単線結線図およびフェーザ(ベクトル)図を用いて説明する。
【0036】
再び
図1を参照して、制御装置20Aは、電圧検出器21Aと、基準位相信号作成回路22A(PLL回路)と、dq変換器23Aと、ベクトル乗算器24Aと、ゲイン乗算器25Aと、ベクトル加算器26Aと、dq逆変換器27Aと、PWMパルス生成器28と、レジスタ29A,30Aと、電流検出器31Aとを含む。
【0037】
基準位相信号作成回路22Aは、電圧検出器21Aからの電圧検出信号に従って基準位相信号を作成する。
【0038】
基準位相信号作成回路22Aは、基準位相信号をdq変換器23Aに出力する。
dq変換器23Aは、電流検出器31Aからの電流検出信号の入力を受ける。
【0039】
dq変換器23Aは、電流検出器31Aからの電流検出信号を基準位相信号に従って、電流の振幅と位相を計算し、電流のベクトル情報を取得する。
【0040】
dq変換法は、電流瞬時値信号から、基準位相信号に同期したd軸電流成分と90°ずれたq軸電流成分とを得る変換法である。
【0042】
負荷電圧基準は、負荷の必要とする電圧であり、通常はその定格電圧であるが、これに限られず、その電圧より高めあるいは低めの値に設定するようにしても良い。
【0043】
なお、本例においては、レジスタ30Aを用いた構成について説明するがレジスタに限られず情報を格納することが可能な記憶手段であれば良く、メモリに格納する構成とすることも可能である。他の構成についても同様である。
【0044】
ベクトル加算器26Aは、ベクトル加算したベクトル和を負荷電圧指令として出力する。
【0045】
dq逆変換器27Aは、ベクトル加算器26Aからの負荷電圧指令をdq逆変換して、電圧基準を生成する。PWMパルス生成器28Aは、dq逆変換による電圧基準に従ってPWM変換器16Aの出力電圧を制御する。
【0046】
制御装置20Bについても制御装置20Aと同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。
【0047】
次に、実施形態1に基づく交流出力変換器の作用について説明する。
図3は、実施形態1に基づく無停電電源システム1を模式化した図である。
【0048】
図3に示されるように、無停電電源システム1は、交流出力変換器10A,10Bが共通の負荷3に対して並列接続されたものである。
【0050】
図4は、実施形態1に基づく等価回路を説明する図である。
図4を参照して、上式(7),(8)に基づく等価回路が示されている。
【0052】
初期状態として、交流出力変換器10Aが負荷3にすべての電流を供給している状態から、交流出力変換器10BがスイッチSWを閉じて接続されると、交流出力変換器10Aの出力電流が徐々に増加し、電流がバランスする状況について説明する。
【0053】
図5は、実施形態1に基づく無停電電源システム1の初期状態を説明する図である。
図5(A)には、初期状態の等価回路図が示されている。
【0054】
図5(B)には、初期状態におけるベクトル図(フェーザー図)が示されている。
出力インピーダンスとしては、リアクトルを想定し、出力インピーダンスは、主にインダクタンスで構成されているとしてベクトル図を記載する。
【0055】
また、負荷は力率1の抵抗Rで表されるものとする。
スイッチSWが閉じられる前の電流電圧の方程式は、次式のようになる。
【0057】
交流出力変換器の電圧基準は、出力電流が0なので、次式で表される。
【0060】
式(14),(15)を加算すると、次式が得られる。
【0063】
図6は、実施形態1に基づく無停電電源システム1のスイッチを閉じた直後の状態を説明する図である。
【0064】
図6(A)には、スイッチを閉じた直後の状態の等価回路図が示されている。
図6(B)には、スイッチを閉じた状態におけるベクトル図(フェーザー図)が示されている。
【0066】
図7は、実施形態1に基づく無停電電源システム1のシミュレーション結果を説明する図である。
【0067】
図7(A)には、交流出力変換器10A,10Bの出力電流の瞬時値が示されている。
図7(B)には、交流出力変換器10A,10Bの出力電流の負荷基準電圧に平行な成分の波形が示されている。
【0068】
図7(C)には、交流出力変換器10A,10Bの出力電圧と負荷電圧とが示されている。
【0069】
本例においては、簡単なシステムとして、制御装置20A,20Bが計算する電圧基準値を出力する単相電圧源を2つ用いたモデルでシミュレーションを行った。出力インピーダンスとしてリアクトルを想定し、シミュレーション結果の波形が示されている。
【0071】
そのようにしても、出力インピーダンスによる電圧降下の一部を使って計算していることに変わりは無い。
【0072】
シミュレーションでは、数百ms程度の制御遅れを想定しているので、数百ms程度で、徐々に2つの交流出力変換器の電流がバランスすることが示されている。このようにシミュレーションによっても、計算式で説明したとおりの作用があることが示されている。
【0073】
本例においては、2つの交流出力変換器の並列構成について説明したが、3台以上の場合についても同様に適用可能である。
【0074】
本実施形態1の構成によれば、交流出力変換器10A,10Bが個々の装置で観測できる信号だけを用いて制御を行い、交流出力変換器10A,10B間の電流分担あるいは電流バランスを制御することができる。また、交流出力変換器10A,10Bが個々に有する制御装置20A,20Bだけで制御可能であるので、複数の交流出力変換器に共通の制御装置、交流出力変換器間の信号授受手段を不要にすることが可能である。
【0075】
したがって、個々の交流出力変換器の独立性が高くなり、交流出力変換器の部分停止や、増設などの際にシステム全体へ与える影響も小さくすることが可能である。
【0076】
(実施形態1の変形例1)
上記においては、出力インピーダンスとしてリアクトルを用いた構成について説明したが、出力側に変圧器を設けた構成である場合でも、出力変圧器の短絡インピーダンス(漏れインピーダンス)がリアクトルと等価であることから、同様な作用を得ることが可能である。
【0077】
図8は、実施形態1の変形例1に基づく無停電電源システム1Pの構成を説明する図である。
【0078】
図8に示されるように、無停電電源システム1Pは、無停電電源システム1と比較して、交流出力変換器10Aを交流出力変換器10PAに置換するとともに、交流出力変換器10Bを交流出力変換器10PBに置換した点が異なる。
【0079】
交流出力変換器10PAは、交流出力変換器10Aと比較して、インピーダンス17Aの代わりに、変圧器18Aを設けた点が異なる。電流検出器31Aは、PWM変換器16Aと変圧器18Aとの間に設けられる。その他の構成については
図1で説明したのと同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。
【0080】
また、交流出力変換器10PBは、交流出力変換器10Bと比較して、インピーダンス17Bの代わりに、変圧器18Bを設けた点が異なる。電流検出器31Bは、PWM変換器16Bと変圧器18Bとの間に設けられる。その他の構成については
図1で説明したのと同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。
【0081】
当該構成においても、実施形態1と同様の効果を得ることが可能である。
なお、電流検出器31A,31Bを交流負荷3と変圧器18A,18Bとの間に設ける構成とすることも可能である。
【0082】
(実施形態1の変形2)
図9は、実施形態1の変形例2に基づく無停電電源システム1Qの構成を説明する図である。
【0083】
図9を参照して、無停電電源システム1Qは、無停電電源システム1と比較して、交流出力変換器10Aを交流出力変換器10QAに置換するとともに、交流出力変換器10Bを交流出力変換器10QBに置換した点が異なる。
【0084】
交流出力変換器10QAは、交流出力変換器10Aと比較して、基準位相を負荷3が接続される母線電圧から得ている点が異なる。その他の構成については同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。
【0085】
また、交流出力変換器10QBは、交流出力変換器10Bと比較して、基準位相を負荷3が接続される母線電圧から得ている点が異なる。その他の構成については同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。当該構成においても実施形態1と同様の作用となる。
【0086】
また、負荷が接続する母線の電圧も、2つの交流出力変換器に共通な情報であり、また、2つの交流出力変換器それぞれで独立に検出可能な情報であり、実施形態1と同様の効果を得ることが可能である。
【0087】
(実施形態2)
実施形態2においては別の無停電電源システム1#について説明する。
【0088】
図10は、実施形態2に基づく無停電電源システム1#の構成を説明する図である。
図10を参照して、無停電電源システム1#は、交流出力変換器11Aと、交流出力変換器11Bとを含む。交流出力変換器11A,11B(総称して交流出力変換器11とも称する)は、交流電源2と接続されるとともに、共通の負荷3に対して並列運転する。
【0089】
本例においては、出力インピーダンスとして、LCLフィルタを設けた構成が示されている。LCLフィルタは、PWM変換器のキャリア周波数成分を低減し、負荷に基本波交流電圧を供給する。
【0090】
なお、本例においては、基準位相信号を負荷3が接続する母線電圧から得ている点が実施形態1とは異なる。
【0091】
本実施形態2に基づく交流出力変換器11A,11Bは、他方の交流出力変換器からの信号伝達手段の入力無しに自律的に制御する。
【0092】
以下、各交流出力変換器11の構成について説明する。
交流出力変換器11Aは、変圧器12Aと、交流電圧を直流電圧に変換する順変換器14Aと、直流コンデンサ15Aと、PWM変換器16Aと、LCLフィルタ18Aと、制御装置50Aとを含む。
【0093】
制御装置50Aは、電圧検出器21Aと、基準位相信号作成回路22A(PLL回路)と、dq変換器23Aと、コンデンサ電圧指令値作成回路52Aと、コンデンサ電圧制御回路55Aと、電圧検出器53Aと、電流検出器54Aと、レジスタ56Aとを含む。
【0094】
制御装置50Aのコンデンサ電圧制御回路55Aは、LCLフィルタ18Aの中のコンデンサ電圧を制御する。
【0095】
電圧検出器53Aは、コンデンサ電圧を検出する。また、電流検出器54Aは、コンデンサを流れるコンデンサ電流を検出する。
【0096】
電流検出器31Aは、交流出力変換器11Aの出力電流を計測し、制御装置50Aに入力される。
【0097】
コンデンサ電圧制御回路55Aは、電圧検出器53Aを通じてコンデンサ電圧を得て、その値が電圧基準信号に一致するようフィードバック制御する構成である。
【0098】
コンデンサ電圧信号は、dq変換により、d軸成分、q軸成分に変換される。これらの信号と、電圧基準信号のd軸成分E
refd、q軸成分E
refqとの差がゼロになるように、PWM変換器16Aの出力電圧を制御する。
【0099】
図11は、実施形態2に基づくコンデンサ電圧指令値作成回路52Aの構成を説明する図である。
【0100】
図11に示されるように、コンデンサ電圧指令値作成回路52Aは、ベクトル乗算器60と、ベクトル加算器70とを含む。
【0101】
制御装置50Aは、電流検出器31Aで計測された電流信号を用い、次式で示される演算でコンデンサ電圧指令値を作成し、それに基づいてコンデンサ電圧を制御する。
【0103】
dq変換器23Aは、電流検出器31Aからの電流検出信号の入力を受ける。
dq変換器23Aは、電流検出器31Aからの電流検出信号を基準位相信号に従って、電流の振幅と位相を計算し、電流のベクトル情報を取得する。
【0104】
ベクトル乗算器60は、電流のベクトル情報のdq軸成分に、LCLフィルタ18Aの負荷側リアクトルのインダクタンスによるインピーダンスωL
1と抵抗分R
1をベクトル乗算器で乗算し、ベクトル積を得る。
【0106】
図12は、実施形態2に基づくコンデンサ電圧制御回路55Aの構成を説明する図である。
【0107】
図12に示されるように、コンデンサ電圧制御回路55Aは、dq変換器86,87と、ゲイン乗算器(係数k
1)80,81と、伝達関数乗算器82,83と、伝達関数乗算器90,91と、dq逆変換器92と、PWMパルス発生器93と、差分器84,85と、加算器88,89とを含む。
【0108】
差分器84は、d軸成分の電圧基準信号とd軸成分のコンデンサ電圧信号との差分を演算して、伝達関数乗算器82に出力する。伝達関数乗算器82により差分器84の誤差が増幅されて、加算器88に出力される。
【0109】
加算器88は、係数k
1に比例した電圧基準信号と、伝達関数乗算器82の出力とを加算するとともに、d軸成分のコンデンサ電流信号との差分を演算して、伝達関数乗算器90に出力する。伝達関数乗算器90により加算器88の誤差が増幅されて、dq逆変換器92に出力される。
【0110】
q軸成分についても同様である。
具体的には、差分器85は、q軸成分の電圧基準信号とq軸成分のコンデンサ電圧信号との差分を演算して、伝達関数乗算器83に出力する。伝達関数乗算器83により差分器85の誤差が増幅されて、加算器89に出力される。
【0111】
加算器89は、係数k
1に比例した電圧基準信号と、伝達関数乗算器83の出力とを加算するとともに、q軸成分のコンデンサ電流信号との差分を演算して、伝達関数乗算器91に出力する。伝達関数乗算器91により加算器89の誤差が増幅されて、dq逆変換器92に出力される。
【0112】
dq逆変換器92は、出力を三相の信号に逆変換してPWMパルス発生器93に出力する。
【0113】
PWMパルス生成器93Aは、dq逆変換による電圧基準に従ってPWM変換器16Aの出力電圧を制御する。
【0114】
制御装置50Bについても制御装置50Aと同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。
【0115】
次に、実施形態2に基づく交流出力変換器の作用について説明する。
図13は、実施形態2に基づく無停電電源システム1#を模式化した図である。
【0116】
図13に示されるように、無停電電源システム1#は、交流出力変換器11A,11Bが共通の負荷3に対して並列接続されたものである。
【0119】
図14は、実施形態2に基づく等価回路を説明する図である。
【0121】
式(30)は、式(29)の関係が成立すれば、2つの交流出力変換器の等価回路の電圧源の大きさは等しくなることを示す。
【0122】
また、式(31)は、2つ目の交流出力変換器の等価インピーダンスは、1つ目の交流出力変換器のh倍になることを示す。
【0123】
図15は、実施形態2の別の等価回路を説明する図である。
【0125】
したがって、回路インピーダンスと制御ゲイン・伝達関数を適宜調整することで、2つの交流出力変換器の電流分担を調整することが可能である。
【0126】
図16は、実施形態2に基づく無停電電源システム1#のシミュレーション結果を説明する図である。
【0127】
図16(A)には、交流出力変換器11A,11Bの出力電流の代表相の実効値と位相が示されている。時間軸ゼロで、2台が起動した後、0.3〜0.4秒程度で電流分担が均等になる様子が示されている。さらに、その後、0.5秒に負荷を軽くしたり、0.8秒で負荷を再び元の値に変化しても、電流分担が保たれることが示される。
【0128】
図16(B)には、負荷電圧の実効値と位相が示されている。定常状態では、負荷電圧は負荷変動があってもほぼ一定の電圧に保たれていることが示されている。
【0129】
本シミュレーションでは、交流出力変換器11A,11Bには、同じコンデンサ電圧制御回路が設けられているため同じコンデンサ電圧指令により動作するので、2台の交流出力変換器11A,11Bのコンデンサ電圧は一致するように制御される。仮に、2台の交流出力変換器11A,11Bからの出力電流が何らかの要因によりアンバランスになっても、最終的には出力電流がバランスするよう制御される。
【0130】
なお、負荷が接続する母線の電圧は、2つの交流出力変換器に共通な情報であり、それぞれ独立に検出できる情報である。そのようにして得られた基準位相により、実施形態1と同様の作用、効果を得ることが可能である。
【0131】
したがって、本実施形態においても、交流出力変換器が個々の装置で観測できる信号だけを用いて制御を行い、交流出力変換器間の電流バランスを制御することが可能である。また、交流出力変換器が個々に有する制御装置だけで制御するため複数の交流出力変換器に共通の制御装置、交流出力変換器間の信号授受手段を不要にすることが可能である。
【0132】
(実施形態2の変形例1)
上記においては、出力インピーダンスとしてLCLフィルタの負荷側リアクトルを用いた構成について説明したが、負荷側リアクトルの代わりに変圧器を設けた構成である場合でも、出力変圧器の短絡インピーダンス(漏れインピーダンス)がリアクトルと等価であることから、同様な作用を得ることが可能である。
【0133】
図17は、実施形態2の変形例1に基づく無停電電源システム1#Pの構成を説明する図である。
【0134】
図17に示されるように、無停電電源システム1#Pは、無停電電源システム1#と比較して、交流出力変換器11Aを交流出力変換器11#PAに置換するとともに、交流出力変換器11Bを交流出力変換器11#PBに置換した点が異なる。
【0135】
交流出力変換器11#PAは、交流出力変換器11Aと比較して、LCLフィルタ18Aのリアクトルを削除して、リアクトルの代わりに、変圧器18Aを設けた点が異なる。電流検出器31Aは、フィルタと変圧器18Aとの間に設けられる。その他の構成については
図1で説明したのと同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。
【0136】
また、交流出力変換器11#PBは、交流出力変換器11Bと比較して、LCLフィルタ18Bのリアクトルを削除して、リアクトルの代わりに、変圧器18Bを設けた点が異なる。電流検出器31Bは、フィルタと変圧器18Bとの間に設けられる。その他の構成については
図1で説明したのと同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。
【0137】
当該構成においても、実施形態1と同様の効果を得ることが可能である。
なお、電流検出器31A,31Bを交流負荷3と変圧器18A,18Bとの間に設ける構成とすることも可能である。
【0138】
(実施形態2の変形2)
図18は、実施形態2の変形例2に基づく無停電電源システム1#Qの構成を説明する図である。
【0139】
図18を参照して、無停電電源システム1#Qは、
図10の無停電電源システム1#と比較して、交流出力変換器11Aを交流出力変換器11#QAに置換するとともに、交流出力変換器11Bを交流出力変換器11#QBに置換した点が異なる。
【0140】
交流出力変換器11#QAは、交流出力変換器11Aと比較して、基準位相を負荷3が接続される母線電圧から得ている点が異なる。その他の構成については同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。
【0141】
また、交流出力変換器11#QBは、交流出力変換器11Bと比較して、基準位相を負荷3が接続される母線電圧から得ている点が異なる。その他の構成については同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。当該構成においても実施形態1と同様の作用となる。
【0142】
当該構成においても実施形態2と同様の作用となる。
また、負荷が接続する母線の電圧も、2つの交流出力変換器に共通な情報であり、また、2つの交流出力変換器それぞれで独立に検出可能な情報である。
【0143】
したがって、実施形態2と同様の効果を得ることが可能である。
(実施形態3)
図19は、実施形態3に基づく無停電電源システムの構成を模式化した図である。
【0144】
図19には、3台の異なる交流出力変換器に適用した場合について模式化した場合が示されている。たとえば、交流出力変換器11A,11B、11Cを設けた場合について説明する。
【0146】
したがって、本実施形態においても、交流出力変換器が個々の装置で観測できる信号だけを用いて制御を行い、交流出力変換器間の電流バランスを制御することが可能である。
【0147】
さらに、交流出力変換器の負荷側リアクトルのインピーダンスの値が異なる場合でも、それに応じた電圧指令値を作ることで、異なる容量の交流出力変換器が並列された場合でも、それぞれの交流出力変換器に応じた電流配分となるよう制御することが可能である。
【0148】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。