【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの課題の中の一つ以上は、独立請求項に基づく方法又は装置によって解決される。本発明の有利な実施形態は、各従属請求項に記載されている。
【0012】
表示すべきメッセージを自動車の表示装置に伝送する方法は、
中央計算機の自動車データベースから、所定の選択基準に基づき、メッセージを伝送すべき少なくとも一つの自動車を選択して、各自動車に割り当てられた、移動体通信システムの移動体通信識別番号を捜し当てる工程と、
移動体通信識別番号に基づき、移動体通信システムの有効になっていない加入者識別モジュールを有効化する工程であって、加入者識別モジュールが、選択された少なくとも一つの自動車の通信装置に接続されている工程と、
移動体通信システムを介して、中央計算機から、選択された少なくとも一つの自動車の通信装置までのデータ接続を構築する工程と、
データ接続を介して、中央計算機から、通信装置に接続された、捜し当てられた各自動車のプロセッサ装置に表示すべきメッセージを伝送する工程と、
プロセッサ装置によりメッセージを継続処理して、プロセッサ装置に接続された表示装置にメッセージを表示する工程と、
を有する。
【0013】
所定の選択基準に基づき、メッセージを伝送すべき少なくとも一つの自動車を選択することによって、狙い通り所定の一つ又は複数の自動車にメッセージを伝送することができる。
【0014】
少なくとも一つの自動車を選択する選択基準は、車両識別番号、自動車型式、自動車モデル、自動車鍵番号、製造年、移動体通信状態及び/又はソフトウェア状態を含む。これらの基準は、自動車を選択するために個々に、或いは組み合わせて適用又は使用することができる。
【0015】
この場合、メッセージの伝送は、選択された少なくとも一つの自動車の通信装置を介して行なわれる。このような伝達装置は、多くの場合は加入者識別モジュールに接続されている。加入者識別モジュールは、各移動体通信ネットワークの加入者を一義的に特定するので、移動体通信システムを介した通信を確立できるようにするためには、これらの加入者識別モジュールが必要である。加入者識別モジュールの特定はこのとき、移動体通信識別番号に基づき行なわれる。
【0016】
そのような加入者識別モジュールはここで、例えば、SIMカードとして構成することができる。
【0017】
そのような加入者識別モジュールは、多くは自動車の製造時に予め自動車に組み込まれる。購入者により申し込まれたサービスに応じて、相応の加入者識別モジュールが有効化されているか、無効化されている。
【0018】
有効になっていない加入者識別モジュールを有効化することによって、加入者識別モジュールを備えた各自動車の表示装置に表示すべきメッセージを伝送する手段が実現される。それは、自動車の移動体通信状態に関係無く通信を実行できることを意味する。それによって、加入者識別モジュールそれ自体が無効化された状態にあっても、運転者(多くの場合、購入者と同じである。)や自動車の搭乗者との直接的な通信が可能となる。
【0019】
加入者識別モジュールの有効化はここで、それが属する移動体通信システムの移動体通信プロバイダにより行なわれるが、これは、移動体通信プロバイダが、その移動体通信識別番号のために移動体通信システムを設定(コンフィギュレーション)することで、その加入者識別モジュールが、その移動体通信システムにおける利用に関して有効と認められるようにする形で行なわれる。
【0020】
「移動体通信状態」とは、本発明の範囲内においては、自動車の移動体通信コンポーネントがその通信能力に関して占めている状態のことである。
【0021】
中央計算機は、表示すべきメッセージをデータ接続を介して伝送する前に、プロセッサ装置において、メッセージの継続処理及び/又は表示のために一つ又は複数のソフトウェアモジュールが必要かどうかを調べることができる。必要なソフトウェアモジュールがプロセッサ装置にインストールされていない場合、相応のソフトウェアモジュールをインストールするために、データ接続を介して、中央計算機からプロセッサ装置に宛ててインストール命令を伝送するか、或いは然るべきソフトウェアモジュールをそのインストール命令と共に伝送することができる。必要なソフトウェアモジュールが実行されない場合、該当するソフトウェアモジュールを実行するために、データ接続を介して、中央計算機からプロセッサ装置に宛てて実行命令を伝送することができる。
【0022】
ソフトウェアモジュールのインストール及び/又は実行によって、何時でも、自動車のソフトウェア状態に関係無く、表示すべきメッセージを自動車に伝送して、その自動車の表示装置に表示することができる。
【0023】
「ソフトウェア状態」とは、本発明の範囲内において、ソフトウェアモジュールがそのインストール状態及びその現在の実行状態に関して占めている状態のことである。
【0024】
インストール状態はこのとき、以下の状態を含む。
−インストールされた状態、
−インストールされておらず、インストールできる状態、
−インストールされておらず、インストールできない状態。
【0025】
ここで、インストールされておらず、直接インストール可能なソフトウェアモジュールは、プロセッサ装置に接続された、自動車内のメモリ装置に保存されていて、そこからインストールできるのでもよい。しかし、インストールされておらず、インストールできないソフトウェアモジュールが存在する場合、中央計算機は、そのソフトウェアモジュールをインストールのために伝送することができる。この場合、そのようにして伝送されたソフトウェアモジュールは、インストールできるソフトウェアモジュールとして、メモリ装置に保存されて、伝送されて来るインストール命令によって、そこからインストールが行なわれる。
【0026】
実行状態は、以下の状態を含む。
−実行される状態、
−実行されておらず、実行可能な状態、
−実行されておらず、実行不可能な状態。
【0027】
「実行されておらず、実行不可能なソフトウェアモジュール」とは、本発明の範囲内において、そのソフトウェアモジュールの実行可能性に関して、所定の別のソフトウェアモジュールが必要であるが、その別のソフトウェアモジュールがその時点で実行されないか、インストールされていないか、或いはその両方であるソフトウェアモジュールのことである。
【0028】
中央計算機は、プロセッサ装置のソフトウェア状態に関する情報が与えられているので、メッセージの伝送を実行できるように、ソフトウェア状態を変更するのに必要な措置を講じることができる。即ち、中央計算機は、メッセージの表示に必要な全てのソフトウェアモジュールが「インストールされている」インストール状態にあるとともに、「実行される」実行状態にあるようにする。そのようにしてからようやく中央計算機は、表示すべきメッセージを伝送する。
【0029】
プロセッサ装置においてメッセージの継続処理及び/又はメッセージの表示のためにインストールされた(インストール済みの)ソフトウェアモジュール及び/又は実行された(実行済みの)ソフトウェアモジュールの中の一つ又は複数は、中央計算機から伝送されるアンインストール命令を用いたプロセッサ装置におけるアンインストール及び/又は中央計算機から伝送される停止命令を用いたプロセッサ装置における停止を行なうことができる。
【0030】
それによって、ソフトウェアモジュールのその前のソフトウェア状態、即ち、インストール前のインストール状態及び実行前の実行状態を復元することができる。
【0031】
この場合、アンインストール時に、アンインストールすべきソフトウェアモジュールをメモリ装置に保存することができ、その結果、新たに必要となった場合に、そのメモリ装置から、そのソフトウェアモジュールを支障なく、素早く再インストールすることが可能である。しかし、中央計算機によって、インストール可能なソフトウェアモジュールをメモリ装置から消去することもできる。
【0032】
表示装置にメッセージを表示した後、加入者識別モジュールは無効化することができる。
【0033】
それによって、その前の移動体通信状態を復元することができる。
【0034】
この場合、加入者識別モジュールの無効化は、有効化と同様に、それが属する移動体通信システムの移動体通信プロバイダによって行なわれる。
【0035】
表示すべきメッセージを伝送するために、先ず、中央計算機から、捜し当てられた各自動車のプロセッサ装置にトリガーを伝送することができる。トリガーは、中央計算機からメッセージ又はメッセージへのリンクを呼び出すようにプロセッサ装置を制御することができる。このプロセスでメッセージへのリンクが中央計算機から呼び出される場合は、プロセッサ装置は、そのリンクに基づいてメッセージを呼び出すことができる。
【0036】
それによって、利用できる送信容量及び/又は利用できるリソースが効率的に使用される。
【0037】
「利用できる送信容量」とは、本発明の範囲内において、移動体通信システムにより単位時間当たり送信可能なデータ量のことである。
【0038】
「リソース」とは、本発明の範囲内において、コンピュータの動作又はコンピュータプログラムの実行に必要なコンピュータの動作手段又はシステム資源のことである。
【0039】
「トリガー」とは、本発明の範囲内において、そのトリガーの受信者の識別とデータソースへの参照指示とを含む小さなメッセージのことである。データソースへの参照指示とは、そのデータソースからデータを呼び出すためのコマンドであると理解することができる。トリガーはしかし、その呼び出しに対するコマンドを含んでいるのでもよい。
【0040】
そのようなトリガーは、僅かなデータ量しか持たないので、何度も伝送可能である。個別の自動車にあてたトリガーの伝送に基づいて呼び出されるデータの成功率がそれほど高くないとしても、伝送すべきデータの負担は許容できる。有利には、トリガーは、256バイト又は256文字(Zeichen)を超えない。
【0041】
複数の自動車を選択することによって、複数の自動車に対して、加入者識別モジュールの有効化及び/又は無効化と、一つ又は複数のソフトウェアモジュールのインストール、実行、アンインストール及び/又は停止と、の中の一つ以上を行なうことができる。
【0042】
それによって、複数の自動車に対して、以前の移動体通信状態及び/又はソフトウェア状態を同時に且つそれ故に効率的に復元することができる。
【0043】
この場合、複数の自動車の選択は、上で説明した選択基準に基づき行なうことができる。
【0044】
入力装置を用いた形でメッセージを表示する場合、プロセッサ装置によって、使用者のリアクション、特に、使用者の確認又は入力を検知することができる。使用者のリアクションは、保存のためにデータ接続を介してプロセッサ装置から中央計算機に伝送することができる。
【0045】
それによって、使用者による伝送されたメッセージの確認を検知して、中央計算機に記録することができる。これは、確認が法律に係るようなメッセージ、例えばリコール時のメッセージなどを伝送する場合に有利である。幾つかの国では、例えば、当局や新聞を介してリコールを伝える代わりに、自動車の各運転者又は購入者に直接リコールを伝送することで法律の規則に応じるようにできる。
【0046】
更に、使用者によるデータ入力を請う手段がある。この場合、個人に関係するデータ、例えば、名前、宛て名及び/又は電子メールアドレス、電話番号等の更に別の連絡手段などを問い合わせることができる。それによって、自動車の購入後に自動車の購入者と連絡を取ることでさらなるサービス及び/又はサポートの提供を提示でき且つそれにより顧客満足度を向上させる手段が実現される。
【0047】
「使用者」とは、本発明の範囲内において、自動車の運転者又は搭乗者の中の一人、有利には、自動車の購入者又は所有者、或いはそのような者から権限を与えられた人のことである。
【0048】
本発明の別の観点では、表示すべきメッセージを自動車の表示装置に伝送するためのプロセッサ装置が意図されている。この場合、プロセッサ装置は、表示すべきメッセージを受信して、自動車の表示装置に表示するように構成されている。プロセッサ装置は、表示すべきメッセージを受信してメッセージを表示するために、データバスインタフェースを介して自動車のデータバスに接続することが可能である。データバスは、表示すべきメッセージを受信する通信装置と、メッセージを表示する表示装置とに接続されている。プロセッサ装置はここで、上で説明した方法を実施するように構成されている。
【0049】
本発明の別の観点では、そのようなプロセッサ装置を備えた自動車が意図されている。
【0050】
本発明の別の観点では、そのような自動車を備えたメッセージ伝送システムが意図されている。
【0051】
更に、メッセージ伝送システムは、表示すべきメッセージを自動車の表示装置に伝送する中央計算機と、中央計算機の操作に利用されるオペレーティングコンピュータとを備えている。
【0052】
中央計算機を用いて、メッセージ伝送システムを中央で制御することが可能であり、中央計算機において、中央から全ての制御データにアクセスすることができる。
【0053】
以下に、図面に基づき本発明を詳しく説明する。