(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802280
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】コイルに巻き取られる電磁鋼板積層体を製造するための鋼板通過プロセス
(51)【国際特許分類】
H01F 41/02 20060101AFI20201207BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
H01F41/02 B
B32B15/08 K
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-541396(P2018-541396)
(86)(22)【出願日】2017年2月15日
(65)【公表番号】特表2019-508894(P2019-508894A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】EP2017053440
(87)【国際公開番号】WO2017140747
(87)【国際公開日】20170824
【審査請求日】2020年2月17日
(31)【優先権主張番号】16155764.0
(32)【優先日】2016年2月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513069145
【氏名又は名称】フォエスタルピネ スタール ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】フルーフ,ロナウド
(72)【発明者】
【氏名】カーン,カリーナ
【審査官】
木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−9710(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/22275(WO,A1)
【文献】
特開2000−152570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1電磁鋼板(4)および1つの第2電磁鋼板(5、500)がそれらの平面側(41、51)で互いに押し合わされ、電磁鋼板積層(6)に素材結合的に結合され、その電磁鋼板積層(6)は次の段階でコイル(7)に巻き取られ、
その平面側(41、51)の少なくとも1つの上に第1の熱活性化可能なエナメル接着塗装が塗着された第1電磁鋼板(4)が提供され、
前記第1エナメル接着塗装層(10)が前記第1電磁鋼板(4)で熱活性化され、その後、前記電磁鋼板(4、5、500)がそれらの平面側(41、51)で、活性化された前記第1エナメル接着塗装層(10)とこの平面側(41、51)間で互いに押し合わせられ、
前記第2電磁鋼板(5、500)が前記第1エナメル接着塗装層(10)の活性化温度を下回る温度で前記第1電磁鋼板(4)にこの押し合わせのために供給されることを特徴とするコイルに巻き取られる電磁鋼板積層体を製造するための鋼板通過プロセス。
【請求項2】
特に10〜75℃の環境温度を有する前記第2電磁鋼板(5、500)が押し合わせに供給されることを特徴とする請求項1に記載の鋼板通過プロセス。
【請求項3】
前記第1電磁鋼板(4)が少なくとも前記第1エナメル接着塗装層(10)の活性化温度に加熱され押し合わせに供給されることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の鋼板通過プロセス。
【請求項4】
前記第1電磁鋼板(4)の前記第1エナメル接着塗装層(10)が150〜200℃に加熱されそれによって熱活性化されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼板通過プロセス。
【請求項5】
前記第2電磁鋼板(5、500)が第2の熱活性化可能なエナメル接着塗装によって塗装された平面側(52)とともに提供され、前記電磁鋼板(4、5、500)の押し合わせの際に第2エナメル接着塗装層(11)が前記第1電磁鋼板(4)の活性化された前記第1エナメル接着塗装層(10)を有する前記平面側(42)とは反対側にある前記第2電磁鋼板(5、500)の平面側(52)にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼板通過プロセス。
【請求項6】
前記第1エナメル接着塗装層(10)が前記第2電磁鋼板(5、500)の前記接着剤が塗布されていない平面側(51)に押し付けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼板通過プロセス。
【請求項7】
前記第2電磁鋼板(5、500)の前記平面側(51)が化学的に前処理され、前記活性化された第1エナメル接着塗装層(10)が前記第2電磁鋼板(5、500)のこの前処理された平面側(51)に押し付けられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の鋼板通過プロセス。
【請求項8】
前記第2電磁鋼板(500)が前記第1電磁鋼板(4)に向けられた前記平面側(51)の上に同様に前記第1エナメル接着塗装層(10)の温度で熱活性化されるエナメル接着塗装層(9)を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の鋼板通過プロセス。
【請求項9】
前記第2電磁鋼板(500)の前記エナメル接着塗装層(9)がその前記第1電磁鋼板(4)に向けられた前記平面側(51)の上に押し合わせの間に熱活性化されることを特徴とする請求項8に記載の鋼板通過プロセス。
【請求項10】
前記エナメル接着塗装層(9、10)に前記電磁鋼板(4、500)の互いに向き合った平面側(41、51)の上に粒子径1〜5μmの充填剤が加えられることを特徴とする請求項8または9に記載の鋼板通過プロセス。
【請求項11】
前記電磁鋼板(4、5、500)の上にそれらの押し合わせの際に少なくとも17N/cmの圧力荷重が作用することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の鋼板通過プロセス。
【請求項12】
エナメル接着塗装として焼成エナメルが使用されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の鋼板通過プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイルに巻き取られる電磁鋼板積層体を製造するための鋼板通過プロセスに関する。その場合少なくとも1つの第1電磁鋼板および第2電磁鋼板がそれらの平面側で互いに押圧し合い、1つの電磁鋼板積層体に素材結合的に結合され、この電磁鋼板積層体が次の段階でコイルに巻き取られる。
【背景技術】
【0002】
電磁鋼板積層体を迅速に製造できるように、従来技術から、3つの、場合により1つの絶縁塗装が塗布された電磁鋼板が素材結合的に繋ぎ合わされる鋼板通過プロセスが公知である(国際公開第2007/116047号 特許文献1)。ここでは真ん中の電磁鋼板の両平面側上に接着剤が塗布され、その後3つの電磁鋼板が一緒に押し合わされ、その後これらの電磁鋼板から生じる電磁鋼板積層体がコイルに巻き取られる。このような鋼板通過プロセスにおける接着剤による積層は、−安定した電磁鋼板積層体を製造するためだけではなく、巻き上げられた電磁鋼板積層体のコイル安定性を保証できるためにも−比較的注意深く行われなければならないという不利がある。このコイル安定性のためにさらに、電磁鋼板積層体が巻き上げられる前に塗布された接着剤が十分に架橋していることが保証されなければならない。しかしこの架橋度は鋼板通過プロセスにおけるパラメータ変動(例えば:鋼板速度、接着剤塗布)により非本質的ではなく妨害され、これは特に比較的高い鋼板速度が必要なとき、鋼板通過プロセスの再現性を脅かす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/116047号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため本発明の課題は、冒頭で述べられた種類の鋼板通過プロセスを、比較的高い鋼板速度にもかかわらず高い再現性が達成されることができるように変更することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
少なくとも1つのその平面側の上で第1の熱活性化可能なエナメル接着塗装が塗布された第1電磁鋼板が提供され、第1エナメル接着塗装層が第1電磁鋼板で熱活性化され、その後電磁鋼板がその平面側でこれらの平面側の間で活性化された第1エナメル接着塗装層と互いに押し合わされ、第2電磁鋼板が第1エナメル接着塗装層の活性化温度以下の温度で第1電磁鋼板でこの押し合わせに供給されることによって本発明は課された課題を解決する。
【0006】
少なくとも1つのその平面側の上に第1の熱活性化可能なエナメル接着塗が塗布された第1電磁鋼板が提供され、第1エナメル接着塗装層が第1電磁鋼板で熱活性化され、その後電磁鋼板がそれらの平面側で活性化された第1エナメル接着塗装層とこれらの平面側の間で互いに押し合わされると、本発明の鋼板通過プロセスはパラメータ変動に対して明確により強固に実施されることができる。そのようにして例えば接着剤の塗布は鋼板通過プロセスでは省略されることができ、それはパラメータ変動に基づく層厚変動を回避し鋼板通過プロセスにおける安定した素材結合式結合のための条件を生むことができる。このように電磁鋼板をそれらの平面側で活性化された第1エナメル接着塗装層とこれらの平面側の間で押し合わせることだけで、それによって比較的高い鋼板速度が実現可能にできることで十分でありうる。しかし迅速でありながら再現可能な鋼板通過プロセスがそれによって生成されることができる。
【0007】
さらに第2電磁鋼板が第1エナメル接着塗装層の活性化温度以下の温度で第1電磁鋼板においてこの押し合わせに供給されると、温度の異なる電磁鋼板のこのような素材結合式の結合により電磁鋼板積層の冷却段階が結合後に著しく短縮される。これは例えば電磁鋼板積層の巻き取りの前に電磁鋼板間の素材結合式の結合が十分に強固であることを保証するため、コイルが逸れることはありえない。高い鋼板速度にも関わらず、本発明の方法はなおかつ高い再現性を有する。鋼板通過プロセス中に活発な冷却が必ずしも必要ではないため、さらにこれは鋼板通過プロセスのエネルギー消費を削減する。
【0008】
エナメル接着塗装は例えばポリビニルブチラール基剤、ポリアミド、変性ポリアミド、変性ポリエステルまたはエポキシ樹脂基剤上の焼成エナメルと理解されることが一般的に示唆される。さらにエナメル接着塗装の熱活性化は熱可塑性接着剤層の液状化とも層の化学的架橋とも理解されることが一般的に言及される。さらにコイルは巻き取られた鋼板あるいは積層と理解されうることが言及される。
【0009】
環境温度を有する第2電磁鋼板が押し合わせに供給されると、これは電磁鋼板積層での迅速な温度低下をもたらし、それが鋼板通過プロセスを加速できる。この迅速な冷却はさらに活性化された第1エナメル接着塗装層の速やかな相転移に役立つことができ、それは素材結合的結合を改善し、それによって鋼板通過プロセスがより安定して行われることができる。さらに有利なことに、第2電磁鋼板の活性加熱は省略されることができる。この環境温度が10〜75℃(セルシウス度)の領域にあるとき有利でありうる。
【0010】
少なくとも第1エナメル接着塗装層の活性化温度で加熱される第1電磁鋼板が押し合わせに供給されると、第1エナメル接着塗装層の熱活性化が間接的に鋼板加熱によって行われる。それによって活性化されるべきエナメル接着塗装層の局部的過熱およびそれによる接着性質の破壊が安定的に防止されることが可能である。本発明の鋼板通過プロセスはこのようなやり方でより確実に適用されることができる。
【0011】
第1電磁鋼板の第1エナメル接着塗装層が150〜200℃(セルシウス度)に加熱されそれによって熱活性化されると、鋼板通過プロセスはさらにより効率的かつ迅速に行われることができる。それによってさらに、第1エナメル接着塗装層の温度が、第1エナメル接着塗装層も押し合わせの際の第2エナメル接着塗装層も、これが第2電磁鋼板に設けられている場合、熱活性化するためにも充分に高温であることが保証されうる。
【0012】
第2電磁鋼板が第2の熱活性化可能なエナメル接着塗装が塗着された平面側を提供し、電磁鋼板の押し合わせの際、第2エナメル接着塗装層が活性化されたエナメル接着塗装層を有する第1電磁鋼板の平面側とは逆の方向を向く第2電磁鋼板の平面側上に存在するとき、第2電磁鋼板の比較的高い特殊な熱容量によって第2エナメル接着塗装層が安定的に活性化から保護されることができる。これらの電磁鋼板の間の比較的迅速な温度調整のために、すなわち第2電磁鋼板でのエナメル接着塗装層の温度が活性化温度を上回らないことが防止される。それによってこのエナメル接着塗装層が電磁鋼板積層の再加工のために活性化可能でありそれによってこれに関して機能可能であることが保証されることができる。そのため電磁鋼板積層はエナメル接着塗装層を有する電磁鋼板において公知であるようなやり方で続けて利用されることができる。
【0013】
押し合わせの後の電磁鋼板積層の迅速な冷却を保証するために、第1の活性化されたエナメル接着塗装層が第2電磁鋼板の接着剤の付着していない平面側に押し付けられることが企図されうる。さらにこれはエナメル接着塗装層への速やかな相転移を促し、それによって迅速で確実な結合の固化が保証されることができる。鋼板通過プロセスの再現性はそれによってさらに向上する。
【0014】
第2電磁鋼板の平面側が化学的に前処理され、第1の活性化されたエナメル接着塗装層がこの前処理された第2電磁鋼板の平面側に押し付けられるとき、電磁鋼板間の素材結合式結合は改善されうる。このような化学的な前処理は、そのようにして活性化されたエナメル接着塗装層の接着を改善するために例えば変換層を形成することができる。そのような前処理は特に、2つの電磁鋼板の押し合わせの際に比較的高い温度差が電磁鋼板間に生じ、活性化されたエナメル接着塗装層が比較的速く溶解さればならないときに際立つ。それでも前処理層を使ってエナメル接着塗装層と第2電磁鋼板の前処理された平面側の間の充分な素材結合式結合が保証されることができ、それは鋼板通過プロセスの再現性に有益でありうる。
【0015】
第2電磁鋼板が第1電磁鋼板の方向に向く平面側の上に同様に、第1エナメル接着塗装層の温度によって熱活性化されるエナメル接着塗装層を有するとき、エナメル接着塗装層の特に均質な溶解が両方の電磁鋼板で達成されることができ−そのように素材結合式結合がさらに改善可能であり、それによって本発明の鋼板通過プロセスの再現性がさらに向上されることができる。
【0016】
第2電磁鋼板のエナメル接着塗装層がその第1電磁鋼板の方向に向く平面側の上で押し合わせの間に熱活性化されるとき、これはとりわけ鋼板通過プロセスの運用をさらに簡略化する。なぜなら第2エナメル接着塗装層の活性化のための鋼板通過プロセスにさらなる処置が必要ないからである。そのときさらにエナメル接着塗装層が比較的短時間のみ熱活性化され、それが電磁鋼板の押し合わせ後の電磁鋼板積層の速やかな冷却のために有益でありうることが保証される。
【0017】
エナメル接着塗装層に電磁鋼板の互いに向き合う平面側の上で粒子径1〜5μmの充填剤が供給されるとき、電磁鋼板間の電気的絶縁は向上されうる。これはさらに電磁鋼板積層の強度を改善する。
【0018】
電磁鋼板にそれらの押し合わせの際、例えば少なくとも17N/cmの加圧ローラの使用による圧力荷重が作用するとき、これは電磁鋼板間の素材結合式結合を保証し、それによって安定した電磁鋼板積層の製造の際の鋼板通過プロセスの再現性をさらに改善することができる。
【0019】
本発明の鋼板通過プロセスは特にエナメル接着塗装としての焼成エナメルの使用によって際立つことができる。好ましくはここではエポキシ樹脂基剤上の焼成エナメルが有効であることが証明されうる。さらに焼成エナメルの活性化温度および/または電磁鋼板の焼成エナメルは同じでありうることが一般的に言われる。
【0020】
図では本発明の対象が例示的に実施変形により詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は2つの電磁鋼板から1つのコイルに巻き取られる電磁鋼板積層の製造のための装置の概略図を示す。
【
図2】
図2は異なる電磁鋼板を有する
図1の装置の詳細図を示す。
【
図3】
図3は異なる電磁鋼板を有する
図1の装置の詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1では概略的に示される、2つのコイル2、3によってそれぞれ1つの電磁鋼板4、5、500が巻き取られる継続的な鋼板通過プロセス1が見られる。
【0023】
図2は電磁鋼板4、5がそれぞれ2つの平面側41、42および51、52を備え、第1、第2電磁鋼板4、5の平面側41、51が互いに向き合っていることを示す。第1電磁鋼板4は次の段階で第2電磁鋼板5と素材結合式に電磁鋼板積層6に結合され、結合された電磁鋼板積層6はその後コイル7に巻き取られる。
【0024】
図2および3で詳細が見られるように、第1電磁鋼板4がその平面側41にエナメル接着塗装層10を有し、あるいは少なくとも1つのその平面側41、42の上に第1の熱活性化可能なエナメル接着塗装10が塗布された第1電磁鋼板4が鋼板通過プロセス1に提供されることにより、本発明の鋼板通過プロセスの際の比較的高い再現性が達成される。すると電磁鋼板4、5、500の素材結合式結合のために第1電磁鋼板4の第1エナメル接着塗装層10はさらに熱活性化される必要だけがあり、その後電磁鋼板4、5はその平面側41、51に−これらの平面側41、51の間で活性化されたエナメル接着塗装層10と−押し合わせられ、それは簡単な処置によって鋼板通過プロセス1での比較的高い鋼板速度を許容する。第2電磁鋼板5、500は第1エナメル接着塗装層10の活性化温度を下回る温度で第1電磁鋼板4での押し合わせに供給されるため、電磁鋼板積層6の冷却が加速されるだけではなく、電磁鋼板積層6のコイルへの迅速で安定した巻き取りを実現するために、素材結合式結合も充分に迅速に架橋されることができる。これによってコイルと結合の安定性が達成される。
【0025】
しかし巻き取りの前に、電磁鋼板積層6の温度を例えば50℃以下に下げるために、電磁鋼板積層6を充分に冷却するための冷却区間が設けられることも考えられる。すると例えばコイルと結合の安定性が達成されることができる。
【0026】
また、第2電磁鋼板5、500もその平面側52の上にエナメル接着塗装層11を備える。本発明では電磁鋼板4、5、500の押し合わせの前には第1エナメル接着塗装層1以外が第1電磁鋼板4で活性化される。それによって第2エナメル接着塗装層11は加熱されず、せいぜい電磁鋼板4、5の押し合わせ後の温度調整によって一緒に加熱される。このようなやり方で、第2エナメル接着塗装層11は第2電磁鋼板5、500で活性化されず、それによってさらに活性化可能に、およびそれによってそれに関して機能可能のままに留まる。この第2エナメル接着塗装層11はすなわち本発明では、電磁鋼板4、5、500の押し合わせの際、第1電磁鋼板4の活性されたエナメル接着塗装層10を有する平面側41とは逆の方向を向く平面側52上にある。この鋼板通過プロセスによりこのように、これが活性化されたエナメル接着塗装層を有する公知の電磁鋼板で知られているような電磁鋼板積層6が生成される。
【0027】
図1では第1エナメル接着塗装層10が第1電磁鋼板4で加熱装置12を使って熱活性化され−その後2つのローラ13間で第2電磁鋼板5、500の平面側51と結合される。
【0028】
図2では第2電磁鋼板5の平面側51は塗装されずに、または詳細には図示されない変換層を設け、それは化学的前処理によって鋼板通過プロセスの中で行われることができる。この化学的前処理はポリビニルアルコールの塗布を含む。
【0029】
図3では、第1電磁鋼板4の平面側41の方向に向けられた第2電磁鋼板500の平面側51の上に同様にエナメル接着塗装層9が設けられる。これは電磁鋼板間の素材結合式結合の役に立つことができる。このエナメル接着塗装層9の第1の熱活性化された熱いエナメル接着塗装層10との接触によって、エナメル接着塗装層9は第2電磁鋼板500で同様に熱活性化され、2つのエナメル接着塗装層9、10は共通のエナメル接着塗装層14に素材結合式に結合される。特にこのエナメル接着塗装層9の第2電磁鋼板500での熱活性化は、これに2つのエナメル接着塗装層9、10が押し合わせられる瞬間に行われる。結合された電磁鋼板積層6の中での電磁鋼板4、500の温度調整によりエナメル接着塗装層14の迅速な冷却が行われ、それによって電磁鋼板積層6の迅速な再加工が−しかも追加の方法工程なしで−実現される。さらにここでも
図2の実施形態例と同様に、エナメル接着塗装層11が電磁鋼板500の平面側52で熱活性化されず、後の活性化のために機能可能に留まることが保証される。このように特に、電磁鋼板積層6がすでに短時間あるいは直接結合後にコイル7に巻き取られうることが保証される。
【0030】
図1で説明された鋼板通過プロセスでは冷間圧延された無配向の電磁鋼板4、5、500がEN10106/2007に準じた最終焼鈍状態で使用される。電磁鋼板4、5、500は公称厚さ0.35mmおよび公称幅1200mmを有する。層厚0.01mmを有するエナメル接着塗装層9、10、11のためのエナメル接着塗装としてエポキシ樹脂基剤を有する同じ焼成エナメルが使用される。全てのエナメル接着塗装層9、10、11の活性温度は150〜200℃である。素材結合式結合の機械的強度を改善するためにエナメル接着塗装層9、10に粒子径3.2μmの充填剤が加えられる。
【0031】
第1電磁鋼板4は加熱装置12により150〜200℃に加熱され、それはエナメル接着塗装層10を熱活性化する。第2電磁鋼板5、500は活性加熱されず、それによって30℃の環境温度を有し、素材結合式結合に供給される。第2電磁鋼板5、500の比較的高い熱容量によりその第2エナメル接着塗装層11はさらに低い温度、すなわち約70℃で負荷され、それは第2エナメル接着塗装層11を熱活性化から保護し、さらに好ましくは電磁鋼板積層6が50℃より低い温度を有するときに始めて電磁鋼板が比較的速く再びコイルに巻き取られることを許可する。鋼板通過プロセス中の鋼板速度は毎分20m以上である。本発明により製造される電磁鋼板積層6は厚さ約0.7mmおよび引張せん断強さ5MPaを有する。