【文献】
新版 ゴム技術の基礎,日本,一般社団法人 日本ゴム協会,2014年10月 1日,改訂第4刷,P.104〜105
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つのエラストマーが、1,3−ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2,3−ジアルキル−1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、エチレン、及びプロピレンから選択され、アルキルがC1〜C6アルキルから選択される少なくとも1つのモノマーを含むポリマー及びゴムから選択される、請求項1に記載のコンパウンド。
前記少なくとも1つのエラストマーが、ポリクロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、フルオロエラストマー、ペルフルオロエラストマー、エチレン/アクリル酸エラストマー、高温スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソプレン、及びエチレン−プロピレンゴムから選択される、請求項1に記載のコンパウンド。
前記少なくとも1つのカーボンブラックが、ASTM N330、ASTM N326、ASTM N339、ASTM N539、ASTM N550、ASTM N660、ASTM N774、及びASTM N990のカーボンブラックから選択される、請求項1に記載のコンパウンド。
前記少なくとも1つのグラフェン系材料及び前記少なくとも1つのカーボンブラックの全体充填量が、15〜150phrの範囲である、請求項1に記載のコンパウンド。
少なくとも1つのエラストマーを、少なくとも1つのグラフェン系材料及び少なくとも1つのカーボンブラックと組み合わせて請求項1に記載のエラストマーコンパウンドを形成する組み合わせ工程を含む、エラストマーコンパウンドを製造する方法であって、
前記組み合わせ工程が、
前記少なくとも1つのエラストマーを前記少なくとも1つのグラフェン系材料と組み合わせることでマスターバッチを形成することと、
前記マスターバッチを前記少なくとも1つのカーボンブラックと組み合わせることとを含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0005】
高温及び/又は刺激性化学環境下で適切に機能するエラストマー部材のために、高温で1つ又は複数の十分に強い機械特性を有するエラストマーコンパウンドを使用することが望ましく、そして、化学的攻撃から生じる劣化は限定的であるべきである。使用温度は、数ある因子の中で、エラストマー及び強化添加剤に依存する場合がある。これらの成分の選択により、高温でのエラストマーコンパウンドの特性が変更され、潜在的に向上され、そして、これらのコンパウンドをそれらの典型的な使用温度より高い温度で使用することが可能となる。
【0006】
カーボンブラックがエラストマーコンパウンドに提供することができるバランスの取れた特性のために、カーボンブラックは、産業用エラストマーのための充填材として典型的に使用される。高表面積及び高構造を持つカーボンブラックは、高弾性率及び高硬度を付与することができる。しかしながら、そのようなエラストマーコンパウンドの粘度は高い傾向にあり、それにより低い加工性がもたらされる場合がある。また、高構造カーボンブラックは、高温エラストマーコンパウンドの機械特性を向上するための限定された能力を有することがある。
【0007】
新規のカーボン系強化添加剤は、高温エラストマーコンパウンドの機械特性及び/又は化学耐性を向上することができる。1つの実施形態において、強化添加剤としてのカーボンブラックとグラフェン系材料との混合物は、エラストマーコンパウンドの1つ又は複数の機械特性及び化学特性を向上させることができる。例えば、グラフェン系材料/カーボンブラック混合物を含むエラストマーコンパウンドは、等量の全体充填量のカーボン添加剤において、単一の添加剤としてカーボンブラックを含むエラストマーコンパウンドの引張弾性率より高い引張弾性率を提供することができる。別の例において、グラフェン系材料とカーボンブラックとの混合物を含むエラストマーコンパウンドの引張強度は、単一の添加剤としてグラフェンを含むエラストマーコンパウンドの引張強度より高い引張強度を提供することができる。
【0008】
したがって、本明細書で説明されるのは、以下:
(a)15ポイント以下のデュロメーター硬さの変化、
(b)40%以下の引張強度の変化、及び
(c)40%以下の極限伸びの変化
から選択される特性のうち少なくとも1つを示すように、100℃で70時間の加熱に耐性がある少なくとも1つのエラストマーと、
少なくとも1つのエラストマーに対して0.01phr(ゴム100部あたり)〜30phrの範囲の量で存在する少なくとも1つのグラフェン系材料と、
少なくとも1つのエラストマーに対して15〜150phrの範囲の量で存在する少なくとも1つのカーボンブラックとを含むエラストマーコンパウンドである。
【0009】
本明細書で使用される場合、エラストマーコンパウンドは、少なくとも1つのエラストマーと、少なくとも1つのグラフェン系材料と、少なくとも1つのカーボンブラックとの均一混合物(例えば、ブレンド)を言い表す。代替的に述べると、少なくとも1つのグラフェン系材料及び少なくとも1つのカーボンブラックが、少なくとも1つのエラストマー内に均一に分散されており、エラストマーコンパウンドは、エラストマー、グラフェン系材料又はカーボンブラックの分離層を含まない。1つの実施形態において、少なくとも1つのグラフェン系材料及び少なくとも1つのカーボンブラックは粒状物である。均一混合物は、当技術分野で公知の様々な方法、例えば、溶液処理(グラフェン系材料及びカーボンブラックの粉末が溶解して組み合わさったエラストマー、又は分散体若しくはスラリーとして)、又は、例えば高温での、グラフェン系材料及びカーボンブラックの粉末での少なくとも1つのエラストマーの処理、並びに/又は本明細書においてさらに詳細に説明されるような混合により得ることができる。
【0010】
1つの実施形態において、少なくとも1つのエラストマーは、以下:
(a)15ポイント以下のデュロメーター硬さの変化、
(b)40%以下の引張強度の変化、及び
(c)40%以下の極限伸びの変化
から選択される特性のうち少なくとも1つを示すように、100℃で70時間の加熱に耐性がある。
【0011】
特性(a)〜(c)の変化は、例えばASTM D573に従って、前もって少なくとも1つのエラストマーの測定値を取得し、100℃で70時間加熱することで決定することができる。1つの実施形態において、100℃に70時間さらされた後である。1つの実施形態において、デュロメーター硬さの変化は10ポイント以下である。別の実施形態において、引張強度の変化は、35%以下、例えば、30%以下、又は25%以下である。別の実施形態において、極限伸びの変化は、35%以下、例えば30%以下又は25%以下である。デュロメーター硬さは、ASTM D2240に従って決定することができる。引張強度特性は、ASTM D412に従って決定することができる。極限伸びは、ASTM D412に従って決定することができる。
【0012】
1つの実施形態において、100℃に70時間さらされた後、少なくとも1つのエラストマーは、特性(a)〜(c)のうち2つを示す。別の実施形態において、100℃に70時間さらされた後、少なくとも1つのエラストマーは、特性(a)〜(c)のそれぞれを示す。
【0013】
1つの実施形態において、少なくとも1つのエラストマーは、1,3−ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2,3−ジアルキル−1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、エチレン、及びプロピレンから選択され、アルキルがC
1〜C
6アルキルから選択される少なくとも1つのモノマーを含むゴム(天然又は合成)及びポリマー(例えば、ホモポリマー、コポリマー及び/又はブレンド)から選択される。例示のエラストマーとしては、ポリクロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、フルオロエラストマー(FKM、例えば、Dupont製のViton(登録商標)フルオロエラストマー、又は、3M製のDyneon(商標)フルオロエラストマー)及びペルフルオロエラストマー(FFKM)、Asahi Glass製のAflas(登録商標)テトラフルオロエチレン/プロピレンジポリマー(FEPM)、エチレン/アクリル酸エラストマー(AEM)、ポリアクリレート(ACM)、ポリイソプレン、エチレン−プロピレンゴム、高温スチレン−ブタジエンゴムから選択されるものが挙げられる。
【0014】
1つの実施形態において、少なくとも1つのグラフェン系材料は、グラフェン、グラフェン酸化物、及び還元グラフェン酸化物から選択される。「グラフェン」は、本明細書で使用される場合、蜂巣格子を形成するために互いに結合した少なくとも1つの単一原子厚さシートのsp
2混成炭素原子を含む。グラフェンは、単一層のグラフェン、複数層のグラフェン、及び/又はグラフェン集合体を含むことができる。1つの実施形態において、グラフェンは、2以上の積層グラフェンシート、例えば2〜50層のグラフェンを有する複数層グラフェン(FLG)を含む。1つの実施形態において、グラフェンは、単一層のグラフェン及び/又は2〜20層のグラフェン(又は本明細書で開示される他の範囲)を含むことができる。別の実施形態において、グラフェンは、3〜15層のグラフェンを含む。
【0015】
グラフェンの寸法は、典型的に、厚さ及び横方向ドメインサイズで規定される。グラフェンの厚さは、一般的に、層状グラフェンシートの数に依存する。厚さに直角な寸法は、本明細書では「横方向」寸法又はドメインと称される。1つの実施形態において、グラフェンは、10nm〜10μm、例えば10nm〜5μm、10nm〜2μm、100nm〜10μm、100nm〜5μm、100nm〜2μm、0.5μm〜10μm、0.5μm〜5μm、0.5μm〜2μm、1μm〜10μm、1μm〜5μm、又は1μm〜2μmの範囲の横方向ドメインサイズを有する。
【0016】
グラフェンは、離散粒子として及び/又は集合体として存在することができる。「集合体」とは、互いに付着した複数層のグラフェンを含む複数のグラフェン粒子(プレートレット)を言い表す。グラフェン集合体について、「横方向ドメインサイズ」は、集合体の最も長い分割できない寸法又はドメインを言い表す。グラフェン集合体は、機械的に、例えばグラファイトの剥離により生成することができる。
【0017】
グラフェンは、当技術分野で周知なグラファイトの(機械的、化学的)剥離を含む様々な方法により生成することができる。代替的に、グラフェンは、例えば、ガス相、プラズマプロセス、及び当技術分野で公知の他の方法により、メタン及びアルコールのような有機前駆体の反応を通じて合成することができる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「グラフェン酸化物」は、少なくとも1.5:1、少なくとも2:1、少なくとも2.5:1、少なくとも3:1、少なくとも3.5:1、少なくとも4:1、及び少なくとも4.5:1の炭素:酸素原子比を有する酸化グラフェンを言い表す。1つの実施形態において、炭素:酸素原子比は、1.5:1〜5:1、2:1〜5:1、又は3:1〜5:1の範囲である。炭素:酸素モル比は、元素分析、又は当技術分野で公知の他の方法により決定することができる。グラフェンのように、グラフェン酸化物は、単層又は複数層の積層(例えば、2〜50層、2〜20層又は3〜15層)として存在することができる。グラフェン酸化物は、グラファイト酸化物の剥離、又はグラフェンの酸化により得ることができる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「還元グラフェン酸化物」とは、グラフェン酸化物又はグラファイト酸化物を還元した生成物を言い表す。グラフェン酸化物又はグラファイト酸化物は、様々な方法、例えば化学的、熱的方法などにより還元することができる。1つの実施形態において、還元グラフェン酸化物、少なくとも5:1の炭素:酸素モル比を有する。別の実施形態において、還元グラフェン酸化物は、2:1〜1000:1、2:1〜100:1、2:1〜20:1、2:1〜10:1、3:1〜1000:1、3:1〜100:1、3:1〜20:1、3:1〜10:1、5:1〜1000:1、5:1〜100:1、5:1〜20:1、又は5:1〜10:1の範囲の炭素:酸素モル比を有する。
【0020】
1つの実施形態において、少なくとも1つのグラフェン系材料の表面積は、互いに積層されたシート数の関数であり、層の数に基づいて計算することができる。1つの実施形態において、少なくとも1つのグラフェン系材料は微細気孔を有さない。例えば、孔を有さないグラフェン単層の表面積は2700m
2/gである。孔を有さない2層グラフェンの表面積は1350m
2/gと計算することができる。別の実施形態において、少なくとも1つのグラフェン系材料の表面積は、積層シートの数と非晶質空洞又は孔との組み合わせから得られる。1つの実施形態において、少なくとも1つのグラフェン系材料は、0超〜50%、例えば、20〜45%又は20〜30%の範囲の微細気孔率を有する。1つの実施形態において、少なくとも1つのグラフェン系材料は、グラフェン及び還元グラフェン酸化物から選択され、そして、ASTM−D6556により決定した場合、40〜1600m
2/g、60〜1000m
2/gの範囲のBET表面積、又は80〜800m
2/g、例えば200〜800m
2/gのBET表面積を有する。
【0021】
1つの実施形態において、少なくとも1つのグラフェン系材料は、少なくとも1つのエラストマーに対して0.01〜30phr、例えば0.1〜30phrの範囲の量で存在する。1つの実施形態において、少なくとも1つのグラフェン系材料は、少なくとも1つのエラストマーに対して0.01〜20phr、0.1〜20phr又は0.5〜20phr、0.01〜20phr、0.1〜10phr、又は0.5〜10phrの範囲の量で存在する。
【0022】
1つの実施形態において、少なくとも1つのカーボンブラックは、少なくとも1つのエラストマーに対して15〜150phr、例えば、少なくとも1つのエラストマーに対して15〜100phr、15〜70phr、20〜150phr、20〜100phr、20〜70phr、25〜150phr、25〜100phr、25〜70phr、30〜150phr、30〜100phr、又は30〜70phrの範囲の量で存在する。
【0023】
1つの実施形態において、少なくとも1つのグラフェン系材料は、少なくとも1つのエラストマーに対して0.01〜30phr(例えば、0.1〜30phr又は本明細書で開示される他の範囲)の範囲の量で存在し、少なくとも1つのカーボンブラックは、少なくとも1つのエラストマーに対して20〜150phr、例えば30〜150phrの範囲の量で存在する。
【0024】
1つの実施形態において、グラフェン系材料とカーボンブラックとの全体充填量は、15〜150phr、例えば、15〜100phr、15〜75phr、15〜50phr、又は15〜30phrの範囲である。
【0025】
少なくとも1つのグラフェン系材料がグラフェン酸化物及び還元グラフェン酸化物から選択される1つの実施形態において、カーボンブラックの量は、グラフェンの量より多く、例えば、(グラフェン酸化物及び還元グラフェン酸化物から選択される)少なくとも1つのグラフェン系材料:カーボンブラックの重量比は、1:2〜1:1000、1:2〜1:100、1:2〜1:75、1:2〜1:50、1:3〜1:1000、1:3〜1:100、1:3〜1:75、1:3〜1:50、1:5〜1:1000、1:5〜1:700、1:5〜1:75、又は1:5〜1:50の範囲である。グラフェン系材料がグラフェンである1つの実施形態において、グラフェン:カーボンブラックの重量比は、3:1〜1:1000、3:1〜1:100、3:1〜1:75、3:1〜1:50、2:1〜1:1000、2:1〜1:100、2:1〜1:75、2:1〜1:50、1:1〜1:1000、1:1〜1:100、1:1〜1:75、1:1〜1:50、1:2〜1:1000、1:2〜1:100、1:2〜1:75、1:2〜1:50、1:3〜1:1000、1:3〜1:100、1:3〜1:75、1:3〜1:50、1:5〜1:1000、1:5〜1:700、1:5〜1:75、又は1:5〜1:50の範囲である。
【0026】
1つの実施形態において、少なくとも1つのカーボンブラックは、30〜130cm
3/100g、40〜130cm
3/100g、例えば、30〜120cm
3/100g、40〜120cm
3/100g、30〜110cm
3/100g、又は40〜110cm
3/100gの範囲のOANを有する。OANは、ASTM D2414に従って決定することができる。
【0027】
1つの実施形態において、少なくとも1つのカーボンブラックは、3〜200m
2/g、3〜150m
2/g、3〜125m
2/g、3〜100m
2/g、5〜200m
2/g、5〜150m
2/g、5〜125m
2/g、5〜100m
2/g、7〜200m
2/g、7〜150m
2/g、7〜125m
2/g、又は7〜100m
2/gの範囲の統計厚さ表面積(STSA)を有する。STSAは、ASTM D6556に従って決定することができる。
【0028】
少なくとも1つのカーボンブラックは、ゴム強化のために使用されるものから選択することができる。例示のカーボンブラックとしては、Cabot Corporationから入手可能なRegal(登録商標)、Black Pearls(登録商標)、Spheron(登録商標)、Sterling(登録商標)、及びVulcan(登録商標)の商標の下で販売されるもの、Birla Carbonから入手可能なCV及びHVラインのRaven(登録商標)、Statex(登録商標)、Furnex(登録商標)、及びNeotex(登録商標)の商標の下で販売されるもの、Orion Engineered Carbonsから入手可能なCorax(登録商標)、Durax(登録商標)、Ecorax(登録商標)、及びPurex(登録商標)の商標の下で販売されるカーボンブラック、並びに、Cancarb Ltdから入手可能なThermax(登録商標)の商標の下で販売されるカーボンブラックが挙げられる。例示のカーボンブラックとしては、ASTM N100シリーズ〜N900シリーズのカーボンブラック、例えば、N300シリーズのカーボンブラック、N500シリーズのカーボンブラック、N600シリーズのカーボンブラック、N700シリーズのカーボンブラック、及びN900シリーズのカーボンブラック、例えばN330カーボンブラック、N326カーボンブラック、N339カーボンブラック、N539カーボンブラック、N550カーボンブラック、N660カーボンブラック、N774カーボンブラック及びN990カーボンブラックが挙げられる。
【0029】
コンパウンドは、カップリング剤、加硫剤、硬化剤、耐酸化剤、オゾン劣化防止剤、可塑剤、処理助剤(例えば、液体ポリマー、油)、樹脂、難燃剤、伸展油、潤滑剤、油増量剤、及び劣化防止剤から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含むことができる。1つの実施形態において、少なくとも1つの添加剤は、酸化亜鉛のような金属酸化物、ステアリン酸、加硫剤、硬化剤、可塑剤、耐酸化剤、及び促進剤から選択される。各添加剤は、少なくとも1つのエラストマーの量に対して0.1〜10phrの範囲の量、例えば、少なくとも1つのエラストマーの量に対して0.1〜5phr、0.1〜3phr又は0.1〜2phrの範囲の量で存在することができる。
【0030】
本明細書で開示されるエラストマーコンパウンドは、シーリング、絶縁、振動抑制、及び流体輸送の用途において様々な物品を製造するのに使用することができる。1つの実施形態では、本明細書で開示されるエラストマーコンパウンドを含む物品が提供される。例示の物品としては、Oリングシール及び封止剤、ガスケット、ダイアフラム、弁、液圧シール、膨潤パッカー(swell packers)、噴出防止装置、耐油性ホースライナーが挙げられる。物品の他の例としては、物品が高温で作動することができ、かつ、より低温にするために、効果的に熱を消散するのに高熱伝導率が望まれる自動車のボンネットの下で使用されるものが挙げられる。そのような物品としては、ワイヤハーネス、バッテリーケーブル、ターボホース、成形エアダクト、ブレーキ部品、グロメット、液圧ホース、ラジエーターホース、変速機シール、変速機ガスケット、エンジンマウント、シャーシ振動マウント、定速ジョイントブーツ、エンジンシール、及び燃料システム構成部材が挙げられる。これらの及び他の物品は、油/ガス、航空宇宙、及び自動車産業における用途を有することができる。本明細書で開示される物品は、使用温度での高シーリング効率、急速ガス減圧(RGD)耐性、及び高押出耐性の1つ又は複数を向上するための有益な特性を有することができる。
【0031】
本明細書でまた開示されるのは、エラストマーコンパウンドを製造する方法である。少なくとも1つのエラストマーと、少なくとも1つのグラフェン系材料と、少なくとも1つのカーボンブラックとを、当技術分野で公知の任意の方法により組み合わせることができる。成分は、溶液混合又は乾燥混合技術を用いて、連続して又は同時に加えることができる。
【0032】
乾燥したマスターバッチは、20℃以上の温度、例えば、20〜100℃又は30〜60℃の温度で、密閉式混合機(C.W.Brabender密閉式混合機)中で素練りすることができる。マスターバッチは、30秒間以上、1分間以上、又は50分間以上素練りすることができる。
【0033】
カーボンブラックを、粉末又はスラリーとして素練りマスターバッチに加え、その後、1分間以上、例えば2分間以上素練りすることができる。次いで、他の添加剤を加えて、本明細書で説明される素練りされた混合物を得ることができ、ここで他の添加剤とは、カップリング剤、加硫剤、硬化剤、耐酸化剤、オゾン劣化防止剤、可塑剤、処理助剤、樹脂、難燃剤、伸展油、潤滑剤、油増量剤、及び劣化防止剤のうち1つ又は複数であることができる。
【0034】
得られたエラストマーコンパウンドを、(例えばロールミルを用いて)シート状に巻きつけてマスターバッチ中のボイドを取り除くことができる。
【0035】
別の実施形態において、カーボンブラック及び添加剤のマスターバッチへの追加は、2段階プロセスで行うことができる。例えば、上述したように、グラフェン系材料/エラストマーマスターバッチにカーボンブラックを追加して、その後、上で説明したような金属酸化物、可塑剤、耐酸化剤、及び/又は促進剤を加えることができる。得られたコンパウンドをロールミルすることができ、次いで、混合チャンバー中に再導入して、本明細書で説明される条件下で素練りする。硬化剤を加えることができ、混合物が素練りされる。
【0036】
(1段階又は2段階プロセスを用いて)コンパウンドをロールミルした後、任意選択で液圧プレスを用いて、コンパウンドを型中で硬化させることで、そのコンパウンドを含む物品を形成することができる。後硬化プロセスをまた任意選択で行うことができる。
【0037】
別の実施形態において、少なくとも1つのグラフェン系材料及び少なくとも1つのカーボンブラックを、エラストマー溶液と組み合わせることができる。別の実施形態において、グラフェン系材料及び少なくとも1つのカーボンブラックを、乾燥混合技術を使用することでエラストマーと組み合わせることができる。また別の実施形態において、上で説明した手順を、カーボンブラック/エラストマーマスターバッチで行うことができる。
【実施例】
【0038】
溶液混合によって最初に調製したグラフェン系材料/エラストマーマスターバッチを用いてコンパウンドを調製した。得られたマスターバッチは、2段階混合プロセスを通じて、純ゴム、カーボンブラック、及び他の添加剤(例えば、金属酸化物、可塑剤、耐酸化剤、促進剤、及び硬化剤の1つ又は複数)と組み合わせた。使用した実際の成分、加えた量、及び反応条件は、具体的な例において提供される。
【0039】
例1:グラフェン系材料/NBRマスターバッチの調製
マスターバッチ調製で使用したグラフェン系材料は、グラファイト酸化物懸濁液を還元することで調製した還元グラフェン酸化物(rGO)であった。追加の詳細については、2015年2月6日に出願された米国仮特許出願第62/113106号明細書において参照することができ、その開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0040】
エラストマーアクリロニトリルブタジエンゴム(「NBR」;300g、Nipol(登録商標)DN3380エラストマー、Zeon Chemicals)を、1cmのエッジ長さを持つ立方体形状の小片に切り分けた。NBR片を、10:100の重量比でアセトンと混合した。NBR/溶媒混合物を、全てのNBRが溶媒中に完全に溶解するまで、オーバーヘッドシャフトスターラーで撹拌した。オーバーヘッド混合機の撹拌速度は、24〜48時間の範囲の時間にわたって100〜300rpmの範囲であった。
【0041】
rGO(19.5g)をNBR溶液(300gのNBRを含有)に加えて、6.5:100のrGO:NBR重量比を得た。この混合物を、20〜40分間の範囲の時間にわたり100〜300rpmの範囲の速度で撹拌した。
【0042】
次いで、脱イオン水をrGO/NBR溶液混合物に加えて、その間、混合物を300rpmでオーバーヘッドシャフト混合機を用いて撹拌した。約2:1の水/アセトン比を達成した際に、rGO/NBRマスターバッチが水/溶媒混合物から沈殿した。
【0043】
マスターバッチ内部にトラップされた過剰な水及び溶媒を、ポリプロピレンバッグ中でマスターバッチに圧力をかけることで取り除き、その後、72時間室温で良好に通気したフードにおいてマスターバッチを乾燥し、次いで、48時間真空下において60℃で真空オーブン中においてさらに乾燥した。
【0044】
AC.W.Brabender密閉式混合機を50℃に予備加熱した。次いで、マスターバッチを混合チャンバー中に供給して、50rpmで約5分間素練りして、結果としてrGO/NBRマスターバッチを得た。
【0045】
HNBR及びrGOを含有するマスターバッチを同様に作成することができる。
【0046】
例2:rGO/FKMマスターバッチの調製
フルオロエラストマー(「FKM」;300g、Viton(登録商標)GF−600Sフルオロエラストマー、Dupont)を、1cmのエッジ長さを持つ立方体形状の小片に切り分けた。FKM片を、20:100の重量比でアセトンと混合した。FKMが溶媒中で完全に溶解するまでFKM/溶媒混合物をオーバーヘッドシャフトスターラーで撹拌した。オーバーヘッド混合機の撹拌速度は、24〜48時間の範囲の時間にわたり100〜300rpmの範囲であった。
【0047】
rGO(18g)をFKM溶液(300gのFKMを含有)に加えて、6:100のrGo:FKM重量比を得た。混合物を、20〜40分間の時間にわたり100〜300rpmの範囲の速度で撹拌した。
【0048】
次いで、脱イオン水をrGO/FKM溶液混合物に加えて、その間、混合物を300rpmでオーバーヘッドシャフト混合機を用いて撹拌した。約2:1の水/アセトンを達成した際に、rGO/FKMマスターバッチが水/溶媒混合物から沈殿した。
【0049】
マスターバッチ内部にトラップされた過剰な水及び溶媒を、ポリプロピレンバッグ中でマスターバッチに圧力をかけることで取り除き、72時間室温で良好に通気したフードにおいてマスターバッチを乾燥し、次いで、48時間真空下において60℃で真空オーブン中においてさらに乾燥した。
【0050】
AC.W.Brabender密閉式混合機を50℃に予備加熱した。次いで、マスターバッチを混合チャンバー中に供給して、50rpmで約5分間素練りして、結果としてrGO/FKMマスターバッチを得た。
【0051】
例3:アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を含むコンパウンドの調製
本例では、NBRを含むコンパウンドを調製するためのプロセスを説明する。強化充填材として以下:カーボンブラックのみ(「対照CB試料1」)、rGOのみ(「対照rGO試料」)、並びに、カーボンブラック及びrGOの混合物を含有するrGO/NBR/CBコンパウンド(「試料A」)を含むゴムコンパウンドを評価した。
【0052】
【表1】
【0053】
段階1:ローラーブレードを備えたC.W.Brabender3ピース混合機(3−piece mixer)の混合チャンバーを50℃に予備加熱した。試料Aについて、例1のrGO/NBRマスターバッチを混合チャンバー中に供給し、その後、純NBRを追加した。マスターバッチ及び純NBR混合物を、60rpmの混合速度で約30秒間素練りした。次いで、カーボンブラック(Sterling(登録商標)6630カーボンブラック、ASTM N550、Cabot Corporation)をゆっくり混合チャンバー中に加えた。全てのカーボンブラックを加えた後、混合物を約2.5分間さらに素練りした。次いで、酸化亜鉛と、可塑剤としてアジピン酸ビス[2−(2−ブトキシエトキシ)エチル](Sigma−Aldrich)と、ステアリン酸とを混合チャンバーに加えた。混合物を約2分間さらに素練りした。得られたコンパウンドを混合チャンバーから取り除き、高温で2ロールミルを用いて0.25インチの厚さを有するシート状に粉砕した。ミルの温度は典型的に50℃で設定した。
【0054】
段階2:段階1と同様に混合チャンバーを50℃に予備加熱した。段階1から得たシートを混合チャンバー中に供給し、60rpmの混合速度で約30秒間素練りした。次いで、促進剤として硫黄及びCBTS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、Akrochem Corporation)を混合チャンバーに加えて、混合物を約2分間チャンバー内部でゴムコンパウンドと共に素練りした。コンパウンドをチャンバーから取り除き、50℃で2ロールミルを使用してシート(0.25インチの厚さ)状に粉砕した。
【0055】
CB試料1を以下の方法を使用して調製した。ローラーブレードを備えたC.W.Brabender3ピース混合機の混合チャンバーを50℃に予備加熱した。純NBRを混合チャンバー中に供給し、60rpmの混合速度で約30秒間素練りした。次いで、カーボンブラック(Sterling(登録商標)6630カーボンブラック、ASTM N550、Cabot Corporation)をゆっくり混合チャンバー中に加え、混合物を約2.5分間素練りした。次いで、酸化亜鉛と、可塑剤としてアジピン酸ビス[2−(2−ブトキシエトキシ)エチル](Sigma−Aldrich)と、ステアリン酸とを混合チャンバーに加え、混合物を約2分間素練りした。得られたコンパウンドを混合チャンバーから取り除き、高温で2ロールミルを用いて0.25インチの厚さを有するシート状に粉砕した。ミルの温度は典型的に50℃で設定した。
【0056】
対照rGO試料を以下の方法を使用して調製した。ローラーブレードを備えたC.W.Brabender3ピース混合機の混合チャンバーを50℃に予備加熱した。純NBRを混合チャンバー中に供給した。次いで、例1のrGO/NBRマスターバッチを加え、この混合物を60rpmの混合速度で約3分間素練りした。次いで、酸化亜鉛と、可塑剤としてアジピン酸ビス[2−(2−ブトキシエトキシ)エチル](Sigma−Aldrich)と、ステアリン酸とを混合チャンバーに加え、混合物を約2分間さらに素練りした。得られたコンパウンドを混合チャンバーから取り除き、高温で2ロールミルを用いて0.25インチの厚さを有するシート状に粉砕した。ミルの温度は典型的に50℃で設定した。
【0057】
2500psiのラム圧力で150℃において液圧プレスを使用してコンパウンドを硬化した。表2は、コンパウンド中の、ゴム100部あたりの重量(phr)での成分を挙げる。
【0058】
【表2】
【0059】
表2のコンパウンドの引張強度(ASTM D412)及びショアA硬さ(ASTM D2240)は、表3(室温)及び表4(100℃)に示される。
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
試料Aの引張弾性率は、両方の試料が同一量の全体強化添加剤を有するにもかかわらず、同一の割合の伸びで対照CB試料1の弾性率の2倍超であることが表3及び4から理解することができる。この弾性率の増加は、このゴム組成物から作られたOリングの急速ガス減圧耐性及び押出耐性を順番に増加させることができる。さらに、試料Aの引張強度は、対照rGO試料の引張強度より極めて高い。両方の試料は、同一充填量のrGOを有し、試料Aは追加の43.5phrカーボンブラックを有する。
【0063】
これらの観測は、対照試料間での比較により説明することができる。対照rGO試料(0カーボンブラック量)は、同一の割合の伸びにおいて、対照CB試料1(43.5phrカーボンブラック)より高い引張弾性率を有し、対照CB試料1の引張強度は対照rGO試料の引張強度より大きい。この例により、高レベルでエラストマーコンパウンドの引張強度を維持しつつ、高温エラストマーの引張弾性率を向上するための2つの強化添加剤としてグラフェン系材料及びカーボンブラックを使用する相乗的効果が示された。
【0064】
例4:フルオロエラストマー(FKM)を含むコンパウンド
2種のグラフェン系材料を使用してフルオロエラストマーを含むコンパウンドを形成した。試料Bは、例1で説明した還元グラフェン酸化物を含み、例2のrGO/FKMマスターバッチから調製した。試料Cは、機械的に製造したグラフェン集合体(Cabot Corporation)を含み、FKM純ゴム(Dupont製のViton(登録商標)GF−600Sフルオロエラストマー)をグラフェン集合体粉末(20phr)と混合することで調製した。両試料B及びCについては、使用したカーボンブラックはASTM N990カーボンブラック(Cancarb Ltd.製のThermax(登録商標)N990カーボンブラック)であった。追加の成分は、酸化亜鉛、Luperox(登録商標)101XL45過酸化物加硫剤(Arkema)及びDIAK(登録商標)No.7硬化性助剤(Dupont)であった。それぞれの追加成分の重量(g)は表5に示される。
【0065】
【表5】
【0066】
試料Bは表5で示されたような成分を溶融混合することで調製した。カムブレードを備えたC.W.Brabender調製混合機(Prep−Mixer)の混合チャンバーを、チャンバーの壁を通じて冷却水を走らせることで20℃にまず冷却した。例2のrGO/FKMマスターバッチを混合チャンバー中に供給して、その後、純FKMを追加した。マスターバッチ及び純FKM混合物を、40rpmの混合速度で約30秒間素練りした。カーボンブラック(Cancarb Ltd.製のThermax(登録商標)N990カーボンブラック)をこの混合物にゆっくり加え、混合物を約2.5分間素練りした。次いで、Luperox(登録商標)101XL45過酸化物加硫剤(Arkema)及びDIAK(登録商標)No.7硬化性助剤(Dupont)を混合物に加えて、2分間素練りした。チャンバーからコンパウンドを取り除き、50℃で2ロールミルを使用してシート(0.25インチの厚さ)状に粉砕した。
【0067】
試料Cを、マスターバッチを使用せずに使用Bと同一の方法で調製した。C.W.Brabender調製混合機の混合チャンバーを、チャンバーの壁を通じて冷却水を走らせることで20℃にまず冷却した。純FKMを混合チャンバー中に供給して、40rpmの混合速度で約30秒間素練りした。次いで、グラフェン集合体を混合チャンバーにゆっくり加え、その後、カーボンブラック(Cancarb Ltd.製のThermax(登録商標)N990カーボンブラック)をゆっくり加えた。この混合物を約2.5分間素練りした。次いで、Luperox(登録商標)101XL45過酸化物加硫剤(Arkema)及びDIAK(登録商標)No.7硬化性助剤(Dupont)を混合物に加えて、2分間素練りした。チャンバーからコンパウンドを取り除き、50℃で2ロールミルを使用してシート(0.25インチの厚さ)状に粉砕した。
【0068】
対照CB試料2を、グラフェン集合体を加えることなく、試料Cとして同一の方法で調製した。C.W.Brabender調製混合機の混合チャンバーを、チャンバーの壁を通じて冷却水を走らせることで20℃に冷却した。純FKMを混合チャンバー中に供給して、40rpmの混合速度で約30秒間素練りした。カーボンブラック(Cancarb Ltd.製のThermax(登録商標)N990カーボンブラック)をゆっくり加え、混合物を約2.5分間素練りした。次いで、Luperox(登録商標)101XL45過酸化物加硫剤(Arkema)及びDIAK(登録商標)No.7硬化性助剤(Dupont)を混合チャンバーに加えられ、混合物を2分間素練りした。チャンバーからコンパウンドを取り除き、50℃で2ロールミルを使用してシート(0.25インチの厚さ)状に粉砕した。
【0069】
2500psiのラム圧力で157℃において液圧プレスを使用することで、コンパウンドを成形及び硬化させて、6インチ×6インチ正方形シートを得た。次いで、硬化したシートを、窒素パージ下で232℃において2時間通気性のあるオーブン中で後硬化した。
【0070】
強化充填材として以下:カーボンブラックのみ(「対照CB試料2」)、及び本明細書で説明されるようなカーボンブラックとグラフェン系材料との混合物(「試料B」及び「試料C」)を含む、FKM含有コンパウンドを調製した。各配合物については、具体的な成分を表6に示し、量をゴム100部あたりの重量で「部」で表した。
【0071】
【表6】
【0072】
表6のコンパウンドにおける室温での引張強度(ASTM D412)及びショアA硬さ(ASTM D2240)を表7に示す。
【0073】
【表7】
【0074】
表6のコンパウンドにおける200℃での引張強度(ASTM D412)及び引裂強度(ASTM D624)を表8に示す。
【0075】
【表8】
【0076】
表7及び8から、試料Bの弾性率が、両方の試料が同一の全体充填量の強化添加剤(30phr)を有するにもかかわらず、同一の伸びにおいて、室温及び高温の両方で対照CB試料2の弾性率より70%大きいことを理解することができる。試料Bの引張強度はまた、200℃において、対照CB試料2の引張強度より70%大きい。試料Bの引裂強度は、200℃において、対照CB試料2の引裂強度より40%大きい。
【0077】
試料Cの弾性率及び引張強度は、両方の試料が同一の全体充填量の強化添加剤(30phr)を有するにもかかわらず、室温(表7)及び高温(表8)の両方において、対照CB試料2の弾性率及び引張強度より大きい。さらに、試料Cの引裂強度は、200℃において、対照CB試料2の引裂強度より30%大きい。
【0078】
本明細書における例で議論したこれらの特性の向上を、グラフェン系材料/カーボンブラック混合物を使用することで得た。引張及び弾性率特性、ショアA硬さ、並びに改善した引裂強度のうちの1つ又は複数の向上は、室温及び高温の両方において組成物から作られた成分の性能を向上させることができる。
【0079】
「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」という用語の使用は、本明細書で別段の指摘がないか又は文脈によって明確に否定されない限り、単数及び複数の両方を包含すると解されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」という用語は、特に断りのない限り、制限のない用語(すなわち、「含むが、限定されない」ことを意味する)として解されるべきである。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で別段の指摘がない限り、単に範囲内に入っているそれぞれ独立した値を個々に言及することの省略方法として機能することを意図しており、それぞれの独立した値は、まるでそれが本明細書で個々に列挙されたかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書で別段の指摘がないか又は文脈によって明確に否定されない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供される任意の及び全ての例又は例示的な語(例えば、「のような(such as)」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、特許請求の範囲に別段の記載がない限り、本発明の範囲に関する限定をもたらすものではない。本明細書中の如何なる言語も、特許請求の範囲に記載されていない任意の要素を本発明の実施に必須であるものとして示すと解されるべきではない。
本発明の実施形態としては、以下の実施形態を挙げることができる。
(付記1)
以下:
(a)15ポイント以下のデュロメーター硬さの変化、
(b)40%以下の引張強度の変化、及び
(c)40%以下の極限伸びの変化
から選択される特性のうち少なくとも1つを示すように、100℃で70時間の加熱に耐性がある少なくとも1つのエラストマーと、
前記少なくとも1つのエラストマーに対して0.01〜30phrの範囲の量で存在する少なくとも1つのグラフェン系材料と、
前記少なくとも1つのエラストマーに対して15〜150phrの範囲の量で存在する少なくとも1つのカーボンブラックとを含む、エラストマーコンパウンド。
(付記2)
100℃に70時間さらされた後に、前記少なくとも1つのエラストマーが、特性(
a)〜(c)のそれぞれを示す、付記1に記載のコンパウンド。
(付記3)
前記少なくとも1つのエラストマーが、1,3−ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2,3−ジアルキル−1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、エチレン、及びプロピレンから選択され、アルキルがC1〜C6アルキルから選択される少なくとも1つのモノマーを含むポリマー及びゴムから選択される、付記1又は2に記載のコンパウンド。
(付記4)
前記少なくとも1つのエラストマーが、ポリクロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、フルオロエラストマー、ペルフルオロエラストマー、エチレン/アクリル酸エラストマー、高温スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソプレン、及びエチレン−プロピレンゴムから選択される、付記1〜3のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記5)
前記少なくとも1つのエラストマーが、ポリクロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、フルオロエラストマー、ペルフルオロエラストマー、及びエチレン/アクリル酸エラストマーから選択される、付記1〜3のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記6)
前記少なくとも1つのグラフェン系材料が、グラフェン、グラフェン酸化物、及び還元グラフェン酸化物から選択される、付記1〜5のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記7)
前記少なくとも1つのグラフェン系材料が、グラフェン及び還元グラフェン酸化物から選択され、40〜1600m2/gの範囲のBET表面積を有する、付記1〜5のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記8)
前記少なくとも1つのグラフェン系材料が、グラフェン及び還元グラフェン酸化物から選択され、200〜800m2/gの範囲のBET表面積を有する、付記1〜5のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記9)
前記少なくとも1つのグラフェン系材料がグラフェンから選択される、付記1〜8のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記10)
前記グラフェンがグラフェン集合体を含む、付記9に記載のコンパウンド。
(付記11)
前記少なくとも1つのグラフェン系材料がグラフェンから選択され、前記少なくとも1つのグラフェン系材料:カーボンブラックの重量比が2:1〜1:1000の範囲である、付記1〜10のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記12)
前記少なくとも1つのグラフェン系材料が、グラフェン酸化物及び還元グラフェン酸化物から選択される、付記1〜8のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記13)
前記少なくとも1つのグラフェン系材料が、少なくとも1.5:1の炭素:酸素原子比を有するグラフェン酸化物から選択される、付記1〜8のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記14)
前記炭素:酸素原子比が、1.5:1〜5:1の範囲である、付記13に記載のコンパウンド。
(付記15)
前記少なくとも1つのグラフェン系材料が、少なくとも5:1の炭素:酸素原子比を有する還元グラフェン酸化物から選択される、付記1〜8のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記16)
前記炭素:酸素原子比が、5:1〜1000:1の範囲である、付記15に記載のコンパウンド。
(付記17)
前記少なくとも1つのグラフェン系材料が、グラフェン酸化物及び還元グラフェン酸化物から選択され、カーボンブラックの量が、前記少なくとも1つのグラフェン系材料の量より多い、付記1〜8及び11〜16のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記18)
前記少なくとも1つのグラフェン系材料:カーボンブラックの重量比が、1:2〜1:1000の範囲である、付記17に記載のコンパウンド。
(付記19)
(a)デュロメーター硬さの変化が10ポイント以下である、付記1〜18のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記20)
(b)引張強度の変化が35%以下である、付記1〜19のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記21)
(c)極限伸びの変化が35%以下である、付記1〜20のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記22)
前記少なくとも1つのグラフェン系材料が、10nm〜10μmの範囲の横方向ドメインサイズを有する、付記1〜21のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記23)
前記少なくとも1つのカーボンブラックが、30〜130cm3/gの範囲のOANを有する、付記1〜22のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記24)
前記少なくとも1つのカーボンブラックが、3〜200m2/gの範囲のSTSA表面積を有する、付記1〜23のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記25)
前記少なくとも1つのカーボンブラックが、ASTM N330、ASTM N326、ASTM N339、ASTM N539、ASTM N550、ASTM N660、ASTM N774、及びASTM N990のカーボンブラックから選択される、付記1〜24のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記26)
前記少なくとも1つのグラフェン系材料及び前記少なくとも1つのカーボンブラックの全体充填量が、15〜150phrの範囲である、付記1〜25のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記27)
前記少なくとも1つのグラフェン系材料及び前記少なくとも1つのカーボンブラックの全体充填量が、15〜100phrの範囲である、付記1〜25のいずれか1つに記載のコンパウンド。
(付記28)
付記1〜26のいずれか1つに記載のエラストマーコンパウンドを含む物品。
(付記29)
前記物品が、Oリング、封止剤、ガスケット、ダイアフラム、弁、液圧シール、膨潤パッカー、噴出防止装置、及び耐油性ホースライナーから選択される、付記28に記載の物品。
(付記30)
前記物品が、ワイヤハーネス、バッテリーケーブル、ターボホース、成形エアダクト、ブレーキ部品、グロメット、液圧ホース、ラジエーターホース、変速機シール、変速機ガスケット、エンジンマウント、シャーシ振動マウント、定速ジョイントブーツ、エンジンシール、及び燃料システム構成部材から選択される、付記28に記載の物品。
(付記31)
少なくとも1つのエラストマーを、少なくとも1つのグラフェン系材料及び少なくとも1つのカーボンブラックと組み合わせてエラストマーコンパウンドを形成する組み合わせ工程を含む、エラストマーコンパウンドを製造する方法であって、
前記少なくとも1つのエラストマーが、以下:
(a)15ポイント以下のデュロメーター硬さの変化、
(b)40%以下の引張強度の変化、及び
(c)40%以下の極限伸びの変化
から選択される特性のうち少なくとも1つを示すように、100℃で70時間の加熱に耐性があり、
前記少なくとも1つのグラフェン系材料が、前記少なくとも1つのエラストマーに対して0.1〜3phrの範囲の量で存在し、
前記少なくとも1つのカーボンブラックが、前記少なくとも1つのエラストマーに対して15〜150phrの範囲の量で存在する、方法。
(付記32)
前記組み合わせ工程が、
前記少なくとも1つのエラストマーを前記少なくとも1つのグラフェン系材料と組み合わせることでマスターバッチを形成することと、
前記マスターバッチを前記少なくとも1つのカーボンブラックと組み合わせることとを含む、付記31に記載の方法。