特許第6802285号(P6802285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧 ▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

特許6802285自動車用駆動システムにおけるギヤ段切換の実行方法および装置
<>
  • 特許6802285-自動車用駆動システムにおけるギヤ段切換の実行方法および装置 図000002
  • 特許6802285-自動車用駆動システムにおけるギヤ段切換の実行方法および装置 図000003
  • 特許6802285-自動車用駆動システムにおけるギヤ段切換の実行方法および装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802285
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】自動車用駆動システムにおけるギヤ段切換の実行方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/00 20060101AFI20201207BHJP
   F16H 59/42 20060101ALI20201207BHJP
   F16H 59/70 20060101ALI20201207BHJP
   F16H 61/04 20060101ALI20201207BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   F02D29/00 F
   F16H59/42
   F16H59/70
   F16H61/04
   F16H63/50
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-547444(P2018-547444)
(86)(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公表番号】特表2019-512637(P2019-512637A)
(43)【公表日】2019年5月16日
(86)【国際出願番号】EP2017055075
(87)【国際公開番号】WO2017153295
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2018年9月7日
(31)【優先権主張番号】102016204080.4
(32)【優先日】2016年3月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト,ザシャ
(72)【発明者】
【氏名】中村 明
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−148190(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102010063043(DE,A1)
【文献】 特開2001−328461(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/153419(WO,A1)
【文献】 特開2010−7711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00
F16H 59/00−63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機関(2)がクラッチ(4)を介してギヤ変速機(5)と結合され、クラッチは駆動システム(1)の駆動系を開閉するように作動する、駆動機関(2)およびギヤ変速機(5)を有する駆動システムの運転方法において、
摩擦結合遮断ないしはクラッチ操作が検出された時の実際車両速度と、少なくとも1つのギヤ段だけアップシフトしたときの変速比から求めた回転数を中間回転数(N1)とし、前記中間回転数(N1)に目標回転数(nsoll)を設定(S2)するステップと、
駆動系が開放されたとき、駆動機関(2)に対する回転数制御を操作(S3)するステップであって、回転数制御に、調節されるべき目標回転数(nsoll)が提供されるステップと、
変速機入力回転数(nTra_in)の勾配に依存して、選択されたまたは投入されるべきギヤ段を決定するギヤ段検出(S5)をするステップと、
ギヤ段のアップシフトまたは保持が検出されたとき(A2)、ギヤ変速機(5)がニュートラルギヤ位置を離れた後で、変速機入力回転数(nTra_in)が中間回転数(N1)を下回ったときに、変速機入力回転数(nTra_in)を目標回転数(nsoll)に設定(S7)するステップと、
を含む、駆動システムの運転方法。
【請求項2】
前記目標回転数(nsoll)は、ギヤ段のダウンシフトが検出されたとき、ギヤ変速機(5)のニュートラルギヤ位置を離れた後に、実際の変速機入力回転数(nTra_in)に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ニュートラルギヤ位置は、変速機入力と変速機出力の間にトルク結合が発生しないギヤ変速機(5)の位置に対応する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記変速機入力回転数(nTra_in)の勾配が所定の第1勾配しきい値を超えたとき、ギヤ段のダウンシフトが検出され、および/または、前記変速機入力回転数(nTra_in)の勾配が所定の第2勾配しきい値を下回ったとき、ギヤ段のアップシフトが検出される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
開放された駆動系において、第1信号により、機関回転数および変速機入力回転数(nTra_in)が同期化されていないことが信号され、および開放された駆動系において、第2信号により、機関回転数および前記変速機入力回転数(nTra_in)が同期化されていることが信号される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1信号は、特に第1カラーの1つの視覚指示を含み、および第2信号は、特に第2カラーの他のまたは同一視覚指示を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
駆動機関(2)がギヤ変速機(5)から切り離されている間、中断条件が存在したとき、特に駆動系が開放されている時間がしきい値を超えたとき、回転数制御が中断される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
駆動系の開放直後にシリンダ充填が上昇される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
駆動機関(2)がクラッチ(4)を介してギヤ変速機(5)と結合され、クラッチ(4)は駆動システム(1)の駆動系を開閉するように作動する、駆動機関(2)およびギヤ変速機(5)を有する駆動システムの運転装置において、
請求項1〜のいずれか一項に記載の方法を実行する、
ことを特徴とする駆動システムの運転装置。
【請求項10】
駆動機関(2)と、
ギヤ変速機(5)と、
それを介して駆動機関(2)がギヤ変速機(5)と結合可能なクラッチ(4)と、
駆動機関(5)を制御する機関制御ユニット(10)と、
請求項に記載の装置と、を含む駆動システム(1)。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか一項に記載の方法を実行するプログラムコードを含むコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータプログラムが記憶されている、マシンが読取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に手動ギヤ変速機を有する自動車用駆動システムに関する。さらに、本発明は、手動ギヤ変速機によるギヤ段の切換の間における自動車用駆動システム内の駆動機関の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用駆動システムは、駆動機関により提供される駆動出力を自動車の被駆動車輪に最適に伝達可能にするために、一般にギヤ変速機を有する。ギヤ変速機のギヤ段、すなわちギヤ変速機の減速を切り換えるために、手動ギヤ変速機に対して、ドライバの希望トルクを駆動機関に設定するためのアクセルペダルを放し、駆動機関の被駆動系およびギヤ変速機を有する駆動系が切り離されるようにクラッチを切り離すためにクラッチペダルを操作し、かつ選択されるべきギヤ段の選択および投入後に、クラッチペダルの操作の解除によりクラッチを再び結合するように実行可能である。この場合、駆動機関の機関回転数は、クラッチの、ギヤ変速機に付属された側の回転数、いわゆる変速機入力回転数に適合される。クラッチ結合過程の間に駆動機関の機関回転数および変速機入力回転数が同一でない場合、例えば反動等のような不快な負荷切換応答が発生することがある。
【0003】
文献独国特許出願公開第102010063043号明細書から、駆動機関の回転数を適合させるために、ギヤ変速機のクラッチ切離し状態の間に回転数制御が操作される方法が既知である。駆動機関の回転数の適合は、駆動機関の回転数が、車両速度および投入ギヤ段に依存した中間回転数に制御されることにより実行される。中間回転数は、クラッチ切離し時の駆動機関の回転数と、ギヤ段の切換後のクラッチ結合後に予想される駆動機関の回転数との間に位置する。中間回転数は、クラッチ切離し時の駆動機関の初期回転数と、ギヤ段の切換後の変速機入力回転数との間の範囲内に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102010063043号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明により、請求項1に記載の手動ギヤ変速機を有する駆動システム内の駆動機関の運転方法並びに他の請求項に記載の対応装置および駆動システムが提供されている。
他の形態が従属請求項に記載されている。
【0006】
第1態様により、駆動機関がクラッチを介してギヤ変速機と結合され、クラッチは駆動システムの駆動系を開閉するように作動する、駆動機関およびギヤ変速機を有する駆動システムの運転方法が提供されている。
【0007】
この方法は、
駆動系が開放されたとき、駆動機関に対する回転数制御を操作するステップであって、回転数制御に、設定されるべきギヤ段に依存した、調節されるべき目標回転数が提供されるステップと、
変速機のニュートラルギヤ位置を離れている間に発生する変速機入力回転数の勾配に依存して目標回転数を設定するステップと、
を含む。
【0008】
上記の方法の考え方は、シフト過程の間に、手動ギヤ変速機のギヤ段の切換後に設定される駆動機関の回転数が変速機入力回転数に設定されるように回転数制御を実行することにある。上記の方法は、クラッチの切離し状態において、回転数制御に対する目標回転数が、投入されるべきギヤ段の検出後に、変速機入力回転数に設定され、かつできるだけクラッチの結合前にドライバにより調節されるように、この目標回転数を決定することにより実行される。このために、ギヤ段の切換はニュートラルギヤセンサにより検出され、ニュートラルギヤセンサにより、手動ギヤ変速機内のギヤ段を離れたことが検出可能である。ニュートラルギヤを離れたとき、変速機の入力側の変速機入力回転数の評価により、このとき、ギヤ段がいずれの方向に変化されたか、すなわち、ギヤ段がアップシフトにより変化されたかまたはダウンシフトにより変化されたかが検出可能である。
【0009】
駆動機関の機関回転数および変速機入力回転数が同期化されているように、機関回転数を変速機入力回転数に調節する過程の終了を視覚化することにより、自動車のドライバに、快適なクラッチ再結合がいつ可能であるかを知らせることが可能である。
【0010】
さらに、目標回転数は、駆動系の開放時でかつギヤ変速機のニュートラルギヤ位置を離れる前に、少なくとも1つのギヤ段だけアップシフトした変速比および車両速度、特にニュートラルギヤ位置の投入時の車両速度から得られる回転数に対応する中間回転数に設定されてもよい。
【0011】
目標回転数は、ギヤ段のアップシフトが検出されたとき、ギヤ変速機のニュートラルギヤ位置を離れた後に、変速機入力回転数に、または変速機入力回転数および中間回転数の最小値に設定されるように設計されていてもよい。
【0012】
特に、目標回転数は、ギヤ段のダウンシフトが検出されたとき、ギヤ変速機のニュートラルギヤ位置を離れた後に、実際の変速機入力回転数に設定されてもよい。
一実施形態により、ニュートラルギヤ位置は、変速機入力と変速機出力の間にトルク結合が発生しないギヤ変速機の位置に対応してもよい。
【0013】
変速機入力回転数の勾配が所定の第1勾配しきい値を超えたとき、ギヤ段のダウンシフトが検出されてもよく、および/または変速機入力回転数の勾配が所定の第2勾配しきい値を下回ったとき、ギヤ段のアップシフトが検出される。
【0014】
一実施形態により、開放された駆動系において、第1信号により、機関回転数および変速機入力回転数が同期化されていないことが信号され、および開放された駆動系において、第2信号により、機関回転数および変速機入力回転数が同期化されていることが信号される。
【0015】
特に、第1信号は、特に第1カラーの1つの視覚指示を含み、および第2信号は、特に第2カラーの他のまたは同一視覚指示を含んでもよい。
駆動機関がギヤ変速機から切り離されている間、中断条件が存在したとき、特に駆動系が開放されている時間がしきい値を超えたとき、回転数制御が中断されるように設計されていてもよい。
【0016】
他の態様により、駆動機関がクラッチを介してギヤ変速機と結合され、クラッチは駆動システムの駆動系を開閉するように作動する、駆動機関およびギヤ変速機を有する駆動システムの運転装置が提供される。
【0017】
この装置は、
駆動系が開放されたとき、駆動機関に対する回転数制御を操作するように形成され、回転数制御に、設定されるべきギヤ段に依存した、調節されるべき目標回転数が提供され、および
ギヤ変速機のニュートラルギヤ位置を離れている間に発生する変速機入力回転数の勾配に依存して目標回転数を設定するように、
形成されている。
【0018】
他の態様により、
駆動機関と、
変速機と、
それを介して駆動機関が変速機と結合可能なクラッチと、
駆動機関を制御する機関制御ユニットと、
上記装置と、を含む駆動システムが提供されている。
【0019】
以下に実施形態が添付図面により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、自動車用駆動システムの概略図を示す。
図2図2は、手動ギヤ変速機内のギヤ段の一例示切換方法を説明する流れ図を示す。
図3図3は、機関回転数、変速機入力回転数、変速機入力回転数の勾配および内燃機関の充填の線図の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に、自動車用駆動システム1の概略図が示されている。駆動システム1は、例えば内燃機関として形成されていてもよい駆動機関2を含む。駆動機関2の被駆動系3は手動で操作可能なクラッチ4を介して変速機5と結合されている。クラッチ4は例えば通常のディスククラッチとして形成され、かつ例えば機械的にクラッチペダル6と連結され、これにより、クラッチ4はクラッチペダル6を操作したときに切り離され、すなわち駆動系3は開放され、クラッチペダル6を放したときにクラッチが結合され、すなわち駆動系3は閉鎖する。
【0022】
変速機5は、例えばシフトレバーのような操作ユニット7によりギヤ段の選択が実行可能なギヤ変速機である。シフトは、一般に、被駆動系3がトルクのない状態で、すなわちクラッチ4が切り離された状態で行われる。
【0023】
変速機5の出力側で、被駆動系3は、提供されたトルクを車両の駆動車輪8に供給する。駆動トルクを被駆動軸3に提供するために、駆動機関2は機関制御装置10により制御される。ドライバの希望トルクをアクセルペダル位置の指示の形で機関制御装置10に設定する駆動トルクの設定は、アクセルペダル11を介して行われる。ドライバの希望トルクに依存して駆動機関2は制御され、かつ駆動機関はドライバの希望トルクに対応する駆動トルクを提供する。
【0024】
さらに、車両の車両速度を低下させるために、ブレーキシステム13と連結されたブレーキペダル12が設けられている。ブレーキペダル12は、さらに、同様に、ブレーキ係合に関する情報がそこに存在するように機関制御装置10と結合されている。
【0025】
機関制御装置10は、変速機入力回転数センサ14を介して、ギヤ変速機5の入力側の回転数として変速機入力側回転数を検出可能である。
さらに、ギヤ変速機5またはその代わりに操作ユニット7は、ニュートラルギヤセンサ15を有し、シフト過程によりギヤ段を離れた後にニュートラルギヤが投入されたとき、すなわち変速機5の入力側と出力側の間にトルク連結が存在しなくなったことがニュートラルギヤセンサにより決定可能である。さらに、ニュートラルギヤを再び離れたとき、特にドライバが設定されるべきギヤ段を操作ユニット7により選択したときに特に何が行われたかがニュートラルギヤセンサにより決定可能である。
【0026】
シフト過程の間における制御において、機関回転数制御装置の出力トルクは計算された目標回転数に依存して決定されるので、回転速度制御に対する目標回転数の計算は重要である。以下に、回転数制御に対する目標回転数の確実かつ一義的な決定がそれにより提供されかつ同時に回転数制御ができるだけ良好に支援される方法が説明される。特に、以下に説明される方法において、駆動機関として内燃機関(オットー機関)から出発される。
【0027】
図2に、ギヤ段の切換における駆動機関の運転方法を説明する流れ図が示されている。
ステップS1において、駆動系の摩擦結合遮断ないしはクラッチ操作が存在するか否かが検査される。それに対応して、これを示すクラッチ情報が発生される。摩擦結合遮断ないしはクラッチ操作は、クラッチペダル6がドライバにより操作されたか否かが検査されることにより決定可能である。
【0028】
ドライバがクラッチペダル6を操作したことは、種々の方法で検出されてもよい。最も簡単な方法においては、クラッチペダル6に、クラッチペダル6の操作を信号するクラッチスイッチが設けられていてもよい。
【0029】
その代わりにまたはそれに追加して、クラッチペダル6に、クラッチペダル6の位置を与えるクラッチペダルストロークセンサが設けられていてもよく、これにより、クラッチペダルストロークセンサにより検出されたクラッチペダル6の位置データの変化により、クラッチペダル6の操作ないしは摩擦結合遮断が推測可能である。
【0030】
その代わりに、クラッチ4の操作がクラッチ滑りの決定により検出されてもよい。クラッチ4によるクラッチ滑りないしは摩擦結合遮断は、既知のように、機関回転数の、駆動車輪8の車輪速度に対する比から計算可能である。
【0031】
その代わりにまたはそれに追加して、変速機入力回転数センサ14により測定された、変速機5の入力側における変速機入力回転数が機関回転数と比較されてもよい。このために、摩擦結合遮断を検出するために、機関回転数が観測されてもよい。機関回転数がクラッチペダル6の操作直後においてクラッチペダル6の操作直前よりもより急速に上昇した場合、これにより摩擦結合遮断が検出される。
【0032】
さらに、操作ユニット7がニュートラルギヤに対する位置に移動されかつこれがニュートラルギヤセンサ15により検出されたとき、ニュートラルギヤセンサ15により、摩擦結合遮断ないしはクラッチの切離しが検出可能である。
【0033】
ステップS1において、摩擦結合遮断ないしはクラッチ操作が検出された場合(分岐Ja)、方法はステップS2により継続される。他の場合、ステップS1に戻される。
ステップS2において目標回転数nSollが決定される。目標回転数nSollは、はじめに、ドライバが次に高いギヤ段にシフトしたときに設定される機関回転数に対応する所定の中間回転数N1に設定される。中間回転数N1は、クラッチの切離し前に既知の変速機変速比において投入されるべきギヤ段の検出および車両速度を介して計算可能である。この中間回転数N1は、所定の変速比に基づいて、クラッチ4の開放時点における機関回転速度より常に小さい。
【0034】
ステップS3において、ほぼ同時に、回転数制御が操作される。したがって、はじめに、回転数制御は目標回転数nSollとして中間回転数N1を受け取る。目標回転数nSollはクラッチの切離しの直後においては駆動機関2の機関回転数nより小さいので、はじめは回転数制御が作動せず、駆動機関2は駆動トルクを提供せず、すなわち、駆動機関としての内燃機関の場合、これは燃料カットの運転状態にある。燃料カット状態においては、内燃機関内に燃料が噴射されない。
【0035】
内燃機関としてのオットー機関の場合、追加トルクが設定されることなく、絞り弁の開放を介して、さらにシリンダ内への充填が上昇可能である。シリンダ内への充填の上昇は、機関回転数が急速に上昇されなければならない場合に、急速なトルク上昇を可能にする。
【0036】
ステップS4において、手動ギヤ変速機5のニュートラルギヤを離れているか否かを検出するために、ニュートラルギヤセンサ15が問い合わされる。ドライバが新しいギヤ段を選択したとき、操作ユニット7は常にニュートラルギヤ位置を通過する。ギヤ段を切り換えることなくはじめに選択されたギヤ段を再投入することをドライバが決定したときもまた同じである。したがって、ニュートラルギヤを離れたことにより新たなギヤ段が選択されたことが一義的に検出可能である。ニュートラルギヤを離れ、したがって新たなギヤ段が選択されたとき(分岐Ja)、方法はステップS5により継続され、その他の場合は、回転数制御の操作を保持するためにステップS4に戻される。
【0037】
ニュートラルギヤを離れた時点の情報により、変速機入力回転数の特性をより良好に示すことが可能である。ギヤ段の変化の方向、すなわちドライバがより高いギヤ段にシフトしたかまたはより低いギヤ段にシフトしたかは、変速機入力回転数の勾配により確実に決定可能である。したがって、ドライバがより低いギヤ段を選択しかつ設定したときに機関回転数を多少ともより高い目標回転数に制御するために必要となる遅れ時間を最小にするために、ギヤ段の変化の早い検出が重要である。ニュートラルギヤ位置を離れたことを検出することにより、新たなギヤ段が投入されたことが直接検出可能である。
【0038】
ステップS5において、選択されたまたは投入されるべきギヤ段を決定するギヤ段検出が実行される。ギヤ段検出は、測定された変速機入力回転数の勾配に基づいている。変速機入力回転数の勾配が所定の第1勾配しきい値を超えたとき、ギヤ段のダウンシフトが検出される。ダウンシフトが検出された場合(分岐A1)、ステップS6において、回転数制御に対する目標回転数nSollは直接実際の変速機入力回転数nTra_inに設定される。これにより、目標回転数nSollは、さらに同期化されるべき目標回転数の値に対応する。
【0039】
予め行われた内燃機関のシリンダ内への充填の上昇により、直ちに本質的により大きい機関トルクが提供可能であるので、機関回転数nは所定の目標回転数nSollにできるだけ急速に適合される。
【0040】
ギヤ段のダウンシフトではなく、ギヤ段のアップシフトまたは保持が検出されたとき(分岐A2)、すなわち、変速機入力回転数nTra_inの経過の評価により得られた変速機入力回転数nTra_inの勾配が0または所定の第2勾配しきい値より小さいとき、目標回転数nSollは実際の変速機入力回転数nTra_inに設定されないで、中間回転数N1および変速機入力回転数nTra_inからの最小値に設定される。これにより、変速機入力回転数nTra_inが次に高いギヤ段に対する中間回転数N1を下回るまでの間、待機される。このときはじめて、目標回転数nSollが変速機入力回転数nTra_inに等しく設定されかつ目標回転数nSollとしてこの機関回転数に制御される。さらに、アップシフトにおける回転数制御に対しては上昇された機関トルクは必要とされないので、予め上昇された内燃機関のシリンダ内の充填は直接再び低減される。
【0041】
回転数制御に対して最初に中間回転数N1を使用することにより、次のギヤ段が投入される前において、次に高いギヤ段に対して計算された中間回転数N1までの間のみ機関回転数が最大に低下されることが達成される。これは、特に、ドライバによるギヤ段の選択が時間的に遅れるときに重要である。ここでドライバが次に低いギヤ段にシフトしたとき、得られた回転数偏差はより小さい。ドライバが次に高いギヤ段にシフトした場合、機関回転数は既に正しい回転数レベルにありかつより小さい補正を必要とするにすぎない。
【0042】
アップシフトが検出された場合(分岐A2)、すなわち、変速機入力回転数の勾配が適用可能な第2勾配しきい値より小さい場合、ステップS7において、目標回転数nSollはステップS2において決定された中間回転数N1を維持する。したがって、ギヤ段のアップシフトが検出されたとき、目標回転数nSollは継続して中間回転数N1を維持する。変速機入力回転数nTra_inが上記の中間回転数N1に接近したときにはじめて、目標回転数nSollは実際の変速機入力回転数nTra_inに等しく設定される。シフト過程が完了され、ドライバがクラッチ5の操作を解除し、これにより駆動系が閉鎖したとき直ちに、目標回転数nSollは低い値に低減しかつ最終的に0に設定され、これにより、回転数制御は非作動とされる。
【0043】
ステップS6およびS7の次に、ステップS8において、クラッチが閉鎖されたか否かないしは駆動系を介しての摩擦結合が再び形成されたか否かの検査が続く。クラッチが再び閉鎖されたとき(分岐Ja)にはじめて、方法はS1において継続可能である。他の場合(分岐Nein)、ステップS8においてさらに待機させられる。
【0044】
ノイズのない変速機入力回転数の勾配データを得るために、変速機入力回転数nTra_inは低域フィルタに通されてもよい。
ギヤ段のダウンシフトが検出されたとき、目標回転数nSollが直接変速機入力回転数nTra_inに設定されるように設計されていてもよい。これにより制御偏差は急上昇するので、機関回転数制御装置もまた目標回転数をできるだけ急速に制御可能である。この場合、回転数制御の比例部分に対応する、制御偏差に比例依存した予制御が使用される。この予制御は、機関回転数が目標回転数に接近したとき直ちに中止されてもよい。回転数制御に対して、通常のPI制御装置が使用されてもよく、この場合、積分器カウンタの過大な構成を阻止するために、大きな制御偏差においては、例えば積分部分のような対応要素は排除されるかまたは凍結される。積分器カウンタの排除は、機関回転数のより高い目標回転数への調節において過大振動に導くことがあるであろう。変速機入力回転数の信号内の高周波回転数信号を平滑化するために、適用可能な時間後に、または投入されたギヤ段が一義的に検出されたとき、目標回転数nSollは低域フィルタでフィルタリングされてもよい。
【0045】
図3は、より低いギヤ段へのダウンシフトにおける種々の変数の線図を示す。機関回転数n、変速機入力回転数nTra_in、変速機入力回転数の勾配dnTra_in/dt、ダウンシフトを検出するための第1勾配しきい値SW1、内燃機関のシリンダ内への充填F、機関トルクM、ニュートラルギヤセンサ信号NGS、クラッチ操作信号KBおよびより低いギヤ段へのダウンシフト検出信号RSSの線図が示される。
【0046】
時点T1以降、開放されたクラッチ5が検出され、したがって、目標回転数nSollは、0から、車両速度および変速機変速比に関して計算された中間回転数N1に設定され、中間回転数は、ドライバがクラッチを切り離した時点にギヤ段をアップシフトしたときに設定されることがわかる。同時に、内燃機関のシリンダ内への充填を上昇させるために、絞り弁が開放されてもよい。これが充填Fの線図においてわかる。
【0047】
時点T2において、ドライバは新しいギヤ段を選択しているが、このことは、ニュートラルギヤセンサのセンサ信号NGSの低下側面により検出される。この時点以降、変速機入力回転数の勾配dnTra_in/dtが検査される。この勾配が正のしきい値を超えた場合、ダウンシフトが検出される。このとき、目標回転数nSollは直接変速機入力回転数nTra_inに設定される。正の制御偏差により回転数制御は正の回転トルクを要求し、正の回転トルクは内燃機関のシリンダ内への上昇された充填により簡単に提供可能である。
【0048】
クラッチ5が時点T3において再び閉鎖された場合、目標回転数nSollは適用可能な値に下方に制御されかつ最終的に0に設定される。
シフト過程後のクラッチの再結合においてドライバを支援するために、機関回転数nがいつから変速機入力回転数nTra_inと同期化されているかが信号されてもよい。これにより、きわめて快適なクラッチの再結合が実現可能である。信号するために、視覚信号または音響信号が使用されてもよい。視覚信号を使用する場合、ドライバの視野内に記号が表示されてもよい。例えば、第1カラーで点灯する記号は、機関回転数nの、変速機入力回転数nTra_inとの同期化が存在しないことを信号してもよい。この信号は、先にステップS2で表示されてもよい。このとき、クラッチの再結合は、低減された快適性を承知の上でのみ可能である。第2カラーで点灯する記号は、機関回転数nが同期化され、かつこのときドライバは、クラッチ5を、反力のないクラッチの再結合が保証されているように閉鎖することが可能であることを表示可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 駆動システム
2 駆動機関
3 被駆動系、駆動系、被駆動軸
4 クラッチ
5 ギヤ変速機、変速機
6 クラッチペダル
7 操作ユニット
8 駆動車輪
10 機関制御ユニット、機関制御装置
11 アクセルペダル
12 ブレーキペダル
13 ブレーキシステム
14 変速機入力回転数センサ
15 ニュートラルギヤセンサ
dnTra_in/dt 変速機入力回転数の勾配
F 充填
KB クラッチ操作信号
M 機関トルク
n 機関回転数
soll、nSoll 目標回転数
Tra_in 変速機入力回転数
N1 中間回転数
NGS ニュートラルギヤセンサ信号
RSS ダウンシフト検出信号
SW1 第1勾配しきい値
T1、T2、T3 時点
図1
図2
図3