特許第6802310号(P6802310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802310
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】継ぎ手部材を備えたトルクリミッタ
(51)【国際特許分類】
   F16D 43/21 20060101AFI20201207BHJP
   F16D 7/02 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   F16D43/21
   F16D7/02 F
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-54589(P2019-54589)
(22)【出願日】2019年3月22日
(65)【公開番号】特開2020-153484(P2020-153484A)
(43)【公開日】2020年9月24日
【審査請求日】2020年6月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】磯部 太郎
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−159430(JP,A)
【文献】 特開2014−145380(JP,A)
【文献】 特開2001−65602(JP,A)
【文献】 特開2018−194091(JP,A)
【文献】 特開平8−247164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 7/02
F16D 13/08
F16D 41/00− 47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の内側部材と、前記内側部材の外周面に接触して装着され、線材を巻回して形成されるコイルばねと、前記コイルばねの装着された前記内側部材が挿入される筒状の外側部材とを備え、
前記内側部材と前記外側部材とは共通の中心軸を有し、前記コイルばねは前記外側部材に相対回転不能に係合されており、
前記内側部材と前記外側部材とを相対的に回転させる前記中心軸周りの回転トルクが付加されたときは、前記回転トルクが所定値より大きい場合に、前記内側部材と前記外側部材との間の摩擦力に打ち勝って、前記外側部材と前記内側部材とが相対的に回転するトルクリミッタにおいて、
記内側部材は合成樹脂製の継ぎ手部材を介して外部機器に接続され
前記内側部材と前記継ぎ手部材とは、軸方向端が開放された切欠きと軸方向に突出する突部とによって連結され、前記突部の突出端面には、軸方向に更に突出する位置決め小突起が局部的に付設されており、前記突部が前記切欠きに挿入されるのに先立って、前記位置決め小突起が前記切欠きに挿入される、ことを特徴とするトルクリミッタ。
【請求項2】
前記継ぎ手部材には前記共通の中心軸と同軸上に円環状のフランジが設けられていると共に、前記外側部材の内周面には径方向内側に向かって突出する突出部が軸方向に間隔をおいて2つ形成されており、
前記継ぎ手部材と前記外側部材とが組み合わされると、前記フランジが2つの前記突出部によって挟み込まれる、請求項に記載のトルクリミッタ。
【請求項3】
前記内側部材及び前記外側部材には、前記共通の中心軸上において相互に嵌合する断面円形の嵌合手段が設けられている、請求項1又は2に記載のトルクリミッタ。
【請求項4】
前記内側部材は軸方向の片端から他端に向かって径が減少する筒形状である、請求項1乃至のいずれかに記載のトルクリミッタ。
【請求項5】
前記内側部材は板状の金属からプレス成型により製造される、請求項1乃至のいずれかに記載のトルクリミッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に回転可能な内側部材及び外側部材と、両者の間に装着されるコイルばねとを備え、内側部材と外側部材とを相対的に回転させる回転トルクが所定値より大きいと、コイルばねによる摩擦力に打ち勝って外側部材と内側部材とが相対的に回転するトルクリミッタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタや複写機においては、上下方向に積層された用紙群から用紙を一枚ずつ給紙するための給紙装置が使用される。このような給紙装置にあっては、静電気のような微小相互吸着力によって複数の用紙が上下に吸着した重層状態で用紙群から用紙が取り出され、重層状態のまま用紙がプリンタや複写機の本体部に給紙されてしまうことがあり、これを回避するため、給紙装置には通常トルクリミッタが装着されている。トルクリミッタは、給紙装置に限らず、駆動源のモーター等に過負荷が掛かったときに負荷を切り離してモーターを保護する部品としても用いられる。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、金属製の内側部材と、前記内側部材の外周面に接触して装着され、線材を巻回して形成されるコイルばねと、前記コイルばねの装着された前記内側部材が挿入される筒状の外側部材とを備え、前記内側部材と前記外側部材とは共通の中心軸を有し、前記コイルばねは前記外側部材に相対回転不能に係合されており、前記内側部材と前記外側部材とを相対的に回転させる前記中心軸周りの回転トルクが付加されたときは、前記回転トルクが所定値より大きい場合に、前記内側部材と前記外側部材との間の摩擦力に打ち勝って、前記外側部材と前記内側部材とが相対的に回転するトルクリミッタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6355596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トルクリミッタは様々な装置に組み込まれて使用される機能部品であって、組み込まれる装置に応じて内側部材が種々の外部機器に接続されるため、接続される外部機器に応じて内側部材における外部機器との接続部の形状を適宜変更する必要がある。内側部材が金属製である場合、合成樹脂製である場合と比べて製造する手間がかかるため、上記接続部の形状を都度変更すると多大なコストがかかる。また、同一の機能を有するが上記接続部のみが異なるトルクリミッタが大量に存在すると、製品としてのトルクリミッタの管理及び保管が困難になる。
【0006】
さらに、内側部材が板状の金属からプレス成型により製造される場合には、内輪部材は全体的にすぼみ形状となるため、軸方向端部に形成する上記接続部は必然的に切欠きとなってしまい、従って、外部機器と内側部材とを接続する手段が限定されてしまう。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、金属製の内側部材の形状を変更することなく内側部材を任意の外部機器に接続することができる新規且つ改良されたトルクリミッタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、内側部材に合成樹脂製の継ぎ手部材を着脱可能に連結し、内側部材は継ぎ手部材を介して外部機器に接続されるようにすることによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成するトルクリミッタとして、金属製の内側部材と、前記内側部材の外周面に接触して装着され、線材を巻回して形成されるコイルばねと、前記コイルばねの装着された前記内側部材が挿入される筒状の外側部材とを備え、
前記内側部材と前記外側部材とは共通の中心軸を有し、前記コイルばねは前記外側部材に相対回転不能に係合されており、
前記内側部材と前記外側部材とを相対的に回転させる前記中心軸周りの回転トルクが付加されたときは、前記回転トルクが所定値より大きい場合に、前記内側部材と前記外側部材との間の摩擦力に打ち勝って、前記外側部材と前記内側部材とが相対的に回転するトルクリミッタにおいて、
記内側部材は合成樹脂製の継ぎ手部材を介して外部機器に接続され
前記内側部材と前記継ぎ手部材とは、軸方向端が開放された切欠きと軸方向に突出する突部とによって連結され、前記突部の突出端面には、軸方向に更に突出する位置決め小突起が局部的に付設されており、前記突部が前記切欠きに挿入されるのに先立って、前記位置決め小突起が前記切欠きに挿入される、ことを特徴とするトルクリミッタが提供される。
【0010】
記継ぎ手部材には前記共通の中心軸と同軸上に円環状のフランジが設けられていると共に、前記外側部材の内周面には径方向内側に向かって突出する突出部が軸方向に間隔をおいて2つ形成されており、前記継ぎ手部材と前記外側部材とが組み合わされると、前記フランジが2つの前記突出部によって挟み込まれるのが好適である。好ましくは、前記内側部材及び前記外側部材には、前記共通の中心軸上において相互に嵌合する断面円形の嵌合手段が設けられている。前記内側部材は軸方向の片端から他端に向かって径が減少する筒形状であるのが好適である。前記内側部材は板状の金属からプレス成型により製造されるのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトルクリミッタにおいては、内側部材に合成樹脂製の継ぎ手部材を着脱可能に連結し、内側部材は継ぎ手部材を介して外部機器に接続される。そのため、接続される外部機器に応じて複数の継ぎ手部材を予め用意しておけば、トルクリミッタの主要構成はそのままで継ぎ手部材のみを適当なものに交換することで夫々の外部機器に接続することが可能となり、製造コストを低減させることができると共に製品としてのトルクリミッタの管理及び保管も容易になる。特に、本発明の継ぎ手部材は合成樹脂製であるため、射出成型等によって製造が容易であり安価に製造できる。
【0012】
また、内側部材が板状の金属からプレス成型により製造されることで、内側部材の形状に制限がある場合であっても、継ぎ手部材は合成樹脂製であって任意の形状で形成することができるため、継ぎ手部材を介して内側部材を外部機器に接続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明にかかるトルクリミッタの好適実施形態の構造を示す図。
図2図1に示すトルクリミッタの分解斜視図。
図3図1に示すトルクリミッタの外側部材を単体で示す図。
図4図1に示すトルクリミッタの内側部材を単体で示す図。
図5図1に示すトルクリミッタの継ぎ手部材を単体で示す図。
図6】継ぎ手部材の他の形態を示す図。
図7図5に示す継ぎ手部材を内側部材に連結する工程を示す図。
図8図1に示すトルクリミッタの作動を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明のトルクリミッタについて説明する。
【0015】
図1に示すトルクリミッタは、内側部材2と、内側部材2の外周面に接触して装着されたコイルばね4と、コイルばね4の装着された内側部材2が挿入される筒状の外側部材6とを備えている。容易に理解できるように、図1及び図7の断面図では、内側部材2の断面には薄墨を、外側部材6及び後述する継ぎ手部材の断面にはハッチングを夫々付して示している。
【0016】
図1及び図2と共に図3を参照して説明すると、内側部材2は金属製であって全体的に円筒形状である。内側部材2は、軸方向片側に位置し軸方向に比較的短い大径部8と、軸方向他側に位置し軸方向に比較的長い小径部10と、大径部8と小径部10との中間に位置するテーパー部12とを具備している。大径部8の軸方向片端には、軸方向外側に向かって径方向外方に広がるラッパ状部14を介して円環形状のフランジ16が固着されている。つまり、本実施形態の内側部材2は、軸方向の片端から他端に向かって径が減少する筒形状である。内側部材2の軸方向片端部には軸方向片端が開放された一対の切欠き18が形成されている。一対の切欠き18の各々は内側部材2の内周縁部において直径方向の反対側に位置し、かかる周方向位置における、大径部8の軸方向片側部と、ラッパ状部14の全部と、フランジ16の内周縁部を除去することによって形成されている。かような内側部材2は、製造コストを低減させるため、板状の金属からプレス成型により製造される。
【0017】
図1及び図2に示すとおり、コイルばね4は金属製の線材を巻回することによって形成され、コイルばね4の自然状態における内径は内側部材2の小径部10の外径よりも小さく、コイルばね4は内側部材2の小径部10の外周面に密着して装着される。コイルばね4の軸方向片端には径方向外方に起立するフック部19が形成されている。
【0018】
図1及び図2と共に図4を参照して説明すると、外側部材6は合成樹脂製であって全体的に円筒形状である。外側部材6の内側の、軸方向片端部には内側部材2のフランジ16の外径と実質上同一の径である大径空間部20が、軸方向他端部には内側部材2の小径部10の外径と実質上同一の径である小径空間部22が、大径空間部20と小径空間部22との中間には周方向に間隔をおいて内周面に配設された後述する複数個の突条の存在に起因して内径が軸方向に変化する中間空間部24が夫々形成されている。大径空間部20を形成する外側部材6の内周面には、図4のA−A断面図と共に図1右図を参照することによって理解されるとおり、方向内側に向かって突出する突起26が周方向に等角度間隔をおいて3個形成されている。中間空間部24を形成する外側部材6の内周面には、軸方向に直線状に延びる突条28が周方向に間隔をおいて複数個設けられている。ただし、突条28は、突起26が形成された角度位置においては設けられていない。これは、突起26を形成するための成形上の理由によるためである。突条28の横断面形状は全体的に扇形状であって、軸方向片端から他端に向かって(つまり図のA−A断面図において右から左に向かって)順番に、内径が大径空間部20に次いで大きい第一の部分30、内径が第一の部分30に次いで大きい第二の部分32、内径が第二の部分32に次いで大きい第三の部分34が形成されている。第三の部分34の内径は小径空間部22よりも大きい。外側部材6の外周面において番号36で示される領域の中央の内周面には、コイルばね4のフック部19が挿入される係止溝38が、突条28の一部を除去して形成される。従って、A−A断面図に示されるとおり、係止溝38の軸方向他端には突条28が残留している。所定領域36における外側部材6の外周面には、径方向外方に肉厚を増大させることによって形成された断面略円弧状の補強突条40が形成されている。補強突条40は、軸方向に見て、軸方向の片端から他端に向かって係止溝38を幾分超えて直線状に延びている。外側部材6の軸方向他端面には、外部機器に接続される他側接続部41が固着されている。
【0019】
外側部材6には、コイルばね4が装着された内側部材2が挿入される。そうすると、内側部材2の小径部10が外側部材6の小径空間部22において、大径部8が外側部材6の中間空間部24の第三の部分34において夫々外側部材6の内周面によって支持され、これにより内側部材2は外側部材6によって共通の中心軸oの周りで相対回転可能に支持される。このとき、コイルばね4のフック部19は外側部材6の係止溝38に挿入され、これによって、コイルばね4は外側部材6に相対回転不能に係合されることとなる。コイルばね4におけるフック部19以外の部分(つまり線材が巻回された部分)は、外側部材6の中間空間部24の第三の部分34において内側部材2と外側部材6(さらに詳しくは突条28)との間に位置する。
【0020】
このようにして構成されるトルクリミッタは従来のものと変わらないが、本発明のトルクリミッタにあっては、内側部材2には合成樹脂製の継ぎ手部材42が着脱可能に連結され、内側部材2は継ぎ手部材42を介して外部機器に接続されることが重要である。
【0021】
図1及び図2と共に図5を参照して説明すると、継ぎ手部材42は、内側部材2に連結される連結部44、図示しない外部機器に接続される片側接続部46、及び連結部44と片側接続部46とを仕切る円形の仕切板48を具備している。仕切板48は軸方向に対して垂直であって、仕切板48には軸方向に貫通する中央穴50が形成されている。連結部44は仕切板48の軸方向片側面に設けられており、中央穴50を囲繞して仕切板48から軸方向に突出する円筒壁52と、円筒壁52の外周面に沿って仕切板48から軸方向に突出する突部54とを有する(連結部斜視図も参照されたい)。図示の実施形態においては、断面が略矩形である一対の突部54の各々は円筒壁52の外周面において直径方向の反対側に固着されている。突部54の突出端面、更に詳しくはその径方向外側端部には、軸方向にさらに突出する位置決め小突起56が局部的に付設されている。仕切板48の外周縁部には円環状のフランジ58も固着されている。フランジ58は前記共通の中心軸と同軸上に設けられており、仕切板48の外周縁を超えて径方向外方に延出している。円環形状のフランジ58は円筒壁52及び突部54の基端部を囲繞している。片側接続部46は仕切板48の軸方向片側面に設けられている。図示の実施形態においては、片側接続部46は中央穴50の外周に沿って軸方向に突出する2つの円弧状片60から構成され、2つの円弧状片60は間隔をおいて直径方向に対向して設けられている。片側接続部46である2つの円弧状片60には図示しない外部機器の接続受け部が接続される。側接続部46は、これが接続される外部機器の接続受け部に対応した形状であることが必要であることから、片側接続部46を2つの円弧状片60で構成することに替えて、例えば、図6(a)において番号60aで示すような中央にD穴が形成された円柱形状部であったり(これを備えた継ぎ手部材を42aで示す)、図6(b)において番号60bで示すようなD状突起であったり(これを備えた継ぎ手部材を42bで示す)、図6(c)において番号60cで示すようなキー溝を備えた円柱形状部(これを備えた継ぎ手部材を42cで示す)とすることもある。かような継ぎ手部材42は適宜の合成樹脂素材を圧縮成形することによって形成される。
【0022】
上述した継ぎ手部材42は、外側部材6の内側において内側部材2に連結される。継ぎ手部材42を内側部材2に連結する工程について、図7を参照して説明する。まず、図7(a)に示すように、継ぎ手部材42を、連結部44が内側部材2の軸方向片端部(つまり、フランジ16が形成された方の端部)と対向するように配置する。次いで、継ぎ手部材42を内側部材2の軸方向片端部に接近させ、図7(b)に示すように、連結部44の位置決め小突起56を切欠き18に挿入させる。このとき、継ぎ手部材42のフランジ58は外側部材6の内周面に形成された突起26の外面と当接する。その後に、図7(c)に示すように、継ぎ手部材42を同図において左方向に強制すると、フランジ58が突起26を弾性的に乗り越え、突部54全体が切欠き18に挿入されると共に円筒壁52も内側部材2の大径部8の内側に挿入され(図1のA−A断面図も参照されたい)、かくして継ぎ手部材42が内側部材2に連結される。本実施形態においては、上述したとおり、突部54が切欠き18に挿入されるのに先立って、位置決め小突起56が切欠き18に挿入されることで突部54と切欠き18とが確実に整合され、継ぎ手部材42を内側部材2に容易に連結させることができる。また、継ぎ手部材42の円筒壁52が内側部材2の大径部8の内側に挿入されることで、円筒壁52は内側部材2の大径部8と共通の中心軸o上において嵌合する。換言すれば、内側部材2及び外側部材6は、共通の中心軸o上において相互に嵌合する断面円形の嵌合手段によって嵌合される。これにより、継ぎ手部材42は内側部材2にがたつくことなく安定して連結される。そして、フランジ58が突起26を弾性的に乗り越えると、フランジ58は突起26と突条28との間で(つまり、外側部材6の内周面において軸方向に間隔をおいて形成された2つの突出部によって)挟み込まれ、外側部材6に対する継ぎ手部材42の軸方向位置が保持される。これにより、継ぎ手部材42が内側部材2及び外側部材6から不意に脱落してしまうことが防止される。
【0023】
このようにして組み合わされた本発明にかかるトルクリミッタの作動について図8を参照して説明する。内側部材2と外側部材6とを相対的に回転させる中心軸o周りの回転トルク(コイルばね4の締付力を緩和する方向のトルク)が付加されたときは、回転トルクが所定値より大きい場合に、内側部材2と外側部材6との間の摩擦力に打ち勝って、外側部材6と内側部材2とが相対的に回転する(図8(a))。図示の実施形態においては、コイルばね4にフック部19は一つしか形成されておらず、内側部材2は外側部材6に対して、図8のA−A断面図の右方から見て(B−B断面図においても同様)反時計方向にのみ回転する。このことから、上記コイルばね4の締付力を緩和する方向とは、図8のA−A断面図の右方から見て(B−B断面図においても同様)反時計方向のことをいう。一方、内側部材2と外側部材6とを相対的に回転させる回転トルクが所定値以下であれば、内側部材2とコイルばね4との間の摩擦力により、外側部材6と内側部材2とが相対的に回転することはなく、外側部材6はコイルばね4及び内側部材2と一体となって上記方向に回転する(図8(b))。
【0024】
継ぎ手部材42は、内側部材2が接続される外部機器の接続受け部の形状に応じて適宜交換される。図示の実施形態においては、継ぎ手部材42と外側部材6とが組み合わされた状態にあっては、継ぎ手部材42のフランジ58は外側部材6の内周面に形成された2つの突出部(つまり突起26及び突条28)によって軸方向に挟み込まれ、外側部材6に対する継ぎ手部材42の軸方向位置は保持されているため、継ぎ手部材42を交換する際には、これをこじるなどしてフランジ58が突起26を再度乗り越えるようにする。この際には、継ぎ手部材42は合成樹脂製であるため弾性変形が可能であり、従って、比較的容易に継ぎ手部材42を外側部材6から取り外すことができる。
【0025】
本発明のトルクリミッタにおいては、内側部材に合成樹脂製の継ぎ手部材を着脱可能に連結し、内側部材は継ぎ手部材を介して外部機器に接続される。そのため、接続される外部機器に応じて複数の継ぎ手部材を予め用意しておけば、トルクリミッタの主要構成はそのままで継ぎ手部材のみを適当なものに交換することで夫々の外部機器に接続することが可能となり、製造コストを低減させることができると共に製品としてのトルクリミッタの管理及び保管も容易になる。特に、本発明の継ぎ手部材は合成樹脂製であるため、射出成型等によって製造が容易であり安価に製造できる。また、内側部材が板状の金属からプレス成型により製造されることで、内側部材の形状に制限がある場合であっても、継ぎ手部材は合成樹脂製であって任意の形状で形成することができるため、継ぎ手部材を介して内側部材を外部機器に接続することが可能となる。
【0026】
以上、本発明のトルクリミッタについて添付した図面を参照して詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例が考えられる。例えば、図示の実施形態においては、コイルばねにはフック部は1つのみ形成されていて、外側部材に対する内側部材の回転方向は一方向に限定されていたが、これに替えて、コイルばねにフック部を2つ設けると共に、外側部材に対して内側部材が回転した場合には2つのコイルばねのいずれか一方がコイルばねを緩める方向に押されるように係止溝を形成することで、外側部材に対する内側部材の回転方向を両方向に許容することもできる(本願の出願人によって先に出願された特開平10−78044を参照されたい)。また、図示の実施形態においては、内側部材及び継ぎ手部材は、切欠き及び突部によって連結されていたが、内側部材と継ぎ手部材とは少なくとも周方向に係合していればよく、内側部材の形状に応じて異なる形態で両者を結合するようにすることができるのは明らかである。
【符号の説明】
【0027】
2:内側部材
4:コイルばね
6:外側部材
18:切欠き
41:他側接続部
42:継ぎ手部材
44:連結部
46:片側接続部
54:突部
56:位置決め小突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8