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特許6802325集中度評価装置及び空調最適化制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802325
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】集中度評価装置及び空調最適化制御システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/80 20180101AFI20201207BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20201207BHJP
   F24F 11/63 20180101ALI20201207BHJP
   F24F 120/14 20180101ALN20201207BHJP
【FI】
   F24F11/80
   A61B5/16 100
   F24F11/63
   F24F120:14
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-106022(P2019-106022)
(22)【出願日】2019年6月6日
(65)【公開番号】特開2020-200959(P2020-200959A)
(43)【公開日】2020年12月17日
【審査請求日】2019年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191319
【氏名又は名称】新菱冷熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 裕
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−194292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/80
A61B 5/16
F24F 11/63
F24F 120/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被撮影者の顔表情の撮影画像から該被撮影者の推定年齢値を取得する推定年齢取得手段と、
長期間に亘り前記推定年齢取得手段により取得された推定年齢値から標準偏差を算出する標準偏差算出手段と、
前記推定年齢取得手段により取得された直近の短期間の推定年齢値から連続的に標本標準偏差を算出する標本標準偏差算出手段と、
前記標準偏差算出手段により算出された前記標準偏差に対する前記標本標準偏差算出手段により算出された前記標本標準偏差の比に基づき、リアルタイムの集中度を算出する集中度算出手段と、
を備えていることを特徴とする集中度評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の集中度評価装置によって得られた集中度に基づき、室内空間の空調を最適に制御するための空調最適化制御システムであって、
前記集中度算出手段により算出されたアルタイムの集中度が閾値以下となった場合に空調の温度を制御することを特徴とする空調最適化制御システム。
【請求項3】
作業者毎に、外気の日平均不快指数値に対応して前記リアルタイムの集中度が最も高くなる最適な室温を算出し、該最適な室温の回帰近似直線に基づき、パーソナル温度設定線を求め、該パーソナル温度設定線に従って空調の温度を制御する請求項2に記載の空調最適化制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔認証カメラを用いて被撮影者の集中度を評価するための集中度評価装置、及び該集中度評価装置によって得られた集中度に基づき室内空間の空調を最適に制御するための空調最適化制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内の温熱環境が知的生産性に大きく影響を与えると言われている。そのため、近年、オフィス温熱環境の最適化を図ることによって作業者の知的生産性を向上させるための研究が盛んに行われている。
【0003】
一般に、知的生産性とは、作業者が行う知的作業の効率を表す概念である。オフィスにおける作業には定形的な作業と創造的な作業があるが、単位時間当たりの作業量、すなわち作業効率が知的生産性と考えられている。
【0004】
従来の知的生産性の評価方法としては、(1)被験者のアンケートによって評価する「主観評価による方法」、(2)被験者の心拍数・脳波の変化・瞬目回数などから評価する「生理指標計測による方法」、(3)被験者の実作業の処理量から評価する「実作業成果による方法」、(4)被験者によるタイピングなどの定型的な認知作業処理量と正確さから評価する「認知タスク成績による方法」が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】第5回横幹連合コンファレンス 2013.12.21-12.22 香川大学 「作業への集中に着目した知的生産性の定量評価法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した(1)「主観評価による方法」は、客観性に欠け、長期間の評価や定量的な評価が困難であるという問題がある。また、(2)「生理指標計測による方法」は、特別な計測機器が必要となり、接触型センサの常設など被験者への負担が大きいという問題がある。さらに、(3)「実作業成果による方法」は、作業内容が変化する場合に定量的に比較することができないため、作業対象が限定されるという問題がある。さらに、(4)「認知タスク成績による方法」は、生産性の向上が習熟によるものかの判断が困難であるという問題がある。このようにこれまでの評価方法は、客観性に欠け、定量化にも問題が多く、さらにこれら評価方法で一時的に得られた結果を連続性が求められる空調制御に利用して、作業空間の空調を最適に制御することは困難であった。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、知的生産性を定量的に評価することができると共に、知的生産性を向上させる温熱環境制御を可能とする集中度評価装置及び空調最適化制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明に係る集中度評価装置は、被撮影者の顔表情の撮影画像から該被撮影者の推定年齢値を取得する推定年齢取得手段と、長期間に亘り前記推定年齢取得手段により取得された推定年齢値から標準偏差を算出する標準偏差算出手段と、前記推定年齢取得手段により取得された直近の短期間の推定年齢値から連続的に標本標準偏差を算出する標本標準偏差算出手段と、前記標準偏差算出手段により算出された前記標準偏差に対する前記標本標準偏差算出手段により算出された前記標本標準偏差の比に基づき、リアルタイムの集中度を算出する集中度算出手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明は、上記した集中度評価装置によって得られた集中度に基づき、室内空間の空調を最適に制御するための空調最適化制御システムであって、前記集中度算出手段により算出されたアルタイムの集中度が閾値以下となった場合に空調の温度を制御することを特徴とする。
【0010】
本発明の実施の形態に係る空調最適化制御システムにおいて、作業者毎に、外気の不快指数値に対応して前記リアルタイムの集中度が最も高くなる最適な室温を算出し、該最適な室温の回帰近似直線に基づき、パーソナル温度設定線を求め、該パーソナル温度設定線に従って空調の温度を制御するのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、知的生産性を表す集中度をリアルタイムに連続して計測及び評価することができる。そのため、その集中度を利用することによって、知的生産性(集中度)を最大に維持することのできる最適な空調制御を行うことができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る集中度評価装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る集中度評価装置において、顔認証カメラで推定年齢値を計測して集中度を評価した例を示す図であり、集中度が高い例を示している。
図3】本発明の実施の形態に係る集中度評価装置において、顔認証カメラで推定年齢値を計測して集中度を評価した例を示す図であり、集中度が中位の例を示している。
図4】本発明の実施の形態に係る集中度評価装置において、顔認証カメラで推定年齢値を計測して集中度を評価した例を示す図であり、集中度が低い例を示している。
図5】本発明の実施の形態に係る集中度評価装置において、集中度と温熱環境温度との関係を外気不快指数の日平均値に分類して示す図であり、40代男性の被験者Aに対して計測した結果を示している。
図6】本発明の実施の形態に係る集中度評価装置において、集中度と温熱環境温度との関係を外気不快指数の日平均値に分類して示す図であり、20代女性の被験者Bに対して計測した結果を示している。
図7】本発明の実施の形態に係る空調最適化制御システムを示す概念図である。
図8】本発明の実施の形態に係る空調最適化制御システムにおいて、図5の不快指数日平均値をさらに分割して室温を縦軸にした集中度のコンター図に、標準温度設定線と被験者Aのパーソナル温度設定線を示した図である。
図9】本発明の実施の形態に係る空調最適化制御システムにおいて、図6の不快指数日平均値をさらに分割して室温を縦軸にした集中度のコンター図に、標準温度設定線と被験者Bのパーソナル温度設定線を示した図である。
図10】本発明の実施の形態に係る空調最適化制御システムの変形例の制御方法を示すフローチャートである。
図11】本発明の実施の形態に係る空調最適化制御システムの別の変形例の制御方法を示す概念図である。
図12】本発明の実施の形態に係る空調最適化制御システムの別の変形例の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
まず、図1図6を参照して、本発明の実施の形態に係る集中度評価装置について詳細に説明する。
【0014】
一般に、作業者が知的作業を行っている時、
(A)作業に集中して、作業処理が進行している「作業状態」、
(B)作業に集中しているが、作業が無意識に中断している「短期休息状態」、
(C)疲れから意識的に作業が中断している「長期休息状態」、
【0015】
の3つの状態が繰り返し現れると言われている。作業者が集中して作業を継続できるのは15分間が限度で、15分間を超えると急速に作業に集中できなくなることも明らかになっている。
【0016】
そのため、知的生産性の評価として、上記(A)「作業状態」と(B)「短期休息状態」の2つの状態を指標とすることができる。また、作業者が事務所でのPC作業などの知的作業に集中している時は、作業者の顔の移動が少なくなり、表情の変化が少なくなる傾向がある。そこで、本発明者は、この作業者の顔の表情の時間変化を捕まえることができれば、作業者の集中度を定量的、かつ連続的に評価することが可能になると考えた。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る集中度評価装置10の構成を示すブロック図である。本発明の実施の形態に係る集中度評価装置10は、推定年齢取得手段11と、制御手段12と、を備えている。そして、制御手段12には、標準偏差算出手段としての標準偏差算出部13と、標本標準偏差算出手段としての標本標準偏差算出部14と、集中度算出手段としての集中度算出部15と、記憶部16と、が設けられている。
【0018】
推定年齢取得手段11として、被撮影者の顔表情の撮影画像から被撮影者の年齢を推定することのできる顔認証カメラ11aが使用される(例えば、オムロン(登録商標)製画像センシングコンポHVC−P2)。顔認証カメラ11aは、顔の骨格と眉間、目、鼻の周囲のしわやたるみから特徴量を抽出して、実年齢と特徴量の相関関係から重回帰式を用いて推定年齢値を出力する。この顔認証カメラ11aを用いて作業者の顔表情の変化を測定することにより、作業者の集中度(知的生産性)をリアルタイムで連続して計測し、評価することができる。顔認証カメラ11aは、作業者の顔表情の撮像画像から作業者の推定年齢値を0.2〜0.3秒間隔で連続して出力することができる。
【0019】
標準偏差算出部13は、おおむね1週間程度以上の長期間に亘って顔認証カメラ11aにより取得された推定年齢値から標準偏差σを求め、予め記憶部16に記憶しておく。以降、顔認証カメラ11aから標準偏差σのデータを追加して記憶部16に記憶し、標準偏差σの精度を上げる。
【0020】
標本標準偏差算出部14は、顔認証カメラ11aにより取得された直近の短期間(例えば、時刻t分より過去10分間)の推定年齢値から連続的に標本標準偏差Sを算出する。
集中度算出部15は、現在(例えば、時刻t分)におけるリアルタイムの集中度C(t)を次式(1)により算出する。
C(t)=S/σ (1)
【0021】
以降、標本標準偏差算出部14による標本標準偏差Sの算出と、集中度算出部15によるリアルタイムの集中度C(t)の算出は、時刻t+1分毎に繰り返し行われる。
【0022】
上記した集中度の評価において、集中度によって顔表情が変化し、それに応じて、顔認証カメラ11aによる推定年齢値は変動する。また、顔認証カメラ11aによる推定年齢値は顔認証カメラ11aと被撮影者の顔の角度によっても変化する。
【0023】
そこで、標本標準偏差算出部14は、10分間の平均的な推定年齢値を使用して標本標準偏差Sを算出する。また、集中度や他の要因(騒音、照度、臭気、CO濃度、空気質をはじめ、代謝量、服装、体調、精神状態、作業内容など)の影響を全て考慮するために、作業者の長期間の平均的な標準偏差σを採用した。また、作業者によって偏差量に差が生じるため、作業者の集中度を、短期間の標本標準偏差Sと長期間の標準偏差σの比とし、相対的な推定年齢値の振れ幅で評価した。
【0024】
図2図4には、20分間に亘って顔認証カメラ11aで推定年齢値を計測して、集中度を評価した例が示されている。集中度は顔認証カメラ11aからの推定年齢値の1分平均値と、PC作業者の集中度に関する自己申告を合わせて行った。図2は集中度が高い例(S=1.6、σ=7.2、C(t)=0.22)を示し、図3は集中度が中位の例(S=6.0、σ=7.2、C(t)=0.83)を示し、図4は集中度が低い例(S=10.3、σ=7.2、C(t)=1.43)を示している。
【0025】
図5及び図6は、集中度と温熱環境温度との関係を、計測日から過去2週間の外気不快指数の日平均値に分類して示している。図5は、40代男性の被験者Aに対して16カ月間計測した結果をまとめたものであり、図6は、20代女性の被験者Bに対して12カ月間計測した結果をまとめたものである。
【0026】
図5及び図6によれば、両被験者A、B共に、不快指数日平均値毎に室温の両端部で、集中度が極端に低くなる傾向となり、季節変化に応じて集中度に対して最適な室温が変化(移動)していることが分かる。
【0027】
上記したように本発明の実施の形態に係る集中度評価装置10によれば、知的生産性を表す集中度をリアルタイムに連続して計測及び評価することができる。また、集中度評価装置10を比較的安価に構成することができる。そのため、集中度評価装置10を利用することで、例えば、知的生産性(集中度)を最大に維持することのできる最適な空調制御(温度制御)を行うことができる。
【0028】
次に、図7図9を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る空調最適化制御システム20について説明する。以下の説明では、本発明の実施の形態に係る空調最適化制御システム20を、一人の作業者に対して空調を個別に制御することが可能なパーソナル空調制御システムに適用した場合について例示して説明する。図7は本発明の実施の形態に係る空調最適化制御システム20を示す概念図、図8及び図9は、それぞれ、図5及び図6の不快指数日平均値をさらに分割し、室温を縦軸にした集中度のコンター図である。なお、図8及び図9においてハッチングを施した部分は測定データが存在していないことを示している。
【0029】
図7に示されているように、空調最適化制御システム20は、空調機器21と、室温を検出する室内温度センサ22と、外気温度を検出する外気温度センサ23及び外気湿度を検出する外気湿度センサ24と、空調制御コントローラ25と、作業者Pの顔画像を撮影する顔認証カメラ11aと、集中度評価装置10と、備えて構成されている。
【0030】
集中度は、外気温熱環境の影響を受けることから、外気の温度及び湿度を、室温の設定の可変パラメータにしている。外気温熱環境のパラメータとしては、乾球温度又は乾球温度と湿度から算出される不快指数や比エンタルピ―値などが考えられる。
【0031】
そこで、外気温熱環境に対応する室温の設定値を示す「標準温度設定線」(図8及び図9中の破線)を次式(2)により設定する。
【0032】
Tb=0.1×Dt+18 (2)
Tb:標準設定温度(℃)、但し、22〜26℃の範囲とする。
Dt:外気不快指数
Dt=0.81×Td×0.01×H×(0.99×Td−14.3)+46.3
Td:外気乾球温度(℃)
H:外気相対湿度(%)
【0033】
また、特定の作業者(被験者)の個人の蓄積データから集中力が最適となる「パーソナル温度設定線」(図8及び図9中の実線)を求める。具体的には、作業者(被験者)毎に、外気の日平均不快指数値に対応して集中力が最高となる温度(図8及び図9中の☆印)を、標準温度設定線から±2℃を超えない範囲で、それぞれ求め、外気不快指数に対する最適室温の回帰近似直線を次式(3)に従って求める。
【0034】
Tsp=α×Dt+β (3)
Tsp:パーソナル設定温度(℃)
Dt:外気不快指数
α:傾き(例えば、被験者Aの場合には、0.11)
β:切片(例えば、被験者Aの場合には、18.05)
【0035】
上記した構成を備えた空調最適化制御システム20において、空調制御コントローラ25は、外気温度センサ23により検出された外気温度と外気湿度センサ24により検出された外気湿度に基づき、外気不快指数を演算する。
【0036】
そして、被験者の個人データが蓄積されている場合には、空調制御コントローラ25は、図8及び図9において実線で示されている各被験者のパーソナル温度設定線に従って、前記演算された外気不快指数に対応する室温となるように、空調機器21をフィードフォワード制御する。
【0037】
なお、この時、集中度評価装置10は、随時或いは周期的に、被験者のデータを蓄積することにより、上記式(3)のαとβを変更し、パーソナル設定温度Tspを可変とすることも可能である。
【0038】
このように上記した空調最適化制御システム20によれば、室温を各被験者の集中力が最高となる温度に最適に制御することができるため、作業者の知的生産性を向上させることができる。
【0039】
一方、被験者の個人データが蓄積されていない場合や被験者が限定されない場合には、空調制御コントローラ25は、図8及び図9において破線で示されている標準温度設定線に従って、前記演算された外気不快指数に対応する室温となるように、空調機器21を制御する。
【0040】
なお、被験者の個人データが蓄積されていない場合や被験者が限定されない場合における空調制御コントローラ25による空調機器21の制御方法としては、上記した実施例の他に各種変形例が考えられる。
【0041】
例えば、制御方法の一変形例としては、図10に示されているように、集中度評価装置10により計測及び評価された被験者の集中度が閾値(例えば、0.7)以下となるように室温を制御する制御方法が考えられる。
【0042】
図10はこの変形例の制御方法を示すフローチャートである。図10のステップ1に示されているように、まず、集中度算出部15は、直近の過去10分間のリアルタイムの集中度を継続して演算する。
【0043】
次にステップ2において、空調制御コントローラ25は、直近の過去10分間にリアルタイムの集中度が0.7以下となったかどうかを判定し、集中度が0.7以下となったと判定した場合には(ステップ2:Yes)、その時の室温を維持するように空調機器21を制御する(ステップ3参照)。
【0044】
一方、ステップ2において、空調制御コントローラ25は、直近の過去10分間にリアルタイムの集中度が0.7以下とならなかった状態が所定時間(例えば、15分間)以上継続したと判定した場合には(ステップ2:NO)、その時の室温の設定を1℃下げて、空調機器21を制御する(ステップ4参照)。
【0045】
その後のステップ5以降、前記ステップ1〜4と同様のフローを繰り返し行うが、空調制御コントローラ25は、直近の過去10分間にリアルタイムの集中度が0.7以下とならない状態が所定時間(例えば、30分間)継続していると判定したり、或いは、集中度がむしろ悪化していると判定したりした場合には(ステップ6:NO)、室温の設定を元に戻して、空調機器21を制御する(ステップ8参照)。
【0046】
また、制御方法の別の変形例としては、図11及び図12に示されているように、冷房時に、室温の設定を変えずに、室内の気流を制御する制御方法が考えられる。
【0047】
図11はこの変形例の制御方法を示す概念図である。図11に示されているように、この変形例では、気流発生手段として、室内の天井や床に、パーソナル天井吹出口31やパーソナル床吹出口32が設置され、各作業者Pの机33上に、パーソナル扇風機34が設置されている。そして、冷房時は、上記したように室温の設定を下げる代わりに、パーソナル天井吹出口31やパーソナル床吹出口32の風量を増やしたり、パーソナル扇風機34の回転数を上げたりすることで、作業者Pの体感温度を下げようとするものである。なお、この場合、気流発生手段として、パーソナル天井吹出口31、パーソナル床吹出口32、パーソナル扇風機34のいずれか一つが設けられていてもよいし、或いは、それらが複数組み合わせて設けられていてもよい。
【0048】
図12はこの変形例の制御方法を示すフローチャートである。図12に示されているように、気流発生手段から標準風量で送風されている状態(ステップ1参照)において、まず、ステップ2に示されているように、集中度算出部15は、直近の過去10分間のリアルタイムの集中度を継続して演算する。
【0049】
次にステップ3において、空調制御コントローラ25は、直近の過去10分間にリアルタイムの集中度が0.7以下となったかどうかを判定し、集中度が0.7以下となったと判定した場合には(ステップ3:Yes)、気流発生手段からの送風量をその時の設定風量に維持するように気流発生手段を制御する(ステップ4参照)。
【0050】
一方、ステップ3において、空調制御コントローラ25は、直近の過去10分間にリアルタイムの集中度が0.7以下とならなかった状態が所定時間(例えば15分間)以上継続したと判定した場合には(ステップ3:NO)、気流発生手段からの送風量が増加するように気流発生手段を制御する(ステップ5参照)。
【0051】
その後のステップ6以降、前記ステップ2〜5と同様のフローを繰り返し行うが、空調制御コントローラ25は、直近の過去10分間にリアルタイムの集中度が0.7以下とならない状態が所定時間(例えば、30分間)継続していると判定したり、或いは、集中度がむしろ悪化していると判定したりした場合には(ステップ7:NO)、気流発生手段からの送風量の設定を元の設定に戻す(ステップ9参照)。
【0052】
上記したように、空調最適化制御システム20をパーソナル空調制御に適用した場合には、顔認証カメラ11aの撮影画像により作業者が在席していか離席しているかを検知することができる。そのため、空調制御コントローラ25は、作業者が離席時に空調機器21や前記気流発生手段を停止させたり、低負荷で運転させたりすることで、省エネルギ化を図ることができる。また、顔認証カメラ11aによって高確率で作業者個人を特定することができるため、フリーアドレスなどで作業者が作業場所を変えたとしても、作業者個人に対応した最適な空調制御を行うことができる。
【0053】
なお、上記した本発明の実施の形態の説明では、空調最適化制御システム20をパーソナル空調制御システムに適用した場合について説明したが、これは単なる例示に過ぎず、本発明はパーソナル空調制御システム以外の空調制御システムにも適用可能である。
【0054】
例えば、多数の作業者が居る室内において、変風量装置(VAV)により空調制御系統毎に制御を行う空調制御システムの場合には、上記したパーソナル空調制御システムと同様に外気条件から各作業者の最適な室温を求め、それらの平均値を室内の設定温度とすることで、空調制御することもできる。また、作業者の蓄積データが存在しない場合には、図10に示されているフローにおいて、集中度の平均値を用いて、室内の設定温度を可変とすることもできる。
【0055】
上記したように本発明の実施の形態に係る空調最適化制御システム20によれば、リアルタイムに連続して得られる集中度によって、対象となる作業者の周囲の空調温度に瞬時に反映させることができる。そのため、温熱環境などの内外の環境が変化したとしても、知的生産性(集中度)を最大に維持することのできる最適な空調制御を比較的安価に提供することができる。
【0056】
なお、上記した本発明の実施の形態の説明は、本発明に係る集中度評価装置及び空調最適化制御システムにおける好適な実施の形態について説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0057】
10 集中度評価装置
11 推定年齢取得手段
13 標準偏差算出部(標準偏差算出手段)
14 標本標準偏差算出部(標本標準偏差算出手段)
15 集中度算出部(集中度算出手段)
20 空調最適化制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12