(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802337
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】無線通信システム用のアンテナおよびアンテナ発振器を反射板に固定するための方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/12 20060101AFI20201207BHJP
H01Q 19/10 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
H01Q1/12 Z
H01Q19/10
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-170597(P2019-170597)
(22)【出願日】2019年9月19日
(62)【分割の表示】特願2016-534955(P2016-534955)の分割
【原出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2019-213236(P2019-213236A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2019年10月21日
(31)【優先権主張番号】201310630121.X
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518168281
【氏名又は名称】ノキア シャンハイ ベル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,チェングアン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,ボ
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,ベイミン
【審査官】
岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表平11−511614(JP,A)
【文献】
特表昭64−500475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/100−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システム用のアンテナであって、
信号を伝送するための前側、および、前記前側と反対側の後側を有する反射板と、
前記反射板の前記前側に配置されたアンテナ発振器と、
前記反射板の前記後側に配置された位相シフタネットワークと、
前記反射板の前記前側に配置され、かつ、前記アンテナ発振器を前記反射板の前記前側に固定するよう構成された、アンテナ発振器固定機器と、
前記反射板の前記前側に配置された、半田付けのために用いられる機器と、
を備え、
前記アンテナ発振器は、前記反射板の前記前側に配置され、かつ、前記アンテナにより伝送および受信されることになる信号と所要電力とを移送するための同軸ケーブルに接続するよう構成された、同軸ケーブル半田付け端部を備え、
前記アンテナ発振器固定機器は、前記アンテナ発振器を固定するための凸状の板を含み、該凸状の板は固定のための孔を備え、
前記アンテナ発振器は、前記孔を介した前記凸状の板との間のネジ接続によって、該凸状の板に取り付けられ、且つ、該凸状の板から取り外されるように構成されており、
前記半田付けのために用いられる機器は誘導半田付けのために用いられる機器であり、
前記誘導半田付けのために用いられる機器は、
前記反射板上の、前記同軸ケーブル半田付け端部と前記同軸ケーブルとの間の接続点に配置され、かつ、
前記同軸ケーブル半田付け端部を前記同軸ケーブルに半田付けするよう構成され、かつ、
前記同軸ケーブル半田付け端部を前記同軸ケーブルから結合解除するよう構成されている、
アンテナ。
【請求項2】
前記同軸ケーブル半田付け端部は、前記反射板の前記前側に平行な方向に延びている、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記反射板は、前記同軸ケーブルが、前記アンテナにより伝送および受信されることになる信号と、所要電力とを移送して前記反射板を通過させることを可能にするよう構成された、孔を備える、請求項1に記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信技術に関し、より詳しくは、無線通信システム用のアンテナ、および、無線通信システムにおいてアンテナ発振器を反射板に固定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ発振器は、基地局アンテナにおける重要な装置である。アンテナ発振器は、信号を送信または受信するためのアンテナ発振器の端部で、ケーブルおよび位相シフタネットワーク(Phase Shifter Network)(PSN)を半田付けすることにより、接続することができる。一般に、アンテナ発振器は通常、反射板の後側からネジにより反射板に固定され、次いで、ケーブルがアンテナ発振器の接続端部に半田付けされる。
【0003】
図1および
図2は、先行技術に係るアンテナ構造体の模式図を示している。
図1および
図2はそれぞれ、アンテナ構造体を反射板の前側および後側から図示している。
図1より、アンテナ発振器120が反射板110の前側に取り付けられていることが分かるが、他方、従来のアンテナ発振器120の固定は反射板110の後側で行われる。この構造を
図2により示す。
図2より、アンテナ発振器120がネジ130により反射板110の後側に固定されていることが分かる。さらに、アンテナ発振器120は信号を受信または送信するために使用されるので、信号をそれぞれ伝送するケーブル141および142に接続される必要がある。従来の構造では、ケーブル141および142は通常、反射板110の後側で、アンテナ発振器120の接続端部に半田付けされる。最後に、位相シフタネットワーク(図示せず)を、ケーブル141および142ならびにネジ130に、すなわち反射板110の後側に取り付ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなアンテナ構造は一般に、使用時間に伴う老朽化または製造時における当初からの半田付け不良などの問題により、アンテナ発振器の取り換えが必要になる場合がある。すると、反射板の後側に被せられた位相シフタネットワークを、まず取り外さなくてはならない。しかし、取り外しは一般に不可逆的である。すなわち、このようにして取り外すと通常、取り付けられた位相シフタネットワークが損傷されることになる。これにより、アンテナの保守に関する問題が生じ、一方で保守の難しさが増加し、他方で保守のコストが増加する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
背景技術および既存の技術課題の上記理解に従い、本開示の第1の局面は、無線通信システム用のアンテナであって、
信号を伝送するための前側、および、前側と反対側の後側を有する反射板と、
反射板の前側に配置されたアンテナ発振器と、
反射板の後側に配置された位相シフタネットワークと、
反射板の前側に配置され、かつ、アンテナ発振器を反射板の前側に固定するよう構成された、アンテナ発振器固定機器とを備える、アンテナを提供する。
【0006】
本開示に係るアンテナ発振器およびアンテナ発振器固定機器はともに、反射板の一方の側、すなわち前側に取り付けられており、その結果、このような構造を有するアンテナが容易に取り外され、損傷した部分が低いコストで容易に取り換えられ、または、必要な半田付け品質が容易に向上される。
【0007】
本開示に係る実施形態では、アンテナ発振器は、反射板の前側に配置され、かつ、アンテナにより伝送および受信されることになる信号と、所要電力とを移送するための同軸ケーブルに接続するよう構成された、同軸ケーブル半田付け端部を備えている。このような仕方で、アンテナ発振器の同軸ケーブル半田付け端部と、アンテナにより伝送および受信されることになる信号ならびに所要電力を移送するための同軸ケーブルとの間の半田付け点も必然的に、反射板の前側に配置されることになり、それによりさらに、このような構造を有するアンテナを取り外すことおよび保守することが容易になる。
【0008】
本開示に係る実施形態では、同軸ケーブル半田付け端部は、反射板の前側に平行な方向に延びている。このような構造は製造が容易であり、続く半田付けプロセスを促進する。
【0009】
本開示に係る実施形態では、アンテナは、反射板上の、同軸ケーブル半田付け端部と同軸ケーブルとの間の接続点に配置され、かつ、同軸ケーブル半田付け端部を同軸ケーブルに半田付けするよう構成された、半田付け機器をさらに備えている。このような仕方で、アンテナの製造プロセスにおいて、利便性がより良くなる。すなわち、アンテナ発振器自体が半田付け機器を有しており、それにより、半田付けおよびその後の半田除去をともに促進する。
【0010】
本開示に係る実施形態では、半田付け機器は誘導半田付け機器である。このような仕方で、アンテナ発振器の同軸ケーブル半田付け端部と、アンテナにより伝送および受信されることになる信号ならびに所要電力を移送するための同軸ケーブルとの間の半田付け点の半田付け品質がさらに向上され、かつ、続く半田除去プロセスがより容易になる。
【0011】
本開示に係る実施形態では、誘導半田付け機器は、同軸ケーブル半田付け端部を同軸ケーブルから結合解除するよう、さらに構成されている。このような仕方で、今後ある部品が損傷した場合、または、半田付け点での半田付け品質が高くない場合に、構造体に不可逆的な破壊的損傷を引き起こすことなしに、さらなる改良が可能となる。
【0012】
本開示に係る実施形態では、反射板は、同軸ケーブルが、アンテナにより伝送および受信されることになる信号と、所要電力とを移送して反射板を通過させることを可能にするよう構成された、孔を備えている。
【0013】
本開示に係る実施形態では、アンテナの前側は、アンテナ発振器を固定するための凸状の板を備え、アンテナ発振器上に固定のための孔があり、孔と凸状の板との間にネジ接続が存在する。
【0014】
さらに、本開示の第2の局面は、無線通信システムにおいてアンテナ発振器を反射板に固定するための方法であって、
アンテナ発振器の固定機器を使用することにより、反射板の前側にアンテナ発振器を固定するステップと、
反射板の前側において、アンテナ発振器の同軸ケーブル半田付け端部を、半田付け機器を使用することにより、反射板の後側から延びる同軸ケーブルに接続するステップとを含む、方法を提供する。
【0015】
本開示に係る実施形態では、本方法は、
アンテナ発振器を取り換える必要があるときに、半田付け機器を使用することにより、アンテナ発振器の同軸ケーブル半田付け端部を、反射板の後側から延びる同軸ケーブルから結合解除するステップをさらに含んでいる。
【0016】
本開示に係る実施形態では、同軸ケーブル半田付け端部は、反射板の前側に平行な方向に延びている。
【0017】
本開示に係る実施形態では、アンテナ発振器の固定機器は、ネジ接続を使用することにより、アンテナ発振器を反射板の前側に固定する。
【発明の効果】
【0018】
本開示に係るアンテナおよび固定方法により、既存の位相シフタネットワークを損傷せずに容易に取り外されるアンテナ発振器を有するアンテナを製造することが可能となり、これにより、本開示に係るアンテナの保守性が劇的に向上され、かつ、保守および修理のコストも低減されることになる。
【0019】
本開示の他の特徴、目的および利点が、添付図面を参照して以下の非限定的な実施形態の詳細な説明を読むことで、より明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】先行技術に係るアンテナ構造体の前側の模式
図100を示す。
【
図2】先行技術に係るアンテナ構造体の後側の模式
図100を示す。
【
図3】本開示の第1の実施形態に係るアンテナ構造体の前側の模式
図300を示す。
【
図4】本開示の第2の実施形態に係るアンテナ構造体の前側の模式
図400を示す。
【
図5】本開示に係る無線通信システムにおいて、アンテナ発振器を反射板に固定するための方法のフローチャート500を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図では、同一または類似の参照番号は、異なる図を通じて、同一または似た機器(モジュール)またはステップを示す。
【0022】
図1および
図2はそれぞれ、先行技術に係るアンテナ構造体の前側および後側の模式図を示している。先行技術に係るアンテナ構造体は、背景技術において詳細に説明しており、ここでは繰り返さない。
【0023】
以下において、本開示に係るアンテナの構造図および本開示に係るアンテナを製造するための方法のフローチャートは、強調して示される。
【0024】
図3は、本開示の第1の実施形態に係るアンテナ構造体の前側の模式
図300を示している。
図3から、無線通信システム用のアンテナ300が以下の部品、
信号を伝送するための前側、および、前側と反対側の後側を有する反射板310と、
反射板310の前側に配置されたアンテナ発振器320と、
反射板310の後側に配置された位相シフタネットワーク(図示せず)と、
反射板310の前側に配置され、かつ、アンテナ発振器320を反射板310の前側に固定するよう構成された、アンテナ発振器固定機器330とを備えていることが分かる。
【0025】
本開示に係るアンテナ発振器320およびアンテナ発振器固定機器330はともに、反射板310の一方の側、すなわち前側に取り付けられており、その結果、このような構造を有するアンテナが容易に取り外され、損傷した部分が低いコストで容易に取り換えられ、または、必要な半田付け品質が容易に向上される。
【0026】
本開示に係る実施形態では、アンテナ発振器320は、反射板310の前側に配置され、かつ、アンテナにより伝送および受信されることになる信号と、所要電力とを移送するための同軸ケーブルに接続するよう構成された、同軸ケーブル半田付け端部をも備えている。このような仕方で、アンテナ発振器320の同軸ケーブル半田付け端部と、アンテナにより伝送および受信されることになる信号ならびに所要電力を移送するための同軸ケーブル341との間の半田付け点も必然的に、反射板の前側に配置されることになり、それによりさらに、このような構造を有するアンテナを取り外すことおよび保守することが容易になる。
【0027】
本開示に係る実施形態では、同軸ケーブル半田付け端部は、反射板310の前側に平行な方向に延びている。このような構造は製造が容易であり、続く半田付けプロセスを促進する。
【0028】
同軸ケーブル半田付け端部と、アンテナにより伝送および受信されることになる信号ならびに所要電力を移送するための同軸ケーブル341とがともに反射板310の前側に配置されている場合、かつ、限られた空間的なレイアウトなどの問題がある場合、従来の電気抵抗溶接で要求を満たすことができるが、アンテナ発振器320の同軸ケーブル半田付け端部と、アンテナにより伝送および受信されることになる信号ならびに所要電力を移送するための同軸ケーブル341との間の半田付け点の半田付け品質をさらに向上するために、本開示の別の実施形態を
図4により示す。
図4は、本開示の第2の実施形態に係るアンテナ構造体の前側の模式
図400を示している。
図4から、本開示に係るアンテナ400は、反射板310上の同軸ケーブル半田付け端部と、同軸ケーブル441との間の接続点に配置され、かつ、同軸ケーブル半田付け端部を同軸ケーブル441に半田付けするよう構成された、半田付け機器450をさらに備えていることが分かる。このような仕方で、アンテナの製造プロセスにおいて、利便性がより良くなる。すなわち、アンテナ発振器自体が半田付け機器を有しており、それにより、半田付けおよびその後の半田除去をともに促進する。
【0029】
本開示に係る実施形態では、半田付け機器450は誘導半田付け機器である。このような仕方で、アンテナ発振器420の同軸ケーブル半田付け端部と、アンテナにより伝送および受信されることになる信号ならびに所要電力を移送するための同軸ケーブル441との間の半田付け点の半田付け品質がさらに向上され、かつ、続く半田除去プロセスがより容易になる。
【0030】
本開示に係る実施形態では、誘導半田付け機器450は、同軸ケーブル半田付け端部を同軸ケーブル441から結合解除するよう、さらに構成されている。このような仕方で、今後ある部品が損傷した場合、または、半田付け点での半田付け品質が高くない場合に、構造体に不可逆的な破壊的損傷を引き起こすことなしに、さらなる改良が可能となる。
【0031】
本開示に係る実施形態では、反射板410は、同軸ケーブル441が、アンテナにより伝送および受信されることになる信号と、所要電力とを移送して反射板410を通過させることを可能にするよう構成された、孔を備えている。
【0032】
本開示に係る実施形態では、アンテナ400の前側は、アンテナ発振器420を固定するための凸状の板を備え、アンテナ発振器420上に固定のための孔があり、孔と凸状の板との間にネジ接続が存在する。当業者であれば、ここでの接続の仕方がネジ接続を含んでいるが、これに限定されず、リベット接続などの他の適切な接続の仕方であってもよいことを理解するであろう。
【0033】
上述したアンテナ構造体に加えて、本開示は、無線通信システムにおいてアンテナ発振器を反射板に固定するための方法をも提示する。
図5は、本開示に係る無線通信システムにおいて、アンテナ発振器を反射板に固定するための方法のフローチャート500を示している。
図5から、方法500が、以下の
まず、ステップ510で、アンテナ発振器の固定機器を使用することにより、反射板の前側にアンテナ発振器を固定するステップと、
次いで、続くステップ520で、反射板の前側において、アンテナ発振器の同軸ケーブル半田付け端部を、反射板の後側から延びる同軸ケーブルに接続するステップとを含むことが分かる。
【0034】
本開示に係る実施形態では、方法500は、
アンテナ発振器を取り換える必要があるときに(
図5に図示せず)、半田付け機器を使用することにより、アンテナ発振器の同軸ケーブル半田付け端部を、反射板の後側から延びる同軸ケーブルから結合解除するステップをさらに含んでいる。
【0035】
本開示に係る実施形態では、同軸ケーブル半田付け端部は、反射板の前側に平行な方向に延びている。
【0036】
本開示に係る実施形態では、アンテナ発振器の固定機器は、ネジ接続を使用することにより、アンテナ発振器を反射板の前側に固定する。
【0037】
本開示に係るアンテナおよび固定方法により、既存の位相シフタネットワークを損傷せずに容易に取り外されるアンテナ発振器を有するアンテナを製造することが可能となり、これにより、本開示に係るアンテナの保守性が劇的に向上され、かつ、保守および修理のコストも低減されることになる。
【0038】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明では、本開示の一部である添付図面が参照されることになる。例示として、添付図面は、本開示を実施することのできる特定の実施形態を示している。例示的な実施形態は、本開示に係るすべての実施形態を網羅することを意図していない。本開示の範囲を逸脱することなく、他の実施形態を採用してもよいこと、および、構造的または論理的な変更をしてもよいことを理解されたい。ゆえに、以下の詳細な説明は限定的でなく、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲により規定される。
【0039】
当業者にとって、本開示が上記の例示的な実施形態の詳細に限定されないことは明らかである。同時に、本開示の精神または本質的な特徴を逸脱することなく、本開示を他の特定の形態で実施することができる。ゆえに、どのような場合でも、実施形態は、例示的かつ非限定であるとみなすべきである。加えて、明らかに、「備える」および「含む」という語は他の要素およびステップを排除せず、「1つの」という表現は複数の形態を排除しない。装置クレーム中に記載の複数の要素は、1つの要素によっても実施することができる。「第1の」および「第2の」などという表現は、特定の順序を示すためでなく、指定を行うために使用されている。