【文献】
隅田 嘉裕,「空調システムの進化を支える最新技術」,三菱電機技報,三菱電機エンジニアリング株式会社,2014年10月20日,第88巻 第10号,第2頁−第6頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1通信機器及び第2通信機器のうち指定された模擬機器によるデータの送受信を模擬して、前記第1通信機器及び前記第2通信機器のうちの前記模擬機器とは異なる機器と通信する通信ステップと、
前記第1通信機器及び前記第2通信機器を含む通信システムにおいて伝送される特定のデータと前記通信システムを構成する機器の機種とを対応付けたシステム情報と、試験の対象となる前記第1通信機器及び前記第2通信機器の機種と通信アドレスとを対応付けた機器情報と、から前記特定のデータと前記通信アドレスとを対応付けた試験モデルを生成するモデル生成ステップと、
前記第1通信機器と前記第2通信機器との間で前記特定のデータが伝送される順序を判定するための式であって、予め定められた文法で記述される判定式から、前記試験モデルに含まれる前記特定のデータに関する式を抽出することで、試験の合否基準を示す基準データを生成する基準生成ステップと、
前記合否基準により、前記通信ステップにおいてなされた通信を試験した結果を示す情報を出力する出力ステップと、
を含み、
前記通信ステップでは、前記試験モデルに含まれる前記通信アドレスを用いて通信する、通信試験方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
実施の形態.
図1には、本実施の形態に係る試験システム100の構成が示されている。試験システム100は、通信システム10における通信が、予め規定された条件を満たすかどうかを試験するためのシステムである。試験システム100は、通信機能を備えた複数の機器を有する通信システム10と、通信システム10における通信を試験する通信試験装置20と、を有している。
【0012】
通信システム10は、通信機器11,12,13を有している。通信機器11〜13はそれぞれ、通信機能を有し、ネットワークNWを介して互いに通信をする。本実施の形態に係る通信機器11〜13はいずれも、住宅に設置された空調機器であってネットワークNWとしてのLAN(Local Area Network)に接続される。ただし、通信機器11〜13は、これに限定されない。例えば、通信機器11〜13は、住宅に設置される照明機器、調理機器、及びルータを含む通信機器に代表される家電機器であってもよいし、住宅の住人が利用する携帯端末又は自動車であってもよい。さらに、通信機器11〜13は、オフィスに設置された情報機器であってもよいし、工場に設置された生産設備であってもよい。ネットワークNWは、有線通信又は無線通信をするための通信網である
【0013】
本実施の形態では、通信機器11は、空調空気を室内空間に吹き出す室内機であって、通信機器12は、通信機器11と冷媒管を介して接続された室外機であって、通信機器13は、有線の操作端末とする。通信機器11〜13は、ネットワークNWを介して通信コマンドを送受信することで、協調して稼働する。このようにして通信機器11〜13が稼働することにより、室内機と室外機との間で冷媒が循環して、冷房運転又は暖房運転が実行される。
【0014】
通信試験装置20は、ネットワークNWを介して通信機器11〜13に接続されて、通信機器11〜13によって送受信されるデータを監視する。そして、通信試験装置20は、通信機器11〜13によってなされる通信を試験するためのデータを送信し、送信したデータに応じて通信機器11〜13から送信されたデータを受信することで、通信システム10における通信を試験する。
【0015】
図2には、通信試験装置20のハードウェア構成が示されている。
図2に示されるように、通信試験装置20は、プロセッサ21、主記憶部22、補助記憶部23、UI(User Interface)部24、及び送受信部25を有するコンピュータとして構成されている。主記憶部22、補助記憶部23、UI部24、及び送受信部25はいずれも、内部バス26を介してプロセッサ21に接続されている。
【0016】
プロセッサ21は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)を含んで構成される。プロセッサ21は、補助記憶部23に記憶されるプログラム28を実行することにより、後述の処理を実行する。
【0017】
主記憶部22は、RAM(Random Access Memory)を含んで構成される。主記憶部22には、補助記憶部23からプログラム28がロードされる。そして、主記憶部22は、プロセッサ21の作業領域として用いられる。
【0018】
補助記憶部23は、ハードディスク及びフラッシュメモリに代表される不揮発性メモリを含んで構成される。補助記憶部23は、プログラム28の他に、プロセッサ21の処理に用いられる種々のデータを記憶する。補助記憶部23は、プロセッサ21の指示に従って、プロセッサ21によって利用されるデータをプロセッサ21に供給し、プロセッサ21から供給されたデータを記憶する。
【0019】
UI部24は、入力キー及び静電容量方式のポインティングデバイスに代表される入力モジュールと、LCD(Liquid Crystal Display)及びスピーカに代表される出力モジュールと、を含んで構成される。UI部24は、ユーザによって入力された情報を取得して、取得した情報をプロセッサ21に通知する。また、UI部24は、プロセッサ21の指示に従って、種々の情報を外部に提示する。本実施の形態に係るUI部24は、表示デバイスを有し、この表示デバイスは、ポインティングデバイスと一体的に形成されることで、タッチスクリーンを構成する。
【0020】
送受信部25は、外部の機器とネットワークNWを介して通信するための通信インタフェース回路を含んで構成される。送受信部25は、ネットワークNWから信号を受信して、この信号に含まれるデータをプロセッサ21へ出力する。また、送受信部25は、プロセッサ21から出力されたデータを含む信号を、ネットワークNWへ送信する。
【0021】
通信試験装置20は、上述のハードウェア構成が協働することで、種々の機能を発揮する。
図3には、通信試験装置20の機能的な構成が示されている。
図3に示されるように、通信試験装置20は、種々のデータを取得する取得部201と、試験モデルを生成するモデル生成部202と、通信の合否基準を生成する基準生成部203と、試験を実行する試験部204と、外部の機器と通信する通信部205と、試験の結果を出力する出力部206と、を有している。
【0022】
取得部201は、主としてUI部24と送受信部25とによって実現される。取得部201は、通信システム10の通信に関する仕様を示すシステム情報31と、通信システム10を構成する機器のうち試験対象の機器に関する情報を示す機器情報32と、通信異常の有無を判定するための判定式を示す判定式情報33と、通信システム10を構成する機器のうちデータの送受信を模擬する対象を指定する指定情報34と、を取得する。取得部201は、ユーザにこれらの情報の入力を促すことで情報を取得してもよいし、これらの情報を記憶する記憶部(不図示)からこれらの情報を読み出すことで情報を取得してもよいし、ネットワークNWを介してサーバ(不図示)からこれらの情報を取得してもよい。以下、取得部201によって取得されるデータそれぞれについて、順に説明する。
【0023】
システム情報31は、通信システム10においてなされるべき通信シーケンスを列挙したデータである。詳細には、システム情報31は、
図4に示されるように、通信シーケンスの識別子と、通信シーケンスにおいて伝送されるデータに含まれる通信コマンドと、この通信コマンドの送信元機種及び送信先機種と、この通信コマンドの送信タイミングと、を対応付けたレコードを1組以上含むテーブルデータである。ここで、通信シーケンスの識別子は、値又は文字列であり、通信コマンドと、送信元機種及び送信先機種と、送信タイミングとはそれぞれ、コマンドの内容を示す値又は文字列と、機種を示す値又は文字列と、タイミングを示す値又は文字列である。なお、
図4中の送信タイミングは、通信シーケンスにおいて通信コマンドが伝送される順序を示す。送信タイミングは、タイムスタンプであってもよい。送信タイミングがタイムスタンプである場合には、この送信タイミングは、通信コマンドが伝送される順序と、通信コマンドが伝送される時間間隔と、を示すこととなる。
【0024】
図4中、レコード311は、室外機の電源を投入するための通信シーケンス「SQ1」において「1」番目に送信される通信コマンド「Power−On」と、この通信コマンドを送信する機種「室内機」と、この通信コマンドの宛先となる機種「室外機」と、が対応付けられたデータである。レコード312は、通信シーケンス「SQ1」において電源投入の完了を通知するために「2」番目に送信される通信コマンド「Power−On−Done」と、この通信コマンドを送信する機種「室外機」と、宛先となる機種「室内機」と、が対応付けられたデータである。
【0025】
また、レコード314は、室内機が内蔵の温度センサで検知した室内温度を有線端末に通知するための通信コマンド「Temp−Notice」と、この通信コマンドを送信する機種「室内機」と、宛先となる機種「有線端末」と、が対応付けられたデータである。通信コマンド「Temp−Notice」は、定期的に室内機から送信され、有線端末が室内温度を表示するために利用される。この通信コマンドを受けた有線端末が室内機を含む機器に通信コマンドを送ることは、本実施の形態に係るシステム情報31に規定されない。すなわち、通信シーケンス「SQ2」において2番目に送信される通信コマンドは、システム情報31に規定されない。
【0026】
また、レコード315は、室外機の電源を切断するための通信シーケンス「SQ4」において「1」番目に送信される通信コマンド「Power−Off」と、この通信コマンドを送信する機種「室内機」と、宛先となる機種「室外機」と、が対応付けられたデータである。レコード316は、通信シーケンス「SQ4」において電源切断の完了を通知するために「2」番目に送信される通信コマンド「Power−Off−Done」と、この通信コマンドを送信する機種「室外機」と、宛先となる機種「室内機」と、が対応付けられたデータである。
【0027】
機器情報32は、通信システム10を構成する機器のうち試験の対象となる機器を列挙したデータである。詳細には、機器情報32は、
図5に示されるように、試験の対象となる機器それぞれについて識別番号と機種と通信アドレスとを対応付けたレコードを1組以上含むテーブルデータである。ここで、識別番号は、値又は文字列であり、通信機種と、通信アドレスとはそれぞれ、機種を示す値又は文字列と、アドレスを示す値又は文字列である。なお、各レコードの順序は任意である。また、
図5中の識別番号は、便宜的に通信機器11〜13の符号に等しいものとしている。
【0028】
図5中、レコード321は、通信機器11の識別番号「11」と、「室内機」という機種と、通信アドレス「192.168.5.11」と、が対応付けられたデータである。レコード322は、通信機器12の識別番号「12」と、「室外機」という機種と、通信アドレス「192.168.5.12」と、が対応付けられたデータである。本実施の形態では、
図5に示されるように、通信機器11,12が通信試験の対象とされていて、通信機器13は試験の対象から除外されており、通信機器13に対応するレコードは機器情報32に含まれていない。
【0029】
判定式情報33は、通信コマンドに含まれる特定のデータについて予め定められた仕様に従うかどうかを判定するための式が記述されたデータである。この判定式は、特定のデータが伝送される順序を判定するための式であって、予め定められた文法で記述される。本実施の形態に係る判定式情報33は、時相論理式で記述される。
【0030】
図6には、判定式情報33の一例が示されている。
図6に示されるように、判定式情報33は、判定式を列挙したリストデータであって、各データの順序は任意である。
図6中、データ331は、「Power−On」を受信した室外機が「Power−On−Done」を送信することを判定するための式である。データ333は、「Echo−Request」という通信コマンドを受信した有線端末が「Echo」という通信コマンドを送信することを判定するための式である。データ334は、「Power−Off」を受信した室外機が「Power−Off−Done」を送信することを判定するための式である。いずれの判定式についても、その値は、真又は偽となる。なお、「Echo−Request」及び「Echo」は、通信可能であることを確認するための要求及び応答のコマンドである。
【0031】
指定情報34は、各機器にフラグを割り当てるための1つ以上のルールを含むフラグルールセットである。このルールは、各機器の通信アドレス又は機種に基づいて、機器をシミュレーション環境で稼働させるか、或いは実環境で稼働させるかを指定するデータである。
【0032】
図7には、各機器の通信アドレスに基づく指定情報34の一例が示されている。
図7に示されるように、指定情報34は、ルール番号と、各機器の通信アドレスに対して割り当てられたフラグと、が対応付けられたルールを列挙したテーブルデータである。フラグの値は、「シミュレーション」又は「実機」である。
【0033】
図3に戻り、モデル生成部202は、主としてプロセッサ21によって実現される。モデル生成部202は、システム情報31と機器情報32とから試験対象のモデルを示す試験モデルデータ35を生成する。詳細には、モデル生成部202は、機器情報32に含まれる機種が送受信する通信コマンドに対応するレコードをシステム情報31から抽出する。そして、モデル生成部202は、抽出したレコードに含まれる送信元機種、及び送信先機種を、機器情報32を参照することでアドレスに置換することにより、試験モデルデータ35を生成する。
【0034】
図8にはモデル生成部202によって生成される試験モデルデータ35の一例が示されている。
図8中のレコード351,352,355,356はそれぞれ、
図4に示されるレコード311,312,315,316に対応する。通信機器13は試験対象とされていないため、
図4中のレコード314に対応するレコードは、
図8に示されるデータに含まれない。換言すると、「有線端末」に対応するレコードが機器情報32に含まれないため、この機種に対応するレコードは
図8に示されるデータに含まれない。
【0035】
基準生成部203は、主としてプロセッサ21によって実現される。基準生成部203は、試験モデルデータ35と判定式情報33とから試験の合否基準を示す基準データ36を生成する。詳細には、基準生成部203は、判定式情報33を構成する判定式に対応するレコードが試験モデルデータ35に含まれているときに、この判定式と試験モデルデータ35のレコードとを対応付けることで、基準データ36を生成する。
【0036】
図9には、基準生成部203によって生成される基準データ36の一例が示されている。
図9中のレコード361は、
図6に示される判定式情報33のデータ331が、
図8に示される試験モデルデータ35のレコード351と通信コマンド「Power−On」を介して対応付けられていて、
図8中のレコード352と通信コマンド「Power−On−Done」を介して対応付けられていることから、これらのデータ331及びレコード351,352を組み合わせて生成されたデータである。また、
図9中のレコード362は、
図6中のデータ334が、
図8中のレコード355と通信コマンド「Power−Off」を介して対応付けられていて、
図8中のレコード356と通信コマンド「Power−Off−Done」を介して対応付けられていることから、これらのデータ334及びレコード355,356を組み合わせて生成されたデータである。
【0037】
試験部204は、主としてプロセッサ21によって実現される。試験部204は、指定情報34から選択したルールに従って各機器にフラグを割り当てて、割り当てられたフラグに従って構成した模擬システムにおける通信を試験する。模擬システムは、通信システム10の一部又は全部の機器が、機器情報32に基づいてシミュレーション上で実行される機器に置き換えられたシステムである。試験部204は、試験モデルデータ35と基準データ36とに基づいて、模擬システムを構成する機器に情報を入力し、当該機器から出力される情報を得て、得た情報が基準データ36に規定される基準を満たすか否かを試験する。詳細には、試験部204は、模擬システム上で、基準データ36に含まれる通信コマンドを送信し、この通信コマンドを受信した機器から応答される通信コマンドを受信して、受信した通信コマンドが判定式を満たすか否かを判定する。
【0038】
ただし、試験部204は、模擬システム上の通信コマンドの送信先となる機器が実機である場合に、通信コマンドのプロトコルを模擬システムに適したものから通信システム10に適したものに変換して、後述の通信部205に出力する。また、試験部204は、通信部205が通信システム10から受信した通信コマンドを取得して、取得した通信コマンドが基準を満たすか否かを判定する。そして、試験部204は、判定の結果を、出力部206に出力する。
【0039】
通信部205は、主として送受信部25によって実現される。通信部205は、試験部204から出力された通信コマンドを通信システム10に送信し、通信システム10上で伝送される通信コマンドを受信して試験部204に出力する。
【0040】
出力部206は、主としてUI部24によって実現される。出力部206は、試験部204によって実行された試験の結果をユーザに対して表示する。すなわち、出力部206は、通信部205による通信を基準データ36に含まれる判定式で試験した結果を出力する。なお、出力部206は、通信試験装置20が有する記憶装置、又は通信試験装置20にネットワークNWを介して接続された外部の記憶装置に、試験の結果を含む情報を出力してもよい。
【0041】
続いて、通信試験装置20によって実行される一連の処理について、
図10〜13を用いて説明する。
図10に示される処理は、通信試験装置20の特定のアプリケーションソフトウェアが実行されることで開始する。
【0042】
通信試験装置20は、まず、各種のデータを取得する(ステップS1)。具体的には、取得部201が、システム情報31、機器情報32、判定式情報33、及び指定情報34を取得する。
【0043】
次に、通信試験装置20は、試験モデルを生成する(ステップS2)。具体的には、モデル生成部202が、システム情報31と機器情報32とから試験モデルデータ35を生成する。
【0044】
次に、通信試験装置20は、基準データ36を生成する(ステップS3)。具体的には、基準生成部203が、試験モデルデータ35と判定式情報33とから基準データ36を生成する。
【0045】
次に、通信試験装置20の試験部204は、試験処理を実行する(ステップS4)。この試験処理について、
図11を用いて説明する。
【0046】
試験処理では、
図11に示されるように、まず、試験部204が、フラグを割り当てるためのルールを指定情報34から1つ読み出す(ステップS41)。例えば、試験部204は、最初にステップS41を実行するときには、
図7に示されるルール341を読み出す。
【0047】
次に、試験部204は、シミュレーションのフラグが付された通信機器によるデータの送受信を模擬し、実機のフラグが付された通信機器と通信することで、模擬システムを形成する(ステップS42)。例えば、ステップS41にて
図7中のルール341を読み出した場合には、試験部204は、
図12に示される模擬システム10aを形成することとなる。模擬システム10aは、通信機器11と同等に動作する模擬機器11aと、通信機器12と同等に動作する模擬機器12aと、実環境の通信機器13と、を有している。
【0048】
次に、試験部204は、基準データ36から判定式を1つ読み出す(ステップS43)。その後、試験部204は、読み出した判定式の真偽値を得るための通信コマンドを模擬システム上で送信する(ステップS44)。例えば、試験部204は、
図9中のレコード361を読み出して、アドレス「192.168.5.11」の機器から通信コマンド「Power−On」をアドレス「192.168.5.12」の機器へ送信する。
図12に示される模擬システム10aでは、この通信コマンド「Power−On」の送信元及び送信先の双方の機器がシミュレーション上で動作する。
【0049】
次に、試験部204は、読み出した判定式に従った通信が模擬システム上でなされるか否かを判定する(ステップS45)。具体的には、試験部204は、ステップS44で通信コマンドの送信先となった機器が模擬システム上で応答する通信コマンドを受信して、受信した通信コマンドがステップS43で読み出された判定式を満たすか否かを判定する。例えば、ステップS43にて
図9中のレコード361を読み出した場合には、試験部204は、アドレス「192.168.5.12」の機器から通信コマンド「Power−On−Done」が送信されるか否かを判定する。
【0050】
判定式に従った通信であると判定した場合(ステップS45;Yes)、試験部204は、基準を満たす旨の結果を出力する(ステップS46)。具体的には、試験部204は、基準を満たす旨の情報を出力部206に出力し、出力部206は、基準を満たす通信がなされたことを示す文字列又は図形を表示する。その後、試験部204は、ステップS48を実行する。
【0051】
一方、判定式に従った通信ではないと判定した場合(ステップS45;No)、試験部204は、基準を満たさない旨のエラーを含む結果を出力する(ステップS47)。具体的には、試験部204は、基準を満たさない旨の情報を出力部206に出力し、出力部206は、基準を満たさない通信がなされたこと、若しくは通信がなされなかったこと、又は通信異常を示す文字列又は図形を表示する。
【0052】
次に、試験部204は、未選択の判定式が基準データ36に含まれるか否かを判定する(ステップS48)。未選択の判定式があると判定した場合(ステップS48;Yes)、試験部204は、ステップS43に戻って、未選択の判定式を1つ読み出す。これにより、試験部204は、例えば
図9中のレコード362に含まれる判定式を読み出すこととなる。
【0053】
一方、未選択の判定式がないと判定した場合(ステップS48;No)、試験部204は、未選択のルールが指定情報34に含まれるか否かを判定する(ステップS49)。未選択のルールがあると判定した場合(ステップS49;Yes)、試験部204は、ステップS41に戻って、未選択のルールを1つ読み出す。これにより、試験部204は、例えば
図7中のルール342を読み出して、
図13に示される新たな模擬システム10bを形成することとなる。この模擬システム10bは、通信機器11と同等に動作する模擬機器11bと、実環境の通信機器12,13と、を有している。そして、試験部204は、この模擬システム10bを対象に、基準データ36に含まれる判定を1つずつ実行することで、模擬システム10bにてなされる通信を試験する。
【0054】
一方、未選択のルールがないと判定した場合(ステップS49;No)、試験部204による試験処理は終了して、通信試験装置20によって実行される処理は、
図10に示される一連の処理に戻る。そして、
図10に示されるように、試験処理が終了すると、通信試験装置20によって実行される一連の処理は終了する。
【0055】
以上、説明したように、通信試験装置20は、通信システム10を構成する通信機器11,12のうち、データの送受信を模擬する対象となる模擬機器を指定する指定情報34と、判定式を示す判定式情報33と、を取得する。そして、通信試験装置20は、指定された模擬機器によるデータの送受信を模擬して通信機器と通信し、当該通信を判定式により試験した結果を示す情報を出力する。この通信試験装置20を利用すれば、作業者は、模擬機器を指定して判定式情報を準備することで通信試験を容易に実施することができる。すなわち、通信システムの試験を実施する作業者の負担を軽減することができる。
【0056】
判定式情報33の判定式は、通信機器間で特定のデータが伝送される順序を判定するための式であって、予め定められた文法で記述された。このため、作業者が入れ替わっても判定式が変更されることはなく、試験の基準に曖昧さが残るリスク、及び、試験の基準と試験内容とに齟齬が生じるリスクを低減することができる。
【0057】
また、指定情報34の各ルールにより、通信システムを構成する複数の機器から通信試験の対象となる実機が指定された。このため、ルールを指定情報34に集約することで、膨大な数の通信試験を効率よく実施することができる。
【0058】
また、時相論理式を用いることで、試験部204は、いわゆるモデル検証の技術により効率的な試験を実施することができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態によって限定されるものではない。
【0060】
上記実施の形態に係る判定式は、特定のデータとして通信コマンドが伝送される順序を記述したものであったが、これには限定されない。例えば、判定式は、通信コマンド以外のデータを判定するものであってもよいし、通信コマンドが伝送される順序と時間間隔とを記述したものであってもよい。通信コマンドが伝送される時間間隔が判定式に記述されれば、試験対象となる通信機器の応答に異常に長い時間がかかるときに通信異常を検知することができる。
【0061】
上記実施の形態に係る通信試験装置20の機能は、専用のハードウェアによっても、また、通常のコンピュータシステムによっても実現することができる。
【0062】
例えば、補助記憶部23に記憶されるプログラム28を、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラム28をコンピュータにインストールすることにより、上述の処理を実行する装置を構成することができる。
【0063】
また、プログラム28をインターネットに代表される通信ネットワーク上のサーバ装置が有するディスク装置に格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、コンピュータにダウンロードするようにしてもよい。
【0064】
また、通信ネットワークを介してプログラム28を転送しながら起動実行することによっても、上述の処理を達成することができる。
【0065】
さらに、プログラム28の全部又は一部をサーバ装置上で実行させ、その処理に関する情報をコンピュータが通信ネットワークを介して送受信しながらプログラム28を実行することによっても、上述の処理を達成することができる。
【0066】
なお、上述の機能を、OS(Operating System)が分担して実現する場合又はOSとアプリケーションとの協働により実現する場合等には、OS以外の部分のみを媒体に格納して配布してもよく、また、コンピュータにダウンロードしてもよい。
【0067】
また、通信試験装置20の機能を実現する手段は、ソフトウェアに限られず、その一部又は全部を、回路を含む専用のハードウェアによって実現してもよい。
【0068】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。