特許第6802415号(P6802415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802415
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】パワースライドウィンドウ
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/646 20150101AFI20201207BHJP
   E05F 11/53 20060101ALI20201207BHJP
   E05F 15/655 20150101ALI20201207BHJP
   B60J 1/18 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   E05F15/646
   E05F11/53 A
   E05F15/655
   B60J1/18 N
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-533391(P2020-533391)
(86)(22)【出願日】2019年7月12日
(86)【国際出願番号】JP2019027726
(87)【国際公開番号】WO2020026769
(87)【国際公開日】20200206
【審査請求日】2020年8月10日
(31)【優先権主張番号】特願2018-143175(P2018-143175)
(32)【優先日】2018年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-169554(P2018-169554)
(32)【優先日】2018年9月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】中村 晃之
(72)【発明者】
【氏名】上岡 宏崇
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭一朗
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/47614(WO,A1)
【文献】 特開2011−202414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00 − 15/79
1/00 − 13/04,17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンドウガラスに設けられた開口をスライドパネルによって開閉するパワースライドウィンドウであって、
前記ウィンドウガラスのパネル面に沿って前記ウィンドウガラスに設けられるガイドレールと、
前記スライドパネルから前記パネル面に沿って前記ガイドレールの長手方向に交差する方向に突出する少なくとも1つのピンと、
前記ガイドレールに形成されて少なくとも1つの前記ピンを受容し、前記パネル面に沿って開閉方向に延在する溝主部及び、前記スライドパネルが閉位置の近傍に達した時に少なくとも1つの前記ピンを介して前記スライドパネルを前記ウィンドウガラスに近接する向きに駆動するべく前記溝主部から延出する少なくとも1つの溝延出部を有するピンガイド溝と、
前記ガイドレールに形成されたスライダガイド溝にスライド可能に設けられ、駆動源によって前記開閉方向にスライド駆動されるスライダと、
前記スライダに形成されて少なくとも1つの前記ピンに係合し、前記パネル面に交差する方向に延在し且つ前記溝主部の延在方向に対して全長に亘って傾斜する少なくとも1つのピン駆動溝と、
前記スライダガイド溝に設けられ、前記スライダの前記閉位置側への移動を規制するストッパと、
前記スライダガイド溝の延在方向における前記ストッパの位置を調整可能な位置調整構造とを有することを特徴とするパワースライドウィンドウ。
【請求項2】
前記位置調整構造は、前記スライダガイド溝及び前記ストッパの一方の側面に前記ガイドレールの長手方向に所定間隔に形成された少なくとも1つの係合凹部と、前記スライダガイド溝及び前記ストッパの他方の側面に形成され、前記係合凹部に係合する少なくとも1つの係合凸部とを含み、前記係合凹部と前記係合凸部との係合により、前記ストッパを前記スライダガイド溝の延在方向に異なる複数の位置にて前記ガイドレールに取り付け可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のパワースライドウィンドウ。
【請求項3】
前記ピン駆動溝は、前記主溝部に対する傾斜角が前記ウィンドウガラスから遠い側ほど大きくなるように湾曲していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパワースライドウィンドウ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウィンドウガラスに形成された開口を、駆動源によりスライド駆動されるスライドパネルによって開閉するパワースライドウィンドウに関する。
【背景技術】
【0002】
ウィンドウガラスに形成された開口を、ウィンドウガラスのパネル面に沿う方向及びパネル面に交差する方向にスライド駆動されるスライドパネルによって円滑に開閉するパワースライドウィンドウが本出願人によって提案されている(特許文献1)。特許文献1記載のパワースライドウィンドウでは、ガイドレールがウィンドウガラスのパネル面に沿って設けられている。ガイドレールには、駆動源によってスライド駆動されるスライダを案内するためのスライダガイド溝と、スライドパネルに設けられたピンを案内するためのピンガイド溝とが形成されている。スライダガイド溝はパネル面に沿って開閉方向に延びている。ピンガイド溝は、パネル面に沿って開閉方向に延びる溝主部と、溝主部からウィンドウガラスのパネル面に近接する方向に延びる溝延出部とを備えている。スライダにはパネル面に交差する方向に延在するピン駆動溝が形成されており、ピンはピン駆動溝を貫通してピンガイド溝に突入している。スライダがスライダガイド溝に沿って駆動されることにより、ピン駆動溝を介して駆動されたピンがピンガイド溝を移動する。スライドパネルは、ピンが溝延出部を移動する時にはウィンドウガラスに対して近接・離反する方向に移動し、ピンが溝主部を移動する時にはウィンドウガラスから離反した位置をパネル面に沿って移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/047614号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1記載のパワースライドウィンドウでは、ピン駆動溝のスライドパネル側の部分、即ちスライドパネルが閉位置にある時にピンが位置する溝延出部の延出端側の部分では、ピン駆動溝が溝主部と平行に延在している。この構成は、スライドパネルが閉位置に駆動する際に、スライダを正確な位置で停止させなくても、ピンがこの平行部分にある限りスライドパネルを閉位置に留める機能を果たす。
【0005】
しかしながら、ガイドレールの組付時にウィンドウガラスに対する主溝部の位置がずれたり、ピンの組付時にスライドパネルに対するピンの位置がずれたりすることがある。このような場合、閉位置にあるスライドパネルとウィンドウガラスとの間に段差が生じ、パワースライドウィンドウの見栄えや商品性が悪化する。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑み、組付精度に関わらず、閉状態におけるスライドパネルとウィンドウガラスとの段差を小さくすることができるパワースライドウィンドウを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明のある実施形態は、ウィンドウガラス(2)に設けられた開口(2a)をスライドパネル(3)によって開閉するパワースライドウィンドウ(1)であって、前記ウィンドウガラスのパネル面に沿って前記ウィンドウガラスに設けられるガイドレール(4)と、前記スライドパネルから前記パネル面に沿って前記ガイドレールの長手方向に交差する方向に突出する少なくとも1つのピン(16)と、前記ガイドレールに形成されて少なくとも1つの前記ピンを受容し、前記パネル面(2b)に沿って開閉方向に延在する溝主部(26a)及び、前記スライドパネルが閉位置の近傍に達した時に少なくとも1つの前記ピンを介して前記スライドパネルを前記ウィンドウガラスに近接する向きに駆動するべく前記溝主部から延出する少なくとも1つの溝延出部(26b)を有するピンガイド溝(26)と、前記ガイドレールに形成されたスライダガイド溝(27)にスライド可能に設けられ、駆動源(5)によって前記開閉方向にスライド駆動されるスライダ(20)と、前記スライダに形成されて少なくとも1つの前記ピンに係合し、前記パネル面に交差し且つ前記溝主部の延在方向に傾斜する方向に延在する少なくとも1つのピン駆動溝(30)と、前記スライダガイド溝に設けられ、前記スライダの前記閉位置側への移動を規制するストッパ(23)と、前記スライダガイド溝の延在方向における前記ストッパの位置を調整可能な位置調整構造(32)とを有する。
【0008】
この構成によれば、スライドパネルは、スライダのスライド駆動によってピン駆動溝により駆動されたピンが溝延出部を移動する時にウィンドウガラスに対して近接・離反し、ピンが溝主部を移動する時に開閉方向にスライドする。そして、ピン駆動溝が溝主部の延在方向に傾斜する方向に延在し、ストッパが位置調整構造によって位置調整可能とされたことにより、スライドパネルがウィンドウガラスに整合する位置でスライダの閉位置側への移動を規制することができる。これにより、組付精度に関わらず、閉状態におけるスライドパネルとウィンドウガラスとの段差を小さくすることができる。
【0009】
好ましくは、上記構成において、前記位置調整構造(32)は、前記スライダガイド溝(27)及び前記ストッパ(23)の一方の側面に前記ガイドレール(4)の長手方向に所定間隔に形成された少なくとも1つの係合凹部(33)と、前記スライダガイド溝及び前記ストッパの他方の側面に形成され、前記係合凹部に係合する少なくとも1つの係合凸部(34)とを含み、前記係合凹部と前記係合凸部との係合により、前記ストッパを前記スライダガイド溝の延在方向に異なる複数の位置にて前記ガイドレールに取り付け可能に構成されている。
【0010】
この構成によれば、位置調整構造を容易に形成できる上、ストッパのスライダガイド溝への抜き挿しによって容易にストッパの位置を調整できる。また、係合凹部及び係合凸部が、それぞれスライダガイド溝又はストッパの側面に形成されるため、スライダガイド溝内でストッパがずれることが抑制される。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明によれば、組付精度に関わらず、閉状態におけるスライドパネルとウィンドウガラスとの段差を小さくすることができるパワースライドウィンドウを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るパワースライドウィンドウの閉状態の全体構成を示す斜視図
図2図1に示されるパワースライドウィンドウの開状態の要部を示す斜視図
図3図1に示されるパワースライドウィンドウの分解斜視図
図4図1中のIV−IV断面図
図5図1中のV部の分解図
図6図1中のV部の拡大図
図7】閉状態のパワースライドウィンドウの(A)平断面図、(B)縦断面図
図8】パワースライドウィンドウの開閉動作を説明するための平面図
図9図6に示される位置調整構造の拡大図
図10】ストッパの位置に応じたスライドパネルの位置合わせの説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係るパワースライドウィンドウ1を、ピックアップ自動車のリヤウィンドウに適用した実施形態について詳細に説明する。以下、パワースライドウィンドウ1が自動車に搭載された状態を基準として前後、上下を定め、車室側からパワースライドウィンドウ1を見て、即ち自動車の前方から後方を見て左右を定める。また、前側及び後側を、車室を基準として内側及び外側ということがある。左右で対に設けられる部材には、同一の符号を付して符号の後ろに左右を示す添字「L」、「R」を付すことがある。総称する場合や左右の区別をしない場合には、添字を省略することがある。
【0014】
図1は、実施形態に係るパワースライドウィンドウ1の閉状態の全体構成を、斜め前方から(車室側から)示す斜視図である。パワースライドウィンドウ1は、ピックアップ自動車の車体に固定され、リヤウィンドウをなすウィンドウガラス2を備えている。ウィンドウガラス2は、主面を前後に向けて概ね鉛直に延在しており、主面に沿う左右の寸法が主面に沿う上下の寸法に比べて大きい横長の略矩形状とされている。ウィンドウガラス2は、左右方向及び上下方向において、後方に凸となるように若干湾曲している。
【0015】
ウィンドウガラス2には、その中央部に矩形の開口2a(図2)が形成され、この開口2aを閉じるように矩形のスライドパネル3が設けられている。ウィンドウガラス2の一方の主面である前面(以下、パネル面2bという)には、ウィンドウガラス2の周縁部及び開口2aの周縁部に、黒色顔料を含む塗料(黒セラ)の塗布により遮光処理が施された遮光部2cが形成されている。
【0016】
ウィンドウガラス2のパネル面2bの遮光部2cには、パネル面2bに沿って左右方向に水平に且つ互いに平行に延在する上下一対のガイドレール4が取り付けられている。スライドパネル3は、上下一対のガイドレール4に、ガイドレール4に沿って左右方向にスライド可能に設けられる。
【0017】
本実施形態では、スライドパネル3は、図1に示される開口2aを閉じる閉位置と、図2に示されるように、スライドパネル3が閉位置から左方にスライドすることで開口2aを全体に亘って開放する開位置との間をガイドレール4に沿ってスライドする。開位置において、スライドパネル3は閉位置よりも前方(ウィンドウガラス2の車室側)に位置している。
【0018】
他の実施形態では、スライドパネル3が、開位置において開口2aの一部を開放する構成や、閉位置から右方へスライドすることで開口2aを開放する構成とされてもよい。或いは、スライドパネル3が、閉位置から右方及び左方の両方へスライド可能に設けられ、閉位置から選択された一方にスライドすることで開口2aを開放する構成とされてもよい。更に、スライドパネル3が、開位置において閉位置よりも後方(ウィンドウガラス2の車外側)に位置してもよい。
【0019】
図1に示されるように、ウィンドウガラス2の下方には、スライドパネル3をスライド駆動するための駆動源5が設けられている。駆動源5は、電動モータ6と、減速機構と、減速機構を収容するハウジング8とを備え、ハウジング8を介して車体に固定される。ハウジング8には4本のガイドパイプ9が接続されている。右側に配置された2本のガイドパイプ9は、ハウジング8から右方へ延出し、その後上方へ湾曲して上下のガイドレール4にそれぞれ右方から接続されている。左側に配置された2本のガイドパイプ9は、ハウジング8から左方へ延出し、その後、上方へ湾曲して上下のガイドレール4にそれぞれ左方から接続されている。
【0020】
上側のガイドレール4に接続する2本のガイドパイプ9は、ハウジング8に対して比較的前方の位置で接続され、下側のガイドレール4に接続する2本のガイドパイプ9は、ハウジング8に対して比較的後方の位置で接続されている。各ガイドパイプ9の内部には、駆動源5の駆動力を伝達してスライドパネル3をスライド駆動するためのケーブル10(図3参照)が摺動可能に設けられる。
【0021】
右上のケーブル10と左上のケーブル10とは、前後方向に延びる回転軸を有する1つのプーリによって巻き取り・巻き出しを相補的に行われる。同様に、右下のケーブル10と左下のケーブル10とは、前後方向に延びる回転軸を有する他の1つのプーリによって巻き取り・巻き出しを相補的に行われる。これら2つのプーリは互いに一体とされており、上側の左右のケーブル10と下側の左右のケーブル10とは、駆動源5が有する2つのプーリによって同期して巻き取り・巻き出される。これらのケーブル10は、駆動源5の駆動力をスライドパネル3に(正確には、後述するようにスライダ20を介して)伝達する動力伝達手段をなす。
【0022】
図3は、図1に示されるパワースライドウィンドウ1の分解斜視図である。図4は、図1中のIV−IV断面図である。図3及び図4に示されるように、スライドパネル3は、ウィンドウガラス2と同じ厚さを有する可動ガラス11と、可動ガラス11の周縁に設けられたフレーム12とにより構成される。可動ガラス11は、ウィンドウガラス2の開口2aよりも若干小さく形成され、ウィンドウガラス2と面一となるように開口2a内にウィンドウガラス2と平行に配置されている。可動ガラス11の前面の周縁部には、黒色顔料を含む塗料(黒セラ)の塗布により遮光処理が施された遮光部11cが形成されている。
【0023】
フレーム12は、可動ガラス11の前面の遮光部11cに接着剤を介して接合されるブラケットフレーム13を有している。ブラケットフレーム13は、可動ガラス11の外形輪郭よりも小さな内形輪郭と可動ガラス11の外形輪郭よりも大きな外形輪郭とを有する矩形環状を呈している。ブラケットフレーム13は、図4に示されるように、可動ガラス11の前面から比較的近い位置で可動ガラス11に対向する内側部分13aと、可動ガラス11の前面と面一をなすウィンドウガラス2のパネル面2bから比較的遠い位置でウィンドウガラス2に対向する外側部分13bと、内側部分13aと外側部分13bとを連結する中間部分13cとを有するクランク形状の断面を有している。
【0024】
ブラケットフレーム13の外側部分13bの後面には、中空断面形状を有する環状のシール部材14が接着されている。シール部材14は、合成ゴム等の、弾性率が小さい弾性材料から形成されている。シール部材14は、外力を受けていない状態では、図4に想像線で示されるように、ブラケットフレーム13からウィンドウガラス2のパネル面2bまでの距離よりも大きな高さを有している。可動ガラス11がウィンドウガラス2と面一に配置された状態では、シール部材14は、図4に実線で示されるように高さを小さくするように弾性変形し、先端をウィンドウガラス2のパネル面2bに弾接させる。これにより、可動ガラス11とウィンドウガラス2との間のシール性が確保される。
【0025】
ブラケットフレーム13の前方には、ブラケットフレーム13及びシール部材14を覆う環状のカバーフレーム15が設けられている。カバーフレーム15は、適宜な位置でブラケットフレーム13に固定されている。このように、ブラケットフレーム13、シール部材14及びカバーフレーム15を有するフレーム12は、可動ガラス11の前面側(車室側)に設けられ、可動ガラス11の遮光部11cとウィンドウガラス2の遮光部2cとに亘って設けられる。これにより、可動ガラス11の周縁とウィンドウガラス2の開口縁との間の隙間は、フレーム12により車室側から全周に亘って覆われる。
【0026】
図3に示されるように、ブラケットフレーム13の上部における左右の端部には、左右の上側のピン16(16L、16R)がピンブラケット17を介して一体に設けられている。上側のピン16は、上方(即ち、ウィンドウガラス2のパネル面2bに沿ってスライドパネル3の開閉方向に交差する方向)に突出している。ブラケットフレーム13の下部における左右の端部には、下方に突出する左右の下側のピン16(16L、16R)がピンブラケット17を介して一体に設けられている。閉方向の側にある右上のピン16Rは、開方向の側になる左上のピン16Lよりも長く形成され、右下のピン16Rは、左下のピン16Lよりも長く形成されている。また、ブラケットフレーム13の上部における上面には、上方に突出する2つの板ばね18が設けられている。板ばね18は、上側のガイドレール4の下面に弾接してブラケットフレーム13を下方に付勢すると共に、ブラケットフレーム13のスライドに伴って上側のガイドレール4の下面を摺動する。
【0027】
上側のガイドレール4には、上側のスライダ20が摺動可能に設けられ、下側のガイドレール4には、下側のスライダ20が摺動可能に設けられている。各スライダ20は、上側及び下側のガイドレール4の互いの対向面に沿って延在する金属製の主板部材21(ステー)と、主板部材21の左右の端部に取り付けられて対応するガイドレール4に摺接する樹脂製の左右の摺動部材22(22L、22R)とを備えている。
【0028】
各摺動部材22には、スライドパネル3をスライド駆動するための4本のケーブル10のうちの対応する1本の端部が接続される。これにより、駆動源5の駆動力(張力)が上側のスライダ20及び下側のスライダ20に伝達される。主板部材21には、対応する上側又は下側の左右のピン16が係合する。即ち、スライドパネル3は、左右の上側のピン16及び左右の下側のピン16を介して上側のスライダ20及び下側のスライダ20に支持されている。4本のケーブル10は、上側のスライダ20及び下側のスライダ20を介して、スライドパネル3の上部及び下部における左右の端部に接続され、上側のスライダ20及び下側のスライダ20を介して駆動源5の駆動力をスライドパネル3に伝達する。
【0029】
他の実施形態では、動力伝達手段にプッシュプルケーブルが用いられ、上側の摺動部材22L、22Rの左右の一方及び下側の摺動部材22L、22Rの左右の一方に連結されていてもよい。この場合、上下のプッシュプルケーブルが上側及び下側のスライダ20から左右の一方のみに延出するように設けられてよい。或いは、上下のプッシュプルケーブルが、上側のスライダ20から一方へ延出し、下側のスライダ20から他方へ延出するように設けられてもよい。
【0030】
上下のガイドレール4の左側には、スライドパネル3の左方への移動時に、対応する上下のスライダ20の左端に当接することでスライドパネル3の移動を開位置で規制する2つの左のストッパ23(下側の1つのみを図示)が設けられる。更に、上下のガイドレール4の右側には、スライドパネル3の右方への移動時に、対応する上下のスライダ20の右端に当接することでスライドパネル3の移動を閉位置で規制する2つの右のストッパ23(下側の1つのみを図示)が設けられる。各ストッパ23は、少なくとも当接面に弾性部材を備えている。
【0031】
左下及び右下のケーブル10のスライダ20を介したスライドパネル3との接続構造は、ケーブル10の延出する向きが相反する点で異なり、他の点では同様である。下側及び上側のケーブル10のスライダ20を介したスライドパネル3との接続構造は、水平面に対して上下対称になっている点で異なり、他の点は同様である。そのため、これらのケーブル10を代表して、右下のケーブル10とスライドパネル3との接続構造について説明する。以下の説明では、「下側の」は省略する。
【0032】
図5図1中のV部の分解図であり、図6図1中のV部の拡大図である。なお、図5及び図6においては、カバーフレーム15を省略している。図7は、閉状態のパワースライドウィンドウ1の(A)平断面図、(B)縦断面図(図7(A)中のB−B線に沿って示す断面図)である。図5及び図7(A)に示されるように、ガイドレール4の上面(上側のガイドレール4との対向面)には、ピン16を受容して案内するピンガイド溝26と、スライダ20の左右の摺動部材22L、22Rをスライド可能に受容するスライダガイド溝27とが画定されている。
【0033】
ピンガイド溝26は、ガイドレール4に沿って左右に延びる溝主部26aを有している。溝主部26aの右端には、右斜め後方に向けて延出する右の溝延出部26bRが連続している。右の溝延出部26bRは、右側ほど後方を向くように湾曲している。溝主部26aの左右方向の中間部には、右斜め後方に向けて延出する左の溝延出部26bLが連続している。左の溝延出部26bLも、右側ほど後方を向くように湾曲している。右の溝延出部26bR及び左の溝延出部26bLは、ガイドレール4の長手方向に対して傾斜しており、平面視において実質的に同一の形状をなしている。但し、左の溝延出部26bLは、溝主部26aの中間部から後方に延出しているため、溝主部26aと重なる分だけ右の溝延出部26bRよりも小さい。
【0034】
スライダガイド溝27は、ガイドレール4に沿って左右に延びており、ピンガイド溝26の溝主部26aと同じ幅に形成されて前後方向において溝主部26aと重なる位置に配置されている。即ち、スライダガイド溝27とピンガイド溝26の溝主部26aとは、長手方向に重なる部分において互いに共通に形成されている。スライダガイド溝27は、ピンガイド溝26の溝主部26aと共通に形成された共通溝部27aと、溝主部26aの閉位置側の端部である右端を超えて右方(溝主部26aの延長方向)に延出する右側のスライダ専用溝部27bとを備えている。なお、本実施形態では、ケーブル10がスライダ20から左方へも延出していることから、スライダガイド溝27は、溝主部26aの開位置側の端部である左端を超えて左方(溝主部26aの延長方向)に延出する左側のスライダ専用溝部27b(図3参照)を更に備えている。
【0035】
図5に示されるように、摺動部材22は、スライダガイド溝27に突入する突入部28と、突入部28の上端にて前後方向に突出するように一体形成された1対のフランジ部29とを有している。1対のフランジ部29は、スライダガイド溝27の幅よりも大きくされており、スライダガイド溝27の外部にてガイドレール4の上面に摺接する。これにより、摺動部材22は突入部28のみをスライダガイド溝27に受容される。
【0036】
図7(A)に示されるように、スライダ20の主板部材21には、ピンガイド溝26に突入する左右の対応するピン16を挿通させる左右のピン駆動溝30が形成されている。なお、主板部材21には、ピン16の摺動抵抗を低減するために、ピン駆動溝30の摺接部を覆う樹脂部材31が一体にアウトサート成形されている。各ピン駆動溝30は、ピン16に係合してピン16を駆動するための溝であり、パネル面2bに交差する方向へのピン16の移動を許容するべく、パネル面2bに交差する方向に延在している。また、各ピン駆動溝30は、主板部材21の前部で概ね前後方向に延び、後方に向けて左方に湾曲(言い換えれば、後側ほど前後方向に対する傾斜角が大きくなるように湾曲)している。主板部材21の後部では、各ピン駆動溝30は、溝主部26aの延在方向に対して比較的小さな傾斜角度をもって傾斜して概ね直線状に伸びている。即ち、ピン駆動溝30は、左側から右側に向けて、溝主部26aの延在方向に対してウィンドウガラス2から離反する向きに傾斜しており、ウィンドウガラス2のパネル面2bに直交する方向である前後方向に対しても、溝主部26aの延在方向である左右方向に対しても角度をなして延在している。スライドパネル3が閉位置にある図6及び図7(A)の状態では、右のピン16は、ピン駆動溝30の後部(左端近傍)に位置し、ピンガイド溝26の右端(溝延出部26bの後端)に位置している。
【0037】
図5に示されるように、ピン16は、主板部材21のピン駆動溝30を貫通してピンガイド溝26に挿入されている。即ち、図6に併せて示されるように、ピン16はそのように配置された状態でピンブラケット17がブラケットフレーム13にビス止めされることによってスライドパネル3に固定されている。右下のケーブル10(図5)はスライダ20の右側の摺動部材22Rから右方へ延出している。
【0038】
同様に、図3に示されるように、左下のケーブル10はスライダ20の左端から左方へ延出し、左上のケーブル10は上のスライダ20の左端から左方へ延出し、右上のケーブル10は上のスライダ20の右端から右方へ延出している。
【0039】
図6に示されるように、右のストッパ23は、右側のスライダ専用溝部27bに設けられ、位置調整構造32によってスライダ専用溝部27bの延在方向に位置調整可能にガイドレール4に取り付けられている。位置調整構造32については詳述する。ストッパ23は、樹脂の射出成形品からなるストッパ本体24と、ストッパ本体24のスライダ20側の端部(開方向端)に設けられ、ゴム等の弾性材からなる緩衝部材25とを有している。スライダガイド溝27のストッパ23よりも右側の部分にはガイドパイプ9(図3参照)が受容されている。ストッパ23は、内部をケーブル10が挿通可能なように門型の断面形状をなしており、スライダガイド溝27の底面に向けて開放されたケーブル挿通溝23a(図9参照)を画定している。ガイドパイプ9の先端から延出する右下のケーブル10は右のストッパ23に形成されたケーブル挿通溝23aを通って右の摺動部材22Rに至っている。ケーブル10の端部は右の摺動部材22Rに保持される。
【0040】
図7(B)に示されるように、ピンガイド溝26の溝主部26aは一定の深さに形成されている。左の溝延出部26bLは溝主部26aよりも浅く形成され、右の溝延出部26bRは溝主部26aと同じ深さに形成されている。即ち、左の溝延出部26bLは、右の溝延出部26bRよりも浅く形成されている。また、スライダ専用溝部27bはピンガイド溝26の溝主部26aよりも浅く形成されている。
【0041】
スライダ専用溝部27b及びピンガイド溝26の深さDとピン16のピンガイド溝26への突入長さLとは、次のような関係となるように設定されている。即ち、左下のピン16Lの突入長さLLは、左の溝延出部26bLの深さDLよりも小さく、右下のピン16Rの突入長さLRは、左の溝延出部26bLの深さDL及びスライダ専用溝部27bの深さDSよりも大きく且つ右の溝延出部26bRの深さDRよりも小さくされている。即ち、下式(1)、(2)が成り立つ。
LL<DL ・・・(1)
DL、DS<LR<DR ・・・(2)
これにより、左下のピン16Lは左の溝延出部26bLに進入可能とされ、右下のピン16Rは、左の溝延出部26bL及びスライダ専用溝部27bに進入不能且つ右の溝延出部26bRに進入可能とされている。上側のピン16の突入長さLとスライダ専用溝部27b及びピンガイド溝26の深さDとの関係も同様である。
【0042】
図7(B)に示されるように、スライダ専用溝部27b及びピンガイド溝26の深さDとスライダ20(摺動部材22)のピンガイド溝26への突入長さLSとは、次のような関係となるように設定されている。即ち、スライダ専用溝部27bの深さDSは、スライダ20の突入長さLSよりも大きく且つ溝主部26aの深さ(即ち右の溝延出部26bRの深さDR)よりも小さくされている。即ち、下式(3)が成り立つ。
LS<DS<DR ・・・(3)
これにより、スライダ20はスライダ専用溝部27b及びピンガイド溝26の溝主部26aを摺動可能であり、溝主部26aからスライダ専用溝部27bに進入する時に段部に引っ掛かることがない。
【0043】
上記のように1つのプーリによって巻き取り・巻き出しが相補的に行われる右下のケーブル10と左下のケーブル10とは、スライドパネル3の下部をスライド駆動する下部駆動ケーブルを構成する。同様に、1つのプーリによって巻き取り・巻き出しが相補的に行われる右上のケーブル10と左上のケーブル10とは、スライドパネル3の上部をスライド駆動する上部駆動ケーブルを構成する。
【0044】
図8は、パワースライドウィンドウ1の開閉動作を説明するための平面図であり、スライドパネル3が(A)閉位置にある時、(B)閉位置に対して概ね前方にある時、(C)閉位置に対して前方且つ左方にある時の状態をそれぞれ示している。パワースライドウィンドウ1は、スライドパネル3を開作動させる場合には、図8(A)から順に図8(C)の状態を辿り、逆にスライドパネル3を閉作動させる場合には、図8(C)から順に図8(A)の状態を辿る。
【0045】
図8(A)に示されるように、スライドパネル3がウィンドウガラス2と面一となる閉位置にある時には、ピン16(16L、16R)は、主板部材21のピン駆動溝30の後部(左端近傍)に位置し、ピンガイド溝26の溝延出部26bの後端に位置している。この状態で、ケーブル10が左方へ相補的に巻き取り・巻き出しされ、スライダ20が左方へスライド駆動されると、図8(B)に示される状態になる。この時、左右のピン16がスライダ20によってそれぞれ対応するピン駆動溝30に沿って前方へ駆動されると共に、ピンガイド溝26の溝延出部26bに沿って前方及び左方へ移動する。これにより、スライドパネル3の全体が、ウィンドウガラス2と平行の姿勢を保ったまま、ウィンドウガラス2から離反する方向である前方からパネル面2bと平行な左方へ向きを変えつつスライドする。図8(B)の状態では、可動ガラス11の後面がウィンドウガラス2のパネル面2bよりも前方に位置する。
【0046】
この状態から更にケーブル10が、左方へ相補的に巻き取り・巻き出しされてスライダ20を左方へスライドさせると、図8(C)に示される状態になる。この時、左右のピン16がそれぞれ対応するピン駆動溝30の前端に位置したままピンガイド溝26に沿って左方へ移動する。これにより、スライドパネル3の全体が左方へスライドする。このように、主板部材21に前後方向に長いピン駆動溝30が形成されていることにより、スライダ20及びケーブル10の前後方向位置を変えることなく、スライドパネル3を前後方向にスライドさせることができる。
【0047】
スライドパネル3の開位置は、図2に示されるように、ウィンドウガラス2の開口2aの全体が開放される位置に設定されている。スライドパネル3が開位置にある時には、右のピン16Rは、溝主部26aにおいて左の溝延出部26bLよりも左方に位置する。
【0048】
スライドパネル3が開位置にある時に、ケーブル10が右方へ相補的に巻き取り・巻き出しされることにより、スライダ20が右方へスライド駆動される。この時、スライドパネル3は全開位置から右方へスライドし、図8(C)、図8(B)を経て、閉位置の近傍に達した時にピン16を介してウィンドウガラス2に近接する向きに駆動され、図8(A)の閉位置に戻る。
【0049】
図7(B)にて説明したように、右のピン16Rの突入長さLRは左の溝延出部26bLの深さDLよりも大きい。そのため、スライドパネル3の閉位置への移動の際、溝主部26aと左の溝延出部26bLとの分岐部(左の溝延出部26bLの横)を右のピン16Rが通過する時に、右のピン16Rが左の溝延出部26bLに進入することはない。
【0050】
また、上記のように、右のピン16Rの突入長さLRはスライダ専用溝部27bの深さDSよりも大きい。そのため、スライドパネル3の閉位置への移動の際、スライダ専用溝部27bと右の溝延出部26bRとの分岐部を右のピン16Rが通過する時に、右のピン16Rがスライダ専用溝部27bに進入することはない。
【0051】
このように、本実施形態に係るパワースライドウィンドウ1では、図8(A)及び(B)に示されるように、ピン16が溝延出部26bを移動することにより、スライドパネル3がウィンドウガラス2のパネル面2bに交差する方向にスライド駆動される。図8(B)及び(C)に示されるように、ピン16が溝主部26aを移動することにより、スライドパネル3がガイドレール4のパネル面2bに沿う方向にスライド駆動される。これらの動作により、スライドパネル3が閉位置と開位置との間を円滑にスライドして開口2aを開閉する。
【0052】
図9は、図6に示される位置調整構造32の拡大図である。図9に示されるように、ストッパ本体24の両側面には、ガイドレール4の長手方向に所定間隔に複数の係合凹部33が形成されている。スライダガイド溝27の両側面には、ガイドレール4の長手方向に係合凹部33と同じ間隔に、係合凹部33のよりも少ない数の係合凸部34がガイドレール4に一体に形成されている。係合凸部34は係合凹部33に対して相補完形状をなしており、係合凹部33に受容されることでストッパ23に係合する。これにより、ストッパ23はガイドレール4の長手方向に移動不能にガイドレール4に取り付けられる。
【0053】
係合凸部34の数は1以上であればよく、複数であってもよい。係合凸部34よりも多くの係合凹部33が形成されていることにより、ストッパ23を、ガイドレール4の長手方向の所望の位置でスライダガイド溝27に嵌めこむことができる。このように位置調整構造32は、係合凹部33と係合凸部34とを含んでいる。したがって、ストッパ23のスライダガイド溝27への抜き挿しによって容易にストッパ23の位置を調整することができ、スライダガイド溝27内でストッパ23がずれることも抑制される。また、ストッパ23及びガイドレール4に係合凹部33及び係合凸部34を形成するのみで、位置調整構造32を容易に形成することができる。
【0054】
他の実施形態では、ストッパ本体24の両側面に少なくとも1つの係合凸部34が形成され、係合凸部34よりも多くの係合凹部33がスライダガイド溝27の両側面に形成されてもよい。或いは、係合凹部33及び係合凸部34がストッパ本体24及びスライダガイド溝27のそれぞれの側面の一方に形成されてもよい。更には、係合凹部33及び係合凸部34がストッパ本体24の底面(門型の脚部の先端面)及びスライダガイド溝27の底面に形成され、これらによって位置調整構造32が構成されてもよい。
【0055】
図10は、ストッパ23の位置に応じたスライドパネル3の位置合わせの説明図である。図10(A)では、ストッパ23がスライダ20寄りの(開方向側の)位置でガイドレール4に取り付けられており、図10(B)では、ストッパ23がスライダ20から離れた(閉方向側の)位置でガイドレール4に取り付けられている。図10(A)に示されるように、この状態ではピン16がピン駆動溝30の後端(左端)よりも前寄り(右寄り)に位置しており、スライドパネル3がウィンドウガラス2よりも前側に位置し、両者の間に段差が生じている。
【0056】
このような場合、図10(B)に示されるように、位置調整構造32によってスライダ20から離間する開方向側へストッパ23を位置調整することにより、スライダ20がストッパ23に当接する閉状態において、ピン16がピン駆動溝30の後端(左端)寄りに移動し、スライドパネル3も後方(紙面上方)へ移動することから、スライドパネル3とウィンドウガラス2との段差が解消される。
【0057】
逆に、図10(B)に想像線で示されるように、この状態でスライドパネル3がウィンドウガラス2よりも後側に位置し、両者の間に段差が生じている場合には、ストッパ23の位置を図10(A)に示される位置へ調整する。これにより、図10(A)に想像線でされるように、スライドパネル3とウィンドウガラス2との段差が解消される。このようにしてストッパ23の位置を調整することにより、閉状態におけるスライドパネル3の前後方向の位置調整が可能である。
【0058】
以上のように、実施形態に係るパワースライドウィンドウ1では、ピン駆動溝30が溝主部26aの延在方向に傾斜する方向に延在し、ストッパ23が位置調整構造32によって位置調整可能とされている。そのため、スライダ20の閉位置側への移動を、スライドパネル3がウィンドウガラス2に整合する位置で規制することが可能である。これにより、組付精度に関わらず、閉状態におけるスライドパネル3とウィンドウガラス2との段差を小さくすることができる。具体的には、ピン16のスライドパネル3に対する組付精度及び、ガイドレール4(ピンガイド溝26)のウィンドウガラス2に対する組付精度が低くても、ストッパ23の位置調整によってスライドパネル3とウィンドウガラス2との段差を小さくすることができる。
【0059】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、一例としてピックアップトラックのリヤウィンドウにパワースライドウィンドウ1を適用したが、ワゴン車等のリヤウィンドウやサイドウィンドウに適用してもよい。各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 パワースライドウィンドウ
2 ウィンドウガラス
2a 開口
2b パネル面
3 スライドパネル
4 ガイドレール
5 駆動源
16 ピン
16L 左のピン
16R 右のピン
20 スライダ
26 ピンガイド溝
26a 溝主部
26bL 左の溝延出部
26bR 右の溝延出部
27 スライダガイド溝
30 ピン駆動溝
32 位置調整構造
33 係合凹部
34 係合凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10