(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記電線は、撚線からなり、上記電線の上記ポッティング層に挿入されている挿入部分における上記非被覆部分のうちの少なくとも一部は、防湿材が施されたものである請求項1乃至3の何れか1項に記載のタッチ検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている圧電スイッチにおいては、圧電素子に押圧力を加えて弾性変形させ、この弾性変形に基づいて生成された電荷によりスイッチ操作を検知しているので、スイッチを操作するために比較的大きな操作力が必要となり、軽いタッチで操作することができないという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載されている無接点押ボタンスイッチ回路は、圧電素子を発振回路の中に組み込んでおき、この圧電素子に押圧力が加えられることにより、圧電素子のインピーダンス等の電気的特性が変化して発振が低下又は停止することを利用して、使用者の押圧操作を検知している。この無接点押ボタンスイッチ回路では、圧電素子への僅かな押圧力でも、その電気的特性が変化し、圧電素子が組み込まれた発振回路の発振状態が変化するので、軽いタッチでも操作を検知することができる。
しかしながら、発振回路の発振状態は回路定数に極めて敏感であるため、操作を検知するための圧電素子を発振回路本体から離れた場所に設置すると、発振状態が不安定となり、誤検知を起こしやすいという問題がある。
【0008】
例えば、発振回路に組み込まれた圧電素子だけを水栓装置の吐水部近傍に配置し、発振回路の他の部分(発振回路本体)を水栓装置が設置されたカウンターボードの下側に配置した場合、圧電素子と発振回路本体を接続するリード線が比較的長くなる。このため、このリード線がもつインダクタンスや浮遊容量成分が発振回路の動作を不安定にし、誤動作を引き起こす場合がある。このような誤動作を防止するためには、圧電素子を発振回路本体の近傍に配置する必要がある。この場合には、例えば、水栓装置の吐水部近傍に操作部を配置するためには、発振回路全体を吐水部近傍に組み込む必要があり、水栓装置のデザインの自由度が大きく制約されることになる。
【0009】
そこで、本発明者らは、軽いタッチで操作することができると共に、水回り器具に使用した場合でも、誤動作を防止することを実現するために、ある程度離間した距離に位置する物体の検知に利用されてきた超音波素子をタッチセンサとして利用し、タッチ操作時に接触部がタッチされたときの振動の残響や減衰を検出することにも着目している。
また、このような超音波素子をタッチセンサとするタッチ検出装置については、振動励起素子である超音波素子を電線で電気的に接続する必要があるため、水周りで利用するには、樹脂等によるポッティングが必要となる。
しかしながら、超音波素子までも直接的にポッティングしてしまうと、超音波素子が振動できなくなるため、超音波素子が振動し得る空間を確保した上でポッティングしなければならないという問題がある。
さらに、このような超音波素子を水周り器具に組み込んだ場合、超音波素子について振動し得る空間を確保した上でポッティング層によってポッティングしたとしても、水周り器具の湯や水の使用状況や周囲環境による温度変化によって、ポッティング層に対して超音波素子側の内部空間とポッティング層の外部空間との間に温度差や気圧差が生じ易くなるという問題がある。
したがって、このようなポッティング層を介した内外の空間の気圧差により、例えば、ポッティング層の外部空間内の水蒸気を含む気体が電線を伝って超音波素子側の内部空間に引き込まれてしまい、超音波素子が湿気に晒されて機能性が低下する恐れがあるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、振動励起素子が湿気や水滴に晒された状態になることを防ぐことができ、振動励起素子の機能性の低下を防ぐことができる水周り器具に使用するタッチ検出装置、及び、それを備えた水栓装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は、水周り器具に使用するタッチ検出装置であって、対象物が接触する接触部を含み、この接触部への対象物の接触を検知する検知部と、この接触部を振動させる振動励起素子と、この振動励起素子に電圧を印加することにより上記接触部に振動を励起する駆動回路と、上記接触部の振動に基づいて、対象物が上記接触部に接触したか否かを判定する接触判定回路と、を含む検出回路と、上記振動励起素子と上記検出回路とを接続すると共に、被覆材で被覆された電線と、を有し、上記振動励起素子は、所定の内部空間を介して、樹脂によるポッティング層
に対して挿入されて貫いた状態の上記電線の一端部に接続されているものであり、上記電線は
、上記ポッティング層に挿入されている挿入部分が、上記被覆材が剥かれた非被覆部分を備えているものであることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、例えば、水周り器具の使用状況や周囲環境による温度変化によって、振動励起素子及び接触部が振動する所定の内部空間側と、ポッティング層の外側の空間との間で気圧差等が生じて、ポッティング層の外側の湿気等が所定の内部空間側に引き込まれ易い状況になったとしても、ポッティング層に挿入されている電線の挿入部分の非被覆部分によって、ポッティング層と電線の被覆材の表面との僅かな隙間から電線の被覆材の表面を伝って所定の内部空間内に入り込もうとするポッティング層の外側の湿気や水滴を縁切りすることができる。
したがって、振動励起素子が湿気や水滴に晒された状態になることを防ぐことができ、振動励起素子の機能性の低下を防ぐことができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記検知部の接触部は、水栓装置の一部に設けられている。
このように構成された本発明においては、検知部の接触部が水栓装置の一部に設けられていることにより、例えば、水栓装置を通水させると、ポッティング層の外側で吸湿されていたものが通水によって冷やされて、結露が生じてしまう恐れがあるが、ポッティング層に挿入されている電線の非被覆部分により結露が振動励起素子の内部空間への浸入を防ぐことができる。
したがって、検知部の接触部が設けられている水栓装置の部分や振動励起素子が設けられている内部空間について大型化することなく、効果的に防湿することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記電線の非被覆部分は、上記ポッティング層の途中に設けられている。
このように構成された本発明においては、電線の非被覆部分がポッティング層の途中に設けられていることにより、電線の非被覆部分以外の部分については、被覆材によって電線の強度性と防食性を高めることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、上記電線は、撚線からなり、上記電線の上記ポッティング層に挿入されている挿入部分における上記非被覆部分のうちの少なくとも一部は、防湿材が施されたものである。
このように構成された本発明においては、電線が撚線からなることにより、湿気が撚線同士の隙間を伝って透湿してしまう恐れがあるため、電線のポッティング層に挿入されている挿入部分における非被覆部分の少なくとも一部に防湿材を施すことにより、撚線同士の隙間を埋めることができる。
したがって、ポッティング層に挿入されている電線の挿入部分を確実に防湿することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、上記防湿材は、半田からなる。
このように構成された本発明においては、半田付けを行うことにより、電線の撚線同士の隙間を簡単に埋めることができ、ポッティング層に挿入されている電線の挿入部分を簡易に防湿することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、さらに、上記ポッティング層を受ける樹脂製のポッティング受け部と、このポッティング受け部と上記接触部との間に設けられたシール部材と、を有し、上記ポッティング層は、エポキシ樹脂からなる。
このように構成された本発明においては、比較的硬質な樹脂製のポッティング受け部が、エポキシ樹脂からなるポッティング層を受けることにより、熱収縮等の追従性が良く、互いの密着性が良好なポッティングを行うことができる。
【0017】
また、本発明は、タッチ操作により吐水及び止水を切り換えることができる水栓装置であって、上記タッチ検出装置と、上記検知部を有する操作部と、上記タッチ検出装置により対象物の上記検知部の上記接触部への接触判定に基づいて開閉される開閉弁と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、振動励起素子に湿気や水滴が溜まることを防ぐことができ、振動励起素子の機能性の低下を防ぐことができる水栓装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のタッチ検出装置、及びそれを備えた水栓装置によれば、振動励起素子が湿気や水滴に晒された状態になることを防ぐことができ、振動励起素子の機能性の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による水栓装置について説明する。
ここで、本実施形態の水栓装置1は、本発明の一実施形態によるタッチ検出装置Aが組み込まれたものであり、このタッチ検出装置Aにより使用者の操作を検知して、吐水、止水を切り換えることができるようになっている。
図1は、本発明の一実施形態によるタッチ検出装置、及び、それを備えた水栓装置の概略構成を示すブロック図である。
図2は、本発明の一実施形態によるタッチ検出装置の概略構成を示す回路図である。
図3は、本発明の一実施形態によるタッチ検出装置の検知部を拡大して示す断面図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の一実施形態による水栓装置1は、カウンターボードC上に取り付けられた水栓本体2と、この水栓本体2の先端部に設けられた検知部4と、この検知部4に取り付けられた振動励起素子である圧電素子6と、水栓本体2の基部2aに内蔵された湯水混合バルブ8とを備えている。
さらに、水栓装置1は、カウンターボードCの下側に配置された、湯及び水の供給、停止をそれぞれ切り換える開閉弁である湯用電磁弁10a及び水用電磁弁10bと、これらの電磁弁10a,10bの開閉を制御する制御部である水栓コントローラ12と、検知部4への操作に応じて水栓コントローラ12に信号を送る検出回路14とを備えている。
なお、本実施形態の水栓装置1のうち、検知部4、圧電素子6及び検出回路14は、タッチ検出装置Aを構成する。
【0022】
本実施形態の水栓装置1は、水栓本体2の先端部に設けられた検知部4の接触部16を使用者が軽くタッチすることにより、湯用電磁弁10a及び水用電磁弁10bのそれぞれが開閉され、止水状態と吐水状態を切り換えることができるようになっている。
したがって、本実施形態においては、検知部4が設けられた水栓本体2の先端部が、水栓装置1のタッチ操作用の操作部Bとして機能するようになっている。
【0023】
つぎに、
図1に示すように、水栓本体2は、カウンターボードCからほぼ垂直に立ち上がった後にほぼ水平方向に屈曲する基部2aと、この基部2aの先端2bに着脱可能に設けられた吐水部であるシャワーヘッド部2cとを備えている。このシャワーヘッド部2cは、基部2aに対して使用者側に引き出した状態で使用可能である、いわゆる、プルアウト式のシャワーヘッドであり、その先端部に検知部4が設けられている。
また、シャワーヘッド部2cにおける検知部4の近傍には、吐水部である吐水口2dが設けられており、この吐水口2dからシャワー吐水が可能となっている。
なお、本実施形態の水栓装置1では、一例として、水栓本体2の基部2aに対して着脱可能なプルアウト式のシャワーヘッド部2cを備えた形態について説明するが、このような形態に限られず、水栓本体2の基部2aから吐水口2dまで一体に設けられた形態であってもよい。
【0024】
さらに、
図1及び
図3に示すように、シャワーヘッド部2cの先端に設けられた検知部4の接触部16は、その表面の中央部が僅かに突出した湾曲面形状に形成されており、使用者の手指等の対象物が検知部4の接触部16に接触しているか否かを検知するための信号が検出回路14に送られるようになっている。
後述するように、検知部4には圧電素子6が内蔵されており、この圧電素子6は、水栓本体2内部に通された2本の電線である信号線18a、18bによって検出回路14に電気的に接続されている。
【0025】
また、
図3に示すように、表面が湾曲面形状に形成された検知部4の接触部16は、その外縁部16aに向かって水滴を誘導する水滴誘導手段として機能するようになっている。
このような検知部4の接触部16により、仮に、接触部16の表面に水滴が付着したとしても、この水滴を重力によって接触部16の湾曲面状の表面に沿って下方の外縁部16aの外部へ誘導して排除することができるため、接触部16の表面に水滴が付着したままの状態にすることなく、検知部4による誤検知を防ぐことができるようになっている。
また、検知部4の接触部16の表面が湾曲面状に突出した形状に形成されていることにより、タッチ操作時に、使用者の手指等の対象物を接触部16の表面に接触させる際には、接触部16の湾曲状の表面の中央部への接触を促すことができ、接触部16の振動を効果的に減衰させることができるため、検知部4の検知精度を高めることもできるようになっている。
さらに、
図3に示すように、本実施形態では、接触部16の表面が無電解テフロン(登録商標)ニッケルめっき等の撥水性を有する材料で形成されているため、水滴が接触部16の表面上に留まることなく、外部へ転がって落ち易くすることができるようになっている。
【0026】
湯水混合バルブ8は、水栓本体2の基部2aに内蔵されると共に、湯用電磁弁10aの下流側に接続された給湯管20a、及び水用電磁弁10bの下流側に接続された給水管20bにそれぞれ接続されている。また、湯水混合バルブ8には温調ハンドル8aが取り付けられており、この温調ハンドル8aを調整することにより、給湯管20aから供給された湯及び給水管20bから供給された水の混合比が設定され、吐水口2dから吐出される湯水の温度を調整することができる。また、湯水混合バルブ8において混合された湯水は、水栓本体2の内部に配置された通水部材(図示せず)を介して導かれ、吐水口2dから吐出される。
【0027】
湯用電磁弁10a及び水用電磁弁10bは、水栓コントローラ12からの制御信号に応じて開閉される電磁弁である。湯用電磁弁10aは、給湯器(図示せず)からの配管に接続され、開弁されると給湯管20aへ湯を流出させるようになっている。水用電磁弁10bは、上水道に接続されており、開弁されると給水管20bへ水を流出させるようになっている。
【0028】
水栓コントローラ12は、検出回路14からの出力信号に応じて、湯用電磁弁10a及び水用電磁弁10bに制御信号を出力し、これらを開閉させるようになっている。
検出回路14は、検知部4に内蔵された圧電素子6に電気的に接続されると共に、水栓コントローラ12に判定出力信号を出力するようになっている。
また、検出回路14は、圧電素子6に交流電圧を印加することにより、これを所定の周波数で超音波振動させると共に、圧電素子6の端子から出力信号を取得するようになっている。
さらに、検出回路14は、圧電素子6から取得した出力信号に基づいて、対象物である使用者の手指等が検知部4の接触部16にタッチ(接触)したか否かを判定し、判定結果を判定出力信号として水栓コントローラ12に出力するようになっている。
【0029】
具体的には、水栓コントローラ12及び検出回路14は、マイクロプロセッサ又はマイクロコンピュータ、半導体、電気抵抗、コンデンサ等の電子部品、及びマイクロプロセッサ等を作動させるプログラムを組み合わせることにより構成されている。
また、水栓コントローラ12及び検出回路14を上述した電子部品により一体的に構成してもよい。
【0030】
つぎに、
図2を参照して、検出回路14の構成について説明する。
図2に示すように、検出回路14には、マイクロコンピュータ22、駆動回路24、信号変換回路26、及び分圧回路28のそれぞれが内蔵されている。
まず、マイクロコンピュータ22は、これを作動させるプログラムにより機能する接触判定回路22a及び周波数調整回路22bを含む。
つぎに、マイクロコンピュータ22は、2つの出力ポート(第1の出力ポートP1、第2の出力ポートP2)からの出力信号により、駆動回路24を構成する2つのトランジスタ24a,24bを制御するようになっている。
また、マイクロコンピュータ22は、信号変換回路26から出力されたアナログ電圧の信号をディジタル値に変換するA/D変換回路を内蔵している。マイクロコンピュータ22に内蔵された各回路は、変換されたディジタル値に基づいて演算を行い、検知部4の接触部16へのタッチの有無を判定している。
【0031】
つぎに、駆動回路24は、電源側に接続されたPNPトランジスタ24a、アース側に接続されたNPNトランジスタ24b、及び2本の電気抵抗24c,24dから構成されている。
まず、PNPトランジスタ24aのエミッタ端子は、電源24eに接続され、ベース端子はマイクロコンピュータ22の出力ポートP1に接続されている。
また、電気抵抗24cは、PNPトランジスタ24aのベース−エミッタ間に接続されている。
一方、NPNトランジスタ24bのエミッタ端子はアースに接続され、ベース端子はマイクロコンピュータ22の出力ポートP2に接続されている。
また、電気抵抗24dは、NPNトランジスタ24bのベース−エミッタ間に接続されている。
さらに、PNPトランジスタ24a及びNPNトランジスタ24bの各コレクタ端子は互いに接続され、信号線18aを介して圧電素子6の一方の電極(入力端子)に接続されている。また、圧電素子6の他方の電極は、信号線18bを介してアースに接続されている。
【0032】
PNPトランジスタ24a及びNPNトランジスタ24bは、マイクロコンピュータ22の出力ポートP1,P2からの信号により、所定の周期で交互にオン−オフされる。
例えば、PNPトランジスタ24aがオン、NPNトランジスタ24bがオフとされた状態では、信号線18aには電源電圧と等しい電圧が出力される。
一方、PNPトランジスタ24aがオフ、NPNトランジスタ24bがオンとされた状態では、信号線18aはアース電位となる。これらの状態が所定周期で交互に繰り返されることにより、圧電素子6の一方の電極には、信号線18aを介して所定周波数の交流電圧が印加される。
また、圧電素子6に交流電圧が印加されていない状態においては、両方のトランジスタ24a,24bがオフにされ、各トランジスタ24a,24bのコレクタは、ハイインピーダンスな状態(実質的に、電気的に切り離された状態)にされる。
なお、本実施形態においては、PNPトランジスタ24a及びNPNトランジスタ24bを交互にオン−オフすることにより、圧電素子6に交流電圧を印加しているが、FET等、任意のスイッチング素子を使用して交流電圧を印加してもよい。
【0033】
つぎに、分圧回路28は、2本の電気抵抗28a,28bから構成され、圧電素子6の一方の端子に現れる電圧を分圧し、適正な電圧に調整するようになっている。
すなわち、電気抵抗28aの一方の端子は、信号線18aに接続され、他方の端子は電気抵抗28bの一方の端子に接続されている。
また、電気抵抗28bの他方の端子は、アースに接続されている。
これらにより、信号線18aに現れた電圧が、電気抵抗28a,28bの抵抗比により分圧され、適正な電圧に調整される。上述したように、圧電素子6に交流電圧が印加されている状態においては、圧電素子6の一方の端子(信号線18a)には、電源電圧とアース電位が所定周期で交互に現れる。
これに対して、駆動回路24の出力がハイインピーダンスにされた状態(両方のトランジスタ24a,24bがオフ)では、信号線18aには、圧電素子6により生成された起電力が現れる。
分圧回路28は、これらの電圧を分圧し、分圧された電圧を信号変換回路26に出力する。
すなわち、圧電素子6の一方の電極に接続された端子は、交流電圧を印加するための入力端子として機能し、また、この入力端子から、圧電素子6の出力信号が取得される。
【0034】
つぎに、信号変換回路26は、2つのコンデンサ26a,26b、ダイオード26c、及び電気抵抗26dから構成されている。
コンデンサ26aの一方の端子は、分圧回路28の電気抵抗28a,28bの接続点に接続され、他方の端子は、ダイオード26cのアノード端子に接続されている。
さらに、ダイオード26cのカソード端子は、マイクロコンピュータ22に内蔵されたA/D変換器の入力端子に接続されている。
また、ダイオード26cのカソード端子は、コンデンサ26b及び電気抵抗26dを介してそれぞれアースに接続されている。
これらにより、分圧回路28からの出力信号は、直流成分がコンデンサ26aにより除去され、直流成分が除去された信号がダイオード26cにより検波されると共に、コンデンサ26bにより高周波成分がカットされ、マイクロコンピュータ22のA/D変換器に入力される。
【0035】
つぎに、
図2及び
図3を参照して、検知部4の詳細について説明する。
図3に示すように、検知部4は、水栓本体2のシャワーヘッド部2cの先端に取り付けられた金属製の部材によって構成されており、水栓本体2と共に水栓装置1の外観を形成している。
検知部4は、使用者の手指等が触れる接触部16と、この接触部16の背面16bから軸方向(後方側)に延びる円筒部30とを備えており、この円筒部30の中に圧電素子6が取り付けられている。
ここで、接触部16の背面16bは、平らな面に形成され、この平らな面に圧電素子6が取り付けられているため、圧電素子6と接触部16の背面16bの平らな面とを接着し易くすることができるようになっている。
【0036】
さらに、検知部4は、水栓本体2のシャワーヘッド部2cの先端部の外側に設けられて、円筒部30の外周面を保持する保持部である保持部材32を備えている。
また、この保持部材32は、接触部16と同様に、黄銅又はステンレス等の金属材料からなるが、接触部16の全体の大きさよりも大きいため、振動が伝播し難い重厚なリング形状の形態で接触部16の円筒部30の外周面を覆うことができるようになっている。
これにより、圧電素子6から接触部16の背面16bに伝達された超音波振動が、接触部16の円筒部30の外周面から保持部材32に伝播したとしても、この保持部材32が、外側への振動伝播を抑制する振動伝播手段として機能するようになっている。
さらに、このような振動伝播手段である保持部材32により、接触部16の円筒部30の周囲から保持部材32の外側への振動伝播を効果的に抑制することができるため、タッチ操作時に使用者の手指等の対象物の接触を検知する範囲について接触部16の表面のみに限定することができ、検知部4が接触部16の表面以外の箇所での接触を検知してしまう誤検知を防ぐことができるようになっている。
【0037】
圧電素子6は、本実施形態においては、チタン酸バリウム、ジルコンチタン酸鉛等の圧電セラミックスを使用した円盤状の素子であり、この圧電セラミックスの両面にそれぞれ電極が設けられている。これらの電極間に信号線18a、18bを介して交流電圧を印加することにより、圧電素子6は全体として屈曲するような変形を繰り返し、振動する。
また、圧電素子6は、検知部4の接触部16の背面に接着剤により固着されているので、圧電素子6及び接触部16の背面16bは、一体となって屈曲振動する。
すなわち、圧電素子6に所定周波数の交流電圧を印加することにより、検知部4は数μm程度の振幅で屈曲振動する。
また、逆に、圧電素子6が屈曲振動されると、その電極間(信号線18a、18b間)に起電力が発生する。なお、本実施形態においては、印加される交流電圧の周波数は、圧電素子6と接触部16の背面16bが一体となって屈曲振動する際の共振周波数である約40kHzに設定されている。好ましくは、共振周波数は、約20kHz〜約60kHzの超音波帯域に設定する。
【0038】
つぎに、
図3に示すように、圧電素子6と検出回路14とを接続する電線である各信号線18a、18bは、その内部が銅、銅合金、又は、アルミニウム等の複数の金属細線を撚り合わせた撚線からなる。
また、
図3に示すように、各信号線18a、18bにおいては、基本的には、概ね撚線の束の外周がポリ塩化ビニル又はポリエチレン等の被覆材34a,34bで被覆されている被覆部分となっているが、後述するように、検知部4の内部の圧電素子6に接続される側の部分については、被覆材34a,34bが剥かれた非被覆部分36a,36bとなっている。
さらに、
図3に示すように、圧電素子6の背面側は、所定の内部空間V1を介して、樹脂によってポッティングされており、具体的には、エポキシ樹脂からなるポッティング層38を受けるポッティング受け部であるポッティング受け部材40によって覆われている。これにより、圧電素子6が接触部16の背面16bに所定の内部空間V1が確保されていると共に、ポッティング層38の外側(背面側)の外部空間V2とは、ポッティング層38及びポッティング受け部材40によって仕切られている。
【0039】
また、
図3に示すように、ポッティング層38を受けるポッティング受け部材40は、比較的硬質な樹脂、具体的にはPPS製であり、このポッティング受け部材40の外周面に沿って形成された凹溝40aには、シール部材であるOリング42が取り付けられている。このOリング42により、接触部16の円筒部30の内周面とポッティング受け部材40の外周面との間がシールされるようになっている。
さらに、PPS製のポッティング受け部材40が、エポキシ樹脂からなるポッティング層38を受けることにより、熱収縮等の追従性が良く、互いの密着性が良好なポッティングを行うことができるようになっている。
また、ポッティング受け部材40が防湿性に優れた樹脂であるPPSで構成されていることで、外側の湿気や水滴を縁切りすることができるようになっている。
【0040】
また、
図3に示すように、各信号線18a、18bの非被覆部分36a,36bは、ポッティング層38に挿入された状態で一端部が圧電素子6に接続されている。
さらに、各信号線18a、18bのポッティング層38に挿入されている状態の挿入部分については、その挿入口側からポッティング層38の途中部分までが被覆材34a,34bで被覆されており、ポッティング層38の途中部分から先端側の部分が、被覆材34a,34bが剥かれた非被覆部分36a,36bとなっている。
これにより、例えば、水栓装置1の使用状況や周囲環境による温度変化によって、圧電素子6及び接触部16の背面16bが振動する所定の内部空間V1側と、ポッティング層38の外側の空間(外部空間V2)との間で気圧差等が生じて、ポッティング層38の外側の湿気等が所定の内部空間V1側に引き込まれ易い状況になったとしても、ポッティング層38に挿入されている各信号線18a、18bの非被覆部分36a,36bによって、ポッティング層38と各信号線18a、18bの被覆材34a,34bの表面との僅かな隙間から各信号線18a、18bの被覆材34a,34bの表面を伝って所定の内部空間V1内に入り込もうとするポッティング層38の外側の湿気や水滴を縁切りすることができるようになっている。
したがって、内部空間V1の圧電素子6が湿気や水滴に晒された状態になることを防ぐことができ、圧電素子6の機能性の低下を防ぐことができるようになっている。
【0041】
さらに、
図3に示すように、検知部4の接触部16は、水栓装置1の水栓本体2の先端部に設けられていることにより、例えば、水栓装置1の水栓本体2の内部を通水させると、ポッティング層38の外側の外部空間V2内で吸湿されていたものが通水によって冷やされて、結露が生じてしまう恐れがあるが、その対策として、ポッティング層38に挿入されている各信号線18a、18bに非被覆部分36a,36bを設けたことにより、外部空間V2内の結露が圧電素子6の内部空間V1内への浸入を防ぐことができるようになっている。
加えて、検知部4の接触部16が設けられている水栓装置1の水栓本体2の先端部や圧電素子6が設けられている内部空間V1について大型化することなく、効果的に防湿することができるようになっている。
【0042】
さらに、
図3に示すように、各信号線18a、18bについては、非被覆部分36a,36bがポッティング層38の途中に設けられており、ポッティング層38の外側の外部空間V2では、各被覆材34a,34bで被覆されているため、電線としての強度性や防食性が高められている。
【0043】
さらに、
図3に示すように、各信号線18a、18bは、上述したように、撚線からなるが、各信号線18a、18bのポッティング層38に挿入されている非被覆部分36a,36bのうちの少なくとも一部は、防湿材が施されている。
ここで、防湿材としては、半田又は粘性の低いポッティング材料等が使用される。
これらにより、各信号線18a、18bが撚線からなることにより、湿気が撚線同士の隙間を伝って透湿してしまう恐れがあったとしても、ポッティング層38に挿入されている各信号線18a、18bの非被覆部分36a,36bの少なくとも一部に防湿材が施されていることにより、撚線同士の隙間を埋めることができ、ポッティング層38に挿入されている各信号線18a、18bの挿入部分について、簡易に且つ確実に防湿することができるようになっている。
また、圧電素子6の背面に接続される各信号線18a、18bの接続部44a,44bについても、防湿材である半田で接続されている。
【0044】
つぎに、
図4及び
図5を参照して、本発明の一実施形態による水栓装置のタッチ検出装置Aにおける検出原理を説明する。
図4は、本発明の一実施形態による水栓装置のタッチ検出装置において、使用者が検知部4にタッチしていない場合の圧電素子6の典型的な出力波形を示し、
図5は使用者が検知部4にタッチした場合の圧電素子6の典型的な出力波形を示す。
なお、
図4及び
図5は、上段にマイクロコンピュータ22の出力ポートP1、P2(
図2)からの出力電圧波形、中段に圧電素子6の出力電圧波形(信号線18a、18b間の電圧波形)、下段に信号変換回路26からの出力電圧波形(マイクロコンピュータ22のA/D変換器入力波形)を示すものである。
また、
図4及び
図5等は信号波形を模式的に示したものであり、交流電圧の印加中において出力される波の数等、実際の波形とは異なっている。
【0045】
まず、
図4の時刻t1において、圧電素子6への交流電圧の印加が開始される。すなわち、
図4の上段に示すように、マイクロコンピュータ22の出力ポートP1、P2に交互に電圧パルスが出力されることにより、駆動回路24(
図2)のPNPトランジスタ24aとNPNトランジスタ24bが交互にオンにされる。これにより、
図4の中段に示すように、圧電素子6の両電極間(信号線18a、18b間)にはパルス状の交流電圧が印加される。
この交流電圧の印加により、圧電素子6は屈曲振動される。上述したように、圧電素子6に印加される交流電圧の周波数は、一体化されて振動する検知部4の接触部16の背面16b及び圧電素子6の共振周波数と一致するように設定されている。このため、交流電圧の印加による検知部4の接触部16の背面16b及び圧電素子6の屈曲振動の振幅は数μm程度であり、他の周波数で振動が励起された場合よりも振幅が大きくなる。
なお、交流電圧の印加中においては、圧電素子6の端子(信号線18a)は、PNPトランジスタ24a又はNPNトランジスタ24bによって電源電圧又はアースの何れかに接続されているため、圧電素子6の両電極間電圧(
図4の中段)は、これらに支配される(圧電素子6の屈曲振動により生成された起電力が表れているのではない)。
【0046】
つぎに、
図4の時刻t2において、圧電素子6への交流電圧の印加が停止される。交流電圧の印加が停止されると、駆動回路24のPNPトランジスタ24a及びNPNトランジスタ24bはいずれもオフにされ、駆動回路24の出力はハイインピーダンス(電気的に切り離された状態)となる。
一方、検知部4の接触部16の背面16b及び圧電素子6は、時刻t1〜t2間の振動の励起により共振周波数で屈曲振動されており、時刻t2において交流電圧の印加が停止された後もこの振動が残留し(一般的に、この現象を「残響」と言う)、次第に減衰する(振動振幅が小さくなる)。
また、交流電圧の印加停止後は、駆動回路24の出力がハイインピーダンスとされているので、圧電素子6の両端子間(信号線18a、18b間)には、圧電素子6の屈曲振動により生成された起電力が表れる(
図4中段の時刻t2〜)。
【0047】
本発明の一実施形態による水栓装置1のタッチ検出装置Aは、このような交流電圧の印加停止後において検知部4(及び圧電素子6)に残る「残響振動」の大きさに基づいて、検知部4へのタッチ操作の有無を判定している。
ここで、
図4の中段に示すように、検知部4の接触部16へのタッチ操作が行われていない場合には、交流電圧の印加が停止した時刻t2後の電圧振幅が大きく、その振動が減衰するまでの時間も長くなる。
一方、
図5の中段に示すように、検知部4の接触部16へのタッチ操作が行われている(検知部4の接触部16に使用者の手指等が接触している)場合には、時刻t2後の電圧振幅が小さく、その振動も短時間で減衰している。
すなわち、検知部4の接触部16に使用者の手指等が接触している場合には、検知部4の振動が、接触部16に接触している手指等に吸収され、交流電圧の印加停止後に残る「残響振動」が小さくなるものと考えられる。
【0048】
本実施形態においては、
図4及び
図5の中段に示す圧電素子6の電圧波形の直流成分を除去し、検波した信号変換回路26の出力波形(
図4及び
図5の下段)に基づいてタッチの有無を判定している。
具体的には、本実施形態においては、時刻t2後の信号変換回路26の出力波形によって囲まれた面積(
図4及び
図5下段の斜線部の面積。励振停止後の検知部4及び圧電素子6の振動エネルギーに比例する。)の大きさに基づいてタッチの有無を判定している。
【0049】
つぎに、
図6及び
図7を参照して、本発明の一実施形態による水栓装置1の作用を説明する。
図6は、本実施形態の水栓装置1の作用を示すメインフローであり、
図7は、本実施形態の水栓装置の作用の一例を示したタイムチャートである。
なお、
図7のタイムチャートは、
図4及び
図5のタイムチャートと同様に、1段目に出力ポートP1,P2からの出力電圧波形、2段目に圧電素子6の出力電圧波形、3段目に信号変換回路26回路からの出力電圧波形を示し、最下段には、検出回路14から水栓コントローラ12に出力される判定出力を示したものである。
【0050】
図6のフローチャートにおける処理は、検出回路14に内蔵されたマイクロコンピュータ22及びプログラムによって実行される。
まず、ステップS1においては、圧電素子6に印加される交流電圧の周波数調整が周波数調整回路22bにより実行される。この周波数調整は、圧電素子6に印加される交流電圧の周波数を、検知部4及び圧電素子6の共振周波数に正確に一致させるための処理であり、この周波数調整回路22bによる処理は、本実施形態においては、検出回路14に対する電源投入時に実行される。
具体的には、マイクロコンピュータ22から圧電素子6に印加する交流電圧の周波数を少しずつ変化させ、交流電圧の印加停止後における検知部4(及び圧電素子6)に残る「残響振動」の大きさ(動作波形を
図4とすれば、
図4下段の時刻t2後の斜線部の面積)が最大となる周波数を選択することで、周波数調整が実行される。
また、変形例として、検出回路14に、周波数調整実行用のスイッチ(図示せず)を設けておき、このスイッチの操作により周波数調整が実行されるようにしてもよい。
【0051】
本実施形態の水栓装置1のタッチ検出装置Aは、その性能を十分に発揮させるためには、印加する交流電圧の周波数と、共振周波数を十分に一致させておく必要がある。検知部4の接触部16の背面16b及び圧電素子6が大きく振動する共振周波数には個体差があり、検出回路14に対して組み合わせる水栓本体2(検知部4及び圧電素子6)に応じて、印加する交流電圧の周波数を調整することが望ましい。
また、このような周波数調整機能を備えておくことにより、検出回路14に組み合わせる水栓本体2の個体ごとのバラツキに対応することができると共に、複数種類の水栓本体2に組み合わせることができる汎用の検出回路14を構成することも可能となる。
【0052】
つぎに、
図6のステップS2においては、10msタイマーがリセットされる。本実施形態においては、圧電素子6への交流電圧の印加がセンシング周期である10msごとに間欠的に実行される。
また、ステップS2においては、この交流電圧の印加の間隔を制御する10msタイマーがリセットされ、タイマーの積算が開始される。好ましくは、センシング周期は、約10〜100msに設定する。
さらに、ステップS3においては、サブルーチンとして、タッチ検出フローが実行される。ステップS3において実行されるタッチ検出は、
図4及び
図5を使用して説明した原理に基づいて実行されるものであるが、具体的処理については説明を省略する。また、
図7に示す例では、時刻t10においてステップS3が実行され、圧電素子6に対する交流電圧の印加が行われている。
【0053】
つぎに、
図6のステップS4においては、ステップS3における検出結果が「タッチ」であったか、「非タッチ」であったかであったかが判定される。「タッチ」であった場合にはステップS5に進み、「非タッチ」であった場合にはステップS11に進む。
図7に示す例では、時刻t10〜t11間に実行された励振(交流電圧の印加)後の残響が大きいため、「非タッチ」と判定されている。「非タッチ」と判定された後のステップS11においては、ステップS2において積算が開始されたタイマーが10msになるまで待機され、10ms経過するとステップS2に戻る。
【0054】
図6のステップS2においては、10msタイマーがリセットされて再び積算が開始され、ステップS3において再びタッチ検出が実行される。
図7に示す例では、時刻t10における前回の励振開始から10ms経過後の時刻t12において再びステップS3が実行されている。
さらに、
図7の例では、時刻t12において開始された励振停止後(時刻t13〜)の残響が小さいため、ステップS3における検出結果が「タッチ」と判定されている。ステップS3において「タッチ」と判定された場合には、ステップS4からステップS5に進む。
【0055】
つぎに、
図6のステップS5においては、ステップS3における検出結果が「非タッチ」から「タッチ」に変化したか否かが判断される。
図7の例では、時刻t10において開始された前回の検出結果が「非タッチ」であり、時刻t12において開始された今回の検出結果が「タッチ」であるため、ステップS6に進む。
【0056】
つぎに、
図6のステップS6においては、具体的な説明は省略するが「タッチ確認検出」であるフローチャートが、サブルーチンとして実行される。この「タッチ確認検出」は、ステップS3における「タッチ検出」による誤検知を防止するために、ステップS3による検出結果が「非タッチ」から「タッチ」に変化した場合に実行される処理である。
具体的には、「タッチ確認検出」は、「タッチ検出」と同じ動作であり、短いタイミングで同じ「タッチ検出」動作を繰り返すことで、偶発的なノイズによる誤動作を防止する。
図7の例では、ステップS3における「タッチ検出」が終了した直後の時刻t14において「タッチ確認検出」が開始されている。
【0057】
つぎに、
図6のステップS7においては、「タッチ確認検出」の結果が「タッチ」であったか否かが判断される。「非タッチ」であった場合には、ステップS3における「タッチ」の検出が誤検知であった可能性が高いため、電磁弁の開閉を行うことなく、ステップS11に進み、時刻t12から10ms経過するまで待機される。一方、「タッチ確認検出」の結果が「タッチ」であった場合には、「タッチ」の判定が確定され、ステップS8に進む。
【0058】
つぎに、
図6のステップS8においては、水栓装置1が吐水状態であるか否かが判断され、吐水中である場合にはステップS10に進み、吐水中でない場合にはステップS9に進む。
ステップS10では、吐水状態において新たに検知部4の接触部16がタッチされた(時刻t12)ことになるため、湯用電磁弁10a及び水用電磁弁10bが閉弁され、止水状態に切り換えられる。
具体的には、検出回路14において「タッチ」の検出が確定されると、「タッチ確定」を表す信号が検出回路14から水栓コントローラ12に出力され、水栓コントローラ12は、湯用電磁弁10a及び水用電磁弁10bに制御信号を送って、これらを閉弁させる。
一方、ステップS9では、止水状態において新たに検知部4の接触部16がタッチされた(時刻t12)ことになるため、湯用電磁弁10a及び水用電磁弁10bが開弁され、吐水状態に切り換えられる。
図7に示す例においては、時刻t14において開始されたステップS6のタッチ確認検出により「タッチ」の検出が確定され、時刻t15において「タッチ」の検出が確定されたことを示す判定出力が水栓コントローラ12に出力されている。
【0059】
このように、検知部4の接触部16への「タッチ」が検出された場合であっても、ステップS3におけるタッチ検出は、所定のセンシング周期である10msごとに等間隔で実行される。
すなわち、
図7に示す例では、時刻t12から10ms後の時刻t16においてステップS3が実行される。時刻t16において実行されたタッチ検出においても依然として残響が小さく、検知部4の接触部16はタッチされたままの状態にあるため、
図6のフローにおける処理は、ステップS3→S4→S5→S12の順に実行される。
【0060】
つぎに、
図6のステップS12においては、「タッチ」された状態の継続時間が計測される。具体的には、
図7の時刻t15において「タッチ」の判定が確定された後の経過時間が計測される。
つぎに、
図6のステップS13においては、ステップS12において計測されたタッチ継続時間が1分を超えたか否かが判断される。1分を超えていない場合には、ステップS11に進み、使用者が検知部4の接触部16にタッチしている間は、ステップS11→S2→S3→S4→S5→S12→S13→S11の処理が繰り返される。
一方、1分を超えた場合にはステップS13→S10に進み、水栓装置1の状態に関わらず湯用電磁弁10a及び水用電磁弁10bが閉弁される。
すなわち、使用者が1分を超えて検知部4の接触部16にタッチしているのは異常な操作であり、タッチの誤検知、又は故障の可能性が高い。このため、水栓装置1の状態に関わらず湯用電磁弁10a及び水用電磁弁10bを閉弁させ、水の浪費を防止する。
【0061】
さらに、
図7の時刻t17において実行されたステップS3のタッチ検出において「非タッチ」が検出されると、使用者が検知部4の接触部16から手指を離したことが認識され、検出回路14からの判定出力は、「非タッチ」に変更される(時刻t18)。
しかしながら、水栓装置1の状態は、
図7の時刻t15において切り換えられた状態(吐水状態又は止水状態)が継続される。時刻t18以後、使用者によって検知部4の接触部16が再びタッチされるまでは、
図6のフローにおいては、ステップS3→S4→S11→S2→S3の処理が繰り返される。
【0062】
その後、使用者が検知部4の接触部16を再びタッチし、このタッチが確認された場合には、
図6のフローでは、ステップS3→S4→S5→S6→S7→S8の順に処理が行われ、水栓装置1の状態が切り換えられる(
図7の時刻t15以前の状態に戻る)。このように、本実施形態の水栓装置1は、使用者が検知部4の接触部16にタッチする(使用者が検知部4の接触部16に触れてから離すまでの動作)ごとに吐水状態と止水状態が交互に切り換えられる。
【0063】
上述した本発明の一実施形態による水栓装置1のタッチ検出装置Aによれば、例えば、水栓装置1の使用状況や周囲環境による温度変化によって、圧電素子6及び接触部16が振動する所定の内部空間V1側と、ポッティング層38の外側の空間V2との間で気圧差等が生じて、ポッティング層38の外側の湿気等が所定の内部空間V1側に引き込まれ易い状況になったとしても、ポッティング層38に挿入されている各信号線18a、18bの挿入部分の非被覆部分36a,36bによって、ポッティング層38と各信号線18a、18bの被覆材34a,34bの表面との僅かな隙間から各信号線18a、18bの被覆材34a,34bの表面を伝って所定の内部空間V1内に入り込もうとするポッティング層38の外側の湿気や水滴を縁切りすることができる。
したがって、内部空間V1の圧電素子6が湿気や水滴に晒された状態になることを防ぐことができ、圧電素子6の機能性の低下を防ぐことができる。
【0064】
また、本実施形態の水栓装置1のタッチ検出装置Aによれば、検知部4の接触部16が水栓装置1の水栓本体2の一部(先端部)に設けられていることにより、例えば、水栓装置1の水栓本体2の内部を通水させると、ポッティング層38の外側の外部空間V2内で吸湿されていたものが通水によって冷やされて、結露が生じてしまう恐れがあるが、ポッティング層の外側で吸湿されていたものが通水によって冷やされて、結露が生じてしまう恐れがあるが、ポッティング層38に挿入されている各信号線18a、18bに非被覆部分36a,36bを設けたことにより、外部空間V2内の結露が圧電素子6の内部空間V1内への浸入を防ぐことができる。
したがって、検知部4の接触部16が設けられている水栓装置1の水栓本体2の先端部や圧電素子6が設けられている内部空間V1について大型化することなく、効果的に防湿することができる。
【0065】
さらに、本実施形態の水栓装置1のタッチ検出装置Aによれば、各信号線18a、18bの非被覆部分36a,36bがポッティング層38の途中に設けられており、ポッティング層38の外側の外部空間V2では、各被覆材34a,34bで被覆されているため、各信号線18a、18bの非被覆部分36a,36b以外の部分については、被覆材34a,34bによって電線の強度性と防食性を高めることができる。
【0066】
また、本実施形態の水栓装置1のタッチ検出装置Aによれば、各信号線18a、18bが撚線からなることにより、湿気が撚線同士の隙間を伝って透湿してしまう恐れがあったとしても、ポッティング層38に挿入されている各信号線18a、18bの非被覆部分36a,36bの少なくとも一部に防湿材が施されていることにより、撚線同士の隙間を埋めることができる。
したがって、ポッティング層38に挿入されている各信号線18a、18bの挿入部分である非被覆部分36a,36bについて、簡易に且つ確実に防湿することができる。
【0067】
さらに、本実施形態の水栓装置1のタッチ検出装置Aによれば、半田付けを行うことにより、各信号線18a、18bの電線の撚線同士の隙間を簡単に埋めることができ、ポッティング層38に挿入されている各信号線18a、18bの挿入部分(非被覆部分36a,36b)を簡易に防湿することができる。
【0068】
また、本実施形態の水栓装置1のタッチ検出装置Aによれば、比較的硬質な樹脂製のポッティング受け部40が、エポキシ樹脂からなるポッティング層38を受けることにより、熱収縮等の追従性が良く、互いの密着性が良好なポッティングを行うことができる。