特許第6802524号(P6802524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧

特許6802524メタン化触媒担体、それを用いたメタン化触媒及びメタンの製造方法
<>
  • 特許6802524-メタン化触媒担体、それを用いたメタン化触媒及びメタンの製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802524
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】メタン化触媒担体、それを用いたメタン化触媒及びメタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 21/08 20060101AFI20201207BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20201207BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20201207BHJP
   C07C 1/12 20060101ALI20201207BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20201207BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20201207BHJP
【FI】
   B01J21/08 M
   B01J32/00
   B01J23/755 M
   C07C1/12
   C07C9/04
   !C07B61/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-59994(P2017-59994)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-161617(P2018-161617A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今川 晴雄
(72)【発明者】
【氏名】福井 雅幸
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−056322(JP,A)
【文献】 特開平06−316416(JP,A)
【文献】 特開2009−034650(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/013488(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第106391028(CN,A)
【文献】 特表2014−515698(JP,A)
【文献】 特開2018−122247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ZrO及びAl−ZrOからなる群から選択される少なくとも1種の結晶性の酸化物粉末とSiOとを備える触媒担体であって、
前記SiOの少なくとも一部が、前記酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在しており、
Si原子の含有量が、前記触媒担体を構成する全金属原子の量に対して1〜15at%である、
ことを特徴とするメタン化触媒担体。
【請求項2】
前記酸化物粉末がテトラゴナル型又はキュービック型の結晶構造を含むものであることを特徴とする請求項1に記載のメタン化触媒担体。
【請求項3】
前記触媒担体中のAl原子の含有量が、前記触媒担体を構成する全金属原子の量に対して7at%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のメタン化触媒担体。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のメタン化触媒担体と、該触媒担体に担持された、Ni、Fe、及びCoからなる群から選択される少なくとも1種の金属と、を備えることを特徴とするメタン化触媒。
【請求項5】
請求項4に記載のメタン化触媒に、二酸化炭素と水素との混合ガスを接触せしめることを特徴とするメタンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン化触媒担体、それを用いたメタン化触媒及びメタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のメタン化反応はCOを原料とした反応であり、石油由来のCOからメタンを製造する方法等として実用化されている。これに対して、COを原料としたメタン化反応は、近年の地球温暖化抑制のためのCO排出量削減の観点から注目されているが、未だ実用化には至っておらず、貴金属であるRuやベースメタル元素であるNiが、COを原料としたメタン化反応において高い活性を示す触媒として検討されている。
【0003】
しかしながら、貴金属触媒は高コストであるため、製造コストの面では、メタン化触媒としてベースメタル元素を使用することが望ましいが、ベースメタル元素は反応温度によって活性が低くなる場合があり、CO転化率が必ずしも十分に高いものではなかった。
【0004】
そこで、高い触媒活性を示す安価な触媒として、安価なベースメタル元素と高活性の貴金属とを組合せた触媒が提案されている。例えば、特公昭61−29778号公報(特許文献1)には、ミクロ−マクロ二元細孔構造を有する成形担体上に、触媒基質としての鉄族金属と希土類元素の酸化物及び白金族金属とを組合せて担持せしめた還元用触媒、及び、この還元用触媒に、二酸化炭素及び/又は一酸化炭素と水素を導通して反応させる、二酸化炭素及び一酸化炭素のメタン化方法が記載されている。この還元用触媒では、鉄族金属と希土類元素の酸化物及び白金族金属とを組合せて担持せしめることによって、CO転化率及びCO転化率が向上するものの、必ずしも十分に高いものではなく(特に、CO転化率)、また、白金族金属が用いられているため、コスト面で十分なものではなかった。
【0005】
また、安価なベースメタル元素を用いた触媒の活性を向上させるために、触媒担体の検討も行われている。例えば、特開2000−254508号公報(特許文献2)には、正方晶ジルコニア系担体にNi及び/又はCoを担持してなる二酸化炭素メタン化用触媒であって、前記正方晶ジルコニア系担体が希土類元素等の安定化元素を特定の割合で含み、Ni及び/又はCoの担持量が特定の範囲内にある二酸化炭素メタン化用触媒が記載されている。この二酸化炭素メタン化用触媒では、正方晶ジルコニア系担体に希土類元素等の安定化元素を含有させることによって、二酸化炭素のメタンへの変換率は向上するものの、必ずしも十分に高いものではなかった。
【0006】
一方、Catal.Sci.Technol.、2016年、第6巻、3529〜3543頁(非特許文献1)には、NiO、SiO及びZrOからなるメソ多孔体からなるCOメタン化触媒が記載されている。しかしながら、このCOメタン化触媒は、有機溶媒中で界面活性剤を用いた自己組織化法により製造する必要があるため、触媒のコストが高くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭61−29778号公報
【特許文献2】特開2000−254508号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】X.Wangら、Catal.Sci.Technol.、2016年、第6巻、3529〜3543頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高い触媒活性を示す安価なメタン化触媒、それに用いるメタン化触媒担体、及び前記メタン化触媒を用いたメタンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、SiOの少なくとも一部がZrO等の特定の結晶性酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体に、Ni等の安価な金属を担持することによって、高い触媒活性を示す安価なメタン化触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のメタン化触媒担体は、ZrO及びAl−ZrOからなる群から選択される少なくとも1種の結晶性の酸化物粉末とSiOとを備える触媒担体であって、
前記SiOの少なくとも一部が、前記酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在しており、
Si原子の含有量が、前記触媒担体を構成する全金属原子の量に対して1〜15at%である、
ことを特徴とするものである。
【0012】
このような本発明のメタン化触媒担体において、前記酸化物粉末はテトラゴナル型又はキュービック型の結晶構造を含むものであることが好ましい。また、前記触媒担体中のAl原子の含有量は、前記触媒担体を構成する全金属原子の量に対して7at%以下であることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明のメタン化触媒は、前記本発明のメタン化触媒担体と、該触媒担体に担持された、Ni、Fe、及びCoからなる群から選択される少なくとも1種の金属と、を備えることを特徴とするものである。また、本発明のメタンの製造方法は、前記本発明のメタン化触媒に、二酸化炭素と水素との混合ガスを接触せしめることを特徴とする。
【0014】
なお、本発明において、「SiOの少なくとも一部が酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している」とは、「SiOの少なくとも一部が酸化物粉末の表面の少なくとも一部に固定された状態で存在している」ことを意味し、「酸化物粉末の表面の少なくとも一部においてSiO前駆体が(例えば、焼成により)SiOに変換されることによって形成される状態」に限定でされるものではなく、例えば、「SiOと酸化物前駆体との混合物において酸化物前駆体が(例えば、焼成により)酸化物粉末に変換されるとともに、生成した酸化物粉末の表面の少なくとも一部にSiOが固定されることによって形成される状態」を包含するものであり、酸化物粉末の表面の少なくとも一部にSiOが存在していれば、酸化物粉末の内部にSiOが存在していてもよい。
【0015】
また、本発明のメタン化触媒が高い触媒活性を示す理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明のメタン化触媒においては、SiOの少なくとも一部が、前記酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在していることによって、メタン化反応における生成物の一つであるHOの触媒担体表面への付着が抑制されると推察される。その結果、HOによる触媒の酸化劣化が抑制され、高い触媒活性が得られると推察される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い触媒活性を示す安価なメタン化触媒、それに用いるメタン化触媒担体を得ることができる。また、このような本発明のメタン化触媒を用いることによって、安価で効率的にメタンを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1〜及び比較例1〜2、8〜10で得られた触媒担体粉末のX線回折パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0019】
〔メタン化触媒担体〕
先ず、本発明のメタン化触媒担体について説明する。本発明のメタン化触媒担体は、ZrO、CeO、Al−ZrO、及びCeO−ZrOからなる群から選択される少なくとも1種の結晶性の酸化物粉末とSiOとを備える触媒担体であり、この触媒担体において、前記SiOの少なくとも一部は、前記酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在しており、Si原子の含有量は、前記触媒担体を構成する全金属原子の量に対して1〜15at%である。
【0020】
本発明のメタン化触媒担体に用いられる酸化物粉末は、ZrO、CeO、Al−ZrO、及びCeO−ZrOからなる群から選択される少なくとも1種の酸化物粉末である。このような酸化物粉末を用いることによって、高い触媒活性を有するメタン化触媒を得ることができる。
【0021】
本発明のメタン化触媒担体において、前記酸化物粉末は結晶性のものである。このような酸化物粉末を用いることによって、高い触媒活性を有するメタン化触媒を得ることができる。一方、酸化物粉末が非晶質の場合には、高い触媒活性を有するメタン化触媒を得ることはできない。
【0022】
また、前記酸化物粉末は、テトラゴナル型(正方晶系)又はキュービック型(立方晶系)の結晶構造を含むものであることが好ましく、テトラゴナル型(正方晶系)ZrO、キュービック型(立方晶系)CeO、及びキュービック型(立方晶系)CeO−ZrOのうちのいずれかの結晶性酸化物を含むことがより好ましい。前記酸化物粉末がテトラゴナル型(正方晶系)結晶構造を含む場合、並びに、キュービック型(立方晶系)結晶構造を含む場合には、メタン化触媒担体の熱安定性が向上する傾向にある。
【0023】
さらに、前記酸化物粉末がAl−ZrO複合酸化物粉末である場合、AlはZrOに固溶していることが好ましい。AlがZrOに固溶した複合酸化物粉末を用いることによって、メタン化触媒担体の熱安定性が向上する傾向にある。
【0024】
また、このような酸化物粉末の平均一次粒径としては特に制限はないが、触媒の分散性向上のための比表面積の確保という観点から、2〜100nmが好ましく、2〜20nmがより好ましい。
【0025】
本発明のメタン化触媒担体においては、前記酸化物粉末の表面の少なくとも一部に、SiOの少なくとも一部が担持された状態で存在している必要がある。すなわち、メタン化触媒担体に含まれるSiOは、その全部が前記酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している状態であること、或いは、その一部が前記酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在し、かつ、その残りが前記酸化物粉末の内部に存在している状態であることが必要である。このように、前記酸化物粉末の表面の少なくとも一部に、SiOの少なくとも一部を担持された状態で存在させることによって、例えば、表面にSiOが存在していない前記酸化物粉末(すなわち、ZrO粉末、CeO粉末、Al−ZrO複合酸化物粉末、CeO−ZrO複合酸化物粉末)、SiO粉末、ZrO粉末とSiO粉末との物理混合物、SiO−ZrO複合酸化物粉末を触媒担体として用いた場合に比べて、メタン化触媒の活性が向上する。
【0026】
このような本発明のメタン化触媒担体において、SiOが担持された状態で存在している領域の割合としては特に制限はないが、触媒活性金属がSiO上ではなく、前記酸化物粉末上に存在していることが好ましいという観点から、前記酸化物粉末の全表面に対して、1〜80%が好ましく、1〜60%がより好ましい。
【0027】
また、SiOの形状としては特に制限はないが、微粒子状が好ましい。SiO微粒子を前記酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在させることによって、均一にSiO微粒子による効果を得ることが可能となるため、メタン化触媒の活性が向上する傾向にある。このようなSiO微粒子の平均粒子径としては特に制限はないが、粗大粒子ではなく、微粒子として高分散に存在することが好ましいという観点から、4〜100nmが好ましく、4〜20nmがより好ましい。
【0028】
本発明のメタン化触媒担体において、Si原子の含有量は、触媒担体を構成する全金属原子の量に対して1〜15at%である。Si原子の含有量が前記範囲内のメタン化触媒担体に、後述するNi等の金属を担持することによって、高い触媒活性を有するメタン化触媒を得ることができる。一方、Si原子の含有量が前記下限未満になると、前記酸化物粉末の表面に担持された状態で存在しているSiOの量が少ないため、表面にSiOが存在していない前記酸化物粉末等を触媒担体として用いた場合に比べて、メタン化触媒の活性が向上しない。他方、Si原子の含有量が前記上限を超えると、SiO上に担持される触媒活性金属の割合が増加するため、メタン化触媒の活性が低下する。また、メタン化触媒の活性が更に向上するという観点から、Si原子の含有量としては、2〜12at%が好ましい。
【0029】
また、本発明のメタン化触媒担体において、前記酸化物粉末がAl−ZrO複合酸化物粉末である場合、Al原子の含有量としては、触媒担体を構成する全金属原子の量に対して、7at%以下が好ましく、5at%以下がより好ましく、3at%以下が特に好ましい。また、Al原子の含有量が前記範囲内にあると、AlがZrOに固溶してテトラゴナル型(正方晶系)ZrOが形成されるため、メタン化触媒担体の熱安定性が向上する傾向にある。一方、Al原子の含有量が前記上限を超えると、AlがZrOに固溶せずに単独で存在するため、Al−ZrO複合酸化物が非晶質となり、メタン化触媒の活性が低下する傾向にある。また、前記酸化物粉末がZrO粉末であっても高い触媒活性を有するメタン化触媒が得られるため、Al−ZrO複合酸化物粉末におけるAl原子の含有量の下限値としては特に制限はないが、メタン化触媒担体の熱安定性が向上するという観点から、0.5at%以上が好ましく、1at%以上がより好ましい。Zr原子の含有量としては、触媒担体を構成する全金属原子の量に対して、78〜99at%が好ましく、80〜99at%がより好ましく、82〜99at%が特に好ましい。
【0030】
さらに、前記酸化物粉末がCeO−ZrO複合酸化物粉末である場合においては、前記酸化物粉末がCeO粉末又はZrO粉末であっても高い触媒活性を有するメタン化触媒が得られるため、Ce原子の含有量としては特に制限はないが、CeOとZrOとの固溶体の形成が容易に進行するという観点から、触媒担体を構成する全金属原子の量に対して、20〜98at%が好ましく、20〜80at%がより好ましい。また、Zr原子の含有量についても同様に特に制限はないが、触媒担体を構成する全金属原子の量に対して、1〜80at%が好ましく、20〜80at%がより好ましい。
【0031】
また、本発明のメタン化触媒担体の平均一次粒径としては特に制限はないが、触媒の分散性向上のための比表面積の確保という観点から、2〜100nmが好ましく、2〜20nmがより好ましい。
【0032】
このような本発明のメタン化触媒担体は、例えば、前記酸化物粉末の表面の少なくとも一部にSiO前駆体を付着させた後、このSiO前駆体に焼成処理等を施してSiOに変換し、必要に応じて粉砕処理等を行うことによって製造することができる。前記SiO前駆体としては、例えば、オルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラメチル等のアルコキシド;テトラクロロシラン等が挙げられる。前記焼成処理等の条件は、前記SiO前駆体の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0033】
また、本発明のメタン化触媒担体は、SiOと前記酸化物粉末の前駆体との混合物に焼成処理等を施して前記酸化物粉末の前駆体を前記酸化物粉末に変換し、必要に応じて粉砕処理等を行うことによって製造することも可能である。前記SiOと前記酸化物粉末の前駆体との混合物は、例えば、SiOと、Zr塩及びCe塩のうちの少なくとも一方と、必要に応じてAl塩とを含有する水溶液をアンモニア水等のアルカリで処理することによって調製することができる。前記SiOとしては、例えば、コロイダルシリカ、SiOナノ粒子等が挙げられる。また、前記Zr塩、Ce塩及びAl塩としては、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、オキシ硝酸塩、塩化物等が挙げられる。前記焼成処理等の条件は、前記酸化物粉末の前駆体の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0034】
〔メタン化触媒〕
次に、本発明のメタン化触媒について説明する。本発明のメタン化触媒は、前記本発明のメタン化触媒担体と、この触媒担体に担持された、Ni、Fe、及びCoからなる群から選択される少なくとも1種の金属と、を備えるものである。本発明のメタン化触媒においては、前記酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在しているSiOによって、二酸化炭素及び/又は一酸化炭素のメタン化反応において生成するHOが触媒担体表面に付着しにくくなり、HOによる触媒の酸化劣化が抑制されるため、高い触媒活性が発現する。また、触媒活性種として、貴金属に比べて安価な金属(Ni、Fe、Co)が担持されているため、本発明のメタン化触媒は、貴金属を担持したメタン化触媒に比べて、コスト面で有利となる。
【0035】
本発明のメタン化触媒において、前記金属は、通常、酸化物の状態で担持され、反応時は金属状態が維持されているが、特にこれに制限されるものではない。また、前記金属は、前記酸化物粉末の表面に担持されていることが好ましい。前記金属がSiO上に担持されると、金属状態が維持されにくく、触媒活性が低下する傾向にある。前記金属の担持量としては特に制限はないが、触媒活性点量と金属の凝集抑制の観点から、前記メタン化触媒担体100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。
【0036】
このような本発明のメタン化触媒の製造方法としては特に制限はなく、例えば、含浸法等の従来公知の方法を採用することができる。
【0037】
〔メタンの製造方法〕
次に、本発明のメタンの製造方法について説明する。本発明のメタンの製造方法は、前記本発明のメタン化触媒に、二酸化炭素及び/又は一酸化炭素と水素との混合ガスを接触せしめることによってメタンを製造する方法である。これにより、二酸化炭素及び/又は一酸化炭素(特に、二酸化炭素)からメタンを安価で効率的に製造することができる。
【0038】
このような本発明のメタンの製造方法において、前記メタン化触媒に前記混合ガスを接触させる際の温度としては、触媒活性温度域の維持とCOの生成抑制という観点から、100〜400℃が好ましく、150〜300℃がより好ましい。また、前記混合ガス中の二酸化炭素及び/又は一酸化炭素の濃度としては、燃焼排ガスのように窒素等の共存ガスを含む濃度から原料ガスのみの濃度まで反応の進行が必要であるという観点から、0.01〜20vol%が好ましく、1〜20vol%がより好ましい。前記混合ガス中の水素の濃度としては、二酸化炭素及び一酸化炭素の水素化が完全に進行する必要があるという観点から、0.03〜85vol%が好ましく、3〜85vol%がより好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
先ず、硝酸ジルコニル二水和物(ZrO(NO・2HO、和光純薬工業株式会社製)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックO」、粒子径10〜15nm)とを、ZrとSiとの原子比がZr:Si=89:11となるように混合して原料水溶液を調製した。この原料水溶液にアンモニア水を硝酸イオンとSiOの合計モル数の1.2倍の割合で添加して、SiO微粒子とZiO前駆体とを含有する沈殿物を生成させた。この沈殿物を大気中、150℃で8時間乾燥し、さらに大気中、400℃で5時間仮焼した後、大気中、600℃で5時間焼成した。その後、粒径が150μm以下となるように粉砕処理を施して、SiO微粒子の少なくとも一部がZrO粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。
【0041】
次に、この触媒担体粉末をNi(NO水溶液(硝酸ニッケル六水和物(ナカライテスク株式会社製)を水に溶解したもの)に浸漬して、前記触媒担体粉末100質量部に対するNiO担持量が20質量部となるように、前記触媒担体粉末にNi(NOを付着させた。得られた触媒前駆体を大気中、110℃で3時間乾燥した後、大気中、300℃で3時間焼成して、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0042】
(実施例2)
硝酸ジルコニル二水和物(ZrO(NO・2HO、和光純薬工業株式会社製)と硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO、和光純薬工業株式会社製)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックO」、粒子径10〜15nm)とを、ZrとAlとSiとの原子比がZr:Al:Si=88:1:11となるように混合して原料水溶液を調製した。この原料水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、SiO微粒子とAl−ZrO複合酸化物前駆体とを含有する沈殿物を生成させ、さらに、SiO微粒子の少なくとも一部がAl−ZrO複合酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0043】
(実施例3)
ZrとAlとSiとの原子比をZr:Al:Si=96:1:3に変更した以外は実施例2と同様にして、SiO微粒子の少なくとも一部がAl−ZrO複合酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0044】
(実施例4)
SiO微粒子とZiO前駆体とを含有する沈殿物の焼成温度を500℃に変更した以外は実施例1と同様にして、SiO微粒子の少なくとも一部がZrO粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0045】
比較例1
硝酸セリウム六水和物(Ce(NO・6HO、和光純薬工業株式会社製)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックO」、粒子径10〜15nm)とを、CeとSiとの原子比がCe:Si=98:2となるように混合して原料水溶液を調製した。この原料水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、SiO微粒子とCeO前駆体とを含有する沈殿物を生成させ、さらに、この沈殿物の焼成温度を500℃に変更した以外は実施例1と同様にして、SiO微粒子の少なくとも一部がCeO粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0046】
比較例2
硝酸セリウム六水和物(Ce(NO・6HO、和光純薬工業株式会社製)と硝酸ジルコニル二水和物(ZrO(NO・2HO、和光純薬工業株式会社製)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックO」、粒子径10〜15nm)とを、CeとZrとSiとの原子比がCe:Zr:Si=48.5:48.5:3となるように混合して原料水溶液を調製した。この原料水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、SiO微粒子とCeO−ZrO複合酸化物前駆体とを含有する沈殿物を生成させ、さらに、この沈殿物の焼成温度を500℃に変更した以外は実施例1と同様にして、SiO微粒子の少なくとも一部がCeO−ZrO複合酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0047】
(実施例
ZrとSiとの原子比をZr:Si=97:3に変更した以外は実施例1と同様にして、SiO微粒子の少なくとも一部がZrO粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0048】
(比較例
触媒粉末としてRu担持TiO粉末(エヌ・イーケムキャット株式会社製)を使用した。
【0049】
(比較例
触媒担体粉末としてSiO粉末(日本アエロジル株式会社製「Aerosil 90H」)を用いた以外は実施例1と同様にして、前記SiO粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0050】
(比較例
触媒担体粉末としてモノクリニック型ZrO粉末(第一稀元素化学工業株式会社製「RC100」)を用いた以外は実施例1と同様にして、前記モノクリニック型ZrO粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0051】
(比較例
触媒担体粉末としてAl粉末(GRACE DAVISON社製「MI307」)を用いた以外は実施例1と同様にして、前記Al粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0052】
(比較例
モノクリニック型ZrO粉末(第一稀元素化学工業株式会社製「RC100」)とSiO粉末(日本アエロジル株式会社製「Aerosil 90H」)とを、ZrとSiとの原子比がZr:Si=89:11となるように混合して触媒担体粉末を調製した。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0053】
(比較例
ジルコニウムブトキシド(和光純薬工業株式会社製)とオルトケイ酸テトラエチル(和光純薬工業株式会社製)とを、ZrとSiとの原子比がZr:Si=94:6となるように混合し、得られた混合物に蒸留水を滴下して、SiO−ZiO複合酸化物前駆体からなる沈殿物を得た。この沈殿物を150℃で1時間乾燥し、さらに大気中、500℃で5時間焼成した後、粒径が150μm以下となるように粉砕処理を施して、SiO−ZiO複合酸化物粉末からなる触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0054】
(比較例
ZrとAlとSiとの原子比をZr:Al:Si=69:20:11に変更した以外は実施例2と同様にして、SiO微粒子の少なくとも一部がAl−ZrO複合酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0055】
(比較例10
ZrとAlとSiとの原子比をZr:Al:Si=81:1:18に変更した以外は実施例2と同様にして、SiO微粒子の少なくとも一部がAl−ZrO複合酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0056】
(比較例11
硝酸セリウム六水和物(Ce(NO・6HO、和光純薬工業株式会社製)をイオン交換水に溶解して原料水溶液を調製した。この原料水溶液を用いた以外は比較例1と同様にして、CeO前駆体からなる沈殿物を生成させ、さらに、CeO粉末からなる触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0057】
(比較例12
硝酸セリウム六水和物(Ce(NO・6HO、和光純薬工業株式会社製)と硝酸ジルコニル二水和物(ZrO(NO・2HO、和光純薬工業株式会社製)とを、CeとZrとの原子比がCe:Zr=50:50となるように、イオン交換水に溶解して原料水溶液を調製した。この原料水溶液を用いた以外は比較例2と同様にして、CeO−ZrO複合酸化物前駆体からなる沈殿物を生成させ、さらに、CeO−ZrO複合酸化物粉末からなる触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0058】
<蛍光X線分析>
実施例及び比較例で得られた触媒担体粉末の元素分析を、走査型蛍光X線分析装置(株式会社リガク製「ZSX PrimusII」)を用いて行なった。その結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
<X線回折測定>
実施例及び比較例で得られた触媒担体粉末のX線回折パターンを、粉末X線回折装置(株式会社リガク製「UltimaIV」)を用いて、CuKαをX線源として測定した。その結果を図1に示す。
【0061】
図1に示したように、500℃で焼成したSiO担持ZrO粉末からなる触媒担体粉末(実施例4)においては、2θ=30.4°に回折ピークが観察されたことから、ZrO粉末はテトラゴナル型(正方晶系)ZrOであることが確認された。また、600℃で焼成したSiO担持ZrO粉末からなる触媒担体粉末(実施例1、)においては、2θ=28.2°及び30.2°付近に回折ピークが観察されたことから、ZrO粉末はテトラゴナル型(正方晶系)ZrOとモノクリニック型(単斜晶系)ZrOとの混相ZrOであることが確認された。さらに、Al原子の含有量が1at%であるSiO担持Al−ZrO複合酸化物粉末からなる触媒担体粉末(実施例2〜3及び比較例10)においては、600℃で焼成しても、2θ=30.3°付近に回折ピークが観察されたことから、Al−ZrO複合酸化物粉末はテトラゴナル型(正方晶系)ZrOを含むものであることが確認された。一方、Al原子の含有量が20at%まで増加した場合(比較例)には、回折ピークは観察されず、Al−ZrO複合酸化物粉末は非晶質であることが確認された。また、SiO−ZiO複合酸化物粉末からなる触媒担体粉末(比較例)においても、回折ピークは観察されず、SiO−ZiO複合酸化物粉末は非晶質であることが確認された。
【0062】
また、SiO担持CeO粉末からなる触媒担体粉末(比較例1)及びSiO担持CeO−ZrO複合酸化物粉末からなる触媒担体粉末(比較例2)においては、2θ=28.5°付近に回折ピークが観察されたことから、CeO粉末及びCeO−ZrO複合酸化物粉末はそれぞれキュービック型(立方晶系)CeO及びキュービック型(立方晶系)CeO−ZrOであることが確認された。
【0063】
図1に示したX線回折パターンに基づいて、SiO担持Al−ZrO複合酸化物粉末からなる触媒担体粉末(実施例2〜3及び比較例10)におけるテトラゴナル型(正方晶系)ZrOの(101)面に由来する回折ピークの位置を求めた。その結果を表2に示す。この結果から明らかなように、実施例2〜3及び比較例10で得られた触媒担体粉末においては、テトラゴナル型(正方晶系)ZrOの(101)面に由来する回折ピークの位置が、ZrO(PDF No.79−1768)に比べてシフトしており、さらに、複合酸化物粉末中のAl原子とZr原子との合計量に対するAl原子の割合が増大するについて、シフト量も大きくなった。このことから、AlはZrOに固溶していることが確認された。
【0064】
【表2】
【0065】
<触媒性能評価試験>
実施例及び比較例で得られた各触媒粉末0.5gを内径6mmの石英反応管に充填し、これにH(21%)+N(79%)の混合ガスを触媒入りガス温度300℃、流量0.475L/minで流通させて還元前処理を行なった。次いで、CO(5%)+H(20%)+N(75%)の混合ガスを0.5L/minで流通させ、触媒入りガス温度250℃及び275℃における触媒出ガスのCO濃度及びCH濃度をガスクロマトグラフィ(株式会社島津製作所「GC−14A」)を用いて測定した。その結果、実施例及び比較例で得られた、いずれの触媒粉末においても、CH以外の炭化水素(HC)類の生成は確認されず、また、CHの生成量はCOの減少量にほぼ対応していたことから、減少したCOのほぼ全量がCHに転化したことが確認された。そこで、各触媒粉末について、触媒入りガス温度250℃及び275℃におけるCO転化率を算出した。その結果を表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
表3に示したように、実施例1〜で得られた触媒粉末は、触媒活性種としてRuが担持された触媒粉末(比較例)と同等のメタン化触媒性能を有するものであった。この結果から、触媒活性種として貴金属よりも安価な金属を本発明の触媒担体に担持することにより、貴金属を担持した従来の触媒と同等のメタン化触媒性能を有する触媒が得られることがわかった。
【0068】
また、実施例1〜で得られた触媒粉末は、触媒担体粉末がSiO粉末である触媒粉末(比較例)に比べて、優れたメタン化触媒性能を有するものであった。さらに、触媒担体粉末がSiO担持ZrO粉末である触媒粉末(実施例1、4、)は、触媒担体粉末がZrO粉末である触媒粉末(比較例)、触媒担体粉末がモノクリニック型ZrO粉末とSiO粉末とを物理混合したものである触媒粉末(比較例)、及び触媒担体粉末がSiO−ZiO複合酸化物粉末である触媒粉末(比較例)に比べて、優れたメタン化触媒性能を有するものであった。また、触媒担体粉末がSiO担持Al−ZrO複合酸化物粉末である触媒粉末(実施例2、3)は、触媒担体粉末がZrO粉末である触媒粉末(比較例)及び触媒担体粉末がAl粉末である触媒粉末(比較例)に比べて、優れたメタン化触媒性能を有するものであった。さらに、触媒担体粉末がSiO担持CeO粉末である触媒粉末(比較例1)及び触媒担体粉末がSiO担持CeO−ZrO複合酸化物粉末である触媒粉末(比較例2)は、触媒担体粉末がCeO粉末である触媒粉末(比較例11)及び触媒担体粉末がCeO−ZrO複合酸化物粉末である触媒粉末(比較例12)に比べて、優れたメタン化触媒性能を有するものであった。これらの結果から、ZrO等の特定の酸化物粉末の表面の少なくとも一部にSiOを担持された状態で存在させることによって、メタン化触媒性能が向上することがわかった。
【0069】
さらに、酸化物粉末が結晶性である触媒粉末(実施例1〜4、)は、複合酸化物粉末が非晶質である触媒粉末(比較例)に比べて、優れたメタン化触媒性能を有するものであった。この結果から、ZrO等の特定の結晶性酸化物粉末の表面の少なくとも一部にSiOを担持された状態で存在させることによって、メタン化触媒性能が向上することがわかった。
【0070】
また、触媒担体粉末中のSi原子の含有量が3at%である触媒粉末(実施例3、)及び11at%である触媒粉末(実施例1、2、4)は、Si原子の含有量が18at%である触媒粉末(比較例10)に比べて、優れたメタン化触媒性能を有するものであった。この結果から、Si原子の含有量が多くなりすぎると、ZrO等の酸化物粉末の表面の少なくとも一部にSiOを担持された状態で存在させることによる効果が得られないことがわかった。
【0071】
さらに、熱安定性を得るためにテトラゴナル型(正方晶系)ZrOを形成した酸化物粉末の表面の少なくとも一部にSiOを担持された状態で存在させた場合(実施例2〜4)にも、優れたメタン化触媒性能を有する触媒粉末が得られることが確認された。特に、触媒担体粉末中のAl原子の含有量が1at%であり、複合酸化物粉末中においてAlがZrOに固溶している触媒粉末(実施例2、3)は、Al原子の含有量が20at%であり、複合酸化物粉末が非晶質である触媒粉末(比較例)に比べて、優れたメタン化触媒性能を有するものであった。この結果から、Al原子の含有量が多くなりすぎると、AlがZrOに固溶せずに単独で存在し、複合酸化物粉末が非晶質となるため、このような複合酸化物の表面にSiOを担持しても、メタン化触媒性能は向上しないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明したように、本発明によれば、Ni等の安価な金属を担持した場合でも、高い触媒活性を示すメタン化触媒を得ることが可能となる。したがって、本発明のメタンの製造方法は、このようなメタン化触媒を用いているため、二酸化炭素や一酸化炭素等から安価で効率的にメタンを製造することができる方法として有用である。
図1