【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
先ず、硝酸ジルコニル二水和物(ZrO(NO
3)
2・2H
2O、和光純薬工業株式会社製)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックO」、粒子径10〜15nm)とを、ZrとSiとの原子比がZr:Si=89:11となるように混合して原料水溶液を調製した。この原料水溶液にアンモニア水を硝酸イオンとSiO
2の合計モル数の1.2倍の割合で添加して、SiO
2微粒子とZiO
2前駆体とを含有する沈殿物を生成させた。この沈殿物を大気中、150℃で8時間乾燥し、さらに大気中、400℃で5時間仮焼した後、大気中、600℃で5時間焼成した。その後、粒径が150μm以下となるように粉砕処理を施して、SiO
2微粒子の少なくとも一部がZrO
2粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。
【0041】
次に、この触媒担体粉末をNi(NO
3)
2水溶液(硝酸ニッケル六水和物(ナカライテスク株式会社製)を水に溶解したもの)に浸漬して、前記触媒担体粉末100質量部に対するNiO担持量が20質量部となるように、前記触媒担体粉末にNi(NO
3)
2を付着させた。得られた触媒前駆体を大気中、110℃で3時間乾燥した後、大気中、300℃で3時間焼成して、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0042】
(実施例2)
硝酸ジルコニル二水和物(ZrO(NO
3)
2・2H
2O、和光純薬工業株式会社製)と硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO
3)
2・9H
2O、和光純薬工業株式会社製)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックO」、粒子径10〜15nm)とを、ZrとAlとSiとの原子比がZr:Al:Si=88:1:11となるように混合して原料水溶液を調製した。この原料水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、SiO
2微粒子とAl
2O
3−ZrO
2複合酸化物前駆体とを含有する沈殿物を生成させ、さらに、SiO
2微粒子の少なくとも一部がAl
2O
3−ZrO
2複合酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0043】
(実施例3)
ZrとAlとSiとの原子比をZr:Al:Si=96:1:3に変更した以外は実施例2と同様にして、SiO
2微粒子の少なくとも一部がAl
2O
3−ZrO
2複合酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0044】
(実施例4)
SiO
2微粒子とZiO
2前駆体とを含有する沈殿物の焼成温度を500℃に変更した以外は実施例1と同様にして、SiO
2微粒子の少なくとも一部がZrO
2粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0045】
(
比較例1)
硝酸セリウム六水和物(Ce(NO
3)
2・6H
2O、和光純薬工業株式会社製)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックO」、粒子径10〜15nm)とを、CeとSiとの原子比がCe:Si=98:2となるように混合して原料水溶液を調製した。この原料水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、SiO
2微粒子とCeO
2前駆体とを含有する沈殿物を生成させ、さらに、この沈殿物の焼成温度を500℃に変更した以外は実施例1と同様にして、SiO
2微粒子の少なくとも一部がCeO
2粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0046】
(
比較例2)
硝酸セリウム六水和物(Ce(NO
3)
2・6H
2O、和光純薬工業株式会社製)と硝酸ジルコニル二水和物(ZrO(NO
3)
2・2H
2O、和光純薬工業株式会社製)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックO」、粒子径10〜15nm)とを、CeとZrとSiとの原子比がCe:Zr:Si=48.5:48.5:3となるように混合して原料水溶液を調製した。この原料水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、SiO
2微粒子とCeO
2−ZrO
2複合酸化物前駆体とを含有する沈殿物を生成させ、さらに、この沈殿物の焼成温度を500℃に変更した以外は実施例1と同様にして、SiO
2微粒子の少なくとも一部がCeO
2−ZrO
2複合酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0047】
(実施例
5)
ZrとSiとの原子比をZr:Si=97:3に変更した以外は実施例1と同様にして、SiO
2微粒子の少なくとも一部がZrO
2粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0048】
(比較例
3)
触媒粉末としてRu担持TiO
2粉末(エヌ・イーケムキャット株式会社製)を使用した。
【0049】
(比較例
4)
触媒担体粉末としてSiO
2粉末(日本アエロジル株式会社製「Aerosil 90H」)を用いた以外は実施例1と同様にして、前記SiO
2粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0050】
(比較例
5)
触媒担体粉末としてモノクリニック型ZrO
2粉末(第一稀元素化学工業株式会社製「RC100」)を用いた以外は実施例1と同様にして、前記モノクリニック型ZrO
2粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0051】
(比較例
6)
触媒担体粉末としてAl
2O
3粉末(GRACE DAVISON社製「MI307」)を用いた以外は実施例1と同様にして、前記Al
2O
3粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0052】
(比較例
7)
モノクリニック型ZrO
2粉末(第一稀元素化学工業株式会社製「RC100」)とSiO
2粉末(日本アエロジル株式会社製「Aerosil 90H」)とを、ZrとSiとの原子比がZr:Si=89:11となるように混合して触媒担体粉末を調製した。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0053】
(比較例
8)
ジルコニウムブトキシド(和光純薬工業株式会社製)とオルトケイ酸テトラエチル(和光純薬工業株式会社製)とを、ZrとSiとの原子比がZr:Si=94:6となるように混合し、得られた混合物に蒸留水を滴下して、SiO
2−ZiO
2複合酸化物前駆体からなる沈殿物を得た。この沈殿物を150℃で1時間乾燥し、さらに大気中、500℃で5時間焼成した後、粒径が150μm以下となるように粉砕処理を施して、SiO
2−ZiO
2複合酸化物粉末からなる触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0054】
(比較例
9)
ZrとAlとSiとの原子比をZr:Al:Si=69:20:11に変更した以外は実施例2と同様にして、SiO
2微粒子の少なくとも一部がAl
2O
3−ZrO
2複合酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0055】
(比較例
10)
ZrとAlとSiとの原子比をZr:Al:Si=81:1:18に変更した以外は実施例2と同様にして、SiO
2微粒子の少なくとも一部がAl
2O
3−ZrO
2複合酸化物粉末の表面の少なくとも一部に担持された状態で存在している触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0056】
(比較例
11)
硝酸セリウム六水和物(Ce(NO
3)
2・6H
2O、和光純薬工業株式会社製)をイオン交換水に溶解して原料水溶液を調製した。この原料水溶液を用いた以外は
比較例1と同様にして、CeO
2前駆体からなる沈殿物を生成させ、さらに、CeO
2粉末からなる触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0057】
(比較例
12)
硝酸セリウム六水和物(Ce(NO
3)
2・6H
2O、和光純薬工業株式会社製)と硝酸ジルコニル二水和物(ZrO(NO
3)
2・2H
2O、和光純薬工業株式会社製)とを、CeとZrとの原子比がCe:Zr=50:50となるように、イオン交換水に溶解して原料水溶液を調製した。この原料水溶液を用いた以外は
比較例2と同様にして、CeO
2−ZrO
2複合酸化物前駆体からなる沈殿物を生成させ、さらに、CeO
2−ZrO
2複合酸化物粉末からなる触媒担体粉末を得た。その後、この触媒担体粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、前記触媒担体粉末にNiOが担持された触媒粉末を得た。
【0058】
<蛍光X線分析>
実施例及び比較例で得られた触媒担体粉末の元素分析を、走査型蛍光X線分析装置(株式会社リガク製「ZSX PrimusII」)を用いて行なった。その結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
<X線回折測定>
実施例及び比較例で得られた触媒担体粉末のX線回折パターンを、粉末X線回折装置(株式会社リガク製「UltimaIV」)を用いて、CuKαをX線源として測定した。その結果を
図1に示す。
【0061】
図1に示したように、500℃で焼成したSiO
2担持ZrO
2粉末からなる触媒担体粉末(実施例4)においては、2θ=30.4°に回折ピークが観察されたことから、ZrO
2粉末はテトラゴナル型(正方晶系)ZrO
2であることが確認された。また、600℃で焼成したSiO
2担持ZrO
2粉末からなる触媒担体粉末(実施例1、
5)においては、2θ=28.2°及び30.2°付近に回折ピークが観察されたことから、ZrO
2粉末はテトラゴナル型(正方晶系)ZrO
2とモノクリニック型(単斜晶系)ZrO
2との混相ZrO
2であることが確認された。さらに、Al原子の含有量が1at%であるSiO
2担持Al
2O
3−ZrO
2複合酸化物粉末からなる触媒担体粉末(実施例2〜3及び比較例
10)においては、600℃で焼成しても、2θ=30.3°付近に回折ピークが観察されたことから、Al
2O
3−ZrO
2複合酸化物粉末はテトラゴナル型(正方晶系)ZrO
2を含むものであることが確認された。一方、Al原子の含有量が20at%まで増加した場合(比較例
9)には、回折ピークは観察されず、Al
2O
3−ZrO
2複合酸化物粉末は非晶質であることが確認された。また、SiO
2−ZiO
2複合酸化物粉末からなる触媒担体粉末(比較例
8)においても、回折ピークは観察されず、SiO
2−ZiO
2複合酸化物粉末は非晶質であることが確認された。
【0062】
また、SiO
2担持CeO
2粉末からなる触媒担体粉末(
比較例1)及びSiO
2担持CeO
2−ZrO
2複合酸化物粉末からなる触媒担体粉末(
比較例2)においては、2θ=28.5°付近に回折ピークが観察されたことから、CeO
2粉末及びCeO
2−ZrO
2複合酸化物粉末はそれぞれキュービック型(立方晶系)CeO
2及びキュービック型(立方晶系)CeO
2−ZrO
2であることが確認された。
【0063】
図1に示したX線回折パターンに基づいて、SiO
2担持Al
2O
3−ZrO
2複合酸化物粉末からなる触媒担体粉末(実施例2〜3及び比較例
10)におけるテトラゴナル型(正方晶系)ZrO
2の(101)面に由来する回折ピークの位置を求めた。その結果を表2に示す。この結果から明らかなように、実施例2〜3及び比較例
10で得られた触媒担体粉末においては、テトラゴナル型(正方晶系)ZrO
2の(101)面に由来する回折ピークの位置が、ZrO
2(PDF No.79−1768)に比べてシフトしており、さらに、複合酸化物粉末中のAl原子とZr原子との合計量に対するAl原子の割合が増大するについて、シフト量も大きくなった。このことから、Al
2O
3はZrO
2に固溶していることが確認された。
【0064】
【表2】
【0065】
<触媒性能評価試験>
実施例及び比較例で得られた各触媒粉末0.5gを内径6mmの石英反応管に充填し、これにH
2(21%)+N
2(79%)の混合ガスを触媒入りガス温度300℃、流量0.475L/minで流通させて還元前処理を行なった。次いで、CO
2(5%)+H
2(20%)+N
2(75%)の混合ガスを0.5L/minで流通させ、触媒入りガス温度250℃及び275℃における触媒出ガスのCO
2濃度及びCH
4濃度をガスクロマトグラフィ(株式会社島津製作所「GC−14A」)を用いて測定した。その結果、実施例及び比較例で得られた、いずれの触媒粉末においても、CH
4以外の炭化水素(HC)類の生成は確認されず、また、CH
4の生成量はCO
2の減少量にほぼ対応していたことから、減少したCO
2のほぼ全量がCH
4に転化したことが確認された。そこで、各触媒粉末について、触媒入りガス温度250℃及び275℃におけるCO
2転化率を算出した。その結果を表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
表3に示したように、実施例1〜
5で得られた触媒粉末は、触媒活性種としてRuが担持された触媒粉末(比較例
3)と同等のメタン化触媒性能を有するものであった。この結果から、触媒活性種として貴金属よりも安価な金属を本発明の触媒担体に担持することにより、貴金属を担持した従来の触媒と同等のメタン化触媒性能を有する触媒が得られることがわかった。
【0068】
また、実施例1〜
5で得られた触媒粉末は、触媒担体粉末がSiO
2粉末である触媒粉末(比較例
4)に比べて、優れたメタン化触媒性能を有するものであった。さらに、触媒担体粉末がSiO
2担持ZrO
2粉末である触媒粉末(実施例1、4、
5)は、触媒担体粉末がZrO
2粉末である触媒粉末(比較例
5)、触媒担体粉末がモノクリニック型ZrO
2粉末とSiO
2粉末とを物理混合したものである触媒粉末(比較例
7)、及び触媒担体粉末がSiO
2−ZiO
2複合酸化物粉末である触媒粉末(比較例
8)に比べて、優れたメタン化触媒性能を有するものであった。また、触媒担体粉末がSiO
2担持Al
2O
3−ZrO
2複合酸化物粉末である触媒粉末(実施例2、3)は、触媒担体粉末がZrO
2粉末である触媒粉末(比較例
5)及び触媒担体粉末がAl
2O
3粉末である触媒粉末(比較例
6)に比べて、優れたメタン化触媒性能を有するものであった。さらに、触媒担体粉末がSiO
2担持CeO
2粉末である触媒粉末(
比較例1)及び触媒担体粉末がSiO
2担持CeO
2−ZrO
2複合酸化物粉末である触媒粉末(
比較例2)は、触媒担体粉末がCeO
2粉末である触媒粉末(比較例
11)及び触媒担体粉末がCeO
2−ZrO
2複合酸化物粉末である触媒粉末(比較例
12)に比べて、優れたメタン化触媒性能を有するものであった。これらの結果から、ZrO
2等の特定の酸化物粉末の表面の少なくとも一部にSiO
2を担持された状態で存在させることによって、メタン化触媒性能が向上することがわかった。
【0069】
さらに、酸化物粉末が結晶性である触媒粉末(実施例1〜4、
5)は、複合酸化物粉末が非晶質である触媒粉末(比較例
9)に比べて、優れたメタン化触媒性能を有するものであった。この結果から、ZrO
2等の特定の結晶性酸化物粉末の表面の少なくとも一部にSiO
2を担持された状態で存在させることによって、メタン化触媒性能が向上することがわかった。
【0070】
また、触媒担体粉末中のSi原子の含有量が3at%である触媒粉末(実施例3、
5)及び11at%である触媒粉末(実施例1、2、4)は、Si原子の含有量が18at%である触媒粉末(比較例
10)に比べて、優れたメタン化触媒性能を有するものであった。この結果から、Si原子の含有量が多くなりすぎると、ZrO
2等の酸化物粉末の表面の少なくとも一部にSiO
2を担持された状態で存在させることによる効果が得られないことがわかった。
【0071】
さらに、熱安定性を得るためにテトラゴナル型(正方晶系)ZrO
2を形成した酸化物粉末の表面の少なくとも一部にSiO
2を担持された状態で存在させた場合(実施例2〜4)にも、優れたメタン化触媒性能を有する触媒粉末が得られることが確認された。特に、触媒担体粉末中のAl原子の含有量が1at%であり、複合酸化物粉末中においてAl
2O
3がZrO
2に固溶している触媒粉末(実施例2、3)は、Al原子の含有量が20at%であり、複合酸化物粉末が非晶質である触媒粉末(比較例
9)に比べて、優れたメタン化触媒性能を有するものであった。この結果から、Al原子の含有量が多くなりすぎると、Al
2O
3がZrO
2に固溶せずに単独で存在し、複合酸化物粉末が非晶質となるため、このような複合酸化物の表面にSiO
2を担持しても、メタン化触媒性能は向上しないことがわかった。