(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
PETボトルリサイクル原料及び/又は植物由来の原料から生成したエチレングリコールをグリコール成分として用いたポリエステル原料を含有すると共に、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、全ポリエステル樹脂成分中において非晶質成分となりうるモノマー成分由来の構成ユニットが0モル%以上5モル%以下含有している熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、下記要件(1)〜(4)を満たすことを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
(1)90℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合におけるフィルム主収縮方向の温湯熱収縮率が15%以上50%以下であること
(2)90℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合におけるフィルム主収縮方向に対して直交する方向の温湯熱収縮率が0%以上12%以下であること
(3)90℃熱風下で測定したフィルム主収縮方向の最大収縮応力が2MPa以上10MPa以下であること
(4)全ポリエステル樹脂成分100mol%中ジエチレングリコール由来の構成ユニットが7モル%以上30モル%以下
90℃熱風下のフィルム主収縮方向における収縮応力測定において、測定開始から30秒後の収縮応力が最大収縮応力の60%以上100%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムについて詳しく説明する。尚、熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法は、後に詳述するが、フィルムは通常、ロール等を用いて搬送し、延伸することにより得られる。このとき、フィルムの搬送方向を長手方向と称し、前記長手方向に直交する方向をフィルム幅方向と称する。従って、以下で示す熱収縮性ポリエステル系フィルムの幅方向とは、ロール巻き出し方向に対し垂直な方向であり、フィルム長手方向とは、ロールの巻き出し方向に平行な方向をいう。実施例および比較例で得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムにおける主収縮方向は長手方向である。
【0013】
上記第1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを連続的に製造するための好ましい製造方法としては、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、全ポリエステル樹脂成分において非晶質成分となりうるモノマー成分が0モル%以上5モル%以下含有されたポリエステル系未延伸フィルムを、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態でTg+5℃以上Tg+40℃以下の温度で幅方向に3.5倍以上6倍以下の倍率で延伸した後、速度差がある加熱されたロールを用いてTg+5℃以上Tg+40℃以下の温度で長手方向に1.5倍から2.7倍以下の倍率で延伸し、しかる後フィルムの両端をクリップで把持した状態でTg以上Tg+40℃以下の温度で熱処理をしながら幅方向に0%以上15%以下の弛緩をすることである。
【0014】
特許文献1に記載のように、非晶性原料を多く用いずに、長手方向に高い収縮率を有し、機械的強度が高く、厚み斑の小さい収縮フィルムを得る製膜条件上の工夫点は、幅方向に比較的高倍率に延伸することで配向結晶化を生じさせ主収縮方向と直交する方向の収縮率を抑制し、その後の縦延伸では比較的低倍率で延伸することで分子が配向しているが、配向結晶化が小さい状態を作り出すことにある。
【0015】
しかし、縦延伸時の延伸応力は、低倍率とはいえ結晶性原料を多く用いた原料系では高くなり、また、幅方向に高倍率で延伸して配向結晶を生じさせているため、その後の縦延伸の応力はより高くなる。延伸時の応力はフィルムの収縮応力と密接に関係しており、収縮応力を低下させるためには延伸応力の低減が必要となる。そこで、本発明者は、縦延伸時の延伸応力を低減しうるグリコール成分としてジエチレングリコールに着目した。ジエチレングルコールが多くなると、耐熱性が悪くなり、溶融押出しで異物の吐出が増える為これまで積極的に使用されていなかった。しかし本発明者らは、ジエチレングリコールを使用するとフィルム延伸時の延伸応力が低下し、収縮率の著しい低下は伴わずに収縮応力のみ減少することが分かった。
【0016】
本発明のフィルムは、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするものである。ここで主たる構成成分とは、フィルムを構成する全ポリマー構成成分のうち70モル%以上がエチレンテレフタレートであることを意味している。エチレンテレフタレートを主たる構成成分として用いることにより、優れた機械的強度と透明性を有することができる。
【0017】
ポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETということがある)の重合法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびジオール成分を直接反応させる直接重合法、およびテレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のジオール成分を含む)とをエステル交換反応させるエステル交換法等の任意の製造方法が利用され得る。
【0018】
ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、0.45から0.8の範囲が好ましい。固有粘度が0.45よりも低いと、延伸により結晶化して収縮性が低下し好ましくない。また、0.8より大きいと濾圧上昇が大きくなり高精度濾過が困難となり、あまり好ましくない。
【0019】
また本発明はPETの中でもペットボトルリサイクル原料を用いることができる。(以下、単にリサイクル原料と記すことがある)。リサイクル原料はペットボトルにする際の成形性を良くするために概ねPETを構成成分とするが、イソフタル酸がモノマー成分として少し含まれていることが一般的である。本発明においては、非晶質成分となりうるモノマー成分を多く含有するポリマー原料を多量に使用するものではないが、リサイクル原料にイソフタル酸が含まれていることがあるため、非晶性モノマーの含有量が全ポリエステル樹脂成分100mol%中0mol%以上5 mol%以下の範囲で含まれていると表現している。
【0020】
非晶質成分となり得るモノマーとしては、代表例はイソフタル酸であるが、例えば、ネオペンチルグリコール、1.4-シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2-ジエチル1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオールを挙げることもでき、前記含有量の範囲で含まれていても特に差し支えない。
【0021】
ここで、上記の「非晶質成分となり得る」の用語の解釈について更に詳細に説明する。
【0022】
本発明において、「非晶性ポリマー」とは、具体的にはDSC示差走査熱量分析装置における測定で融解による吸熱ピークを有さない場合を指す。非晶性ポリマーは実質的に結晶化が進行しておらず、結晶状態をとりえないか、結晶化しても結晶化度が極めて低いものである。
【0023】
また、本発明において「結晶性ポリマー」とは上記の「非晶性ポリマー」ではないもの、即ち、DSC示差走査熱量分析装置における測定で融解による吸熱ピークを有する場合を指す。結晶性ポリマーは、ポリマーが昇温すると結晶化されうる、結晶化可能な性質を有する、あるいは既に結晶化しているものである。
【0024】
一般的には、モノマーユニットが多数結合した状態であるポリマーについて、ポリマーの立体規則性が低い、ポリマーの対象性が悪い、ポリマーの側鎖が大きい、ポリマーの枝分かれが多い、ポリマー同士の分子間凝集力が小さい、などの諸条件を有する場合、非晶性ポリマーとなる。しかし存在状態によっては、結晶化が十分に進行し、結晶性ポリマーとなる場合がある。例えば、側鎖が大きいポリマーであっても、ポリマーが単一のモノマーユニットから構成される場合、結晶化が十分に進行し、結晶性となり得る。そのため、同一のモノマーユニットであっても、ポリマーが結晶性になる場合もあれば、非晶性になる場合もあるため、本発明では「非晶質成分となり得るモノマー由来のユニット」という表現を用いた。
【0025】
ここで、本発明においてモノマーユニットとは、1つの多価アルコール分子および1つの多価カルボン酸分子から誘導されるポリマーを構成する繰り返し単位のことである。
【0026】
テレフタル酸とエチレングリコールからなるモノマーユニットがポリマーを構成する主たるモノマーユニットである場合、イソフタル酸とエチレングリコールからなるモノマーユニット、テレフタル酸とネオペンチルグリコールからなるモノマーユニット、テレフタル酸と1.4−シクロヘキサンジメタノールからなるモノマーユニット、イソフタル酸とブタンジオールからなるモノマーユニット等が、上記の非晶質成分となり得るモノマー由来のユニットとして挙げられる。
【0027】
また本発明は、植物由来の原料から生成したエチレングリコールをグリコール成分として用いたポリエステル原料(以下、単にバイオポリエステル原料と記すことがある)を用いることができる。
【0028】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、下式1により算出したフィルムの主収縮方向の熱収縮率(すなわち、90℃の温湯熱収縮率)が、15%以上50%以下であることが好ましい。
熱収縮率={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%)・・式1
【0029】
90℃における主収縮方向の温湯熱収縮率が15%未満であると、ラベルやバンディングフィルムとして使用する場合に、収縮量が小さいために、熱収縮した後のラベルやバンディングフィルムにシワやタルミが生じてしまうので好ましくない。一方、90℃における主収縮方向の温湯熱収縮率は50%を上回っても特に問題は無いが、本発明においては通常50%程度が熱収縮率の上限である。なお、90℃における主収縮方向の温湯熱収縮率の下限値は20%であると好ましく、25%であるとより好ましく、30%であると特に好ましい。
【0030】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、上式1により算出したフィルムの主収縮方向に対して直交する方向の温湯熱収縮率が、0%以上12%以下であることが好ましい
。90℃における主収縮方向に対して直交する方向の温湯熱収縮率が12%を上回ると、ラベルやバンディングフィルムとして用いた場合に熱収縮時に収縮方向と直交する方向のフィルムの長さが短くなるので好ましくない。一方、0%を下回ると、熱収縮時に主収縮方向
と直交方向のラベル長さが長くなり、たるみが生じてシワになり易いので好ましくない。なお、90℃における主収縮方向に対して直交する方向の温湯熱収縮率は、1%以上11%以下であると好ましく、2%以上10%以下であるとより好ましく、3%以上9%以下であるとさ
らに好ましい。
【0031】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃の熱風下で測定した主収縮方向の最大収縮応力が2MPa以上10MPa以下であることが好ましい。なお、収縮応力の測定は実施例に記載の方法で行うものとする。
【0032】
主収縮方向の90℃での最大収縮応力が10MPaを上回ると、ラベル貼り合わせ部の浮きや剥がれが生じたり、薄肉化した容器では収縮時に収縮応力により潰れが生じたりするため好ましくない。90℃の最大収縮応力は、9MPa以下がより好ましく、8MPa以下がさらに好ましい。また90℃の最大収縮応力は、2MPaを下回ると、容器のラベルとして使用する際に、ラベルが弛んで容器に密着しないことがあるため、好ましくない。90℃の最大収縮応力は、2.5MPa以上がより好ましく、3MPa以上がさらに好ましい。
【0033】
また、90℃の熱風中の測定開始から30秒後の収縮応力は、上記最大収縮応力に対して60%以上100%以下であることが好ましい。すなわち、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、熱収縮し始めてから30秒後も最大熱収縮応力と同程度の収縮応力を示すという特異な熱収縮特性を示す。30秒後の収縮応力/最大収縮応力×100(以下、応力比)が60%未満であると、容器へラベルを被せて加熱収縮させる際に、容器が加熱により膨張した時のラベルの追従性が悪くなり、収縮後に容器の温度が下がって熱膨張が無くなると、ラベルが弛んでしまい、タイト感のない仕上りになり好ましくない。上記応力比は、75%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。応力比は大きい方が、追従性が良好となるため好ましいが、30秒後の収縮応力が最大収縮応力を上回ることはあり得ないので、上限は100%である。
【0034】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに含有するグリコール成分としてのジエチレングリコール由来の構成ユニットは、全ポリエステル樹脂成分100mol%中ジエチレングリコール由来の構成ユニットが7モル%以上30モル%以下が好ましい。7モル%を下回ると、上記の好ましい収縮応力の範囲を上回るため好ましくない。また、30モル%を上回ると、樹脂の耐熱性が低下し溶融押出の際に異物の発生トラブルとなるため好ましくない。より好ましくは8モル%以上29モル%以下であり、さらに好ましくは9モル%以上28モル%であり、特に好ましくは10モル%以上27モル%以下である。
【0035】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、フィルム主収縮方向に対して直交する方向の引張破壊強さが80 MPa以上200 MPa以下であることが好ましい。なお、引張破壊強さ
の測定方法は実施例で説明する。上記引張破壊強さが80 MPaを下回ると、ラベル用途やバンディングフィルム用途として容器に装着する際の“腰”(スティフネス)が弱くなるので好ましくなく、反対に、引張破壊強さが200 MPaを上回ると、ラベルやバンディングフィルムを引き裂く際の初期段階におけるカット性(引き裂き易さ)が不良となるので好ましくない。なお、引張破壊強さの下限は、100 MPa以上がより好ましく、110 MPa以上がさらに好ましく、120 MPa以上が特に好ましく、上限は190 MPa以下がより好ましく、180 MPa以下がさらに好ましく、170 MPa以下が特に好ましい。
【0036】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、フィルム主収縮方向のフィルムの厚み斑が13%以下であることが好ましい。フィルム主収縮方向のフィルムの厚み斑が13%より大きい場合、ラベルの印刷時に印刷斑が発生し易くなったり、熱収縮性後の収縮斑が発生し易くなったりするので好ましくない。
【0037】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、ラベル用途やバンディング用途の熱収縮性フィルムとして5〜100μmが好ましく、10〜95μmがより好ましい。
【0038】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、その製造方法について何ら制限される物ではないが、例えば、上記したポリエステル原料を押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを以下に示す方法により、二軸延伸することによって得ることができる。
【0039】
原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエステル原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200〜300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。かかる押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0040】
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金より回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
【0041】
さらに、得られた未延伸フィルムを、後述するように、所定の条件で幅方向に延伸した後に、所定の条件で長手方向に延伸し、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることが可能となる。以下、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい二軸延伸について説明する。
【0042】
[熱収縮性ポリエステル系フィルムの好ましい延伸方法]
通常の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、収縮させたい方向に未延伸フィルムを延伸することによって製造される。従来から長手方向に収縮する熱収縮性ポリエステル系フィルムについての要求は高かったものの、未延伸フィルムを単純に長手方向に延伸するだけでは、幅方向の引張破壊強さが大幅に低くなる上に、幅の広いフィルムが製造できないため生産性の点で好ましくない。また、通常の熱収縮性ポリエステルフィルムは、熱収縮特性を付与するため、非晶質成分を多く含む原料を用いるので、リサイクル原料を混合する比率には限界がある。
【0043】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの延伸方法には、幅方向および長手方向の延伸倍率に工夫がある。その延伸倍率について以下で説明する。
【0044】
[幅方向への延伸倍率]
本発明者らは、研究の結果、意図的に非晶PET原料を使用しないフィルムは延伸倍率2倍前後が延伸方向の収縮率が高くなることが分かった。また延伸倍率を3倍より高くすると延伸方向の収縮率は低下し、非延伸方向の収縮率が高くなることが分かった。この研究結果より、二軸に延伸して長手方向に収縮させるには最初の横延伸倍率をTg+5℃以上Tg+40℃以下の温度で、3.5倍以上6倍以下で延伸することが好ましい。3.5倍より低いと幅方向の収縮率を低下させるには十分で無い。また横延伸倍率の上限は特に規定は無いが6倍より高いと、長手方向に延伸し難くなる(所謂破断が生じやすくなる)ので好ましくない。より好ましくは3.7倍以上5.8倍以下であり、更に好ましくは3.9倍以上5.6倍以下である。
【0045】
このように多量には非晶質成分を含有しないPET原料を使用するフィルムの延伸倍率と収縮率の関係は上記のようになるので、幅方向延伸後長手方向延伸前の熱処理は実施してもしなくても、どちらでも構わない。
【0046】
[長手方向への延伸倍率]
長手方向へTg+5℃以上Tg+40℃以下の温度で、延伸倍率は1.5倍以上2.7倍以下が好ましい。1.5倍より低いと収縮率が不足し、2.7倍より高いと、幅方向の収縮率が高くなってくるので長手方向への一軸収縮フィルムとして好ましくない、また、2.7倍より高い延伸では長手方向の収縮応力が高くなってしまい好ましくない。より好ましくは1.6倍以上2.6倍以下であり、更に好ましくは1.7倍以上2.5倍以下である。
【0047】
また長手方向の延伸温度がTg+5℃未満であると、延伸時に破断が生じやすくなり、好ましくない。またTg+40℃より高いと、フィルムの熱結晶化が進んで収縮率が低下するので好ましくない。より好ましくはTg+8℃以上Tg+37℃以下であり、更に好ましくはTg+11℃以上Tg+34℃以下である。
【0048】
上記のように、本発明における好ましい延伸方法としては、長手方向の延伸倍率の方が幅方向の延伸倍率より小さくすることが例示される。
【0049】
[熱処理と幅方向への弛緩]
フィルム両端をクリップで把持した状態で、Tg以上Tg+40℃以下の温度で熱処理をしながら、幅方向に0%以上15%以下の弛緩をすることが好ましい。熱処理温度がTg未満であると、熱処理の意味が無くなり、製品後に保管時の経時収縮(所謂自然収縮率)が高くなり好ましく無い。またTg+40℃より高いと、分子鎖の熱結晶化が進んで、幅方向のみならず長手方向の収縮率も低下するのであまり好ましくない。より好ましくはTg+3℃以上Tg+37℃以下であり、更に好ましくはTg+6℃以上Tg+34℃以下である。また幅方向の弛緩率は0%より低いと、実質的に幅方向に延伸となり弛緩として好ましくない。また弛緩率は15%より高くても構わないが、弛緩率が高いと最終的に製品となるフィルム幅が狭くなるので好ましくない。より好ましくは1%以上14%以下であり、更に好ましくは2%以上13%以下である。
【0050】
本発明においては、幅方向に比較的高倍率で延伸した後、長手方向に比較的低倍率で延伸することで長手方向の一軸収縮性を得られたことに関しては、非晶質成分となり得るモノマー成分を多くは含まない結晶性のPETの性質が関係しているものと考えられる。即ち、結晶性のPETについては、例えば幅方向に3.5倍以上といった高い延伸倍率で延伸されると、分子鎖が配向すると共に分子鎖の結晶化が進み、これが幅方向の熱収縮率を低くする要因として働いているものと推察される。この点、長手方向の2.7倍程度以下の延伸倍率は、長手方向にある程度分子鎖が配向しても、結晶化があまり進まない領域であるので、相対的に高い熱収縮率が得られるものと推定している。もちろんではあるが、幅方向への弛緩熱処理も幅方向の熱収縮率を低下させる上で一定の寄与をしていると考えている。
【0051】
本発明の包装体は、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムから得られたバンディングフィルム(及びラベル)が、包装対象物の少なくとも外周の一部に被覆して熱収縮させて形成されるものである。包装対象物としては、(飲料用のPETボトルを始め、各種の瓶、缶、菓子や)弁当等のプラスチック容器、紙製の箱等を挙げることができる。なお、通常、それらの包装対象物に、熱収縮性ポリエステル系フィルムから得られるラベルを熱収縮させて被覆させる場合には、当該バンディングフィルム(及びラベル)を約5〜50%程度熱収縮させて包装体に密着させる。なお、包装対象物に被覆されるバンディングフィルム(及びラベル)には、印刷が施されていても良いし、印刷が施されていなくても良い。
【0052】
バンディングフィルム(及びラベル)を作製する方法としては、長方形状のフィルムのを長手方向に丸めて端部を重ね合わせて接着してラベル状にするか、あるいは、ロール状に巻き取ったフィルムをロール長手方向に丸めて端部をフィルムに重ね合わせて接着して、チューブ状体としたものをカットしてラベル状とする。フィルム同士を接着する方法は、溶断シール、溶剤接着、ホットメルト接着剤による接着、エネルギー線硬化型接着剤による接着など、既知の方法を用いて行うことができる。
【0053】
また、未延伸フィルムを2.7倍以下で延伸すると延伸方向の厚み斑が非常に悪くなるので、これまでPET原料による未延伸フィルムを2倍前後の延伸倍率で延伸することはほ
とんど行われていなかった。しかし、一度幅方向に3.5倍以上といった高倍率で延伸されたフィルムを長手方向に2倍前後の倍率で延伸すると、長手方向の厚み斑が良好なことがわかった。これは長手方向に延伸する際、未延伸フィルムを延伸するのと異なり、一度幅方向に高倍率で延伸することで、長手方向に2倍前後で延伸する際の延伸応力や、応力−歪曲線が変化したためと考えられる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。実施例および比較例で使用した原料の組成、実施例および比較例におけるフィルムの製造条件、実施例および比較例におけるフィルムの評価結果を、それぞれ表1、表2、表3に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
また、フィルムの評価方法は下記の通りである。
[Tg(ガラス転移点)]
示差走査熱量分析装置(セイコー電子工業株式会社製、DSC220)を用いて、未延伸フィルム5mgをサンプルパンに入れ、パンのふたをし、窒素ガス雰囲気下で−40℃から120℃に10℃/分の昇温速度で昇温して測定した。Tg(℃)はJIS−K7121−1987に基づいて求めた。
【0059】
[固有粘度 (IV)]
ポリエステル0.2gをフェノール/1,1,2,2-テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。単位はdl/g。
【0060】
[熱収縮率(温湯熱収縮率)]
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、所定温度±0.5℃の温水中において、無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた後、フィルムの縦および横方向の寸法を測定し、上式1にしたがって、それぞれ熱収縮率を求めた。当該熱収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
【0061】
[収縮応力]
熱収縮性フィルムから主収縮方向の長さが2000mm、幅20mmの短冊状フィルムサンプルを切り出し、東洋ボールドウィン社製(現社名オリエンテック)の加熱炉付き強伸度測定機テシロン万能試験機 PTM−250(オリエンテック社の登録商標)を用いて収縮応力を測定した。強伸度測定機の加熱炉は予め炉内を90℃に加熱しておき、フィルムサンプルを把持するためのチャック間距離は100mmとした。サンプルを強伸度測定機のチャックに取り付ける際には、加熱炉の送風を一旦止めて加熱炉の扉を開け、長さ方向150mmのサンプルの両端25mmずつをチャック間に挟み、チャック間距離は100mmとして、チャック間とサンプルの長さ方向とが一致し且つサンプルが水平となるように緩みなく固定した。サンプルをチャックに取り付けた後、速やかに加熱炉の扉を閉めて、送風を再開した。加熱炉の扉を閉め送風を再開した時点を収縮応力の測定開始時点とし、30秒後の収縮応力(MPa)を求めた。また、収縮応力の測定開始時点から、測定開始後30秒までの間における収縮応力測定値の最大値を収縮応力の最大値(最大収縮応力(MPa))とした。尚、収縮応力の測定時にはチャック間距離を100mmに固定し、測定開始から測定開始後30秒までの収縮応力の推移を測定した。そして、収縮応力の最大値に対する測定開始時点から30秒後の収縮応力の値の比率を収縮応力比とした(下式で表す)
収縮応力比(%)=(30秒後の収縮応力の値)÷(収縮応力の最大値)×100
【0062】
[引張破壊強さ]
測定方向(フィルム幅方向)が140mm、測定方向と直交する方向(フィルム長手方向)が20mmの短冊状の試験片を作製した。万能引張試験機「DSS−100」(島津製作所製)を用いて、試験片の両端をチャックで片側20mmずつ把持(チャック間距離100mm)して、雰囲気温度23℃、引張速度200mm/minの条件にて引張試験を行い、引張破壊時の強度(応力)を引張破壊強さとした。
【0063】
[長手方向の厚み斑]
フィルム長手方向を長さ30m×幅40mmの長尺なロール状にサンプリングし、ミクロン測定器株式会社製の連続接触式厚み計を用いて、5(m/分)の速度で測定した。なお、上記したロール状のフィルム試料のサンプリングにおいては、フィルム試料の長さ方向をフィルムの主収縮方向とした。測定時の最大厚みをTmax.、最小厚みをTmin.、平均厚みをTave.とし、下式2からフィルムの長手方向の厚み斑を算出した。
厚み斑={(Tmax.−Tmin.)/Tave.}×100 (%) ・・式2
【0064】
[収縮仕上り性・容器変形(弁当容器へのバンディングフィルム用途]
厚みが薄いポリプロピレン製の弁当容器(辺 150×150mm、高さ100mm)に対して、容器の胴部と蓋部をフィルムが結束するように、容器の周方向をフィルムの収縮方向にして巻き付け、220℃で溶断シール後、設定温度90℃のシュリンクトンネルにて加熱収縮させた。
図1は弁当容器を上から見た図であるが、フィルム装着前に一辺から反対のもう一辺までの長さYを5mmピッチで測定し、フィルムを収縮させて装着後に同様に同じ箇所の長さY’を測定して、YとY’の差の絶対値をLとした。5mmピッチに算出したLの最大値Lmaxを求め、Lmaxの大きいものを容器の変形が大きいと判断し、基準は以下のようにした。
○: Lmax ≦4mm
△: 4mm < Lmax ≦5mm
×: 5mm < Lmax
【0065】
[収縮仕上り性・接着部の剥がれ(ボトルラベル用途]
熱収縮性フィルムに、予め東洋インキ製造(株)の草・金・白色のインキで3色印刷を施した。そして、印刷したフィルムの両端部を市販のエチレン−酢酸ビニル系ホットメルト接着剤で接着することにより、円筒状のラベル(熱収縮性フィルムの主収縮方向を周方向としており、外周長が装着するボトルの外周長の1.05倍である円筒状のラベル)を作成した。しかる後、その円筒状のラベルを、500mlのPETボトル(胴直径62mm、ネック部の最小直径25mm)に被せて、Fuji Astec Inc製スチームトンネル(型式;SH−1500−L)を用い、通過時間2.5秒、ゾーン温度80℃で熱収縮させることにより、ラベルを装着した。なお、装着の際には、ネック部においては、直径55mmの部分がラベルの一方の端になるように調整した。収縮後にラベルの接着部が剥がれているラベルを不良品とし、1サンプルで100枚のラベルを作成し、収縮仕上げした100枚のうちの不良品の比率を不良率(%)として算出し、以下の基準で評価した。
○: 1 %以下
△: 2%以上5 %以下
×: 6%以上
【0066】
また、実施例および比較例に用いたポリエステルは以下の通りである。
【0067】
撹拌機、温度計および部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、ジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、グリコール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%とを、エチレングリコールがモル比でジメチルテレフタレートの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.225モル%(酸成分に対して)を添加し、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、280℃で26.7Paの減圧条件のもとで重縮合反応を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステルAを得た。組成を表1に示す。
合成例B〜D
【0068】
合成例Aと同様の方法により、表1に示すポリエステルB〜Dを得た。ポリエステルBおよびDの製造の際には、滑剤としてSiO2(富士シリシア社製サイリシア266;平均粒径1.5μm)をポリエステルに対して7200ppmの割合で添加した。なお、表中、DEGはジエチレングリコールである。各ポリエステルの固有粘度は、それぞれ、B:0.7dl/g,C:0.65dl/g,D:0.65dl/gであった。なお、各ポリエステルは、適宜チップ状にした。
【0069】
なお、ポリエステルEはリサイクル原料 (よのペットボトルリサイクル(株)製 「クリアペレット」)であり、固有粘度は、 0.63dl/gである。また、このポリエステルEは、表1に記載のとおり、ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対してイソフタル酸を2mol%含んでいる)。
【0070】
ポリエステルFは下記のような製造方法にて樹脂を調製した。石油由来の原料から精製したテレフタル酸と植物由来の原料から精製したエチレングリコールの混合物中に酢酸マグネシウム四水塩をポリエステル中にMg原子として70 ppmとなるように加え常圧化にて温度255℃でエステル化反応させた。その後Sb原子としてポリエステル中に280 ppmとなるような量の三酸化アンチモンおよびP原子としてポリエステル中に40 ppmとなるような量のリン酸トリメチルを加えさらに温度260℃で反応させた。 引き続いて、反応生成物を重縮合反応層に移し加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して133 Pa(1 mmHg)の減圧下、280℃で常法により重縮合を行い、IV=0.62 dl / gのポリエステルチップを得た。バイオマス度を測定したところ、バイオマス度は17%であった。
【0071】
〔参考例1〕
上記したポリエステルA、ポリエステルCおよびポリエステルDを重量比87:7:6で混合して押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが162μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは72℃であった。しかる後、この未延伸フィルムを横延伸機(以下テンターと記す)に導いた。そして、テンターに導かれた未延伸フィルムを、フィルム温度が100℃(Tg+28℃)になるまで予備加熱した後、横方向に90℃(Tg+18℃)で4.5倍に延伸した。さらにそのように横延伸されたフィルムを、複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、予熱ロール上で90℃(Tg+18℃)になるまで予備加熱した後に、ロールの速度差を用いて2倍に延伸した。しかる後、縦延伸されたフィルムを表面温度25℃に設定された冷却ロールによって強制的に冷却した。そして、冷却後のフィルムをテンター(第二テンター)へ導き、該当第二テンター内で90℃の雰囲気下で8秒に亘って、熱処理しながらフィルム幅方向へ5%の弛緩を施した。第二テンター後に両縁部を裁断除去することによって、約18μmの二軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製膜して熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。評価結果を表3に示す。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮応力が低いためにラベル接着部の剥がれや、容器の変形の無い、良好な収縮仕上がり性が得られるフィルムであった。
【0072】
〔参考例2〕
長手方向の延伸倍率を2.5倍とし、長手方向への延伸後のフィルムの厚さが18μmになるように溶融させた混合樹脂のTダイから押出し量を調整した以外は参考例1と同様とした。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮応力が低いためにラベル接着部の剥がれや、容器の変形の無い、良好な収縮仕上がり性が得られるフィルムであった。
【0073】
〔参考例3〕
長手方向の延伸倍率を2.7倍とし、長手方向への延伸後のフィルムの厚さが18μmになるように溶融させた混合樹脂のTダイから押出し量を調整した以外は参考例1と同様とした。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮応力が低いためにラベル接着部の剥がれや、容器の変形の無い、良好な収縮仕上がり性が得られるフィルムであった。
【0074】
〔参考例4〕
長手方向の延伸後工程である熱処理しながらの弛緩を弛緩率10%にし、フィルムの厚さが18μmになるように溶融させた混合樹脂のTダイから押出し量を調整した以外は参考例1と同様とした。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮応力が低いためにラベル接着部の剥がれや、容器の変形の無い、良好な収縮仕上がり性が得られるフィルムであった。
【0075】
〔参考例5〕
上記したポリエステルA、ポリエステルCおよびポリエステルDを重量比74:7:19で混合して押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが162μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは65℃であった。しかる後、この未延伸フィルムを横延伸機(以下テンターと記す)に導いた。そして、テンターに導かれた未延伸フィルムを、フィルム温度が90℃(Tg+25℃)になるまで予備加熱した後、横方向に80℃(Tg+15℃)で4.5倍に延伸した。さらにそのように横延伸されたフィルムを、複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、予熱ロール上で80℃(Tg+15℃)になるまで予備加熱した後に、ロールの速度差を用いて2倍に延伸した。しかる後、縦延伸されたフィルムを表面温度25℃に設定された冷却ロールによって強制的に冷却した。そして、冷却後のフィルムをテンター(第二テンター)へ導き、該当第二テンター内で90℃の雰囲気下で8秒に亘って、熱処理しながらフィルム幅方向へ8%の弛緩を施した。第二テンター後に両縁部を裁断除去することによって、約18μmの二軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製膜して熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。評価結果を表3に示す。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮応力が低いためにラベル接着部の剥がれや、容器の変形の無い、良好な収縮仕上がり性が得られるフィルムであった。
【0076】
〔参考例6〕
長手方向の延伸倍率を2.5倍とし、長手方向への延伸後のフィルムの厚さが18μmになるように溶融させた混合樹脂のTダイから押出し量を調整した以外は参考例5と同様とした。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮応力が低いためにラベル接着部の剥がれや、容器の変形の無い、良好な収縮仕上がり性が得られるフィルムであった。
【0077】
〔参考例7〕
長手方向の延伸倍率を2.7倍とし、長手方向への延伸後のフィルムの厚さが18μmになるように溶融させた混合樹脂のTダイから押出し量を調整した以外は参考例5と同様とした。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮応力が低いためにラベル接着部の剥がれや、容器の変形の無い、良好な収縮仕上がり性が得られるフィルムであった。
【0078】
〔参考例8〕
上記したポリエステルA、ポリエステルCおよびポリエステルDを重量比55:7:38で混合して押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが162μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは55℃であった。しかる後、この未延伸フィルムを横延伸機(以下テンターと記す)に導いた。そして、テンターに導かれた未延伸フィルムを、フィルム温度が80℃(Tg+25℃)になるまで予備加熱した後、横方向に70℃(Tg+15℃)で4.5倍に延伸した。さらにそのように横延伸されたフィルムを、複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、予熱ロール上で70℃(Tg+15℃)になるまで予備加熱した後に、ロールの速度差を用いて2倍に延伸した。しかる後、縦延伸されたフィルムを表面温度25℃に設定された冷却ロールによって強制的に冷却した。そして、冷却後のフィルムをテンター(第二テンター)へ導き、該当第二テンター内で90℃の雰囲気下で8秒に亘って、熱処理しながらフィルム幅方向へ12%の弛緩を施した。第二テンター後に両縁部を裁断除去することによって、約18μmの二軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製膜して熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。評価結果を表3に示す。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮応力が低いためにラベル接着部の剥がれや、容器の変形の無い、良好な収縮仕上がり性が得られるフィルムであった。
【0079】
〔参考例9〕
長手方向の延伸倍率を2.5倍とし、長手方向への延伸後のフィルムの厚さが18μmになるように溶融させた混合樹脂のTダイから押出し量を調整した以外は参考例8と同様とした。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮応力が低いためにラベル接着部の剥がれや、容器の変形の無い、良好な収縮仕上がり性が得られるフィルムであった。
【0080】
〔参考例10〕
長手方向の延伸倍率を2.7倍とし、長手方向への延伸後のフィルムの厚さが18μmになるように溶融させた混合樹脂のTダイから押出し量を調整した以外は参考例8と同様とした。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮応力が低いためにラベル接着部の剥がれや、容器の変形の無い、良好な収縮仕上がり性が得られるフィルムであった。
【0081】
〔参考例11〕
縦延伸機において予熱ロール上で85℃(Tg+30℃)になるまで予備加熱して縦延伸した以外は参考例10と同様とした。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮応力が低いためにラベル接着部の剥がれや、容器の変形の無い、良好な収縮仕上がり性が得られるフィルムであった。
【0082】
〔実施例12〕
上記したポリエステルE、ポリエステルCおよびポリエステルDを重量比87:7:6で混合して押出機に投入した以外は、参考例1と同様とした。未延伸フィルムのTgは72℃であった。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮応力が低いためにラベル接着部の剥がれや、容器の変形の無い、良好な収縮仕上がり性が得られるフィルムであった。
【0083】
〔実施例13〕
上記したポリエステルF、ポリエステルCおよびポリエステルDを重量比87:7:6で混合して押出機に投入した以外は、参考例1と同様とした。未延伸フィルムのTgは72℃であった。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮応力が低いためにラベル接着部の剥がれや、容器の変形の無い、良好な収縮仕上がり性が得られるフィルムであった。
【0084】
〔比較例1〕
上記したポリエステルAとポリエステルBを重量比93:7で混合して押出機に投入した以外は、参考例1と同様とした。未延伸フィルムのTgは75℃であった。評価の結果、十分な収縮性を有しはするものの、収縮応力が高いためにラベル接着部の剥がれや、容器の変形が生じ、良好な収縮仕上がり性が得られないフィルムであった。
【0085】
〔比較例2〕
上記したポリエステルAとポリエステルCを重量比93:7で混合して押出機に投入した以外は、参考例1と同様とした。未延伸フィルムのTgは74℃であった。評価の結果、十分な収縮性を有しはするものの、収縮応力が高いためにラベル接着部の剥がれや、容器の変形が生じ、良好な収縮仕上がり性が得られないフィルムであった。