特許第6802562号(P6802562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802562
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】ロータリーキルン
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/20 20060101AFI20201207BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20201207BHJP
   C08J 11/14 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   F27B7/20ZAB
   F27D7/02 A
   C08J11/14
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-27492(P2017-27492)
(22)【出願日】2017年2月17日
(65)【公開番号】特開2018-132271(P2018-132271A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008431
【氏名又は名称】高砂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(72)【発明者】
【氏名】中村 寿樹
(72)【発明者】
【氏名】大島 士月
【審査官】 鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/051572(WO,A1)
【文献】 特開2007−240031(JP,A)
【文献】 特開2007−130542(JP,A)
【文献】 特開2004−239451(JP,A)
【文献】 特開2002−098479(JP,A)
【文献】 特開平11−173756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 7/00 − 7/42
C08J 11/14
F27G 5/20
F23G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸周りに回転可能であって、マトリックス樹脂と炭素繊維とを有する炭素繊維強化樹脂製の被処理物を内部で加熱することにより、前記被処理物から前記炭素繊維を抽出する管体と、
前記管体の側周壁を貫通して配置され、前記管体の内部において前記マトリックス樹脂から生成される可燃性のガスを前記管体の外部に排気する複数の排気筒と、
前記排気筒が閉塞するのを抑制する閉塞抑制部と、
を備え
前記閉塞抑制部は、前記排気筒の内周面に固定される固定端と、前記排気筒の内部に挿入され前記管体の回転に伴って前記排気筒の内部を移動する自由端と、を有する紐部材であるロータリーキルン。
【請求項2】
前記ガスは、前記管体の内部において、前記被処理物が過熱水蒸気に曝されながら加熱されることにより、生成される請求項1に記載のロータリーキルン。
【請求項3】
記排気筒の少なくとも一部は、テーパ筒部であり、
前記テーパ筒部の通路断面積は、前記管体の径方向内側から径方向外側に向かって大きくなる請求項1または請求項2に記載のロータリーキルン。
【請求項4】
前記排気筒は、前記管体に対して着脱可能である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のロータリーキルン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維強化樹脂から炭素繊維を抽出する外熱式のロータリーキルンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、炭素繊維強化樹脂(Carbon Fiber Reinforced Plastic 以下、適宜、「CFRP」と称す)の廃棄物から、連続的に炭素繊維を回収可能なロータリーキルンが開示されている。同文献記載のロータリーキルンの管体は、燃焼室を貫通している。管体の側周壁には、排気筒が配置されている。排気筒は、L字状に延在している。また、排気筒の内径は、軸方向全長に亘って同径である。排気筒は、管体の内部と燃焼室とを連結している。
【0003】
管体の内部において、CFRPの廃棄物は、過熱水蒸気に曝された状態で、加熱される。CFRP中のマトリックス樹脂は、過熱水蒸気および燃焼室の熱により、ガス化する。当該ガスは可燃性を有している。可燃性のガスは、排気筒を介して、管体の内部から燃焼室に流動する。燃焼室において当該ガスを燃焼させることにより、管体を加熱することができる。このため、CFRPの廃棄物の加熱コストを削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/051572号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、管体の内部においては、可燃性のガスの生成に伴って、CFRPから炭素繊維が分離してくる。当該炭素繊維は軽量である。このため、炭素繊維が、可燃性のガスの気流に乗って浮動し、排気筒に流れ込むおそれがある。流れ込んだ炭素繊維は、排気筒の内周面に付着してしまうおそれがある。また、付着した炭素繊維が核となり、塊状に生長し、最終的に排気筒が閉塞してしまうおそれがある。そこで、本発明は、排気筒が閉塞しにくいロータリーキルンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のロータリーキルンは、軸周りに回転可能であって、マトリックス樹脂と炭素繊維とを有する炭素繊維強化樹脂製の被処理物を内部で加熱することにより、前記被処理物から前記炭素繊維を抽出する管体と、前記管体の側周壁を貫通して配置され、前記管体の内部において前記マトリックス樹脂から生成される可燃性のガスを前記管体の外部に排気する複数の排気筒と、前記排気筒が閉塞するのを抑制する閉塞抑制部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のロータリーキルンは、閉塞抑制部を備えている。このため、排気筒が閉塞するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態のロータリーキルンの軸方向断面図である。
図2】同ロータリーキルンの管体の加熱区間の軸方向断面図である。
図3】(a)は、その他の実施形態(その1)のロータリーキルンの管体の径方向断面図である。(b)は、その他の実施形態(その2)のロータリーキルンの管体の径方向断面図である。
図4】その他の実施形態(その3)のロータリーキルンの管体の径方向部分拡大断面図である。
図5】その他の実施形態(その4)のロータリーキルンの管体の加熱区間の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のロータリーキルンの実施の形態について説明する。
【0010】
[ロータリーキルンの構成]
まず、本実施形態のロータリーキルンの構成について説明する。図1に、本実施形態のロータリーキルンの軸方向(前後方向)断面図を示す。図1に示すように、ロータリーキルン1は、過熱水蒸気供給部2と、管体部3と、燃焼部4と、ガス供給部5と、回収部6と、供給部7と、前後二対のローラ90と、を備えている。
【0011】
(燃焼部4)
燃焼部4は、外壁40と、断熱材41と、燃焼室43と、複数のバーナ44と、複数の空気供給管45と、排気孔47と、を備えている。断熱材41は、外壁40の内側に積層されている。燃焼室43は、断熱材41の内部に区画されている。複数のバーナ44および複数の空気供給管45は、燃焼室43に配置されている。バーナ44には、燃料ガス(例えばプロパンガス)と空気とが供給される。空気供給管45には、空気が供給される。排気孔47は、燃焼室43と外部とを連通している。排気孔47には、ファン(図略)が配置されている。ファンは、排気孔47を介して、燃焼室43のガスを外部に排気可能である。
【0012】
(管体部3、ローラ90)
管体部3は、管体30と、前後一対のタイヤ31と、複数の排気筒32と、を備えている。前後一対のタイヤ31は、後述する加熱区間Aを挟んで、管体30の前端部と後端部とに環装されている。前後一対のタイヤ31は、各々、左右一対のローラ90に、転動可能に載置されている。前後一対のタイヤ31が転動することにより、管体部3つまり管体30は、自身の軸周りに回転可能である。
【0013】
管体30は、円筒状を呈している。管体30は、略水平に配置されている。管体30は、前側(後述する被処理物10の搬送方向における上流側)から後側(後述する被処理物10の搬送方向における下流側)に向かって下がる方向に、傾斜している。管体30は、燃焼部4を前後方向(軸方向)に貫通している。管体30のうち、燃焼室43に露出している部分の内部(径方向内側)には、加熱区間Aが設定されている。
【0014】
図2に、本実施形態のロータリーキルンの管体の加熱区間の軸方向断面図を示す。図2に示すように、管体30には、管体30の軸方向に所定間隔ずつ離間して、複数の排気筒32が配置されている。管体30の軸方向に隣り合う一対の排気筒32は、管体30の周方向に180°ずれて配置されている。
【0015】
排気筒32は、管体30の径方向に延在している。排気筒32は、管体30の側周壁を貫通している。排気筒32の内部には、排気通路320が配置されている。排気通路320は、加熱区間Aと燃焼室43とを連結している。排気筒32には、自身の軸方向全長に亘って、テーパ筒部321が配置されている。テーパ筒部321は、管体30の径方向内側から径方向外側に向かって拡がる、テーパ筒状を呈している。排気通路320の通路断面積(排気通路320の径方向断面積)は、管体30の径方向内側から径方向外側に向かって、大きくなっている。
【0016】
(供給部7)
図1に示すように、供給部7は、スクリューフィーダ70と、ホッパ71と、切断機72と、上流端カバー73と、を備えている。上流端カバー73は、管体30の前端部を、管体30の回転を確保しながら、覆っている。スクリューフィーダ70は、前後方向に延在している。スクリューフィーダ70の後端(被処理物10の搬送方向における下流端)は、管体部3の内部に挿入されている。ホッパ71は、スクリューフィーダ70の前端部に、上側から接続されている。切断機72は、ホッパ71の前側(被処理物10の搬送方向における上流側)に連なっている。
【0017】
(ガス供給部5、過熱水蒸気供給部2、回収部6)
ガス供給部5は、ガス供給管50を備えている。ガス供給管50は、上流端カバー73を貫通している。過熱水蒸気供給部2は、過熱水蒸気供給管20を備えている。過熱水蒸気供給管20は、上流端カバー73を貫通している。回収部6は、タンク60と、下流端カバー61と、を備えている。下流端カバー61は、管体30の後端部を、管体30の回転を確保しながら、覆っている。タンク60は、下流端カバー61の下側に連なって配置されている。タンク60の下流側には分級設備(図略)が連なっている。
【0018】
[ロータリーキルンの炭素繊維回収時の動き]
次に、本実施形態のロータリーキルンの炭素繊維回収時の動きについて説明する。図1に示すように、ロータリーキルン1は、CFRP製の被処理物10を、マトリックス樹脂からなる可燃性のガス10Gと、炭素繊維10Sと、に分離する。このうち、炭素繊維10Sは回収される。また、ガス10Gは、ロータリーキルン1において、被処理物10を加熱するために使用される。
【0019】
まず、ロータリーキルン1を起動する。具体的には、複数のバーナ44に、燃料ガス、空気を供給し点火する。すなわち、燃焼室43を加熱する。また、スクリューフィーダ70、切断機72を駆動する。また、管体30を、モータ(図略)により、自身の軸周りに回転させる。
【0020】
また、ガス供給管50から、管体30の前端開口(被処理物10の搬送方向における上流端開口)を介して、管体30の内部に、窒素ガスを導入する。並びに、過熱水蒸気供給管20から、管体30の前端開口を介して、管体30の内部に、過熱水蒸気を導入する。
【0021】
次に、ロータリーキルン1に、被処理物10を供給する。具体的には、切断機72、ホッパ71を介して、スクリューフィーダ70に、被処理物10を供給する。被処理物10は、マトリックス樹脂と、炭素繊維10Sと、を備えている。被処理物10は、切断機72により、所定の大きさに切断される。
【0022】
被処理物10は、スクリューフィーダ70により、管体30の内部に投入される。投入された被処理物10は、管体30の回転により周方向に揺動しながら、管体30の傾斜により前側から後側に向かって移動する。被処理物10は、加熱区間Aを通過する。
【0023】
ここで、加熱区間Aは、燃焼室43に収容されている。加熱区間Aは、燃焼室43により、所定の温度に保持されている。また、加熱区間Aには、過熱水蒸気供給管20を介して、前側(被処理物10の搬送方向における上流側)から、過熱水蒸気が導入されている。同様に、加熱区間Aには、ガス供給管50を介して、前側(被処理物10の搬送方向における上流側)から、窒素ガスが導入されている。このため、加熱区間Aにおいて、被処理物10は、過熱水蒸気、窒素ガスに曝された状態で、加熱される。被処理物10中のマトリックス樹脂は、分解(加水分解、熱分解)し、ガス化する。このように、加熱区間Aにおいて、被処理物10は、ガス10Gと、炭素繊維10Sと、に分離する。
【0024】
ガス10Gの生成に伴って、加熱区間Aの圧力は上昇する。一方、燃焼室43の圧力は、排気孔47のファンにより、減圧される。このため、加熱区間Aと燃焼室43との間には、加熱区間Aから排気通路320を介して燃焼室43に流れ込む方向に、気流が形成される。ガス10Gは、当該気流により、複数の排気通路320を介して、加熱区間Aから燃焼室43に排気される。可燃性のガス10Gは、燃焼室43において燃焼する。すなわち、ガス10Gは、被処理物10を加熱する際の熱源、具体的にはマトリックス樹脂を分解(加水分解、熱分解)させる際の熱源として利用される。廃ガスは、排気孔47を介して、加熱室200からロータリーキルン1の外部に放出される。
【0025】
一方、炭素繊維10Sは、加熱区間Aに残留する。炭素繊維10Sは、管体30の回転に伴って、加熱区間Aを転動しながら通過する。加熱区間A通過後の炭素繊維10Sは、管体30の後端開口(被処理物10の搬送方向における下流端開口)から、タンク60に流れ落ちる。その後、炭素繊維10Sは、分級設備により、繊維長の長短に応じて分級される。
【0026】
[作用効果]
次に、本実施形態のロータリーキルンの作用効果について説明する。上述したように、炭素繊維10Sは、加熱区間Aを転動しながら通過する。この際の衝撃により、炭素繊維10Sは、徐々に細かく解れていく。解れた炭素繊維10Sは、軽量である。このため、炭素繊維10Sは、加熱区間Aから燃焼室43に向かう気流に、乗りやすい。すなわち、炭素繊維10Sは、排気筒32に流れ込みやすい。また、解れる前の炭素繊維10Sであっても、管体30の回転に伴って排気筒32よりも上側まで持ち上げられる場合、炭素繊維10Sが自重により排気筒32に流れ込みやすい。
【0027】
ここで、排気筒32の内周面は、平滑でない(凹凸がある)場合がある。また、排気筒32の内周面には、未分解のマトリックス樹脂が付着している場合がある。このような場合、排気筒32に流れ込んだ炭素繊維10Sが、排気筒32の内周面に付着してしまうおそれがある。また、付着した炭素繊維10Sが核となり、塊状に生長し、最終的に排気筒32が閉塞してしまうおそれがある。
【0028】
この点、本実施形態のロータリーキルン1の排気筒32には、テーパ筒部321(閉塞抑制部)が配置されている。テーパ筒部321(排気通路320)の通路断面積は、管体30の径方向内側(上流側)から径方向外側(下流側)に向かって大きくなるように、設定されている。このため、排気筒32に流れ込んだ炭素繊維10Sが、排気筒32の内周面に接触しにくい。すなわち、炭素繊維10Sが、排気筒32の内周面に付着しにくい。よって、排気筒32の閉塞を抑制することができる。
【0029】
また、本実施形態のロータリーキルン1によると、仮に、テーパ筒部321が炭素繊維10Sにより閉塞しても、管体30の回転に伴ってテーパ筒部321が下向き(径方向内端(上流端)よりも径方向外端(下流端)が下側に配置される向き)になった際に、炭素繊維10Sが、自重により、テーパ筒部321から燃焼室43に流れ落ちやすい。このため、排気筒32の閉塞を抑制することができる。
【0030】
また、排気筒32内部に滞留する塊状の炭素繊維10Sは、加熱区間Aから燃焼室43に向かう気流により、燃焼室43側(下流側)に付勢されている。並びに、テーパ筒部321の通路断面積は、管体30の径方向内側(上流側)から径方向外側(下流側)に向かって大きくなるように、設定されている。このため、仮に、テーパ筒部321が炭素繊維10Sにより閉塞しても、テーパ筒部321の向きによらず、排気筒32内部の塊状の炭素繊維10Sが、排気筒32の内周面から、剥がれやすい。すなわち、排気筒32内部の炭素繊維10Sが、排気筒32から燃焼室43に噴き出しやすい。このため、排気筒32の閉塞を抑制することができる。
【0031】
このように、本実施形態のロータリーキルン1の排気筒32は閉塞しにくい。このため、可燃性のガス10Gが管体30の内部に滞留しにくい。したがって、管体30の内部において、ガス10Gが熱処理前のCFRPに付着しにくい。よって、CFRPの処理負荷の増大を抑制することができる。また、管体30の内部において、熱処理後の炭素繊維10Sに、ガス10Gが再付着しにくい。よって、回収用の炭素繊維10Sの品質低下を抑制することができる。また、排気筒32の閉塞に伴うメンテナンス(例えば、排気筒32の掃除など)の頻度を、少なくすることができる。このため、ロータリーキルン1の稼働率を高くすることができる。
【0032】
また、本実施形態のロータリーキルン1によると、管体30の上流側に切断機72が配置されている。このため、回収される炭素繊維10Sの繊維長を調整しやすい。また、本実施形態のロータリーキルン1によると、連続的に炭素繊維10Sを回収することができる。また、管体30の回転に伴って、被処理物10を撹拌することができる。このため、回収した炭素繊維10Sを、均質化することができる。また、本実施形態のロータリーキルン1によると、マトリックス樹脂から生成された可燃性のガス10Gを、被処理物10の加熱に利用することができる。このため、被処理物10の加熱コストを削減することができる。また、本実施形態のロータリーキルン1によると、窒素ガス中に過熱水蒸気を添加している。このため、回収した炭素繊維10Sとマトリックス樹脂との接着性(密着性)を向上させることができる。また、本実施形態のロータリーキルン1によると、加熱区間Aにおいて、被処理物10の処理当初から、被処理物10を確実に窒素ガス中の過熱水蒸気に曝すことができる。この点においても、回収した炭素繊維10Sとマトリックス樹脂との接着性(密着性)を確実に向上させることができる。
【0033】
<その他>
以上、本発明のロータリーキルンの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0034】
図3(a)に、その他の実施形態(その1)のロータリーキルンの管体の径方向断面図を示す。図3(b)に、その他の実施形態(その2)のロータリーキルンの管体の径方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については同じ符号で示す。
【0035】
図3(a)、(b)に示すように、複数の排気筒32は、管体30の周方向において、90°ずつ離間して配置されている。また、複数の排気筒32は、管体30の軸方向において、所定間隔ずつ離間して配置されている。排気筒32の内部には、複数のチェーン322が挿入されている。チェーン322は、本発明の「紐部材」の概念に含まれる。チェーン322の固定端322aは、排気筒32の内周面に固定されている。チェーン322の自由端322bは、管体30の回転やチェーン322の自重により、排気筒32の内部を移動可能である。すなわち、チェーン322は、排気筒32の軸方向全長に亘って、排気筒32の内周面を摺動可能である。このため、内周面に炭素繊維10Sが付着するのを、抑制することができる。また、内周面に付着した炭素繊維10Sを、簡単に剥がすことができる。すなわち、排気筒32の閉塞を抑制することができる。また、仮に、排気筒32が炭素繊維10Sにより閉塞しても、塊状の炭素繊維10Sを、チェーン322が解すことができる。このため、排気筒32の閉塞を抑制することができる。
【0036】
また、チェーン322の固定端322aの位置やチェーン322の長さを調整することにより、排気筒32の内周面におけるチェーン322の可動域や、内周面に付着した炭素繊維10Sを剥がすタイミングを、調整することができる。
【0037】
また、図3(a)に示すように、チェーン322の固定端322aを排気筒32の下流側(排気筒32の軸方向中心よりも下流側(管体30の径方向外側))に配置すると、排気筒32が下向きの時よりも上向きの時の方が、チェーン322が、排気筒32の内周面を広範囲を動き回りやすい。このため、矢印Y1で示すように、炭素繊維10Sを、加熱区間Aに戻しやすい。
【0038】
反対に、図3(b)に示すように、チェーン322の固定端322aを排気筒32の上流側(排気筒32の軸方向中心よりも上流側(管体30の径方向内側))に配置すると、排気筒32が上向きの時よりも下向きの時の方が、チェーン322が、排気筒32の内周面を広範囲を動き回りやすい。このため、矢印Y2で示すように、炭素繊維10Sを、燃焼室43に落としやすい。このように、チェーン322の固定端322aの位置(管体30の径方向位置)を調整することにより、排気筒32の内周面に付着した炭素繊維10Sの送り先(燃焼室43、加熱区間A)を、切り換えることができる。
【0039】
図4に、その他の実施形態(その3)のロータリーキルンの管体の径方向部分拡大断面図を示す。なお、図3(a)、(b)と対応する部位については同じ符号で示す。図4に示すのは、図3(a)、(b)の管体30において、下向きの排気筒32が配置されている部分である。
【0040】
図4に示すように、管体30の側周壁からは、管体30の径方向外側に向かって管体側フランジ部300が突設されている。一方、排気筒32の下端(管体30の径方向外端)には、排気筒側フランジ部323が形成されている。排気筒側フランジ部323は、管体側フランジ部300に対して、締結部材330(ボルトおよびナット)により、着脱可能である。つまり、排気筒32は、管体30に対して、着脱可能である。排気筒側フランジ部323および管体側フランジ部300により、排気筒取付部33が構成されている。仮に、排気筒32が炭素繊維10Sにより閉塞しても、図4に点線で示すように、排気筒32を管体30から簡単に取り外すことができる。そして、掃除後あるいは交換後の排気筒32を、管体30に簡単に取り付けることができる。このように、管体30に対して排気筒32を着脱可能にすると、排気筒32が閉塞した場合のロータリーキルンのメンテナンス時間を短縮化することができる。
【0041】
図5に、その他の実施形態(その4)のロータリーキルンの管体の加熱区間の軸方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については同じ符号で示す。図5に示すように、テーパ筒部321の前側(上流側)には、前後方向に延在する直筒部324が連なっている。すなわち、排気筒32は、L字状に延在している。本実施形態のロータリーキルンによると、加熱区間Aのガス10Gを排気筒32に導入しやすい。
【0042】
例えば、図1に示す燃焼部4の外壁40および断熱材41の下壁に、排気孔47同様の排出孔(図略)を開設してもよい。そして、排出孔を介して、燃焼室43から、炭素繊維10Sを抜き出してもよい。また、排気筒32の下流端の真下(例えば、排気筒32の下流端の回転軌道の最下端位置の真下)に、排出孔の上流端を配置してもよい。こうすると、排出孔付近に、燃焼室43内部の炭素繊維10Sを集めやすい。また、排出孔の下側に、排出シュート(図略)を配置してもよい。
【0043】
図3に示す管体30の周方向における、排気筒32の配置間隔は特に限定しない。例えば、180°ごと、120°ごと、90°ごと、60°ごとなどであってもよい。また、管体30の軸方向における、排気筒32の配置間隔も特に限定しない。
【0044】
図2に示すテーパ筒部321、図3に示すチェーン322、図4に示す排気筒取付部33は、各々独立してロータリーキルン1に配置することができる。例えば、直管状の排気筒32を備えるロータリーキルン1に、チェーン322や排気筒取付部33を配置してもよい。また、図2に示すテーパ筒部321、図3に示すチェーン322、図4に示す排気筒取付部33から選ばれる少なくとも二つを、同一のロータリーキルン1に配置してもよい。
【0045】
図2に示すテーパ筒部321を、排気筒32の一部だけに配置してもよい。単一の排気筒32に、複数のテーパ筒部321を配置してもよい。図3に示すチェーン322の代わりに、ワイヤなどを配置してもよい。図4に示す排気筒取付部33の種類は特に限定しない。締結部材330は、管体側フランジ部300と排気筒側フランジ部323とを、管体30の径方向両側から挟み込む、クランプ部材などであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1:ロータリーキルン、2:過熱水蒸気供給部、3:管体部、4:燃焼部、5:ガス供給部、6:回収部、7:供給部、10:被処理物、10G:ガス、10S:炭素繊維、20:過熱水蒸気供給管、30:管体、31:タイヤ、32:排気筒、33:排気筒取付部、40:外壁、41:断熱材、43:燃焼室、44:バーナ、45:空気供給管、47:排気孔、50:ガス供給管、60:タンク、61:下流端カバー、70:スクリューフィーダ、71:ホッパ、72:切断機、73:上流端カバー、90:ローラ、200:加熱室、300:管体側フランジ部、320:排気通路、321:テーパ筒部、322:チェーン(紐部材)、322a:固定端、322b:自由端、323:排気筒側フランジ部、324:直筒部、330:締結部材、A:加熱区間
図1
図2
図3
図4
図5