(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、足場を培養する従来の方法には、多くの場合、ペトリ皿の培地に足場を浸す、足場を乾燥させる、足場に細胞を配置する、および培地槽に足場を浸して細胞増殖を促すなど、多様な手段または装置を使用して検査技師が手作業で行う操作が含まれる。したがって、多大な労力なしに足場の培養を処理するための費用効率が高くかつ簡素化された機構が必要とされている。本明細書で説明する開示技術は、この必要性に対処するものである。加えて、本明細書に記載のシステムは、プロセスにおけるユーザによる操作を減らすことで、堅牢なプロセス制御および無菌性の維持を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の技術は、治療活性成分(TAI)を多孔質足場に播種するためのシステムに関する。システムは、足場を収容するための第1チャンバ、TAIを保管するためのTAI保管装置、TAI培地を保管するための少なくとも1つの第2チャンバ、および圧縮源からガスを受け取るためのガス入口を備える。流れ回路は、(i)第1チャンバ、(ii)TAI保管装置、(iii)第2チャンバ、および(iv)ガス入口に連結されている。流れ回路は、ガスをTAI、TAI培地および足場に送達する。ポンプは、流れ回路においてTAI、TAI培地およびガスの内の少なくとも1つを送り込む(pump)。システムは、足場へのTAI、TAI培地およびガスの送達を調節するための複数のバルブも備える。
【0006】
一部の実施形態において、流れ回路は、第1チャンバと第2チャンバとの間の培地供給ラインおよび培地戻りライン、TAIを送達するためにTAI保管装置に接続されたTAI供給ライン、およびガスを送達するためにガス入口に接続されたガス供給ラインを含む。
【0007】
一部の実施形態では、複数のバルブは、第2チャンバから足場へのTAI培地の送達を調節するための培地バルブ、ガス入口からのガスの送達を調節するためのガスバルブ、TAI保管装置からのTAIの送達を調節するためのTAIバルブ、第1チャンバへのガスの送達を調節するための第1チャンババルブ、および第1チャンバからの流れを調節するための廃棄バルブを含む。
【0008】
一部の実施形態では、システムは、1つまたは複数のバルブを開位置と閉位置との間で切り替えることにより足場の播種および培養を調節するためのプロセッサを備える。プロセッサは、ポンプによるポンプ速度を調整するように構成される。
【0009】
一部の実施形態では、プロセッサは、バルブを操作してTAI培地およびTAIの流れを制御することにより、TAI培地での足場の処理を調節する。
【0010】
一部の実施形態では、プロセッサは、ガスバルブ、第1チャンババルブ、および廃棄バルブが開位置にあり、残りのバルブが閉位置にあるようにバルブを調整することにより、ガスを用いた足場からの過剰量のTAI培地の除去を調節する。
【0011】
一部の実施形態では、プロセッサは、残りのバルブを閉位置にした状態で、ガスバルブ、第1バルブ、および廃棄バルブのそれぞれを開位置と閉位置との間で繰り返し交互に入れ替えることにより、足場を通る加圧ガスバーストのパルス化を調節する。
【0012】
一部の実施形態では、プロセッサは、ガスバルブを開位置に切り替え、かつ第1チャンババルブを閉位置に切り替えて、加圧ガスバーストを放出する前に加圧ガスを生成する。
【0013】
一部の実施形態では、プロセッサは、ガスバルブを閉位置に切り替え、かつ第1チャンババルブを開位置に切り替えて、加圧ガスバーストを第1チャンバに放出する。
【0014】
一部の実施形態において、プロセッサは、TAIバルブおよび廃棄バルブが開位置にあり、残りのバルブが閉位置にあるようにバルブを調整することにより、TAI保管装置からのTAIの放出を調節する。
【0015】
一部の実施形態では、プロセッサは、培地バルブ、第1チャンババルブ、および廃棄バルブが開位置にあり、残りのバルブが閉位置にあるようにバルブを調整することにより、TAIの第1チャンバへの送り込みを調節する。
【0016】
一部の実施形態では、システムは、第1チャンバ内に収容された足場を複数の位置を通して回転させるための、モータ(ロータリーアクチュエータ、ステッパ、ブラシ付き、ブラシレス、空気圧式、油圧式などの様々なタイプのモータを含む)によって駆動される足場ターナーを備える。
【0017】
一部の実施形態では、プロセッサは、足場を複数の位置を通して回転させるように足場ターナーを駆動するモータに命令することにより、足場へのTAIの接着を調節する。
【0018】
一部の実施形態では、システムは、ポンプを駆動するためのモータを備える。
【0019】
一部の実施形態では、プロセッサは、所定の期間、TAI培地を第1チャンバに送り込むようにポンプを駆動するモータに命令することにより、TAI培養を調節する。
【0020】
一部の実施形態では、移植片は、以下の組織:骨、軟骨、靭帯、筋肉、脂肪、皮膚、神経、リンパ節、骨髄、歯および腱:の内の1つまたは複数を含む。特定の実施形態では、移植片は骨移植片である。
【0021】
一部の実施形態では、圧縮源は、CO
2、N
2または混合ガスを提供する。
【0022】
開示技術の別の態様は、多孔質足場にTAIを播種して培養する方法に関する。
この方法は、第1チャンバ内に足場を収容することを含む。流れ回路は、TAI、TAI培地およびガスを、TAI保管装置、少なくとも1つの第2チャンバ、およびガス入口から足場に送達する。ポンプは、流れ回路においてTAI、TAI培地およびガスの内の少なくとも1つを送り込む。プロセッサは、複数のバルブを介して、足場へのTAI、TAI培地およびガスの送達を調節する。
【0023】
一部の実施形態では、複数のバルブは、第2チャンバからのTAI培地の送達を調節するための培地バルブ、ガス入口からのガスの送達を調節するためのガスバルブ、TAI保管装置からのTAIの送達を調節するためのTAIバルブ、第1チャンバへのガスの送達を調節するための第1チャンババルブ、および第1チャンバからの流れを調節するための廃棄バルブを含む。
【0024】
一部の実施形態では、プロセッサは、残りのバルブを閉位置にした状態で、ガスバルブ、第1チャンババルブ、および廃棄バルブのそれぞれを開位置と閉位置との間で繰り返し交互に入れ替えることにより、足場を通る加圧ガスバーストのパルス化を調節する。
【0025】
一部の実施形態では、プロセッサは、ガスバルブを開位置に切り替え、かつ第1チャンババルブを閉位置に切り替えて、加圧ガスバーストを放出する前に加圧ガスを生成する。
【0026】
一部の実施形態において、プロセッサは、ガスバルブを閉位置に切り替え、かつ第1チャンババルブを開位置に切り替えて、加圧ガスバーストを第1チャンバ内に放出する。
【0027】
一部の実施形態では、移植片は、以下の組織:骨、軟骨、靭帯、筋肉、脂肪、皮膚、神経、リンパ節、骨髄、歯および腱:の内の1つまたは複数を含む。特定の実施形態では、移植片は骨移植片である。
【0028】
開示技術のさらなる態様は、多孔質足場の表面を処理する方法に関する。この方法は、液体および気体の圧力を利用して、多孔質足場の表面を薄層で濡らしてコーティングし、細胞溶液のウィッキング(吸上げ)を促進して、均一な播種足場をもたらすことを含む。
【0029】
一部の実施形態では、その方法は、多孔質足場を第1チャンバ内に収容するステップ;TAI、TAI培地およびガスを、TAI保管装置、少なくとも1つの第2チャンバおよびガス入口から、流れ回路を介して足場に送達するステップ;流れ回路においてTAI、TAI培地およびガスの内の少なくとも1つをポンプによって送り込むステップ;および複数のバルブを介して、プロセッサにより足場へのTAI、TAI培地およびガスの送達を調節するステップを含む。
【0030】
開示技術の別の態様は、足場の播種および培養のための自動化システムに統合するための事前組み立てキットに関する。事前組み立てキットは、足場、足場を収容するための第1チャンバ、保管目的のための第2チャンバ、およびバイオリアクタをリザーバに接続するための流れ回路を含む。足場、第1チャンバ、第2チャンバおよび流れ回路は、足場の播種および培養のための自動化システムへの入力を形成するように組み立てられる。事前組み立てキットと統合した後の自動化システムは、足場を収容するための第1チャンバ;TAI培地を保管するための第2チャンバ;治療活性成分(TAI)を保管するためのTAI保管装置;圧縮源からガスを受け取るためのガス入口;(i)第1チャンバ、(ii)TAI保管装置、(iii)第2チャンバ、および(iv)ガス入口に連結された流れ回路であって、TAI、TAI培地およびガスを足場に送達する流れ回路;流れ回路においてTAI、TAI培地およびガスの内の少なくとも1つを送り込むためのポンプ;および足場へのTAI、TAI培地およびガスの送達を調節するための複数のバルブ;を備える。
【0031】
記載の例示的な実施形態の様々な態様を、他の例示的な実施形態の態様と組み合わせて、さらなる実施形態を実現することができる。任意の1つの例の1つまたは複数の特徴を、他の例の1つまたは複数の特徴と組み合わせることができることを理解されたい。さらに、1つまたは複数の例の単一の機能または機能の組合せが特許性のある主題を構成する場合がある。この技術の他の特徴は、以下の詳細な説明に含まれる情報を考慮することで明らかになる。
【0032】
以下の技術の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解される。例示の目的で、図面では例示的実施形態を示しているが、主題は、開示されている特定の要素および手段に限定されない。図中の構成要素は、単に説明目的のために示されており、縮尺通りに描かれていない場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の詳細な説明では、関連する教示の完全な理解を提供するために、例として、多数の具体的な詳細を示している。しかしながら、このような詳細なしに本教示を実施できることは当業者に明らかである。本教示の態様を不必要に曖昧にすることを避けるために、他の例では、周知の方法、手順、構成要素、および/または回路を詳細なしで比較的高レベルで説明した。
【0035】
1.概要
本技術は、骨形成の足場でヒト幹治療活性成分(TAI)を培養することにより、カスタム設計された自己移植片を設計することに関する。TAIには、他の可能性もあるが、細胞、薬物、タンパク質、およびヒドロゲルの1つまたは組合せを含んでいてよい。移植片は、他の可能性もあるが、以下の組織:骨、軟骨、靭帯、筋肉、脂肪、皮膚、神経、リンパ節、骨髄、歯、および腱:の内の1つまたは複数を含んでいてよい。患者固有の移植片は、患者のコンピュータ断層撮影(CT)スキャンからの解剖学的欠陥の正確な3次元(3D)モデルに基づいて設計できる。3D画像を使用して、解剖学的形状の足場を作成できる。
【0036】
本技術は、足場を播種および培養することにより、移植の準備ができた移植片を培養(cultivate)するためのシステム100に関する。
図1は、一実施形態によるシステム100の概略図を提供する。システム100は、足場の播種および培養を処理するオールインワンデバイスであってよい。例えば、システム100は、それらに限定はされないが、以下のすべてを実施することができる:ガスパージを含む、足場の事前湿潤、足場へのTAIの含浸、足場の回転による均一な播種の提供、TAI培地の送達によるTAIへの栄養供給、およびTAIによって生成される廃棄物の除去。
【0037】
図1を参照して、システム100は、足場を移植片に成長させるための環境を提供する第1チャンバ102を備えていてよい。第1チャンバは、足場を収容するための型を含むことができる。金型は、足場の構成に適合するように3D画像に基づいてカスタム構築することができる。
【0038】
システム100は、足場にTAI溶液を送達することにより、足場にTAIを灌流してもよい。TAI溶液は、TAI保管装置106内に格納され得る。TAI保管装置106はシリンジであってもよい。TAI溶液には、TAIの濃縮懸濁液が含まれ得る。TAIは、患者自身の組織に由来してよく、または患者自身の組織から抽出されてもよい。足場にTAIを含浸させるために、TAI溶液は第1チャンバ102に送達され得る。TAIは、実行可能な移植片を形成するために、足場内で増殖し、十分な量まで拡大することができる。
【0039】
システム100は、TAIに栄養を供給するために、第1チャンバ102に送達されるTAI培地などのTAIの食物源を保管するための1つ以上の第2チャンバ108も備えていてよい。第2チャンバ108は、TAI培地チャンバ108であってよい。システム100は、圧縮源からガスを受け取るためのガス入口110を備えていてよく、ガスは第1チャンバ102に送達されることになる。圧縮源は、CO
2、N
2、または混合ガスを提供してよい。
【0040】
第1チャンバ102は、チャンバ内に保管された足場を播種および培養するためにTAI培地、TAIおよびガスを受け取るための入口102aを備えていてよい。第1チャンバは、気泡を含むガス、過剰なTAI培地、およびTAIによって生成される廃棄物を放出するための出口102bを備えていてよい。
【0041】
TAI培地チャンバ108は、第1チャンバ102内のTAIに栄養を供給するためにTAI培地を放出するための、培地供給ライン120に連結された出口108aを有してもよい。TAI培地チャンバ108は、第1チャンバ102から戻ってくるTAI培地、ならびに第1チャンバ102内のTAIによって生成される廃棄物を受け取るための、培地戻りライン122に連結された入口108bを有してもよい。TAI培地チャンバ108は、TAIによって生成される廃棄物を保管することができる。TAI培地チャンバ108は、培地戻りライン122を介して第1チャンバ102によって生成される気泡も受け取り収集することができる。
【0042】
培地供給ライン120は、TAI培地チャンバ108の出口108aを第1チャンバ102の入口102aに接続することができる。培地供給ライン120は、培地供給ライン120内での流体の動きを調節するためのモータ114によって駆動されるポンプ112を通って進むことができる。ポンプ112は、他の可能性もあるが、ペリスタポンプ、シリンジ、またはダイアフラムポンプであってよい。モータ114は、他の可能性もあるが、ロータリーアクチュエータ、ステッパ、ブラシ付き、ブラシレス、空気圧式および油圧式モータなどの様々なタイプのモータから選択することができる。さらに、培地供給ライン120は、培地バルブ124および第1チャンババルブ126を通って進むことができる。各バルブは、培地供給ライン120を通る流れを可能にする開位置と、流れを遮断する閉位置とを有することができる。例えば、培地バルブ124は、TAI培地チャンバ108とポンプ112との間の流れを調節することができ、一方、第1チャンババルブ126は、ポンプ112と第1チャンバ102との間の流れを調節することができる。培地バルブ124は、TAI培地チャンバ108から足場へのTAI培地の送達を調節することができる。
【0043】
培地戻りライン122は、TAI培地チャンバ108の入口108bを第1チャンバ102の出口102bに接続することができる。さらに、培地戻りライン122は、廃棄バルブ128を通って進むことができる。廃棄バルブ128は、第1チャンバ102からTAI培地チャンバ108への流れを調節することができる。例えば、廃棄バルブ128は、培地戻りライン120を通る流れを可能にする開位置と、流れを遮断する閉位置とを有することができる。培地戻りライン122は、再利用のために、第1チャンバ102からTAI培地をTAI培地チャンバに運び戻すことができる。
【0044】
TAI保管装置106は、TAI供給ライン134に連結してよい。TAI供給ライン134は、TAIバルブ136を通って進むことができる。TAIバルブ136は、TAI供給ライン134内でのTAIの流れを調節することができる。例えば、TAIバルブ136は、TAI供給ライン134を通るTAIの流れを可能にする開位置と、TAIの流れを遮断する閉位置とを有することができる。TAI供給ライン134は、TAI供給ライン134からのTAIが培地供給ライン120に流入する連結点131aで培地供給ライン120と出会うことができる。
【0045】
ガス入口110は、PTFEメンブレンフィルタまたは高効率微粒子エア(HEPA)フィルタ付き入口などの滅菌ガスフィルタであってもよい。ガス入口110は、温度および雰囲気が制御され得る。ガス入口110は、ガス供給ライン130に連結されてよい。ガス供給ライン130は、ガスバルブ132を通って進むことができる。ガスバルブ132は、ガス供給ライン130内でのガス流を調節することができる。例えば、ガスバルブ132は、ガス供給ライン130を通るガスの流れを可能にする開位置と、ガスの流れを遮断する閉位置とを有することができる。ガス供給ライン130は、ガス供給ライン130からのガスが培地供給ライン120に流入する連結点131bで培地供給ライン120と出会うことができる。培地供給ライン120がガスを運ぶ場合、ポンプ112および第1チャンババルブ126は、第1チャンバ102にガスを充填し、また第1チャンバ102からガスをパージすることができる。
【0046】
本明細書に記載のライン120、122、130、および134は、プラチナ硬化シリコーンチューブなどのソフトチューブであってよい。ライン120、122、130、および134は、流れ回路を形成することができる。本明細書に記載のバルブ124、126、128、132および136は、ピンチバルブなどのソレノイドバルブであってよい。バルブは、ラインまたは流れ回路を通る流れを制御できる。一実施形態では、ピンチバルブは、ソフトチューブを通る流れを制限するようにソフトチューブを圧迫することができる。
【0047】
システム100は、足場ターナーまたはロータリーホルダ116を備えていてよい。足場ターナー116は、第1チャンバ102を保持するためのクランプとして機能することができる。足場ターナー116は、様々な形状などの様々な構成の第1チャンバを保持するためにフレキシブルアーム116aを有してもよい。モータ118によって駆動される足場ターナー116は、均一な足場播種を可能にするために、第1チャンバ102を回転させることができる。モータ118は、他の可能性もあるが、ロータリーアクチュエータ、ステッパ、ブラシ付き、ブラシレス、空気圧式および油圧式モータなどの様々なタイプのモータから選択することができる。
図2は、第1チャンバ102ならびにその中に含まれる足場104を回転させる動作中の足場ターナー116の概略図を提供する。
【0048】
図3は、本技術の一実施形態によるシステム100の流体回路の概略図である。
図3において、ガス、TAI培地およびTAI溶液を含む3つの別個の入力が、それぞれガス入口110、TAI培地チャンバ108、およびTAI保管装置106から、足場を収容する第1チャンバ102に導入される。これら入力のそれぞれは、1つまたは複数の専用バルブによって第1チャンバ102から隔離されていてもよい。例えば、ガス、TAI培地、およびTAI溶液は、それぞれガスバルブ132、培地バルブ124、およびTAIバルブ136によって、第1チャンバ102から隔離することができる。ポンプ112および第1チャンババルブ126は、第1チャンバ102にガスを充填し、また第1チャンバ102からガスをパージすることができる。廃棄物バルブ128は、第1チャンバ102からTAI培地チャンバ108への流れを調節することができる。
【0049】
図4は、本技術の一実施形態によるシステム100の流体回路に連結された電気回路の概略図である。
図4に示すように、各バルブ124、126、128、132および136の動作は、プロセッサまたはマイクロコントローラ140によって制御することができる。プロセッサ140は、ユーザがユーザインターフェース148を介してアップロードまたは編集することができる事前ロードされたコードを含んでいてよい。プロセッサ140は、足場104および第1チャンバ102の、空隙容積などの幾何学的特性を受け取ることができる。そのような情報は、ユーザインターフェース148を介してユーザによって提供されてもよい。幾何学的特性に基づいて、プロセッサ140は、流量を制御するために各バルブをその開位置と閉位置との間で切り替えるための時間を決定し、リレーボード142を介して切り替えを行うように各バルブに命令することができる。
【0050】
さらに、プロセッサ140は、ポンプ112を駆動するモータ114、および足場ターナー116を駆動するモータ118を制御することができる。プロセッサは、モータを動作させるためのパラメータを決定し、それぞれのモータドライバ144を介してモータと通信することができる。プロセッサは、ポンプ112によるポンプ速度を調整してもよい。
【0051】
システム100は、システム100内の流れから化学的および物理的読み取り値を取得するまたはサンプルを採取するための1つまたは複数のセンサまたはサンプリングポート146を備えていてよい。プロセッサ104は、読み取り値を分析して、システム100に何らかの障害が発生したか否かを判定することができる。プロセッサ104は、読み取り値に基づき実験データを生成することもできる。
【0052】
ユーザインターフェース148は、システム100の動作情報を表示するスクリーンを提供することができる。ユーザインターフェース148は、ユーザ入力を受信するためのスイッチも提供することができる。ユーザインターフェース148は、システム100を制御するためのアルゴリズムを受信するためのUSBポートを有してもよい。
【0053】
簡略化するために、電源は
図4に示していない。
【0054】
2.播種および培養プロセス
システム100は、以下に記載する実施形態に従って、足場の播種および培養を調節することができる。
【0055】
2.1 初期化
初期化時に、プロセッサ140は、モータ仕様に従ってモータ114および118を動作させるための一定のパラメータで設定してよい。プロセッサ140のピンも初期化され得る。初期化時に、プロセッサ104は、培地が循環される時間、第1チャンバの回転速度と位置、および加圧時間を記述する変数などの、播種パラメータで設定することもできる。さらに、プロセッサ104は、様々な機能のためのポンプ速度およびポンプ容積で設定してもよい。モータの位置とプログラムの場所も初期化できる。
【0056】
初期化時に、プロセッサ140は、すべてのバルブを閉位置に切り替えてよい。ユーザインターフェース148は、以下のような指示をユーザに表示することができる:(1)ユーザに第1チャンバ102、ならびにライン120、122、130および134を装填することを求める、(2)ユーザに培地流動をロック解除することを求める、(3)ユーザに第1チャンバタイプを入力することを求める。第1チャンバのタイプに基づいて、プロセッサは、第1チャンバの容積およびTAI培地を灌流するための流量を決定することができる。一実施形態では、第1チャンバの容積および流量をユーザが提供してもよい。
【0057】
2.2 播種
播種プロセスは、(1)事前湿潤(pre-wetting)プロセス(以下で説明する第1〜第3段階)、(2)TAI送達プロセス(以下で説明する第4〜第5段階)、および(3)TAI接着プロセス(以下で説明する第6段階)を含んでいてよい。
【0058】
図5に示すように、事前湿潤プロセス中に、TAI培地が足場に送達され、その壁を含めて足場の空隙を満たす。事前湿潤プロセスの一部として、ガスが足場に導入され、足場の空隙を満たす。
事前湿潤(または予備湿潤
)は、足場へのTAIの接着に重要である。TAI送達プロセス中に、TAIは足場に送達される。TAI接着プロセス中に、TAIは足場の事前に濡れた壁の隙間に上昇して入り込むことができる。
【0059】
事前湿潤プロセスは、足場のすべての内面を濡らすことができる。事前湿潤プロセスは、TAI送達プロセスおよびTAI接着プロセスに恩恵をもたらすことができる。例えば、事前湿潤プロセスの結果として、毛細管現象と表面張力によって、TAI溶液が足場の壁の隙間に上昇して入り込むように促される。したがって、TAI溶液は、TAI溶液がその自然経過を通して到達しない場所に移動することができる。結果として、事前湿潤プロセスは、最終的にTAI溶液が足場のより多くの表面領域をカバーして接着を形成することを可能にする。多孔質構造は、潜在的に小さな入口と流体の流れを妨げるシャープな特徴とを持つ多くの丸みを帯びた空洞を含んでいるため、事前湿潤プロセスは、多孔質構造を有する足場にとって特に重要である。事前湿潤の恩恵により、入力されたTAIは、事前に濡れた壁の隙間に容易に上昇して入り込むことができる。
【0060】
播種プロセスの各段階の詳細について以下に説明する。
【0061】
2.2.1 第1段階:培地すすぎ処理(事前湿潤の第1部分)
事前湿潤プロセスの前に、完全に乾燥した足場を第1チャンバ102に配置してよい。足場は3D多孔質構造を有してもよい。
図6は、事前湿潤プロセスの第1段階におけるシステム100の回路構成を示す。プロセッサは、バルブを操作してTAI培地およびTAIの流れを制御することにより、TAI培地で足場を処理することを調節することができる。
図6に示すように、プロセッサ140は、ガスバルブ132およびTAIバルブ136を閉位置にした状態で、培地バルブ124、第1チャンババルブ126、および廃棄バルブ128を開位置に切り替えてよい。TAI培地チャンバ108から所定量のTAI培地が、ポンプ112を介して第1チャンバ102に送り込まれる。TAI培地が第1チャンバ102にポンプにより送り込まれると、TAI培地は、その壁を含めて足場の空隙を満たすことができる。結果として、第1チャンバ102に保管された足場は、TAI培地の強制流ですすがれてその中に浸され得る。TAI培地の強制流は、TAI培地によって濡れる足場の表面積の量を増加させることができる。例えば、足場のすべての表面がTAI培地によって濡らされ得る。
【0062】
TAI培地が第1チャンバ102に送達された後、プロセッサ140は、培地バルブ124、第1チャンババルブ126、および廃棄物バルブ128をそれらの閉位置に切り替えてよい。
【0063】
2.2.2 第2段階:ガスパージ1(事前湿潤の第2部分)
図7は、事前湿潤プロセスの第2段階におけるシステム100の回路構成の概略図である。この段階では、プロセッサ140は、最初に、任意選択ステップとして、第1チャンバ位置を初期化して、チューブの絡まりを防ぐことができる。例えば、プロセッサ140は、第1チャンバ102およびその中に含まれる足場を特定の位置に回転させるために足場ターナー116を回転させるようにモータ118に命令してよい。例えば、第1チャンバ102を、
図1に示される位置まで回転させてよく、その位置では入口102aは上部にあり、出口102bは底部にある。第1チャンバ102の回転の結果として、その中に含まれる足場は、
図13および
図14にも示されるように、位置3(180°回転)まで回転され得る。
図14に示すように、入口102aが上部にあり、出口102bが底部にあるとき、重力は第1チャンバ内の流れを援助し、流体の排出を助ける。他の例では、第1チャンバ102およびその中に含まれる足場は、他の適切な位置に回転され得る。この回転ステップは任意選択であってよく、プロセッサ140が回転ステップを省略し、次のステップから事前湿潤プロセスの第2段階を開始してもよい。
【0064】
次に、プロセッサ140は、ガスバルブ132、第1チャンババルブ126、および廃棄バルブ128を開いてよい。その後、ガス入口110からのガスは、ポンプ112を介して第1チャンバに送り込まれ得る。ガスが足場を通して導入されると、足場の空隙内の過剰なTAI培地が足場から除去されて、TAI培地チャンバ108に戻され得る。TAI培地の大部分が足場から取り除かれると、TAI培地の薄層が足場の内壁と外壁に残る。短時間の後、プロセッサ140は、ガスバルブ132、第1チャンババルブ126、および廃棄バルブ128を閉じてよい。
【0065】
第2段階は、後の段階でのTAIの体積分布(volumetric ditsribution)を促進できる。
【0066】
2.2.3 第3段階:ガスパージ2(事前湿潤の第3部分)
図8は、事前湿潤プロセスの第3段階におけるシステム100の回路構成の概略図である。この段階では、プロセッサ140は、ガスバーストの数を決定することができる。
【0067】
各ガスパージは、ガス充填ステップとガス放出ステップを含んでいてよい。ガス充填ステップでは、プロセッサ140は、ガスバルブ132および廃棄バルブ128を開き、他のバルブは閉じた状態することができる。ポンプ112の制御下で、ガスは、ガス入口110からガス供給ライン130に流れ込むことができる。第1チャンババルブ126はその閉位置にあるため、加圧ガスが、ガス入口110と第1チャンババルブ126との間の1つまたは複数のラインに一時的に保管され得る。加圧ガスを運ぶ1つまたは複数のラインは、柔軟な材料でできていてよく、一方の端が閉じられた状態でガスが押し込まれたときにバルーンのように膨らむことができる。
【0068】
ガス放出ステップでは、プロセッサ140は、ガスバーストの前に最初にガスバルブ132を閉じてよい。次に、プロセッサ140は、廃棄物バルブ128を開いたままの状態にして、第1チャンババルブ126を開いて、1パルスの加圧ガスを第1チャンバ102にバースト放出することができる。このガスバーストは、第1チャンバ102内のTAI培地を強く圧縮することにより、第1チャンバ102内の足場を濡らすことができる。ガスバーストは、足場の空隙に残っているTAI培地を排出することもできる。ガスバーストが放出された後、プロセッサ140は、次のガスバーストに備えるために、第1チャンババルブ126および廃棄バルブ128を閉じてよい。
【0069】
プロセッサ140は、決められた数のガスバーストが放出されるまで、ガス充填ステップと放出ステップを繰り返し交互に行ってよい。以下の表1は、この第3段階におけるバルブ操作の例示的な手順を示す。
【表1】
【0070】
図9は、
事前湿潤プロセスの3つの段階を通した足場の変化の概略図である。
図9に示すように、ステップ(a)は、
事前湿潤プロセス前の完全に乾燥した状態の足場104を表す。ステップ(b)は、TAI培地が足場104に導入される事前湿潤プロセスの第1段階を表す。過剰/残留TAI培地204とともに、TAI培地の層202が足場104の壁上に形成される。工程(c)は、
事前湿潤プロセスの第2段階を表し、その段階では、過剰なTAI培地204がガスによって空隙から除去される。ステップ(c)に示すように、いくらかの残留TAI培地204は、まだ足場104の一部の内面に付着している場合がある。ステップ(d)および(e)は、事前湿潤プロセスの第3段階を表し、その段階では、加圧ガスの連続パルスが足場104の壁から残留TAI培地を除去することができる。
【0071】
ガスバーストを利用して過剰なTAI培地を排出して足場を濡らす方法は、多くの利点をもたらすことができる。ガスバーストは、細孔空間、特に、より制限され、曲がりくねっており、到達するのがより困難となり得るより小さな細孔を有する領域における流体の除去を支援することができる。ガスパージの後、足場の細孔は流体を含まず、結果としてTAI溶液の送達および分布を支援し得る濡れた表面を有する開放空間をもたらす。鋳造、塗装、および表面コーティング業界では、スプレーを使用することがあるが、スプレーは一般に遠心力と重力に依存して表面を均一にコーティングする。これらの業界では、ガスバーストの使用は非効率的である。
【0072】
2.2.4 第4段階:TAI送達1
事前湿潤プロセスに続いて、TAI溶液をTAI送達プロセスによって足場に導入してよい。TAI送達プロセスは2つの段階を含んでいてよい。
図10は、TAI送達プロセスの第1段階におけるシステム100の回路構成の概略図であり、この段階は、播種および培養プロセス全体の第4段階にも相当する。この段階では、プロセッサ140は、任意選択ステップとして、第1チャンバ102およびその中に含まれる足場を様々な位置に回転させるように足場ターナー116を回転させてよい。例えば、第1チャンバ102を、出口102bが上部にあり、入口102aが底部にあるような位置に回転させることができる。結果として、第1チャンバ内に含まれる足場は、
図13および
図14にも示されるように、位置1に配置され得る。そのような回転は毛細管現象を促進し、重力下で培地が単一の下方向に流れるのを防ぐ。例えば、
図14に示すように、出口102bが上部にあり、入口102aが底部にあるとき、TAI培地は、重力に対抗する毛細管現象の影響下で足場の細孔を通って流れる。他の例では、第1チャンバ102およびその中に含まれる足場は、他の適切な位置に回転され得る。この回転ステップは任意選択であってよく、プロセッサ140が回転ステップを省略し、次のステップからTAI送達プロセスを開始してもよい。
【0073】
次のステップでは、プロセッサ140は、TAIバルブ136および廃棄バルブ128を開いてよい。その後、プロセッサ140は、TAI保管装置106からTAIを含むTAI溶液を注入するための指示をユーザに表示するようにユーザインターフェース148に命令することができる。一実施形態では、手動注入の代わりに、ポンプを介してTAI溶液を注入してもよい。TAI溶液は、TAI供給ライン134を通って流れ、第1チャンバ102の前で停止することができる。
【0074】
2.2.5 第5段階:TAI送達2
図11は、TAI送達プロセスの第2段階におけるシステム100の回路構成の概略図であり、この段階は、播種および培養プロセス全体の第5段階にも相当する。この段階では、プロセッサ140は、最初にTAIバルブ136を閉じ、その後で培地バルブ124と第1チャンババルブ126を開く。次に、プロセッサ140は、モータ114にポンプ112を起動するように命令することができる。ポンプ112の制御下で、TAI培地は、TAI培地チャンバ108から培地供給ライン120に流入し、TAI溶液を第1チャンバ102にポンプで送り込むことができる。その結果、濃縮されたTAI溶液が足場に置かれ、足場に吸収され得る。その後、プロセッサ140は廃棄バルブ128を閉じてよい。
【0075】
この段階中、TAI溶液をポンプで送り込み、慎重に配置して足場容積を満たすことができる。これは、TAI播種の効率のために重要である。この段階は、足場ではない場所で最小限のTAIしか無駄にならないことを確実にする。
【0076】
2.2.6 第6段階:TAI接着
TAIが第1チャンバ102に送達されると、TAIは足場に接着するためにある程度の時間を必要とする。TAI溶液を配置して安静にするこのプロセスは複数回行われてよく、足場の配向の変更に合わせてよい。
図12は、足場を様々な位置を通して回転させるためのシステム100の回路構成の概略図である。この段階では、廃棄バルブ128は閉じたままであり、かつ第1チャンバ102は閉じた状態のままである。プロセッサ140は、様々な位置を通して足場を周期的に回転させるために足場ターナー116を回転させるようにモータ118に命令することができる。足場を様々な位置を通して回転させることで、TAIを足場の異なる領域に分布させて、重力の偏りを補正できる。例えば、足場のどの領域にも付着していないTAIは、まだTAIを有していない足場の他の領域に落下することができる。足場ターナー116は、回転を複数回繰り返してよい。一実施形態では、足場ターナー116は、180度で周期的に前後に動き、さらに動きと動きの間の一定期間静止したままでいて、TAIを安定させ、またはTAIが足場との付着を形成できるようにする。
【0077】
図13は、一実施形態による足場の例示的な位置を示す概略図である。例えば、足場は、位置1に対応する0度の回転、位置2に対応する90度の回転、位置3に対応する180度の回転、位置4に対応する270度の回転、および位置5に対応する360度の回転を含む、5つの別個の位置を通って回転または旋回することができる。
図13に示すように、回転または旋回機構により、足場上のTAIの均一な分布および付着が達成され、回転または旋回機構がなければ生じることになるTAIの不規則な分布が回避される。回転の程度は、バイオリアクタ102対して規定してよい。例えば、
図14に示すように、180度の回転は、入口102aが上部にあり、出口102bが下部にある位置に対応し得る。0度の回転は、入口102aが底部にあり、出口102bが頂部にある位置に対応し得る。
【0078】
一実施形態では、廃棄バルブ128を閉じたままにして、閉じた廃棄バルブ128に対してTAI培地をポンプで送り込むことにより、第1チャンバ102を周期的に加圧することができる。
【0079】
上記の段階(第1段階〜第6段階)で播種プロセスが完了する。
【0080】
2.3 第7段階:TAI培養
TAI播種プロセスの結果として、TAIは足場との十分な付着を形成することができる。栄養素がTAIによって消費されるため、廃棄物もTAIによって生成される。したがって、第1チャンバ102の中のTAI培地を、時々リフレッシュする必要がある。そのため、システム100は、TAI培養段階に入ってTAI培地を定期的にリフレッシュし、灌流期間を継続することもできる。TAI培養段階は数週間続く場合がある。
【0081】
図15は、TAI培養段階におけるシステム100の回路構成の概略図である。この段階では、プロセッサ140は、時々TAI培地を繰り返しリフレッシュしてもよい。プロセッサ140は、TAI培地をリフレッシュするために毎回以下のステップを実行してもよい。
【0082】
プロセッサ140は、最初にすべてのバルブを閉じてもよい。次に、プロセッサ140は、足場を特定の位置に回転させるために足場ターナー116を回転させるようにモータ118に命令してよい。例えば、
図13に示すように位置3に、または他の適切な位置に足場を配置することができる。その後、プロセッサ140は、廃棄物バルブ128、第1チャンババルブ126、および培地バルブ124を開いてよい。次に、プロセッサ140は、ポンプ用のモータ114を作動させて、所定の期間、TAI培地をTAI培地チャンバ108から第1チャンバ102にポンプで送り込んでよい。この所定の期間中に、TAI培地を変更してもよい。
【0083】
所定の時間が経過すると、プロセッサ140は、以下の内の1つまたは複数を実行してよい:(1)異なる流れ方向で足場を灌流するために培地の流れを逆にする、(2)足場を別の位置、例えば
図13に示す位置0、または他の適切な位置に回転させるために足場ターナー116を回転させるようにモータ118に命令する、(3)ポンプによる送り込みを停止する、および(4)すべてのバルブを閉じる。足場を様々な位置に回転させることにより、培地が足場内の様々な場所に流れて、均一なTAIの成長が促進され、回転がない場合に生じ得る1つの集中した場所でのTAIの成長が回避される。
【0084】
3 代替実施形態
図16は、システム100の代替回路構成の概略図である。この構成では、廃棄物バルブ128は任意選択であってよい。廃棄バルブ128を除くと、TAI接着段階(第6段階)でのシステム100の性能が制限される場合がある。
【0085】
別の代替実施形態では、ユーザは、足場ターナー116を回転させるかまたはポンプ112を作動させる手動プロセスを行ってよい。例えば、ユーザは、ユーザインターフェース148を通して、そのような手動操作を選択することができる。ユーザが手動操作を選択すると、プロセッサ140は、培地バルブ124、第1チャンババルブ126、および廃棄バルブ128を開く場合がある。プロセッサ140は、ユーザにポンプ速度を尋ねるメッセージを表示するようにユーザインターフェース148に命令することができる。ユーザは、スイッチを使用して、足場ターナー116を回転させ、またはTAI培地をユーザ規定の速度でポンプにより送り込むことができる。ユーザは、ユーザインターフェースで一時停止オプションを選択することにより、いつでもプロセスを一時停止できる。
【0086】
一部の実施形態では、多孔質足場の表面を液体および気体の圧力を使用して処理し、多孔質足場の表面を薄層で濡らしてコーティングし、細胞溶液のウィッキングを促進して、均一な播種足場をもたらすことができる。足場は、前述の方法に従って播種され、培養され得る。
【0087】
一部の実施形態では、足場、第1チャンバ、第2チャンバ、および流れ回路は、足場の播種および培養のための自動化システムに統合するための事前組み立てキットを形成することができる。足場、第1チャンバ、第2チャンバ、および流れ回路は、足場の播種および培養のための自動化システムへの入力を形成するように組み立てられ得る。事前組み立てキットとの統合後の自動化システムは、前述の方法に従ってTAIを足場に播種することができる。
【0088】
図17は、例えば5cmを超える直径を有し得る大きな多孔質足場1704全体にわたる蛍光標識ATI 1702の均質な送達および付着を示す。
【0089】
現在最も実用的でかつ様々な実装形態であると現在考えられているものに関連して、開示技術の特定の実装形態を説明したが、開示技術は記載の実装形態に限定されるべきではなく、逆に、添付の特許請求の範囲内に含まれる様々な修正形態および同等の配置も対象とすることが意図されている。本明細書では特定の用語が使用されているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的とするものではない。
【0090】
開示技術の特定の実装形態は、開示技術の実装例によるシステムおよび方法および/またはコンピュータプログラム製品のブロック図および流れ図を参照して上述されている。ブロック図および流れ図の1つまたは複数のブロック、およびブロック図および流れ図のブロックの組合せはそれぞれ、コンピュータ実行可能プログラム命令によって実装され得ることが理解されよう。同様に、開示技術の一部の実装形態によれば、ブロック図および流れ図の一部のブロックは、提示された順序で必ずしも実行される必要がない、または必ずしも実行される必要がない場合がある。
【0091】
コンピュータ可読メモリに格納された命令が、流れ図のブロック(単数または複数)で指定された1つ以上の機能を実装する命令手段を含む製品を生成するように、これらのコンピュータプログラム命令を、コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置を特定の方法で機能させるように導くことができるコンピュータ可読メモリに格納してもよい。
【0092】
開示技術の実装は、その中に具体化されたコンピュータ可読プログラムコードまたはプログラム命令を有するコンピュータ使用可能媒体を備えるコンピュータプログラム製品を提供することができ、前記コンピュータ可読プログラムコードは、流れ図のブロック(単数または複数)で指定された1つ以上の機能を実装するために実行されるように適合されている。コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置にロードされ、一連の動作要素またはステップをコンピュータまたは他のプログラム可能装置で実行させて、コンピュータまたは他のプログラム可能装置で実行される命令が流れ図のブロック(単数または複数)で指定された機能を実装するための要素またはステップを提供するようにコンピュータ実装プロセスを生成することができる。
【0093】
したがって、ブロック図および流れ図のブロックは、指定された機能を実行する手段の組合せ、指定された機能を実行する要素またはステップの組合せ、および指定された機能を実行するプログラム命令手段をサポートする。また、ブロック図および流れ図の各ブロック、ならびにブロック図および流れ図のブロックの組合せは、指定された機能、要素またはステップを実行する専用のハードウェアベースのコンピュータシステム、あるいは専用ハードウェアとコンピュータ命令の組合せによって実装できることも理解される。
最後に、本発明の好ましい実施態様を項分け記載する。
[実施態様1]
治療活性成分(TAI)を多孔質足場に播種するためのシステムにおいて、
前記足場を収容するための第1チャンバ、
前記TAIを保管するためのTAI保管装置、
TAI培地を保管するための少なくとも1つの第2チャンバ、
圧縮源からガスを受け取るためのガス入口、
(i)前記第1チャンバ、(ii)前記TAI保管装置、(iii)前記第2チャンバ、および(iv)前記ガス入口に連結されている、TAI、TAI培地およびガスを足場に送達する流れ回路、
前記流れ回路においてTAI、TAI培地およびのガスの内の少なくとも1つを送り込むためのポンプ、および
前記足場へのTAI、TAI培地およびガスの送達を調節するための複数のバルブ
を備えるシステム。
[実施態様2]
前記流れ回路は、
前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間の培地供給ラインおよび培地戻りライン、
TAIを送達するために前記TAI保管装置に接続されたTAI供給ライン、および
ガスを送達するために前記ガス入口に接続されたガス供給ライン
を含む、実施態様1に記載のシステム。
[実施態様3]
前記複数のバルブは、
前記第2チャンバから前記足場へのTAI培地の送達を調節するための培地バルブ、
前記ガス入口からのガスの送達を調節するためのガスバルブ、
前記TAI保管装置からのTAIの送達を調節するためのTAIバルブ、
前記第1チャンバへのガスの送達を調節するための第1チャンババルブ、および
前記第1チャンバからの流れを調節するための廃棄バルブ
を含む、実施態様1に記載のシステム。
[実施態様4]
1つまたは複数の前記バルブを開位置と閉位置との間で切り替えることにより前記足場の播種および培養を調節するためのプロセッサをさらに備える、実施態様3に記載のシステム。
[実施態様5]
前記プロセッサは、前記ポンプによるポンプ速度を調整するように構成される、実施態様4に記載のシステム。
[実施態様6]
前記プロセッサは、前記バルブを操作してTAI培地およびTAIの流れを制御することにより、前記TAI培地での足場の処理を調節する、実施態様4に記載のシステム。
[実施態様7]
前記プロセッサは、前記ガスバルブ、前記第1チャンババルブおよび前記廃棄バルブが開位置にあり、残りのバルブが閉位置にあるように前記バルブを調整することにより、ガスによる足場からの過剰量のTAI培地の除去を調節する、実施態様4に記載のシステム。
[実施態様8]
前記プロセッサは、残りのバルブを閉位置にした状態で、前記ガスバルブ、前記第1バルブおよび前記廃棄バルブのそれぞれを開位置と閉位置との間で繰り返し交互に入れ替えることにより、足場を通る加圧ガスバーストのパルス化を調節する、実施態様4に記載のシステム。
[実施態様9]
前記プロセッサは、前記ガスバルブを開位置に切り替え、かつ前記第1チャンババルブを閉位置に切り替えて、加圧ガスバーストを放出する前に加圧ガスを生成する、実施態様8に記載のシステム。
[実施態様10]
前記プロセッサは、前記ガスバルブを閉位置に切り替え、かつ前記第1チャンババルブを開位置に切り替えて、加圧ガスバーストを前記第1チャンバに放出する、実施態様9に記載のシステム。
[実施態様11]
前記プロセッサは、前記TAIバルブおよび前記廃棄バルブが開位置にあり、残りのバルブが閉位置にあるように前記バルブを調整することにより、前記TAI保管装置からのTAIの放出を調節する、実施態様4に記載のシステム。
[実施態様12]
前記プロセッサは、前記培地バルブ、前記第1チャンババルブおよび前記廃棄バルブが開位置にあり、残りのバルブが閉位置にあるように前記バルブを調整することにより、前記第1チャンバへのTAIの送り込みを調節する、実施態様11に記載のシステム。
[実施態様13]
前記第1チャンバに収容された前記足場を複数の位置を通して回転させるための、モータによって駆動される足場ターナーをさらに備える、実施態様4に記載のシステム。
[実施態様14]
前記プロセッサは、前記足場を複数の位置を通して回転させるように前記足場ターナーを駆動するモータに命令することにより、前記足場へのTAIの接着を調節する、実施態様13に記載のシステム。
[実施態様15]
前記ポンプを駆動するためのモータをさらに備える、実施態様4に記載のシステム。
[実施態様16]
前記プロセッサは、所定の期間、TAI培地を前記第1チャンバに送り込むように前記ポンプを駆動するモータに命令することにより、TAI培養を調節する、実施態様15に記載のシステム。
[実施態様17]
前記圧縮源は、CO2、N2または混合ガスを提供する、実施態様1に記載のシステム。
[実施態様18]
多孔質足場に治療活性成分(TAI)を播種して培養する方法において、
第1チャンバ内に足場を収容するステップ、
TAI、TAI培地およびガスを、それぞれTAI保管装置、少なくとも1つの第2チャンバおよびガス入口から、流れ回路を介して足場に送るステップ、
流れ回路においてTAI、TAI培地およびガスの内の少なくとも1つをポンプによって送り込むステップ、および
複数のバルブを介して、プロセッサにより足場へのTAI、TAI培地およびガスの送達を調節するステップ
を含む、方法。
[実施態様19]
前記複数のバルブは、
前記第2チャンバからのTAI培地の送達を調節するための培地バルブ、
前記ガス入口からのガスの送達を調節するためのガスバルブ、
前記TAI保管装置からのTAIの送達を調節するためのTAIバルブ、
前記第1チャンバへのガスの送達を調節するための第1チャンババルブ、および
前記第1チャンバからの流れを調節するための廃棄バルブ
を含む、実施態様18に記載の方法。
[実施態様20]
前記プロセッサは、残りのバルブを閉位置にした状態で、前記ガスバルブ、前記第1チャンババルブ、および前記廃棄バルブのそれぞれを開位置と閉位置との間で繰り返し交互に入れ替えることにより、足場を通る加圧ガスバーストのパルス化を調節する、実施態様19に記載の方法。
[実施態様21]
前記プロセッサは、前記ガスバルブを開位置に切り替え、かつ前記第1チャンババルブを閉位置に切り替えて、加圧ガスバーストを放出する前に加圧ガスを生成する、実施態様20に記載の方法。
[実施態様22]
前記プロセッサは、前記ガスバルブを閉位置に切り替え、かつ前記第1チャンババルブを開位置に切り替えて、加圧ガスバーストを前記第1チャンバ内に放出する、実施態様21に記載の方法。
[実施態様23]
多孔質足場の表面を処理する方法において、
液体および気体の圧力を使用して、多孔質足場の表面を薄層で濡らしてコーティングし、細胞溶液のウィッキングを促進して、均一な播種足場をもたらすことを含む方法。
[実施態様24]
多孔質足場を第1チャンバ内に収容するステップ、
TAI、TAI培地およびガスを、それぞれTAI保管装置、少なくとも1つの第2チャンバおよびガス入口から、流れ回路を介して足場に送達するステップ、
流れ回路においてTAI、TAI培地およびガスの内の少なくとも1つをポンプによって送り込むステップ、および
複数のバルブを介して、プロセッサにより足場へのTAI、TAI培地およびガスの送達を調節するステップ
を含む、実施態様23に記載の方法。
[実施態様25]
前記複数のバルブは、
前記第2チャンバからのTAI培地の送達を調節するための培地バルブ、
前記ガス入口からのガスの送達を調節するためのガスバルブ、
前記TAI保管装置からのTAIの送達を調節するためのTAIバルブ、
前記第1チャンバへのガスの送達を調節するための第1チャンババルブ、および
前記第1チャンバからの流れを調節するための廃棄バルブ
を含む、実施態様24に記載の方法。
[実施態様26]
前記プロセッサは、残りのバルブを閉位置にした状態で、前記ガスバルブ、前記第1チャンババルブおよび前記廃棄バルブのそれぞれを開位置と閉位置との間で繰り返し交互に入れ替えることにより、足場を通る加圧ガスバーストのパルス化を調節する、実施態様25に記載の方法。
[実施態様27]
前記プロセッサは、前記ガスバルブを開位置に切り替え、かつ前記第1チャンババルブを閉位置に切り替えて、加圧ガスバーストを放出する前に加圧ガスを生成する、実施態様26に記載の方法。
[実施態様28]
前記プロセッサは、前記ガスバルブを閉位置に切り替え、かつ前記第1チャンババルブを開位置に切り替えて、加圧ガスバーストを前記第1チャンバに放出する、実施態様27に記載の方法。
[実施態様29]
足場の播種および培養のための自動化システムに統合するための事前組み立てキットにおいて、
足場、
足場を収容するための第1チャンバ、
保管用の第2チャンバ、および
バイオリアクタをリザーバに接続するための流れ回路
を含む事前組み立てキット。
[実施態様30]
前記足場、前記第1チャンバ、前記第2チャンバおよび前記流れ回路が組み立てられて、足場の播種および培養のための自動化システムへの入力を形成する、実施態様29に記載の事前組み立てキット。
[実施態様31]
前記事前組み立てキットと統合された後の自動化システムは、
足場を収容するための第1チャンバ、
TAI培地を保管するための第2チャンバ、
治療活性成分(TAI)を保管するためのTAI保管装置、
圧縮源からガスを受け取るためのガス入口、
(i)前記第1チャンバ、(ii)前記TAI保管装置、(iii)前記第2チャンバ、および(iv)前記ガス入口に連結された、TAI、TAI培地およびガスを足場に送達する流れ回路、
前記流れ回路においてTAI、TAI培地およびガスの内の少なくとも1つを送り込むためのポンプ、および
前記足場へのTAI、TAI培地およびガスの送達を調節するための複数のバルブ
を備える、実施態様29に記載の事前組み立てキット。
[実施態様32]
前記流れ回路は、
前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間の培地供給ラインおよび培地戻りライン、
TAIを送達するために前記TAI保管装置に接続されたTAI供給ライン、および
ガスを送達するために前記ガス入口に接続されたガス供給ライン
を含む、実施態様31に記載の事前組み立てキット。
[実施態様33]
前記複数のバルブは、
前記第2チャンバから前記足場へのTAI培地の送達を調節するための培地バルブ、
前記ガス入口からのガスの送達を調節するためのガスバルブ、
前記TAI保管装置からのTAIの送達を調節するためのTAIバルブ、
前記第1チャンバへのガスの送達を調節するための第1チャンババルブ、および
前記第1チャンバからの流れを調節するための廃棄バルブ
を含む、実施態様32に記載の事前組み立てキット。
[実施態様34]
1つまたは複数のバルブを開位置と閉位置との間で切り替えることにより前記足場の播種および培養を調節するためのプロセッサをさらに備える、実施態様32に記載の事前組み立てキット。
[実施態様35]
前記プロセッサは、前記ポンプによるポンプ速度を調整するように構成される、実施態様34に記載の事前組み立てキット。
[実施態様36]
前記プロセッサは、前記バルブを操作してTAI培地およびTAIの流れを制御することにより、前記TAI培地での足場の処理を調節する、実施態様34に記載の事前組み立てキット。
[実施態様37]
前記プロセッサは、前記ガスバルブ、前記第1チャンババルブおよび前記廃棄バルブが開位置にあり、残りのバルブが閉位置にあるように前記バルブを調整することにより、ガスによる足場からの過剰量のTAI培地の除去を調節する、実施態様34に記載の事前組み立てキット。
[実施態様38]
前記プロセッサは、残りのバルブを閉位置にした状態で、前記ガスバルブ、前記第1バルブ、および前記廃棄バルブのそれぞれを開位置と閉位置との間で繰り返し交互に入れ替えることにより、足場を通る加圧ガスバーストのパルス化を調節する、実施態様34に記載の事前組み立てキット。
[実施態様39]
前記プロセッサは、前記ガスバルブを開位置に切り替え、かつ前記第1チャンババルブを閉位置に切り替えて、加圧ガスバーストを放出する前に加圧ガスを生成する、実施態様38に記載の事前組み立てキット。
[実施態様40]
前記プロセッサは、前記ガスバルブを閉位置に切り替え、かつ前記第1チャンババルブを開位置に切り替えて、前記加圧ガスバーストを前記第1チャンバに放出する、実施態様39に記載の事前組み立てキット。
[実施態様41]
前記プロセッサは、前記TAIバルブおよび前記廃棄バルブが開位置にあり、残りのバルブが閉位置にあるように前記バルブを調整することにより、前記TAI保管装置からのTAIの放出を調節する、実施態様34に記載の事前組み立てキット。
[実施態様42]
前記プロセッサは、前記培地バルブ、前記第1チャンババルブおよび前記廃棄バルブが開位置にあり、残りのバルブが閉位置にあるように前記バルブを調整することにより、前記第1チャンバへのTAIの送り込みを調節する、実施態様41に記載の事前組み立てキット。
[実施態様43]
前記第1チャンバ内に収容された前記足場を複数の位置を通して回転させるための、モータによって駆動される足場ターナーをさらに備える、実施態様34に記載の事前組み立てキット。
[実施態様44]
前記プロセッサは、前記足場を複数の位置を通して回転させるように前記足場ターナーを駆動するモータに命令することにより、前記足場へのTAIの接着を調節する、実施態様43に記載の事前組み立てキット。
[実施態様45]
前記ポンプを駆動するためのモータをさらに備える、実施態様34に記載の事前組み立てキット
[実施態様46]
前記プロセッサは、所定の期間、TAI培地を前記第1チャンバに送り込むように前記ポンプを駆動するモータに命令することにより、TAI培養を調節する、実施態様45に記載の事前組み立てキット。
[実施態様47]
前記圧縮源は、CO2、N2または混合ガスを提供する、実施態様31に記載の事前組み立てキット。