特許第6802597号(P6802597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6802597ファイバ温度検知ベースの可撓性電子皮膚及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802597
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】ファイバ温度検知ベースの可撓性電子皮膚及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/16 20060101AFI20201207BHJP
   G01K 7/02 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   G01K1/16
   G01K7/02 E
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-531808(P2020-531808)
(86)(22)【出願日】2019年1月25日
(65)【公表番号】特表2020-531866(P2020-531866A)
(43)【公表日】2020年11月5日
(86)【国際出願番号】CN2019073174
(87)【国際公開番号】WO2019154129
(87)【国際公開日】20190815
【審査請求日】2020年2月25日
(31)【優先権主張番号】201810128938.X
(32)【優先日】2018年2月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519323403
【氏名又は名称】サザン・ユニバーシティ・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】Southern University of Science and Technology
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リィウ ウェイシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン シュゥァンモン
(72)【発明者】
【氏名】フー ジーヂェン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン ポンシァン
(72)【発明者】
【氏名】リィゥ ヨン
【審査官】 細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/008440(WO,A1)
【文献】 特開2007−173226(JP,A)
【文献】 特開2006−205345(JP,A)
【文献】 中国実用新案第204044096(CN,U)
【文献】 中国特許出願公開第104251751(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0250015(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0024682(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0273624(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第107607222(CN,A)
【文献】 中国実用新案第205163046(CN,U)
【文献】 中国特許出願公開第107551323(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00−19/00
B25J 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度検知ユニットと、前記温度検知ユニットに設けられた熱伝導ユニットと、前記温度検知ユニット及び前記熱伝導ユニットを一体的にパッケージしたパッケージ層とを備え、
前記温度検知ユニットは、可撓性基板と、下から上へ順次前記可撓性基板に堆積された、絶縁層、遷移層、複数の薄膜熱電スタック、及び、断熱保護層を含み、
前記熱伝導ユニットは、それぞれ前記薄膜熱電スタックの熱伝導エリアに固定されており、前記断熱保護層及び前記パッケージ層の外に延びた複数の熱伝導ファイバを含むことを特徴とする温度検知ベースの可撓性電子皮膚。
【請求項2】
前記絶縁層は、前記可撓性基板に堆積された熱絶縁層と、前記熱絶縁層に堆積された電気絶縁層とを含むことを特徴とする請求項1に記載の温度検知ベースの可撓性電子皮膚。
【請求項3】
各前記薄膜熱電スタックは、複数組の薄膜熱電対が直列接続されて形成された環状構造となっており、前記熱伝導エリアは、前記環状構造内に位置していることを特徴とする請求項1に記載の温度検知ベースの可撓性電子皮膚。
【請求項4】
前記熱伝導ファイバは、高熱伝導の炭素繊維、黒鉛繊維、金属または高分子材料から製造された糸状物であることを特徴とする請求項1に記載の温度検知ベースの可撓性電子皮膚。
【請求項5】
前記熱伝導ファイバは、熱伝導接着層を介して前記熱伝導エリアに固定されていることを特徴とする請求項1又は4に記載の温度検知ベースの可撓性電子皮膚。
【請求項6】
可撓性基板を用意し、前記可撓性基板に下から上へ順次絶縁層と遷移層とを堆積させ、前記遷移層に間隔をおいて複数の薄膜熱電スタックを堆積させ、複数の熱伝導ファイバを用意し、各薄膜熱電スタックの熱伝導エリアに熱伝導ファイバを固定し、前記遷移層に各薄膜熱電スタックをパッケージするための断熱保護層を堆積し、各前記熱伝導ファイバを前記断熱保護層外に延ばすことによって、温度検知ユニット及び熱伝導ユニットを製造する工程と、
前記温度検知ユニット及び前記熱伝導ユニットを一体的にパッケージし、且つ各前記熱伝導ファイバを、パッケージ体外に延ばすようにした、パッケージ工程とを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の温度検知ベースの可撓性電子皮膚の製造方法。
【請求項7】
前記可撓性基板の材料は、ポリイミド、ポリビニルアルコールフィルムまたはポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項6に記載の可撓性電子皮膚の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁層は、前記可撓性基板に堆積された熱絶縁層、及び前記熱絶縁層に堆積された電気絶縁層を含み、前記熱絶縁層は、多孔シリコン層または酸化イットリウムとジルコニアから構成された熱バリアコーティングであり、前記電気絶縁層は、SiO2層であることを特徴とする請求項6に記載の可撓性電子皮膚の製造方法。
【請求項9】
前記薄膜熱電スタックは、複数組の薄膜熱電対が直列接続されて形成されたものであり、前記薄膜熱電スタックは、T型、S型、B型、E型、R型またはK型熱電対であることを特徴とする請求項6に記載の可撓性電子皮膚の製造方法。
【請求項10】
前記熱伝導ファイバは、高熱伝導の炭素繊維、黒鉛繊維、金属または高分子材料から製造された糸状物であることを特徴とする請求項6に記載の可撓性電子皮膚の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性センサ技術分野に関し、特にファイバ温度検知ベースの可撓性電子皮膚及びその製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
電子皮膚は現在の国際研究のホットスポット問題の一つであり、バイオミメティクス知能ロボット、人体義肢、ウェアラブルデバイス等の複数の分野において非常に重要な将来性がある。人間の皮膚は、人体の内部器官を外部の干渉から保護するだけではなく、重要な情報の取得源である。主に圧力、引張力、振動に対する感知力の検知、及び熱損失、冷、温の温度検知といった分野を含む。現在の電子皮膚の研究は、主に力に対する触覚感知に集中しており、著しい進歩を得ているが、温度感知面における研究は比較的少ない。
【0003】
電子皮膚に適用される温度センサの種類として、サーミスタ抵抗、熱膨張複合材料及び熱電p−n接合が周知である。ここで、サーミスタ抵抗と温度変化との間に良好な線形関係があるが、温度を測定する際に外部電流を入力する必要があると共に、電圧値の変化も監視する必要があるため、4端子リード線を採用し、上下の極板とサンドイッチ構造を構成する必要があり、構造が複雑であり、加工難度が高くなる。一方、3線式及び2線式の結線法は、温度測定の精度が悪いと共に、抵抗値の変化が圧力による影響を受けやすいので、構造が簡単、精確な電子皮膚温度検知を求める応用において大きな限界がある。一方、ポリマー基材内に導電性充填物を添加した複合材料は、温度上昇すると、基材が膨張して充填物の分布が疎になり、抵抗が増大し、測定時に変形作用により影響を受けやすくなり、測定精度が悪く、材料性能が不安定であるため、長期使用特性を有しない。サーミスタp−n接合は、キャリアの熱活性化に基づいて温度を測定し、感度がサーミスタ抵抗より優れているが、光影響特性を有するため、実際の応用において干渉を受けやすく、温度感知変化の精度に影響を与える。
【0004】
また、現在の電子皮膚の温度感知は、主に固体表面の温度検知に適用され、環境(気流)の温度変化を鋭敏に感知することができない。気体温度測定に適用される方法として、以下がある。非接触式:赤外線、音響温度測定等は、気体の環境要因による大きい影響を受け、半導体レーザ吸収スペクトル技術を調整することができ、測定装置が複雑であり、高価であり、かつ使用の限界が大きく、測定精度が悪い。接触式:サーミスタ抵抗等の熱容量が大きく、温度に対する反応が遅く、テストに対する要求が厳しい温度検出に対して、被測定温度場を妨害しやすく、いずれも電子皮膚の温度検知には適用されていない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、ファイバ温度検出ベースの可撓性電子皮膚及びその製造方法を提供し、従来技術における温度検知の精度が低く、反応が遅い等の技術問題を解決することを目的とする。
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の採用する技術的解決手段は以下のとおりである。温度検知ユニットと、前記温度検知ユニットに設けられた熱伝導ユニットと、前記温度検知ユニット及び前記熱伝導ユニットを一体的にパッケージしたパッケージ層とを備えた温度検知ベースの可撓性電子皮膚であり、前記温度検知ユニットは、可撓性基板と、下から上へ順次前記可撓性基板に堆積された、絶縁層、遷移層、複数の薄膜熱電スタック、及び、断熱保護層を含む。前記熱伝導ユニットは、それぞれ前記薄膜熱電スタックの熱伝導エリアに固定されており、前記断熱保護層及び前記パッケージ層外に延びた複数の熱伝導ファイバを含む。
【0007】
さらに、前記絶縁層は、前記可撓性基板に堆積された熱絶縁層と、前記熱絶縁層に堆積された電気絶縁層とを含む。
【0008】
さらに、各前記薄膜熱電スタックは、複数組の薄膜熱電対が直列接続されて形成された環状構造となっており、前記熱伝導エリアは、前記環状構造内に位置している。
【0009】
さらに、前記熱伝導ファイバは、高熱伝導の炭素繊維、黒鉛繊維、金属または高分子材料から製造された糸状物である。
【0010】
さらに、前記熱伝導ファイバは、熱伝導接着層を介して前記熱伝導エリアに固定されている。
【0011】
本発明は、上記のファイバ温度検知ベースの可撓性電子皮膚の製造方法をさらに提供する。この製造方法は、以下の技術ステップを含む。
【0012】
以下を含む温度検知ユニット及び熱伝導ユニットを製造する工程:
【0013】
可撓性基板を用意し、前記可撓性基板に下から上へ順次絶縁層と遷移層とを堆積させる。
【0014】
前記遷移層に間隔をおいて複数の薄膜熱電スタックを堆積させる。
【0015】
複数の熱伝導ファイバを用意し、各薄膜熱電スタックの熱伝導エリアに熱伝導ファイバを固定する。
【0016】
前記遷移層に各薄膜熱電スタックをパッケージするための断熱保護層を堆積し、各前記熱伝導ファイバを前記断熱保護層外に延ばす。
【0017】
以下を含むパッケージ工程:
【0018】
前記温度検知ユニット及び前記熱伝導ユニットを一体的にパッケージし、且つ各前記熱伝導ファイバを、パッケージ体外に延ばす。
【0019】
さらに、前記可撓性基板の材料は、ポリイミドまたはポリビニルアルコールフィルムまたはポリエステルフィルムである。
【0020】
さらに、前記絶縁層は、前記可撓性基板に堆積された熱絶縁層、及び前記熱絶縁層に堆積された電気絶縁層を含み、前記熱絶縁層は、多孔シリコン層または酸化イットリウムとジルコニアから構成された熱バリアコーティングであり、前記電気絶縁層は、SiO2層である。
【0021】
さらに、前記薄膜熱電スタックは、複数組の薄膜熱電対が直列接続されて形成されたものであり、前記薄膜熱電スタックは、T型、S型、B型、E型、R型またはK型熱電対である。
【0022】
さらに、前記熱伝導ファイバは、高熱伝導性の炭素繊維、黒鉛繊維、金属または高分子材料から製造された糸状物である。
【発明の効果】
【0023】
本発明において、熱伝導ファイバを利用して外部環境温度を精確に感知し、薄膜熱電スタックに伝送することができる。そして、応答時間を大幅に短縮し、反応速度を向上させることができる。また、温度感知に外部電流の入力が必要ないため、信号の伝送をするのに上下の基板と電気回路を形成する必要がない。したがって、構造が簡単で、製造が容易で、量産と集積化製造に有利である。また、薄膜熱電スタックを採用した温度測定は、熱電対と比較して、出力電圧及び温度測定の精度が高く、薄膜熱電スタックの外部に、断熱保護層がパッケージされることにより、環境温度による測温精度に対する干渉を効果的に防止し、且つ可撓性基板及び絶縁層による薄膜熱電スタックの温度反応速度に対する影響を軽減し、構造の熱慣性を大幅に低減させ、熱電スタックの温度反応速度を向上させることにより、可撓性電子皮膚の感知感度を向上させることができる。また、薄膜熱電スタックの機能は安定しており、光照射及び変形による影響が小さく、電子皮膚に適用されると、電子皮膚により良い適用性及び安定性を付与することができる。さらに、薄膜熱電スタックを製造することができる材料の種類が多いため、応用場所が広くなり、使用の将来性がより一層良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明に係る実施形態における技術的解決手段をより明確に説明するために、実施形態又は従来技術の説明に用いられる図面について簡単に説明する。以下の説明における図面は、本発明に係る一部の実施形態だけであり、当業者は、創造的な業務を行わない前提の下で、これらの図面に基づいてほかの図面を得ることができる。
図1】本発明の実施例で提供するファイバ温度検知ベースの可撓性電子皮膚の概略構成図である。
図2】本発明の実施例で提供するファイバ温度検知ベースの可撓性電子皮膚の断面図である。
図3】本発明の実施例で提供するファイバ温度検知ベースの可撓性電子皮膚における薄膜熱電スタックの概略構成図である。
図4】本発明の実施例で提供するファイバ温度検知ベースの可撓性電子皮膚の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。前記実施例は添付図面に示され、全体を通して同一または類似の部品または同一または類似の機能を有する部品については同一または類似の符号付す。以下、添付図面を参照して記載される実施例は、本発明を解釈するための例示であって、本発明を限定するものではない。
【0026】
本発明の説明において、「長さ」、「幅」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」「内」、「外」等の表示方向又は位置関係は、図面に示される方向または位置関係であり、本発明の理解を容易にする、または説明を簡略化するためのものであって、装置又は部品が特定の方位を有する必要があり、特定の方位で構成及び操作を行う必要があることを示唆または暗示するものではない。従って、本発明に対する制限として理解されるべきではない。
【0027】
また、用語「第1の」、「第2の」は説明を目的としたものであり、相対的な重要度を示唆または暗示するものではなく、または技術的特徴の数量を示すために用いられているものではない。したがって、「第1の」、「第2の」と制限された特徴は、一つまたは複数の当該特徴を含むことを示唆または暗示することは可能である。本発明の記載において、明確的、具体的に限定されたもの以外、「複数の」の意味は、2つまたは2つ以上ということを指す。
【0028】
本発明において、明確に規定または限定されたもの以外、「取付」、「繋がり」、「接続」、「固定」等の用語は広く解釈されるべきであり、例えば、固定接続であってもよく、取り外し可能な接続であってもよく、或いは、一体化であってもよく、電気的接続であってもよく、直接接続であってもよく、中間仲介体を介して間接接続であってもよく、2つの部品の内部の接続であってもよく、または2つの部品の相互作用の関係であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に基づいて上記用語が本発明における具体的な意味を理解することができる。
【0029】
本発明の実施例に提供された温度検知ベースの可撓性電子皮膚は、温度検知ユニット10と、温度検知ユニット10に配置された熱伝導ユニット20と、温度検知ユニット10及び熱伝導ユニット20を一体的にパッケージしたパッケージ層30とを備えている。(図1図3を参照されたい)具体的には、温度検知ユニット10は、可撓性基板11と、下から上まで順次可撓性基板11に配置された、絶縁層12及び遷移層13と、間隔を空けて遷移層13に配置された複数の薄膜熱電スタック14と、各薄膜熱電スタック14をパッケージした断熱保護層15とを備えている。各薄膜熱電スタック14は、いずれも熱伝導エリア141を有し、熱伝導ユニット20は、複数の熱伝導ファイバ21を有している。各熱伝導ファイバ21は、薄膜熱電スタック14の熱伝導エリア141に対応した位置に固定され、且つ各熱伝導ファイバ21は、断熱保護層15及びパッケージ層30外に延びている。
【0030】
本発明の実施例において、熱伝導ファイバ21を利用して外部環境温度を精確に感知し、薄膜熱電スタック14に伝送することができる。そして、応答時間を大幅に短縮し、反応速度を向上させることができる。また、温度感知に外部電流の入力が必要ないため、信号の伝送をするのに上下の基板と電気回路を形成する必要がない。したがって、構造が簡単で、製造が容易で、量産と集積化製造に有利である。また、薄膜熱電スタック14を採用した温度測定は、出力電圧及び温度測定の精度を向上させ、薄膜熱電スタック14の外部に、断熱保護層15がパッケージされることにより、環境温度による測温精度に対する干渉を効果的に防止し、且つ可撓性基板11及び絶縁層12による薄膜熱電スタック14の温度反応速度に対する影響を軽減し、構造の熱慣性を大幅に低減させ、熱電スタックの温度反応速度を向上させることにより、可撓性電子皮膚の感知感度を向上させることができる。また、薄膜熱電スタック14の機能は安定しており、光照射及び変形による影響が小さく、電子皮膚に適用されると、電子皮膚により良い適用性及び安定性を付与することができる。さらに、薄膜熱電スタックを製造することができる材料の種類が多いため、応用場所が広くなり、使用の将来性がより一層良くなる。
【0031】
本実施例において、可撓性基板11は、可撓性ポリイミドから製作される。ポリイミドの耐熱性は400℃以上に達し、長期使用温度範囲は、−200〜300℃である。このような材料で基板を製作することで、基板の信頼性を向上させるだけではなく、様々な環境場所に適用することができる。なお、この材質は、可撓性が良好で、伸縮が可能であり、変形が容易であるため、電子皮膚を、機械、人体義肢、ウェアラブルデバイス等の分野に用いることができ、適用性が高い。
【0032】
図2を参照すると、絶縁層12は、可撓性基板11に堆積された熱絶縁層121と、熱絶縁層121に堆積された電気絶縁層122とを含む。具体的には、断熱絶縁層121は、多孔シリコン層であり、または酸化イットリウムとジルコニアから構成された熱バリアコーティングである。電気絶縁層122は、SiO2層である。薄膜熱電スタック14の温度測定の精度に影響を与えないように、熱絶縁層121及び電気絶縁層122が形成されており、これによって、薄膜熱電スタック14の温度測定に干渉して精度に影響を与えることを避けるように、外部環境の熱及び電気を隔離する。
【0033】
本実施例において、遷移層13はTa25層であることが好ましい。
【0034】
さらに、本実施例において、薄膜熱電スタック14は、複数組の薄膜熱電対が直列接続されて形成された環状構造となっており、熱伝導エリア141は、環状構造内に位置している。(図3を参照されたい)図において、薄膜熱電スタックは、N−P薄膜熱電対142が直列接続されて形成されている。このような熱電対の直列接続構造を利用することにより、出力電圧がより大きくなり、温度測定の精度も向上する。
【0035】
本実施例において、断熱保護層15は、SiO2層である。SiO2の熱伝導が比較的悪いため、環境温度が薄膜熱電スタック14の測定精度に干渉することを効果的に防止し、且つ、薄膜熱電スタック14が付着した基板が比較的大きな厚さ、質量及び熱容量を有する場合、薄膜熱電スタック14が温度に対する反応速度が低下することを防止する。それにより、構造の熱慣性を大幅に低下させ、温度変化の反応速度を向上させる。
【0036】
本実施例において、熱伝導ファイバ21は、高熱伝導性の炭素繊維、黒鉛繊維、金属(銅、銀、アルミニウムなど)または高分子材料から製造された糸状物である。(図2図3を参照されたい)製造時に、上記材料から製作された糸状物を所定の長さにカットして、熱伝導接着層22を介して薄膜熱電スタック14の熱伝導エリア141に固定する。したがって、熱伝導ファイバ21を利用して外部環境または気流の熱量が、薄膜熱電スタック14の熱伝導エリア141に伝導する。本実施例において、パッケージ層30には、柔軟性、弾性を有するジメチルポリシロキサン(PDMS)又はポリエチレンテレフタラート(PET)材質が採用されており、上記各デバイスに対する保護と外部環境に対する電気的絶縁を実現している。
【0037】
図4に示すように、本発明の実施例は、前記可撓性電子皮膚の製造方法を提供する。この製造方法は、以下のステップを含む。
【0038】
S1:温度検知ユニット10及び熱伝導ユニット20を製造する。
【0039】
可撓性基板11を用意し、可撓性基板11に上から下まで順次絶縁層12及び遷移層13を堆積させ、しかる後、遷移層13に複数の薄膜熱電スタック14を間隔を空けて堆積する。そして、各薄膜熱電スタック14の熱伝導エリア141に熱伝導ファイバ21を固定する。その後、遷移層13に各薄膜熱電スタック14をパッケージするための断熱保護層15を堆積し、各熱伝導ファイバ21を断熱保護層15外に延ばすようにする。
【0040】
具体的に、本ステップにおいて、可撓性基板11は、可撓性ポリイミドから製作される。ポリイミドの耐熱性は400℃以上に達し、長期使用温度範囲は、−200〜300℃である。このような材料で基板を製作することで、基板の信頼性を向上させるだけではなく、様々な環境場所に適用することができる。なお、この材質は、可撓性が良好で、伸縮が可能であり、変形が容易であるため、電子皮膚を、機械、人体義肢、ウェアラブルデバイス等の分野に用いることができ、適用性が高い。
【0041】
次に、可撓性基板11に多孔シリコン層を調製して熱絶縁層121を形成し、または酸化イットリウムとジルコニアから構成された熱バリアコーティングを堆積して、多孔シリコン層の代わりに、断熱を実現する。マグネトロンスパッタリング方式を採用して、熱絶縁層121にSiO2層を電気絶縁層として堆積させる。熱絶縁層121及び電気絶縁層122を形成することによって、薄膜熱電スタック14の温度測定に干渉して精度に影響を与えることを避けるように、外部環境の熱、電気を隔離する。
【0042】
次に、SiO2層にTa25層を遷移層13として堆積させる。
【0043】
Ta25層に薄膜熱電スタック14を堆積させる。薄膜熱電スタック14は、複数組の薄膜熱電対が直列接続されて形成されたものである。薄膜熱電スタックは、T型、S型、B型、E型、R型またはK型熱電対である。パターンを堆積して薄膜熱電対を形成する際に、設計により製作されたマスクプレートによって制御され、パッドに電気的接続されており、統合されて一側に配置されている。
【0044】
本ステップにおいて、高熱伝導性の炭素繊維、黒鉛繊維、金属(銅、銀、アルミニウムなど)または高分子材料から製造された糸状物を熱伝導ファイバ21として選択する。本実施例において、熱伝導ファイバ21は熱伝導性がよい細い銅線であることが好ましい。銅線を所定の長さにカットして、熱伝導接着層22を介して各薄膜熱電スタック14の熱伝導エリア141に固定する。
【0045】
最後に、遷移層13に各薄膜熱電スタック14をパッケージするためのSiO2層を断熱保護層15として堆積させ、各熱伝導ファイバ21を断熱保護層15外に延ばすようにする。
【0046】
S2:パッケージ工程温度検知ユニット10及び熱伝導ユニット20を一体的にパッケージし、且つ各熱伝導ファイバ21を、パッケージ体外に延ばす。
【0047】
本ステップにおいて、柔軟性、弾性を有するジメチルポリシロキサン(PDMS)又はポリエチレンテレフタラート(PET)材質を採用し、温度検知ユニット10及び熱伝導ユニット20を一体的にパッケージする。本実施例において、ジメチルポリシロキサン(PDMS)を採用することが好ましい。主剤:硬化剤が10:1の質量又は体積比率で調製した後、十分に混合して撹拌し、真空吸引して気泡を除去した後、製造したデバイスに鋳込し、70℃で1時間加熱して硬化成形させて、電子皮膚の製造が完成する。PDMS又はPET柔軟性材料を使用して、一体鋳込成形を行い、加工工程を簡略化する。また、電子皮膚に可撓性を付与し、異なる構造曲面に適用し、様々な応用ニーズを満たすことができる。
【0048】
上述した製造方法を採用してフレキシブル電子皮膚を製造し、可撓性電子皮膚の構造は簡単であり、一体にパッケージして形成されて、集積化製造に便利である。また製造して形成された電子皮膚の柔軟性、弾性も良好であり、様々な応用ニーズを満たすことができる。また、ファイバを採用して温度検知を行うことにより、感度が高く、精度が高く、温度測定の反応時間が短く、温度測定の範囲が広い。
【0049】
上述した内容は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するものではない。本発明の精神及び原則範囲内で限り、いかなる修正、同等置換及び改良などのすべては本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0050】
10 温度検知ユニット
11 可撓性基板
12 絶縁層
121 熱絶縁層
122 電気絶縁層
13 遷移層
14 薄膜熱電スタック
141 熱伝導エリア
142 N−P薄膜熱電対
15 断熱保護層
20 熱伝導ユニット
21 熱伝導ファイバ
22 熱伝導接着層
30 パッケージ層
図1
図2
図3
図4