(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光透過率若しくは光反射率の異なる複数種類の媒体または光透過率若しくは光反射率の異なる部分を有する媒体がセットされる媒体セット部をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の媒体識別装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.本発明の主要構成および基本原理
まず、図面を参照して、本発明の主要構成、基本原理等について説明する。なお、この主要構成および基本原理は、後述する第1〜第4実施形態において共通して用いられるものである。
【0018】
1−1.主要構成
本発明の識別装置は、(1)光学センサ、(2)センサ(制御)回路、および(3)センサ回路を制御する制御手段としての例えばマイクロコントローラユニット(以下、MCUと略称する。)の3つの主要要素で構成される。以下、各構成要素について詳述する。
【0019】
<センサSe>
上述したように、事務機器の分野では、媒体を検出するために、発光素子および受光素子を有する光学センサが多用されている。このようなセンサSeは、単一の発光素子Leおよび受光素子Lrを有している(
図1参照)。一般に、発光素子Leは発光ダイオードD、受光素子LrはフォトトランジスタTr1で構成されている。
【0020】
センサSeには発光素子Leと受光素子Lrが一体となった一体型のものや双方が分離された分離型のものがあるが、本発明では両者が使用可能である。また、センサSeには、発光素子Leの光を媒体を透過させて受光素子Lrで受光する透過型と、発光素子Leの光を媒体に反射させて受光素子Lrで受光する反射型とがあるが、本発明では両者が使用可能である。さらに、センサSeには、例えば、1.8V系、3.3V系、5V系、12V系のものが広く用いられているが、本発明はこれらのいずれも使用可能である。なお、このような電圧系は受光素子Lr(フォトトランジスタ)の作動電圧に基づいている。以下では、具体例として5V系透過一体型センサSeについて説明する。
【0021】
<センサ回路50>
図1に示すように、センサSeは、発光素子Le(発光ダイオードD)を発光させる発光回路50aと、受光素子Lr(フォトトランジスタTr1)を作動させる受光回路50bとを有するセンサ回路50によりその発光および受光が制御される。
【0022】
発光回路50aは次のように構成されている。発光ダイオードDのアノードはPNP型トランジスタTr2のコレクタに接続されており、トランジスタTr2のエミッタは作動電源(Vcc、本例では5V)に接続されている。トランジスタTr2のベースは保護抵抗R1を介してMCUのデジタル電圧出力ポート(D出力ポート)に接続されており、ベース・エミッタ間には抵抗R2が挿入されている。
【0023】
また、発光ダイオードDのカソードはNPN型トランジスタTr3のコレクタに接続されており、トランジスタTr3のエミッタは抵抗R5を介してグランド(GND)に接続されている。トランジスタTr3のベースは抵抗R4を介してOPアンプの出力端子に接続さている。OPアンプの逆相入力端子はトランジスタTr3のエミッタと抵抗R5との接続点に接続されており、正相入力端子は保護抵抗R3を介してDA出力ポートに接続されている。
【0024】
一方、受光回路50bは次のように構成されている。フォトトランジスタTr1のコレクタは負荷抵抗R6を介してVccに接続されており、エミッタはGNDに接続されている。また、フォトトランジスタTr1のコレクタは、他端がGNDに接続されたキャパシタCの一端と他端がMCUのAD入力ポートに接続された保護抵抗R7の一端とに接続されている。なお、キャパシタCと保護抵抗R7はCRノイズフィルタを構成している。
【0025】
<MCU>
MCUは、内部バスで接続されたCPU、RAM、ROMと、この内部バスに接続された外部バスと、外部バスに接続されたD/Aコンバータ、A/Dコンバータ、不揮発性メモリ等を有して構成されている。D/Aコンバータ、A/Dコンバータには例えば16ビットのものを用いることができ、D/Aコンバータの出力側はDA出力ポートに、A/Dコンバータの入力側はAD入力ポートに接続されている。また、外部バスはD出力ポートにも接続されている。
【0026】
MCU(CPU)は、D出力ポートおよびDA出力ポートから信号を出力することで発光回路50a(発光素子Le)を制御する。すなわち、D出力ポートからデジタル電圧を出力することで、トランジスタTr2のエミッタ、コレクタを介して、発光ダイオードDのカソードにVccを供給し、DA出力ポートから所定のアナログ電圧を出力することで、発光ダイオードDに流れる電流、すなわち、発光素子Leの発光量を制御する。
【0027】
なお、発光素子Leには発光量のバラツキがあり、また、上述した発光回路50aを構成する各素子にもバラツキがあるため、センサを使用する事務機器では、一般に製品出荷前にDA出力ポートから出力する電圧の調整(輝度調整)が行われる。このように調整された電圧値(以下、調整電圧値という。)は上述した不揮発性メモリに格納され、発光素子Leを発光させる際には不揮発性メモリからRAMに展開された調整電圧値が用いられる。
【0028】
また、MCU(CPU)は、AD入力ポートを介して内蔵するA/Dコンバータから出力されるデジタル電圧値をRAMに一旦格納し、格納された電圧値を順次読み出してその推移変化により媒体検出を行う。
【0029】
<変形例>
なお、スイッチ素子として機能するトランジスタTr2のベースにはハイレベル信号が出力されればよいため、必ずしもデジタル電圧を出力する必要はなく、アナログ電圧のハイレベル信号を用いるようにしてもよい(D/Aコンバータが別途必要となる。)。また、上記ではMCUがD/Aコンバータ、A/Dコンバータを内蔵する例を示したが、発光回路50A側にD/Aコンバータ、受光回路50B側にA/Dコンバータを配置し、MCUがこれらのコンバータの一方または双方を内蔵しなくてもよい。ただし、コンバータの基準電圧を考慮するとコストアップとなりがちなため、その点も考慮する必要がある。
【0030】
また、事務機器では、一般に1つの装置に複数のセンサが用いられる。このため、複数のセンサに対応するセンサ回路を纏めてセンサ制御部を構成するようにしてもよい。さらに、上記例ではMCU(一つの集積回路にコンピュータシステムをまとめて1ユニットとしたもの)を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
透過型センサSeに代えて、反射型センサSeを用いる場合には、受光回路50bの構成を若干変更する必要がある。すなわち、フォトトランジスタTr1のコレクタをVccに接続してエミッタとGNDとの間に負荷抵抗R6を挿入し、CRフィルタを構成するキャパシタCおよび保護抵抗R7のそれぞれの一端を、フォトトランジスタTr1のエミッタと負荷抵抗6との接続点に接続すればよい。この場合、AD入力ポートでは電圧が上昇する(縦軸に電圧、横軸に時間をとった場合に上述した透過型センサSeにおける受光回路50bからの出力電圧が上下方向で逆転するように推移する。)。
【0032】
1−2.本発明の基本原理
上記構成は、従来のセンサによる媒体検出の構成と共通する。本発明の特色は、媒体(インクリボン、フィルム、シート等)の光透過率または光反射率が異なることを利用して媒体の有無および種類を識別する点、とりわけ「媒体なし」、「透明媒体」、「光が透過可能な媒体」(例えば、白媒体)を識別する点にある。従って、MCUを構成するCPUによるセンサSeの制御がポイントとなる。以下、従来技術等と対比して説明する。
【0033】
1−2−1.従来技術およびその延長範囲による制御
上記「発明が解決しようとする課題」の欄では、受光回路から出力される出力電圧の電圧差が小さいため、従来技術には媒体識別精度の点に難点がある旨述べたが、ここでは、
図1に示した回路構成に則して、その点について具体的に説明する。
【0034】
<連続点灯>
図2は、発光素子Leを連続点灯させて媒体を識別するときの従来技術の説明図である。MCUのDA出力ポート(
図1参照)からは上述した調整電圧値に対応するアナログ電圧が出力され、
図2(A)に示すように、発光素子Leは連続点灯する。なお、以下では、この調整電圧値に対応するアナログ電圧の出力で発光素子Leを連続点灯させる場合を通常点灯という。
【0035】
図2(C)は、発光素子Leを通常点灯させ受光回路50bの出力電圧を縦軸、時間を横軸にとったときの媒体なし(発光素子Le、受光素子Lr間に識別対象の媒体が存在しないこと)の場合の最高電圧から閾値電圧Vtに到達するまでの閾値電圧到達時間Ttを示したものである。
図2(C)において、最高電圧はVccとほぼ同じ5V(厳密には、フォトトランジスタTr1による電圧降下があるため5V未満となる。)、閾値電圧Vtは1.0Vである(後述する
図2(D)、
図3(B)〜(D)、
図4(C)〜(F)においても同じ。)。
図2(C)に示すように、閾値電圧到達時間Ttは0.42msとなる。
【0036】
一方、
図2(D)は、発光素子Leを通常点灯させ受光回路50bの出力電圧を縦軸、時間を横軸にとったときの透明媒体(透明テープ、OHPシート等)の場合の最高電圧から閾値電圧Vtに到達するまでの閾値電圧到達時間Ttを示したものである。
図2(C)に示すように、閾値電圧到達時間Ttは0.53msとなる。
【0037】
図2(C)、
図2(D)を対比すると、媒体なしの場合の閾値電圧到達時間Tt(0.42ms)と透明媒体の場合の閾値電圧到達時間Tt(0.53ms)との差は0.11msしかとれないことが判る。一方、MCUを構成するCPUは、複数のタスク(処理要求)を同時にこなしているため、ソフトウエアが閾値電圧到達時間Ttを確認可能な周期(ポーリング)は一般に0.1ms程度である。このため、0.11msの時間差は誤差範囲に入り、CPUは両者(媒体なし、透明媒体)の正確な識別が難しい。
【0038】
これに対し、
図2(B)は、上述した調整電圧値より下げて発光素子Leの発光量を落としたときの点灯波形である。このように発光素子Leの発光量を落とせば、
図2(C)および
図2(D)に示した閾値電圧到達時間Ttはそれぞれ長くなり、両者の時間差はポーリングに対処可能な値となる。しかしながら、発光素子Leの発光量を落とせば、その発光量で白媒体に光を当てても受光回路50bからの出力電圧が閾値電圧Vt(1.0V)に到達しないため、白媒体の識別は不能となる。逆に、発光素子Leの発光量を白媒体が識別可能な発光量とすると、閾値電圧到達時間Ttが短いため、媒体なしおよび透明媒体の識別が不能となる。従って、発光素子Leの連続点灯では、媒体なしおよび透明媒体と、白媒体との識別が相互に排他的な関係となる。
【0039】
<間欠点灯>
上記のように発光素子Leの連続点灯では媒体識別に課題を生じるため、発光素子Leを間欠点灯(パルス点灯)させることが考えられる。
図3は、発光素子Leを間欠点灯させて媒体を識別するときの説明図であり、
図3(A)は1点灯周期時間Tc(50μs、周波数:20kHz)を構成する点灯時間Ton(5.5μs)および消灯時間(54.5μs)を固定として発光素子Leを点灯させる場合の間欠点灯波形を示している。発光素子Leの間欠点灯はMCU(CPU)により
図1に示したD出力ポートから出力する信号を時間制御することで行われる(後述する
図4(A)、(B)でも同じ。)。
【0040】
このような発光素子Leの間欠点灯を行えば、媒体なしの場合の閾値電圧到達時間Ttおよび透明媒体の場合の閾値電圧到達時間Ttを長くすることができ、両者の時間差も大きくとることができる。
図3(B)は受光回路50bの出力電圧を縦軸、時間を横軸にとったときの媒体なしの場合の閾値電圧到達時間Tt(0.74ms)、
図3(C)は受光回路50bの出力電圧を縦軸、時間を横軸にとったときの透明媒体の場合の閾値電圧到達時間Tt(0.92ms)を示している。両者の時間差は0.18msとなり、上述したポーリングに対処可能な値となる。
【0041】
しかしながら、白媒体の場合には、
図3(D)に示すように、受光回路50bからの出力電圧が閾値電圧Vtに到達しないため、白媒体の識別は不能となる。逆に、発光素子Leの点灯時間を白媒体が識別可能な点灯時間とすると、媒体なしおよび透明媒体の場合の受光回路50bからの出力電圧が瞬時に閾値電圧Vtに到達してしまい(時間差を確保できず)両者の識別が不能となる。従って、このような発光素子Leの間欠点灯でも、上述した発光素子Leの連続点灯の場合と同様、媒体なしおよび透明媒体と、白媒体との識別が相互に排他的な関係となる。
【0042】
1−2−2.本発明による制御
<加速間欠点灯(加速パルス点灯)>
これに対し、本発明は、発光素子Leの単位時間当たりの発光量が変化するように間欠点灯させるものであり、媒体なし、透明媒体、および白媒体の識別を可能とするものである。つまり、上述した間欠点灯(パルス点灯)に対し、発光素子Leを加速間欠点灯(加速パルス点灯)させるものである。
【0043】
図4は、発光素子Leを加速間欠点灯させて媒体を識別するときの説明図であり、
図4(A)は発光素子Leの点灯時間Tonと消灯時間Toffとで構成される1点灯周期時間Tcが点灯時間Ton(5.5μs)を一定(固定)としつつ徐々に短くなるように発光素子Leを点灯させる場合の間欠点灯波形を示している。
図4(A)では、当初の1点灯周期時間Tcが100μs(初期周波数:10kHz)、15ms後の(スイープ時間:15msでの)1点灯周期時間Tcが20μs(15ms後の周波数:50kHz)に設定されている。
【0044】
図4(A)に示す加速間欠点灯では、1点灯周期時間Tcが徐々に短くなり、発光素子Leの単位時間当たりの発光量が徐々に大きくなる。初期状態では発光素子Leの発光量が小さいため、媒体なしおよび透明媒体の閾値電圧到達時間Ttが長くなり両者の時間差も大きくなるので、両者の識別が可能となる。その後、1点灯周期時間Tcが短くなり発光素子Leの単位時間当たりの発光量が大きくなるので、白媒体についても受光回路50bの出力電圧が閾値電圧Vtに到達する。従って、上記1−2−1で説明した相互に排他的な関係を解消できる。つまり、本発明の制御では、媒体なし、透明媒体、および白媒体の識別が可能である。
【0045】
図4(C)は受光回路50bの出力電圧を縦軸、時間を横軸にとったときの媒体なしの場合の閾値電圧到達時間Tt(6.96ms)、
図4(D)は透明媒体の場合の閾値電圧到達時間Tt(7.52ms)、
図4(E)は白媒体の場合の閾値電圧到達時間Tt(14.2ms)をそれぞれ示している。
図4(F)は黒または銀媒体(光が透過不能な媒体)の場合を示したものである。
図4(F)から明らかなように、黒または銀媒体の場合には受光回路50bの出力電圧が閾値電圧Vtに達しない。
【0046】
<媒体識別基準>
以上を逆に捉えると、発光素子Leを加速間欠点灯させた場合の媒体識別基準を得ることができる。
図5は、閾値電圧到達時間Ttに応じて媒体を識別するためのMCU(CPU)の識別基準を模式的に示す説明図である。
【0047】
すなわち、CPUは、発光素子Leの発光開始(D出力ポートからのデジタル電圧出力開始)からの閾値電圧到達時間Ttが、
図5(A)に示すように、Tt1(7ms未満の範囲)のときは「媒体なし」、
図5(B)に示すように、Tt2(7ms以上10ms未満の範囲)のときは「透明媒体」、
図5(C)に示すように、Tt3(10ms以上15ms未満の範囲)のときは白媒体等の「光が透過可能な媒体」(薄紙、ホログラムフィルムを含む。)、
図5(D)に示すように、T4(15ms)経っても閾値電圧Vtに到達しないときは黒または銀媒体等の「光が透過不能な媒体」(厚紙を含む。)と識別する。なお、このような識別基準はROMにプログラムまたはプログラムデータとして予め書き込まれる。
【0048】
<変形例>
図4(B)は、発光素子Leの点灯時間Tonと消灯時間Toffとで構成される1点灯周期時間Tc(100μs)を一定(固定)としつつ点灯時間Tonが徐々に長くなるように発光素子Leを点灯させる場合の間欠点灯波形を示している。
図4(B)では、当初の点灯時間Tonが5.5μs、15ms後の点灯時間Tonが27.5μsに設定されている。このような発光制御も加速間欠点灯として用いることができる。
【0049】
なお、
図4(B)は、発光素子Leの発光開始から15ms後の点灯時間Tonまでの点灯積分時間(パルスのオン時間の総面積)が、
図4(A)に示したそれと同等となるように設定された例である。このため、上述した識別基準をそのまま用いることができる。また、
図4(A)および
図4(B)の間欠点灯波形を組み合わせる(例えば、発光素子Leの点灯開始から15ms経過後までの間で、前半は
図4(A)、後半は
図4(B)の間欠点灯波形を用いる)ようにしてもよい。
【0050】
透過型センサSeに代えて、反射型センサSeを用いる場合には、上述したように、受光回路50bの出力電圧は上昇する。すなわち、
図4(C)〜(F)に示したグラフが上下方向で逆転し、最小電圧は0V、閾値電圧Vtは4.0Vとなる。また、
図4(A)に示した間欠点灯波形に代えて、発光素子Leの点灯時間Tonと消灯時間Toffとで構成される1点灯周期時間Tcが点灯時間Ton(5.5μs)を一定としつつ徐々に長くなるように発光素子Leを点灯させる間欠点灯波形や、
図4(B)に示した間欠点灯波形に代えて、発光素子Leの点灯時間Tonと消灯時間Toffとで構成される1点灯周期時間Tc(100μs)を一定としつつ点灯時間Tonが徐々に短くなるように発光素子Leを点灯させる間欠点灯波形が用いられるが、上述したようにそれらを組み合わせるようにしてよい。
【0051】
1−3.用途等
上記1−2−2<加速間欠点灯(加速パルス点灯)>で述べたように、本発明は、発光素子Leを加速間欠点灯させて媒体の有無および種類を識別するため、媒体には、例えば、
図4(A)に示す最初のパルス点灯による光が当たる必要がある。このため、CPUが媒体識別をするにあたり、媒体は停止した状態とされる。このような媒体が停止した状態は、例えば、プリンタ(印刷装置)では、初期設定処理時や印刷動作前を挙げることができる。
【0052】
一方、上記1−2の冒頭で述べたように、本発明の主要構成は、従来のセンサによる媒体検出の構成と共通する。従って、従来のセンサと同様に、搬送中の媒体(に付されたマークや媒体端)を検出することも可能である。逆にいえば、従来の媒体検出用センサに、媒体の有無および種類を識別する機能を新たに付与することができる。そのような態様では、CPUは、媒体の有無および種類を識別した後に、発光素子Leの点灯を上述した加速間欠点灯から通常点灯に切り換えて、従来の媒体検出用センサと同様、受光回路50bから出力される出力電圧を監視することで、例えば、(搬送される)媒体の後端、媒体に付されたマークや媒体の後端部に付されたテープ等を検出する。通常点灯への切換タイミングとしては、例えば印刷動作開始時を挙げることができる。
【0053】
また、例えば画像形成システムでは、システムを構成する1つの装置で識別した媒体の情報を、システムを構成する他の装置と共有するようにしてもよい。さらに、媒体には、上述したように種々のものを挙げることができ、その種類等に応じて本発明も応用される。例えば、「媒体なし」の識別は、シートのジャム判定に用いることができる。以下では、発明の実施の形態としてより具体的な用途等ついて説明する。
【0054】
2.発明の実施の形態
2−1.第1実施形態
第1の実施の形態は、本発明を、ラベルやチューブ等の長尺状印刷媒体に任意の文字等を印刷可能なマークプリンタに適用し、識別対象媒体をインクリボンとしたものである。
【0055】
2−1−1.構成
<全体構成>
図6に示すように、本実施形態のプリンタ100は、ノートタイプコンピュータと同様に持ち運び可能に構成されており、大別して、キーボードや入力制御部を有する入力部13、LCDや表示制御部を有する表示部14、サーマルヘッド6を構成する発熱素子を発熱させることでインクリボンRを介して印刷媒体に印刷処理を施す印刷部20、印刷部20の媒体搬送方向下流側に設けられ印刷媒体に切断処理を施す切断部7およびこれら各部を制御する制御部15(
図9参照)を備えている。また、プリンタ100は、印刷部20の上流側に配され各種印刷媒体をセットするためのアタッチメント部10、および、インクリボンカセット8が装着されるカセット装着部30を有している(
図8参照)。
【0056】
<入力部13>
入力部13は、ノートタイプコンピュータとほぼ同様に、ファンクションキー、文字・数字・記号キー、スペースキー、変換キー、十字方向キー、リターンキー等を有しており、オペレータはこれらのキーを操作することで、印刷媒体の種類、サイズ、設定条件等を入力することができる。
【0057】
<表示部14>
表示部14のLCDは、入力モード等を表示する各種情報表示エリア、入力部13から入力された文字、数字、記号(以下、文字と略称する。)を表示する文字情報表示エリア、文字サイズ等を表示するパラメータ表示エリアの3つの表示エリアに分割されており、各種情報表示エリアおよびパラメータ表示エリアはそれぞれ文字情報表示エリアの上下に配置されている。
【0058】
<印刷部20>
印刷部20は、印刷媒体を搬送するための搬送ローラ2a、2bと、搬送ローラ2a、2bの下流側でサーマルヘッド6に対向配置されたプラテンローラ3と、プラテンローラ3の下流側にプラテンローラ3と対向するように配置されたピンチローラ4とを有している。
【0059】
プラテンローラ3とサーマルヘッド6との間にはインクリボンRが介在している。インクリボンRは、インクリボンカセット8内に収容されており、インクリボンカセット8の供給リール8cから供給され、巻取リール8dに巻き取られる(
図8参照)。
【0060】
搬送ローラ2a、2bの上流側には、図示しないギアを介して搬送ローラ2a、プラテンローラ3およびインクリボンカセット8の巻取リール8dを回転駆動させるステッピングモータ5が配置されており、インクリボンカセット8の一側(
図6の左側)かつ切断部7の一側(
図6の下側)には、図示しないギアおよびカムを介して、サーマルヘッド6を媒体搬送路から退避した退避位置とプラテンローラ3に圧接する印刷位置との間で移動させるステッピングモータ9が配置されている。
【0061】
図6には、印刷媒体Mとしてチューブが装着された状態が示されている。この例に則して説明すると、印刷時には、インクリボンカセット8のインクリボンRを挟んでサーマルヘッド6を印刷媒体Mに圧接するとともに、サーマルヘッド6を構成する発熱素子を選択的に発熱させることでインクリボンRのインクを溶融して印刷媒体Mに文字列を1ラインずつ印刷する。なお、以下の説明では、必要な場合を除き、
図6の例に則して印刷媒体Mにチューブが用いられたものとして説明する。
【0062】
<切断部7>
ピンチローラ4の下流側には、印刷媒体Mを切断するための切断部7が配置されている。切断部7は、カッタ刃7aとカッタ刃受け台7bとを有している。カッタ刃受け台7bは、平坦面で構成される全切り面と、両端部に突条を有する半切り面とを備え、全切り面または半切り面をカッタ刃7aに対して略垂直にセットすることにより、印刷媒体Mの全切り処理や半切り処理を行うことができる。
【0063】
サーマルヘッド6による印刷が完了し所定長さ下流側に搬送した時点でカッタ刃7aを作動(退避位置から進出位置に移動)させることで、オペレータが所望する長さの印刷媒体Mを得ることができる。なお、本実施形態では、カッタ刃7aの作動には図示しないカム等を介してステッピングモータ9の回転駆動力が用いられ、カッタ刃受け台7bの面変更にも別のカム等を介してステッピングモータ9の回転駆動力が用いられる。
【0064】
<アタッチメント部10>
プリンタ100は、アタッチメント部10に装着するアタッチメントを変更することにより、各種印刷媒体Mに対して印刷および切断処理が可能に構成されている。
図7は、ラベルカセットとチューブ用アタッチメントの構成の一例を示している。例えば、
図7(A)に示すラベルカセット11をアタッチメント部10に装着した場合、カセット内部から剥離紙付ラベルが引き出され、当該ラベルに対して印刷および切断処理を行うことができる。また、
図7(B)に示すチューブ用アタッチメント12をアタッチメント部10に装着した場合、チューブ挿入口12aからチューブを挿入することにより、当該チューブに対して印刷および切断処理を行うことができる。
【0065】
<インクリボンカセット8>
図8に示すように、インクリボンカセット8は、カセットケース8a内に、インクリボンRが巻回された供給リール8cと、インクリボンRを巻き取るための巻取リール8dとを収容している。インクリボンRは、供給リール8cと巻取リール8dとの間で架設されており、印刷部20でのサーマルヘッド6による印刷処理に適合するように、インクリボンカセット8にはインクリボンRが露出する露出部8bが形成されている。なお、インクリボンRには黒色や白色のものが用いられ、黒インクリボンの終端部にはエンドマークとして透明テープが配されており、白インクリボンの終端部にはエンドマークとして銀テープが配されている。
【0066】
<カセット装着部30>
図8に示すように、カセット装着部30は、インクリボンカセット8を載置可能な矩形状平面を有するカセット載置台31を有している。カセット載置台31には、インクリボンカセット8と係合する3本のロッド状の係合突起36〜38と、先端部に嵌合爪を有しインクリボンカセット8の対向する2側面を上部側および側面側から押さえる板状のカセット押さえ34、35が立設されている。一方、インクリボンカセット8のカセットケース8aには、これら係合突起36〜38およびカセット押さえ34、35と係合ないし嵌合する係合孔および嵌合側面が形成されている。
【0067】
また、カセット載置台31には、インクリボンカセット8の供給リール8cと係合する供給リール回転軸32および巻取リール8dと係合する巻取リール回転軸33が回転可能に立設されている。なお、巻取リール回転軸33には、図示しないギア等を介してステッピングモータ5の回転駆動力が伝達される。
【0068】
<センサSe1>
カセット載置台31にはセンサSe1を支持するための図示を省略した支持部材が固着している。センサSe1には、
図1を参照して説明した透過一体型センサSeが用いられている(1−1<センサSe>参照)。センサSe1は、サーマルヘッド6の上流側に配されており、インクリボンRを検出するために、発光素子Leおよび受光素子Lrが露出部8bを跨ぐように配置されている(
図8参照)。
【0069】
<制御部15>
図9に示すように、制御部15は、
図1を参照して説明したMCUで構成されている(1−1<MCU>参照)。上述した外部バスには、コンバータ等の他に、入力部13、表示部14、印刷部20、ステッピングモータ5、9の動作を制御するドライバ18、センサSe1を含む各種センサを制御するセンサ回路を纏めたセンサ制御部19が接続されている。ドライバ18には上述したステッピングモータ5、9が接続されており、センサ制御部19には各種センサが接続されている。なお、センサ回路には、
図1を参照して説明したセンサ回路50が用いられている(1−1<センサ回路50>参照)。
【0070】
また、制御部15は図示しないインターフェースを有しており、外部バスを介して、例えば、パーソナルコンピュータ等の上位機器に接続可能である。このため、オペレータは入力部13からの入力に代えて、上位機器からの入力も可能であり、さらに、RAMカードやUSB等の外部記憶装置を装着することで外部記憶装置に格納されたデータの利用も可能である。
【0071】
2−1−2.動作
次に、本実施形態のプリンタ100の動作について、制御部15を構成するMCUのCPU(以下、CPUと略称する。)を主体として説明する。
【0072】
プリンタ100に電源が投入されると、ROMに格納されたプログラムおよびプログラムデータがRAMに展開され、CPUは、上述した各部を所定のホーム位置に移動させる初期設定処理を行う。この初期設定処理では、インクリボンRの有無および種類を識別するための識別ルーチンも実行される。
【0073】
図10に示すように、識別ルーチンでは、まず、ステップ(以下、「S」と略称する。)102において、CPUは、D出力ポートおよびDA出力ポートから信号を出力することでセンサSe1を加速間欠点灯させ、RAMに格納された受光回路50bの出力電圧を順次参照して閾値電圧到達時間Ttを取得する。
【0074】
次に、S104において、閾値電圧到達時間Ttが7ms未満か否かを判断し、肯定判断のときは、S106で媒体なしと判定する。本来、媒体(インクリボンR)が存在すべきところ、媒体なしと判定したため、CPUは、S128で表示部14のLCDにインクリボンカセット8の装着要求を表示して識別ルーチンを終了する。
【0075】
S104で否定判断のときは、S108において閾値電圧到達時間Ttが7ms≦Tt<10msの範囲内か否かを判断し、その判断が肯定のときは、S110で透明テープと判定する。上述したように、黒インクリボンの終端部にはエンドマークとして透明テープが配されているため、CPUは、S130でLCDにインクリボンカセット8の交換要求を表示して識別ルーチンを終了する。
【0076】
S108での判断が否定のときは、S112において閾値電圧到達時間Ttが10ms≦Tt<15msの範囲内か否かを判断し、肯定判断のときは、S114で白インクリボンと判定して識別ルーチンを終了する。なお、後述する印刷処理において、インクリボンRのリボン色に応じてサーマルヘッド6を構成する加熱素子の温度が調整される。
【0077】
一方、S112で否定判断のとき(Tt≧15ms)は、S116で黒インクリボンまたは銀テープと判定する。黒インクリボンであれば後述する印刷処理において印刷可能であり、銀テープであれば上述したように白インクリボンのエンドマークのため、CPUは、S118で巻取リール回転軸33を回転させるステッピングモータ5を所定量駆動しインクリボンRを搬送してみる。
【0078】
供給リール回転軸32にはその回転を検出する不図示のセンサ(ホール素子)が配置されており、1回転でセンサ論理が反転する。このため、CPUは、S120において、センサ論理が反転するか否かを判定することでインクリボンRが搬送可能か否かを判断する。S120で肯定判断のときは、S122で黒インクリボンと判定して識別ルーチンを終了する。
【0079】
一方、S120で否定判断のときは、S124で白インクリボンのエンドマークの銀テープと判定し、S126でLCDにインクリボンカセット8の交換要求を表示して識別ルーチンを終了する。
【0080】
初期設定処理終了後、CPUは、オペレータによる入力部13からの印刷指令情報および切断指令情報の入力を待つ。CPUはこれらの情報が入力されると、入力された印刷指令情報に従って印刷データを生成してオペレータからの印刷開始指示を待つ。この間、CPUは、再度、
図10に示した識別ルーチンを実行する。これは、初期設定処理後(電源投入後)にオペレータによりインクリボンカセット8が交換される場合があるためである。CPUは、識別ルーチンを終了すると(インクリボンRの有無および種類を識別した後)、発光素子Leの発光を通常点灯に切り換えて、(搬送される)インクリボンRの終端部に配されたエンドマークを監視する。
【0081】
オペレータが入力部13の所定ボタン(例えば、エンターボタン)を押下することにより印刷開始指示があると、CPUは、搬送ローラ2a、2bの上流側に配置されたセンサからの出力を参照して印刷媒体Mが所定位置にセットされているか否かを判断し、否定判断のときはその旨を表示部14に表示して待機し、肯定判断のときはステッピングモータ5、9を駆動して印刷媒体Mに印刷処理を施す。
【0082】
すなわち、サーマルヘッド6をプラテンローラ3に圧接する印刷位置に移動させ、生成した印刷データに従って1ラインごとにサーマルヘッド6に出力する。このとき、CPUは、識別ルーチンで識別したインクリボンRのリボン色に応じて、サーマルヘッド6の発熱量(印刷媒体Mへの印刷条件)を変更する。例えば、インクリボンRのリボン色が黒のときの発熱量を100%とした場合に、リボン色が白のときは60%〜70%の発熱量に設定される。また、印刷媒体Mの比熱も考慮して、印刷媒体Mの種類とインクリボンRのリボン色とに応じてサーマルヘッド6の発熱量を変更するようにしてもよい。
【0083】
印刷媒体Mは搬送ローラ2a、2b、プラテンローラ3、ピンチローラ4による回転駆動力で媒体搬送路上を下流側に搬送され、印刷部20において所望の文字が印刷される。なお、本実施形態では、ステッピングモータ5、9を印刷媒体Mの搬送のために用いているので、CPUは出力パルス数をカウントすることによりサーマルヘッド6の加熱素子の位置に対する印刷媒体Mの先端の位置の関係、すなわち、印刷位置を把握することができる。
【0084】
印刷部20(サーマルヘッド6)による印刷媒体Mに対する印刷処理が完了すると、CPUはサーマルヘッド6を媒体搬送路から退避した退避位置に移動させ、ピンチローラ4の下流側に配置されたセンサからの出力を参照して印刷媒体Mの先端が該センサの位置より下流側に位置しているか否かを判断し、肯定判断のときは搬送ローラ2a、2b、プラテンローラ3、ピンチローラ4を逆転させて印刷媒体Mの先端が該センサの位置より上流側に位置するように所定距離逆送した後、搬送ローラ2a、2b、プラテンローラ3、ピンチローラ4を正転させて印刷媒体Mを切断部7側に搬送し、否定判断のときはそのまま搬送ローラ2a、2b、プラテンローラ3、ピンチローラ4を正転させて印刷媒体Mを切断部30側に搬送する。
【0085】
また、CPUは、オペレータから印刷指令情報および切断指令情報の入力がなされた時点からこの時点までの間に、切断指令情報に従って、媒体搬送路を介してカッタ刃7aに対向する位置に切断指令情報で指令された面(全切り面、半切り面)が面するようにカッタ刃受け台7bの受け面を位置付ける。
【0086】
CPUは、印刷媒体Mの先端がカッタ刃7aの位置を通り過ぎて、印刷媒体Mに対する切断位置がカッタ刃7aの位置まで搬送されると、ローラ2a、2b、プラテンローラ3、ピンチローラ4の駆動を一旦停めて印刷媒体Mの搬送を停止し、カッタ刃7aをカッタ刃受け台7bに向けて進出させることで、印刷媒体Mを切断する。CPUはピンチローラ4の下流側に配置されたセンサからの出力を参照して印刷媒体Mの先端が該センサの位置に到達したか否かを監視しており、該センサの位置を基準としてステッピングモータ9への出力パルス数をカウントすることによりカッタ刃7aの位置に対する印刷媒体Mの先端の位置の関係、すなわち、切断位置を把握することができる。
【0087】
次いで、CPUは、ローラ2a、2b、プラテンローラ3、ピンチローラ4の駆動を再開させて印刷媒体Mをさらに所定距離下流側に搬送してプリンタ100から排出する。そして、所定時間経過後、ローラ2a、2b、プラテンローラ3、ピンチローラ4の駆動を停止させ、入力された印刷/切断指令情報に基づく動作を終了させる。なお、CPUは、さらに所定時間経過後、媒体搬送路上の曲線部に印刷媒体Mが位置して印刷媒体Mに曲がり癖ができることを防止するために、ローラ2a、2b、プラテンローラ3、ピンチローラ4を駆動して印刷媒体Mを搬送ローラ2a、2b側へ巻き戻す。
【0088】
2−2.第2実施形態
第2の実施の形態は、本発明を、カードに文字や画像を印刷記録するとともに、カードに磁気的ないし電気的な情報記録を行う印刷装置に適用し、識別対象媒体をインクリボンおよびフィルム(転写フィルム、ホログラムフィルム)としたものである。
【0089】
2−2−1.構成
<システム構成>
本実施形態の印刷装置200は、不図示の上位装置(例えば、パーソナルコンピュータ等のホストコンピュータ)とともに印刷システム(画像形成システム)を構成している。すなわち、印刷装置200は、図示を省略したインターフェースを介して、上位装置に接続されており、上位装置から印刷装置200に画像データや磁気的ないし電気的記録データ等を送信して、記録動作等を指示することが可能である。なお、印刷装置200は、オペパネ部(操作表示部)を有しており、上位装置からの記録動作指示の他、オペパネ部からの記録動作指示も可能である。
【0090】
上位装置には、デジタルカメラやスキャナ等の画像入力装置、上位装置に命令やデータを入力するためのキーボードやマウス等の入力装置、上位装置によって生成されたデータ等の表示を行なう液晶ディスプレイ等のモニタが接続されている。
【0091】
<印刷装置200の構成>
図11に示すように、印刷装置200はハウジング2を有しており、ハウジング2内に情報記録部Aと、印刷部Bと、媒体収容部Cと、収容部Dと、回動ユニットFとを備えている。
【0092】
(1)情報記録部A
情報記録部Aは、磁気記録部24と、非接触式IC記録部23と、接触式IC記録部27とで構成されている。
【0093】
(2)媒体収容部C
媒体収容部Cは、複数枚のカードCaを立位姿勢で収納しており、その先端には分離開口7が形成されており、ピックアップローラ19で最前列のカードCaから順次繰り出して供給する。
【0094】
(3)回動ユニットF
繰り出されたブランクのカードCaは、搬入ローラ22で回動ユニットFに送られる。回動ユニットFはハウジング2に回動可能に軸支された回動フレーム80と、回転フレーム80に回転自在に支持された2つのローラ対20、21で構成されている。
【0095】
回動ユニットFが回動する外周には、上述した磁気記録部24、非接触式IC記録部23および接触式IC記録部27が配置されている。そして、ローラ対20、21は、これらの情報記録部23、24、27のいずれかに向けてカードCaを搬送するための媒体搬送路65を形成し、これらの記録部でカードCaには磁気的若しくは電気的にデータが書き込まれる。なお、回動ユニットFの近傍には、環境温度(外気温)を検出するサーミスタ等の温度センサThが配置されており、この温度センサThで検出された環境温度を基に印刷部Bに設けられたサーマルヘッドやヒートローラの温度補正が行われる。
【0096】
(4)印刷部B
印刷部Bは、カードCaの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成するもので、媒体搬送路65の延長上にカードCaを搬送するための媒体搬送経路P1が設けられている。また、媒体搬送経路P1にはカードCaを搬送する搬送ローラ29、30が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0097】
印刷部Bはフィルム搬送機構10を有しており、このフィルム搬送機構10により搬送される転写フィルム46の画像形成領域に対して、サーマルヘッド40でインクリボン41の各色画像を重ねて形成する画像形成部B1と、続いてヒートローラ33により媒体搬送経路P1上のカードCaの表面に転写フィルム46に形成された画像を転写する転写部B2とを備えている。
【0098】
印刷部Bの下流側には、媒体搬送経路P1の延長線上に、収容スタッカ60に印刷後のカードCaを搬送するための媒体搬送経路P2が設けられている。媒体搬送経路P2にはカードCaを搬送する搬送ローラ対37、38が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0099】
搬送ローラ対37と搬送ローラ対38の間にはデカール機構12が配置されている。デカール機構12は、搬送ローラ対37、38で両端部が挟持(ニップ)されたカードCaの中央部を下方に凸状のデカールユニット33で押圧して位置固定された凹状のデカールユニット34との間でカードCaを挟むことにより、ヒートローラ33による熱転写でカードCaに生じた反りを矯正する。デカール機構12は偏心カム36を含む構成によりデカールユニット33が
図12に示す上下方向で進退可能に構成されている。
【0100】
(5)収容部D
収容部Dは、印刷部Bから送られたカードCaを収容スタッカ60に収容するように構成されている。収容スタッカ60は、昇降機構61により
図11に示す下方に移動するように構成されている。
【0101】
(6)印刷部Bの詳細
転写フィルム46は、カードCaの幅方向より若干大きな幅を有する帯状を呈しており、インクリボン41のインクを受容するインク受容層、インク受容層の表面を保護する透明の保護層、加熱によりインク受容層および保護層を一体に剥離を促進するための剥離層、基材(ベースフィルム)の順で積層形成された透明媒体である。転写フィルム46の終端部にはエンドマークとして銀テープが配されている。
【0102】
本実施形態で使用される転写フィルム46には、印刷方向(サーマルヘッド40の副走査方向)と交差する幅方向(サーマルヘッド40の主走査方向)を横断するように形成され画像形成開始位置を設定するためのマーク(黒色)が一定間隔で形成されており、これらのマーク間が画像形成領域とされている。
【0103】
転写フィルム46は、モータMr2、Mr4の駆動により転写フィルムカセット内の供給ロール47と巻取ロール48にそれぞれ巻き取りないし繰り出される。すなわち、転写フィルムカセット内には、供給ロール47の中心に供給スプール47A、巻取ロール48の中心に巻取スプール48Aが配されており、供給スプール47Aには図示しないギアを介してモータMr2の回転駆動力が伝達され、巻取スプール48Aには図示しないギアを介してモータMr4の回転駆動力が伝達される。モータMr2およびモータMr4には正逆転可能なDCモータが用いられている。
【0104】
なお、本実施形態では、転写処理前の転写フィルム46が供給スプール47Aに巻回されており、使用済み(転写部B2で転写処理された部分)の転写フィルム46が巻取スプール48Aに巻回されている。このため、転写フィルム46に対して画像形成処理および転写処理を行う際は、供給スプール47Aから転写フィルム46を巻き取スプール48A側に一旦繰出し、供給スプール47Aで転写フィルム46を巻き取りながら画像形成処理および転写処理を行う。
【0105】
フィルム搬送ローラ49は、転写フィルム46を搬送する主要な駆動ローラであり、このフィルム搬送ローラ49の駆動を制御することで転写フィルム46の搬送量および搬送停止位置が定まる。フィルム搬送ローラ49は正逆転可能なフィルム搬送モータMr5(ステッピングモータ)に連結されている。フィルム搬送ローラ49の駆動時にモータMr2、Mr4も駆動するが、供給ロール47、巻取ロール48のいずれか一方から繰り出された転写フィルム46をいずれか他方で巻き取り、搬送される転写フィルム46にテンションを付与するためのものでフィルム搬送の補助的機能を果たす。
【0106】
フィルム搬送ローラ49の周面には、ピンチローラ32aとピンチローラ32bとが配置されている。ピンチローラ32a、32bは、フィルム搬送ローラ49に対して進出および退避するよう移動可能に構成されており、
図11では、ピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49側に進出して、転写フィルム46がフィルム搬送ローラ49に巻き付けられた状態が示されている。これにより、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49の回転数に応じた距離の正確な搬送が行われる。
【0107】
従って、フィルム搬送機構10は、画像形成部B1と転写部B2との間に配された主要駆動ローラのフィルム搬送ローラ49を駆動させることにより、転写フィルム46を供給ロール47、画像形成部B1、転写部B2および巻取ロール48間で正逆搬送するとともに、画像形成部B1および転写部B2において転写フィルム46の画像形成領域および画像形成領域に形成された画像を適正位置に位置付ける(頭出し)機能を有している。また、巻取ロール48と画像形成部B1(サーマルヘッド40、プラテンローラ45)との間には、発光素子Leと受光素子Lrを有し上述した転写フィルム46に形成されたマークを検出するセンサSe2が配置されている。
【0108】
一方、インクリボン41はインクリボンカセット42に収納されており、このカセット42にインクリボン41を供給する供給ロール43とインクリボン41を巻き取る巻取ロール44との間で張架された状態で収容されている。巻取ロール44の中心には巻取スプール44A、供給ロール43の中心には供給スプール43Aが配されており、巻取スプール44AはモータMr1の駆動力で回転し、供給スプール43AはモータMr3の駆動力で回転する。モータMr1およびモータMr3には正逆転可能なDCモータが用いられている。
【0109】
インクリボン41は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)のカラーリボンパネルとBk(ブラック)リボンパネルとを長手方向に面順次に繰り返すことで構成されており、インクリボン41の終端部にはエンドマークとして透明テープが配されている。なお、Y、M、Cのカラーリボンパネルは上述した「光が透過可能な媒体」に該当し、Bkリボンパネルは「光が透過不能な媒体」に該当する。また、供給ロール43と画像形成部B1(サーマルヘッド40、プラテンローラ45)との間には、発光素子Le側からの光がBkリボンパネルにより受光素子Lr側で遮光されることでインクリボン41の位置検出を行い画像形成部B1へのインクリボン41の頭出しを行うためのセンサSe3が配置されている。なお、センサSe2、Se3は、
図1を参照して説明したセンサSeである。
【0110】
プラテンローラ45とサーマルヘッド40とは画像形成部B1を構成しており、プラテンローラ45に対向する位置にサーマルヘッド40が配置されている。画像形成時には、転写フィルム46およびインクリボン41を介してプラテンローラ45をサーマルヘッド40に圧接する。サーマルヘッド40は主走査方向に列設された複数の加熱素子を有しており、これらの加熱素子はヘッドコントロール用IC(図示せず)により印刷データに基づいて選択的に加熱制御され、インクリボン41を介して転写フィルム46に画像を形成する。その際、転写フィルム46とインクリボン41とは同速で同方向に搬送される。なお、冷却ファン39はサーマルヘッド40を冷却するためのものである。
【0111】
転写フィルム46への画像形成が終了したインクリボン41は、剥離コロ25と剥離部材28とで転写フィルム46から引き剥がされる。剥離部材28はインクリボンカセット42に固設されており、剥離コロ25は画像形成時に剥離部材28に当接して両者で転写フィルム46とインクリボン41とを挟持することで剥離が行われる。そして、剥離されたインクリボン41はモータMr1の駆動力で巻取ロール44に巻き取られ、転写フィルム46はフィルム搬送機構10により、プラテンローラ31とヒートローラ33とを有する転写部B2まで搬送される。
【0112】
転写部B2では、転写フィルム46はカードCaとともにヒートローラ33およびプラテンローラ31とで挟持されて、転写フィルム46の画像形成領域に形成された画像がカードCa表面に転写される。すなわち、転写時には、カードCaおよび転写フィルム46(の画像形成領域)を介してヒートローラ33をプラテンローラ31に圧接し、カードCaと転写フィルム46とを同速で同方向に搬送する。なお、ヒートローラ33は、転写フィルム46を介してプラテンローラ31に圧接・離間するように昇降機構(不図示)に取り付けられている。
【0113】
画像転写後の転写フィルム46は、ヒートローラ33と搬送ローラ対37を構成する従動ローラ(
図11の下側のローラ)との間に配置された剥離ピン79でカードCaから分離(剥離)され供給ロール47側に搬送される。一方、画像が転写されたカードCaは媒体搬送経路P2上を下流側のデカール機構12に向けて搬送される。
【0114】
図11では、供給スプール47A、巻取スプール48Aに転写フィルム46の供給ロール47、巻取ロール48(転写フィルムカセット)を装着した状態を示しているが、印刷装置200では、これに代えて、ホログラムフィルム(不図示)の供給ロール、巻取ロール(ホログラムカセット)を装着することも可能である。ホログラムフィルムを用いる場合には、収容スタッカ60に収容された画像形成済のカードCaをオペレータが再度媒体収容部Cに収容することで、画像形成済のカードCaが媒体収容部Cから回動ユニットFを経て転写部B2まで搬送され、転写部B2においてホログラムフィルムのホログラム画像が画像形成済のカードCa表面に転写される。なお、ホログラムフィルムの終端部には、転写フィルム46と同様に、エンドマークとして銀テープが配されている。
【0115】
また、上記では、Y、M、C、Bkリボンパネルを面順次に繰り返したカラー印刷用のインクリボン41を例示したが、本実施形態の印刷装置200は、Bkリボンパネルのみの単色インクリボンも使用可能であり、その場合にはカードCaには単色印刷がなされる。このような単色インクリボンの終端部にもエンドマークとして透明テープが配されている。
【0116】
(7)制御部および電源部
また、印刷装置200は、印刷装置200全体の動作制御を行う制御部(不図示)と、商用交流電源から各機構部および制御部等を駆動/作動可能な直流電源に変換する電源部(不図示)とを有している。
【0117】
制御部は、
図1を参照して説明したMCUで構成されている。上述した外部バスには、コンバータ等の他に、上位装置との通信を行うためのインターフェース、カードCaに画像を形成すべき印刷データやカードCaの磁気ストライプや収容ICに磁気的ないし電気的に記録すべき記録データ等を一時的に格納するメモリが接続されている。
【0118】
また、外部バスには、センサSe2、Se3のセンサ回路50(
図1参照)を含みフィルム搬送モータMr5、モータMr1〜Mr4のエンコーダからの信号を処理する信号処理部、各モータに駆動パルスや駆動電力を供給するモータドライバ等を含むアクチュエータ制御部、サーマルヘッド40を構成する加熱素子への熱エネルギを制御するためのサーマルヘッド制御部、オペパネ部を制御するための操作表示制御部および上述した情報記録部Aが接続されている。
【0119】
電源部は、制御部、サーマルヘッド40、ヒートローラ33、オペパネ部5および情報記録部A等に作動/駆動電源を供給している。
【0120】
2−2−2.動作
次に、本実施形態の印刷装置200によるカード発行動作について、MCUのCPUを主体として説明する(カード発行処理)。
【0121】
印刷装置200に電源が投入されると、ROMに格納されたプログラムおよびプログラムデータがRAMに展開され、CPUは、上述した各部を所定のホーム位置に移動させる初期設定処理を行う。この初期設定処理では、第1実施形態において
図10を参照して説明した識別ルーチンと同様の識別ルーチンにより、センサSe2を用いて媒体(フィルム)装着の有無および種類(転写フィルム46またはホログラムフィルム)の識別、並びに、センサSe3を用いて媒体(インクリボン)装着の有無および種類の識別も行われる。
【0122】
すなわち、CPUは、D出力ポートおよびDA出力ポートから信号を出力することでセンサSe2を加速間欠点灯させ、RAMに格納された(センサSe2に対応する)受光回路50bの出力電圧を順次参照して閾値電圧到達時間Ttを取得する。次に、CPUは、閾値電圧到達時間Ttが、Tt<7ms、7ms≦Tt<10ms、10ms≦Tt<15ms、Tt≧15msのいずれに該当するかを判断する。
【0123】
Tt<7msに該当する場合には、媒体なしと判定してオペパネ部でフィルムカセット(転写フィルム46またはホログラムフィルムのカセット)の装着要求表示を行い、7ms≦Tt<10msに該当する場合には、オペレータに確認させるために転写フィルム46が装着されている旨をオペパネ部に表示し、10ms≦Tt<15msに該当する場合には、同様にホログラムフィルムが装着されている旨をオペパネ部に表示する。なお、後述するカード発行処理において、ホログラムフィルムカセットが装着された状態で画像形成部A1においてサーマルヘッド40による画像形成が指示されたときは、警告音を出力して画像形成動作を保留する。
【0124】
一方、Tt≧15msに該当する場合には、転写フィルム46の画像形成領域を画定する黒マークか、転写フィルム46およびホログラムフィルムの終端部に配された銀テープかを判定するために、モータMr2、Mr4を駆動させ、転写フィルム46またはホログラムフィルムを、転写フィルム46の黒マークの幅を越える距離分、供給ロール47側または巻取ロール46側に搬送する。なお、初期設定処理の状態では、プラテンローラ45はサーマルヘッド40に、ピンチローラ32a、32bはフィルム搬送ローラ49の周面に、剥離コロ25も剥離部材28にそれぞれ圧接しておらず、モータMr2、Mr4の駆動のみで転写フィルム46またはホログラムフィルムの搬送が可能である。
【0125】
次いで、CPUは、再度、D出力ポートおよびDA出力ポートから信号を出力することでセンサSe2を加速間欠点灯させ、RAMに格納された受光回路50bの出力電圧を順次参照して閾値電圧到達時間Ttを取得し、閾値電圧到達時間TtがTt≧15msか否かを判断する。肯定判断のときは、転写フィルム46およびホログラムフィルムの終端部に配された銀テープと判定してオペパネ部でフィルムカセットの交換要求表示を行い、否定判断のときは、転写フィルム46と判定しオペパネ部にその旨表示する。なお、この判定後、必要に応じて転写フィルム46を元の位置に巻き戻したり、頭出し位置に搬送したりするようにしてもよい。
【0126】
CPUは、センサSe2による転写フィルム46またはホログラムフィルム装着の有無および種類の識別と並行してまたはその前後に、センサSe3によるインクリボン装着の有無および種類の識別を実行する。すなわち、D出力ポートおよびDA出力ポートから信号を出力することでセンサSe3を加速間欠点灯させ、RAMに格納された(センサSe3に対応する)受光回路50bの出力電圧を順次参照して閾値電圧到達時間Ttを取得する。
【0127】
CPUは、まず、閾値電圧到達時間TtがTt≧15msか否かを判断する。肯定判断のときは、カラーインクリボン(インクリボン41)のBkリボンパネルか、単色インクリボンかを判定するために、モータMr1、Mr3を駆動させ、インクリボン41または単色インクリボンを、インクリボン41のBkリボンパネルの幅を越える距離分、巻取ロール44側に搬送する。
【0128】
次に、CPUは、再度、D出力ポートおよびDA出力ポートから信号を出力することでセンサSe3を加速間欠点灯させ、RAMに格納された受光回路50bの出力電圧を順次参照して閾値電圧到達時間Ttを取得し、閾値電圧到達時間TtがTt≧15msか否かを判断する。肯定判断のときは、単色インクリボンが装着されている旨をオペパネ部に表示する。なお、後述するカード発行処理において、単色インクリボンが装着された状態で画像形成部A1においてサーマルヘッド40によるカラー画像形成が指示されたときは、警告音を出力して再度の指示があるまで画像形成動作を保留する。
【0129】
一方、否定判断のときは(Tt<15ms)、10ms≦Tt<15msに該当するかを判断し、この判断が肯定のときは、インクリボン41が装着されている旨をオペパネ部に表示する。必要に応じてインクリボン41または単色インクリボンを元の位置に巻き戻したり、頭出し位置まで搬送したりするようにしてもよい。なお、後述するカード発行処理において、インクリボン41が装着された状態で画像形成部A1においてサーマルヘッド40による単色画像形成が指示されたときは、警告音を出力して再度の指示があるまで画像形成動作を保留する。
【0130】
10ms≦Tt<15msに該当するか否かの判断が否定のときは、7ms≦Tt<10msに該当するかを判断し、肯定判断のときは、インクリボン41または単色インクリボンの終端部に配されたエンドマークの透明テープと判定してオペパネ部にインクリボンカセット42または単色インクリボンカセットの交換要求を表示する。
【0131】
一方、7ms≦Tt<10msに該当するが否定判断のとき(Tt<7ms)は、媒体なしと判定してオペパネ部にインクリボンカセットの装着要求表示を行う。これにより、初期設定処理でのフィルムおよびインクリボンの有無および種類の識別ルーチンは終了する。
【0132】
初期設定処理終了後、カード発行処理に先立って、印刷装置200は、上位装置から印刷データ等を受信、すなわち、上位装置から一面(片面印刷の場合)または一面および他面(両面印刷の場合)側の印刷データ(カラー印刷の場合はBkの印刷データおよびY、M、Cの色成分印刷データ、単色印刷の場合はBkの印刷データ)並びに磁気ないし電気的記録データを受信しメモリに格納する。CPUは、再度、センサSe2、Se3を用いて識別ルーチンを実行する。この理由については第1実施形態で説明したとおりである。なお、以下では、カラー印刷をする場合について説明する。CPUは、インクリボンRの有無および種類を識別した後、センサSe2、Se3の発光素子Leの発光を通常点灯に切り換えて、インクリボン41または単色インクリボンの終端部に配されたエンドマーク(透明テープ)を監視する。
【0133】
カード発行処理では、CPUは、まず、画像形成部B1で、転写フィルム46に一面(例えば表面)側の画像(鏡像)を形成する一次転写処理(画像形成処理)を行う。すなわち、メモリに格納されたY、M、Cの色成分印刷データおよびBkの印刷データに基づいて画像形成部B1のサーマルヘッド40を制御することで、転写フィルム46の画像形成領域にインクリボン41のY、M、CおよびBkインクによる画像を重ねて形成する。
【0134】
CPUは、サーマルヘッド制御部を介して印刷データを1ラインごとにサーマルヘッド40側に出力することで、主走査方向に列設された発熱素子を選択的に加熱させてサーマルヘッド40を駆動する。なお、CPUは、この一次転写処理に先立って、サーマルヘッド制御部105を介してサーマルヘッド40を構成する加熱素子を予備加熱(インクリボン41のインクが転写フィルム46の画像形成領域に転写される温度未満の所定温度まで加熱素子を加熱)するように制御する。
【0135】
この一次転写処理と並行して、CPUは、媒体収容部CからカードCaを繰り出し、磁気ないし電気的記録データに基づいて、情報記録部Aを構成する磁気記録部24、非接触式IC記録部23、接触式IC記録部27のうちいずれかまたは複数でカードCaの対する記録処理を行った後、カードCaを転写部B2に搬送する。
【0136】
次に、転写部B2において、転写フィルム46の転写面に形成された画像をカードCaの一面に転写する二次転写処理を行う。なお、CPUは、この二次転写処理に先だって、ヒートローラ33を構成するヒータの温度が所定温度に到達しているように制御するとともに、カードCaと転写フィルム46の転写面に形成された画像とが同期して転写部B2に到着するように制御する。
【0137】
二次転写処理後の転写フィルム46は、ヒートローラ33と搬送ローラ対37との間に配置された剥離ピン79でカードCaから分離(剥離)され供給ロール47側に搬送される。一方、画像が転写されたカードCaは媒体搬送経路P2上を下流側のデカール機構12に向けて搬送される。CPUは、図示しない搬送モータをなおも駆動させカードCaの後端が剥離ピン79を通過した後に図示しない搬送モータの駆動を停止させる。これにより、カードCaは両端部が搬送ローラ対37、38に挟持された状態となる。
【0138】
次いで、CPUは、偏心カム36を回動させデカールユニット33をデカールユニット34に向けて押し下げカードCaをデカールユニット33、34で挟むことでカードCaに生じた反りを矯正するデカール処理を実行する。次に、両面印刷か否かを判断し、否定判断のとき(片面印刷のとき)は収容スタッカ60に向けてカードCaを排出してカード発行処理を終了し、肯定判断のときは、画像形成部B1で、転写フィルム46の次の画像形成領域に、他面(例えば裏面)側の画像(鏡像)を形成する一次転写処理を行った後、後述する二次転写処理(他面側)を実行する。
【0139】
CPUは、一次転写処理(他面側)と並行して、搬送ローラ対37、38に挟持されデカール機構12に位置付けられているカードCaを媒体搬送経路P2、P1を経由して回動ユニットFに搬送し、両端部をローラ対20、21で挟持されたカードCaを180°回動(表裏面を反転)させる。次に、転写部B2において、転写フィルム46の次の画像形成領域に形成された画像をカードCaの他面側に転写する二次転写処理を行う。
【0140】
次いで、偏心カム36を回動させデカールユニット33をデカールユニット34に向けて押し下げカードCaをデカールユニット33、34で挟むことでカードCaに生じた反りを矯正するデカール処理を実行する。そして、収容スタッカ60に向けてカードCaを排出してカード発行処理を終了する。
【0141】
2−3.第3実施形態
第3の実施の形態は、本発明を、画像形成装置とシート後処理装置とで構成された画像形成システムに適用し、識別対象媒体をシートとしたものである。なお、本実施形態では、画像形成装置とシート後処理装置とで画像形成装置で取得した媒体識別情報が共有される。
【0142】
2−3−1.構成
[システム構成]
本実施形態の画像形成システム300は、シートに画像を形成する画像形成装置310と、画像が形成されたシートに後処理を施すシート後処理装置320とで構成されている。
【0143】
[画像形成装置]
(1)機構部
図12に示すように、画像形成装置310は、画像形成ユニットA1とスキャナユニットA2とフィーダユニットA3とで構成されている。画像形成ユニットA1は、装置ハウジング1に設置面(例えば床面)に設置するための据付脚25が設けられており、装置ハウジング1内に給紙部2と画像形成部3と排紙部4とが内蔵されている。なお、
図12に示す画像形成ユニットA1は静電印刷機構を採用したものである。
【0144】
給紙部2は、複数サイズのシートを収容するカセット2a〜2cで構成され、指定されたサイズのシートを給紙経路6に繰り出す。このため、装置ハウジング1にはカセット2a〜2cが着脱可能に配置され、各カセットには内部のシートを1枚ずつ分離する分離機構と、シートを繰り出すピックアップローラが内蔵されている。給紙経路6には、カセット2a〜2cから供給されるシートを下流側に給送する搬送ローラ7と、経路端部に各シートを先端揃えするレジストローラ対8が設けられている。
【0145】
なお、給紙経路6には大容量カセット2dと手差しトレイ2eが連結されており、大容量カセット2dはオプションユニットとして大量に消費するサイズのシートを収容するように構成され、手差しトレイ2eは分離給送が困難な厚紙、OHPシート等の特殊シートが供給可能に構成されている。レジストローラ対8の近傍かつ上流側にはセンサSe4が配置されている。このセンサSe4は
図1を参照して説明したセンサSeであり、後述する画像形成部3で画像が形成される前のシートの有無および種類を識別するために、画像形成部3よりシート搬送方向上流側に配置されている。手差しトレイ2eから供給されるシートの搬送路は給紙経路6と合流している。
【0146】
画像形成部3は、ドラムやベルト等の感光体9と、感光体9に画像データに従ってビームを照射する発光器10と、現像器11(ディベロッパ)と、クリーナ(不図示)とが感光体9の周囲に配置されている。
図12はモノクロ印刷機構を示し、感光体9に発光器10で光学的に潜像を形成し、この潜像に現像器11でトナーインクを付着する。
【0147】
そして、感光体9への画像形成タイミングに合わせて給紙経路6からシートを画像形成部3に送り転写チャージャ12でシート上に画像を転写し、排紙経路14に配置された定着ユニット(ローラ)13で定着する。排紙経路14には排紙ローラ15と排紙口16とが配置されており、後述するシート後処理装置320にシートを搬送する。
【0148】
スキャナユニットA2は、原稿を載置するためのプラテン17と、プラテン17に沿って往復動するキャリッジ18と、キャリッジ18に搭載された光源と、プラテン17上の原稿からの反射光を光電変換部19に案内する縮小光学系20(ミラー、レンズの組み合わせ)と、走行プラテン21とで構成されている。光電変換部19は光電変換した画像データを制御部のメモリに出力する。なお、走行プラテン20はフィーダユニットA3でシートが搬送される場合に用いられ、フィーダユニットA3で搬送中のシートの画像を、所定の読取位置に位置付けられたキャリッジ18と縮小光学系20を介して光電変換部19で読み取る。
【0149】
フィーダユニットA3は給紙トレイ22と、給紙トレイ22から送り出したシートを走行プラテン21に案内する給紙経路23と、走行プラテン21を介して読み取られた原稿を収容する排紙トレイ24で構成されている。
【0150】
また、画像形成装置310は、画像形成装置310の状態等を表示するとともに、オペレータが所望するシートサイズ、給紙すべき給紙カセット、部数等の指定(入力)が可能なタッチパネル(不図示)を有している。なお、画像形成ユニットA1は、上述の静電印刷機構に限らず、オフセット印刷機構、インクジェット印刷機構、インクリボン転写印刷機構(熱転写リボン印刷、昇華型リボン印刷など)等の印刷機構も採用可能である。
【0151】
(2)制御部および電源部
さらに、画像形成装置310は、画像形成装置310の全体を制御するとともに、シート後処理装置320の制御部と通信する制御部(以下、シート後処理装置320の制御部と区別するため本体制御部という。)および本体制御部や各構成部等を駆動/作動可能な直流電源に変換する電源部(不図示)を備えている。
【0152】
本体制御部は、CPU、ROM、RAM等を内蔵するマイクロプロセッサユニット(以下、MPUと略称する。)で構成されている。MPUは、外部バスを介して、画像形成部3の動作を制御する画像形成制御部、給紙部2の動作を制御する給紙制御部、上述したタッチパネルを制御するタッチパネル制御部に接続されている。
【0153】
また、MPUは、給紙経路6、排紙経路14およびシートの両面に画像を形成するために給紙経路6と排紙経路14との間を結ぶデュープレックス経路等に配された複数のセンサのセンサ回路に接続されている。さらに、MPUは、LAN接続を可能とする通信制御部、バッファとして機能する大容量メモリや、不図示のインターフェースを介して上述したスキャナユニットA2やフィーダユニットA3にも接続されている。
【0154】
[シート後処理装置]
(1)機構部
図12に示すように、シート後処理装置320は、装置ハウジング27に据付脚が設けられており、シート後処理装置320の搬入口26(
図13参照)は画像形成装置310の排紙口16に連結される位置に形成されている。また、シート後処理装置320は、上から順に、装置ハウジング27から突出するように設けられた第3トレイ71、第1トレイ49、第2トレイ61を有している。
【0155】
<シート搬送路>
図13は、シート後処理装置320のシート搬送路を模式的に示したものである。
図13に示すように、シート後処理装置320は、装置ハウジング27内を略水平方向に横断する直線状のシート搬入経路28を有している。シート搬入経路28はシート搬送路の基幹経路をなしており、
図13ではシート搬入経路28を太線で示している。
【0156】
シート搬入経路28には、一側端に上述した搬入口26が、他側端に排紙口35が形成されている。搬入口26の下流側には、シートをシート後処理装置320内に搬入するための搬入ローラ29が配置されており、排紙口35の上流側には正逆転可能な排紙ローラ36が配置されている。
【0157】
シート搬入経路28は搬入ローラ29の下流側に第1分岐点D1を有しており、この第1分岐点D1を始点としてシート搬入経路28から分岐した第3搬送パス30が形成されている。また、シート搬入経路28は第1分岐点D1の下流側に第2分岐点D2を有しており、この第2分岐点D2を始点としてシート搬入経路28から分岐した第2搬送パス32が形成されている。さらに、シート搬入経路28の排紙口35の延長線上には、シート搬入経路28を搬送されてきたシートを第1トレイ49側にさらに搬送するための第1搬送パス31が形成されている。
【0158】
第1分岐点D1、第2分岐点D2には、それぞれ第1、第2フラッパガイド(不図示)が配置されている。第1、第2フラッパガイドは、支持軸を中心にその先端部が回動してシート搬送方向を変更(選択)可能な構成で、それぞれの支持軸は進退可能なプランジャを有する電磁ソレノイドに連結されている。
【0159】
<第1搬送パス31>
上述したように排紙ローラ36は正逆転可能なため、排紙ローラ36を正転駆動させることで第1搬送パス31を介してシートを第1トレイ49側に搬送したり、排紙ローラ36を逆転駆動させることでシートをスイッチバック搬送してシート後端を上述したシート搬入経路28の第2分岐点D2に向けて逆搬送することが可能である。さらに、第1搬送パス31は装置ハウジング27のトレイ側端部に相当する位置に第3分岐点D3を有しており、この分岐点D3を始点として第1搬送パス31から分岐し斜めに傾斜した第2スイッチバックパス31bが形成されている。
【0160】
なお、
図13では、第1および第2スイッチバックパス31a、31bを顕在化するために、第1トレイ49に向けてシートを搬送する経路を第1搬送パス31、シートをスイッチバック搬送する経路を第1スイッチバックパス31a、第3分岐点D3を介してシートをスイッチバック搬送する経路を第2スイッチバックパス31bとして示しているが、第1スイッチバックパス31aの一部はシート搬入経路28と重複し、第2スイッチバックパス31bは第1搬送パス31と一体の経路である。上述した第2分岐点D2は第1スイッチバックパス31aのパス端に設けられている。
【0161】
第2スイッチバックパス31bには、シートを積載・整合するための処理トレイ(不図示)と、処理トレイ上で束状に積載されたシート(シート束)に綴じ処理を施すステープラユニット(不図示)とが配置されている。ステープラユニットで綴じ処理が施されたシート束は第2スイッチバックパス31bを逆搬送されて第1トレイ49上に搬送される。
【0162】
<第2搬送パス32>
第2搬送パス32には、搬送されてきたシートを部揃え集積し、中央を綴じ処理して内折りする製本処理部(不図示)が配置されている。製本処理部で製本処理されたシート(束)は、第2トレイ61に排出される。なお、
図12では、製本処理の頻度が比較的低いことから、第2トレイ61が折り畳まれた状態を示している。
【0163】
<第3搬送パス30>
第3搬送パス30はその終点に排紙口72を有しており、この排紙口72を介してシートが第3トレイ71上に排出される。第3搬送パス30の中間部には搬送ローラ(不図示)が配置されている。なお、第3搬送パス30はストレート排紙専用のシート搬送路である。
【0164】
<制御部>
また、シート後処理装置320は、シート後処理装置320の全体を制御する制御部(以下、本体制御部と区別するため後処理制御部という。)を備えている。後処理制御部は、CPU、ROM、RAM等を内蔵するMCUを有している。MCUはアクチュエータ制御部に接続されており、アクチュエータ制御部は搬送モータや電磁ソレノイド等の各種アクチュエータに接続されている。
【0165】
なお、後処理制御部のMCUは本体制御部のMPUと通信し、MPUから後処理モード情報やシートサイズ情報等のシート後処理装置320での制御処理に必要な情報を受け取る。
【0166】
2−3−2.動作
[画像形成装置]
オペレータによりタッチパネル上のスタートボタンが押下されると、MPUは、タッチパネル制御部を介してタッチパネルから入力された情報を取り込み、スキャナユニットA2に原稿を読み取らせその画像データをメモリに出力させる。そして、後処理制御部のMCUに上述した後処理モード情報を送信する。なお、後処理モード情報(シート後処理装置320による処理モードの情報)は、オペレータにより画像形成装置310のタッチパネルから入力される。
【0167】
次いで、MPUは、給紙制御部を介して、オペレータが所望する給紙カセットのピックアップローラを回転させてシートを繰り出すとともに、給紙経路6上の搬送ローラ7を駆動させる。これにより、繰り出されたシートは給紙経路6をレジストローラ対8に向けて搬送される。
【0168】
一方、上述した特殊シートは、手差しトレイ2eの下流側に設けられた搬送ローラを所定量回転することでレジストローラ対8まで搬送される。上述したように従来の光学センサでは薄紙(光が透過可能な媒体)を基準とするとOHPシート(透明媒体)を検出できないことから、MPUは、例えば、この搬送ローラの上流側(例えば、手差しトレイ2e上や手差しトレイ2eからの給紙口等)に配されたリードスイッチ等の接触センサ(不図示)が特殊シートを検出すると搬送ローラを回転させる。
【0169】
レジストローラ対8の上流側のシートはループするため、MPUは、レジスト動作が終わってレジストローラ対8を回転させる前のシート搬送が止まった瞬間にセンサSe4の点灯を通常点灯から加速間欠点灯に切り換えるようにセンサ回路50を制御する。または、これに代えて、レジストローラ対8の下流側にセンサSe4を配置して、レジストローラ対8を所定量回転させた後にシート搬送を停止させ、そのときにセンサSe4の点灯を通常点灯から加速間欠点灯に切り換えるようにセンサ回路50を制御するようにしてもよい。
【0170】
MPUは、D出力ポートおよびDA出力ポートから信号を出力することでセンサSe4を加速間欠点灯させ、RAMに格納された(センサSe4に対応する)受光回路50bの出力電圧を順次参照して閾値電圧到達時間Ttを取得し、上述した識別基準に従って、媒体なし(Tt<7ms)、OHPシート(7ms≦Tt<10msの範囲に入る透明媒体)、薄紙(10ms≦Tt<15msの範囲に入る光が透過可能な媒体)、厚紙(Tt≧15msの範囲となる光が透過不能な媒体)のいずれかを識別し、識別結果(媒体なしの場合を除く。)を画像形成制御部に報知するとともに例えばデフォルト値でRAMに格納する。なお、MPUは、媒体なしと判定したときは、ジャム(紙詰まり)が生じている旨をタッチパネルに表示する。そして、次のシート先端検出に備え、Se4の点灯を加速間欠点灯から通常点灯に戻す。なお、上記では手差しトレイ2eに載置されたシートを検出するために、従来例の接触センサを例示したが、これに代えて
図1を参照して説明したセンサを用いるようにしてよい。
【0171】
MPUは、上記所定時間経過後、レジストローラ対8や他の搬送ローラを回転駆動させるとともに、画像形成制御部を介して画像形成部3を構成する各部を作動させシートに画像を形成して排紙経路14を経て排紙口16から排出させる。画像形成制御部はMPUから報知された媒体の種類に従って画像形成部3による画像形成を制御する。MPUは、画像形成部3で画像を形成すると、シート後処理装置320のMCUにシートサイズ情報およびシートの種類情報(RAMに格納したデフォルト値の情報)を送信する。
【0172】
なお、MPUは画像形成部3の動作に先立って、オペレータの指定に従ってフィーダユニットA3やスキャナユニットA2を作動させて原稿の画像データを取得し(メモリに格納し)、取得した画像データに従って画像形成部3がシートに画像を形成するように画像形成制御部を制御する。
【0173】
[シート後処理装置]
一方、後処理制御部のMCUは、本体制御部のMPUから上述した後処理モード情報等を受信すると、これらの情報に従ってシートの後処理を実行する。これにより、例えば、綴じ処理等が一般に行われないOHPシートが第3トレイ71上に排出されたり、厚紙はその湾曲を防止するために第1トレイ49上に排出されたり、通常シートの薄紙(白媒体)は綴じ処理が施された後第1トレイ47上に、または製本処理が施されて第2トレイ61上に排出される。
【0174】
2−4.第4実施形態
第4の実施の形態は、本発明を給紙装置の一種であるインサータ装置に適用し、識別対象媒体を第3実施形態と同じシートとしたものである。なお、本実施形態のインサータ装置の詳細は特許文献2に開示されているため、以下では簡単に説明する。また、本実施形態のインサータ装置は、例えば、
図12に示した(第3実施形態の)シート後処理装置320上に載置され、シート後処理装置320とともに画像形成システム300の1周辺機器を構成する。
【0175】
2−4−1.構成
<機構部>
図14に示すように、本実施形態のインサータ装置400は、上下方向に設けられた給紙トレイ1および給紙トレイ2と、給紙トレイ1からシートを給紙する給紙部3と、給紙トレイ2からシートを給紙する給紙部4と、給紙トレイ1上のシートを1枚ずつ給紙する給紙経路5と、給紙トレイ2上のシートを1枚ずつ給紙する給紙経路6と、給紙経路5と給紙経路6の合流位置7の下流側となる送り経路8とで構成されている。
【0176】
なお、
図13に示すように、シート後処理装置320の装置ハウジング27には搬入口73が形成されている。搬入口73には搬入パス33が連設されており、搬入パス33はシート搬送経路28上に形成された合流点Jでシート搬送経路28と合流している。上述した第3実施形態では搬入口73は装置ハウジング27の一部を構成するカバーで覆われているが、本実施形態ではこのカバーが外されインサータ装置400の送り経路8とシート後処理装置320の搬入口73が連通している。挿入パス33には不図示の搬入ローラが配置されている。
【0177】
図14に示すように、給紙トレイ1には主に画像形成装置310(
図12参照)で画像形成されたシートの間に挿入される間紙などの小サイズシートが載置され、給紙トレイ2には主に製本用の表紙となる大サイズシートが載置される。給紙トレイ1は、固定して取り付けられてシートの後端側を支持する給紙トレイ1aとシートの先端側を支持するとともにシートの先端側を繰り出し位置に昇降させる昇降トレイ1bで構成され、また給紙トレイ2も同様にシートの後端側を支持する給紙トレイ2aとシートの先端側を支持するとともにシートの先端側を繰り出し位置に昇降させる昇降トレイ2bで構成されている。
【0178】
給紙トレイ2には、載置されたシートの給紙方向と交差する幅方向の両端部をそれぞれ規制し給紙時の原稿のスキューを防止するサイドガイド20対が配設されている。また、給紙トレイ2の背面側には、一対のサイドガイド20のそれぞれが連結される2つラック(不図示)と、この2つのラックが噛合するピニオン(不図示)が設けられており、サイドガイド20はラックとピニオンによって連動して移動するように構成されている。
【0179】
サイドガイド20の給紙方向上流側の上部にはシートの上面を規制する上面規制片21が設けられている。上面規制片21は、シートの側縁規制面からシート載置する方向に突き出した折り曲げ片で構成され、載置されたシートの上面を規制する上面規制面21aを備えている。また、上面規制面21aの上流側には、給紙方向上流側に向かって上方に傾斜する傾斜案内面21bが一体形成されている。給紙トレイ2に載置されたシートの先端はストッパ壁24で規制される。
【0180】
さらに、給紙トレイ2には、給紙トレイ2上のシートの有無を検出するエンプティセンサS2が配置されている。エンプティセンサS2は昇降トレイ1bの給紙方向下流側の先端部に設けられており、シートが確実にストッパ壁24に突き当たる位置にセットされたか否かも検出する。
【0181】
一方、給紙トレイ1にも、給紙トレイ2と同様に、載置されたシートの給紙方向と直交する幅方向の両端部をそれぞれ規制するサイドガイド対10、載置されたシートの上面を規制する上面規制片11、給紙トレイ1上のシートの有無を検出するエンプティセンサS1が設けられている。なお、給紙トレイ1に載置されたシートの先端はストッパ壁14で規制される。
【0182】
また、上面規制片11は、上面規制片21と同様にシート載置領域側に向かって水平方向に突出形成されているが、上面規制片21がサイドガイド20の給紙方向上流側の上部に設けられているのに対し、上面規制片11はサイドガイド10の給紙方向下流側の上部に設けられている。なお、上面規制片11も、その給紙方向上流部を上向きに傾斜させて形成されている。
【0183】
給紙部3は、昇降トレイ1bによって上昇されたシートの先端側が接触してシートを繰り出す繰り出しローラ31と、この繰り出しローラ31で繰り出されたシートを給紙する給紙ローラ33およびこの給紙ローラ33に圧接されて給紙ローラ33の回転方向とは異なる戻し方向に回転する分離ローラ34と、この第1給紙・分離機構で1枚に分離され給送されるシートの先端を突き当てて整合した後に下流側に送るレジストローラ対35と、送り経路8に沿ってシートをシート後処理装置320(
図12参照)に案内する送りローラ対36とで構成されている。このため、給紙トレイ1に載置されたシートは給紙経路6、合流位置7、送り経路8を経てシート後処理装置320の搬入口73(
図13参照)に搬入される。
【0184】
一方、給紙部4は、昇降トレイ2bによって上昇されたシートの先端側が接触してシートを繰り出す繰り出しローラ41と、この繰り出しローラ41で繰り出されたシートを給紙する給紙ローラ43およびこの給紙ローラ43に圧接されて給紙ローラ43の回転方向とは異なる戻し方向に回転する分離ローラ44と、この給紙・分離機構で1枚に分離され給送されるシートの先端を突き当てて整合した後に、シート後処理装置320に向けて送り経路8に沿ってシートを送るレジストローラ対45とで構成されている。このため、給紙トレイ2に載置されたシートは給紙経路5、合流位置7、送り経路8を経てシート後処理装置320の搬入口73に搬入される。
【0185】
レジストローラ対35の手前には、給紙されるシートの搬送端を検出するとともにシートの有無および種類を識別するセンサSe5が配されており、レジストローラ対45の手前には、給紙されるシートの搬送端を検出するとともにシートの有無および種類を識別するセンサSe6が配されている。すなわち、センサSe5、Se6は
図1を参照して説明したセンサSeである。
【0186】
<制御部>
また、インサータ装置400はMCUで構成された制御部を備えている。MCUは、
図1を参照して説明したMCUで構成されている。上述した外部バスには、コンバータ等の他に、センサS1、S2およびセンサSe5、Se6のセンサ回路等を纏めたセンサ制御部、搬送モータの動作を制御するドライバ、インターフェースを介してシート後処理装置320と通信する通信部が接続されている。なお、ドライバは搬送モータに接続されている。
【0187】
2−4−2.動作
インサータ装置400の基本動作は、上述したように、給紙トレイ1に載置されたシートや給紙トレイ2に載置されたシートを、送り経路8を介してシート後処理装置320(の搬入口73)に搬送するものである。このため、以下では、本発明との関係で特徴的な動作について説明する。
【0188】
給紙トレイ1からシートが供給され、給紙経路6に配されたレジストローラ対35にシート先端が突き当り、シートが止まった状態で、MCU(CPU)はセンサSe5を加速間欠点灯させる。また、給紙トレイ2からシートが供給され、給紙経路5に配されたレジストローラ対45にシート先端が突き当り、シートが止まった状態で、MCU(CPU)はセンサSe6を加速間欠点灯させる。
【0189】
なお、第3実施形態で説明したと同様に、レジストローラ対35、45の上流側のシートはループするので、レジスト動作が終わってレジストローラ対35、45を回転させる前のシート搬送が止まった瞬間にセンサSe5、Se6を加速間欠点灯させる。または、レジストローラ対35、36の下流側にセンサSe5、Se6を配置して、レジストローラ対35、45を所定量回転させた後にシート搬送を停止させ、そのときにセンサSe5、Se6を加速間欠点灯させるようにしてもよい。
【0190】
CPUは、閾値電圧到達時間Ttが10ms≦Tt<15msの範囲なら「光が透過できる媒体」となり薄紙(例えば、間紙)判定、Tt≧15msなら「光が透過できない媒体」となり厚紙(例えば、製本用の表紙)判定を行うことによって、シートの有無および種類を識別する。また、上述した第3実施形態と同様に、Tt<7msなら「媒体無し」となりジャム判定、7ms≦Tt<10msの範囲なら「透明媒体」となりOHPシート判定等を行うようにしてもよい。
【0191】
シートの(有無および)種類を識別した後、CPUはSe5、Se6を加速間欠点灯から通常点灯に切り換える。これにより、OHPシート(透明媒体)以外のシートでは通常点灯とすることでシート後端を検出し排出確認をすることができる。
【0192】
3.効果等
上記実施形態の装置は、
図1に示したように、センサSe、センサ回路50、MCU(またはMPU)を備えた媒体識別装置を有している。MCUのCPUは、間欠点灯で発光素子Leの単位時間当たりの発光量が変化するように発光回路50aを制御し、受光回路50bから出力される出力電圧が閾値電圧Vtに到達するまでの閾値電圧到達時間Ttに応じて媒体を識別する。このため、従来技術では識別が困難であった「媒体なし」、「透明媒体」および「光が透過できる媒体」(媒体の有無および種類)を精度よく識別できる。
【0193】
また、センサSe、センサ回路50、MCUの構成には、従来のものを用いることができる。このため、コストを低減させることができる。さらに、従来のものを用いることができることから、発光素子Leの加速間欠点灯と通常点灯(連続点灯)とを切り換えることで、従来のセンサ構成に新たな媒体識別機能を付与することができる。
【0194】
さらに、上記実施形態に例示したように、本発明は種々の媒体、および、当該媒体を用いる種々の装置に適用可能である。
【0195】
なお、上記実施形態では、説明を簡潔にするために、画像形成装置の分野を中心として具体例を挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、一般にセンサSeが用いられる装置に適用可能である。