特許第6802643号(P6802643)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

特許6802643研究室サンプル配送システムを動作させる方法、研究室サンプル配送システム、および研究室自動化システム
<>
  • 特許6802643-研究室サンプル配送システムを動作させる方法、研究室サンプル配送システム、および研究室自動化システム 図000002
  • 特許6802643-研究室サンプル配送システムを動作させる方法、研究室サンプル配送システム、および研究室自動化システム 図000003
  • 特許6802643-研究室サンプル配送システムを動作させる方法、研究室サンプル配送システム、および研究室自動化システム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802643
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】研究室サンプル配送システムを動作させる方法、研究室サンプル配送システム、および研究室自動化システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20201207BHJP
   B65G 54/02 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   G01N35/00 E
   G01N35/00 Z
   B65G54/02
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-98671(P2016-98671)
(22)【出願日】2016年5月17日
(65)【公開番号】特開2016-218060(P2016-218060A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2019年3月26日
(31)【優先権主張番号】15168780.3
(32)【優先日】2015年5月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(74)【代理人】
【識別番号】100168594
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・フーバー
(72)【発明者】
【氏名】アヒム・ジンツ
(72)【発明者】
【氏名】ナミタ・マリカルジュナイア
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・デニンガー
(72)【発明者】
【氏名】モハンマドレザ・マムディマネーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ティモ・フライッシュマン
(72)【発明者】
【氏名】ドメニク・イェンス
【審査官】 野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−502525(JP,A)
【文献】 特開2014−186694(JP,A)
【文献】 特開2012−037346(JP,A)
【文献】 特開2014−066640(JP,A)
【文献】 特表2015−503089(JP,A)
【文献】 特表2013−525232(JP,A)
【文献】 特開2011−013086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
B65G 54/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研究室サンプル配送システム(100)を動作させる方法であって、前記研究室サンプル配送システム(100)は、
所定の数のサンプル容器キャリア(140)であって、前記サンプル容器キャリア(140)は1つまたは複数のサンプル容器(145)を保持するように構成され、前記サンプル容器(145)は所定の数の研究室ステーション(20、21、22)を用いて分析されるサンプルを収容する、所定の数のサンプル容器キャリア(140)と、
搬送面(110)であって、前記搬送面(110)は前記サンプル容器キャリア(140)を支持するように構成され、前記搬送面(110)には所定の数の移送位置(30、31、32)が配置され、前記移送位置(30、31、32)は対応する研究室ステーション(20、21、22)に割り当てられる、搬送面(110)と、
前記サンプル容器キャリア(140)を前記搬送面(110)上で移動させるように構成される、駆動手段(120)と
を備え、
前記方法は、
前記研究室サンプル配送システム(100)の初期化中に、前記移送位置(30、31、32)に応じて前記搬送面(110)上の経路(40、41、42)を事前計算するステップと、
前記研究室サンプル配送システム(100)の初期化後に、前記搬送面(110)上で前記事前計算された経路(40、41、42)に沿って前記サンプル容器キャリア(140)が移動するように、前記駆動手段(120)を制御するステップと
前記研究室サンプル配送システム(100)の初期化後に、前記研究室サンプル配送システム(100)の動作データを収集するステップと、
前記研究室サンプル配送システム(100)の次の初期化中に、前記動作データにさらに応じて前記経路(40、41、42)を事前計算するステップと、
含み、
前記動作データは、前記経路(40、41、42)上の交通量に関する情報を含む、
方法。
【請求項2】
前記経路(40、41、42)は、情報あり探索アルゴリズム使用して計算される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記経路(40、41、42)は、異なる経路(40、41、42)の間の交点の数が最小化されるように計算される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記研究室サンプル配送システム(100)の初期化中に、前記搬送面(110)上に配置されるバッファ領域(50、51、52)が前記研究室ステーション(20、21、22)に割り当てられ、前記研究室ステーション(20、21、22)を用いて分析されることを待つサンプルは前記バッファ領域(50、51、52)にバッファされる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記バッファ領域(50、51、52)は、前記事前計算された経路(40、41、42)が前記バッファ領域(50、51、52)に交差しないように割り当てられる、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
サンプル容器キャリア(140)は、前記移送位置(30、31、32)を越えて前記バッファ領域(50、51、52)に入れられ、また前記バッファ領域(50、51、52)から取り出される、
請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記搬送面(110)は、論理フィールド(111)に区分され、時間優先予約方式によって、事前計算された経路(40’、41’)上に配置される調整可能な個数の論理フィールド(111)が移動されるべきサンプル容器キャリア(140)のために予約され、他のサンプル容器キャリア(140)のためにより高い時間優先度で予約されている論理フィールドを含む経路上を移動するサンプル容器キャリア(140)は停止される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記経路(40、41、42)を事前計算するステップは、前記経路(40、41、42)に割り当てられるレーンの数が前記交通量に応じて決定されるステップを含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
サンプル、サンプル容器(145)、および/またはサンプル容器キャリア(140)は、前記移送位置(30、31、32)を使用して前記研究室ステーション(20、21、22)の間で移送される、
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記研究室サンプル配送システム(100)の初期化中に、前記経路(40、41、42)は前記移送位置(30、31、32)の間で事前計算される、
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
所定の数のサンプル容器キャリア(140)であって、前記サンプル容器キャリア(140)は1つまたは複数のサンプル容器(145)を保持するように構成され、前記サンプル容器(145)は所定の数の研究室ステーション(20、21、22)によって分析されるサンプルを収容する、所定の数のサンプル容器キャリア(140)と、
搬送面(110)であって、前記搬送面(110)は前記サンプル容器キャリア(140)を支持するように構成され、前記搬送面(110)には所定の数の移送位置(30、31、32)が配置され、前記移送位置(30、31、32)は対応する研究室ステーション(20、21、22)に割り当てられる、搬送面(110)と、
前記サンプル容器キャリア(140)を前記搬送面(110)上で移動させるように構成される駆動手段(120)と、
研究室サンプル配送システム(100)の初期化中に前記移送位置(30、31、32)に応じて経路(40、41、42)を事前計算し、前記研究室サンプル配送システム(100)の初期化後に前記事前計算された経路(40、41、42)に沿って前記サンプル容器キャリア(140)が移動するように前記駆動手段(120)を制御し、前記研究室サンプル配送システム(100)の初期化後に、前記研究室サンプル配送システム(100)の動作データを収集し、前記研究室サンプル配送システム(100)の次の初期化中に、前記動作データにさらに応じて前記経路(40、41、42)を事前計算するように構成される制御ユニット(150)と
を備え、
前記動作データは、前記経路(40、41、42)上の交通量に関する情報を含む、
研究室サンプル配送システム(100)。
【請求項12】
前記サンプル容器キャリア(140)は、少なくとも1つの磁気活性素子(141)、または少なくとも1つの永久磁石を備え、
前記駆動手段(120)は、前記搬送面(110)の下方に行および列に固定して配置される所定の数の電磁アクチュエータを備え、前記電磁アクチュエータは前記サンプル容器キャリア(140)に磁力を加えるように構成され、
前記制御ユニット(150)は、前記事前計算された経路(40、41、42)に沿って前記サンプル容器キャリア(140)が移動するように、前記電磁アクチュエータを作動させるように構成される、
請求項11に記載の研究室サンプル配送システム(100)
【請求項13】
所定の数の研究室ステーション(20、21、22)、または分析前ステーション、分析ステーション、および/もしくは分析後ステーションと、
請求項11または12に記載の研究室サンプル配送システム(100)と
を備える、研究室自動化システム(10)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研究室サンプル配送システムを動作させる方法、研究室サンプル配送システム、および研究室自動化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
研究室サンプル配送システムは、研究室自動化システムにおける複数の研究室ステーションの間でサンプルを配送するために使用されうる。例えば、高い処理能力を有する2次元的な研究室サンプル配送システムが、特許文献1において開示されている。搬送面上でサンプル容器を保持するサンプル容器キャリアを駆動するために、搬送面の下方に電磁アクチュエータが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2589968号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、異なる研究室ステーションの間での効率的で信頼性の高いサンプルの配送を可能にする、研究室サンプル配送システムを動作させる方法、研究室サンプル配送システム、および研究室自動化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これは、請求項1に記載の研究室サンプル配送システムを動作させる方法、請求項11に記載の研究室サンプル配送システム、および、請求項13に記載の研究室自動化システムによって解決される。
【0006】
方法は、研究室サンプル配送システムを動作させるように構成される。
【0007】
研究室サンプル配送システムは、所定の数(例えば、10個から10000個)のサンプル容器キャリアを備える。サンプル容器キャリアは、それぞれ、1つまたは複数のサンプル容器を保持するように構成される。サンプル容器は、それぞれ、所定の数(例えば、2個から50個)の研究室ステーションによって分析されるサンプルを収容する。
【0008】
研究室サンプル配送システムは、例えば完全に平坦である搬送面をさらに備える。搬送面は、サンプル容器キャリアを支持するように構成される。すなわち、サンプル容器キャリアは、搬送面の上に載置され、搬送面の上で搬送面全体にわたって移動されうる。
【0009】
搬送面は、所定の数(例えば、2個から100個)の移送位置すなわちノードを備え、移送位置すなわちノードは、対応する研究室ステーションに割り当てられる。例えば、各研究室ステーションは、1つの対応する移送位置すなわちノードを有しうる。あるいは、2つ以上の移送位置すなわちノードが、対応する研究室ステーションに割り当てられてもよい。移送位置すなわちノードは、研究室ステーションに、静的にまたは動的に割り当てられうる。換言すれば、動作中に、必要があれば、移送位置が変更されてもよい。
【0010】
研究室サンプル配送システムは、駆動手段をさらに備える。駆動手段は、サンプル容器キャリアを搬送面上で搬送面全体にわたって移動するように構成される。
【0011】
上記の動作させる方法は、以下のステップを備える。
【0012】
研究室サンプル配送システムの初期化(始動、起動)中に、例えば、搬送面上に延びる固定的な経路が、異なる移送位置に応じて、例えばその間に、事前計算される。換言すれば、事前計算された経路が、搬送面上で移送位置の間に提供される。移送位置は、グラフ理論の意味における始点ノードまたは終点ノードを表しうる。
【0013】
通常動作モードにおいて、研究室サンプル配送システムの初期化後、駆動手段は、サンプル容器キャリアが異なる研究室ステーション間で配送されるべきである場合には該サンプル容器キャリアが搬送面上で事前計算された経路に沿って移動するように制御される。換言すれば、通常動作モードにおいて、研究室サンプル配送システムの初期化後、駆動手段は、サンプル容器キャリアが異なる研究室ステーション間で配送されるべきである場合には該サンプル容器キャリアが好ましくは搬送面上で事前計算された固定的な経路に沿ってのみ繰り返し移動するように制御される。「固定的な」という語は、経路が静的に計算され(つまり再計算されず)、計算された経路が複数のサンプル容器キャリアによって使用され、各サンプル容器キャリアに対して個別に計算されるものでないことを意味する。自明ではあるが、特定の使用状況、例えばサンプル容器キャリアが搬送面から取り除かれるべきとき、および/またはエラー状態において、サンプル容器キャリアは事前計算された経路から離れて移動しうる。さらに、空のサンプル容器キャリアは、異なる経路に沿って、および/または事前計算された経路から離れて移動しうる。
【0014】
経路は、情報あり探索アルゴリズム(informed search algorithm)、例えばAアルゴリズムまたはDアルゴリズムを使用して計算されうる。Aアルゴリズムは、例えば移送位置の形態である異なるノードの間の移動可能な経路を効率的に計算するために、経路探索およびグラフ探査において使用されるアルゴリズムである。Aアルゴリズムは、最良優先探索を使用して、所与の始点ノードから(1つまたは複数の可能性のある終点のうちの)1つの終点ノードまでの最小費用経路を発見する。Aアルゴリズムは、グラフを横断するとき、予測総費用すなわち距離が最も小さい経路をたどり、そこに至るまでの他の経路区間のソートされた優先待ち行列を維持する。Dアルゴリズムは、改良されたAアルゴリズムである。更なる詳細については、対応する技術文献への参照がなされる。
【0015】
経路は、異なる経路の間の交点の数が最小化されるように計算されてもよい。
【0016】
研究室サンプル配送システムの初期化中に、搬送面上に配置されるそれぞれのバッファ領域が研究室ステーションに論理的に割り当てられ、研究室ステーションによって分析されることを待つサンプルは、バッファ領域にバッファされうる。例えば、各研究室ステーションは、搬送面上に1つの対応するバッファ領域を持ちうる。あるいは、2つ以上のバッファ領域が、搬送面上で、対応する研究室ステーションに割り当てられてもよい。
【0017】
バッファ領域は、事前計算された経路が、バッファ領域と交差しないように割り当てられうる。
【0018】
サンプル容器キャリアは、排他的に、移送位置を越えて(通過して)、バッファ領域に入れられ、またバッファ領域から取り出されうる。すなわち、移送位置は、バッファ領域へのゲート(入口/出口)としての機能を果たす。
【0019】
搬送面は、論理フィールド、例えば同一の大きさおよび外形の矩形の論理フィールドに区分されうる。論理フィールドは、チェス盤状に配列されうる。時間優先予約方式(time-prioritized reservation scheme)によって、事前計算された経路上に配置される、または位置する調整可能な個数(例えば1個から100個)の論理フィールドが、移動されるべきサンプル容器キャリアのためにそれぞれ予約されうる。換言すれば、論理フィールドは、移動されるべき各サンプル容器キャリアのために先着順に予約される。論理フィールドは、典型的には、サンプル容器キャリアの移動を開始する前に予約される。しかしながら、サンプル容器キャリアが予約されるべき論理フィールドにまだ到達していない場合は、論理フィールドは、当該サンプル容器キャリアの移動中に予約されてもよい。サンプル容器キャリアが他のサンプル容器キャリアのためにより高い時間優先度で予約されている論理フィールドを含む経路上を移動するとき、すなわち、論理フィールドが移動中のサンプル容器のための予約に先立って他のサンプル容器キャリアのために予約されていたとき、サンプル容器キャリアは予約されたフィールドに至る前に停止されるか、または移動を開始しない。予約されたフィールドは、サンプル容器キャリアが当該予約されたフィールドを通過したときに解放されうる。
【0020】
研究室サンプル配送システムの初期化後に、研究室サンプル配送システムの動作データが収集され、記憶されうる。研究室サンプル配送システムの次の初期化中に、移送位置に応じておよび動作データに応じて経路を事前計算することができる。
【0021】
動作データは、経路上の交通量に関する情報を含みうる。交通量に関する情報は、単位時間あたり(例えば、1分間/1時間/1日あたりなど)の経路上を移動されるサンプル容器キャリアの数の情報を含み、動作時間全体にわたる交通量の時間プロファイルが求められうる。
【0022】
経路を事前計算するステップは、経路に割り当てられるレーンの数が交通量に応じて決定されるステップを含みうる。例えば、交通量が少ない場合は、1つの経路に1つのレーンが割り当てられうる。交通量が増加すると、経路に2つ以上のレーンが割り当てられうる。経路は、例えば一方通行レーンであってもよい。
【0023】
サンプル、サンプル容器、および/またはサンプル容器キャリアは、移送位置を使用して、研究室ステーションへ/から移送されうる。例えば、ピック−アンド−プレース装置が、移送位置の1つに配置されたサンプル容器キャリアに備えられたサンプル容器を摘みあげ、当該サンプル容器を研究室ステーションへ移送しうる。したがって、サンプル容器は、研究室ステーションのうちの1つから移送位置に配置された空のサンプル容器キャリアへ移送されうる。
【0024】
研究室サンプル配送システムの初期化中に、移送位置の間の経路が事前計算されうる。すなわち、経路の端点すなわち端ノードは、移送位置によって形成される。例えば、第1、第2および第3の移送位置が与えられた場合、第1および第2の移送位置の間の経路と、第1および第3の移送位置の間の経路と、第2および第3の移送位置の間の経路とが事前計算されうる。
【0025】
研究室サンプル配送システムは、上述の方法を実行するように構成されうる。
【0026】
研究室サンプル配送システムは、所定の数のサンプル容器キャリアを備える。サンプル容器キャリアは、1つまたは複数のサンプル容器を保持するように構成される。サンプル容器は、所定の数の研究室ステーションによって分析されるサンプルを収容する。また、研究室サンプル配送システムは、搬送面を備える。搬送面は、サンプル容器キャリアを支持するように構成され、搬送面には、所定の数の移送位置が配置される。移送位置は、対応する研究室ステーションに割り当てられる。さらに、研究室サンプル配送システムは、サンプル容器キャリアを搬送面上で移動させるように構成される駆動手段と、例えばマイクロプロセッサおよびプログラム記憶装置の形態である制御ユニットとを備える。制御ユニットは、上述の方法が実行されるように、研究室サンプル配送システムを制御するように構成される。制御ユニットは、研究室サンプル配送システムの初期化中に、移送位置に応じて経路を事前計算し、研究室サンプル配送システムの初期化後に、事前計算された経路に沿ってサンプル容器キャリアが移動するように駆動手段を制御するように構成される。
【0027】
サンプル容器キャリアは、少なくとも1つの磁気活性素子、好ましくは少なくとも1つの永久磁石を備えうる。駆動手段は、搬送面の下方に行および列に固定して配置される所定の数の電磁アクチュエータを備えうる。電磁アクチュエータは、サンプル容器キャリアに磁力を加えるように構成されうる。制御ユニットは、事前計算された経路に沿って、互いに独立して同時にサンプル容器キャリアが移動するように、電磁アクチュエータを作動させるように構成されうる。電磁アクチュエータは、グラフ理論の意味におけるグラフの対応するノードを定義しうる。ノードは、搬送面上で対応する電磁アクチュエータの上方に定義または配置されうる。移送位置は、対応する電磁アクチュエータの上方に形成されうる。このように定義された格子状のグラフは、既知の探索アルゴリズム、例えばAアルゴリズムまたはDアルゴリズムによって、始点ノードすなわち始点移送位置から終点ノードすなわち終点移送位置へ移動可能な経路を計算するために使用されうる。
【0028】
研究室自動化システムは、所定の数(例えば、2個から50個)の研究室ステーション、好ましくは分析前ステーション、分析ステーション、および/または分析後ステーションと、上述の研究室サンプル配送システムとを備える。
【0029】
分析前ステーションは、サンプル、サンプル容器、および/またはサンプル容器キャリアの任意の種類の前処理を行うように構成されうる。分析ステーションは、サンプルまたはサンプルの一部と試薬とを使用して測定信号を生成するように構成され、測定信号は、検体が存在するか、もし存在するなら検体がどのような濃度にあるかを示す。分析後ステーションは、サンプル、サンプル容器、および/またはサンプル容器キャリアの任意の種類の後処理を行うように構成されうる。
【0030】
分析前ステーション、分析ステーションおよび/または分析後ステーションは、キャップ開封(decapping)ステーション、キャップ再装着(recapping)ステーション、遠心分離ステーション、記録保管(archiving)ステーション、ピペッティング(pipetting)ステーション、分類(sorting)ステーション、チューブタイプ識別(tube type identification)ステーション、およびサンプル品質判定(sample quality determination)ステーションのうちの少なくとも1つを備えうる。
【0031】
事前計算された経路は搬送面上で可視化され、オペレータは事前計算された経路を制御し、必要があれば事前計算された経路を手動で修正してもよい。事前計算された経路を視覚化するために、例えばLEDなどの発光装置の形態の視覚化手段が搬送面の下方に配置され、搬送面は少なくとも部分的に半透明であってもよい。例えば、各電磁アクチュエータに対して、対応するLEDが電磁アクチュエータに隣接するように設けられてもよい。視覚化手段はさらに、対応する電磁アクチュエータの動作状態を視覚するために使用されてもよく、例えば、対応する電磁アクチュエータに障害があるか否かを示してもよい。さらに、搬送面がいくつかの個別のモジュールに区分されている場合、障害のあるモジュールは、該障害のあるモジュールの内部に配置される視覚化手段によって報知されてもよい。
【0032】
次に、図面を参照して、本発明が詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】研究室自動化システムを、斜視図において概略的に示した図である。
図2図1の研究室自動化システムを、上面図において概略的に示した図である。
図3】予約されたフィールドを含む、事前計算された異なる経路を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、研究室自動化システム10を、斜視図において概略的に示す。
【0035】
研究室自動化システム10は、3つの研究室ステーション20、21、22、例えば、分析前ステーション、分析ステーション、および/または分析後ステーションと、研究室サンプル配送システム100とを備える。自明ではあるが、研究室自動化システム10は、4つ以上の研究室ステーション20、21、22を備えてもよい。
【0036】
研究室サンプル配送システム100は、所定の数のサンプル容器キャリア140を備える。説明のために、1つのサンプル容器キャリア140だけが図示されている。自明ではあるが、研究室サンプル配送システム100は、複数のサンプル容器キャリア140、例えば50個から500個のサンプル容器キャリア140を備える。サンプル容器キャリア140は、それぞれ、永久磁石の形態の磁気活性素子141を備える。
【0037】
サンプル容器キャリア140は、1つまたは複数のサンプル容器145を保持するように構成され、サンプル容器145は、研究室ステーション20、21、22によって分析されるサンプルを収容する。
【0038】
研究室サンプル配送システム100は、搬送面110をさらに備え、搬送面110は、サンプル容器キャリア140を支持または保持するように構成される。
【0039】
例えばホールセンサの形態の位置センサ130は、それぞれのサンプル容器キャリア140の位置が検知されうるように、搬送面110全体に分散配置される。
【0040】
図2を参照すると、搬送面110には、所定の数の論理的移送位置30、31、32が配置される。移送位置30は、研究室ステーション20に論理的に割り当てられ、移送位置31は、研究室ステーション21に論理的に割り当てられ、移送位置32は、研究室ステーション22に論理的に割り当てられる。搬送面110には、所定の数の論理的バッファ領域50、51、52が配置される。バッファ領域50は、研究室ステーション20に論理的に割り当てられ、バッファ領域51は、研究室ステーション21に論理的に割り当てられ、バッファ領域52は、研究室ステーション22に論理的に割り当てられる。研究室ステーション20、21、22によって分析されることを待つサンプルは、それぞれのバッファ領域50、51、52にバッファされる。サンプル容器キャリア140は、排他的に、移送位置30、31、32を越えてバッファ領域50、51、52に入れられ、またバッファ領域50、51、52から取り出される。
【0041】
再び図1を参照すると、研究室サンプル配送システム100は、駆動手段をさらに備える。駆動手段は、搬送面110の下方に行および列に固定して配置される所定の数の電磁アクチュエータ120を備える。電磁アクチュエータ120は、それぞれ、強磁性コア125を囲むコイルを備える。電磁アクチュエータ120は、容器キャリア140に磁気的駆動力を加えるように構成される。
【0042】
研究室サンプル配送システム100は、制御ユニット150をさらに備える。制御ユニット150は、とりわけ、搬送面110上を、互いに独立して同時にサンプル容器キャリア140が移動しうるように、電磁アクチュエータ120を制御する。
【0043】
研究室サンプル配送システム100の動作方法が、図2および図3について説明される。
【0044】
図2は、図1の研究室自動化システム10を、上面図において概略的に示す。
【0045】
研究室サンプル配送システム100の初期化中または起動段階において、制御ユニット150は、移送位置30、31、32の間の経路40、41、42を事前計算する。さらに、研究室サンプル配送システム100の初期化中に、バッファ領域50、51、52が、それぞれ、研究室ステーション20、21、22に論理的に割り当てられる。
【0046】
研究室サンプル配送システム100の初期化後に、制御ユニット150は、サンプル容器キャリア140が研究室ステーション20、21、22間で配送されるべきである場合、事前計算された経路40、41、42に沿ってサンプル容器キャリア140が移動するように、電磁アクチュエータ120を制御する。
【0047】
経路40、41、42は、Aアルゴリズムを使用して計算され、経路40、41、42は、とりわけ、異なる経路40、41、42の間の交点の数が最小化されるように計算される。図示される実施形態では、交点は発生していない。
【0048】
図2および図3を参照すると、搬送面110は、同一の大きさの矩形の論理フィールド111に論理的に区分される。各論理フィールド111は、対応する電磁アクチュエータ120に割り当てられ、すなわち対応する電磁アクチュエータ120を覆っている。
【0049】
図3は、予約されたフィールド111を含む、事前計算された異なる経路40’および41’を概略的かつ部分的に示す。図2に図示される経路40および41とは違い、経路40’および41’は交点を有する。
【0050】
時間優先予約方式によって、経路40’および41’に位置する所定の数、例えば10個の論理フィールド111は、経路40’および41’上を移動されるべきサンプル容器キャリアのために予約される。換言すれば、論理フィールド111は、移動されるべき各サンプル容器140キャリアのために先着順に予約される。
【0051】
経路40’上を移動されるべきサンプル容器キャリアに対する経路40’上の論理フィールド111の予約が、経路41’上を移動されるべき別のサンプル容器キャリアに対する経路41’上の論理フィールド111の予約よりも前になされたとしたら、経路41’上を移動するサンプル容器キャリアは、経路40’および41’の交点のあるフィールドに到達する前に停止して、衝突の可能性を回避する。予約されたフィールド111は、サンプル容器キャリアが当該予約されたフィールド111を通過したときに解放される。
【0052】
研究室サンプル配送システム100の初期化後に、研究室サンプル配送システム100の動作データが収集される。動作データは、経路40、41、42上の交通量に関する情報を含む。研究室サンプル配送システム100の次の初期化中に、交通量にさらに応じて経路40、41、42が事前計算される。例えば、経路40、41、42に割り当てられるレーンの数が、交通量に応じて決定される。図3に示される例では、経路40’および41’に論理フィールド111のそれぞれ単一のレーンが割り当てられている。例えば、経路40’の交通量が所定の閾値よりも大きかった場合、経路40’に論理フィールド111の第2(および第3など)のレーンが割り当てられうる。
【符号の説明】
【0053】
10 研究室自動化システム
20,21,22 研究室ステーション
30,31,32 移送位置
40,40’,41,41’,42 経路
50,51,52 バッファ領域
100 研究室サンプル配送システム
110 搬送面
111 論理フィールド
120 電磁アクチュエータ
125 強磁性コア
130 位置センサ
140 サンプル容器キャリア
141 磁気活性素子
145 サンプル容器
150 制御ユニット
図1
図2
図3