【課題を解決するための手段】
【0005】
これは、請求項1に記載の研究室サンプル配送システムを動作させる方法、
請求項11に記載の研究室サンプル配送システム、および、
請求項13に記載の研究室自動化システムによって解決される。
【0006】
方法は、研究室サンプル配送システムを動作させるように構成される。
【0007】
研究室サンプル配送システムは、所定の数(例えば、10個から10000個)のサンプル容器キャリアを備える。サンプル容器キャリアは、それぞれ、1つまたは複数のサンプル容器を保持するように構成される。サンプル容器は、それぞれ、所定の数(例えば、2個から50個)の研究室ステーションによって分析されるサンプルを収容する。
【0008】
研究室サンプル配送システムは、例えば完全に平坦である搬送面をさらに備える。搬送面は、サンプル容器キャリアを支持するように構成される。すなわち、サンプル容器キャリアは、搬送面の上に載置され、搬送面の上で搬送面全体にわたって移動されうる。
【0009】
搬送面は、所定の数(例えば、2個から100個)の移送位置すなわちノードを備え、移送位置すなわちノードは、対応する研究室ステーションに割り当てられる。例えば、各研究室ステーションは、1つの対応する移送位置すなわちノードを有しうる。あるいは、2つ以上の移送位置すなわちノードが、対応する研究室ステーションに割り当てられてもよい。移送位置すなわちノードは、研究室ステーションに、静的にまたは動的に割り当てられうる。換言すれば、動作中に、必要があれば、移送位置が変更されてもよい。
【0010】
研究室サンプル配送システムは、駆動手段をさらに備える。駆動手段は、サンプル容器キャリアを搬送面上で搬送面全体にわたって移動するように構成される。
【0011】
上記の動作させる方法は、以下のステップを備える。
【0012】
研究室サンプル配送システムの初期化(始動、起動)中に、例えば、搬送面上に延びる固定的な経路が、異なる移送位置に応じて、例えばその間に、事前計算される。換言すれば、事前計算された経路が、搬送面上で移送位置の間に提供される。移送位置は、グラフ理論の意味における始点ノードまたは終点ノードを表しうる。
【0013】
通常動作モードにおいて、研究室サンプル配送システムの初期化後、駆動手段は、サンプル容器キャリアが異なる研究室ステーション間で配送されるべきである場合には該サンプル容器キャリアが搬送面上で事前計算された経路に沿って移動するように制御される。換言すれば、通常動作モードにおいて、研究室サンプル配送システムの初期化後、駆動手段は、サンプル容器キャリアが異なる研究室ステーション間で配送されるべきである場合には該サンプル容器キャリアが好ましくは搬送面上で事前計算された固定的な経路に沿ってのみ繰り返し移動するように制御される。「固定的な」という語は、経路が静的に計算され(つまり再計算されず)、計算された経路が複数のサンプル容器キャリアによって使用され、各サンプル容器キャリアに対して個別に計算されるものでないことを意味する。自明ではあるが、特定の使用状況、例えばサンプル容器キャリアが搬送面から取り除かれるべきとき、および/またはエラー状態において、サンプル容器キャリアは事前計算された経路から離れて移動しうる。さらに、空のサンプル容器キャリアは、異なる経路に沿って、および/または事前計算された経路から離れて移動しうる。
【0014】
経路は、情報あり探索アルゴリズム(informed search algorithm)、例えばA
*アルゴリズムまたはD
*アルゴリズムを使用して計算されうる。A
*アルゴリズムは、例えば移送位置の形態である異なるノードの間の移動可能な経路を効率的に計算するために、経路探索およびグラフ探査において使用されるアルゴリズムである。A
*アルゴリズムは、最良優先探索を使用して、所与の始点ノードから(1つまたは複数の可能性のある終点のうちの)1つの終点ノードまでの最小費用経路を発見する。A
*アルゴリズムは、グラフを横断するとき、予測総費用すなわち距離が最も小さい経路をたどり、そこに至るまでの他の経路区間のソートされた優先待ち行列を維持する。D
*アルゴリズムは、改良されたA
*アルゴリズムである。更なる詳細については、対応する技術文献への参照がなされる。
【0015】
経路は、異なる経路の間の交点の数が最小化されるように計算されてもよい。
【0016】
研究室サンプル配送システムの初期化中に、搬送面上に配置されるそれぞれのバッファ領域が研究室ステーションに論理的に割り当てられ、研究室ステーションによって分析されることを待つサンプルは、バッファ領域にバッファされうる。例えば、各研究室ステーションは、搬送面上に1つの対応するバッファ領域を持ちうる。あるいは、2つ以上のバッファ領域が、搬送面上で、対応する研究室ステーションに割り当てられてもよい。
【0017】
バッファ領域は、事前計算された経路が、バッファ領域と交差しないように割り当てられうる。
【0018】
サンプル容器キャリアは、排他的に、移送位置を越えて(通過して)、バッファ領域に入れられ、またバッファ領域から取り出されうる。すなわち、移送位置は、バッファ領域へのゲート(入口/出口)としての機能を果たす。
【0019】
搬送面は、論理フィールド、例えば同一の大きさおよび外形の矩形の論理フィールドに区分されうる。論理フィールドは、チェス盤状に配列されうる。時間優先予約方式(time-prioritized reservation scheme)によって、事前計算された経路上に配置される、または位置する調整可能な個数(例えば1個から100個)の論理フィールドが、移動されるべきサンプル容器キャリアのためにそれぞれ予約されうる。換言すれば、論理フィールドは、移動されるべき各サンプル容器キャリアのために先着順に予約される。論理フィールドは、典型的には、サンプル容器キャリアの移動を開始する前に予約される。しかしながら、サンプル容器キャリアが予約されるべき論理フィールドにまだ到達していない場合は、論理フィールドは、当該サンプル容器キャリアの移動中に予約されてもよい。サンプル容器キャリアが他のサンプル容器キャリアのためにより高い時間優先度で予約されている論理フィールドを含む経路上を移動するとき、すなわち、論理フィールドが移動中のサンプル容器のための予約に先立って他のサンプル容器キャリアのために予約されていたとき、サンプル容器キャリアは予約されたフィールドに至る前に停止されるか、または移動を開始しない。予約されたフィールドは、サンプル容器キャリアが当該予約されたフィールドを通過したときに解放されうる。
【0020】
研究室サンプル配送システムの初期化後に、研究室サンプル配送システムの動作データが収集され、記憶されうる。研究室サンプル配送システムの次の初期化中に、移送位置に応じておよび動作データに応じて経路を事前計算することができる。
【0021】
動作データは、経路上の交通量に関する情報を含みうる。交通量に関する情報は、単位時間あたり(例えば、1分間/1時間/1日あたりなど)の経路上を移動されるサンプル容器キャリアの数の情報を含み、動作時間全体にわたる交通量の時間プロファイルが求められうる。
【0022】
経路を事前計算するステップは、経路に割り当てられるレーンの数が交通量に応じて決定されるステップを含みうる。例えば、交通量が少ない場合は、1つの経路に1つのレーンが割り当てられうる。交通量が増加すると、経路に2つ以上のレーンが割り当てられうる。経路は、例えば一方通行レーンであってもよい。
【0023】
サンプル、サンプル容器、および/またはサンプル容器キャリアは、移送位置を使用して、研究室ステーションへ/から移送されうる。例えば、ピック−アンド−プレース装置が、移送位置の1つに配置されたサンプル容器キャリアに備えられたサンプル容器を摘みあげ、当該サンプル容器を研究室ステーションへ移送しうる。したがって、サンプル容器は、研究室ステーションのうちの1つから移送位置に配置された空のサンプル容器キャリアへ移送されうる。
【0024】
研究室サンプル配送システムの初期化中に、移送位置の間の経路が事前計算されうる。すなわち、経路の端点すなわち端ノードは、移送位置によって形成される。例えば、第1、第2および第3の移送位置が与えられた場合、第1および第2の移送位置の間の経路と、第1および第3の移送位置の間の経路と、第2および第3の移送位置の間の経路とが事前計算されうる。
【0025】
研究室サンプル配送システムは、上述の方法を実行するように構成されうる。
【0026】
研究室サンプル配送システムは、所定の数のサンプル容器キャリアを備える。サンプル容器キャリアは、1つまたは複数のサンプル容器を保持するように構成される。サンプル容器は、所定の数の研究室ステーションによって分析されるサンプルを収容する。また、研究室サンプル配送システムは、搬送面を備える。搬送面は、サンプル容器キャリアを支持するように構成され、搬送面には、所定の数の移送位置が配置される。移送位置は、対応する研究室ステーションに割り当てられる。さらに、研究室サンプル配送システムは、サンプル容器キャリアを搬送面上で移動させるように構成される駆動手段と、例えばマイクロプロセッサおよびプログラム記憶装置の形態である制御ユニットとを備える。制御ユニットは、上述の方法が実行されるように、研究室サンプル配送システムを制御するように構成される。制御ユニットは、研究室サンプル配送システムの初期化中に、移送位置に応じて経路を事前計算し、研究室サンプル配送システムの初期化後に、事前計算された経路に沿ってサンプル容器キャリアが移動するように駆動手段を制御するように構成される。
【0027】
サンプル容器キャリアは、少なくとも1つの磁気活性素子、好ましくは少なくとも1つの永久磁石を備えうる。駆動手段は、搬送面の下方に行および列に固定して配置される所定の数の電磁アクチュエータを備えうる。電磁アクチュエータは、サンプル容器キャリアに磁力を加えるように構成されうる。制御ユニットは、事前計算された経路に沿って、互いに独立して同時にサンプル容器キャリアが移動するように、電磁アクチュエータを作動させるように構成されうる。電磁アクチュエータは、グラフ理論の意味におけるグラフの対応するノードを定義しうる。ノードは、搬送面上で対応する電磁アクチュエータの上方に定義または配置されうる。移送位置は、対応する電磁アクチュエータの上方に形成されうる。このように定義された格子状のグラフは、既知の探索アルゴリズム、例えばA
*アルゴリズムまたはD
*アルゴリズムによって、始点ノードすなわち始点移送位置から終点ノードすなわち終点移送位置へ移動可能な経路を計算するために使用されうる。
【0028】
研究室自動化システムは、所定の数(例えば、2個から50個)の研究室ステーション、好ましくは分析前ステーション、分析ステーション、および/または分析後ステーションと、上述の研究室サンプル配送システムとを備える。
【0029】
分析前ステーションは、サンプル、サンプル容器、および/またはサンプル容器キャリアの任意の種類の前処理を行うように構成されうる。分析ステーションは、サンプルまたはサンプルの一部と試薬とを使用して測定信号を生成するように構成され、測定信号は、検体が存在するか、もし存在するなら検体がどのような濃度にあるかを示す。分析後ステーションは、サンプル、サンプル容器、および/またはサンプル容器キャリアの任意の種類の後処理を行うように構成されうる。
【0030】
分析前ステーション、分析ステーションおよび/または分析後ステーションは、キャップ開封(decapping)ステーション、キャップ再装着(recapping)ステーション、遠心分離ステーション、記録保管(archiving)ステーション、ピペッティング(pipetting)ステーション、分類(sorting)ステーション、チューブタイプ識別(tube type identification)ステーション、およびサンプル品質判定(sample quality determination)ステーションのうちの少なくとも1つを備えうる。
【0031】
事前計算された経路は搬送面上で可視化され、オペレータは事前計算された経路を制御し、必要があれば事前計算された経路を手動で修正してもよい。事前計算された経路を視覚化するために、例えばLEDなどの発光装置の形態の視覚化手段が搬送面の下方に配置され、搬送面は少なくとも部分的に半透明であってもよい。例えば、各電磁アクチュエータに対して、対応するLEDが電磁アクチュエータに隣接するように設けられてもよい。視覚化手段はさらに、対応する電磁アクチュエータの動作状態を視覚するために使用されてもよく、例えば、対応する電磁アクチュエータに障害があるか否かを示してもよい。さらに、搬送面がいくつかの個別のモジュールに区分されている場合、障害のあるモジュールは、該障害のあるモジュールの内部に配置される視覚化手段によって報知されてもよい。
【0032】
次に、図面を参照して、本発明が詳細に説明される。