(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802645
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】シャント式電流検出装置
(51)【国際特許分類】
H01C 13/00 20060101AFI20201207BHJP
G01R 15/00 20060101ALI20201207BHJP
G01R 15/14 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
H01C13/00 J
G01R15/00 500
G01R15/14 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-100501(P2016-100501)
(22)【出願日】2016年5月19日
(65)【公開番号】特開2017-208474(P2017-208474A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100092406
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 建二
(72)【発明者】
【氏名】仲村 圭史
(72)【発明者】
【氏名】亀子 健司
【審査官】
田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−145813(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/060102(WO,A1)
【文献】
実開昭52−065850(JP,U)
【文献】
特開2008−039571(JP,A)
【文献】
特開2015−204135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 13/00
G01R 15/00
G01R 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗体と、
該抵抗体の両端部に接続した電流端子と、
前記電流端子に固定された電圧端子と、
前記電流端子とは別に加工され、かつ前記電流端子に重ねた金属板からなる補助部材と、
を備え、
前記電流端子は、前記抵抗体との接続部と、該接続部とは他方の端部となる他端部を備え、
前記補助部材は、前記抵抗体との前記接続部と前記他端部との間に配置されている、シャント式電流検出装置。
【請求項2】
補助部材は、電流端子と抵抗体との接続部の近傍を含むように重ねた、請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
電流端子は折り曲げ部を備え、補助部材は、前記折り曲げ部に沿った形状である、請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項4】
抵抗体と、該抵抗体の両端部に接続した電流端子と、前記電流端子に固定された電圧端子と、を備えたシャント式電流検出装置と、
該シャント式電流検出装置が装着される筐体と、
前記シャント式電流検出装置を、前記筐体に固定する固定手段と、を備え、
該固定手段は、前記電流端子と、前記電流端子とは別に加工された金属板からなる補助部材とを筐体に固定し、
前記電流端子は、前記抵抗体との接続部と、該接続部とは他方の端部となる他端部を備え、
前記補助部材は、前記抵抗体との前記接続部と前記他端部との間に配置されている、
シャント式電流検出装置の実装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流経路に流れる電流を検出するシャント式電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や家庭用エネルギー設備等の機器においては、二次電池に電力を蓄え、二次電池の充放電電流を検出し制御することで、その運転が行われている。係る機器における電流の検出は、電流経路に直列にシャント式電流検出装置を接続して、抵抗体に流れる電流によって生じる電位差を計測することにより行われる。
【0003】
特許文献1には、係るシャント式電流検出装置の一例が開示されている。この装置はバッテリー等の電源に接続されたバスバー(Busbar)の一部に抵抗体を備え、電源からバスバーに流れる電流によって抵抗体に生じる電位差から電流を検出している。係る電流検出装置の構造によって、電流経路における部品点数を少なくし、発熱の要因となる抵抗器の接続部を減らすことができ、電流検出装置の信頼性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−83944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抵抗体を接続したバスバーには大電流を流すことから、抵抗体に接続したバスバー周辺においても十分な熱容量の確保が必要な場合がある。一方で、バスバーは、実装される筐体等に応じて、折り曲げ等の形状加工がなされるため、このような形状加工の容易性も必要である。
【0006】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたもので、抵抗体に電流端子を接続したシャント式電流検出装置において、十分な熱容量を確保することができると共に、また電流端子の形状加工も容易であるシャント式電流検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電流検出装置は、抵抗体と、抵抗体の両端部に接続した電流端子と、前記電流端子に固定された電圧端子と、前記電流端子とは別に加工され、かつ前記電流端子に重ねた金属板からなる補助部材と、を備え
、前記電流端子は、前記抵抗体との接続部と、該接続部とは他方の端部となる他端部を備え、前記補助部材は、前記抵抗体との前記接続部と前記他端部との間に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、電流端子については、加工性を損なわない程度の厚みの材料を使用しつつ、該電流端子に重ねた金属板からなる補助部材を備えたことで、熱容量を確保することができる。そして、電流端子については、加工性を損なわない程度の厚みの材料を使用することで、折り曲げ加工を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1の電流検出装置の斜視図である。
【
図5】本発明の実施例2の電流検出装置の斜視図である。
【
図8】本発明の実施例3の電流検出装置の斜視図である。
【
図10】実施例3の抵抗体およびその周辺の拡大断面図である。
【
図11】実施例3の抵抗体およびその周辺の他の構成例の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、
図1乃至
図11を参照して説明する。なお、各図中、同一または相当する部材または要素には、同一の符号を付して説明する。
【0011】
図1から
図2は本発明の実施例1の電流検出装置10を示す。電流検出装置10は、抵抗体11の両端部に金属板からなる電流端子12A,12Bが接続されている。抵抗体11は例えばCu−Mn−Ni系等の抵抗温度係数が小さく、且つ抵抗率の小さい金属抵抗素材が用いられる。これにより、低い抵抗値が得られ、大電流を高い精度で計測することが可能となる。そして、抵抗体11は電流端子12A,12Bに溶接等により強固に接続固定されている。
【0012】
電流端子12A,12Bは、例えばCu、Al、Cu系合金、Al系合金等の高導電性の金属板が用いられ、図示するように、その一部に曲げ加工等を施すことによる折り曲げ部3を備えた形状をなしている。電流端子12A,12Bは、抵抗体11との抵抗体接続部と、該接続部とは他方の端部となる他端部を備える。そして、抵抗体接続部と他端部の間で、電流端子に重ねた金属板からなる補助部材13A,13Bを備える。
【0013】
補助部材13A,13Bも、電流端子12A,12Bと同様に、例えばCu、Al、Cu系合金、Al系合金等の金属板が用いられる。補助部材13A,13Bは、電流端子12A,12Bと異なる金属にしてもよい。例えば、電流端子12A,12BをAlとし、補助部材13A,13BはCuにしてもよい。電流端子12A,12Bに、それぞれ補助部材13A,13Bを重ねることで、電流検出装置の電流端子部分が2重構造になり、実質的に厚みのある電流端子が構成される。これにより、抵抗体周辺部において、十分な熱容量を確保することができる。
【0014】
電流端子12A,12Bと補助部材13A,13Bは、略同一の形状になっている。本実施例では、電流端子12A,12Bの上面側に重なり接するように、補助部材13A,13Bの形状を形成している。電流端子12A,12Bは、装着時などの所要の形態に合わせて折り曲げ加工が施された折り曲げ部3を備える。
【0015】
補助部材13A,13Bは、この折り曲げ部3に沿った形状に加工形成されている。電流端子12A,12Bを加工性が損なわれない程度の厚みの金属板で構成し、設置場所に適合するための折り曲げ加工等の形状加工を容易としている。このような電流端子の厚みの一例としては2mmである。これより薄いものも使用可能である。
【0016】
電流端子12A,12Bには固定孔a、b、c、dが形成されている。補助部材13A、13Bには、固定孔a、b、c、dにそれぞれ対応する場所に、固定孔a’、b’、c’、d’が形成されている。補助部材13A,13Bには、電流端子13A,13Bに固定される電圧端子14A,14Bが挿通する端子孔14a,14bが形成されている。
【0017】
図3は抵抗体およびその周辺部分の拡大断面を示す。電流端子12A,12Bの抵抗体11との接続部X,Xの近傍には、電圧端子14A,14Bが立設されている。電圧端子14A,14Bは溶接などにより電流端子12A,12Bに固定されている。電圧端子14A,14Bは補助部材13A,13Bに設けた端子孔14a,14bを貫通して立設されている。
【0018】
補助部材13A,13Bは、接続部X,Xの近傍を含むように、電流端子12A,12Bに重ねられている。
図3において、補助部材13A,13Bの端面が、接続部X,Xの延長線に略一致するようにしている。補助部材13A,13Bの端面が、接続部X,Xの延長線と隣接するようにしてもよい。抵抗体11は発熱し、また、接続部X,Xにおいても発熱しやすいが、本構成により好適に放熱することができる。
【0019】
電圧端子14A,14Bは細径となっており、電流端子12A,12Bとの接合強度を確保する必要がある。図示する構造にすると、補助部材13A,13Bによって電圧端子14A,14Bのつけ根部分を保持することができる。このため、電圧端子14A,14Bの強度を確保することができる。なお、本実施例では端子孔14a,14bとして補助部材の表裏面を貫通する貫通孔の例を示したが、補助部材の側部より切欠きを形成することでスリット状とした構造であってもよい。
【0020】
また、抵抗体11と電流端子12A,12Bとには段部Sが設けられている。このため、補助部材13A,13Bを重ねたときに、補助部材13A,13Bが抵抗体11に接触することが防止される。よって、抵抗値の変動による電流検出精度の低下を防止することができる。
【0021】
図4はこの電流検出装置10を筐体15に装着した状態を示す。筐体15は、例えば、リチウムイオンバッテリー等の2次電池を収納するケースである。ケース内に設置する他に、自動車のボディなど、電流を検出する機器に応じて電流検出装置10が実装される部位(筐体)は異なる。筐体15内には検出対象の電流の経路を構成するバスバー16A,16Bが予め設置されている。
【0022】
バスバー16A,16B間に電流検出装置10を接続し、当該経路に流れる電流を検出する。ボルトAは、固定手段であり、電流検出装置10の固定孔a’,aに挿通され、電流端子12A、補助部材13Aおよびバスバー16Aを、図示しないナットや、筐体に形成したボルト孔にネジ止めにより固定する。これにより、端子12Aとバスバー16Aは電気的に導通する。なお、補助部材13Aも電気的に導通する。
【0023】
同様に、ボルトBは、固定手段であり、電流検出装置10の固定孔b’,bに挿通され、電流端子12Bと補助部材13Bおよびバスバー16Bを固定する。これにより、電流端子12Bとバスバー16Bは電気的に導通する。なお、補助部材13Aも電気的に導通する。
【0024】
ボルトCは、固定手段であり、固定孔c’,cに挿通され、電流端子12Aと補助部材13Aを筐体15に固定する。筐体には、ボルトCの受け側であるボルト孔(不図示)が形成されている。同様に、ボルトDは、固定手段であり、固定孔d’,dに挿通され、電流端子12Bと補助部材13Bを筐体15に固定する。
【0025】
本実施例では、電流端子12A,12Bと補助部材13A,13Bとは予め別体として形成され、図示のように実装時に一体として固定される。なお、電流端子12A,12Bと補助部材13A,13Bとを、溶接等により固定することで、予め一体にしておいてもよい。
【0026】
電流端子12A,12Bに補助部材13A,13Bを重ねることで、実質的に電流端子を厚くすることができる。このため、十分な熱容量を確保することができる。また、強度も確保することができる。一般に金属板材は厚みが増すほど、折り曲げ加工などの加工性を損なう。本発明では、電流端子12A,12Bに補助部材13A,13Bを重ねる構成にしたため、それぞれの板材は、加工性を損なわない程度の厚みのものを使用することができる。よって、十分な熱容量を確保しつつ様々な形状への対応が可能となる。
【0027】
図5から
図6は本発明の実施例2の電流検出装置20を示す。電流検出装置20は、抵抗体11の両端部に電流端子12A,12Bを接続した構成は実施例1と同じである。本実施例では、電流端子12A,12Bの抵抗体11の近傍の底面側にのみ重ねて固定した実施例1よりも厚い板材である補助部材21A,21Bを備えている。
【0028】
電流端子12A,12Bは、抵抗体11との抵抗体接続部と、該接続部とは他方の端部となる他端部を備える。補助部材21A,21Bは、抵抗体接続部と他端部との間に配置されている。実施例2では、補助部材21A,21Bを曲げ加工していないが、厚みのある板材とすることにより、より大きな熱容量を抵抗体11の周辺部分に確保できる。
【0029】
補助部材21A,21Bには、それぞれ2カ所に固定孔c’,d’,e’,f’が形成されていて、電流端子12A,12Bにもこれと対応する固定孔c,d,e,fが形成されている。
図7に示すように、各補助部材に対して各端子を複数の個所において、固定手段であるボルトC,D,E,Fで固定する。これにより、確実な固定と位置決めが可能である。
【0030】
そして、筐体15内においてバスバー16Aの固定孔a”および電流端子の固定孔aをボルトAで固定する。同様に、バスバー16Bを電流端子12BにボルトBで固定する。これにより、電流検出装置20のバスバー16A,16Bへの装着が完了する。
【0031】
図8から
図9は本発明の実施例3の電流検出装置30を示す。電流検出装置30は、抵抗体11の両端部に金属板からなる電流端子12A,12Bが固定されている。電流端子12A,12Bは、折り曲げ部3を備えた形状をなしている。電流端子12A,12Bは、抵抗体11との抵抗体接続部と、該接続部とは他方の端部となる他端部を備える。補助部材13A,13Bは、
図8において、電流端子12A,12Bの下面に接し、重ねて配置されている。
【0032】
電流端子12A,12Bに、それぞれ補助部材13A,13Bを重ねることで、電流検出装置の端子部分が2重構造になっている。これにより、抵抗体周辺部において、十分な熱容量を確保することができる。
【0033】
図9に示すとおり、電流端子12A,12Bと補助部材13A,13Bは、略同一の形状になっている。本実施例では、電流端子12A,12Bの下面側に重なり接するように、補助部材13A,13Bの形状を加工している。
【0034】
電流端子12A,12Bには固定孔a、b、c、dが形成されている。補助部材13A、13Bには、固定孔a、b、c、dにそれぞれ対応する場所に、固定孔a’、b’、c’、d’が形成されている。
【0035】
図10は、実施例3における、抵抗体およびその周辺部分の拡大断面を示す。電流端子12A,12Bの抵抗体11との接続部X,Xの近傍には、電圧端子14A,14Bが配置されている。電圧端子14A,14Bは、電流端子12A,12Bに設けた貫通孔に挿入され、電流端子12A,12Bに固定されている。電圧端子14A,14Bの一端は、電流端子12A,12Bから突出している。
【0036】
電圧端子14A,14Bの他端には、鍔状に張り出したフランジ部25が形成されている。電流端子12A,12Bの下面側には、フランジ部25が収まる凹部が形成されており、電流端子12A,12Bの下面とフランジ部25とが略平坦面を構成している。フランジ部25は、凹部内において電流端子12A,12Bの下面側に当接している。
【0037】
電流端子12A,12Bの下面には、補助部材13A,13Bが配置され、端子部分が2重構造となっている。補助部材13A,13Bはフランジ部25を覆うように配置されている。フランジ部25は、電流端子12A,12Bと補助部材13A,13Bとにより挟持されている。よって、電圧端子14A,14Bの固定がより強固となり、抜け若しくは押し込みによる破損を抑制することができる。
【0038】
図11は、電圧端子14A,14Bの固定に関する他の構成例である。フランジ部25が、電流端子12A,12Bの下面側において突出しており、このフランジ部25を納める凹部が補助部材13A,13Bに構成された例である。
【0039】
通常、金属の板材は厚みが増すほど、折り曲げ加工などの形状加工が困難となる。本実施例では、電流端子については、加工性を損なわない程度の厚みの材料を使用し、補助部材は厚みのある板材を使用する。そして、電流端子12A,12Bに重ねて、補助部材13A,13Bを設置する構成にした。このため、端子部分に厚みを確保することができ、抵抗体周辺に十分な熱容量を確保することができる。
【0040】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、バスバー等に接続して、抵抗体に流れる電流を検出するシャント式電流検出装置に好適に利用可能である。