特許第6802646号(P6802646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802646
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】壁体、壁体の構築方法および型枠兼用壁部材
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/86 20060101AFI20201207BHJP
   E04B 1/16 20060101ALI20201207BHJP
   E04B 1/06 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   E04B2/86 601S
   E04B2/86 601C
   E04B1/16 L
   E04B1/06
   E04B2/86 611J
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-103682(P2016-103682)
(22)【出願日】2016年5月24日
(65)【公開番号】特開2017-210774(P2017-210774A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 公直
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 祐一
(72)【発明者】
【氏名】西田 泰夫
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−062647(JP,A)
【文献】 特開昭58−011253(JP,A)
【文献】 実開昭53−077961(JP,U)
【文献】 特開昭53−030020(JP,A)
【文献】 特開2011−084861(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3057614(JP,U)
【文献】 特開2004−076396(JP,A)
【文献】 特開2014−227680(JP,A)
【文献】 米国特許第04290246(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/86
E04B 1/06
E04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
場所打ちコンクリートからなる本体部と、
前記本体部に沿って並設された複数のプレキャストコンクリート板からなる表面部と、
前記プレキャストコンクリート板に保持された縦筋および横筋と、を備える壁体であって、
前記縦筋および前記横筋のうちの少なくとも一方は、前記プレキャストコンクリート板に沿う基部と、当該プレキャストコンクリート板から張り出すラップ部とを有し、
前記基部と前記ラップ部との境界部には、前記ラップ部が前記基部よりも前記表面部から離れるように加工された段差を有しており、
隣り合う前記プレキャストコンクリート板のうちの一方に保持された前記縦筋または前記横筋の前記ラップ部と他方に保持された前記縦筋または前記横筋の前記基部とが重ね継手により連結されていることを特徴とする、壁体。
【請求項2】
一対の前記表面部が、前記本体部を挟んで対向していることを特徴とする、請求項1に記載の壁体。
【請求項3】
前記表面部の一部または全部が、前記本体部と一体となって構造体として機能することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の壁体。
【請求項4】
前記縦筋または前記横筋と交差するように配筋されたトラス筋を有し、
前記トラス筋の一部が前記本体部に埋設されていて、残りの部分が前記プレキャストコンクリート板に埋設されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の壁体。
【請求項5】
隣り合う前記プレキャストコンクリート板同士の間にコンクリートが充填された目地が形成されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の壁体。
【請求項6】
前記本体部の縦方向または横方向に沿って埋設された緊張材を介してプレストレスが付加されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の壁体。
【請求項7】
前記本体部が円筒状に形成されており、
前記本体部に埋設されたリング状の緊張材を介してプレストレスが付加されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の壁体。
【請求項8】
縦筋および当該縦筋と交差する横筋を具備する壁体の構築方法であって、
縦筋および横筋のうちの少なくとも一方を保持させてなる複数のプレキャストコンクリート板を並設するPCa板配置工程と、
前記複数のプレキャストコンクリート板の背面側にコンクリートを打設する打設工程と、を備え、
前記プレキャストコンクリート板に保持された前記縦筋または前記横筋は、前記プレキャストコンクリート板に沿う基部と、当該プレキャストコンクリート板から張り出すラップ部とを有し、
前記基部と前記ラップ部との境界部には、前記ラップ部が前記基部よりも前記プレキャストコンクリート板から離れるように加工された段差を有しており、
前記PCa板配置工程では、隣り合う前記プレキャストコンクリート板のうちの一方に保持された前記縦筋または前記横筋の前記ラップ部と、他方に保持された前記縦筋または前記横筋の基部とを重ね継手により連結することを特徴とする、壁体の構築方法。
【請求項9】
鉄筋コンクリート構造の壁体の一部を構成する型枠兼用壁部材であって、
間隔をあけて対向する一対のプレキャストコンクリート板と、
前記プレキャストコンクリート板同士の間に横架された接続部材と、
前記プレキャストコンクリート板に保持された壁筋と、を備え、
前記壁筋は、前記プレキャストコンクリート板に沿う基部と、当該プレキャストコンクリート板から張り出すラップ部とを有しており、
前記基部と前記ラップ部との境界部には、前記ラップ部が前記基部よりも前記壁筋を保持する前記プレキャストコンクリート板から離れるように加工された段差を有していることを特徴とする、型枠兼用壁部材。
【請求項10】
前記プレキャストコンクリート板同士に間に横架されて、前記プレキャストコンクリート板の上端から突出するガイド部材を備えており、
前記ガイド部材の突出部分は、前記一対のプレキャストコンクリート板の直上に配設された他の型枠兼用壁部材のプレキャストコンクリート板同士の間に挿入されることを特徴とする、請求項9に記載の型枠兼用壁部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁体、壁体の構築方法および型枠兼用壁部材に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造の壁(以下、「RC壁」という)の構築は、木製型枠工法によるものが多い。この工法では、縦筋組立工程、横筋組立工程、木製型枠設置工程、コンクリート打設工程を行ってRC壁を構築する。木製型枠は型枠剛性が乏しいために、型枠を保持する支持部材を多数配置していた。そのため、木製型枠は、組立解体作業に手間がかかり、工期短縮化の妨げになる場合があった。
一方、特許文献1には、剛性の高いプレキャストコンクリート残存型枠を使用することで工期短縮化を図る工法が開示されている。プレキャストコンクリート残存型枠は、木製型枠に比べて剛性が高いため、支持部材の簡素化を図ることができ、かつ、型枠解体工事が不要となる。そのため、特許文献1の工法によれば、施工効率が向上し、工期を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−10363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された残存型枠を使用しても、縦筋・横筋の配筋作業に要する手間までは簡素化することはできない。特に、壁筋を二列に配筋(ダブル配筋)する場合には、残存型枠を使用したとしても、配筋作業に多大な手間を要してしまう。
このような観点から、本発明は、壁筋の配筋作業に要する手間を簡素化し得る構造を具備した壁体およびその構築方法を提供することを課題とし、さらには、壁体を構築する際に壁筋の配筋作業を簡素化することが可能な型枠兼用壁部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の壁体は、場所打ちコンクリートからなる本体部と、前記本体部に沿って並設された複数のプレキャストコンクリート板からなる表面部と、前記プレキャストコンクリート板に保持された縦筋および横筋とを備えるものあって、前記縦筋および前記横筋のうちの少なくとも一方は、前記プレキャストコンクリート板に沿う基部と、当該プレキャストコンクリート板から張り出すラップ部とを有し、前記基部と前記ラップ部との境界部には前記ラップ部が前記基部よりも前記表面部から離れるように加工された段差を有しており、隣り合うプレキャストコンクリート板のうちの一方に保持された前記縦筋または前記横筋の前記ラップ部と他方に保持された前記縦筋または前記横筋の前記基部とが重ね継手により連結されていることを特徴としている。
【0006】
かかる壁体によれば、縦筋および横筋のうちの少なくとも一方がプレキャストコンクリート板に保持されているので、プレキャストコンクリート板を配置すると同時に縦筋および横筋のいずれか一方または両方の配筋が完了するため、現場での配筋作業の手間を省略あるいは軽減することができる。
また、隣り合うプレキャストコンクリート板により保持された鉄筋同士は、重ね継手によって連結されているので、PCa板同士の境界部分においても引張力を伝達することができる。
【0007】
前記壁体は、一対の前記表面部が、前記本体部を挟んで対向するように形成されていてもよいし、前記本体部の一方のみに表面部が形成されていてもよい。
また、前記表面部の一部または全部が、前記本体部と一体となって構造体として機能するものであれば、壁体の薄肉化を図ることができる。
前記縦筋または前記横筋と交差するように配筋されたトラス筋を有し、前記トラス筋の一部が前記本体部に埋設されていて、残りの部分が前記プレキャストコンクリート板に埋設されていれば、壁体のさらなる薄肉化を図ることができるとともに、表面部が本体部から脱落することを防止することができる。
隣り合う前記プレキャストコンクリート板同士の間にコンクリートが充填された目地が形成されていれば、プレキャストコンクリート板同士の隙間により施工誤差を吸収することができるとともに、施工速度の向上を図ることができる。
前記壁体に、前記本体部の縦方向または横方向に沿って埋設された緊張材を介してプレストレスが付加されていれば、さらなる壁厚の薄肉化を図ることができるとともに、耐震性能の向上を図ることができる。なお、前記本体部が円筒状に形成されている場合には、前記本体部に埋設されたリング状の緊張材を介してプレストレスを付加すればよい。
【0008】
また、本発明の壁体の構築方法は、縦筋および当該縦筋と交差する横筋を具備する壁体の構築方法であって、縦筋および横筋のうちの少なくとも一方を保持させてなる複数のプレキャストコンクリート板を並設するPCa板配置工程と、前記複数のプレキャストコンクリート板の背面側にコンクリートを打設する打設工程とを備え、前記プレキャストコンクリート板に保持された前記縦筋または前記横筋は、前記プレキャストコンクリート板に沿う基部と、当該プレキャストコンクリート板から張り出すラップ部とを有し、前記基部と前記ラップ部との境界部には、前記ラップ部が前記基部よりも前記プレキャストコンクリート板から離れるように加工された段差を有しており、前記PCa板配置工程では、隣り合う前記プレキャストコンクリート板のうちの一方に保持された前記縦筋または前記横筋の前記ラップ部と、他方に保持された前記縦筋または前記横筋の前記基部とを重ね継手により連結することを特徴としている。
かかる壁体の構築方法によれば、縦筋および横筋のうちの少なくとも一方を保持するプレキャストコンクリート板を使用するため、現場での配筋作業の手間を省略あるいは軽減することができる。また、プレキャストコンクリート板を堰板として利用しているので、桟木や単管、セパレータ等の支持部材を削減または省略できる。さらに、さらにプレキャストコンクリート板を撤去する必要がないので、型枠解体作業が不要になる。
【0009】
また、本発明の型枠兼用壁部材は、鉄筋コンクリート構造の壁体の一部を構成する部材であって、間隔をあけて対向する一対のプレキャストコンクリート板と、前記プレキャストコンクリート板同士の間に横架された接続部材と、前記プレキャストコンクリート板に保持された壁筋とを備え、前記壁筋は、前記プレキャストコンクリート板に沿う基部と、当該プレキャストコンクリート板から張り出すラップ部とを有しており、前記基部と前記ラップ部との境界部には、前記ラップ部が前記基部よりも前記壁筋を保持する前記プレキャストコンクリートから離れるように加工された段差を有していることを特徴としている。
かかる型枠兼用壁部材は、壁体の型枠として機能するため、型枠の解体に要する手間を省略することができる。また、接続部材が、セパレータとして機能するとともに、補強材として剛性の確保に寄与する。
【0010】
前記型枠兼用壁部材が、前記プレキャストコンクリート板同士に間にガイド部材を介設してもよい。ガイド部材は、前記プレキャストコンクリート板の上端から突出しており、なおかつ、前記一対のプレキャストコンクリート板の直上に配設された他の型枠兼用壁部材のプレキャストコンクリート板同士の間に挿入される。このようにすると、型枠兼用壁部材を積み重ねる際の位置決めが容易となり、施工性が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、配筋作業に要する手間を簡素化できる。また、本発明によれば、型枠解体作業が不要になるので、コストの削減および工期の短縮が見込める。さらには、プレキャストコンクリート板に保持された壁筋が、壁体の剛性に寄与できるので、トータルコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第一の実施形態に係る壁体を示す斜視図である。
図2】型枠兼用壁部材を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
図3】プレキャストコンクリート板に保持された壁筋を示す斜視図である。
図4】(a)はガイド部材を示す斜視図、(b)はガイド部材に接続部材が載置された状態を示す側面図、(c)は(b)のA−A矢視図である。
図5】壁体の施工状況を示す正面図である。
図6】(a)および(b)は第二の実施形態に係る壁体の施工状況を示す斜視図である。
図7】第三の実施形態に係るタンクの斜視図である。
図8】型枠兼用壁部材を示す平面図である。
図9】壁体の施工状況を示す斜視図であって、(a)はPCa板配置工程、(b)は配筋工程である。
図10】打設工程を示す斜視図である。(a)は打設工程、(b)は(a)に続くPCa板配置工程である。
図11図10に続くPCa板配置工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第一の実施形態>
第一の実施形態では、鉄筋コンクリート造の壁体1について説明する。
壁体1は、図1に示すように、本体部2と、本体部2の前後の表面に形成された表面部3,3とを備えている。
本体部2は、場所打ちコンクリートにより形成されている。本体部2には、補強材として、壁筋4(縦筋41および横筋42)が埋設されている(図2参照)。
【0014】
本実施形態の壁体1は、一対の表面部3,3が本体部2を挟んで対向している。
一対の表面部3,3は、複数の型枠兼用壁部材5,5,…を上下左右に連設することにより形成されている。
型枠兼用壁部材5は、図2(a)および(b)に示すように、間隔をあけて対向する一対のプレキャストコンクリート板51,51と、プレキャストコンクリート板51同士の間に横架された複数の接続部材52,52と、プレキャストコンクリート板51同士の間に介設されたガイド部材53と、プレキャストコンクリート板51に保持された壁筋4(縦筋41および横筋42)とを備えている。すなわち、表面部3は、本体部2に沿って並設された複数のプレキャストコンクリート板51,51,…により形成されている。
【0015】
プレキャストコンクリート板51は、正面視矩形状のコンクリート板により形成されている。なお、プレキャストコンクリート板51の形状寸法は限定されるものではない。
図1に示すように、上下左右に隣接するプレキャストコンクリート板51同士の間には隙間(目地)が形成されている。プレキャストコンクリート材同士の間の目地にはコンクリートが充填されている。なお、目地材はコンクリートに限定されるものではなく、例えばモルタルであってもよい。
プレキャストコンクリート板51の内面側には、壁筋4が配筋されている。本実施形態では、壁筋4として、縦筋41、横筋42およびトラス筋43,44(図3参照)が配筋されている。なお、壁筋4の構成は限定されるものではない。
【0016】
縦筋41および横筋42は、図3に示すように、プレキャストコンクリート板51の内面に沿って配筋されている。
縦筋41は、プレキャストコンクリート51の長手方向に沿って所定のピッチにより配筋されている。縦筋41の配筋ピッチおよび鉄筋径は限定されるものではなく、適宜設計すればよい。
縦筋41は、プレキャストコンクリート板51の高さよりも大きな長さを有していて、プレキャストコンクリート板51に沿う基部41aと、プレキャストコンクリート板51の上端から張り出すラップ部41bとを有している。縦筋41は、基部41aとラップ部41bとの境界部において段差を有している。縦筋41のラップ部41bは基部41aよりもプレキャストコンクリート板51から離れるように加工されている。縦筋41のラップ部41bは、上方に配設された他の型枠兼用壁部材5のプレキャストコンクリート板51,51同士の間に挿入されて、当該他の型枠兼用部材5の縦筋41の基部41aの内側に添設される。
【0017】
横筋42は、プレキャストコンクリート51の高さ方向に沿って所定のピッチにより配筋されている。横筋42は、縦筋41と交差している。なお、横筋42の配筋ピッチおよび鉄筋径は限定されるものではなく、適宜設計すればよい。
横筋42は、プレキャストコンクリート板51の幅よりも大きな長さを有していて、プレキャストコンクリート板51に沿う基部42aと、プレキャストコンクリート板51から張り出すラップ部42bとを有している。すなわち、本実施形態の型枠兼用壁部材5は、縦筋41と横筋42との両方が、プレキャストコンクリート板51の端部から張り出している。
横筋42の基部42aとラップ部42bとの間には、傾斜部42cが形成されている。傾斜部42cは、基部42aからラップ部42bに向うにつれてプレキャストコンクリート板51から離れるように傾斜している。ラップ部42bは、基部41aよりもプレキャストコンクリート板51から離れている。横筋42のラップ部42bは、側方に隣接する他の型枠兼用壁部材5のプレキャストコンクリート板51,51同士の間に挿入されて、当該他の型枠兼用部材5の横筋42の基部42aの内側に添設される。
【0018】
図3に示すように、プレキャストコンクリート板51の内側面(他のプレキャストコンクリート板51側の面)には、トラス筋43,44が配筋されている。トラス筋43,44は、一部が本体部2に埋設されていて、残りの部分がプレキャストコンクリート板51に埋設されている。
本実施形態では、縦筋41と交差するように配筋されたトラス筋(横トラス筋)43と、横筋42と交差するように配筋されたトラス筋(縦トラス筋)44とを備えている。なお、横トラス筋43および縦トラス筋44は、必要に応じて配筋すればよく、省略してもよい。また、プレキャストコンクリート板51には、横トラス筋43および縦トラス筋44のいずれか一方のみが配筋されていてもよい。
【0019】
横トラス筋43は、縦筋41を保持している。本実施形態では、横トラス筋43とプレキャストコンクリート板51とにより囲まれた空間に縦筋41を挿入するとともに、縦筋41を横トラス筋43に固定している。なお、縦筋41の固定方法は限定されるものではないが、例えば、結束線により縦筋41と横トラス筋43とを結束するか溶接すればよい。
縦トラス筋44は、横筋42を保持している。本実施形態では、縦トラス筋44とプレキャストコンクリート板51とにより囲まれた空間に横筋42を挿入するとともに、横筋42を縦トラス筋44に固定している。なお、横筋42の固定方法は限定されるものではないが、例えば、横筋42と縦トラス筋44とを結束線により結束するか溶接すればよい。
【0020】
接続部材52は、図2(b)に示すように、プレキャストコンクリート板51同士の間に横架されていて、プレキャストコンクリート板51同士の間隔を保持している。
本実施形態の接続部材52は、凹字状の鋼材(溝形鋼)からなる。接続部材52は、開口部分が上になるように設けられている。なお、接続部材52を構成する材料は限定されるものではなく、例えばL型鋼を使用してもよい。また、接続部材52は、開口部分が下側になるように設けられていてもよく、接続部材52の向きは限定されるものではない。
本実施形態では、上下2段の接続部材52,52が、プレキャストコンクリート板51の長手方向に間隔をあけて複数列配設されているが、接続部材52の数や配置は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
接続部材52の両端には、固定部52aが一体に形成されている。固定部52aは、プレキャストコンクリート板51の内面に固定された板材であって、接続部材52の端部に溶接されている。なお、接続部材52の固定方法は、限定されるものではない。また、固定部52aの形成方法も限定されるものではない。
【0021】
ガイド部材53は、図2(b)に示すように、プレキャストコンクリート板51の上部に固定されている。ガイド部材53の上部は、プレキャストコンクリート板51の上端から突出しており、ガイド部材53の下部は、プレキャストコンクリート板51の内面(他のプレキャストコンクリート板51側の面)に固定されている。ガイド部材53のプレキャストコンクリート板51への固定方法は限定されるものではないが、本実施形態ではボルト接合されている。
【0022】
図4(a)に示すように、ガイド部材53は、一対の縦材53a,53aと、一対の縦材に横架された横材53bと、一対の縦材53a,53aと横材53bとをつなぐ一対の斜材53c,53cを備えている。なお、ガイド部材53の構成は限定されるものではない。ガイド部材53は、縦材53aの下部を貫通するボルトBによりプレキャストコンクリート板51に固定されている。なお、ガイド部材53の固定方法は限定されない。
ガイド部材53の上部(プレキャストコンクリート板51の上端からの突出部分)は、直上に配設された他の型枠兼用壁部材5のプレキャストコンクリート板51,51同士の間に挿入される。ガイド部材53には、上方に配設された型枠兼用壁部材5の接続部材52が上載される。
【0023】
縦材53aの上部は、図4(b)に示すように、上端に向うに従って幅が小さくなるように傾斜している。このようにすると、上側に隣接する他の型枠兼用壁部材5にガイド部材53を挿入しやすくなる。
縦材53aの上端には、受台53dが形成されている。受台53dは、凹字状の鋼材を縦材53aの上端に固定(例えば溶接)することにより形成されている。図4(b)および(c)に示すように、受台53dは、型枠兼用壁部材5を上下に重ねた際に、上側の型枠兼用壁部材5の接続部材52を挿入することが可能な形状を有している。なお、受材53dは、必ずしも凹字状の鋼材である必要はなく、例えば、平板であってもよい。また、接続部材52を上載することが可能となるように縦材53aの上端を加工した場合や、接続部材52をガイド部材53に載置する必要がない場合等には、受材53dを省略してもよい。
【0024】
次に、本実施形態の壁体の構築方法について説明する。
壁体の構築方法は、PCa板配置工程と、打設工程とを備えている。
PCa板材配置工程は、図5に示すように、複数のプレキャストコンクリート板51,51,…を並設する工程である。本実施形態では、段毎に型枠兼用壁部材5を左右に並べることでプレキャストコンクリート板51を並設する。
縦筋41および横筋42は、プレキャストコンクリート板51に保持されているため、型枠兼用壁部材5を配置すると、必要な壁筋4が配筋される。隣り合う型枠兼用壁部材5に保持された壁筋4同士は、互いのラップ部41b,42bと基部41a,42aとが重ね継手により連結される。
【0025】
既設の型枠兼用壁部材5の上に型枠兼用壁部材5を上載すると、ガイド部材53によりプレキャストコンクリート板51同士の間に隙間が形成される。また、ガイド部材53と接合部材52とが係合されるため、型枠兼用壁部材5の横方向(図5において左右)の位置決めも同時に完了する。上下に隣接するプレキャストコンクリート板51同士および左右に隣接するプレキャストコンクリート板51同士の間には、それぞれ目地(隙間)が形成される。なお、目地6は、必要に応じて形成すればよく、プレキャストコンクリート板51同士は当接していてもよい。
【0026】
打設工程は、表面部3(対向するプレキャストコンクリート板51)同士の間にコンクリートを打設する工程である。コンクリートの打設は、プレキャストコンクリート板51同士の隙間に型枠(図示せず)を設置した状態で行う。コンクリートは、壁筋4を巻き込むように打設する。
コンクリート養生後、型枠を撤去し、目地6にコンクリートを充填する。
なお、コンクリートの打設は、型枠兼用壁部材5の段毎に行ってもよいし、型枠兼用壁部材5を複数段組み立ててからまとめて行ってもよい。
【0027】
以上、第一の実施形態の壁体1および壁体の施工方法によれば、縦筋41および横筋42がプレキャストコンクリート板51に保持されているため、型枠兼用壁部材5を配置すると同時に、壁筋4の配筋が完了する。また、縦筋41および横筋42は、プレキャストコンクリート板51から突出したラップ部41b、42bを利用した重ね継手により連続しているため、型枠兼用壁部材5同士の境界部分においても引張力を伝達することができる。そのため、現場での配筋作業の手間を大幅に軽減することができ、ひいては、所望の耐力を有した壁体1を簡易に構築することができる。
【0028】
表面部3は、トラス筋43,44等を介して本体部2と一体に形成されているため、本体部2と一体となって構造体として機能する。そのため、壁体1の全体の壁厚の薄肉化を図ることができ、経済的である。
また、トラス筋43,44が本体部2と表面部3とに跨って配筋されているため、プレキャストコンクリート板51の脱落が防止されている。
プレキャストコンクリート板51同士の間に目地6が形成されるため、万が一施工誤差が生じた場合であっても、目地6により吸収することができる。
【0029】
プレキャストコンクリート板51を堰板として利用しているので、桟木や単管、セパレータ等の支持部材を削減または省略できる。さらに、型枠解体作業が不要なため、施工性に優れている。
型枠兼用壁部材5を利用しているため、型枠を目地のみに配設すればよい。そのため型枠工に要する手間を軽減することができる。すなわち、型枠兼用壁部材5を並設することで、所望の位置に型枠を設置することができる。また、型枠兼用壁部材5は撤去する必要がないため、型枠の撤去に要する手間を省略することができる。型枠兼用壁部材5がガイド部材53を有しているため、型枠兼用壁部材5の位置決めが容易である。
【0030】
<第二の実施形態>
第二の実施形態では、柱7,7間に形成される壁体1について説明する。
図6(a)および(b)に示すように、壁体1は、左右の柱7,7の間に、型枠兼用壁部材5,5を積み上げることにより形成する。
型枠兼用壁部材5は、間隔をあけて対向する一対のプレキャストコンクリート板51,51と、プレキャストコンクリート板51同士の間に横架された複数の接続部材52,52(図2(b)参照)と、プレキャストコンクリート板51に保持された壁筋4(縦筋41および横筋42)とを備えている。なお、型枠兼用壁部材5には、必要に応じてガイド部材が配設される。
【0031】
プレキャストコンクリート板51は、壁体1の表面部3となる。プレキャストコンクリート板51の詳細は、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0032】
縦筋41および横筋は、プレキャストコンクリート板51の内面に沿って配筋されている。
縦筋41は、プレキャストコンクリート51の長手方向に沿って所定のピッチにより配筋されている。縦筋41の配筋ピッチおよび鉄筋径は限定されるものではなく、適宜設計すればよい。
縦筋41は、プレキャストコンクリート板51の高さよりも大きな長さを有していて、プレキャストコンクリート板51に沿う基部41aと、プレキャストコンクリート板51の上端から張り出すラップ部41bとを有している。縦筋41は、基部41aとラップ部41bとの境界部において段差を有している。縦筋41のラップ部41bは、基部41aよりもプレキャストコンクリート板51から離れるように加工されている。縦筋41のラップ部41bは、上方に配設された他の型枠兼用壁部材5のプレキャストコンクリート板51,51同士の間に挿入されて、当該他の型枠兼用壁部材5の縦筋41の基部41aの内側に添設される。
【0033】
横筋42は、プレキャストコンクリート板51の高さ方向に沿って所定のピッチにより配筋されている。横筋42は、縦筋41と直交している。横筋42は、プレキャストコンクリート板51の幅寸法内に収まる長さを有している。すなわち、本実施形態の型枠兼用壁部材5は、縦筋のみがプレキャストコンクリート板51の端部から張り出している。なお、横筋42の配筋ピッチおよび鉄筋径は限定されるものではなく、適宜設計すればよい。また、プレキャストコンクリート板51の内面には、必要に応じてトラス筋を配筋してもよい。
接続部材52は、プレキャストコンクリート板51同士の間に横架されていて、プレキャストコンクリート板51同士の間隔を保持している(図2(b)参照)。接続部材52の詳細は第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0034】
次に、本実施形態の壁体の構築方法について説明する。
壁体の構築方法は、PCa板配置工程と、打設工程とを備えている。
PCa板材配置工程は、複数のプレキャストコンクリート板51,51を配設する工程である。本実施形態では、左右の柱7,7の間に型枠兼用壁部材5を挿入することでプレキャストコンクリート板51を配設する。
縦筋41および横筋42は、プレキャストコンクリート板51に保持されているため、型枠兼用壁部材5を配置すると、必要な壁筋4が配筋される。上下に隣り合う型枠兼用壁部材5に保持された縦筋41同士は、互いの基部41aとラップ部41bとが重ね継手により連結される。
【0035】
柱7には、型枠兼用壁部材5側の面に、複数の定着部材71,71,…が予め植設されている。なお、定着部材71の構成や形成方法は限定されるものではない。例えば、柱7を構築する際に鉄筋を側面から突出させることにより定着部材71を形成してもよいし、柱7の側面に鉄筋等を後施工により植設することにより定着部材71を形成してもよい。
型枠兼用壁部材5を柱7同士の間に配設すると、定着部材71,71,…が前後のプレキャストコンクリート板51,51の間に挿入されるとともに、定着部材71,71,…が横筋42,42,…と重ね継手により連結される。
【0036】
打設工程は、表面部3(対向する前後のプレキャストコンクリート板51,51)同士の間にコンクリートを打設する工程である。コンクリートは、壁筋4および定着部材71を巻き込むように打設する。
なお、コンクリートの打設は、型枠兼用壁部材5の段毎に行ってもよいし、型枠兼用壁部材5を複数段組み立ててからまとめて行ってもよい。
【0037】
以上、第二の実施形態の壁体1および壁体の施工方法によれば、縦筋41および横筋42がプレキャストコンクリート板51に保持されているため、型枠兼用壁部材5を配置すると同時に、壁筋4の配筋が完了する。また、縦筋41は、プレキャストコンクリート板51から突出したラップ部41bを利用した重ね継手により連続しているため、型枠兼用壁部材5同士の境界部分においても引張力を伝達することができる。そのため、現場での配筋作業の手間を大幅に軽減することができ、ひいては、所望の耐力を有した壁体1を簡易に構築することができる。
壁体1は、定着部材71を介して柱7と接合されているため、柱7とともに建物の躯体として機能する。
【0038】
プレキャストコンクリート板51を堰板として利用しているので、桟木や単管、セパレータ等の支持部材を削減または省略できる。さらに、型枠解体作業が不要なため、施工性に優れている。
型枠兼用壁部材5を利用しているため、型枠の設置および撤去に要する手間を省略することができる。すなわち、型枠兼用壁部材5を並設することで、所望の位置に型枠を設置することができる。また、型枠兼用壁部材5は撤去する必要がないため、型枠の撤去に要する手間を省略することができる。
【0039】
<第三の実施形態>
第三の実施形態では、図7に示すタンクTの壁体1を形成する場合について説明する。
壁体1は、円筒状に形成されている。なお、壁体1の形状は円筒状に限定されるものではなく、例えば角筒状であってもよい。
壁体1には、横方向に沿って埋設された緊張材を介してプレストレスが導入されている。なお、壁体1には、縦方向に沿って緊張材が埋設されていてもよい。
【0040】
本実施形態の壁体1は、一対の表面部3,3が本体部2を挟んで対向している(図10参照)。
一対の表面部3,3は、複数の型枠兼用壁部材5,5,…を上下左右に連設することにより形成されている。
型枠兼用壁部材5は、図8に示すように、間隔をあけて対向する一対のプレキャストコンクリート板51,51と、プレキャストコンクリート板51同士の間に横架された複数の接続部材52,52,…と、プレキャストコンクリート板51に保持された横筋42とを備えている。すなわち、表面部3は、本体部2に沿って並設された複数のプレキャストコンクリート板51,51,…により形成されている。なお、型枠兼用壁部材5には、必要に応じてガイド部材が配設されている。
型枠兼用壁部材5は、タンクTの内空側において左右に隣り合うプレキャストコンクリート板51同士の隙間が、タンクTの外側において左右に隣り合うプレキャストコンクリート板51同士の隙間よりも小さくなるように配設する。
なお、プレキャストコンクリート板51の詳細は、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0041】
プレキャストコンクリート板51の内面側には、壁筋4が配筋されている。本実施形態では、壁筋4として、横筋42およびトラス筋43が配筋されている。なお、壁筋4の構成は限定されるものではない。
横筋42は、プレキャストコンクリート51の高さ方向に沿って所定のピッチにより配筋されている。なお、横筋42の配筋ピッチおよび鉄筋径は限定されるものではなく、適宜設計すればよい。
【0042】
横筋42は、プレキャストコンクリート板51の幅よりも大きな長さを有していて、プレキャストコンクリート板51に沿う基部42aと、プレキャストコンクリート板51から張り出すラップ部42bとを有している。横筋42の基部42aとラップ部42bとの間には、傾斜部42cが形成されている。傾斜部42cは、基部42aからラップ部42bに向うにつれてプレキャストコンクリート板51から離れるように傾斜している。ラップ部42bは、基部41aよりもプレキャストコンクリート板51から離れている。本実施形態のラップ部42bは、円筒状の壁体1の形状に応じて、タンクTの内空側に折り曲げられている。すなわち、ラップ部42bは、基部42a(プレキャストコンクリート板51)に対して傾斜している。
横筋42のラップ部42bは、図9(a)に示すように、側方に隣接する他の型枠兼用壁部材5のプレキャストコンクリート板51,51同士の間に挿入されて、当該他の型枠兼用壁部材5の横筋42の基部42aの内側に添設される。すなわち、本実施形態の型枠兼用壁部材5は、横筋42のみをプレキャストコンクリート板51の端部から張り出させた状態で予め保持している。
【0043】
図8に示すように、プレキャストコンクリート板51の内側面(他のプレキャストコンクリート板51側の面)には、トラス筋43が植設されている。トラス筋43は、一部が本体部2に埋設されていて、残りの部分がプレキャストコンクリート板51に埋設されている。
トラス筋43は、横筋42に沿って配筋されている。なお、トラス筋43必要に応じて配筋すればよく、省略してもよい。
トラス筋43は、縦筋41を保持する。本実施形態では、トラス筋43とプレキャストコンクリート板51とにより囲まれた空間に縦筋41を挿入することにより縦筋を配筋する。なお、縦筋41の固定方法は限定されるものではないが、例えば、結束線により縦筋41と横トラス筋43とを結束すればよい。
【0044】
本実施形態の縦筋41は、型枠兼用壁部材5を所定の位置に配設した後に、プレキャストコンクリート板51の長手方向に沿って所定のピッチにより配筋される。縦筋41の配筋ピッチおよび鉄筋径は限定されるものではなく、適宜設計すればよい。なお、縦41は、プレキャストコンクリート板51によって予め保持されていてもよい。
縦筋41は、プレキャストコンクリート板51の高さよりも大きな長さを有していて、図9(b)に示すように、配筋した際に、上部がプレキャストコンクリート板51の上端から突出する。縦筋41は、上方に配設された他の型枠兼用壁部材5のプレキャストコンクリート板51,51同士の間に挿入される。
【0045】
接続部材52は、図8に示すように、プレキャストコンクリート板51同士の間に横架されていて、プレキャストコンクリート板51同士の間隔を保持している。なお、接続部材52の詳細は、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0046】
次に、本実施形態の壁体の構築方法について説明する。
壁体の構築方法は、PCa板配置工程と、緊張材設定工程と、配筋工程と、型枠工程と、打設工程とを備えている。
PCa板材配置工程は、図9(a)に示すように、複数のプレキャストコンクリート板51,51,…を並設する工程である。型枠兼用壁部材5を左右に並べることでプレキャストコンクリート板51を並設する。
型枠兼用壁部材5は、プレキャストコンクリート板51を介して横筋42が保持しているため、型枠兼用壁部材5の配置をすると、必要な横筋42が配筋される。隣り合う型枠兼用壁部材5に保持された横筋42同士は、互いのラップ部42bと基部42aとが重ね継手により連結される。
【0047】
緊張材設置工程は、プレキャストコンクリート板51同士の間にリング状の緊張材8を配設する工程である。
配筋工程は、図9(b)に示すように、縦筋41を配筋する工程である。縦筋41は、トラス筋43とプレキャストコンクリート板51と隙間に挿入することにより配筋する。
型枠工程は、プレキャストコンクリート板51同士の隙間に型枠9を設置する工程である。なお、型枠9の設置にともない、緊張材8に緊張力を付与する。なお、緊張材8に緊張力を付与するタイミングは限定されない。
【0048】
打設工程は、図10(a)に示すように、表面部3(対向するプレキャストコンクリート板51)同士の間にコンクリートを打設する工程である。コンクリートは、壁筋4(縦筋41および横筋42)を巻き込むように打設する。
コンクリート養生後、型枠9を撤去し、目地6にコンクリートを充填する。
引き続き、図10(b)に示すように、PCa板配置工程と、緊張材設定工程と、配筋工程と、型枠工程と、打設工程を繰り返すことにより、所定の高さの壁体1を形成する。なお、緊張材8の端部(定着体11)に対応する部分では、図11に示すように、内側のプレキャストコンクリート板51を配設する。
【0049】
以上、第三の実施形態の壁体1および壁体の施工方法によれば、型枠兼用壁部材5を配置すると同時に、横筋42の配筋が完了する。また、横筋42は、重ね継手により連続しているため、型枠兼用壁部材5同士の境界部分においても引張力を伝達することができる。そのため、現場での配筋作業の手間を大幅に軽減することができ、ひいては、所望の耐力を有した壁体1を簡易に構築することができる。
プレキャストコンクリート板51同士の間に目地6が形成されているため、万が一施工誤差が生じた場合であっても、目地6により吸収することができる。
プレキャストコンクリート板51を堰板として利用しているので、桟木や単管、セパレータ等の支持部材を削減または省略できる。
型枠兼用壁部材5を利用しているため、型枠の設置および撤去に要する軽減することができる。すなわち、型枠兼用壁部材5を並設することで、所望の位置に型枠を設置することができ、したがって、プレキャストコンクリート板51同士の目地のみに型枠9を設置すればよい。また、型枠兼用壁部材5は撤去する必要がないため、型枠の撤去に要する手間を軽減することができる。
壁体1は、リング状の緊張材8を介してプレストレスが付加されているため、高耐力かつ耐震性に優れている。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記各実施形態では、一対の表面部3,3が、本体部2を挟んで対向するように形成された壁体1について説明したが、壁体1は、本体部2の一方のみに表面部3が形成されていてもよい。
前記各実施形態では、対向するプレキャストコンクリート板51,51が同一形状である場合について説明したが、対向するプレキャストコンクリート板51,51の形状は異なっていてもよい。例えば、円筒状の壁体1を形成する場合において、外周側のプレキャストコンクリート板51の幅(長手方向の長さ)が、内周側のプレキャストコンクリート板51の幅よりも大きくてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 壁体
2 本体部
3 表面部
4 壁筋
41 縦筋
42 横筋
43,44 トラス筋
5 型枠兼用壁部材
51 プレキャストコンクリート板
52 接続部材
53 ガイド部材
6 目地
7 柱
8 緊張材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11