特許第6802661号(P6802661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802661
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】部品把持具
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
   B25J15/08 C
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-154380(P2016-154380)
(22)【出願日】2016年8月5日
(65)【公開番号】特開2018-20417(P2018-20417A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】前田 晴章
【審査官】 貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−29186(JP,A)
【文献】 特開平6−244264(JP,A)
【文献】 特開平9−103982(JP,A)
【文献】 実開平3−130391(JP,U)
【文献】 米国特許第6361095(US,B1)
【文献】 特開平6−80245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接近することで部品を把持し、離間することで把持した部品を離脱する1対の把持部と、
上下方向に移動可能なピストンと、
前記ピストンの上下方向への移動を前記1対の把持部を接近若しくは、離間させる方向への移動に変換する変換機構と、
前記1対の把持部の最大離間距離が第1距離と第2距離となるように、前記ピストンの上下方向への移動量を規制する規制機構と
を備え
前記第1距離が、前記規制機構により前記ピストンの上下方向への移動量が規制されている際の前記1対の把持部の最大離間距離であり、
前記第2距離が、前記ピストンの最大ストローク範囲において前記ピストンが最も下方若しくは上方に移動している際の前記1対の把持部の最大離間距離であり、
前記規制機構が、
前記ピストンと接触する第1の位置と、その第1の位置と異なる第2の位置との間で移動可能な移動部材を有し、前記移動部材が前記第1の位置において前記ピストンと接触することで、前記1対の把持部の最大離間距離が前記第1距離となるように、前記ピストンの上下方向への移動量を規制し、
前記ピストンの下面と前記移動部材との一方に、凸部が形成され、
前記ピストンの下面と前記移動部材との他方に、前記凸部を嵌合可能な凹部が形成されており、
前記移動部材が前記第2の位置に移動している際に、前記凸部が前記凹部に嵌合し、前記ピストンが最も下方に移動することで、前記1対の把持部の最大離間距離が前記第2距離とされることを特徴とする部品把持具。
【請求項2】
前記部品把持具が、装着ヘッドに着脱可能とされており、
前記移動部材が、前記装着ヘッドに設けられた駆動源の作動により前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動することを特徴とする請求項1に記載の部品把持具。
【請求項3】
前記移動部材が前記第1の位置に移動している際に、前記凸部が前記ピストンの下面と前記移動部材との他方に接触することで、前記ピストンの上下方向への移動量が規制され、前記1対の把持部の最大離間距離が前記第1距離とされることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の部品把持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接近することで部品を把持し、離間することで把持した部品を離脱する1対の把持部を有する部品把持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メカチャックとよばれる部品把持具では、1対の把持部を接近させることで、1対の把持部の間において部品を把持し、1対の把持部を離間することで把持した部品が離脱される。下記特許文献には、そのような構造の部品把持具の一例が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−079591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載の構造の部品把持具では、1対の把持部の間において部品が把持される。この際、1対の把持部が最も離間した状態での1対の把持部の間の距離、つまり、最大離間距離より小さい部品が、1対の把持部によって把持される。このため、部品把持具を用いて電子部品の装着作業が実行される作業装置では、把持対象の部品のサイズに応じて、最大離間距離の異なる部品把持具に交換される。ただし、部品サイズに応じて部品把持具を交換していては、多くの種類の部品把持具を準備する必要があり、スペース,コスト等の観点からすれば、望ましくない。また、部品把持具の交換により、生産タクトが低下する。このように、把持部により部品を把持する部品把持具には、改良の余地が多分に残されており、種々の改良を施すことで、部品把持具の実用性は向上すると考えられる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高い部品把持具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本願に記載の部品把持具は、接近することで部品を把持し、離間することで把持した部品を離脱する1対の把持部と、上下方向に移動可能なピストンと、前記ピストンの上下方向への移動を前記1対の把持部を接近若しくは、離間させる方向への移動に変換する変換機構と、前記1対の把持部の最大離間距離が第1距離と第2距離となるように、前記ピストンの上下方向への移動量を規制する規制機構とを備え、前記第1距離が、前記規制機構により前記ピストンの上下方向への移動量が規制されている際の前記1対の把持部の最大離間距離であり、前記第2距離が、前記ピストンの最大ストローク範囲において前記ピストンが最も下方若しくは上方に移動している際の前記1対の把持部の最大離間距離であり、前記規制機構が、前記ピストンと接触する第1の位置と、その第1の位置と異なる第2の位置との間で移動可能な移動部材を有し、前記移動部材が前記第1の位置において前記ピストンと接触することで、前記1対の把持部の最大離間距離が前記第1距離となるように、前記ピストンの上下方向への移動量を規制し、前記ピストンの下面と前記移動部材との一方に、凸部が形成され、前記ピストンの下面と前記移動部材との他方に、前記凸部を嵌合可能な凹部が形成されており、前記移動部材が前記第2の位置に移動している際に、前記凸部が前記凹部に嵌合し、前記ピストンが最も下方に移動することで、前記1対の把持部の最大離間距離が前記第2距離とされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に記載の部品把持具では、ピストンの上下方向への移動が1対の把持部を接近若しくは、離間させる方向への移動に変換されることで、1対の把持部により部品を把持し、その把持した部品が離脱される。また、1対の把持部の最大離間距離が第1距離と第2距離となるように、ピストンの上下方向への移動量が規制される。つまり、ピストンの上下方向への移動量が規制されることで、1対の把持部の最大離間距離が変更される。このため、本発明に記載の部品把持具によれば、把持対象の部品のサイズに応じて、1対の把持部の最大離間距離を変更することが可能となる。これにより、多くの種類の部品把持具を準備する必要が無くなる。また、部品把持具の交換に伴う生産タクトの低下を抑制することが可能となる。このように、本発明によれば、実用性の高い部品把持具が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電子部品装着装置を示す斜視図である
図2】装着ヘッドを示す側面図である。
図3】部品把持具を示す断面図である。
図4】部品把持具を示す断面図である。
図5】部品把持具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0009】
電子部品装着装置の構成
図1に、電子部品装着装置10を示す。電子部品装着装置10は、1つのシステムベース12と、そのシステムベース12の上に隣接された2台の電子部品装着機(以下、「装着機」と略す場合がある)14とを有している。なお、装着機14の並ぶ方向をX軸方向と称し、その方向に直角な水平の方向をY軸方向と称する。
【0010】
各装着機14は、主に、装着機本体20、搬送装置22、装着ヘッド移動装置(以下、「移動装置」と略す場合がある)24、供給装置26、装着ヘッド28、ノズルステーション30を備えている。装着機本体20は、フレーム部32と、そのフレーム部32に上架されたビーム部34とによって構成されている。
【0011】
搬送装置22は、2つのコンベア装置40,42を備えている。それら2つのコンベア装置40,42は、互いに平行、かつ、X軸方向に延びるようにフレーム部32に配設されている。2つのコンベア装置40,42の各々は、電磁モータ(図示省略)によって各コンベア装置40,42に支持される回路基板をX軸方向に搬送する。また、回路基板は、所定の位置において、基板保持装置(図示省略)によって保持される。
【0012】
移動装置24は、XYロボット型の移動装置である。移動装置24は、スライダ50をX軸方向にスライドさせる電磁モータ(図示省略)と、Y軸方向にスライドさせる電磁モータ(図示省略)とを備えている。スライダ50には、装着ヘッド28が取り付けられており、その装着ヘッド28は、2つの電磁モータの作動によって、フレーム部32上の任意の位置に移動させられる。
【0013】
供給装置26は、フィーダ型の供給装置であり、複数のテープフィーダ70を有している。テープフィーダ70は、テープ化部品を巻回させた状態で収容している。テープ化部品は、電子部品がテーピング化されたものである。そして、テープフィーダ70は、送り装置(図示省略)によって、テープ化部品を送り出す。これにより、フィーダ型の供給装置26は、テープ化部品の送り出しによって、電子部品を供給位置において供給する。
【0014】
装着ヘッド28は、回路基板に対して電子部品を装着するものである。装着ヘッド28は、図2に示すように、1対の昇降ユニット80を有している。各昇降ユニット80は、本体部82によって昇降可能かつ、自転可能に保持されている。各昇降ユニット80の下端面には、装着部86が設けられており、装着部86に、電子部品を把持するための部品把持具(図3参照)88が着脱可能に装着される。なお、図2では、部品把持具88が装着されていない状態の装着部86が示されている。
【0015】
また、装着ヘッド28は、各昇降ユニット80を個別に自転させるための自転装置90と、各昇降ユニット80を個別に昇降させるための昇降装置(図示省略)とを有している。これにより、各昇降ユニット80が制御可能に昇降し、制御可能に自転することで、部品把持具88に把持された電子部品の上下方向の位置および、電子部品の保持姿勢が変更される。以下に、電子部品を把持するための部品把持具88の具体的な構造について説明する。
【0016】
部品把持具88は、図3に示すように、ノズル100と、上部ハウジング102と、取付部104と、下部ハウジング106と、ピストン107と、スライド機構108と、変換機構110と、規制機構112とを有している。ノズル100は、ノズル穴118が形成された円筒状のノズル部120と、ノズル部120の上端に形成されたフランジ部122とにより構成されている。上部ハウジング102は、概して円筒状をなし、上部ハウジング102の上端部の内径は、ノズル100のフランジ部122の外径より僅かに大きくされている。そして、上部ハウジング102の上端に、ノズル100のフランジ部122が固定的に嵌合されている。これにより、上部ハウジング102の上端の開口が、ノズル100のフランジ部122によって塞がれ、ノズル部120が上部ハウジング102の内部に向かって延び出している。
【0017】
取付部104は、概して円板状をなし、取付部104の下面に、上部ハウジング102が、ノズル100のフランジ部122と共に固定されている。なお、取付部104の中央には、貫通穴126が形成されており、貫通穴126と、ノズル100のノズル穴118とが連通している。また、下部ハウジング106は、円筒状の本体部128と、本体部128の上端を塞ぐ蓋部130とから構成されている。下部ハウジング106の本体部128の外径は、上部ハウジング102の内径より僅かに小さくされており、本体部128の上部が、上部ハウジング102の内部に挿入されている。これにより、上部ハウジング102と下部ハウジング106とが上下方向に相対的に移動可能とされている。
【0018】
また、下部ハウジング106の蓋部130は、上部ハウジング102の内部に挿入されており、円環部132と、円環部132の内縁から上方に突出する凸部134とから構成されている。つまり、下部ハウジング106の蓋部130は、段付き形状の蓋部となっている。また、凸部134の中央には、上下方向に貫通する貫通穴136が形成されており、貫通穴136の内径は、ノズル100のノズル部120の外径より僅かに大きくされている。そして、凸部134の貫通穴136にノズル100のノズル部120が挿入されている。これにより、上部ハウジング102と下部ハウジング106との相対移動に伴って、貫通穴136の内周面とノズル部120の外周面とが摺動する。
【0019】
また、ノズル100のフランジ部122と、下部ハウジング106の円環部132との間に、圧縮された状態でコイルばね138が配設されている。これにより、コイルばね138の弾性力によって、下部ハウジング106が下方に向かって付勢されている。なお、下部ハウジング106の外周面には、上下方向に延びるように、キー溝140が形成され、上部ハウジング102の内周面には、キー142が形成されている。そして、キー142がキー溝140に嵌合されており、下部ハウジング106が下方に向かって付勢されている際に、キー溝140の上端にキー142が当接することで、下部ハウジング106の上部ハウジング102からの脱落が防止される。
【0020】
また、ピストン107は、短円筒状の円筒部150と、円筒部150の下端を塞ぐ底部152とから構成されている。ピストン107の円筒部150の外径は、下部ハウジング106の本体部128の内径より僅かに小さくされており、ピストン107が、底部152を下に向けた状態で、下部ハウジング106の本体部128に挿入されている。これにより、ピストン107が下部ハウジング106の内部において、上下方向に摺動する。なお、下部ハウジング106とピストン107とによってエア室156が区画され、エア室156は、ノズル100のノズル穴118および、取付部104の貫通穴126を介して、正負圧供給装置(図示省略)に連結されている。
【0021】
また、ピストン107の底部152は、円環部158と、円環部158の内縁から下方に突出する凹部160とから構成されている。つまり、ピストン107の底部152は、段付き形状の底部となっている。そして、下部ハウジング106の凸部134と、ピストン107の凹部160との間に、圧縮された状態でコイルばね162が配設されている。これにより、コイルばね162の弾性力によって、ピストン107が下方に向かって付勢されている。なお、ピストン107の凹部160の底面には、中央から僅かにズレた位置において、上方に突出する突出部166が形成されており、突出部166の内部には、凹部160の下面に開口する挿入穴168が形成されている。
【0022】
また、下部ハウジング106の本体部128の内周面には、本体部128の内部に向かって突出するフランジ部170が形成されている。フランジ部170は、円環状をなし、フランジ部の内縁の内径は、ピストン107の凹部160の外径より大きくされている。そして、コイルばね162の弾性力によってピストン107が下方に向かって付勢されることで、ピストン107の凹部160はフランジ部170の内縁から下方に向かって突出し、ピストン107の円環部158が、下部ハウジング106のフランジ部170に接触する。これにより、フランジ部170がピストン107のストッパとして機能し、ピストン107の下方への移動が規制される。
【0023】
また、エア室156に正負圧供給装置により負圧が供給されること、つまり、エア室156からエアが吸引されることで、ピストン107が、コイルばね162の弾性力に抗して、上方に移動する。この際、ピストン107の上方への移動に伴って、ピストン107の円筒部150の上端が、下部ハウジング106の円環部132の下面に接触する。これにより、円環部132がピストン107のストッパとして機能し、ピストン107の上方への移動が規制される。つまり、ピストン107の最大ストローク範囲のうちの上端は、ピストン107の円筒部150の上端が下部ハウジング106の円環部132に接触する位置であり、下端は、ピストン107の円環部158が下部ハウジング106のフランジ部170に接触する位置である。
【0024】
また、スライド機構108は、保持部172と、1対のスライダ174と、1対の把持爪176とを有している。保持部172は、概して矩形の板状をなし、左右方向に延びる姿勢で、下部ハウジング106の下端に固定されている。1対のスライダ174は、保持部172によって、左右方向にスライド可能に保持されており、後に説明するが、ピストン107の上下方向への移動に伴って、接近・離間する。1対の把持爪176は、1対のスライダ174の下端面に、下方に延び出すようにして固定されている。そして、1対のスライダ174が接近することで、1対の把持爪176により電子部品が把持され、1対のスライダ174が離間することで、1対の把持爪176により把持された電子部品が離脱する。
【0025】
また、変換機構110は、1対のブラケット180と、1対の搖動アーム182とを有している。1対のブラケット180は、概して矩形の板状をなし、ピストン107の凹部160の下面の両縁部に、下方に向かって延び出すように固定されている。また、1対の搖動アーム182は、概して直角三角形の板状をなし、対称的に配設されている。なお、各搖動アーム182は、直角の角部において、揺動軸186を中心に搖動可能に、下部ハウジング106により保持されている。
【0026】
搖動アーム182の鋭角の角部には、その角部の先端から搖動アーム182の内部に向かって切り欠かれた第1切欠部188が形成されている。1対の搖動アーム182は、互いの第1切欠部188が向かい合う状態に搖動されており、第1切欠部188とブラケット180の下端部とが、図3の奥行方向において重なっている。そして、ブラケット180の下端部には、第1係合ピン190が第1切欠部188に向かって立設されており、第1切欠部188に係合している。
【0027】
また、搖動アーム182の別の鋭角の角部には、その角部の先端から搖動アーム182の内部に向かって切り欠かれた第2切欠部196が形成されている。1対の搖動アーム182は、互いの第2切欠部196が反対側に位置する状態に搖動されており、第2切欠部196とスライダ174とが、図3の奥行方向において重なっている。そして、スライダ174には、第2係合ピン198が第2切欠部196に向かって立設されており、第2切欠部196に係合している。
【0028】
このような構造により、ピストン107の上下方向への移動が、1対のスライダ174、つまり、1対の把持爪176を接近、若しくは離間させる方向への移動に変換される。詳しくは、エア室156に負圧が供給されることで、ピストン107が、コイルばね162の弾性力に抗して、上方に向かって移動し、ブラケット180も上方に向かって移動する。そして、図4に示すように、ブラケット180に固定された第1係合ピン190の上方への移動に伴って、その第1係合ピン190と係合する搖動アーム182の第1切欠部188も上方に向かって移動する。この際、1対の搖動アーム182は、互いの第2切欠部196が接近するように搖動し、互いの第2切欠部196に係合する1対の第2係合ピン198が接近する。これにより、1対のスライダ174が接近する方向にスライドし、1対の把持爪176が接近する。
【0029】
一方、エア室156への負圧の供給が停止され、エア室156に僅かに正圧が供給されることで、ピストン107が、コイルばね162の弾性力によって、下方に向かって移動し、ブラケット180も下方に向かって移動する。そして、図3に示すように、ブラケット180に固定された第1係合ピン190の下方への移動に伴って、その第1係合ピン190と係合する搖動アーム182の第1切欠部188も下方に向かって移動する。この際、1対の搖動アーム182は、互いの第2切欠部196が離間するように搖動し、互いの第2切欠部196に係合する1対の第2係合ピン198が離間する。これにより、1対のスライダ174が離間する方向にスライドし、1対の把持爪176が離間する。このように、変換機構110によって、ピストン107の上下方向への移動が1対の把持爪176を接近、若しくは離間させる方向への移動に変換される。
【0030】
また、規制機構112は、ストッパ200と、プランジャ202とを有している。ストッパ200は、棒状の軸部206と、軸部206の中央から軸部206と直行する方向に突出する規制部208とから構成されている。ストッパ200は、ピストン107と変換機構110との間において、軸部206が変換機構110のスライダ174のスライド方向に延びるように配設されており、その方向にスライド可能とされている。なお、下部ハウジング106の外周面には、ストッパ200の軸部206の両端部と対向する箇所に、1対の貫通穴210,212が形成されている。また、ストッパ200の規制部208の外寸は、ピストン107の挿入穴168の内寸より小さくされており、ピストン107が、コイルばね162の弾性力によって、最も下方に移動されている際に、挿入穴168の内部に規制部208が挿入されている。なお、ピストン107が最も下方に移動されている際に、ピストン107の円環部158は、下部ハウジング106のフランジ部170に接触し、ストッパ200の規制部208の先端部は、ピストン107の挿入穴168の底面に接触する。
【0031】
また、プランジャ202は、プランジャピン216を下方に向けた状態で、下部ハウジング106の内部において、ストッパ200の軸部206の上方に配設されており、プランジャピン216が軸部206に向かって付勢されている。ストッパ200の軸部206には、プランジャピン216と対向する箇所に、第1係合穴218が形成されており、弾性力によって付勢されたプランジャピン216が第1係合穴218に係合している。また、ストッパ200の軸部206には、第1係合穴218の隣に、第2係合穴220が形成されており、ストッパ200のスライドにより、プランジャピン216が第2係合穴220に係合する。
【0032】
詳しくは、図3に示すストッパ200が左方向にスライドされると、プランジャピン216の第1係合穴218への係合が解除され、プランジャピン216が第2係合穴220に係合する。ただし、ストッパ200の規制部208がピストン107の挿入穴168に挿入されていると、ストッパ200をスライドさせることができない。このため、ストッパ200のスライド前に、エア室156に正負圧供給装置により負圧が供給され、ピストン107が上方に移動される。これにより、ストッパ200の規制部208が挿入穴168から抜かれる。そして、ストッパ200が左方向にスライドされることで、図5に示すように、プランジャピン216の第1係合穴218への係合が解除され、プランジャピン216が第2係合穴220に係合する。
【0033】
なお、部品把持具88が装着される装着ヘッド28には、ストッパ200をスライドさせるための押出装置(図2参照)230が設けられている。詳しくは、図2に示すように、装着ヘッド28の下端部には、1対の押出装置230が設けられている。1対の押出装置230は、1対の装着部86に対応して設けられている。押出装置230は、ロッドアーム232と、屈曲アーム234と、プッシャーピン236とを有している。ロッドアーム232は、概して棒状をなし、昇降ユニット80の側方から下方に向かって延び出しており、本体部82によって搖動可能に保持されている。なお、ロッドアーム232の搖動方向は、図2の奥行方向とされている。また、屈曲アーム234は、概してL字型に屈曲されており、ロッドアーム232の下端から水平方向において装着部86に接近し、下方に屈曲する姿勢で、ロッドアーム232の下端に固定されている。そして、プッシャーピン236は、屈曲アーム234の先端部に、図2の奥行方向に延びる姿勢で固定されている。
【0034】
このような構造により、ロッドアーム232が搖動することで、装着部86に装着された部品把持具88に向かって、プッシャーピン236が接近する。この際、プッシャーピン236によってストッパ200が押され、スライドする。具体的には、図3に示すように、ストッパ200の第1係合穴218にプランジャピン216が係合している際に、ストッパ200の規制部208は、ピストン107の挿入穴168に挿入されている。このため、第1係合穴218にプランジャピン216が係合している際のストッパ200の位置を、挿入位置と記載する。そして、ストッパ200が挿入位置に移動している際に、ストッパ200の軸部206の貫通穴210の側の端面は、下部ハウジング106の外周面と面一とされている。
【0035】
このように、ストッパ200が挿入位置に移動している際に、下部ハウジング106の貫通穴210が押出装置230のプッシャーピン236と対向するように、部品把持具88の装着された装着部86が、自転装置90によって自転される。そして、押出装置230のロッドアーム232が搖動されることで、ストッパ200が、プッシャーピン236によって内部に向かって押される。これにより、ストッパ200が、図3での左方向にスライドし、図5に示すように、プランジャピン216の第1係合穴218への係合が解除され、プランジャピン216が第2係合穴220に係合する。なお、ストッパ200のスライド時には、上述したように、ピストン107が上方に移動され、ピストン107の挿入穴168へのストッパ200の規制部208の挿入が解除されている。
【0036】
また、図5に示すように、ストッパ200の第2係合穴220にプランジャピン216が係合している際に、ストッパ200の規制部208は、ピストン107の下面に接触し、ピストン107の下方への移動を規制している。このため、第2係合穴220にプランジャピン216が係合している際のストッパ200の位置を、規制位置と記載する。そして、ストッパ200が規制位置に移動している際に、ストッパ200の軸部206の貫通穴212の側の端面は、下部ハウジング106の外周面と面一とされている。
【0037】
このように、ストッパ200が規制位置に移動している際に、下部ハウジング106の貫通穴212が押出装置230のプッシャーピン236と対向するように、部品把持具88の装着された装着部86が、自転装置90によって自転される。そして、押出装置230のロッドアーム232が搖動されることで、ストッパ200が、プッシャーピン236によって内部に向かって押される。これにより、ストッパ200が、図5での右方向にスライドすることで、図3に示すように、挿入位置に移動し、プランジャピン216の第2係合穴220への係合が解除され、プランジャピン216が第1係合穴218に係合する。なお、ストッパ200が挿入位置に移動することで、ピストン107の挿入穴168にストッパ200の規制部208が挿入される。これにより、ピストン107の下方への移動の規制が解除され、ピストン107の円環部158が下部ハウジング106のフランジ部170に接触するまで、つまり、ピストン107の最大ストローク範囲のうちの下端まで、ピストン107は下降する。
【0038】
このように、ストッパ200は、押出装置230の作動により、挿入位置と規制位置との間で移動し、挿入位置において、第1係合穴218にプランジャピン216が係合することで、位置決めされ、規制位置において、第2係合穴220にプランジャピン216が係合することで、位置決めされる。そして、ストッパ200が規制位置に移動している際に、ストッパ200の規制部208によって、ピストン107の下方への移動が規制され、ストッパ200が挿入位置に移動している際に、規制部208によるピストン107の移動規制が解除され、最大ストローク範囲のうちの下端に移動する。
【0039】
また、図1に示すように、ノズルステーション30は、ノズルトレイ240を有している。ノズルトレイ240には、複数の部品把持具88が収容されている。このノズルステーション30では、装着ヘッド28の装着部86に取り付けられている部品把持具88と、ノズルトレイ240に収容されている部品把持具88との交換等が、必要に応じて行われる。
【0040】
装着機による装着作業
装着機14では、上述した構成によって、搬送装置22に保持された回路基板に対して、装着ヘッド28によって装着作業が行われる。具体的には、装着機14の制御装置(図示省略)の指令により、回路基板が作業位置まで搬送され、その位置において、基板保持装置によって保持される。また、テープフィーダ70は、制御装置の指令により、テープ化部品を送り出し、電子部品を供給位置において供給する。そして、装着ヘッド28が、電子部品の供給位置に移動し、エア室156に負圧が供給される。これにより、装着ヘッド28に装着された部品把持具88において、1対の把持爪176が接近し、1対の把持爪176によって電子部品が把持される。そして、装着ヘッド28が、回路基板の装着予定位置の上方に移動し、エア室156への負圧の供給が停止され、エア室156に僅かに正圧が供給される。これにより、装着ヘッド28に装着された部品把持具88において、1対の把持爪176が離間し、1対の把持爪176によって把持された電子部品が離脱されることで、回路基板に装着される。
【0041】
このように、装着機14では、部品把持具88の1対の把持爪176によって把持された電子部品が、回路基板に装着される。この際、装着予定の電子部品のサイズに応じて、1対の把持爪176が最も離間している状態での1対の把持爪176の間の距離(以下、「最大離間距離」と記載する)が変更される。具体的には、図3に示すように、規制機構112のストッパ200が挿入位置に移動している際に、ピストン107は、最大ストローク範囲のうちの下端まで移動しており、1対の把持爪176の最大離間距離はLとされている。このため、電子部品のサイズがL未満であれば、1対の把持爪176によって把持することが可能である。ただし、電子部品のサイズが小さい場合には、把持爪176の移動量が多くなり、タイムロスとなる。
【0042】
例えば、サイズがLより僅かに小さな電子部品(図3で実線により図示)250を、1対の把持爪176により把持する際には、把持爪176の移動量は僅かである。一方、サイズがLより比較的小さな電子部品(図3で点線により図示)252を、1対の把持爪176により把持する際には、把持爪176の移動量は、電子部品250を把持する場合の3倍程度となる。このため、把持爪176を移動させる時間が長くなり、タイムロスとなる。
【0043】
そこで、小さなサイズの電子部品の装着作業時には、図5に示すように、規制機構112のストッパ200が規制位置に移動される。ストッパ200が規制位置に移動されると、上述したように、ストッパ200の規制部208によって、ピストン107の下方への移動が規制され、ピストン107は、最大ストローク範囲のうちの下端まで移動できない。このため、ピストン107の下方への移動規制に伴って、1対の把持爪176の離間する方向へのスライドが規制され、1対の把持爪176の最大離間距離はL(<L)とされる。このように、1対の把持爪176の最大離間距離が短くされることで、小さいサイズの電子部品を把持する際の把持爪176の移動量を少なくすることが可能となる。
【0044】
具体的には、図3図5とを比較して解るように、最大離間距離がLの1対の把持爪176によって電子部品252を把持する際の把持爪176の移動量X図5参照)は、最大離間距離がLの1対の把持爪176によって電子部品252を把持する際の把持爪176の移動量X図3参照)の半分程度となっている。これにより、電子部品252を把持する際の把持爪176の移動に要する時間を短縮することが可能となり、タイムロスを抑制することが可能となる。
【0045】
また、従来の部品把持具は、1対の把持爪の最大離間距離を変更する構造とされていない。このため、最大離間距離の異なる複数の部品把持具が、ノズルステーション30のノズルトレイ240に予め収納されており、装着部品のサイズに応じて、ノズルステーション30において、装着ヘッド28に装着される部品把持具が交換される。一方、本発明の部品把持具88では、最大離間距離を変更することが可能とされている。このため、多くの部品把持具88をノズルトレイ240に収容する必要が無くなり、ノズルトレイ240への部品把持具88の収容数を少なくすることが可能となる。また、部品把持具88では、ストッパ200の位置を押出装置230の作動により挿入位置と規制位置との間で移動させるだけで、最大離間距離を変更することが可能となる。これにより、ノズルトレイ240における部品把持具の交換を省くことが可能となり、サイクルタイムを短縮することが可能となる。
【0046】
また、部品把持具88には、ストッパ200を移動させる駆動源が設けておらず、その駆動源、つまり、押出装置230は装着ヘッド28に設けられている。これにより、部品把持具88の構造を簡素化することが可能となる。
【0047】
なお、装着ヘッド28は、装着ヘッドの一例である。部品把持具88は、部品把持具の一例である。ピストン107は、ピストンの一例である。変換機構110は、変換機構の一例である。規制機構112は、規制機構の一例である。挿入穴168は、凹部の一例である。把持爪176は、把持部の一例である。ストッパ200は、移動部材の一例である。規制部208は、凸部の一例である。押出装置230は、駆動源の一例である。規制位置は、第1の位置の一例である。挿入位置は、第2の位置の一例である。最大離間距離Lは、第2距離の一例である。最大離間距離Lは、第1距離の一例である。
【0048】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、上記実施例では、最大離間距離がLとLとの2段階で変更されているが、3段階以上、若しくは、連続的に変更してもよい。
【0049】
また、上記実施例では、ピストン107が下降することで、1対の把持爪176が離間し、ピストン107が上昇することで、1対の把持爪176が接近する構造の部品把持具88が採用されているが、ピストン107が上昇することで、1対の把持爪176が離間し、ピストン107が下降することで、1対の把持爪176が接近する構造の部品把持具を採用してもよい。なお、このような構造の部品把持具を採用する場合には、規制機構によってピストンの上方への移動が規制される。
【0050】
また、上記実施例では、ストッパ200がピストン107の下面に接触することで、ピストン107の移動が規制されるが、種々の部材が種々の態様でピストン107に接触することで、ピストン107の移動を規制してもよい。例えば、所定の部材が、ピストン107の所定の部位に、係合,掛止,噛合,嵌合,挿入等することで、ピストン107の移動を規制してもよい。
【符号の説明】
【0051】
28:装着ヘッド 88:部品把持具 107:ピストン 110:変換機構
112:規制機構 168:挿入穴(凹部) 176:把持爪(把持部) 200:ストッパ(移動部材) 208:規制部(凸部) 230:押出装置(駆動源)
図1
図2
図3
図4
図5