(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動制御部は、前記基板に前記加熱部により前記熱処理が行われた後に、前記基板の温度が前記処理膜のミクロ相分離が生じない温度に低下するまで前記基板が前記第1の位置で保持されるように前記基板移動部を制御し、
前記熱処理装置は、
前記熱処理後の前記基板移動部による前記基板の保持後に前記チャンバ内の溶剤含有気体を空気で置換する置換部をさらに備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、種々の実験を行った結果、上記の従来のDSA技術を用いたパターン形成方法では、DSA材料のミクロ相分離が適切に行われない場合が生じることがわかった。その場合、所望のパターンを得ることができない。
【0008】
本発明
の目的は、誘導自己組織化材料の適切なミクロ相分離を生じさせることが可能な熱処理装置およびそれを備えた基板処理装置ならびに熱処理方法およびそれを含む基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第1の発明に係る熱処理装置は、誘導自己組織化材料からなる処理膜が形成された基板に熱処理を行う熱処理装置であって、基板に予め設定された熱処理温度で熱処理を行う加熱部と、加熱部を収容するチャンバと、有機溶剤を含む溶剤含有気体をチャンバ内に供給する気体供給部と、チャンバ内で加熱部により基板に熱処理が行われない第1の位置と加熱部により基板に熱処理が行われる第2の位置とに基板を移動させる基板移動部と、チャンバ内に気体供給部により供給された溶剤含有気体が存在する状態で基板が第1の位置で保持されるように基板移動部を制御した後、チャンバ内に溶剤含有気体が存在する状態で基板が第2の位置で保持されるように基板移動部を制御する移動制御部とを備え
、第1の位置は、溶剤含有気体が存在する状態で加熱部の温度が熱処理温度である場合に処理膜にミクロ相分離が行われない位置に設定され、第2の位置は、溶剤含有気体が存在する状態で加熱部の温度が熱処理温度である場合に処理膜にミクロ相分離が行われる位置に設定される。
【0010】
その熱処理装置においては、チャンバ内に溶剤含有気体が存在する状態で、第1の位置で熱処理が行われずに基板が保持される。それにより、基板上の処理膜が溶剤含有気体に接する。誘導自己組織化材料を構成する複数の重合体に対する有機溶剤の親和性は互いに近い。すなわち、処理膜に接する雰囲気が中性化されている。その後、第2の位置で基板に熱処理が行われる。それにより、処理膜においてミクロ相分離が生じる。この場合、熱処理前に処理膜に接する雰囲気が中性化されているので、誘導自己組織化材料を構成する一の重合体のみが雰囲気に接する層を形成することが防止される。その結果、誘導自己組織化材料の適切なミクロ相分離を生じさせることが可能となる。
【0011】
(2)加熱部は、加熱面を有する加熱プレートを含み、第1の位置は加熱プレートの加熱面の上方位置であり、第2の位置は加熱プレートにより熱処理が行われるように加熱面に近接した位置であり、基板移動部は、基板を支持しつつチャンバ内で基板を加熱面の上方位置と加熱面に近接した位置とに移動させる支持部材を含んでもよい。
【0012】
この場合、基板を上下移動させることにより雰囲気の中性化および基板の熱処理を簡単な構成で行うことができる。
【0014】
(
3)熱処理装置は、基板が基板移動部により第1の位置で保持された状態で、チャンバ内の空気を排出することによりチャンバ内を減圧する排気部をさらに備え、気体供給部は、排気部により減圧されたチャンバ内に溶剤含有気体を供給してもよい。
【0015】
この場合、空気を溶剤含有気体に効率良く置換することができる。それにより、ミクロ相分離により形成されるパターンに欠陥が生じにくくなる。
【0016】
(
4)熱処理装置は、チャンバ内の溶剤濃度を検出する溶剤濃度検出部をさらに備え、排気部および気体供給部は、溶剤濃度検出部により検出され溶剤濃度が予め設定された許容値以上になるようにチャンバ内を排気するとともにチャンバ内に溶剤含有気体を供給してもよい。
【0017】
この場合、溶剤含有気体中の溶剤濃度が許容値以上になるので、ミクロ相分離により形成されるパターンに欠陥が生じることが防止される。
【0018】
(
5)移動制御部は、基板に加熱部により熱処理が行われた後に、基板の温度が処理膜のミクロ相分離が生じない温度に低下するまで基板が第1の位置で保持されるように基板移動部を制御し、熱処理装置は、熱処理後の基板移動部による基板の保持後にチャンバ内の溶剤含有気体を空気で置換する置換部をさらに備えてもよい。
【0019】
この場合、チャンバ内の溶剤含有気体が空気で置換されるときに基板上の処理膜においてミクロ相分離が生じない。したがって、空気中でミクロ相分離が生じることが防止される。
【0020】
(
6)溶剤含有気体は不活性ガスを含んでもよい。
【0021】
(
7)本発明に係る基板処理装置は、基板に誘導自己組織化材料を塗布することにより基板上に処理膜を形成する塗布装置と、塗布装置により基板上に形成された処理膜に熱処理を行う上記の熱処理装置とを備える。
【0022】
その基板処理装置によれば、基板上に誘導自己組織化材料からなる処理膜を形成することができるとともに、処理膜において誘導自己組織化材料の適切なミクロ相分離を生じさせることが可能となる。
【0023】
(
8)基板処理装置は、熱処理装置による熱処理後の処理膜に露光処理を行う露光装置と、露光装置による露光処理後の処理膜に現像処理を行う現像装置とをさらに備える。
【0024】
この場合、誘導自己組織化材料の適切なミクロ相分離が生じた処理膜にパターンを形成することができる。
【0025】
(
9)本発明に係る熱処理方法は、誘導自己組織化材料からなる処理膜が形成された基板に熱処理を行う熱処理方法であって、加熱部を収容するチャンバ内において有機溶剤を含む
溶剤含有気体が存在する状態で加熱部により熱処理が行われない第1の位置で基板を保持する工程と、第1の位置で基板を保持した後、チャンバ内において加熱部により熱処理が行われる第2の位置で基板を保持する工程とを含
み、第1の位置は、溶剤含有気体が存在する状態で加熱部の温度が予め定められた熱処理温度である場合に処理膜にミクロ相分離が行われない位置に設定され、第2の位置は、溶剤含有気体が存在する状態で加熱部の温度が熱処理温度である場合に処理膜にミクロ相分離が行われる位置に設定される。
【0026】
この熱処理方法においては、処理膜に接する雰囲気が中性化されているので、誘導自己組織化材料を構成する一の重合体のみが雰囲気に接する層を形成することが防止される。その結果、誘導自己組織化材料の適切なミクロ相分離を生じさせることが可能となる。
【0027】
(
10)本発明に係る基板処理方法は、塗布装置において、基板上に誘導自己組織化材料からなる処理膜を形成する工程と、処理膜が形成された基板に上記の熱処理方法により熱処理を行う工程とを含む。
【0028】
その基板処理方法によれば、基板上に誘導自己組織化材料からなる処理膜を形成することができるとともに、処理膜において誘導自己組織化材料の適切なミクロ相分離を生じさせることが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、誘導自己組織化材料の適切なミクロ相分離を生じさせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態に係る熱処理装置およびそれを備えた基板処理装置ならびに熱処理方法およびそれを含む基板処理方法について図面を用いて説明する。なお、以下の説明において、基板とは、半導体基板、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板およびフォトマスク用基板等をいう。
【0032】
(1)熱処理装置
図1は本発明の一実施の形態に係る熱処理装置の構成を示す模式的断面図である。
図1に示すように、熱処理装置300は、チャンバ310を備える。チャンバ310は、底板311、周壁312および蓋313により構成される。周壁312の下部開口を閉塞するように底板311が設けられる。底板311と周壁312とはシール部材Se1によりシールされる。周壁312の内側において、底板311上に加熱プレート320が設けられる。加熱プレート320内には、発熱体(ヒータ)が設けられる。
【0033】
蓋313の中心部には、供給口314が形成される。蓋313の下側には、複数の孔を有する拡散板315が取り付けられる。蓋313は、周壁312の上部開口を閉塞するように設けられる。蓋313と周壁312とはシール部材Se2によりシールされる。
【0034】
蓋313は蓋昇降装置330に接続される。蓋昇降装置330によって蓋313が上方位置と下方位置との間で昇降される。蓋313が上方位置にある場合、周壁312の上部開口が開放される。蓋313が下方位置にある場合、周壁312の上部開口が閉塞される。この場合、蓋313の下面がシール部材Se2に密着し、チャンバ310の内部に気密な処理空間が形成される。
【0035】
加熱プレート320の上面には、複数(例えば3つ)のプロキシミティボール321が設けられる。加熱プレート320の上面が加熱面となる。加熱プレート320の上面から一定距離(例えば0.1mm)だけ離間するように複数のプロキシミティボール321上に基板Wが載置される。加熱プレート320を上下方向に貫通するように、複数(例えば3つ)の貫通孔322が設けられる。底板311の下面には、シール部材Se3を介して補助板340が配置される。シール部材Se1,Se2,Se3は例えばOリングからなる。補助板340には底板311の複数の貫通孔322に対応する複数の貫通孔が形成される。底板311の複数の貫通孔を取り囲むように底板311の下面に複数の円筒部材341が取り付けられる。
【0036】
複数の円筒部材341の内部、底板311の複数の貫通孔および加熱プレート320の複数の貫通孔322に複数(例えば3つ)の支持ピン350がそれぞれ挿入される。複数の支持ピン350の上端上に基板Wが支持される。各支持ピン350と円筒部材341との間にはシール部材Se4が設けられる。シール部材Se4は、例えば金属シールである。
【0037】
補助板340の下方には、連結部材351が配置される。複数の支持ピン350は上下方向に延びるように連結部材351に取り付けられる。連結部材351は、支持ピン昇降装置352と接続される。支持ピン昇降装置352は、例えばエアシリンダにより構成される。支持ピン昇降装置352により、複数の支持ピン350が上方位置と下方位置との間で一体的に昇降される。シール部材Se1〜Se4によりチャンバ310の内部に気密な処理空間が形成される。
【0038】
蓋313の供給口314には、共通供給管PCの一端が接続される。共通供給管PCの他端には、ガス供給管PGの一端および複数の溶剤供給管PSの一端が接続される。ガス供給管PGにはガス供給バルブV1が介挿され、複数の溶剤供給管PSには溶剤供給バルブV2がそれぞれ介挿される。ガス供給管PGの他端は、ガス供給源GSに接続される。複数の溶剤供給管PSの他端は溶剤供給源SSにそれぞれ接続される。ガス供給源GSは、窒素ガス等の不活性ガスを供給する。複数の溶剤供給源SSは、それぞれ異なる種類の有機溶剤(以下、溶剤と略記する。)を気化された状態で供給する。例えば、溶剤としては、トルエン、ヘプタン、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、イソプロピルアルコール(IPA)、二硫化炭素またはテトラヒドロフラン等が用いられる。
【0039】
ガス供給バルブV1が開かれることにより、ガス供給源GSから不活性ガスがガス供給管PG、共通供給管PCおよび供給口314を通してチャンバ310内に供給される。1または複数の溶剤供給バルブV2が選択的に開かれることにより、その溶剤供給バルブV2に対応する溶剤供給源SSから気化された溶剤が溶剤供給管PS、共通供給管PCおよび蓋313の供給口314を通してチャンバ310内に供給される。これにより、複数種類の溶剤のうち選択された1種類の溶剤または混合された複数種類の溶剤が基板Wに供給される。ガス供給バルブV1が開かれるとともに1または複数の溶剤供給バルブV2が開かれることにより、不活性ガスと選択された1種類または複数種類の溶剤とが混合されてチャンバ310内に供給される。
【0040】
周壁312には、検出孔316が形成される。検出孔316は検出管Pdを通して溶剤濃度センサ380に接続される。検出管Pdには、検出バルブV3が介挿される。溶剤濃度センサ380は、チャンバ310内の溶剤濃度を検出する。
【0041】
周壁312の下部には、外周面に沿って複数の排気口318が設けられる。排気口318は、排気管Pe1,Pe2を通して外部排気部EXに接続される。排気管Pe2には、排気バルブV4および排気ポンプPMが介挿される。排気ポンプPMが作動しかつ排気バルブV4が開かれると、チャンバ310内の雰囲気が排気管Pe1,Pe2を通して外部排気部EXに導かれる。これにより、チャンバ310内が減圧される。
【0042】
熱処理装置300は熱処理コントローラ390を備える。熱処理コントローラ390は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)およびRAM(ランダムアクセスメモリ)等を含む。ROMには、制御プログラムが記憶される。CPUはROMに記憶された制御プログラムをRAMを用いて実行することにより熱処理装置300の各部の動作を制御する。
【0043】
(2)熱処理装置の制御系統
図2は
図1の熱処理装置300の制御系統の構成を示すブロック図である。
図2には、熱処理コントローラ390の機能的な構成が示される。熱処理コントローラ390は、熱処理温度制御部391、蓋開閉制御部392、支持ピン昇降制御部393、排気制御部394、ガス供給制御部395、溶剤供給制御部396、溶剤濃度取得部397および時間計測部398を含む。
図2の熱処理コントローラ390の各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。
【0044】
熱処理温度制御部391は加熱プレート320の温度を制御し、蓋開閉制御部392は蓋昇降装置330の動作を制御し、支持ピン昇降制御部393は支持ピン昇降装置352の動作を制御する。排気制御部394は排気バルブV4の開閉を制御し、ガス供給制御部395はガス供給バルブV1の開閉を制御し、溶剤供給制御部396は溶剤供給バルブV2の開閉を制御する。溶剤濃度取得部397は溶剤濃度センサ380から溶剤濃度を取得し、取得した溶剤濃度を排気制御部394、ガス供給制御部395および溶剤供給制御部396に与える。時間計測部398は時間経過を計測する。各制御部391〜396の動作タイミングは、時間計測部398により計測される時間経過に基づいて決定される。
【0045】
(3)基板処理方法の一例
図3は
図1の熱処理装置300を用いた基板処理方法の一例を示す模式的断面図である。
図3(a)〜(e)の工程のうち
図3(c),(d)の工程が
図1の熱処理装置300により行われる。本例では、微細なホールパターンの形成方法が示される。
【0046】
まず、
図3(a)に示すように、基板Wの上面を覆うように下地層L1が形成され、下地層L1上に例えばフォトレジストからなるガイドパターンL2が形成される。本例では、ガイドパターンL2が円形の孔部Hを有する。次に、
図3(b)に示すように、ガイドパターンL2の孔部H内の下地層L1上の領域に、DSA(Directed Self Assembly;誘導自己組織化)材料によりDSA膜L3が形成される。DSA材料は、複数種類の重合体によって構成されるブロック共重合体である。ブロック共重合体を構成する複数種類の重合体は、互いに非相溶であることが好ましい。
【0047】
本実施の形態では、2種類の重合体から構成されるDSA材料が用いられる。2種類の重合体の組み合わせとして、例えば、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレート(PS−PMMA)、ポリスチレン−ポリジメチルシロキサン(PS−PDMS)、ポリエチレン−ポリフェロセニルジメチルシラン(PS−PFS)、ポリスチレン−ポリエチレンオキシド(PS−PEO)、ポリスチレン−ポリビニルピリジン(PS−PVP)、ポリエチレン−ポリヒドロキシスチレン(PS−PHOST)、およびポリメチルメタクリレート−ポリメタクリレートポリヘドラルオリゴメリックシ
ルセスキオキサン(PMMA−PMAPOSS)等が挙げられる。
【0048】
次に、
図3(c)に示すように、
図1の熱処理装置300のチャンバ310内に基板Wが搬入される。加熱プレート320の上面(加熱面)の温度は、予め熱処理温度に設定される。ここで、熱処理温度とは、DSA材料のミクロ相分離が生じる温度である。熱処理温度は、200℃以上であり、例えば250℃〜300℃である。熱処理温度は、本例に限定されず、DSA膜においてミクロ相分離が生じるようにDSA膜の材料に応じて決定される。
【0049】
基板Wは、加熱プレート320の上面から上方へ離間した状態で支持ピン350上に支持される。この状態で、チャンバ310内の雰囲気(空気)が溶剤と不活性ガス(本実施の形態では窒素ガス)との混合ガス(以下、溶剤含有気体と呼ぶ。)で置換される。これにより、後述する雰囲気の中性化が行われる。溶剤含有気体中の溶剤の濃度は、例えば200ppm〜800ppmである。溶剤の濃度は、本例に限定されず、DSA膜の材料に応じて決定される。このとき、基板Wは加熱プレート320から離間しているので、基板Wの温度は、DSA膜L3においてミクロ相分離が生じる温度よりも低い温度(ミクロ相分離が生じない温度)に保たれる。そのため、DSA膜L3においてミクロ相分離は生じない。例えば、基板Wの温度は200℃よりも低い温度に保たれる。
【0050】
ここで、DSA膜L3を構成する一方の重合体に対する溶剤の親和性とDSA膜L3を構成する他方の重合体に対する溶剤の親和性とはほぼ等しい。あるいは、DSA膜L3を構成する2種類の重合体に対する親和性がほぼ等しくなるように一種類または複数種類の溶剤が選択される。例えば、溶剤として、シクロヘキサノンとPGMEAとの混合溶剤、またはPGMEAとPGMEとの混合溶剤が用いられる。溶剤によりDSA膜L3に接する雰囲気が中性化される。ここで、雰囲気の中性化とは、DSA膜を構成する一の重合体に対する溶剤の親和性とDSA膜を構成する他の重合体に対する溶剤の親和性とをほぼ等しくすることを意味する。このように、基板Wを熱処理温度よりも低い温度(ミクロ相分離が生じない温度)に保ちつつ溶剤含有気体中で一定時間保持する。ここで、一定時間は、例えば1秒〜5秒であるが、これに限定されず、DSA膜の材料および形成すべきパターン等に応じて予め設定される。
【0051】
その後、
図3(d)に示すように、複数の支持ピン350が下降することにより、基板Wが加熱プレート320の上面(加熱面)上(加熱プレート320の上面に近接する位置)に支持される。加熱プレート320の上面の温度は予め熱処理温度に設定されているので、基板W上のDSA膜L3においてミクロ相分離が生じる。その結果、一方の重合体からなるパターンP1および他方の重合体からなるパターンP2が形成される。本例では、ガイドパターンL2の円形の孔部Hの内周面に沿うように、円環状のパターンP1が形成されるとともに、パターンP1の内側に円形のパターンP2が形成される。この場合、溶剤によってDSA膜L3を膨潤させることができるので、DSA材料のミクロ相分離を促進させることができる。
【0052】
次に、ミクロ相分離後のDSA膜L3の全面に露光処理が行われることにより、一方の重合体と他方の重合体との間の結合が切断され、パターンP1とパターンP2とが分離される。次に、基板W上のDSA膜L3に現像処理が行われることにより、
図3(e)に示すように、パターンP2が除去される。最終的に、基板W上に円形の孔部hを有するパターンP1(ホールパターン)が残存する。
【0053】
図4は熱処理前の雰囲気の中性化の有無によるミクロ相分離後のパターンの違いを説明するための模式図である。
図4(a),(b)は加熱プレート320による基板Wの熱処理前に雰囲気の中性化を行わなかった場合に形成されるパターンの例を示し、
図4(c)は加熱プレート320による基板Wの熱処理前に雰囲気の中性化を行った場合に形成されるパターンの例を示す。
【0054】
ここで、DSA膜L3を構成する一方の重合体は、他方の重合体に比べて空気に対して高い親和性を有する。以下、DSA膜L3を構成する2種類の重合体のうち空気に対する親和性が高い重合体を第1の重合体と呼び、空気に対する親和性が低い重合体を第2の重合体と呼ぶ。
【0055】
熱処理前に雰囲気の中性化を行わなかった場合、熱処理の際に第1の重合体が雰囲気に接するようにミクロ相分離が行われやすい。
図4(a)の例では、第1の重合体のパターンP10a、第2の重合体のパターンP20および第1の重合体のパターンP10bが層状に形成される。
図4(b)の例では、第1の重合体のパターンP11aが環状に形成されるとともに、パターンP11aの内側に第2の重合体の円形のパターンP21が形成され、パターンP11a,P21を覆うように第1の重合体のパターンP11bが層状に形成される。これらの場合、露光処理および現像処理により所望のホールパターンを形成することができない。
【0056】
これに対して、熱処理前に雰囲気の中性化を行った場合、溶剤含有気体に対する第1の重合体の親和性と溶剤含有気体に対する第2の重合体の親和性とがほぼ等しくなる。それにより、
図4(c)に示すように、第1の重合体のパターンP1が環状に形成されるとともに、パターンP1の内側に第2の重合体の円形のパターンP2が形成される。パターンP1,P2の上面を覆うパターンは形成されない。したがって、露光処理および現像処理によりパターンP2を除去することにより、所望のホールパターンを形成することができる。
【0057】
(4)熱処理装置300の動作
図5は
図1の熱処理装置300の動作を示すフローチャートである。以下、
図1、
図2および
図5を参照しながら
図1の熱処理装置300の動作を説明する。
【0058】
図2の熱処理温度制御部391は、予め加熱プレート320の温度を熱処理温度に設定する(ステップS1)。次に、蓋開閉制御部392は、蓋313を開状態にするように蓋昇降装置330を制御する(ステップS2)。支持ピン昇降制御部393は、複数の支持ピン350を上昇させるように支持ピン昇降装置352を制御する。それにより、複数の支持ピン350が基板Wを受け取る(ステップS3)。その後、支持ピン昇降制御部393は、複数の支持ピン350をチャンバ310内に下降させるように支持ピン昇降装置352を制御する。それにより、複数の支持ピン350がチャンバ310内の加熱プレート320の上方位置で基板Wを支持する(ステップS4)。その後、蓋開閉制御部392は、蓋313を閉状態にするように蓋昇降装置330を制御する(ステップS5)。
【0059】
次に、排気制御部394は、排気バルブV4を開くことによりチャンバ310内を排気する(ステップS6)。また、ガス供給制御部395は、ガス供給バルブV1を開くことによりチャンバ310内に不活性ガスを供給する(ステップS7)。さらに、溶剤供給制御部396は、一または複数の溶剤供給バルブV2を開くことによりチャンバ310内に一種類または複数種類の溶剤を供給する(ステップS8)。これにより、チャンバ310内の空気が溶剤含有気体で置換される。なお、ステップS6,S7,S8の順序は
図5の順序に限定されず、ステップS6,S7,S8が他の順序で行われてもよく、同時に行われてもよい。また、本例では、排気ポンプPMが予め動作を開始しているが、ステップS6の時点で排気ポンプPMが動作してもよい。
【0060】
溶剤濃度取得部397は、溶剤濃度センサ380から溶剤濃度を取得し、取得した溶剤濃度が予め設定された許容値以上であるか否かを判定する(ステップS9)。溶剤濃度の許容値は、例えば100ppmであるが、これに限定されず、DSA膜L3の材料または形成されるべきパターン等に応じて予め設定される。
【0061】
溶剤濃度取得部397は、溶剤濃度が許容値よりも低い場合にはステップS6に戻る。溶剤濃度が許容値以上になると、排気制御部394、ガス供給制御部395および溶剤供給制御部396が排気バルブV4、ガス供給バルブV1および溶剤供給バルブV2を閉じることにより、排気、不活性ガスの供給および溶剤の供給を停止する(ステップS10)。これにより、基板Wは、加熱プレート320から離間した状態で溶剤含有気体中で支持される。この場合、基板Wの温度は、DSA膜においてミクロ相分離が生じない温度に保たれる。
【0062】
この状態で、時間計測部398が予め設定された中性化処理時間が経過したか否かを判定する(ステップS11)。中性化処理時間が経過するまで、基板Wは、加熱プレート320から離間した状態で溶剤含有気体中で支持される。中性化処理時間は、DSA膜の材料および形成すべきパターン等に応じて予め設定される。
【0063】
中性化処理時間が経過すると、支持ピン昇降制御部393は、複数の支持ピン350を下方位置まで下降させるように支持ピン昇降装置352を制御することにより、基板Wを加熱プレート320の上面まで下降させる(ステップS12)。それにより、基板Wの温度が熱処理温度まで上昇する。
【0064】
次に、時間計測部398が予め設定された熱処理時間が経過したか否かを判定する(ステップS13)。熱処理時間が経過するまで、基板Wに熱処理が行われる。それにより、DSA膜にミクロ相分離が生じる。
【0065】
熱処理時間が経過すると、支持ピン昇降制御部393は、複数の支持ピン350をチャンバ310内で上昇させるように支持ピン昇降装置352を制御する。それにより、複数の支持ピン350がチャンバ310内の加熱プレート320の上方位置で基板Wを支持する(ステップS14)。
【0066】
この状態で、時間計測部398が予め設定された温度低下時間が経過したか否かを判定する(ステップS15)。温度低下時間は、基板Wの温度がミクロ相分離が生じない温度まで低下するために要する時間に設定される。温度低下時間が経過するまで、基板Wは、加熱プレート320から離間した状態で溶剤含有気体中で支持される。それにより、基板Wの温度が低下する。
【0067】
温度低下時間が経過すると、排気制御部394は、排気バルブV4を開くことによりチャンバ310内を排気させ(ステップS16)、蓋開閉制御部392は、蓋313を開状態にするように蓋昇降装置330を制御する(ステップS17)。それにより、チャンバ310内の溶剤含有気体が空気で置換される。その後、支持ピン昇降制御部393は、複数の支持ピン350を上昇させるように支持ピン昇降装置352を制御する(ステップS18)。それにより、チャンバ310から基板Wを搬出することができる。
【0068】
(5)基板処理装置の構成
図6は
図1の熱処理装置300を備えた基板処理装置の模式的平面図である。
図6および
図7以降の所定の図には、位置関係を明確にするために互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印を付している。X方向およびY方向は水平面内で互いに直交し、Z方向は鉛直方向に相当する。
【0069】
図6に示すように、基板処理装置100は、インデクサブロック11および処理ブロック12を備える。インデクサブロック11は、複数のキャリア載置部40および搬送部112を含む。各キャリア載置部40には、複数の基板Wを多段に収容するキャリアCがそれぞれ載置される。
【0070】
搬送部112には、主制御部114および搬送機構(搬送ロボット)115が設けられる。主制御部114は、基板処理装置100の種々の構成要素を制御する。搬送機構115は、基板Wを保持するためのハンド116を有する。搬送機構115は、ハンド116により基板Wを保持しつつその基板Wを搬送する。後述の
図9に示すように、搬送部112には、キャリアCと搬送機構115との間で基板Wを受け渡すための開口部117が形成される。
【0071】
搬送部112の側面には、メインパネルPNが設けられる。ユーザは、基板処理装置100における基板Wの処理状況等をメインパネルPNで確認することができる。また、メインパネルPNの近傍には、例えばキーボードからなる操作部(図示せず)が設けられる。ユーザは、操作部を操作することにより、基板処理装置100の動作設定等を行うことができる。
【0072】
処理ブロック12は、塗布現像処理部121、搬送部122および熱処理部123を含む。塗布現像処理部121および熱処理部123は、搬送部122を挟んで対向するように設けられる。搬送部122とインデクサブロック11との間には、基板Wが載置される基板載置部PASS1および後述する基板載置部PASS2〜PASS4(
図9)が設けられる。搬送部122には、基板Wを搬送する搬送機構(搬送ロボット)127および後述する搬送機構(搬送ロボット)128(
図9)が設けられる。
【0073】
図7は
図6の塗布現像処理部121の概略側面図である。
図7に示すように、塗布現像処理部121には、現像処理室21,23および塗布処理室22,24が階層的に設けられる。現像処理室21,23の各々には、現像装置(デベロッパ)129が設けられる。塗布処理室22,24の各々には、塗布装置(コータ)139が設けられる。
【0074】
各現像装置129は、基板Wを保持するスピンチャック25およびスピンチャック25の周囲を覆うように設けられるカップ27を備える。本実施の形態では、各現像装置129に2組のスピンチャック25およびカップ27が設けられる。各スピンチャック25は、図示しない駆動装置(例えば、電動モータ)により回転駆動される。また、各現像装置129は、スピンチャック25により保持される基板Wに現像液を供給するためのノズル28を備える。本例では、複数のスピンチャック25にそれぞれ対応するように複数のノズル28が設けられるが、複数のスピンチャック25に対して共通のノズル28が用いられてもよい。
【0075】
各塗布装置139は、基板Wを保持するスピンチャック35およびスピンチャック35の周囲を覆うように設けられるカップ37を備える。本実施の形態では、各塗布装置139に2組のスピンチャック35およびカップ37が設けられる。各スピンチャック35は、図示しない駆動装置(例えば、電動モータ)により回転駆動される。また、各塗布装置139は、スピンチャック35により保持される基板Wに処理液を供給するためのノズル38を備える。本例では、複数のスピンチャック35にそれぞれ対応するように複数のノズル38が設けられるが、複数のスピンチャック35に対して共通のノズル38が用いられてもよい。
【0076】
塗布処理室22,24の塗布装置139においては、DSA材料からなる処理液が基板Wに塗布される。これにより、基板W上にDSA膜が形成される。現像処理室21,23の現像装置129においては、DSA膜が形成された基板Wに現像処理が行われる。具体的には、DSA膜が形成された基板Wに現像液が供給されることにより、DSA膜の不要な部分が除去される。現像液としては、例えば、トルエン、ヘプタン、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、酢酸またはテトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール(IPA)等が用いられる。
【0077】
図6および
図7に示すように、塗布現像処理部121の一端には流体ボックス部50が設けられる。流体ボックス部50内には、現像装置129および塗布装置139への処理液および現像液の供給ならびに現像装置129および塗布装置139からの廃液および排気等に関する導管、継ぎ手、バルブ、流量計、レギュレータ、ポンプ、温度調節器等の流体関連機器が収納される。
【0078】
図8は
図6の熱処理部123の概略側面図である。
図8に示すように、熱処理部123は、上方に設けられる上段熱処理部301および下方に設けられる下段熱処理部302を有する。上段熱処理部301および下段熱処理部302の各々には、複数の熱処理装置300、複数の露光装置250および複数の冷却装置(クーリングプレート)CPが設けられる。
【0079】
熱処理装置300においては、上記のように、雰囲気の中性化が行われた後にDSA膜の形成後の基板Wに溶剤を用いた熱処理が行われる。露光装置250においては、溶剤熱処理後の基板Wに露光処理が行われる。冷却装置CPにおいては、DSA膜の形成前の基板Wおよび熱処理後の基板Wに冷却処理が行われる。
【0080】
図9は搬送部112,122の模式的側面図である。
図9に示すように、搬送部122は、上段搬送室125および下段搬送室126を有する。上段搬送室125には搬送機構127が設けられ、下段搬送室126には搬送機構128が設けられる。
【0081】
搬送部112と上段搬送室125との間には、基板載置部PASS1,PASS2が設けられ、搬送部112と下段搬送室126との間には、基板載置部PASS3,PASS4が設けられる。
【0082】
基板載置部PASS1,PASS3には、インデクサブロック11から処理ブロック12へ搬送される基板Wが載置される。基板載置部PASS2,PASS4には、処理ブロック12からインデクサブロック11へ搬送される基板Wが載置される。
【0083】
搬送機構127,128の各々は、ガイドレール131,132,133、移動部材134、回転部材135およびハンドH1,H2を備える。ガイドレール131,132は、上下方向に延びるようにそれぞれ設けられる。ガイドレール133は、ガイドレール131とガイドレール132と間で水平方向(X方向)に延びるように設けられ、上下動可能にガイドレール131,132に取り付けられる。移動部材134は、水平方向(X方向)に移動可能にガイドレール133に取り付けられる。
【0084】
移動部材134の上面に、回転部材135が回転可能に設けられる。回転部材135には、基板Wを保持するためのハンドH1およびハンドH2が取り付けられる。ハンドH1,H2は、回転部材135を基準に進退可能に構成される。
【0085】
このような構成により、搬送機構127,128の各々は、ハンドH1,H2を用いて基板Wを保持し、X方向およびZ方向に移動して基板Wを搬送することができる。搬送機構127は、基板載置部PASS1,PASS2、現像処理室21(
図7)、塗布処理室22(
図7)および上段熱処理部301(
図8)の間で基板
Wを搬送する。搬送機構128は、基板載置部PASS3,PASS4、現像処理室23(
図7)、塗布処理室24(
図7)および下段熱処理部302(
図8)の間で基板
Wを搬送する。
【0086】
(6)基板処理装置100の動作
基板処理装置100の動作について説明する。まず、インデクサブロック11のキャリア載置部40(
図6)に、初期状態(
図3(a))の基板Wが収容されたキャリアCが載置される。搬送機構115は、キャリアCから基板載置部PASS1および基板載置部PASS3(
図9)に交互に初期状態の基板Wを搬送する。
【0087】
基板載置部PASS1に載置された基板Wは、搬送機構127(
図9)のハンドH1により取り出される。次に、搬送機構127(
図9)は、ハンドH2により上段熱処理部301(
図8)の所定の冷却装置CPから冷却処理後の基板Wを取り出し、ハンドH1に保持される基板Wをその冷却装置CPに搬入する。この場合、冷却装置CPにおいて、基板Wの温度がDSA膜L3の形成に適した温度に調整される。
【0088】
次に、搬送機構127(
図9)は、ハンドH1により塗布処理室22(
図7)のスピンチャック35上からDSA膜L3が形成された後の基板W(
図3(b))を取り出し、ハンドH2に保持される冷却処理後の基板Wをそのスピンチャック35上に載置する。塗布処理室22において、塗布装置139(
図7)により、基板W上にDSA膜L3が形成される(
図3(b))。
【0089】
次に、搬送機構127(
図9)は、ハンドH2により上段熱処理部301(
図8)の所定の熱処理装置300から熱処理後の基板W(
図3(d))を取り出し、ハンドH1に保持されるDSA膜L3の形成後の基板Wをその熱処理装置300に搬入する。熱処理装置300において、基板Wの熱処理が行われる(
図3(c),(d))。
【0090】
次に、搬送機構127(
図9)は、ハンドH1により上段熱処理部301(
図8)の所定の冷却装置CPから冷却処理後の基板Wを取り出し、ハンドH2に保持される熱処理後の基板Wをその冷却装置CPに搬入する。この場合、冷却装置CPにおいて、基板Wの温度が露光処理に適した温度に調整される。
【0091】
次に、搬送機構127(
図9)は、ハンドH2により上段熱処理部301(
図8)の所定の露光装置250から露光処理後の基板Wを取り出し、ハンドH1に保持される冷却処理後の基板Wをその露光装置250に搬入する。露光装置250において、熱処理後の基板Wに露光処理が行われる。
【0092】
次に、搬送機構127(
図9)は、ハンドH1により現像処理室21(
図7)のスピンチャック25上から現像処理後の基板W(
図3(e))を取り出し、ハンドH2に保持される露光処理後の基板Wをそのスピンチャック35上に載置する。現像処理室21において、現像装置129により、露光処理後の基板Wに現像処理が行われる(
図3(e))。その後、搬送機構127は、ハンドH1に保持される現像処理後の基板Wを基板載置部PASS2(
図9)に載置する。
【0093】
搬送機構127が上記の処理を繰り返すことにより、処理ブロック
12内において複数の基板Wに所定の処理が連続的に行われる。
【0094】
搬送機構128は、搬送機構127と同様の動作により、基板載置部PASS3,PASS4、現像処理室23、塗布処理室24および下段熱処理部302に対して基板Wの搬入および搬出を行う。現像処理室23、塗布処理室24および下段熱処理部302において、現像処理室21、塗布処理室22および上段熱処理部301と同様の処理が行われる。
【0095】
このように、本実施の形態においては、搬送機構127によって搬送される基板Wは、現像処理室21、塗布処理室22および上段熱処理部301において処理され、搬送機構128によって搬送される基板Wは、現像処理室23、塗布処理室24および下段熱処理部302において処理される。この場合、上段の処理部(現像処理室21、塗布処理室22および上段熱処理部301)および下段の処理部(現像処理室23、塗布処理室24および下段熱処理部302)において並行して基板Wの処理を行うことができる。
【0096】
(7)効果
本実施の形態に係る基板処理装置100においては、塗布装置139により基板W上にDSA膜L3が形成される。次に、熱処理装置300のチャンバ310内で基板Wが加熱プレート320から離間された状態で溶剤含有気体中に一定時間保持される。それにより、熱処理装置300のチャンバ310内で熱処理前に雰囲気の中性化が行われる。その後、基板W上のDSA膜L3に熱処理が行われる。この場合、熱処理前にDSA膜L3に接する雰囲気が中性化されているので、ミクロ相分離を適切に生じさせることができる。その結果、基板W上に微細なパターンを精度よく形成することができる。
【0097】
また、雰囲気の中性化の際に基板Wが加熱プレート320の上方位置に保持され、熱処理の際に基板Wが加熱プレート320上に保持される。それにより、予め加熱プレート320の温度を変化させることなく、雰囲気の中性化の際に基板Wの温度をミクロ相分離を生じない温度に保つことができる。したがって、スループットの低下が生じない。
【0098】
さらに、チャンバ310内に溶剤含有気体が供給される際にチャンバ310内が減圧されるので、チャンバ310内の空気を溶剤含有気体に効率良く置換できる。それにより、ミクロ相分離により形成されるパターンに欠陥が生じることが防止される。
【0099】
また、基板Wに熱処理が行われた後に、基板Wの温度が低下するまで基板Wが加熱プレート320の上方位置で保持された後、チャンバ310内の溶剤含有気体が空気で置換される。それにより、チャンバ
310内の溶剤含有気体が空気で置換されるときに基板W上のDSA膜においてミクロ相分離が生じない。したがって、空気中でミクロ相分離によりパターンに欠陥が生じることが防止される。
【0100】
(8)他の実施の形態
上記実施の形態では、熱処理前の雰囲気の中性化の際に基板Wを加熱プレート320の上面から上方に離間させるが、本発明は、これに限定されない。熱処理前の雰囲気の中性化の際に基板Wを加熱プレート320の側方に離間させてよい。
【0101】
上記実施の形態では、基板処理装置100が露光装置250および現像装置129を備えるが、露光装置250および現像装置129の少なくとも一方が基板処理装置100の外部装置として設けられてもよい。
【0102】
(9)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0103】
上記実施の形態では、加熱プレート320が加熱部の例であり、ガス供給管PG、ガス供給バルブV1、溶剤供給管PSおよび溶剤供給バルブV2が気体供給部の例であり、支持ピン350、連結部材351および支持ピン昇降装置352が基板移動部の例であり、熱処理コントローラ390および支持ピン昇降制御部393が移動制御部の例であり、支持ピン350が支持部材の例である。加熱プレート320の上方位置が第1の位置の例であり、加熱プレート320に近接した位置が第2の位置の例であり、排気管Pe1,Pe2、排気バルブV4および排気ポンプPMが排気部または置換部の例である。
【0104】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
(参考形態)
(1)第1の参考形態に係る熱処理装置は、誘導自己組織化材料からなる処理膜が形成された基板に熱処理を行う熱処理装置であって、基板に予め設定された熱処理温度で熱処理を行う加熱部と、加熱部を収容するチャンバと、有機溶剤を含む溶剤含有気体をチャンバ内に供給する気体供給部と、チャンバ内で加熱部により基板に熱処理が行われない第1の位置と加熱部により基板に熱処理が行われる第2の位置とに基板を移動させる基板移動部と、チャンバ内に気体供給部により供給された溶剤含有気体が存在する状態で基板が第1の位置で保持されるように基板移動部を制御した後、チャンバ内に溶剤含有気体が存在する状態で基板が第2の位置で保持されるように基板移動部を制御する移動制御部とを備える。
その熱処理装置においては、チャンバ内に溶剤含有気体が存在する状態で、第1の位置で熱処理が行われずに基板が保持される。それにより、基板上の処理膜が溶剤含有気体に接する。誘導自己組織化材料を構成する複数の重合体に対する有機溶剤の親和性は互いに近い。すなわち、処理膜に接する雰囲気が中性化されている。その後、第2の位置で基板に熱処理が行われる。それにより、処理膜においてミクロ相分離が生じる。この場合、熱処理前に処理膜に接する雰囲気が中性化されているので、誘導自己組織化材料を構成する一の重合体のみが雰囲気に接する層を形成することが防止される。その結果、誘導自己組織化材料の適切なミクロ相分離を生じさせることが可能となる。
(2)加熱部は、加熱面を有する加熱プレートを含み、第1の位置は加熱プレートの加熱面の上方位置であり、第2の位置は加熱プレートにより熱処理が行われるように加熱面に近接した位置であり、基板移動部は、基板を支持しつつチャンバ内で基板を加熱面の上方位置と加熱面に近接した位置とに移動させる支持部材を含んでもよい。
この場合、基板を上下移動させることにより雰囲気の中性化および基板の熱処理を簡単な構成で行うことができる。
(3)基板が第1の位置にあるときの基板の温度は、処理膜においてミクロ相分離が生じない温度であってもよい。この場合、雰囲気の中性化の際に、処理膜においてミクロ相分離が生じることが防止される。
(4)熱処理装置は、基板が基板移動部により第1の位置で保持された状態で、チャンバ内の空気を排出することによりチャンバ内を減圧する排気部をさらに備え、気体供給部は、排気部により減圧されたチャンバ内に溶剤含有気体を供給してもよい。
この場合、空気を溶剤含有気体に効率良く置換することができる。それにより、ミクロ相分離により形成されるパターンに欠陥が生じにくくなる。
(5)熱処理装置は、チャンバ内の溶剤濃度を検出する溶剤濃度検出部をさらに備え、排気部および気体供給部は、溶剤濃度検出部により検出され溶剤濃度が予め設定された許容値以上になるようにチャンバ内を排気するとともにチャンバ内に溶剤含有気体を供給してもよい。
この場合、溶剤含有気体中の溶剤濃度が許容値以上になるので、ミクロ相分離により形成されるパターンに欠陥が生じることが防止される。
(6)移動制御部は、基板に加熱部により熱処理が行われた後に、基板の温度が処理膜のミクロ相分離が生じない温度に低下するまで基板が第1の位置で保持されるように基板移動部を制御し、熱処理装置は、熱処理後の基板移動部による基板の保持後にチャンバ内の溶剤含有気体を空気で置換する置換部をさらに備えてもよい。
この場合、チャンバ内の溶剤含有気体が空気で置換されるときに基板上の処理膜においてミクロ相分離が生じない。したがって、空気中でミクロ相分離が生じることが防止される。
(7)溶剤含有気体は不活性ガスを含んでもよい。
(8)本参考形態に係る基板処理装置は、基板に誘導自己組織化材料を塗布することにより基板上に処理膜を形成する塗布装置と、塗布装置により基板上に形成された処理膜に熱処理を行う上記の熱処理装置とを備える。
その基板処理装置によれば、基板上に誘導自己組織化材料からなる処理膜を形成することができるとともに、処理膜において誘導自己組織化材料の適切なミクロ相分離を生じさせることが可能となる。
(9)基板処理装置は、熱処理装置による熱処理後の処理膜に露光処理を行う露光装置と、露光装置による露光処理後の処理膜に現像処理を行う現像装置とをさらに備える。
この場合、誘導自己組織化材料の適切なミクロ相分離が生じた処理膜にパターンを形成することができる。
(10)本参考形態に係る熱処理方法は、誘導自己組織化材料からなる処理膜が形成された基板に熱処理を行う熱処理方法であって、加熱部を収容するチャンバ内において有機溶剤を含む溶剤含有気体が存在する状態で加熱部により熱処理が行われない第1の位置で基板を保持する工程と、第1の位置で基板を保持した後、チャンバ内において加熱部により熱処理が行われる第2の位置で基板を保持する工程とを含む。
この熱処理方法においては、処理膜に接する雰囲気が中性化されているので、誘導自己組織化材料を構成する一の重合体のみが雰囲気に接する層を形成することが防止される。その結果、誘導自己組織化材料の適切なミクロ相分離を生じさせることが可能となる。
(11)本参考形態に係る基板処理方法は、塗布装置において、基板上に誘導自己組織化材料からなる処理膜を形成する工程と、処理膜が形成された基板に上記の熱処理方法により熱処理を行う工程とを含む。
その基板処理方法によれば、基板上に誘導自己組織化材料からなる処理膜を形成することができるとともに、処理膜において誘導自己組織化材料の適切なミクロ相分離を生じさせることが可能となる。