特許第6802669号(P6802669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802669
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】エアゾール製剤の日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20201207BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20201207BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20201207BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20201207BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20201207BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20201207BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   A61K8/891
   A61K8/02
   A61Q17/04
   A61K8/29
   A61K8/27
   A61K8/894
   A61K8/86
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-161494(P2016-161494)
(22)【出願日】2016年8月19日
(65)【公開番号】特開2018-27926(P2018-27926A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2019年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219934
【氏名又は名称】エア・ウォーター・ゾル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100116241
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 一郎
(72)【発明者】
【氏名】益子 陽一
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−183720(JP,A)
【文献】 特開2015−147752(JP,A)
【文献】 特開2017−178940(JP,A)
【文献】 特開2015−229656(JP,A)
【文献】 特開2009−286766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液と、噴射剤と、からなるエアゾール容器から吐出されて泡状になるフォーム剤の日焼け止め化粧料であって、
前記原液が、(A)紫外線散乱剤、(B)シリコーン、(C)水、(D)ポリオキシエチレンラウリルエーテルおよび(E)ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体を含有しており、
前記(A)紫外線散乱剤が、微粒子酸化チタンおよび微粒子酸化亜鉛を含有し
前記(B)シリコーンが、フェニル変性シリコーンを含有し
前記(D)ポリオキシエチレンラウリルエーテルは、HLBが10以上20以下であり、前記原液100質量部中の含有量が1.5質量部以上7質量部以下であり、
前記(E)ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体は、原液100質量部中の含有量が0.3質量部以上2.5質量部以下である日焼け止め化粧料。
【請求項2】
前記原液100質量部中における前記フェニル変性シリコーンの含有量が3質量部以上20質量部以下である請求項1に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項3】
前記(A)紫外線散乱剤が、前記微粒子酸化チタンおよび前記微粒子酸化亜鉛に加えて、さらに酸化セリウムを含有しており、前記原液100質量部中における前記微粒子酸化チタンおよび前記微粒子酸化亜鉛の含有量の合計が5質量部以上15質量部以下であり、前記原液100質量部中における前記酸化セリウムの含有量が1.5質量部以上5質量部以下である請求項1または2に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項4】
前記日焼け止め化粧料は水中油型乳化物であり、
前記原液が、さらに(F)アクリル酸アルキル共重合体を含有しており、
前記原液100質量部中における(F)アクリル酸アルキル共重合体の含有量が0.5質量部以上2.5質量部以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の日焼け止め化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化安定性が良好であり、白浮きの抑制された、使用性の良好なエアゾール製剤の日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め化粧料には、紫外線から肌を防御する手段として、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が配合されている。近年、使用感や肌への負担感を軽くする観点から、化学的な作用によって紫外線を吸収する紫外線吸収剤よりも、物理的に紫外線を反射、散乱する紫外線散乱剤が好まれており、紫外線吸収剤を含有しない「ノンケミカル」タイプの日焼け止め化粧料が提案されている。
【0003】
特許文献1には、乳化安定性に優れ、塗布時に白くなりにくく、伸ばしやすく、べたつきが少なく使用性が優れた日焼け止め化粧料を提供することを目的として、化粧品全量を100質量%として、微粒子酸化亜鉛および微粒子酸化チタンの含有量の合計が10〜30質量%であり、シリコーン分岐型ポリグリセリン変性シリコーンの含有量が1.5〜10質量%であり、イソステアリン酸の含有量が0.1〜10質量%である、油中水型日焼け止め化粧料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−159229公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、乳液やクリームの日焼け止め化粧料が記載されているが、エアゾール製剤については記載されていない。エアゾール製剤の日焼け止め化粧料には乳液やクリームとは異なる性質が要求される。例えば、塗布時における使用性を良好にする観点から、噴射によって原液が泡を形成する性質を備えていることなどが必要である。
本発明は、乳化安定性が良好であり、白浮きの抑制された、使用性の良好なエアゾール製剤の日焼け止め化粧料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために提供される本発明は次のとおりである。
[1]原液と、噴射剤と、からなるエアゾール容器から吐出されて泡状になるフォーム剤の日焼け止め化粧料であって、前記原液が、(A)紫外線散乱剤、(B)シリコーン、(C)水、(D)ポリオキシエチレンラウリルエーテルおよび(E)ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体を含有しており、前記(A)紫外線散乱剤が、微粒子酸化チタンおよび微粒子酸化亜鉛を含有し前記(B)シリコーンが、フェニル変性シリコーンを含有し、前記(D)ポリオキシエチレンラウリルエーテルは、HLBが10以上20以下であり、前記原液100質量部中の含有量が1.5質量部以上7質量部以下であり、前記(E)ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体は、原液100質量部中の含有量が0.3質量部以上2.5質量部以下である日焼け止め化粧料。
【0007】
[2]前記原液100質量部中における前記フェニル変性シリコーンの含有量が3質量部以上20質量部以下である[1]に記載の日焼け止め化粧料。
【0008】
[3]前記(A)紫外線散乱剤が、前記微粒子酸化チタンおよび前記微粒子酸化亜鉛に加えて、さらに酸化セリウムを含有しており、前記原液100質量部中における前記微粒子酸化チタンおよび前記微粒子酸化亜鉛の含有量の合計が5質量部以上15質量部以下であり、前記原液100質量部中における前記酸化セリウムの含有量が1.5質量部以上5質量部以下である[1]または[2]に記載の日焼け止め化粧料。
【0014】
[4]前記日焼け止め化粧料は水中油型乳化物であり、前記原液が、さらに(F)アクリル酸アルキル共重合体を含有しており、前記原液100質量部中における(F)アクリル酸アルキル共重合体の含有量が0.5質量部以上2.5質量部以下である[1]〜[3]のいずれか1項に記載の日焼け止め化粧料。
【発明の効果】
【0015】
原液中の(B)シリコーンとしてフェニル変性シリコーンを用いることにより、(A)紫外線散乱剤として配合されている微粒子酸化チタンおよび微粒子酸化亜鉛による白浮きを抑制するとともに、乳化安定性が良好であり、使用性の良好なエアゾール製剤の日焼け止め化粧料とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(エアゾール製剤)
エアゾール製剤は、液化ガスまたは圧縮ガスの圧力で霧状や泡状の原液を噴射して必要量を目的部位に塗布する製剤である。エアゾール製剤の日焼け止め化粧料は、皮膚上に噴射した原液の泡を伸ばすことによって、目的部位に所望量の原液を容易に塗布することができる。このため、エアゾール製剤の日焼け止め化粧料は、乳液製剤やクリーム製剤の日焼け止め化粧料に要求される、肌に塗布したときに白くなること(白浮き)の抑制、伸ばしやすく、べたつきが少ないといった性質に加えて、原液が適度な発泡性を有するという性質をも備えていることが好ましい。
以下では、原液と噴射剤とからなるエアゾール製剤の日焼け止め化粧料(以下、適宜、「日焼け止め化粧料」という。)として、本発明を実施する形態について説明する。
【0017】
(原液)
日焼け止め化粧料の原液は(A)紫外線散乱剤、(B)フェニル変性シリコーンおよび(C)水を含有しており、さらに(D)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、(E)オキシエチレン・オキシプロピレン共重合体および(F)アクリル酸アルキル共重合体を含有していてもよい。
【0018】
(A)紫外線散乱剤
(A)紫外線散乱剤としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、および酸化セリウムが挙げられる。本実施の形態において、微粒子とは、各粒子がバラバラに分散した状態にある一次粒子の直径の平均(平均一次粒子径)が100nm以下であるものをいう。酸化セリウムは、一次粒子径の平均が150nm以下であるものが好ましく、一次粒子が凝集した二次粒子の直径(二次粒子径)の平均が200nm以下であるものが好ましい。
【0019】
紫外線散乱剤の配合量は、日焼け止め化粧料に付与する紫外線防御効果に応じて決定すれば良い。紫外線吸収剤を配合しないノンケミカル処方の日焼け止め化粧料とする場合、UVAおよびUVBを効果的に散乱しつつ、塗布時の白浮きを抑制する観点から、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛および酸化セリウムを併用し、各紫外線散乱剤を以下の配合量とすることが好ましい。
【0020】
原液100質量部中における微粒子酸化チタンおよび微粒子酸化亜鉛の含有量の合計は、酸化セリウムを配合する場合、5質量部以上15質量部以下であることが好ましく、6質量部以上13質量部以下であることがより好ましく、7質量部以上10質量部以下であることがさらに好ましい。微粒子酸化チタンよりも微粒子酸化亜鉛の含有量が大きいことが好ましい。
【0021】
原液100質量部中における酸化セリウムは、1.5質量部以上5質量部以下であることが好ましく、2質量部以上4.5質量部以下であることがより好ましく、2.5質量部以上4質量部以下であることがさらに好ましい。
【0022】
なお、紫外線散乱剤として酸化セリウムを含有しない場合、原液100質量部中における微粒子酸化チタンおよび微粒子酸化亜鉛の含有量の合計は、5質量部以上30質量部以下であることが好ましく、10質量部以上28量部以下であることがより好ましく、15質量部以上25質量部以下であることがさらに好ましい。この場合も微粒子酸化チタンよりも微粒子酸化亜鉛の含有量が大きいことが好ましい。
【0023】
微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛および酸化セリウムはいずれも、表面処理されたものであっても良い。表面処理されたものを用いる場合、表面処理により表面に付加された原料成分を除いたもの、すなわち、表面処理によって付加された原料成分を除いた部分としての配合量を紫外線散乱剤の配合量とする。
【0024】
微粒子酸化チタンとしては、MT−05(テイカ(株)製、含水シリカ処理、粉体、平均一次粒子径10nm、酸化チタン配合量82%)、STR-100W(堺化学工業(株)製、含水シリカ処理、粉体、平均一次粒子径10nm×90nm、酸化チタン配合量80%)、WT−PF02(テイカ(株)製、含水シリカ処理、水分散体、平均一次粒子径10nm、酸化チタン配合量26.3%)等が挙げられる。
【0025】
微粒子酸化亜鉛としては、MZ−500HP(テイカ(株)製、含水シリカ処理、粉体、平均一次粒子径25nm、酸化亜鉛配合量80%)、FINEX-50W(堺化学工業(株)製、含水シリカ処理、粉体、平均一次粒子径20nm、酸化亜鉛配合量79%)、WZ−PF02(テイカ(株)製、含水シリカ処理、水分散体、平均粒子径25nm、酸化亜鉛配合量43.2%)等が挙げられる。
【0026】
酸化セリウムとしては、CERIGUARD SC−6832(大東化成工業(株)製、シリカ処理、平均一次粒子径0.05×0.01Φμm、酸化セリウム配合量59%)や、アクアセリアホワイト((株)アプローズ製、粒径120nm[1次粒子径]、水分散体、酸化セリウム配合量50%)、アクアセリアベーシック((株)アプローズ製、粒径150nm[2次粒子径]、水分散体、酸化セリウム配合量10%)等が挙げられる。
【0027】
(B)シリコーン
原液は、微粒子酸化チタンおよび微粒子酸化亜鉛に起因する白浮きを抑制する観点から、(B)シリコーンとして、ポリシロキサンにフェニル基が導入されたフェニル変性シリコーンを含有している。フェニル変性シリコーンとしては、例えば、フェニルトリメチコン(メチルフェニルポリシロキサン)、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンなどが挙げられる。原液に含有されるフェニル変性シリコーンは、一種のみであっても、複数種を混合したものであっても良い。
【0028】
フェニル変性シリコーンの屈折率(波長589.3nmの光の屈折率)は、白浮きを抑制する観点から、1.3以上1.6以下であることが好ましく、1.35以上1.55以下であることがより好ましく、1.4以上1.5以下であることがさらに好ましい。
【0029】
原液100質量部中のフェニル変性シリコーンの含有量は、白浮きを抑制する観点から、3質量部以上20質量部以下であることが好ましく、4質量部以上18質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上16質量部以下であることがさらに好ましい。
【0030】
(D)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(適宜「POEアルキルエーテル」という)
原液は、エアゾール製剤の日焼け止め化粧料をフォーム剤として実施する場合における安定性の高い泡を維持する能力(泡形成維持能)を高くする観点から、(D)POEアルキルエーテルを含有していることが好ましい。POEアルキルエーテルとしては、例えば、POEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEベヘニルエーテルなどが挙げられる。これらは、一種のみを用いても、複数種を混合して用いてもよい。
【0031】
(D)POEアルキルエーテルは、泡形成維持能を高くする観点から、そのHLBが、10以上20以下であることが好ましく、12以上であることがより好ましく、13以上であることがさらに好ましい。なお、複数種を混合してなるPOEアルキルエーテルのHLB値は、各POEアルキルエーテルについて、HLB値に質量比(各POEアルキルエーテル/POEアルキルエーテルの全量)を乗じた値を加算して得られる値をいう。
【0032】
原液100質量部中における(D)POEアルキルエーテルの配合量は、泡形成維持能を高くする観点から、1.5質量部以上6質量部以下が好ましく、2質量部以上5質量部以下がより好ましく、2.5質量部以上4質量部以下がさらに好ましい。
【0033】
(E)ポリエーテル変性シリコーン
原液は、フォーム剤として実施する場合における泡形成維持能を高くする観点から、さらに(E)ポリエーテル変性シリコーンを含有していることが好ましい。(D)POEアルキルエーテルと(E)ポリエーテル変性シリコーンとの併用により、エアゾール製剤の
日焼け止め粧料用として適した安定性を有する泡を形成可能な原液とすることができる。
【0034】
原液100質量部中における(E)ポリエーテル変性シリコーンの含有量は、泡形成維持能を高くする観点から、0.3質量部以上2.5質量部以下が好ましく、0.5質量部以上2質量部以下がより好ましく、0.7質量部以上1.5質量部以下がさらに好ましい。
【0035】
(E)ポリエーテル変性シリコーンとしては、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体などが挙げられる。これらは、一種のみを用いても、複数種を混合して用いてもよい。
【0036】
(F)アクリル酸アルキル共重合体
原液は、耐水性を高くする観点から、さらに(F)アクリル酸アルキル共重合体を含有することが好ましい。耐水性の向上は、日焼け止め化粧料を水中油型乳化物(O/W乳化物)として実施する場合に特に有益である。(F)アクリル酸アルキル共重合体としては、(アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマー、アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシルコポリマーなどが挙げられる。これらは、一種のみを用いても、複数種を混合して用いてもよい。
【0037】
原液は、上述した成分以外に、医薬品や化粧品の分野において一般に用いられる成分を含有してもよい。このような成分としては、クエン酸およびクエン酸ナトリウム等のpH調整剤;フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウムおよびパラベンなどの防腐剤;ビーズポリマー等の滑材;ピロリドンカルボン酸ナトリウム塩、グリセリンなどの保湿剤;ビタミン類;無機フィラー;香料;などが挙げられる。これら成分の含有量は、エアゾール製剤の日焼け止め化粧料の特性に悪い影響を与えない範囲とすればよい。
【0038】
(噴射剤)
原液と共に充填される噴射剤としては、一般に用いられている、液化ガス、圧縮ガスおよびこれらの混合物等を用いることができる。液化ガスとしては、液化石油ガス、ジメチルエーテルなどが挙げられ、圧縮ガスとしては、炭酸ガス、窒素、亜酸化窒素、圧縮空気などが挙げられる。また、HFC−152a、HFO−1234ze(E)などを用いることもできる。フェニル変性シリコーンを含有する原液との親和性が良好であり発泡性に優れている(良好な泡沫を形成する)という観点から、液化石油ガスが好ましい。
【0039】
噴射剤は、単品で用いても、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。原液と噴射剤との含有量(重量)比(原液/噴射剤)は、98/2〜85/15wt%であることが好ましく、96/4〜88/12wt%であることがより好ましく、95/5〜90/10wt%であることがさらに好ましい。
【0040】
(容器)
原液を充填する容器としては、一般に用いられている耐圧容器を用いることができる。耐圧容器は金属や樹脂を材料とするものを用いることができる。金属としてはアルミニウム、アルミニウム合金、ブリキ、鋼等が挙げられ、樹脂としてはPET等が挙げられる。
【0041】
以上説明した実施形態に関する記載は、本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するためのものではない。したがって、実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例に関する説明において%は質量%を表す。
[製造方法]
表1に各原液に用いた成分の配合量(質量部)を示す。酸化チタン分散液(26.3%液)および酸化亜鉛分散液(43.2%液)については、各分散液としての配合量の下の()内に酸化チタンおよび酸化亜鉛としての配合量を示した。各成分1〜11のうち、成分1、2および11を80℃で均一に混合して第1の混合物とした。成分3〜10を80℃で均一に混合して第2の混合物とした。攪拌下、第1の混合物(80℃)に第2の混合物(80℃)を添加して乳化し、原液1〜8をそれぞれ調製(調合)した。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示した各成分として、以下のものを用いた。
[紫外線散乱剤]
酸化チタン分散液(35%液):WT−PF02(テイカ(株)製)、含水シリカで表面処理された酸化チタン35%質量%含有分散液(表面処理で付加された部分を除く酸化チタンとして26.3質量%含有)
酸化亜鉛分散液(45%液):WZ−PF02(テイカ(株)製)、トリエトキシカプリリルシランで表面処理された酸化亜鉛45質量%含有分散液(表面処理で付加された部分を除く酸化亜鉛として43.2質量%含有)
[乳化剤]
ラウレス−2:NIKKOL BL−2(日光ケミカルズ(株)製、HLB9.5)
ラウレス−21:NIKKOL BL−21(日光ケミカルズ(株)製、HLB19)
PEG/PPG−30/10ジメチコンのDPG液(50%液):BY25−339 Cosmetic Fluid(東レ・ダウコーニング(株)製、HLB8.5)、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体をジプロピレングリコール(DPG)に50質量%で溶解させたもの
[油性成分]
フェニルトリメチコン(メチルフェニルポリシロキサン):SH556(東レ・ダウコーニング(株)製)
ジメチコン(メチルポリシロキサン):SH200C(東レ・ダウコーニング(株)製、粘度10cs)
ミリスチン酸イソプロピル:IPM−R
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル:NIKKOLトリエスターF−810(日光ケミカルズ(株)製)
[抗菌剤]
フェノキシエタノール:ハイソルブEPH(東邦化学工業(株)製)
【0045】
[評価方法]
表1に示す原液1〜8を、以下の方法および基準を用いて評価した。
[乳化状態]
◎:調合直後に室温にて原液の乳化状態が均一であり、その後も乳化状態が維持されている。
○:調合直後に室温にて原液の乳化状態が均一である。一定時間、静置するとやや分離するが攪拌によって均一になる。
△:調合直後に室温にて原液の乳化状態がやや不均一であり、油性成分の分離がみられる。
×:調合直後に室温にて原液中の油性成分が分離しており、乳化しない。
[白浮き]
乳化した状態にある原液1〜3、7および8をそれぞれ、前腕内側4cm×4cmの範囲に0.05g塗布したときの白さを以下の基準を用いて評価した。
◎:塗布部と塗布していない部分との境界を判別することが困難である。
〇:塗布部と塗布していない部分との境界を判別することは容易であるが、境界が明確ではない。
×:塗布部と塗布していない部分との境界が明確である。
【0046】
[結果]
表1にND(評価せず)と示したように、ジメチコンが分離し原液が乳化しなかった原液4〜6については白浮きを評価しなかった。
原液3、7および8の比較により、塗布時において白くなりにくく、白浮きを抑制するには、原液にフェニルトリメチコンを配合することが有効であることが分かった。原液1〜3の比較により、フェニルトリメチコンが増えるにしたがって白浮きが大きくなる傾向が認められる。これは、原液の粘度が高くなって伸びが悪くなったことによるものと推測できる。
【0047】
実施例1〜4、比較例1〜5
[製造方法]
表2に各原液に用いた成分の配合量(質量部)を示す。表1と同様にして、酸化チタンおよび酸化亜鉛としての配合量を()内に示した。各成分1〜11のうち、成分1、2および11を80℃で均一に混合して第1の混合物とした。成分3〜8および10を80℃で均一に混合して第2の混合物とした。攪拌下、第1の混合物(80℃)に第2の混合物(80℃)を添加して乳化物とした。当該乳化物を攪拌しながら冷却し、40℃以下であることを確認した後、微量の成分11に溶解した成分9を乳化物に投入して原液9〜17をそれぞれ調製(調合)した。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示した各成分のうち表1に記載のないものとして、以下を用いた。
[増粘・乳化剤]
ポリアクリル酸Na、ジメチコン、シクロペンタシロキサン、トリデセス−6、PEG/PPG−18/18ジメチコンの混合物:RM2051(東レ・ダウコーニング(株)製)
[乳化剤]
PEG−40水添ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油):EMALEX HC−40(日本エマルジョン(株)製、HLB12)
【0050】
[製造方法]
噴射剤としてLPG(液化石油ガス)を用い、表2に示した原液14〜17、9〜13と噴射剤とを95:5(質量比)の割合でアルミニウム製の耐圧容器に充填して実施例1〜4、比較例1〜5のエアゾール製剤の日焼け止め化粧料を製造した。
【0051】
【表3】
【0052】
[評価方法]
表3に示す実施例1〜4、比較例1〜5アゾール剤の日焼け止め化粧料を、以下の方法および基準を用いて評価した。
[泡状態]
○:きめの細かい泡が形成される。
×:吐出時に泡が形成されない。
[白浮き]
泡状態が良好であった実施例1〜4について、泡(フォーム)を塗布した際の白浮きを、上述した評価方法および基準を用いて評価した。
【0053】
[結果]
表2に示すように、乳化剤の種類にかかわらず、フェニルトリメチコンを配合することにより、酸化チタンおよび酸化亜鉛を含有する原液の白浮きを抑制することができた。
表3に示すように、(D)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)としてのラウレス−2およびラウレス−21と、(E)ポリエーテル変性シリコーンとしてのポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体(PEG/PPG−30/10 ジメチコン、DPG:BY25−339)とを併用することにより、良好な泡(フォーム)を形成することがでる原液となった。また、実施例1〜4のエアゾール製剤の日焼け止め化粧料はいずれも、白浮きが抑制され、伸びがよく、きしみ感がなくしっとりとした使用感の良好なものであった。
【0054】
実施例5〜9、比較例6
[製造方法]
表4に各原液に用いた成分の配合量(質量部)を示す。表1同様、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化セリウムとしての配合量を()内に示した。成分1〜14のうち、成分1、2および14を80℃で均一に混合して第1の混合物とした。成分4〜9および12を80℃で均一に混合して第2の混合物とした。攪拌下、第1の混合物(80℃)に第2の混合物(80℃)を添加して乳化物とした。当該乳化物を攪拌しながら冷却し、40℃以下であることを確認した後、成分3、10および13を順次投入し、最後に微量の14に溶解した11を投入して原液18〜23をそれぞれ調製(調合)した。
【0055】
【表4】
【0056】
表4に示した成分のうち、表1、表2に記載のないものとして、以下のものを用いた。
[紫外線散乱剤]
酸化セリウム分散液(10%液):アクアセリアベーシック((株)アプローズ製、粒径150nm〔二次粒径〕、水分散体、酸化セリウム配合量10%、白金担持)
[乳化剤]
ラウレス−4:NIKKOL BL−4.2(日光ケミカルズ(株)製、HLB11.5)
ラウレス−9:NIKKOL BL−9EX(日光ケミカルズ(株)製、HLB14.5)
[皮膜剤]
アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシルコポリマー(50%液):ダイトゾール5000SJ(大東化成工業(株)製)、アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシルコポリマーを50質量%含有する水分散体
【0057】
[製造方法]
噴射剤としてLPG(液化石油ガス)を用い、表4に示した原液19〜23、18と噴射剤とを95:5(質量比)の割合で充填して実施例5〜9、比較例6のエアゾール製剤の日焼け止め化粧料を製造した。
【0058】
【表5】
【0059】
[評価方法]
表5に示す実施例5〜9、比較例6のエアゾール製剤の日焼け止め化粧料を以下の方法および基準を用いて評価した。
[泡状態(噴射直後)]
○:泡が形成される。
×:泡が形成されない。
[泡状態(泡持ち)]
◎:噴射後30秒間経過した時点において、噴射直後の泡の外観が維持されている。
○:噴射後20秒間経過した時点において噴射直後の泡の外観が維持されているが、3
0秒間経過した時点においては噴射直後の泡の外観が維持されていない。
△:噴射後10秒間経過するまでの間に泡の外観が顕著に変化し、噴射後10秒間経過
した時点において噴射直後の泡の外観が維持されていない。
【0060】
[結果]
表4および表5に示す結果により、泡形成維持能を高くする観点から、PEG/PPG−30/10ジメチコンと併用するポリエチレンラウリルエーテルは、HLB12以上のものが好ましく、HLB15以上のものがより好ましいといえる。
【0061】
実施例10〜14
[製造方法]
表6に原液24に用いた成分の配合量(質量部)を示す。表1同様、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化セリウムとしての配合量を()内に示した。成分1〜11のうち、成分1、2および11を80℃で均一に混合して第1の混合物とした。成分4〜7および9を80℃で均一に混合して第2の混合物とした。攪拌下、第1の混合物(80℃)に第2の混合物(80℃)を添加して乳化物とした。当該乳化物を攪拌しながら冷却し、40℃以下であることを確認した後、3および10を順次投入し、最後に微量の11で溶解した8を投入して原液24を調製(調合)した。
表7に示す割合で原液24と皮膜剤とを混合して、原液25〜29を調製した。
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
【0064】
表6または表7に示した各成分のうち、表1、表2、表4に記載のないものとして、以下を用いた。
[紫外線散乱剤]
酸化セリウム分散液(10%液):アクアセリア((株)アプローズ製)、酸化セリウムおよび白金の水分散体(酸化セリウムとして10質量%含有)
[皮膜剤]
ポリクオタニウム−56(24%液):ヘヤロールUC−4(三洋化成(株)製)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ブチレングリコール及びジヒドロキシエチルジモニウムのメチル硫酸塩からなるポリ4級アンモニウム塩を24質量%含有する水分散体
ポリクオタニウム−48(40%液):プラスサイズL−450W(互応化学工業(株)製)、メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体液を40質量%含有する水分散体
【0065】
[製造方法]
噴射剤としてLPGを用い、表7に示した原液25〜29と噴射剤とを95:5(質量比)の割合で、アルミニウム製の耐圧容器に充填して実施例16〜20のエアゾール製剤の日焼け止め化粧料を製造した。
【0066】
【表8】
【0067】
[評価方法]
表8に示す実施例10〜14のアゾール剤の日焼け止め化粧料を以下の方法および基準を用いて評価した。
[耐水性]
上腕部3cm四方に原液0.03gを塗布し、塗布部にミストポンプ(噴霧量0.3ml)にて10回噴霧した。噴霧時に流れ落ちた水滴の白濁度合いにより評価した。
◎:極僅かに白濁がみられる。
○:僅かに白濁がみられる。
△:やや白濁がみられる。
×:顕著に白濁がみられる。
析出:皮膜剤が原液中に析出する。
[泡状態]
○:きめの細かい泡が形成される。
△:ややきめの荒い泡が形成される。
[白浮き]
泡状態が良好であった実施例10〜12について、泡(フォーム)を塗布した際の白浮きを上述した評価方法および基準を用いて評価した。
[被膜安定性]
○:水でぬらした状態で擦ることにより、皮膜剤のカスが生じない。
△:水でぬらした状態で擦ることにより、皮膜剤のカスが僅かに生じる。
×:水でぬらした状態で擦ることにより、皮膜剤のカスがたくさん生じる。
【0068】
[結果]
表7および表8に示すように、皮膜剤としてアクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシルコポリマーを配合することにより、紫外線防御化粧料の耐水性が向上した。耐水性向上の観点からは、アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシルコポリマーの配合量を増やすことが好ましい。
配合量が大きくなるとともに、泡状態、白浮き、皮膜安定性および伸びが悪くなる傾向が認められたことから、アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシルコポリマーとしての配合量は、紫外線防御剤100質量部に対して0.5以上2.5質量部以下が好ましく、0.75以上2.0質量部以下がより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、安定な泡を形成維持することができる使用性のよいエアゾール製剤の日焼け止め化粧料として有用である。