特許第6802675号(P6802675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802675
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】柱梁接合方法、及び仕口部材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20201207BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   E04B1/30 K
   E04B1/58 507P
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-172223(P2016-172223)
(22)【出願日】2016年9月2日
(65)【公開番号】特開2018-35643(P2018-35643A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】平林 隆樹
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−132000(JP,A)
【文献】 特開2011−169063(JP,A)
【文献】 特開2005−23705(JP,A)
【文献】 特開2016−98586(JP,A)
【文献】 特開2010−242390(JP,A)
【文献】 実開昭62−46703(JP,U)
【文献】 特開2016−176216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/00−1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリートの柱に鉄骨の梁を接合する際、主材に対して前記柱との対向面に傾斜を有するガセットプレートを接合した仕口部材を接合部とする場合の柱梁接合方法であって、
前記ガセットプレートにおける傾斜を有する部位に、前記柱の接合方向へ向けて延設される仮支承部を複数配置する工程と、
前記柱における前記ガセットプレートが埋め込まれる部分より下側にコンクリートを打設する工程と、
前記柱の頭部に露出している主筋に、前記仮支承部に対向する受け板を配置する工程と、
前記受け板に対して前記仮支承部を当接させて前記仕口部材を支持する工程と、
を有することを特徴とする柱梁接合方法。
【請求項2】
前記仕口部材を支持する工程では、前記受け板の配置位置を調整する事で、前記仕口部材の水平出しを行うことを特徴とする請求項1に記載の柱梁接合方法。
【請求項3】
鉄筋コンクリートの柱に鉄骨の梁を接合する際に用いられ、主材に対して前記柱との対向面に傾斜を有するガセットプレートを接合した仕口部材であって、
前記ガセットプレートの下端部には、接合対象とする柱に設けられた受け板に当接する仮支承部が複数備えられていることを特徴とする仕口部材。
【請求項4】
前記仮支承部は、前記ガセットプレートに接合される垂直ピースと、
前記受け板に当接する水平ピースにより構成されていることを特徴とする請求項3に記載の仕口部材。
【請求項5】
前記垂直ピース、及び前記水平ピースは、アングル材により構成されていることを特徴とする請求項4に記載の仕口部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリートの柱に鉄骨の梁を接合する際の接合方法に係り、特に接合部となる仕口部材における柱との対向面、すなわちガセットプレートの下部側に傾斜を持つ場合に好適な接合方法、及び、この柱梁接合方法に適用される仕口部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁からなる複合構造物が構築されている。梁を鉄骨で構成することで、鉄筋コンクリート構造でありながら、長スパンを実現できる合理的な構造として普及し、梁の端部を鉄筋コンクリートで被覆したり、柱梁接合部を鋼管で被覆して剛性を上げた構造なども実用化されている。
【0003】
地震力に対しては、通常の架構と同様に、ブレースを設置して耐震性を高めるという対策がとられているが、ブレースと柱梁接合部とを剛に接合する必要があるため、ガセットプレートを柱梁接合部または梁の下側に溶接し、これにブレースの一端をボルト接合するのが一般的である。
【0004】
特許文献1、2に開示されている技術はいずれも、ブレースの延長線上に、柱と梁の接合中心を通るように構成するためのものである。その具体的な手段としては、鉄筋コンクリートにより構成される柱の端部、すなわち梁との接合部分に、鉄骨から成る芯材を設け、この芯材と梁とに対して、ガセットプレートを溶接し、ブレースの延長線上に柱梁の接合中心が来るようにするというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−242390号公報
【特許文献2】特開2011−169063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に開示されているように、ブレースの延長線上に柱梁の接合部が位置する構成とすることで、曲げモーメントに対する耐性を向上させることができる。しかし、上記のような構造を採用する場合には、ガセットプレートが柱の端部に埋設されることとなるため、柱を構成する主筋やせん断補強筋と錯綜して、施工性が悪くなるといった問題が生じる。
【0007】
また、柱の上端部側にガセットプレートを配置する場合には、柱の上に鉄骨梁を揚重した状態で位置決めやガセットプレートの溶接等を施す必要が生じる。このため、実質的には上記特許文献に開示されている手段では対応する事ができない。
【0008】
そこで本発明では、上記課題を解決し、柱の上部側にブレースを配置するガセットプレートを設ける際、ブレースの延長線上に柱梁の接合中心が位置する構造を採る事ができ、かつ施工性が良好となる柱梁接合方法、及び、この方法に適用可能な仕口部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための柱梁接合方法は、鉄筋コンクリートの柱に鉄骨の梁を接合する際、主材に対して前記柱との対向面に傾斜を有するガセットプレートを接合した仕口部材を接合部とする場合の柱梁接合方法であって、前記ガセットプレートにおける傾斜を有する部位に、前記柱の接合方向へ向けて延設される仮支承部を複数配置する工程と、前記柱における前記ガセットプレートが埋め込まれる部分より下側にコンクリートを打設する工程と、前記柱の頭部に露出している主筋に、前記仮支承部に対向する受け板を配置する工程と、前記受け板に対して前記仮支承部を当接させて前記仕口部材を支持する工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、上記のような特徴を有する柱梁接合方法において前記仕口部材を支持する工程では、前記受け板の配置位置を調整する事で、前記仕口部材の水平出しを行うようにする事ができる。
【0011】
このような特徴を有する事により、受け板の高さ調整をするだけで仕口部材を含む梁の高さ調整も容易に行う事ができるようになる。
【0012】
また、上記目的を達成するための仕口部材は、鉄筋コンクリートの柱に鉄骨の梁を接合する際に用いられ、主材に対して前記柱との対向面に傾斜を有するガセットプレートを接合した仕口部材であって、前記ガセットプレートの下端部には、接合対象とする柱に設けられた受け板に当接する仮支承部が複数備えられていることを特徴とする。
【0013】
また、上記のような特徴を有する仕口部材において前記仮支承部は、前記ガセットプレートに接合される垂直ピースと、前記受け板に当接する水平ピースにより構成されているようにすると良い。
【0014】
このような特徴を有する事により、仮支承部は、専用部材でなくとも構成する事ができ、高い汎用性を有することとなる。
【0015】
さらに、上記のような特徴を有する仕口部材では、前記垂直ピース、及び前記水平ピースは、アングル材により構成する事ができる。
【0016】
仮支承部を構成する垂直ピースや水平ピースの構成部材として、一般建築部材であるアングル材を用いる事により、安価かつ自由度の高い仮支承部材を構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
上記のような特徴を有する柱梁接合方法によれば、柱の上部側にブレースを配置するガセットプレートを設ける際、ブレースの延長線上に柱梁の接合中心が位置する構造を採る事ができ、かつ施工性も良好に保つ事ができる。よって、工期を短縮する事ができ、施工費用の高騰を抑制する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る柱梁接合方法により接合を行った柱と梁の構成を示す図である。
図2】実施形態に係る仕口部材の構成を示す図である。
図3】仮支承部の具体的構成の一例を示す斜視図である。
図4】受け板の具体的構成と固定の一例を示す斜視図である。
図5】仮支承部配置前の状態の仕口部材を示す図である。
図6】仮支承部を配置した後の状態の仕口部材を示す図である。
図7】端部を露出させた状態でコンクリートを打設した柱の様子を示す図である。
図8】主筋に受け板を配置した状態の柱の様子を示す図である。
図9】受け板に対して仮支承部を介して梁を支承させた状態を示す図である。
図10】コンクリート打設部位にせん断補強筋を配置した状態を示す図である。
図11】コンクリートを打設して柱梁接合を完成させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の柱梁接合方法、及び仕口部材に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係る柱梁接合方法は、図1に示すように、鉄筋コンクリートの柱10の上に鉄骨の梁12を接合する際の技術に関するものである。そして、実施形態に係る柱梁接合方法においては、柱10の内部に、ブレース20を接合するためのガセットプレート18の一部が埋設された状態となる構造が採られる。
【0020】
梁12における柱10との接合部分には、仕口部材14が設けられている。仕口部材14は、梁12を構成する鉄骨12aの端部に接合される接合部材である。仕口部材14は図2に示すように、主材16とガセットプレート18を有し、主材16の構造は、梁12の主体となる鉄骨12aと同様な構成とすることができる。ガセットプレート18は、主材16における柱10との対向側面に備えられている。主材16に対するガセットプレート18の接合は、溶接によれば良い。ガセットプレート18には、ブレース20により作用する引っ張り応力を負担でき、加負荷時における局部座屈の発生を防ぐ事のできる形態が選定される。このため、ガセットプレート18は、柱10と対向する辺に、ブレース20の延設方向に倣った傾斜を有する形態の金属板により構成される。
【0021】
ガセットプレート18における柱10に対向する側の傾斜を有する辺18aには、柱10との接合方向へ向けて延設された複数の仮支承部22が設けられている。仮支承部22は、垂直ピース22aと、水平ピース22bにより構成されている。ここで、垂直ピース22aは、ガセットプレート18に接合されることとなり、水平ピース22bは、柱10に設けられる受け板24に当接することとなる。垂直ピース22aと水平ピース22bの具体的形態は問わないが、一例として、両者をアングル材により構成し、これを直角に接合することで構成することができる。なお、両者の接合手段も限定するものでは無いが、例えば溶接によれば良い。この時、図3に示すように、垂直ピース22aについて、並行に配置した2つのアングル材により構成する事で、当該2つの垂直ピース22aの隙間にガセットプレート18を配置する事ができる。よって、2つの垂直ピース22a間の隙間dは、ガセットプレート18の厚みよりも僅かに広く定めるようにすると良い。これにより、ガセットプレート18に対する仮支承部22の固定状態を安定させる事ができる。また、ガセットプレート18には、柱10を構成するせん断補強筋10bを挿通させるための貫通孔18bが設けられている。
【0022】
柱10は、少なくとも柱10の延設方向に備えられる複数の主筋10aと、主筋10aと直交するように、かつ複数の主筋10aを取り囲むように配置されるせん断補強筋10bを有し、これらの鉄筋を包含するようにコンクリート10cにより形状形成が成されている。実施形態に係る柱10では、ガセットプレート18が埋設される部分の主筋10aに、受け板24が配置されている。
【0023】
受け板24は、上述したガセットプレート18に設けられた仮支承部22を構成する水平ピース22bを支持するための役割を担う。受け板24の具体的な形態は限定するものでは無いが、例えば仮支承部22を構成する部材と同様に、アングル材とすることができる。
【0024】
主筋10aに対する受け板24の配置手段は、溶接等の固着手段でも良いが、次のようなものとする事で、配置位置の調節ができるようになる。すなわち図4に示すように、受け板24の水平部位に、主筋10aを挿通可能な貫通孔24aを設ける。そして、受け板24の水平部位に主筋10aを挿通させた状態で、受け板24を基準として下部側に支持ナット26a、上部側に抑えナット26bをそれぞれ配置し、2つのナット(支持ナット26aと抑えナット26b)により受け板24の水平部位を挟持固定すれば良い。このような構成とすれば、支持ナット26aの位置を調整する事で、受け板24の高さ位置を調整する事が可能となる。なお、このような構成とする場合、主筋10aには、ナットを螺合する事ができる長ボルト状のものを使用する。
【0025】
上記のような構成を有する柱に対して、上記のような構成の梁を接合する際の流れについて、図5から図11を参照して説明する。
まず、梁12を構成する仕口部材14(図5参照)に備えられたガセットプレート18の傾斜を有する辺18aに、柱10との対向方向に沿って垂直ピース22aが配置されるように、複数の仮支承部22を配置する(仮支承部配置工程:図6参照)。
【0026】
次に、仮支承部22の配置と同時、あるいは前後して、柱10におけるガセットプレート18が埋設される部分よりも下側部分に、コンクリート10cを打設する。コンクリート10cを打設した後は、コンクリート10cが硬化するまで養生する。なお、この段階においてせん断補強筋10bは、コンクリート10cを打設した範囲に配置されており、ガセットプレート18が埋設する部分に該当する主筋10aの周囲には配置されていない(コンクリート打設工程:図7参照)。
【0027】
コンクリート10cが硬化した後、コンクリート10cの上部に露出している主筋10aに対し、受け板24を配置する。主筋10aに対する受け板24の配置は、少なくとも2つの主筋10aの間に1つの受け板24を架け渡すように配置する事で、受け板24を安定配置することができる(受け板配置工程:図8参照)。
【0028】
受け板24による支持位置の調整を行いながら、仮支承部22を介して仕口部材14(梁12)を水平に支持する。仕口部材14の水平出しは、受け板24を支持する支持ナット26aと抑えナット26bの位置調整により行うことができる(仮支持工程:図9参照)。
【0029】
受け板24により仮支承部22を介して梁12を水平に支持した後、柱10における主筋10aの露出部に対してせん断補強筋10bを配置する。せん断補強筋10bの一部は、ガセットプレート18に設けられた貫通孔18bに挿通される(せん断補強筋配置工程:図10参照)。
【0030】
せん断補強筋10bを配置した後、仕口部材14を含めた露出部分に対するコンクリート10cの打設を行う(柱梁接合工程:図11参照)。
【0031】
上記のような柱梁接合方法によれば、柱10の上部側にブレース20を配置するガセットプレート18を設ける際に、ブレース20の延長線上に柱10と梁12の接合中心を位置させることができる。これにより、屈曲応力に対する耐性を高めることができる。また、このような構成を採る際においても、施工性を良好に保つ事ができ、工期の短縮を図ることができる。よって、施工費の高騰を抑制する事ができる。
【0032】
また、ブレース20や梁12からの力が仮支承部22を介して主筋10aに支持された受け板24にも伝達されることとなる。このため、せん断補強筋10bとコンクリート10cのみによって支持される場合に比べて柱梁接合部近傍の応力分散を図ることができる。よって、終局時における柱梁接合部や柱10の頭部におけるコンクリート10cの損傷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0033】
10………柱、10a………主筋、10b………せん断補強筋、10c………コンクリート、12………梁、12a………鉄骨、14………仕口部材、16………主材、18………ガセットプレート、18a………傾斜を有する辺、18b………貫通孔、20………ブレース、22………仮支承部、22a………垂直ピース、22b………水平ピース、24………受け板、24a………貫通孔、26a………支持ナット、26b………抑えナット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11