特許第6802684号(P6802684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802684
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】健康管理装置および健康管理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20201207BHJP
   G16H 10/60 20180101ALI20201207BHJP
【FI】
   A61B5/00 G
   G16H10/60
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-204361(P2016-204361)
(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公開番号】特開2018-64702(P2018-64702A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】池田 龍司
【審査官】 門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−075878(JP,A)
【文献】 特開2002−336206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/03,5/06−5/22
G16H 10/00−80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報の測定値、前記生体情報の種類および測定日時を含む生体データを入力する入力部と、
前記生体データを保持する記憶部と、
前記生体データの値の正常な範囲の基準となる基準範囲を設定し保持する基準範囲設定部と、
ユーザーに情報を通知する通知部と、
前記入力部、前記記憶部、前記基準範囲設定部および前記通知部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記入力部に生体データが入力されたとき、前記記憶部が予め定められたデータ数以上の前記生体データ群を保持しているか否かを判定し、
前記記憶部が前記データ数以上の前記生体データ群を保持していない場合、前記基準範囲設定部に予め定められた方法によって求められた暫定基準範囲を前記基準範囲として設定させ、
一方、前記記憶部が前記データ数以上の前記生体データ群を保持している場合、前記基準範囲設定部に前記生体データ群に基づいて求められた個別基準範囲を前記基準範囲として設定させ、
前記入力部から入力された前記生体データの値が前記基準範囲外にある場合、前記通知部にユーザーへの警告を通知させ
前記入力部は、ユーザーからの指令を受け付け、
前記制御部は、前記記憶部が前記データ数以上の前記生体データ群を保持していない場合において、前記入力部から入力された前記生体データの値が前記基準範囲外にあるとき、前記通知部に前記警告を通知させるとともに、前記生体データの値に問題がないかユーザーの確認を促す通知を通知させ、
前記入力部が前記生体データの値に問題がない旨の指令を受け付けたとき、
前記制御部は、前記基準範囲設定部に前記生体データの値が前記暫定基準範囲内に含まれるように前記暫定基準範囲を拡張させることを特徴とする健康管理装置。
【請求項2】
前記基準範囲設定部は、前記生体データの値が前記暫定基準範囲の上限値より大きいとき、前記上限値を前記生体データの値に置き換え、また、前記生体データの値が前記暫定基準範囲の下限値より小さいとき、前記下限値を前記生体データの値に置き換えることによって、前記暫定基準範囲を拡張する請求項に記載の健康管理装置。
【請求項3】
前記基準範囲設定部は、予め定められた計算方法に基づき、前記生体データが前記暫定基準範囲内に含まれるように前記暫定基準範囲を拡張する請求項に記載の健康管理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記生体データの値が前記基準範囲内にある場合、または前記生体データの値が前記基準範囲内にない場合において前記生体データの値に問題がない旨の指令を前記入力部が受け付けた場合に、前記生体データの値を前記記憶部に保持させる請求項のいずれか1つに記載の健康管理装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記生体データに関する一般的な統計情報を保持し、
前記基準範囲設定部は、前記統計情報に基づき、前記暫定基準範囲を設定する請求項1〜のいずれか1つに記載の健康管理装置。
【請求項6】
前記基準範囲設定部は、前記記憶部に保持された前記データ数未満の前記生体データ群および予め定められた計算方法に基づき、前記暫定基準範囲を設定する請求項1〜のいずれか1つに記載の健康管理装置。
【請求項7】
生体情報の測定値、前記生体情報の種類および測定日時を含む生体データが入力されたとき、予め定められたデータ数以上の前記生体データ群が記憶部に保持されているか否かを判定し、
前記記憶部が前記データ数以上の前記生体データ群を保持していない場合、前記生体データの値の正常な範囲の基準となる基準範囲として、予め定められた方法によって求められた暫定基準範囲を設定し、
一方、前記記憶部が前記データ数以上の前記生体データ群を保持している場合、前記基準範囲として、前記生体データ群に基づいて求められた個別基準範囲を設定し、
入力された前記生体データの値が前記基準範囲外にある場合、ユーザーへの警告を通知させ
前記記憶部が前記データ数以上の前記生体データ群を保持していない場合において、入力された前記生体データの値が前記基準範囲外にあるとき、前記警告を通知するとともに、前記生体データの値に問題がないかユーザーの確認を促す通知を通知し、
前記生体データの値に問題がない旨のユーザーからの指令を受け付けたとき、
前記生体データの値が前記暫定基準範囲内に含まれるように前記暫定基準範囲を拡張することを特徴とする健康管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、健康管理装置および健康管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会の到来とともに健康管理に対する関心が高まり、病院やクリニック等の医療機関のみならず、家庭内でユーザー自ら体温、血圧または血糖値などの生体情報を測定することによって健康管理を行い、病気を予防する健康管理装置の需要が増加しつつある。
【0003】
このような健康管理装置としては、例えば、住居内で血圧測定器、尿測定器、体重・身長測定器、体温測定器などからのデータを収集する手段と、収集したデータと標準値あるいは以前の値とを比較して異常と判明したときに対応した警告メッセージを、テーブルから検索して取り出して表示あるいは音声で発生する手段とを備えたことを特徴とする健康管理システムの発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、高齢者に関する一日単位の複数の異なる生活データを測定し、当該測定値から高齢者の生活パターンのバラツキを求めて予め定めた通常パターン領域から外れたときに高齢者の健康状態を要注意レベルと判定する管理用端末装置を備えた在宅者健康状態遠隔診断装置の発明が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−129980号公報
【特許文献2】特許第3994773号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら家庭用の健康管理装置において、異常な数値が入力された場合、それがユーザーの健康状態の異常によるものか、そのユーザーにとって平均的な数値なのか、あるいはユーザーの誤入力によるものかのいずれであるのかを判断する必要がある。
しかしながら、ユーザーの生体データが十分に蓄積されていない初期の段階においては、入力された生体データの値の異常または誤入力等を高い精度で検知することは困難であった。
【0007】
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、ユーザーの生体データの蓄積が十分でない初期の段階においても、入力された生体データの値の異常または誤入力等を従来よりも高い精度で検知する健康管理装置および健康管理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、生体情報の測定値、前記生体情報の種類および測定日時を含む生体データを入力する入力部と、前記生体データを保持する記憶部と、前記生体データの正常な範囲の基準となる基準範囲を設定し保持する基準範囲設定部と、ユーザーに情報を通知する通知部と、前記入力部、前記記憶部、前記基準範囲設定部および前記通知部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記入力部に生体データが入力されたとき、前記記憶部が予め定められたデータ数以上の前記生体データ群を保持しているか否かを判定し、前記記憶部が前記データ数以上の前記生体データ群を保持していない場合、前記基準範囲設定部に予め定められた方法によって求められた暫定基準範囲を前記基準範囲として設定させ、一方、前記記憶部が前記データ数以上の前記生体データ群を保持している場合、前記基準範囲設定部に前記生体データ群に基づいて求められた個別基準範囲を前記基準範囲として設定させ、前記入力部から入力された前記生体データが前記基準範囲外にある場合、前記通知部にユーザーへの警告を通知させることを特徴とする健康管理装置を提供するものである。
また、この発明は、生体情報の測定値、前記生体情報の種類および測定日時を含む生体データが入力されたとき、予め定められたデータ数以上の前記生体データが記憶部に保持されているか否かを判定し、前記記憶部が前記データ数以上の前記生体データ群を保持していない場合、前記生体データの正常な範囲の基準となる基準範囲として、予め定められた方法によって求められた暫定基準範囲を設定し、一方、前記記憶部が前記データ数以上の前記生体データ群を保持している場合、前記基準範囲として、前記生体データ群に基づいて求められた個別基準範囲を設定し、入力された前記生体データが前記基準範囲外にある場合、ユーザーへの警告を通知させることを特徴とする健康管理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ユーザーの生体データの蓄積が十分でない初期の段階においても、入力された生体データの値の異常または誤入力等を従来よりも高い精度で検知する健康管理装置および健康管理方法を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の第1実施形態に係る健康管理装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図1に示す健康管理装置1において、所定のデータ数以上の生体データが記憶部に保持された後の処理を示すフローチャートである。
図3図1に示す健康管理装置1において、所定のデータ数以上の生体データが記憶部に保持される前の処理を示すフローチャートである。
図4】従来の健康管理装置の基準範囲設定部による暫定基準範囲および個別基準範囲の設定の一例を示す説明図である。
図5図1に示す健康管理装置の表示部の表示の一例を示す説明図である。
図6図1に示す健康管理装置の基準範囲設定部による暫定基準範囲および個別基準範囲の設定の一例を示す説明図である。
図7図1に示す健康管理装置の表示部の表示の一例を示す説明図である。
図8図1に示す健康管理装置の基準範囲設定部による暫定基準範囲および個別基準範囲の設定の一例を示す説明図である。
図9図1に示す健康管理装置の基準範囲設定部による暫定基準範囲および個別基準範囲の設定の一例を示す説明図である。
図10図1に示す健康管理装置の表示部の表示の一例を示す説明図である。
図11図1に示す健康管理装置の表示部の表示の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(i)この発明による健康管理装置は、生体情報の測定値、前記生体情報の種類および測定日時を含む生体データを入力する入力部と、前記生体データを保持する記憶部と、前記生体データの正常な範囲の基準となる基準範囲を設定し保持する基準範囲設定部と、ユーザーに情報を通知する通知部と、前記入力部、前記記憶部、前記基準範囲設定部および前記通知部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記入力部に生体データが入力されたとき、前記記憶部が予め定められたデータ数以上の前記生体データ群を保持しているか否かを判定し、前記記憶部が前記データ数以上の前記生体データ群を保持していない場合、前記基準範囲設定部に予め定められた方法によって求められた暫定基準範囲を前記基準範囲として設定させ、一方、前記記憶部が前記データ数以上の前記生体データ群を保持している場合、前記基準範囲設定部に前記生体データ群を基づいて求められた個別基準範囲を前記基準範囲として設定させ、前記入力部から入力された前記生体データが前記基準範囲外にある場合、前記通知部にユーザーへの警告を通知させることを特徴とする。
また、この発明による健康管理方法は、生体情報の測定値、前記生体情報の種類および測定日時を含む生体データが入力されたとき、予め定められたデータ数以上の前記生体データ群が記憶部に保持されているか否かを判定し、前記記憶部が前記データ数以上の前記生体データ群を保持していない場合、前記生体データの値の正常な範囲の基準となる基準範囲として、予め定められた方法によって求められた暫定基準範囲を設定し、一方、前記記憶部が前記データ数以上の前記生体データ群を保持している場合、前記基準範囲として、前記生体データ群に基づいて求められた個別基準範囲を設定し、入力された前記生体データの値が前記基準範囲外にある場合、ユーザーへの警告を通知させることを特徴とする。
【0012】
「健康管理装置」とは、身長、体重、胸囲、腹囲、血圧、脈拍、体温および血糖値などの生体情報を入力したとき、当該生体データの値が正常な範囲内にあるか否かを判定し、正常な範囲外にあるとき、ユーザーに警告を通知することにより、ユーザーの健康を管理する装置である。
「生体情報」とは、身長、体重、胸囲、腹囲、血圧、脈拍、体温および血糖値などの生体に関する情報である。
「生体データ」とは、生体情報の測定値、前記生体情報の種類および測定日時を含むデータセットである。
「生体データの値」とは、入力部から入力された生体情報の1つの測定値である。
「生体データ群」とは、記憶部に保持された複数の生体データである。
「入力部」とは、ユーザーの身長、体重等の生体情報の測定値、前記生体情報の種類および測定日時を含む生体データを入力する部分である。生体データをユーザーが直接入力するキー操作部やタッチパネル、測定により生体データを取得する測定部、ネットワークを介して外部から生体データを取得する通信部などがあげられる。
「通知部」とは、ユーザーに予め定められた情報を通知する部分である。例えば、視覚的な通知を行うディスプレイ等の表示装置や、音声による通知を行うスピーカーなどがあげられる。
「警告」とは、入力された生体データが普段と異なる旨、一般的な値と異なる旨、または誤入力の可能性がある旨の警告などがあげられる。
「予め定められたデータ数」とは、統計的に有意なデータ数であり、例えば、過去1年以内に入力され、記憶部に保持された生体データ群のうち、直近30点の生体データ群などがあげられる。
「暫定基準範囲」とは、記憶部に保持された生体データ群が統計的に有意なデータ数に満たない場合、入力された生体データの値が正常な範囲内にあるか否かを判定するために暫定的に設定された基準範囲である。
「予め定められた方法によって求められた暫定基準範囲」としては、例えば、総務省の統計情報など、生体データに関する一般的な統計情報に基づいて設定された基準範囲や、過去のユーザーの統計的に有意なデータ数に満たないデータ数の生体データに基づき、計算によって推測された基準範囲などがあげられる。
「個別基準範囲」とは、記憶部に保持された統計的に有意なデータ数の生体データ群に基づき、入力された当該ユーザーの生体データの値が正常な範囲内にあるか否かを判定するための基準範囲である。
【0013】
さらに、この発明の好ましい態様について説明する。
(ii)この発明の健康管理装置において、前記入力部は、ユーザーからの指令を受け付け、前記制御部は、前記記憶部が前記データ数以上の前記生体データ群を保持していない場合において、前記入力部から入力された前記生体データの値が前記基準範囲外にあるとき、前記通知部に前記警告を通知させるとともに、前記生体データの値に問題がないかユーザーの確認を促す通知を通知させ、前記入力部が前記生体データの値に問題がない旨の指令を受け付けたとき、前記制御部は、前記基準範囲設定部に前記生体データの値が前記暫定基準範囲内に含まれるように前記暫定基準範囲を拡張させるものであってもよい。
【0014】
このようにすれば、入力された生体データの値が暫定基準範囲外にある場合であっても、当該生体データの値が正常であるものとユーザーが判断したとき、当該生体データの値が暫定基準範囲内に含まれるように暫定基準範囲を拡張する。
それゆえ、ユーザーにとって入力された生体データの値が正常であるにもかかわらず、一般的な生体データの値よりも高いまたは低い傾向にある場合において、同じような警告が何度も繰り返されることを防止するため、ユーザーの利便性が向上する健康管理装置を実現できる。
【0015】
(iii)この発明の健康管理装置において、前記基準範囲設定部は、前記生体データの値が前記暫定基準範囲の上限値より大きいとき、前記上限値を前記生体データの値に置き換え、また、前記生体データの値が前記暫定基準範囲の下限値より小さいとき、前記下限値を前記生体データの値に置き換えることによって、前記暫定基準範囲を拡張するものであってもよい。
【0016】
このようにすれば、簡単な処理で入力された生体データの値が暫定基準範囲内に含まれるように暫定基準範囲を拡張する健康管理装置を実現できる。
【0017】
(iv)この発明の健康管理装置において、前記基準範囲設定部は、予め定められた計算方法に基づき、前記生体データの値が前記暫定基準範囲内に含まれるように前記暫定基準範囲を拡張するものであってもよい。
【0018】
このようにすれば、予め定められた計算方法に基づき、入力された生体データの値が暫定基準範囲内に含まれるように暫定基準範囲を拡張する健康管理装置を実現できる。
【0019】
「予め定められた計算方法」とは、生体データの標準偏差σT等に基づき、生体データの変動を考慮した計算方法などであり、基準範囲設定部は、このような計算方法により、適切な範囲に暫定基準範囲を拡張することによって、生体データの変動が生じても同じような警告が何度も繰り返されることが防止される。
【0020】
(v)この発明の健康管理装置において、前記制御部は、前記生体データの値が前記基準範囲内にある場合、または前記生体データの値が前記基準範囲内にない場合において前記生体データの値に問題がない旨の指令を前記入力部が受け付けた場合に、前記生体データの値を前記記憶部に保持させるものであってもよい。
【0021】
このようにすれば、異常または誤入力等によるものである場合を除く正常な状態の生体データの値が記憶部に保持されるため、生体データの値の正常な範囲の基準となる基準範囲を適切に設定することが可能となり、生体データの値の異常または誤入力等を従来よりも高い精度で検知する健康管理装置を実現できる。
【0022】
(vi)この発明の健康管理装置において、前記記憶部は、前記生体データに関する一般的な統計情報を保持し、前記基準範囲設定部は、前記統計情報に基づき、前記暫定基準範囲を設定するものであってもよい。
【0023】
このようにすれば、ユーザーの生体データの蓄積が十分でない初期の段階においても、当該生体データに関する一般的な統計情報に基づき、入力された生体データの値の異常または誤入力等を従来よりも高い精度で検知する健康管理装置を実現する。
【0024】
「一般的な統計情報」とは、例えば、総務省の統計情報などがあげられる。
【0025】
(vii)この発明の健康管理装置において、前記基準範囲設定部は、前記記憶部に保持された前記データ数未満の前記生体データ群および予め定められた計算方法に基づき、前記暫定基準範囲を設定するものであってもよい。
【0026】
このようにすれば、ユーザーの生体データの蓄積が十分でない初期の段階においても、記憶部に保持された統計的に有意なデータ数未満の生体データ群および予め定められた計算方法に基づき、生体データの値の異常または誤入力等を従来よりも高い精度で検知する健康管理装置を実現する。
【0027】
「予め定められた計算方法」とは、記憶部に保持された統計的に有意なデータ数未満の生体データ群に基づき、基準範囲を推定する計算方法であり、例えば、ノンパラメトリック法に基づく計算方法などがあげられる。
【0028】
〔第1実施形態〕
<健康管理装置1の構成>
図1に基づき、この発明の第1実施形態に係る健康管理装置1の構成を説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る健康管理装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0029】
図1に示すように、この発明の健康管理装置1は、健康管理装置1の各部の制御を統括する制御部10と、操作者(ユーザー)の入力操作を受け付け、ユーザーの身長、体重等の生体情報の測定値、前記生体情報の種類および測定日時を含む生体データを入力する入力操作部11と、ユーザーに操作用のアイコン画像や警告等の予め定められた情報を表示する表示部12と、入力操作部11から入力された生体データを保持する記憶部13と、生体データの正常な範囲の基準となる基準範囲を設定し保持する基準範囲設定部14とを備える。
【0030】
また、変形例として、健康管理装置1は、生体データの測定部をさらに備え、当該測定部の測定によって生体データを直接入力するようにしてもよい。
【0031】
また、別の変形例として、健康管理装置1は、外部のネットワークシステムと無線または優先による通信を行うための通信部をさらに備え、当該ネットワークを通じて生体データや当該生体データに関する統計情報を取得するようにしてもよい。
【0032】
なお、第1実施形態において、この発明の「入力部」は、入力操作部11によって実現され、また、この発明の「通知部」は、表示部12によって実現される。
【0033】
以下、図1に示す各構成要素を説明する。
【0034】
制御部10は、マイクロプロセッサ(Microprocessor)を主体とする回路であり、各種装置の制御処理やオペレーティングシステム、アプリケーションソフトウェアなどの処理を行う演算装置である。また、周辺回路として、特定の用途のために設計、製造される集積回路であるASIC(Application Specific Integrated Circuit)、その他の演算機能を有する回路を含んでいてもよい。
【0035】
入力操作部11は、オペレーティングシステムやアプリケーションソフトウェアに対し、タッチパネルを通じた電子アイコンの操作、その他物理的なボタン画像の操作により、生体データ等の入力やユーザーの指令等を制御部10に伝える装置である。
【0036】
表示部12は、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、ELディスプレイなどで構成され、入力操作部11から入力された生体データの値の判定結果や予め定められた情報等を表示するためのモニタやラインディスプレイなどの表示装置である。
【0037】
記憶部13は、各種装置の制御処理やオペレーティングシステム、アプリケーションソフトウェアなどのプログラムおよびデータが保持される、ハードディスクやフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置、各種装置の制御処理やオペレーティングシステム、アプリケーションソフトウェアなどのプログラムやデータが保持される主記憶装置などの記憶装置である。
【0038】
また、記憶部13には、入力操作部11から入力された生体データや、全国の生体データを集計することによって得られた一般的な統計情報等が保持される。
【0039】
基準範囲設定部14は、入力された生体データの値の正常な範囲の基準となる基準範囲(個別基準範囲および暫定基準範囲)を設定し保持する部分である。
個別基準範囲および暫定基準範囲については、図2および図3の説明において後述する。
【0040】
<健康管理装置1の処理>
次に、図2および図3に基づき、この発明の第1実施形態に係る健康管理装置1の処理について説明する。
図2は、図1に示す健康管理装置1において、所定の(例えば、統計的に有意な)データ数以上の生体データ群が記憶部13に保持された後の処理を示すフローチャートである。また、図3は、図1に示す健康管理装置1において、所定のデータ数以上の生体データ群が記憶部13に保持される前の処理を示すフローチャートである。
【0041】
<所定のデータ数以上の生体データ群が記憶部13に保持された後の処理>
最初に、図2に基づき、所定のデータ数以上の生体データ群が記憶部13に保持された後の処理について説明する。
【0042】
図2のステップS101において、制御部10は、ユーザーの生体データの入力欄を表示部12に表示させる(ステップS101)。
ここで、生体データとしては、例えば、身長、体重、胸囲、腹囲、血圧、脈拍、体温および血糖値などの生体情報の測定値の他、前記生体情報の種類および測定日時などが含まれる。
【0043】
次に、ステップS102において、入力操作部11からユーザーの生体データが入力されたとき(ステップS102)、制御部10は、続くステップS103において、入力操作部11から過去に入力された予め定められたデータ数以上の生体データ群が記憶部13に保持されているか否かを判定する(ステップS103)。
【0044】
ここで、予め定められたデータ数とは、統計的に有意なデータ数であり、例えば、過去1年以内に入力され、記憶部13に保持された生体データ群のうち、直近30点の生体データ群などがあげられる。
また、ユーザーが健康管理装置1の利用を開始した時点から前回の入力時までの生体データ群を集計したものであってもよい。
なお、当該データ数は、生体データの特性に応じて、生体データごとに異なる値であってもよい。
【0045】
ステップS103において、予め定められたデータ数以上の生体データ群が記憶部13に保持されている場合(ステップS103の判定がYesの場合)、制御部10は、ステップS104において、基準範囲設定部14に当該生体データ群の平均値aveおよび標準偏差σを算出させ、これらの値に基づき、個別基準範囲を設定する(ステップS104)。
【0046】
ここで、個別基準範囲とは、過去に入力された統計的に有意なデータ数のユーザーの生体データ群に基づき、新たに入力された当該ユーザーの生体データの値が正常な範囲内にあるか否かを判定するための基準範囲である。
【0047】
個別基準範囲としては、ユーザーに対する警告の頻度が過剰になりすぎない程度に調整することが好ましい。
具体的には、基準範囲設定部14は、個別基準範囲として、例えば、下限値ave−3σ〜上限値ave+3σの範囲に設定する。
また、例えば、比較的安定した値になるBMIについては、下限値ave−2σ〜上限値ave+2σの範囲に設定し、また、変動が大きい血圧については、下限値ave−3σ〜上限値ave+3σの範囲に設定するなど、基準範囲設定部14は、生体情報の種類に応じて、生体情報の種類ごとに異なる範囲に個別基準範囲を設定するようにしてもよい。
【0048】
一方、ステップS103の判定において、予め定められたデータ数以上の生体データ群が記憶部13に保持されていない場合(ステップS103の判定がNoの場合)、制御部10は、図3のステップS201の処理を行う(ステップS201)。
なお、図3のステップS201以降の処理の詳細については、図3の説明で後述する。
【0049】
次に、ステップS105において、制御部10は、入力操作部11から入力された生体データの値が個別基準範囲外にあるか否かを判定する(ステップS105)。
【0050】
入力された生体データの値が個別基準範囲外にある場合(ステップS105の判定がYesの場合)、制御部10は、ステップS106において、表示部12にユーザーへの警告を表示させる(ステップS106)。
具体的には、入力された生体データが普段と異なる旨、一般的な値と異なる旨、または誤入力の可能性がある旨などの警告を表示させる。
その後、制御部10は、健康管理装置1の処理を終了させる。
【0051】
一方、入力されたデータの値が個別基準範囲内にある場合(ステップS105の判定がNoの場合)、制御部10は、ステップS107において、当該生体データの値を記憶部13に保持する(ステップS107)。
その後、制御部10は、処理を終了させる。
【0052】
このように、統計的に有意なデータ数以上の生体データ群が記憶部13に保持されている場合、当該生体データ群に基づいて個別基準範囲を設定し、入力された生体データの値が個別基準範囲外にあるとき、当該生体データの値が正常でない旨を表示することによって、ユーザーの注意を促す健康管理装置1を実現できる。
また、個別基準範囲内にある生体データの値を記憶部13に保持することにより、当該生体データの値の異常または誤入力等を高い精度で検知する健康管理装置1を実現できる。
【0053】
<所定のデータ数以上の生体データ群が記憶部13に保持される前の処理>
次に、図3に基づき、所定のデータ数以上の生体データ群が記憶部13に保持される前の処理について説明する。
【0054】
図3のステップS201において、制御部10は、記憶部13に予め保持された既存の統計情報から平均値aveTおよび標準偏差σTを読み込む(ステップS201)。
ここで、既存の統計情報としては、例えば、総務省の統計情報などがあげられる。
【0055】
続いて、ステップS202において、制御部10は、暫定基準範囲が拡張されているか否かを判定する(ステップS202)。
暫定基準範囲およびその拡張については、それぞれステップS204およびS207の説明において後述する。
【0056】
暫定基準範囲が拡張されている場合(ステップS202の判定がYesの場合)、制御部10は、ステップS204の判定を行う(ステップS204)。
【0057】
一方、暫定基準範囲が拡張されていない場合(ステップS202の判定がNoの場合)、制御部10は、ステップS203において、ステップS201で読み込んだ平均値aveTおよび標準偏差σTに基づき、基準範囲設定部14に暫定基準範囲を設定させる(ステップS203)。
【0058】
ここで、暫定基準範囲とは、過去に入力され、記憶部13に保持されたユーザーの生体データ群のデータ数が統計的に有意なデータ数に満たない場合、新たに入力された当該ユーザーの生体データの値が正常な範囲内にあるか否かを判定するために暫定的に設定された基準範囲である。
【0059】
具体的には、基準範囲設定部14は、暫定基準範囲として、例えば、下限値aveT−3σT〜上限値aveT+3σTの範囲に設定する。
また、基準範囲設定部14は、個別基準範囲と同様に、生体データの特性に応じて、生体データごとに異なる範囲に暫定基準範囲を設定するようにしてもよい。
【0060】
次に、ステップS204において、制御部10は、入力操作部11から入力された生体データの値が暫定基準範囲外にあるか否かを判定する(ステップS204)。
【0061】
入力されたデータの値が暫定基準範囲外にある場合(ステップS204の判定がYesの場合)、制御部10は、ステップS205において、表示部12にユーザーへの警告およびユーザーの確認を促す表示を表示させる(ステップS205)。
具体的には、入力された生体データが普段と異なる旨、一般的な値と異なる旨、または誤入力の可能性がある旨などの警告とともに、入力された生体データが正常値であるか否か、問題がないか否か、または誤入力の可能性があるか否か等のユーザーの確認を促す表示を表示させる。
その後、制御部10は、ステップS206の判定をする(ステップS206)。
【0062】
一方、入力された生体データの値が暫定基準範囲内にある場合(ステップS204の判定がNoの場合)、制御部10は、ステップS208の処理を行う(ステップS208)。
【0063】
次に、ステップS206において、制御部10は、入力操作部11から問題がない旨の回答を受け付けたか否かを判定する(ステップS206)。
【0064】
入力操作部11から問題がない旨の回答を受け付けた場合(ステップS206の判定がYesの場合)、制御部10は、ステップS207において、基準範囲設定部14に、入力された生体データの値が含まれるように暫定基準範囲を拡張させる(ステップS207)。
その後、制御部10は、ステップS208の処理を行う。
【0065】
ここで、暫定基準範囲の具体的な拡張方法としては、(1)入力値が暫定基準範囲の下限値を下回ったとき、(2)入力値が暫定基準範囲の上限値を上回ったとき、の2つの場合がある。
【0066】
具体的には、暫定基準範囲として、下限値aveT−3σT〜上限値aveT+3σTの範囲に設定した場合において、(1)入力された生体データの値が暫定基準範囲の下限値aveT−3σTを下回ったとき、制御部10は、基準範囲設定部14に暫定基準範囲を、例えば、入力された生体データの値〜上限値aveT+3σTの範囲に拡張させる。
また、(2)入力された生体データの値が暫定基準範囲の上限値aveT+3σTを上回ったとき、制御部10は、基準範囲設定部14に暫定基準範囲を、例えば、下限値aveT−3σT〜入力された生体データの値の範囲に拡張させる。
なお、すでに拡張された暫定基準範囲をさらに拡張させる場合も同様である。
【0067】
このように拡張することで、簡単な処理で入力された生体データの値が暫定基準範囲内に含まれるように暫定基準範囲を拡張することが可能となる。
【0068】
一方、ステップS206の判定において、入力操作部11から問題がある旨の回答を受け付けた場合(ステップS206の判定がNoの場合)、制御部10は、ステップS209において、表示部12にユーザーへの警告および誤入力の場合は正しい生体データの再入力を促す通知を表示させる(ステップS209)。
その後、制御部10は、処理を終了させる。
【0069】
最後に、ステップS208において、制御部10は、入力された生体データの値を記憶部13に保持し(ステップS208)、その後、処理を終了させる。
【0070】
<この発明の実施形態1に係る健康管理装置1の基準範囲設定部14による暫定基準範囲および個別基準範囲の設定の具体例ならびに表示部12の表示の具体例>
次に、図4図11に基づき、この発明の実施形態1に係る健康管理装置1の基準範囲設定部14による暫定基準範囲および個別基準範囲の設定の具体例ならびに表示部12の表示の具体例について説明する。
図4図6図8および図9は、図1に示す健康管理装置1の基準範囲設定部14による暫定基準範囲および個別基準範囲の設定の一例を示す説明図である。また、図5図7図10および図11は、図1に示す健康管理装置1の表示部12の表示の一例を示す説明図である。
【0071】
図4のグラフは、血圧が一般的な統計情報の平均値aveTよりも高めのユーザーが、生体データの1例としての自身の最高血圧を健康管理装置1で入力した結果を表す。
ここで、横軸はユーザーが最高血圧を測定した測定回を表し、縦軸は入力された最高血圧の値(mmHg)を表す。
【0072】
ここで、図4のグラフの横軸は、予め定められたデータ数以上の生体データ群が記憶部13に保持される前の期間Iと、予め定められたデータ数以上の生体データ群が記憶部13に保持された後の期間IIとに大きく分けられる。
図4の例では、予め定められたデータ数を30として、30点のデータ数の生体データ群が記憶部13に保持される前の期間を期間Iとし、30点のデータ数の生体データ群が記憶部13に保持された後の期間を期間IIとしている。
【0073】
<期間Iにおける暫定基準範囲の設定および拡張の具体例>
次に、期間Iにおける暫定基準範囲の設定および拡張の具体例について説明する。
【0074】
期間Iにおいて、統計的に有意なデータ数以上の生体データ群が、記憶部13に保持される前の暫定的な基準範囲として、例えば、総務省の統計情報の平均値aveTおよび標準偏差σTに基づいて算出された暫定基準範囲が、入力された生体データの値の判定用として用いられる。
ここで、暫定基準範囲の下限値を点線で、上限値を一点鎖線で示す。後述する個別基準範囲についても同様である。
【0075】
期間Iにおいては、ユーザーの最高血圧が一般的な統計情報の平均値aveTよりも高いため、P1〜P6の各点で入力された生体データの値が暫定基準範囲の上限値を上回っていることがわかる。
【0076】
P1の点において、入力された生体データの値が暫定基準範囲の上限値を超えたとき、制御部10は、図5に示すように、表示部12にユーザーへの警告およびユーザーの確認を促す表示を表示させる。
【0077】
図5の例においては、P1点における測定時間帯「朝」および入力された生体データの値「166」に基づいて、「最高血圧(朝)が『166』ですが、よろしいですか?」というメッセージを表示部12に表示させている。
また、総務省の統計情報から算出された暫定基準範囲の下限値「100」および上限値「159」に基づいて、「(一般的な値:100〜159)」という表示を併せて表示部12に表示させている。
【0078】
このように、ユーザーは、一般的な統計情報から算出された暫定基準範囲を参考にして、入力された生体データの値が正常でないか、また誤入力によるものであるか否かを一目で判断することができるため、ユーザーの利便性が向上する。
【0079】
また、図5に示すように、「はい」「いいえ」のアイコンを表示させて、問題がないかユーザーの確認を促す表示も表示部12に表示させている。
【0080】
図5の確認表示において、ユーザーが「はい」のアイコンを選択した場合、制御部10は、入力された生体データの値が正常であるものとして、当該生体データの値が含まれるように暫定基準範囲を拡張する。
【0081】
暫定基準範囲の具体的な拡張方法としては、図6に示すように、P1点において、暫定基準範囲の上限値を入力された生体データの値に置き換えることによって、暫定基準範囲を拡張する。
【0082】
ところで、図6に示すように暫定基準範囲を拡張せず、図4に示すように暫定基準範囲の下限値および上限値を一定に固定してしまうと、上限値を超えるその他のP2〜P6の各点においても、図5と同様の表示がなされることになる。
【0083】
しかしながら、P2〜P6の入力値が一般的な統計値から求められた暫定基準範囲から逸脱していたとしても、当該ユーザーにとっては正常な場合もある。このようなユーザーに対して、暫定基準範囲を逸脱しているからといって、図5に示すような表示を何度もすれば、ユーザーにとって非常に煩わしいものとなる。
【0084】
このような問題を解決するために、この発明の実施形態1に係る健康管理装置1では、ユーザーの生体データが十分に蓄積されていない期間Iにおいて、図6に示すように、暫定基準範囲を固定せず、ユーザーの判断に基づいて自由に拡張できるようにしている。
【0085】
このようにすれば、図6に示すように、P2〜P6の各点も暫定基準範囲内に含まれるようになるため、図5に示すような表示が何度も繰り返されることを防止することが可能となる。
【0086】
一方、図5に示す確認表示において、ユーザーが「いいえ」のアイコンを選択した場合、制御部10は、図7に示すように、表示部12にユーザーへの警告および誤入力の場合は正しい生体データの再入力を促す通知を表示させる
【0087】
図7の例においては、P1点における測定時間帯「朝」、入力された生体データの値「166」ならびに暫定基準範囲の下限値「100」および上限値「159」に基づいて、「最高血圧(朝)が「166」と一般的な値(100〜159)より高めなのでご注意ください。また、誤入力の場合は正しい値を再入力してください。」というメッセージを、ユーザーの確認を促す「OK」アイコンとともに表示部12に表示させている。
【0088】
また、この場合、図8に示すように、基準範囲設定部14は、P1点の後も暫定基準範囲を拡張せず、制御部10は、一般的な統計情報に基づいて設定された暫定基準範囲をその後に入力された生体データの値の判断基準として引き続き採用する。
【0089】
なお、図8において、P1点での確認表示後、P2点においても図5に示す確認表示をしたとき、ユーザーが「はい」のアイコンを選択したものとしているため、基準範囲設定部14は、暫定基準範囲の上限値を入力された生体データの値に置き換えることによって、暫定基準範囲を拡張している。
【0090】
また、図9に示すように、P3点で基準範囲設定部14が暫定基準範囲を拡張して暫定基準範囲1とした後、さらにP5点で暫定基準範囲1の範囲外の生体データの値が入力された場合、図10に示すように、表示部12にユーザーへの警告およびユーザーの確認を促す表示を表示させる。
【0091】
図10の例においては、P5点における測定時間帯「朝」および入力された生体データの値「161」に基づいて、「最高血圧(朝)が『161』ですが、よろしいですか?」というメッセージを表示部12に表示させている。
【0092】
また、「はい」「いいえ」のアイコンを表示させて、問題がないかユーザーの確認を促す表示を表示部12に表示させる点およびその後の処理については、図5の説明と同様である。
【0093】
なお、図9のP5点において、ユーザーが「はい」のアイコンを選択した場合、基準範囲設定部14は、図9に示すように、暫定基準範囲1をさらに拡張して暫定基準範囲2とする。
【0094】
このように、ユーザーの判断に基づき、一般的な統計情報に基づき設定された暫定基準範囲を自由に拡張できるため、ユーザーの生体データの蓄積が十分でない初期の段階においても生体データの値の異常または誤入力等を従来よりも高い精度で検知する健康管理装置1を実現できる。
【0095】
<期間IIにおける個別基準範囲の設定の具体例>
次に、期間IIにおける個別基準範囲の設定の具体例について説明する。
【0096】
期間IIにおいては、過去に入力された直近30点の生体データ群の測定値の平均値aveおよび標準偏差σに基づいて算出された個別基準範囲が入力された生体データの値の判定用として用いられる。
【0097】
なお、図4図6図8および図9においては、説明の便宜のため、個別基準範囲の下限値および上限値を簡略化して一定に描いているが、実際の個別基準範囲の下限値および上限値は、入力された生体データの値の変動に応じて絶えず変動している。
【0098】
期間IIにおいて、例えば、図9のP7点に示されるように、入力された生体データの値が個別基準範囲外にある場合、制御部10は、図11に示すように、入力された生体データの値を表示部12に表示させる。
【0099】
図11の例においては、P7点における測定時間帯「朝」および入力された生体データの値「138」に基づいて、「最高血圧(朝)が『138』です。普段と違うのでご注意ください。」というメッセージを、ユーザーの確認を促す「OK」アイコンとともに表示部12に表示させている。
【0100】
このように、ユーザーは、過去に入力された統計的に有意なデータ数以上の生体データ群に基づいて設定された個別基準範囲を参考にして、ユーザーの入力された生体データの値が正常でないことを確認することができる。
【0101】
〔実施形態2〕
次に、この発明の実施形態2に係る健康管理装置1について説明する。
【0102】
この発明の実施形態2に係る健康管理装置1の基準範囲設定部14は、統計的に有意なデータ数に満たない生体データ群および予め定められた計算方法に基づき、生体データの暫定基準範囲を設定する。
【0103】
具体的には、統計的に有意なデータ数に満たない生体データ群に基づき、その暫定基準範囲を推定する計算方法などが用いられる。
例えば、標本サイズが小さく、記憶部13に保持された生体データ群が正規分布を示さない場合、当該生体データ群を大きさの順に並べ、上下からそれぞれ数%の位置にある生体データの値をそれぞれ下限値および上限値とするノンパラメトリック法に基づく計算方法などがあげられる。
【0104】
また、標本サイズが小さく、記憶部13に保持された生体データ群が正規分布を示さない場合、当該生体データ群の分布の型を分析して正規分布に変換してから、その平均値aveTおよび標準偏差σTを計算によって求めて、基準範囲を推定する方法もあげられる。
【0105】
また、生体データの変動が大きい場合は、変動が予め定められた値よりも大きな生体データの値を除外して再サンプリングした上で、基準範囲を推定するようにしてもよい。
【0106】
また、過去のデータ等に照らし合わせて、平均値aveや標準偏差σを適切な値に変換した上で、基準範囲を推定するようにしてもよい。
【0107】
なお、当該計算方法に係るアルゴリズムは、記憶部13に保持される。
【0108】
このようにして、ユーザーの生体データの蓄積が十分でない初期の段階においても、統計的に有意なデータ数に満たない生体データの値および予め定められた計算方法に基づき、生体データの値の異常または誤入力等を従来よりも高い精度で検知する健康管理装置1を実現する。
【0109】
〔実施形態3〕
次に、この発明の実施形態3に係る健康管理装置1について説明する。
【0110】
この発明の実施形態3に係る健康管理装置1の基準範囲設定部14は、ユーザーの年齢や性別および測定の時期等の情報を入力させ、一般的な統計情報からこれらの情報に合致する統計情報を抽出する。そして、抽出された統計情報に基づき、当該ユーザーの生体データの暫定基準範囲を設定する。
【0111】
このようにすれば、ユーザーの年齢や性別および測定の時期に応じて、より精度の高い検知が可能な健康管理装置1を実現できる。
【0112】
〔実施形態4〕
次に、この発明の実施形態4に係る健康管理装置1について説明する。
【0113】
この発明の実施形態4に係る健康管理装置1において、基準範囲設定部14は、暫定基準範囲を拡張するとき、暫定基準範囲の下限値を入力された生体データの値に置き換える代わりに、入力された生体データの値−δL(δLは、予め定められた任意の実数値)に置き換え、また、暫定基準範囲の上限値を入力された生体データの値に置き換える代わりに、入力された生体データの値+δH(δHは、予め定められた任意の実数値)に置き換える。
【0114】
また、基準範囲設定部14は、予め定められた計算方法に基づき、当該生体データの値が暫定基準範囲内に含まれるように暫定基準範囲を拡張するようにしてもよい。
基準範囲設定部14は、例えば、生体データの標準偏差σT等に基づき、生体データの変動を考慮した計算を行うことにより、適切な範囲に暫定基準範囲を拡張する。
【0115】
例えば、基準範囲設定部14は、暫定基準範囲を拡張するとき、暫定基準範囲の下限値を入力された生体データの値に置き換える代わりに、入力された生体データの値−σTに置き換え、また、暫定基準範囲の上限値を入力された生体データの値に置き換える代わりに、入力された生体データの値+σTに置き換える計算方法等があげられる。
【0116】
このようにすれば、基準範囲設定部14は、ユーザーが正常な値であると判断した生体データの値を、ある程度の余裕をもって含むように暫定基準範囲を拡張するため、その後、当該生体データの値にごく近い値が入力されることによって、同じような確認表示が何度もなされるのを防止することができる健康管理装置1を実現できる。
【0117】
〔実施形態5〕
次に、この発明の実施形態5に係る健康管理装置1について説明する。
【0118】
この発明の実施形態4に係る健康管理装置1は、通信部をさらに備え、一般的な統計情報を外部から適宜取得して更新する。
また、総務省等の一般的な統計情報のみならず、他の健康管理装置1等に入力された他のユーザーの統計情報を適宜取得して利用するようにしてもよい。
【0119】
このようにすれば、ユーザーの生体データの蓄積が十分でない初期の段階において、常に最新の統計情報を通信部から取得することによって、生体データの値の異常または誤入力等を従来よりも高い精度で検知する健康管理装置1を実現することができる。
また、個別基準範囲または暫定基準範囲の設定や更新に直接必要ないデータは、外部の記憶部に保持するようにしてもよい。
【0120】
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0121】
1:健康管理装置、 10:制御部、 11:入力操作部、 12:表示部、 13:記憶部、 14:基準範囲設定部、 ave,aveT:平均値、 σ,σT:標準偏差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11