特許第6802690号(P6802690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802690
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】成形機
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/32 20060101AFI20201207BHJP
   B22D 18/02 20060101ALI20201207BHJP
   B29C 45/56 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   B22D17/32 Z
   B22D18/02 G
   B29C45/56
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-222061(P2016-222061)
(22)【出願日】2016年11月15日
(65)【公開番号】特開2018-79485(P2018-79485A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】雨澤 弘機
(72)【発明者】
【氏名】相田 悟
(72)【発明者】
【氏名】豊島 俊昭
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−087638(JP,A)
【文献】 特開平05−123847(JP,A)
【文献】 特開2015−128874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00−17/32,18/02,
B29C 45/56,45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に対して共に移動可能な複数の押出ピンと、
前記複数の押出ピンを駆動可能な電動機と、
前記複数の押出ピンの位置を検出可能な位置センサと、
前記複数の押出ピンが成形材料に付与する圧力を検出可能な圧力センサと、
画像を表示可能な表示装置と、
前記電動機及び前記表示装置を制御する制御装置と、
を有しており、
前記制御装置が、
射出開始後かつ型開き前に前記複数の押出ピンを金型内部側へ前進させる駆動力を生じるように前記電動機を制御する駆動制御部と、
前記位置センサが検出した位置と前記圧力センサが検出した圧力と、前記位置センサの検出値に基づく前記複数の押出ピンの速度と、を共通の時間軸に沿って表示するように前記表示装置を制御する表示制御部と、を有しており、
前記複数の押出ピンは、その前進開始から停止まで、時間に対して線形に前進するように制御され、前記金型内の成形材料の凝固が進行すると制御に反して時間に対して非線形に前進する
成形機。
【請求項2】
金型に対して共に移動可能な複数の押出ピンと、
前記複数の押出ピンを駆動可能な電動機と、
前記複数の押出ピンの位置を検出可能な位置センサと、
前記複数の押出ピンが成形材料に付与する圧力を検出可能な圧力センサと、
画像を表示可能な表示装置と、
前記電動機及び前記表示装置を制御する制御装置と、
を有しており、
前記制御装置が、
射出開始後かつ型開き前に前記複数の押出ピンを金型内部側へ前進させる駆動力を生じるように前記電動機を制御する駆動制御部と、
前記位置センサが検出した位置と前記圧力センサが検出した圧力とを共通の時間軸に沿って表示するように前記表示装置を制御する表示制御部と、を有しており、
前記表示制御部が、前記圧力センサが検出した圧力が所定の閾値以上となってからの前記位置センサの検出値に基づく前記複数の押出ピンの金型内部側への移動量を数値で表示するように前記表示装置を制御する
形機。
【請求項3】
金型に対して共に移動可能な複数の押出ピンと、
前記複数の押出ピンを駆動可能な電動機と、
前記複数の押出ピンの位置を検出可能な位置センサと、
前記複数の押出ピンが成形材料に付与する圧力を検出可能な圧力センサと、
画像を表示可能な表示装置と、
前記電動機及び前記表示装置を制御する制御装置と、
を有しており、
前記制御装置が、
射出開始後かつ型開き前に前記複数の押出ピンを金型内部側へ前進させる駆動力を生じるように前記電動機を制御する駆動制御部と、
前記位置センサが検出した位置と前記圧力センサが検出した圧力とを共通の時間軸に沿って表示するように前記表示装置を制御する表示制御部と、を有しており、
前記駆動制御部が、前記圧力センサが検出した圧力が所定の閾値以上となってからの前記位置センサの検出値に基づく前記複数の押出ピンの金型内部側への移動量に応じて、前記複数の押出ピンの前進開始タイミング、前記複数の押出ピンの速度及び前記複数の押出ピンが成形材料に付与する力の少なくともいずれか一つを変更する
形機。
【請求項4】
入力操作がなされる入力装置を更に有しており、
前記駆動制御部が、前記入力操作により指定されたタイミングで前記複数の押出ピンの前進を開始するように前記電動機を制御する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形機。
【請求項5】
入力操作がなされる入力装置を更に有しており、
前記駆動制御部が、前記入力操作により指定された速度で前記複数の押出ピンが前進するように前記電動機を制御する
請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形機。
【請求項6】
入力操作がなされる入力装置を更に有しており、
前記駆動制御部が、前記入力操作により指定された圧力で前記複数の押出ピンが金型内部の成形材料を加圧するように前記電動機を制御する
請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形機。
【請求項7】
前記複数の押出ピンを保持している押出板と、
前記押出板から前記複数の押出ピンと並列に延びているガイドピンと、
を有しており、
前記金型は、移動金型及び固定金型からなる2つの分割型を有しており、
2つの前記分割型は、
型閉じされたときに互いに離れており、その間にキャビティを構成する内面と、
型閉じされたときに互いに当接する合わせ面と、を有しており、
前記複数の押出ピン及び前記ガイドピンは、一方の前記分割型に背面側から挿通されており、
前記複数の押出ピンの先端面が前記一方の分割型の内面に一致するときに、前記ガイドピンの先端が他方の前記分割型の合わせ面に当接する
請求項1〜6のいずれか1項に記載の成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液状又は固液共存状態の成形材料を金型内に射出して成形する成形機に関する。成形機は、例えば、ダイカストマシンやプラスチック射出成形機である。
【背景技術】
【0002】
金型内に成形材料を射出した後、加圧ピンによって金型内の成形材料を加圧する成形機が知られている(特許文献1)。加圧ピンによって局部加圧を行うことにより、例えば、成形材料の凝固収縮に伴って生じるひけ巣などの巣を低減することができる。特許文献1は、加圧ピンをサーボモータで駆動すること、時間軸に沿った圧力フィードバック制御によってサーボモータを制御すること、加圧開始タイミングとして種々のパラメータを基準としてよいことなどを開示している。
【0003】
特許文献2は、加圧ピンに代えて、押出ピンを用いることを提案している。押出ピンは、本来、金型内で成形材料が凝固して成形品が形成された後、金型から成形品を引き剥がすためのものであり、型開きの際または型開き後に、金型内面から突出するように駆動される。このような押出ピンを加圧ピンとして利用することによって、例えば、加圧ピン及びその駆動機構を金型背面に確保することが困難な場合においても局部加圧を行うことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−142758号公報
【特許文献2】特開平5−123847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の成形機において、局部加圧を好適に行うためには、例えば、オペレータは、圧力制御のパラメータ等を種々設定しつつ、成形品の試作と、その試作品の品質検査とを繰り返し、好適なパラメータを見つけなければならない。その結果、例えば、オペレータの負担が大きく、局部加圧の機能を有効に活用できないおそれがある。さらに、加圧ピンとして押出ピンを用いた場合においては、上記のような活用において特有の課題が生じるおそれもある。そこで、押出ピンを用いた局部加圧を有効に活用できる成形機が提供されることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る成形機は、金型に対して共に移動可能な複数の押出ピンと、前記複数の押出ピンを駆動可能な電動機と、前記複数の押出ピンの位置を検出可能な位置センサと、前記複数の押出ピンが成形材料に付与する圧力を検出可能な圧力センサと、画像を表示可能な表示装置と、前記電動機及び前記表示装置を制御する制御装置と、を有しており、前記制御装置が、射出開始後かつ型開き前に前記複数の押出ピンを金型内部側へ前進させる駆動力を生じるように前記電動機を制御する駆動制御部と、前記位置センサが検出した位置と前記圧力センサが検出した圧力とを共通の時間軸に沿って表示するように前記表示装置を制御する表示制御部と、を有している。
【0007】
好適には、前記表示制御部が、前記位置センサの検出値に基づく前記複数の押出ピンの速度を前記時間軸に沿って表示するように前記表示装置を制御する。
【0008】
好適には、前記表示制御部が、前記圧力センサが検出した圧力が所定の閾値以上となってからの前記位置センサの検出値に基づく前記複数の押出ピンの金型内部側への移動量を数値で表示するように前記表示装置を制御する。
【0009】
好適には、入力操作がなされる入力装置を更に有しており、前記駆動制御部が、前記入力操作により指定されたタイミングで前記複数の押出ピンの前進を開始するように前記電動機を制御する。
【0010】
好適には、入力操作がなされる入力装置を更に有しており、前記駆動制御部が、前記入力操作により指定された速度で前記複数の押出ピンが前進するように前記電動機を制御する。
【0011】
好適には、入力操作がなされる入力装置を更に有しており、前記駆動制御部が、前記入力操作により指定された圧力で前記複数の押出ピンが金型内部の成形材料を加圧するように前記電動機を制御する。
【0012】
好適には、前記駆動制御部が、前記圧力センサが検出した圧力が所定の閾値以上となってからの前記位置センサの検出値に基づく前記複数の押出ピンの金型内部側への移動量に応じて、前記複数の押出ピンの前進開始タイミング、前記複数の押出ピンの速度及び前記複数の押出ピンが成形材料に付与する力の少なくともいずれか一つを変更する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、押出ピンを用いた局部加圧を有効に活用することが容易化される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施形態に係るダイカストマシンの要部構成を示す模式図。
図2図1のダイカストマシンの金型及びその周辺における要部構成を示す模式図。
図3図2の一部拡大図。
図4図1のダイカストマシンの信号処理系の構成を示すブロック図。
図5図4の駆動制御部の一例を示すブロック図。
図6図4の表示装置に表示される画像の例を示す図。
図7】加圧調整処理の手順の一例を示すフローチャート。
図8】有効ストローク特定処理の手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(ダイカストマシンの全体構成)
図1は、本開示の実施形態に係るダイカストマシン1の要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。
【0016】
ダイカストマシン1は、凝固前(液状又は固液共存状態)の金属材料を金型101内(キャビティCa等の空間。以下同様。)へ射出し、金属材料を金型101内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造するものである。金属は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金である。
【0017】
金型101は、例えば、固定金型103及び移動金型105を含んでいる。本実施形態の説明では、便宜上、固定金型103又は移動金型105の断面を1種類のハッチングで示すが、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定金型103及び移動金型105には、中子などが組み合わされてもよい。
【0018】
ダイカストマシン1は、例えば、成形のための機械的動作を行うマシン本体部3と、マシン本体部3の動作を制御する制御ユニット5とを有している。
【0019】
マシン本体部3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101内に凝固前の金属材料を射出する射出装置9と、ダイカスト品を固定金型103又は移動金型105(図1では移動金型105)から押し出す押出装置11とを有している。マシン本体部3において、押出装置11以外の構成(例えば型締装置7及び射出装置9の構成)は、基本的には(例えば押出装置11の取付けに係る部分を除いて)、公知の種々の構成と同様とされてよい。
【0020】
なお、射出装置9の説明においては、紙面左側(金型101側)を前方として前進等の用語を用いることがあり、押出装置11の説明においては、紙面右側(金型101側)を前方として、前進等の用語を用いることがある。
【0021】
成形サイクルにおいて、型締装置7は、移動金型105を固定金型103へ向かって移動させ、型閉じを行う。さらに、型締装置7は、タイバー(符号省略)の伸長量に応じた型締力を金型101に付与して型締めを行う。型締めされた金型101内には成形品と同一形状のキャビティCaが構成される。射出装置9は、そのキャビティCaへ凝固前の金属材料を射出・充填する。キャビティCaに充填された凝固前の金属材料は、金型101に熱を奪われて冷却され、凝固する。これにより、成形品が形成される。その後、型締装置7は、移動金型105を固定金型103から離れる方向へ移動させて型開きを行う。この際又はその後、押出装置11は、移動金型105から成形品を押し出す。
【0022】
制御ユニット5は、例えば、各種の演算を行って制御指令を出力する制御装置13(図4参照)と、画像を表示する表示装置15と、オペレータの入力操作を受け付ける入力装置17とを有している。また、別の観点では、制御ユニット5は、例えば、電源回路及び制御回路等を有する不図示の制御盤と、ユーザインターフェースとしての操作部19とを有している。
【0023】
制御装置13は、例えば、不図示の制御盤及び操作部19に設けられている。制御装置13は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御装置13は、型締装置7、射出装置9及び押出装置11毎の下位の制御装置と、この下位の制御装置間の同期を図るなどの制御を行う上位の制御装置とを含んで構成されてよい。
【0024】
表示装置15及び入力装置17は、例えば、操作部19に設けられている。操作部19は、例えば、型締装置7の固定的部分に設けられている。表示装置15は、例えば、液晶表示ディスプレイ乃至は有機ELディスプレイを含んだタッチパネルによって構成されている。入力装置17は、例えば、機械式のスイッチ及び前記のタッチパネルによって構成されている。
【0025】
(金型及びその周辺の構成)
図2は、金型101及びその周辺の要部構成を示す模式図である。
【0026】
型締装置7は、例えば、固定金型103を保持する固定ダイプレート21と、移動金型105を保持する移動ダイプレート23とを有している。移動ダイプレート23は、固定ダイプレート21に対向しており、固定ダイプレート21に対して近接する方向及び離反する方向に移動可能である。この移動ダイプレート23の移動によって、金型101の型閉じ及び型開きがなされる。
【0027】
射出装置9は、例えば、金型101内に通じるスリーブ25と、スリーブ25内を摺動可能なプランジャ27と、プランジャ27を駆動する射出駆動部29(図1)とを有している。スリーブ25の上面には供給口25aが開口している。
【0028】
型締装置7による金型101の型締めが完了すると、不図示の供給装置によって1ショット分の金属材料が供給口25aからスリーブ25内へ供給される。そして、プランジャ27が図示の位置からスリーブ25内をキャビティCa側へ摺動することにより、スリーブ25内の金属材料が金型101内に押し出される(射出される)。
【0029】
(押出装置)
移動金型105は、内部に押出装置11の一部を収容するための空間105sを有している。なお、空間105sを構成するダイベース105aは、本開示においては、移動金型105の一部であるものとして言及する。空間105sの移動ダイプレート23側の面は、図示のように移動金型105の一部によって構成されていてもよいし、図示とは異なり、移動ダイプレート23の一部によって構成されていてもよい。
【0030】
押出装置11は、例えば、成形品を押すための複数の押出ピン31と、複数の押出ピン31を保持するための押出板33と、押出ピン31の移動に際して押出板33を案内するためのガイドピン35と、押出板33を介して押出ピン31に駆動力を付与するための押出ロッド37及び押出駆動部39とを有している。
【0031】
キャビティCaに射出された金属材料が凝固してダイカスト品が形成されると、型締装置7によって金型101の型開きが行われる。この際、金型101の形状、及びプランジャ27によってダイカスト品を押し出す動作(押出追従)等に起因して、ダイカスト品は移動金型105に残留する。そして、押出ピン31の先端(前端)を移動金型105の内面から突出させることによって、ダイカスト品が移動金型105の内面から離れる。
【0032】
押出ピン31は、例えば、概略、後端にフランジ部を有する軸状部材である。押出ピン31は、移動金型105(より厳密にはダイベース105aよりも前側の部分)に型開閉方向に挿通されており、移動金型105に対してその挿通方向に移動可能である。複数の押出ピン31は、金型101内の形状(キャビティCaだけでなく、ランナ等を含む空間の形状)等に応じて適宜な位置及び本数で設けられてよい。
【0033】
押出板33は、例えば、前側板33aと、前側板33aに対して後方に重ねられて固定されている後側板33bとを有している。押出ピン31は、例えば、前側板33aに挿通されるとともに、後端に設けられたフランジ部が前側板33aと後側板33bとに挟まれることにより、前側板33aに固定されている。なお、押出板33は、後側板33bの前側板33aとは反対側に、後側板33bに重なり、押出ロッド37と固定される不図示の板を更に有する構成であってもよい。押出板33は移動金型105の空間105sに収容されている。複数の押出ピン31は、押出板33に共通して固定されていることから、押出板33の移動に伴って共に移動金型105に対して移動する。
【0034】
ガイドピン35は、例えば、その配置位置及び具体的な寸法を除いて、概略、押出ピン31と同様の構成である。すなわち、ガイドピン35の概略形状は、後端にフランジ部を有する軸状である。ガイドピン35は、移動金型105(ダイベース105aよりも前側の部分)に型開閉方向に挿通されており、移動金型105に対してその挿通方向に移動可能である。また、ガイドピン35は、例えば、押出ピン31と同様にして、後端のフランジ部が押出板33に固定されている。複数のガイドピン35は、例えば、押出ピン31とは異なり、金型101の内部空間の外側に位置している。より詳細には、例えば、複数のガイドピン35は、移動金型105の4隅に位置している。また、ガイドピン35は、例えば、押出ピン31よりも径が大きくされている。押出板33に固定されたガイドピン35(及び押出ピン31)が移動金型105に対して型開閉方向に摺動可能に挿通されていることから、押出板33は、型開閉方向の移動のみが許容されている。
【0035】
押出ロッド37は、移動ダイプレート23に型開閉方向に挿通されており、移動ダイプレート23に対して型開閉方向に移動可能である。押出ロッド37の先端(紙面右側の端部)は、押出板33に固定されている。従って、押出ロッド37に対して軸方向の駆動力を付与することによって、押出板33を前後方向に移動させることができる。複数の押出ロッド37は、押出板33の形状及び大きさ等に応じて適宜な位置及び本数で設けられてよい。
【0036】
押出駆動部39は、例えば、電動式のものであり、回転式の電動機41と、電動機41の回転を伝達する伝達機構43と、伝達機構43から伝達された回転を直線運動に変換する変換機構45とを有している。
【0037】
電動機41は、特に図示しないが、界磁及び電機子の一方を構成するステータと、界磁及び電機子の他方を構成し、ステータに対して回転するロータとを有している。電動機41は、適宜な形式のものとされてよく、例えば、直流電動機であってもよいし、交流電動機であってもよいし、同期電動機であってもよいし、誘導電動機であってもよい。電動機41は、例えば、ステータを含むモータ本体が移動ダイプレート23に対して固定的に設けられている。電動機41の配置位置及び向きは適宜に設定されてよい。
【0038】
伝達機構43は、例えば、プーリベルト機構によって構成されており、電動機41の出力軸に固定されたプーリ47と、プーリ47に掛けられたベルト49と、ベルト49が掛けられたプーリ51とを有している。電動機41の回転は、例えば、伝達機構43によって電動機41の軸心から離れた位置に伝達される。この際、伝達機構43は、電動機41の回転を変速してもよいし、変速しなくてもよい。
【0039】
変換機構45は、例えば、ねじ機構により構成されている。ねじ機構は、ボールねじ機構であってもよいし、すべりねじ機構であってもよい。変換機構45は、例えば、移動ダイプレート23に対して軸回りに回転可能かつ軸方向に移動不可能に支持されたねじ軸53と、ねじ軸53に螺合され、軸回りの回転が規制されたナット55とを有している。ねじ軸53にはプーリ51が固定されている。従って、電動機41の回転が伝達機構43を介してねじ軸53に伝達されると、ナット55は軸方向に移動する。
【0040】
ナット55と押出ロッド37とは適宜な部材によって互いに固定されている。変換機構45の軸方向は、押出ロッド37の軸方向及び型開閉方向と一致している。従って、ナット55の軸方向の移動によって、押出ロッド37はその軸方向(型開閉方向)に駆動され、ひいては、押出ロッド37に固定されている押出板33が型開閉方向に駆動される。
【0041】
図3は、図2の一部拡大図である。
【0042】
押出ピン31、ガイドピン35及び押出板33の後退限は、例えば、押出板33が空間105sの移動ダイプレート23側の面(適宜なストッパ部材が設けられていてもよい)に当接することによって規定される。
【0043】
押出板33が後退限に位置しているとき、押出ピン31の先端面は、移動金型105の内面(内部空間を構成する表面)から距離d1で退避しており、ガイドピン35の先端面は、金型101の合わせ面(固定金型103及び移動金型105の互いに当接する表面)から距離d1で退避している。距離d1は、複数の押出ピン31及び複数のガイドピン35において基本的に共通の長さである。
【0044】
ここで、通常の押出装置においては、図3とは異なり、押出板33が後退限に位置しているとき、押出ピン31の先端面は、移動金型105の内面に一致し、ガイドピン35の先端面は、金型101の合わせ面に一致する。そして、型閉じ中(型締中)においては、ガイドピン35の先端が固定金型103の先端に当接することから、押出板33の前進は規制され、ひいては、押出ピン31は金型101内へ移動することはできない。
【0045】
一方、本実施形態の押出装置11においては、型締中においても、距離d1で押出板33、押出ピン31及びガイドピン35を前進させることができる。これにより、押出ピン31によって、金型101内に射出された金属材料に対して局部加圧を行うことができる。また、押出ピン31の先端面が移動金型105の内面に一致するまで押出ピン31が前進することによって、成形品に意図しない凸部又は凹部が形成されるおそれが低減される。
【0046】
押出装置11は、押出ピン31の位置を検出可能な位置センサ57と、押出ピン31が金属材料に付与した力を検出可能な力センサ59とを有している。なお、力、圧力及びトルクは、基本的には互いに線形の関係にあるから、本開示においては、これらを区別しないことがある。例えば、力センサ59は、圧力センサの一種と捉えられても構わない。
【0047】
位置センサ57は、例えば、不図示のスケール部とともに磁気式又は光学式のリニアエンコーダを構成している。位置センサ57及びスケール部の一方は、移動金型105に対して固定的に設けられ、他方は、押出ピン31に対して固定的に設けられている。そして、位置センサ57及び/又は制御装置13は、スケール部と位置センサ57との相対的な移動量に応じた数で生成されるパルスを計数して押出ピン31の位置を特定可能であり、また、単位時間当たりのパルスを計数して押出ピン31の速度を特定可能である。
【0048】
なお、図示の例では、位置センサ57は、ダイベース105aに設けられており、押出板33に設けられた不図示のスケール部に対向している。ただし、位置センサ57及びスケール部の一方は、移動金型105に対して固定的であればよいから、例えば、移動ダイプレート23に設けられていてもよい。同様に、位置センサ57及びスケール部の他方は、押出ピン31に固定的であればよいから、例えば、押出ロッド37、ガイドピン35、押出ピン31、押出ロッド37よりも電動機41側の部材に設けられてもよい。
【0049】
力センサ59は、例えば、押出ピン31のいずれか(又は全部)に設けられたロードセルによって構成されている。ロードセルは、例えば、歪ゲージ式のものである。力センサ59は、押出ピン31に対して直列に設けられて押出ピン31が受ける力と同じ力を受けてもよいし、押出ピン31の周囲に設けられて押出ピン31の歪から押出ピン31が受けている力を算出するものであってもよい。制御装置13は、力センサ59からの検出信号と、予め入力されている押出ピン31の断面積とに基づいて、押出ピン31から金属材料に付与されている圧力を特定可能である。なお、複数の押出ピン31に力センサ59が設けられている場合においては、例えば、複数の力センサ59の検出値の平均値を用いてよい。
【0050】
なお、図示の例では、力センサ59は、押出ピン31に直接的に設けられている。ただし、力センサ59は、押出板33に設けられてもよい。この場合においては、圧力の算出に際して、押出ピン31の本数の情報も利用される。また、力センサ59は、押出ロッド37に設けられてもよい。この場合においては、圧力の算出に際して、押出ピン31の本数及び押出ロッド37の本数の情報も利用される。力センサ59は、更に電動機41側に設けられてもよい。
【0051】
(信号処理系の構成)
図4は、ダイカストマシン1の信号処理系の構成を示すブロック図である。この図は、主として押出装置11の制御に関わる部分を図示している。
【0052】
制御装置13は、例えば、不図示のCPU及びメモリを含むコンピュータを含んで構成されており、CPUがメモリに記憶されているプログラムを実行することによって、種々の動作を実現する種々の機能部が構築される。種々の機能部は、例えば、押出ピン31による局部加圧の条件を設定する条件設定部61、電動機41を制御する駆動制御部63、及び表示装置15を制御する表示制御部65である。
【0053】
条件設定部61は、例えば、局部加圧の種々の条件に対応して種々の設定部を有している。例えば、条件設定部61は、局部加圧の開始タイミングを設定する開始タイミング設定部61a、局部加圧における押出ピン31の前進速度を設定する速度設定部61b、及び局部加圧において押出ピン31が金属材料に付与する圧力を設定する圧力設定部61cを有している。これらの各種の設定部は、例えば、入力装置17に対する入力操作に応じて(厳密には入力装置17に対する入力操作に応じて入力装置17から制御装置13へ出力される信号に応じて)、種々の条件の値等を保持する。
【0054】
局部加圧の開始タイミングは、完全に凝固する前の金属材料を押出ピン31によって加圧できるものであればよい。金属材料の供給時の温度等の個々の事情を排除してダイカストマシン1の動作のみとの関係でいえば、開始タイミングは、最大限広く考えて、例えば、射出開始後(プランジャ27の前進開始後)から型開き前までの間のいずれかのタイミングである。また、この開始タイミングは、例えば、プランジャ27が所定の位置に到達したタイミングとされてもよいし、プランジャ27の速度(射出速度)が所定の速度まで低下したタイミングとされてもよいし、プランジャ27が成形材料に付与する圧力(射出圧力)が所定の圧力まで上昇したタイミングとされてもよいし、これらの各種のタイミング又は所定の動作タイミング(例えば射出開始タイミング)から所定の遅延時間が経過したタイミングとされてもよい。
【0055】
入力装置17には、例えば、開始タイミングの基準となる上記の所定の位置、所定の速度若しくは所定の圧力の値、及び/又は所定の遅延時間の値が入力される。開始タイミング設定部61aは、その入力された値を保持する。
【0056】
押出ピン31の速度は、一定となるように制御されてもよいし、多段変速されるように制御されてもよいし、適宜な速度曲線に沿うように制御されてもよい。入力装置17には、例えば、その一定速度、多段速度又は速度曲線を指定する速度の目標値が入力される。速度設定部61bは、その入力された値を保持する。
【0057】
押出ピン31が金属材料に付与する圧力は、例えば、所定の最終圧力になるように制御されてもよいし、所定の圧力曲線に沿うように制御されてもよい。入力装置17には、例えば、上記の所定の最終圧力、又は所定の圧力曲線を特定するための情報が入力される。圧力曲線を特定するための情報は、例えば、上記の開始タイミング後の複数の時点、及びその複数の時点における目標圧力である。圧力設定部61cは、入力された最終圧力の値、又は複数の時点と複数の目標圧力との組み合わせの値を保持する。
【0058】
なお、局部加圧において、押出ピン31の制御は、位置制御、速度制御及び圧力制御のいずれであってもよいし、これらの制御のうちのいずれか2つ以上の組み合わせであってもよいし、局部加圧中にこれらの制御が切り換えられてもよい。また、例えば、位置制御が基本的に行われつつ、速度及び圧力(電動機41のトルク)が上限値を超えないように制御が行われてもよい。この場合、例えば、速度設定部61bは速度の上限値を保持し、圧力設定部61cは圧力の上限値を保持する。また、例えば、速度制御が基本的に行われつつ、圧力が上限値を超えないように制御が行われてもよい。この場合、例えば、速度設定部61bは目標速度の値を保持し、圧力設定部61cは圧力の上限値を保持する。また、例えば、圧力制御が基本的に行われつつ、速度が上限値を超えないように制御が行われてよい。この場合、例えば、圧力設定部61cは、最終圧力、又は時点及び目標圧力の組み合わせの値を保持し、速度設定部61bは速度の上限値を保持する。
【0059】
駆動制御部63は、条件設定部61によって設定され保持されている値を参照し、その値に基づいて制御指令を生成し、生成した制御指令をドライバ67を介して電動機41に出力する。すなわち、駆動制御部63は、入力装置17に対する入力操作によって指定された条件(開始タイミング、速度及び/又は圧力)を実現するように電動機41の制御を行う。当該制御は、例えば、位置センサ57及び/又は力センサ59の検出値に基づくフィードバック制御である。
【0060】
なお、図示の例では、ドライバ67は、サーボドライバによって構成されている。すなわち、ドライバ67は、電動機41の有する回転検出センサ41sによって検出される位置及び/又は速度が駆動制御部63からの制御指令に追従するようにフィードバック制御を行う。回転検出センサ41sは、例えば、エンコーダ又はレゾルバである。
【0061】
表示制御部65は、例えば、位置センサ57及び力センサ59の検出値に基づいて、押出ピン31の位置、速度及び圧力等を示す画像データを生成し、その画像データに基づく画像を表示装置15に表示させるように映像信号を表示装置15に出力する。なお、後述する動作から理解されるように、位置センサ57及び力センサ59の検出値は、表示制御部65に加えて、又は代えて、条件設定部61に入力されてもよい。
【0062】
上記のように局部加圧の開始タイミングは、プランジャ27の位置、射出速度又は射出圧力を基準として決定されてよい。これらは、公知の種々のダイカストマシンと同様に測定されてよい。図4では、プランジャ27の位置を検出する位置センサ91、及びプランジャ27が金属材料に付与する圧力を検出する圧力センサ93を例示している。
【0063】
位置センサ91は、例えば、プランジャ27又は射出駆動部29に設けられたリニアエンコーダによって構成されている。位置センサ91及び/又は制御装置13は、位置センサ91からのパルスを計数してプランジャ27の位置を特定可能であり、また、単位時間当たりのパルスを計数して射出速度を特定可能である。なお、射出駆動部29が電動式である場合においては、電動機の回転検出センサ(例えばエンコーダ又はレゾルバ)が位置センサ91として用いられてもよい。
【0064】
圧力センサ93は、例えば、射出駆動部29が射出シリンダを含んで構成されている場合において、射出シリンダの油圧を計測する圧力センサである。制御装置13は、圧力センサ93の検出値、及びプランジャ27の先端面の面積に基づいて射出圧力を特定可能である。なお、圧力センサ93は、金型101に設けられ、金属材料の圧力を直接に検出するものであってもよい。射出駆動部29が電動式である場合においては、電動機に供給される電力を検出する検出器と、電力から算出される負荷から射出圧力を算出する演算部とが圧力センサ93として用いられてもよい。射出駆動部29からプランジャ27までのいずれかの位置に設けられたロードセルと、ロードセルの検出値から射出圧力を算出する演算部とが圧力センサ93として用いられてもよい。
【0065】
図5は、駆動制御部63及び電動機41を含む制御系のブロック図の一例を示す図である。
【0066】
図示の制御系は、押出ピン31が金属材料に付与する力(圧力)をフィードバック制御するための力制御ループ71と、押出ピン31の位置をフィードバック制御するための位置制御ループ73とを有している。力制御ループ71及び位置制御ループ73は、マイナーループとして速度制御ループ75を含み、かつ共用している。速度制御ループ75の手前には、スイッチ77が設けられており、力制御と位置制御とを切換可能となっている。
【0067】
力制御ループ71は、力指令Fと計測された力Fとの偏差FeにゲインGpvを乗じて速度指令ωを生成する力制御部79を有している。力制御部79が生成した速度指令ωは、スイッチ77を介して速度制御ループ75に入力される。
【0068】
位置制御ループ73は、位置指令θと計測された位置θとの偏差θeにゲインGpを乗じて速度指令ωを生成する位置制御部81を有している。位置制御部81が生成した速度指令ωは、スイッチ77を介して速度制御ループ75に入力される。
【0069】
速度制御ループ75は、速度指令ωと計測された速度ωとの偏差ωeにゲインGsを乗じてトルク指令Tr(電流指令)を生成する速度制御部83を有している。速度制御部83が生成したトルク指令Trは、例えば、不図示の電流ループを介して電動機41に入力される。
【0070】
電動機41は、トルク指令Tr及びイナーシャJm等に応じた加速度αで回転する。加速度αの積分値である速度ωは速度制御部83にフィードバックされる。なお、sはラプラス演算子である。速度ωの積分値である位置θは位置制御部81にフィードバックされる。位置θ等に応じて生じる力Fは力制御部79にフィードバックされる。なお、Kは位置・力換算係数である。
【0071】
この例では、例えば、局部加圧は、力制御ループ71が利用されて実現される。また、局部加圧以外の動作、例えば、押出ピン31の後退は、位置制御ループ73が利用されて実現される。成形品の取り出しのための押出ピン31の前進は、力制御ループ71が利用されてもよいし、位置制御ループ73が利用されてもよい。
【0072】
図5は、あくまで一例であり、適宜に変形されてよい。例えば、力制御ループ71を利用して局部加圧をするときに速度ωが所定の速度を超えないように、ωを所定の値以下に制限する機能を追加してもよい。また、例えば、位置制御ループ73を利用して局部加圧を行うようにし、この局部加圧において力Fが所定の力を超えないようにTrを所定の値以下に制限する機能を追加してもよい。
【0073】
(表示画像の例)
図6は、表示装置15の画面に表示される画像111の一例を示す概略図である。
【0074】
画像111において、横軸tは、時間軸である。縦軸は、種々の計測値の大きさを示している。そして、種々の線L0〜L6は、種々の計測値の経時変化を示している。
【0075】
具体的には、線L0は、位置センサ91の検出値に基づく射出速度を示している。線L1は、位置センサ91の検出値に基づくプランジャ27の位置(移動量)を示している。線L3は、圧力センサ93の検出値に基づく射出圧力を示している。線L4は、力センサ59の検出値に基づく押出ピン31の加圧力(押出ピン31が成形材料に付与する圧力)を示している。線L5は、位置センサ57の検出値に基づく押出ピン31の位置(移動量)を示している。線L6は、位置センサ57の検出値に基づく押出ピン31の速度を示している。
【0076】
画像111においては、特に図示しないが、例えば、縦軸から水平方向に延びて線L0〜L6の描画領域を横断する複数の目盛線と、この複数の目盛線のいずれか又は全てに付された数値とが描かれ、オペレータは、任意の時点における計測値を読取可能となっている。また、特に図示しないが、画像111においては、例えば、横軸(時間軸)から垂直方向に延びて線L0〜L6の描画領域を縦断する複数の目盛線が描かれ、線L0〜L6間の時間的な対応関係を把握することが容易になっている。なお、この複数の目盛線のいずれか又は全てには、例えば、所定時期からの経過時間が付されている。
【0077】
この図では、射出速度(L0)として、固液共存状態の金属材料を射出する場合のものが例示されている。具体的には、射出速度は、固液共存状態の金属材料がプランジャ27によってスリーブ25をある程度移動する間は比較的高速とされ、その後、低速とされている。なお、このような射出に代えて、液状の金属材料が低速射出及び高速射出によって射出されてもよいことはもちろんである。充填がある程度完了すると、射出速度は低下し、射出圧力(L3)が上昇する。射出圧力は、概ね一定の値に収束していく。
【0078】
この図の例では、局部加圧の開始(押出ピン31の前進開始)のタイミングは、プランジャ27が停止(時点t1)してから所定の遅延時間T1が経過したとき(時点t2)とされている。遅延時間T1は、例えば、入力装置17に対する操作によって設定されている。
【0079】
時点t2から押出ピン31の速度(線L6)は上昇する。例えば、概して言えば、押出ピン31の速度は概ね一定の加速度で上昇していく。その後、この速度は、速度設定部61bが保持している値に収束してもよいし、電動機41の性能及び負荷によって定まる値に収束してもよいし、そのような収束が生じる前に金属材料から受ける力によって減速してもよい。最終的には、押出ピン31が金属材料から受ける力によって、及び/又はガイドピン35が固定金型103に当接することによって、押出ピン31は減速され、停止する(時点t4)。押出ピン31の速度変化の一部又は全部は、電動機41の速度制御によって実現されてもよいし、電動機41の位置制御又は圧力制御の結果として生じてもよい。
【0080】
また、時点t2から押出ピン31の移動量(線L5)は上昇する。その上昇する曲線は、上記の速度を反映したものとなる。
【0081】
押出ピン31の加圧力(線L4)は、図示の例では、時点t2では上昇を開始せず、又は上昇の変化率が小さく、時点t2から遅れた時点t3において、上昇を開始し、又は上昇の変化率が大きくなる。そして、加圧力は、一定の値に収束していく。この収束は、例えば、圧力設定部61cが保持している目標値に検出圧力を近づけようとする圧力制御によって実現される。また、例えば、電動機41の位置制御によって押出ピン31を前進限よりも前方に移動させようとすることによって、圧力設定部61cが保持している加圧力の上限値に加圧力が到達することによって実現されてもよい。
【0082】
(有効ストローク)
上記のように、加圧力(線L4)の上昇又は当該上昇の変化率の増大は、押出ピン31の前進開始(時点t2)に遅れて開始される(時点t3)。また、その前後のタイミングにおいては、押出ピン31の速度(線L6)に振動が生じている。
【0083】
このような現象は、例えば、金属材料の凝固状態の影響によって生じる。具体的には、押出ピン31の前進開始直後においては、金属材料の凝固があまり進んでいないことから、押出ピン31は大きな抵抗を受けずにスムーズに前進することができ、ひいては、時間に対して線形に前進する。一方、金属材料の凝固が進むと、押出ピン31は比較的大きな抵抗を受けることとなり、時間に対して非線形で前進する。
【0084】
また、押出ピン31の位置を検出する位置センサ57は、厳密には、押出板33の位置を検出している。従って、例えば、押出ピン31と押出板33との間に遊びが存在したり、押出ピン31が歪んだりすれば、その分だけ、押出ピン31が圧力を受けるタイミングは、位置センサ57が検出する位置及び速度の立ち上がりのタイミングに遅れる。また、図3とは異なり、例えば、位置センサ57が押出ロッド37の位置を検出するものであれば、押出ロッド37と押出板33との間の遊び等の分だけ、押出ピン31が圧力を受けるタイミングは、位置センサ57が検出する位置及び速度の立ち上がりのタイミングに遅れる。押出ロッド37よりも更に後方に位置センサ57を設けたり、電動機41の回転検出センサ41sを位置センサ57として用いたりした場合は、更に遊び等が増加する。このような事情も、時点t2と時点t3とのずれに影響している。
【0085】
ここで、押出ピン31の前進が非線形になってから押出ピン31が停止するまでの移動量(時点t3からt4までの移動量)を有効ストロークStk1というものとする。有効ストロークStk1は、押出ピン31の加圧力が所定の閾値を超えてからの押出ピン31の移動量であると捉えられてもよい。所定の閾値は、図示の例では、概ね0とされている。ただし、所定の閾値は、0よりも大きくてもよい。
【0086】
画像111は、押出ピン31の位置、速度及び加圧力(線L4〜L6)を共通の時間軸に沿って表示していることから、オペレータは、画像111を見て、有効ストロークStk1を特定することができる。なお、オペレータは、押出ピン31の位置及び加圧力(線L5及びL4)のみから有効ストロークStk1を特定することも可能であるし、押出ピン31の位置及び速度(線L5及びL6)のみから有効ストロークStk1を特定することも可能である。
【0087】
また、制御装置13は、押出ピン31の速度及び加圧力の少なくとも一方から有効ストロークStk1の開始位置を判定することによって、有効ストロークを特定してよい。そして、制御装置13は、有効ストロークStk1を数値で表示する画像113を画像111内に含めてもよい。
【0088】
ここで、例えば、局部加圧によってひけ巣を減少させるためには、ひけ巣の発生に追従しながら押出ピン31が前進することが重要になる。そのような追従が好適になされた場合、発生した(その一部又は全部は最終的には消滅した)ひけ巣の全量と、ひけ巣が発生し始めてから押出ピン31が金属材料を押した体積とは一致する。ひけ巣が発生し始めてから押出ピン31が金属材料を押した体積は、金属材料が凝固して押出ピン31の前進が非線形になったタイミングからの押出ピン31の移動量(すなわち有効ストローク)と強い相関がある。一方、ひけ巣の量は、金型形状から予測することが可能である。
【0089】
従って、例えば、予め金型形状からひけ巣の量を予測し、そのひけ巣の量に対応する有効ストロークStk1の目標値を特定しておくことにより、オペレータ又は制御装置13は、有効ストロークStk1の計測値と目標値とを比較して、局部加圧の条件の良否を判定することができる。例えば、有効ストロークStk1について、計測値が目標値よりも小さければ、ひけ巣が残っている蓋然性が高く、また、計測値が目標値よりも大きければ、過大な局部加圧によってひけ巣以外の不都合が生じている蓋然性が高い。そして、オペレータ又は制御装置13は、局部加圧の条件を変更して、局部加圧が好適になされるようにすることができる。
【0090】
このとき変更される条件は、例えば、遅延時間T1、押出ピン31の速度(目標値又は上限値)、及び/又は加圧力(目標値又は上限値)である。いずれの条件がどのように影響するかは、時点t2、t3及びt4(若しくはこれらに対応する位置)の相対関係及びその要因等に依存する。従って、個々の状況に応じて適宜に条件を変更してよい。
【0091】
例えば、図6の例において、ガイドピン35によって規定される前進限に到達する前に、押出ピン31の加圧力の計測値が目標値又は上限値に到達して時点t4で押出ピン31が停止したとする。この場合、例えば、遅延時間T1を長くすると、凝固がより進んでから押出ピン31が前進を開始することになるから、有効ストロークStk1は短くなる蓋然性が高い。また、例えば、加圧力の目標値又は上限値を大きくすれば、有効ストロークStk1は長くなる蓋然性が高い。
【0092】
また、例えば、時点t2から時点t3までの遅れが溶湯の凝固の遅れによるものであり、かつ加圧力の目標値又は上限値が十分に大きく設定されており、時点t4で押出ピン31がガイドピン35によって規定される前進限に到達しているとする。この場合、例えば、遅延時間T1を長くすれば、溶湯が凝固する前の移動量が減り、有効ストロークStk1は長くなる蓋然性が高い。また、例えば、速度を高くすると溶湯が凝固する前の移動量が増加して、有効ストロークStk1は短くなる蓋然性が高い。
【0093】
また、例えば、時点t2から時点t3までの遅れが位置センサ57によって位置が計測される部材から押出ピン31(別の観点では力センサ59)までの遊びによるものであり、かつ時点t4で押出ピン31がガイドピン35によって規定される前進限に到達しているとする。この場合、例えば、速度を高くすると遊びを解消するまでの時間が短くなり、有効ストロークStk1は長くなる蓋然性が高い。
【0094】
(処理手順)
図7は、制御装置13が実行する加圧調整処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートは、オペレータが実行する手順として捉えられてもよい。この処理は、例えば、成形サイクルが繰り返し行われている場合において、1又は所定回数の成形サイクル毎に実行される。
【0095】
ステップS1では、制御装置13は、位置センサ57及び力センサ59の検出結果に基づいて有効ストロークStk1の計測値を特定する。
【0096】
ステップS2では、制御装置13は、予め設定されている、又は入力された金型情報等から自らが算出した有効ストロークStk1の目標値と、ステップS1で特定した有効ストロークStk1の計測値との誤差を算出する。そして、制御装置13は、その誤差が許容範囲内か否か判定し、許容範囲内でないと判定したときはステップS3に進み、許容範囲内でないと判定したときはステップS3に進む。
【0097】
ステップS3では、制御装置13は、局部加圧の条件を変更する。変更される条件は、例えば、局部加圧の開始タイミング(押出ピン31の前進開始タイミング)、押出ピン31の速度及び押出ピンの加圧力の少なくともいずれか一つである。
【0098】
なお、上述のように、局部加圧の条件は、個々の事情に応じて適宜に変更される。いくつかの条件又は制御を限定すれば、条件変更と結果との因果も簡素になり、制御装置13による条件変更も可能になる。例えば、加圧力の目標値又は上限値が十分に大きく設定され、押出ピン31が必ずガイドピン35によって規定される前進限に到達することを前提条件とする。この場合、例えば、遅延時間T1を常識的な範囲で長くすると、凝固開始後の押出ピン31の移動量が長くなり(凝固開始前の移動量が減り)、ひいては、有効ストロークStk1が長くなる。
【0099】
図8は、制御装置13が実行する有効ストローク特定処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、図7のステップS1において実行される。なお、この図では、便宜上、有効ストロークの特定のための手順だけでなく、局部加圧の手順の一部も示している。
【0100】
ステップS11では、制御装置13は、加圧開始条件が満たされたか否か判定し、満たされたと判定したときはステップS12に進み、満たされていないと判定したときは、待機する(ステップS11を繰り返す。)。加圧開始条件(加圧開始タイミング)は、図4を参照して説明したように、適宜に設定されてよい。
【0101】
ステップS12では、制御装置13は、押出ピン31を前進させるように電動機41の駆動制御を開始する。
【0102】
ステップS13では、制御装置13は、力センサ59の検出値に基づいて押出ピン31の加圧力が所定の閾値を超えたか否か判定し、超えたと判定したときはステップS14に進み、超えていないと判定したときは待機する(ステップS13を繰り返す。)。
【0103】
ステップS14では、制御装置13は、位置センサ57の検出値に基づいて押出ピン31の移動量の計測を開始する。具体的には、例えば、位置センサ57がリニアエンコーダであれば、ステップS13で肯定判定がなされてから位置センサ57から出力されるパルスを計数していく。
【0104】
ステップS15では、制御装置13は、位置センサ57の検出値に基づいて押出ピン31が停止したか否か判定する。例えば、位置センサ57がリニアエンコーダであれば、制御装置13は、位置センサ57から所定時間に亘ってパルスが出力されなかったときに、押出ピン31が停止したと判定する。そして、制御装置13は、停止したと判定したときはステップS16に進み、停止していないと判定したときは待機する(ステップS15を繰り返す。)。
【0105】
ステップS16では、制御装置13は、押出ピン31の移動量の計測を終了する。そして、ステップS14からS16までに計測された押出ピン31の移動量を有効ストロークStk1として、表示装置15における数値表示、またはステップS3の変更に利用する。
【0106】
以上のとおり、本実施形態のダイカストマシン1は、金型101の内部に対して共に進退可能な複数の押出ピン31と、複数の押出ピン31を駆動可能な電動機41と、複数の押出ピン31の位置を検出可能な位置センサ57と、複数の押出ピン31が金型内部の成形材料に付与する圧力を検出可能な力センサ59と、画像を表示可能な表示装置15と、電動機41及び表示装置15を制御する制御装置13と、を有している。制御装置13は、射出開始後かつ型開き前に複数の押出ピン31を金型101の内部側へ前進させる駆動力を生じるように電動機41を制御する駆動制御部63と、位置センサ57が検出した位置と力センサ59が検出した圧力とを共通の時間軸に沿って表示するように表示装置15を制御する表示制御部65と、を有している。
【0107】
従って、既述のように、オペレータは、表示された画像111に基づいて、有効ストロークStk1を特定し、局部加圧の条件の良否判定を行うことができる。その結果、局部加圧の有効活用が容易化される。ここで、押出ピン31は、通常、複数設けられる。従って、局部加圧に専用の加圧ピンを設ける場合に比較して、有効ストロークStk1の監視が特に重要になる。局部加圧を行った体積の誤差は、有効ストロークStk1の誤差に押出ピン31の本数を乗じた大きさになるからである。ただし、本開示における有効ストロークStk1を利用する技術は、専用の加圧ピンを設けた構成に適用されてもよい。
【0108】
本開示の技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0109】
成形機(成形機)は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、樹脂を成形する射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出、縦型締横射出であってもよい。
【0110】
実施形態では、押出ピン31の位置を検出するセンサとして、押出板33の位置を検出するセンサが設けられ、また、押出ピン31に代えて、押出ピン31に固定的な他の部材の位置が検出されてよいことにも言及した。ただし、そのようなセンサが設けられず、電動機41の回転を検出する回転検出センサ41sが位置センサとして利用されてもよい。また、電動機41から押出ロッド37に至る適宜な部材の直線位置又は回転位置を検出するセンサが用いられてもよい。
【0111】
また、本開示において、位置の検出又は表示という場合、位置と線形な関係にある物理量の検出又は表示を含んでよいものとする。例えば、押出ピンの位置(移動量)と、複数の押出ピンが金属材料を押した体積とは線形の関係にある。従って、例えば、複数の押出ピンが金属材料を押した体積(押出ピンの移動量に押出ピンの断面積と本数とを乗じた値)を時間軸に沿って表示することも、押出ピンの位置を時間軸に沿って表示することに含まれる。同様に、圧力が所定の閾値以上となってから複数の押出ピンが金属材料を押した体積の数値表示は、圧力が所定の閾値以上となってからの押出ピンの移動量(有効ストローク)の数値表示に含まれる。
【0112】
実施形態では、押出ピン31が成形材料に付与する力(圧力)を検出するセンサとして、押出ピン31が受ける力を検出する力センサ59(ロードセル)が設けられ、また、押出ピン31に代えて、押出ピン31に固定的(遊びがある場合も含む)な部材が受ける力が検出されてよいことにも言及した。ただし、そのようなセンサが設けられず、電動機41に供給される電力を検出する検出器及び当該検出器の検出した電力から負荷(トルク)を算出する演算部が力センサとして用いられてもよい。電動機41から押出ロッド37に至る適宜な部材が受ける力又はトルクを検出するセンサが用いられてもよい。押出ピン31の先端に金属材料の圧力を検出する圧力センサを設けてもよい。
【0113】
また、圧力の検出又は表示という場合、圧力と線形な関係にある物理量の検出又は表示を含んでよいものとする。例えば、上記の説明とも重複するが、電動機のトルク、当該トルクが直線運動に変換されて各部材に伝達された力、及び押出ピンが成形材料に付与する圧力は線形の関係にある。従って、例えば、そのようなトルク及び力の検出又は表示は、圧力の検出又は表示に含まれる。
【0114】
実施形態では、回転式の電動機41の駆動力を押出ピンに伝達する機構として、プーリベルト機構からなる伝達機構43と、ねじ機構からなる変換機構45とを例示した。ただし、伝達機構は、プーリベルト機構に代えて、歯車機構等の他の機構によって構成されてもよいし、伝達機構が設けられず、電動機41の回転が直接的に変換機構45に伝達されてもよい。また、変換機構は、ねじ機構に代えて、リンク機構又はラックピニオン機構等の他の機構によって構成されてもよい。ねじ機構のねじ及びナットの役割(いずれが押出ピンとともに直線運動するか)は、実施形態とは逆であってもよい。回転式の電動機に代えてリニアモータが用いられ、変換機構が省略されてもよい。
【0115】
実施形態ではフィードバック制御が行われたが、一部又は全部においてオープン制御が行われてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1…ダイカストマシン(成形機)、13…制御装置、15…表示装置、41…電動機、57…位置センサ、59…力センサ、63…駆動制御部、65…表示制御部、101…金型。
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