(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電力供給安定化システム(再生エネルギ発電システム)の全体構成図である。
電力供給安定化システム100は、太陽光または風力発電システム等に使用される。太陽光発電システムの場合、太陽光パネルから供給された直流電力を交流電力に変換し、外部の負荷または商用電源系統に供給する。
図1に示すように、電力供給安定化システム100は、再生可能エネルギ発電システム110(発電装置)と、蓄電・水電解システム120と、電力系統130と、これらを繋ぐ電力線140と、を備える。
なお、再生可能エネルギ発電システム110はウィンドファームやメガソーラ等を指す。
【0011】
[再生可能エネルギ発電システム110]
再生可能エネルギ発電システム110は、再生可能エネルギによって発電する機器から構成されている。再生可能エネルギには、太陽光発電、太陽熱発電、風力発電、地熱発電、バイオマス発電、水力発電、波力発電、潮力発電などが挙げられる。本実施形態は、再生可能エネルギの変動を安定化し、導入拡大に寄与することである。導入ポテンシャルが高く普及が進んでおり、天候変化などによる出力変動を受けやすい太陽光発電と風力発電とを用いる。
太陽光発電を用いる再生可能エネルギ発電システム110は、太陽光パネル111と、太陽光用パワーコンディショナ(PCS_PV)112と、を備える。太陽光パネル111で発電された直流電力は、電力線140によりPCS_PV112を介して交流電力として出力される。風力発電については、ここでは風力発電機113で直接、交流電力を出力する例を示している。なお、太陽光パネル111および太陽光用パワーコンディショナ(PCS_PV)112と、風力発電機113はそれぞれ単独でもよいし、組合わされていてもよい。また発電機単体でもよく、複数台から構成させていてもよい。以降、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力をP_GENと呼ぶものとする。
これら再生可能エネルギを用いた発電電力は、天候の影響を受ける不安定な電源であり、これが大量に導入されると電力系統130が不安定となるため、電力安定化を図るなどの対策が必要である。
【0012】
[蓄電・水電解システム120]
蓄電・水電解システム120は、発電電力の変動を平滑化して電力系統130に逆潮流させる機能と、水素を生成する機能を有する。蓄電・水電解システム120は、前述した再生可能エネルギ発電システム110の発電電力を安定化させる機能に加え、発電電力から水素を生成する機能を有する。安定化させた発電電力は電力系統130に逆潮流させ、生成した水素は水素貯蔵タンク125(後記)に貯蔵されて必要に応じて活用される。
蓄電・水電解システム120は、システムコントローラ121(制御手段)と、電力を蓄え放電可能な蓄電池122と、蓄電池122の直流電力を外部からの指令に応じて交流電力として出力する蓄電池用パワーコンディショナ(PCS_BAT)123と、交流電力を吸収して直流電力に変換して水素を生成する水電解装置124と、生成した水素を貯蔵するための水素貯蔵タンク125(水素貯蔵手段,水素貯蔵設備)と、水電解装置124と水素貯蔵タンク125の間との間で水素を輸送するための水素輸送手段126と、を備える。
【0013】
<システムコントローラ121>
システムコントローラ121は、蓄電・水電解システム120が備える機器の状態監視や制御を行う制御手段である。また、システムコントローラ121は、太陽光用パワーコンディショナ(PCS_PV)112や風力発電機113の制御も担う。
図1の破線矢印に示すように、システムコントローラ121と各機器の間は、相互に指令を送受信するための通信線150(150A,150B,…)で接続される(ここでは、再生可能エネルギ発電システム110においては、一例として太陽光用パワーコンディショナ(PCS_PV)112に接続しており、風力発電機113への接続は省略した)。具体的には、システムコントローラ121と太陽光用パワーコンディショナ(PCS_PV)112は、通信線150Aで接続され、システムコントローラ121と蓄電池用パワーコンディショナ(PCS_BAT)123は、通信線150Bで接続される。また、システムコントローラ121と蓄電池122は、通信線150Cで接続され、システムコントローラ121と水電解装置124は、通信線150Dで接続される。なお、通信線150A〜150Dを総称する場合は、通信線150と呼ぶ。
【0014】
システムコントローラ121は、蓄電・水電解システム120内に設置したセンサの測定情報と、通信線150を介して取得できる蓄電池122等の機器の測定・演算した情報を用いて、予め定められた演算を実行する。また、システムコントローラ121は演算結果に応じて、通信線150を介して各機器に制御指令を送信する。
システムコントローラ121が取得するセンサの測定情報は、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)と、蓄電・水電解システム120が備える蓄電池用パワーコンディショナ(PCS_BAT)123に出入する電力(P_BAT)と、水電解装置124が吸収する電力(P_WE)と、P_GENに存在する電力変動を平滑化した結果の平滑化電力(P_FLT)と、最終的に電力系統130に逆潮流させる電力(P_REV)である。これら電力情報から、各機器の状態や、システムコントローラ121が演算して制御した結果を把握できる。
【0015】
システムコントローラ121は、受信した電池状態やその他の機器の状態を考慮して充放電電力指令をPCS_BAT123に送信する。PCS_BAT123は、受信した充放電電力指令に応じて、蓄電池122を充放電させる。
このように、システムコントローラ121は、前述した電力情報と機器が測定・演算した情報を用いて、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力を平滑化させるための充放電制御と、水素を生成するための制御を実現している。
【0016】
特に、システムコントローラ121は、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)を平滑化フィルタ121Aにより平滑化する演算を行い、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)が演算結果である平滑化電力より高い場合は蓄電池122に充電し、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)が演算結果である平滑化電力以下の場合は蓄電池122から放電するように制御(指令)する。これにより、平滑化電力(P_FLT)を得ることができる。
【0017】
システムコントローラ121は、平滑化電力(P_FLT)が吸収電力(P_WE)より大きい場合は余剰電力として電力系統130に逆潮流させ、平滑化電力(P_FLT)が吸収電力(P_WE)以下の場合は蓄電池122を放電させて水電解装置124に電力を流すように制御(指令)する。
【0018】
システムコントローラ121は、平滑化電力(P_FLT)が吸収電力(P_WE)より大きい場合は吸収電力(P_WE)を増加させ、平滑化電力(P_FLT)が吸収電力(P_WE)以下の場合は吸収電力(P_WE)を減少させるように制御する。
【0019】
<蓄電池122>
蓄電池122は、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)を蓄える。詳細には、蓄電池122に出入する電力(P_BAT)を蓄電池用パワーコンディショナ(PCS_BAT)123で直交変換し、充放電することによって電力P_GENの短周期変動を平準化する役割を有する。
蓄電池122は、1つ以上の単電池から構成されている。蓄電池122は、電気エネルギの蓄積および放出(直流電力の充放電)が可能な単電池を電気的に直列または並列に接続して構成している。蓄電池122の候補としては鉛蓄電池、Li二次電池、レドックスフロー電池、NAS(sodium-sulfur battery)電池が挙げられる。本実施形態ではLi二次電池を使用する場合を例に採る。
蓄電池122には、充電状態(SOC:State of Charge)や劣化状態(SOH:State of Health)などの電池状態を検知するための電池状態検知装置(図示省略)が内蔵されている。電池状態検知装置が検知したSOCやSOHなどの電池状態は、通信線150Cを介してシステムコントローラ121に送信される。なお、SOCは、蓄電池122の残存容量の一例である。
【0020】
<蓄電池用パワーコンディショナ123>
蓄電池用パワーコンディショナ(PCS_BAT)123は、蓄電池122の直流電力を外部からの指令に応じて交流電力として出力する。前記システムコントローラ121は、受信した電池状態やその他の機器の状態を考慮して充放電電力指令をPCS_BAT123に送信する。PCS_BAT123は、受信した充放電電力指令に応じて、蓄電池122を充放電させる。
【0021】
<水電解装置124>
水電解装置124は、水を電気分解して水素を発生させて電力を吸収する。例えば、水電解装置124は、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)を平滑化した平滑化電力(P_FLT)を吸収する。また、水電解装置124は、水電解装置124が吸収する電力(P_WE)によって水を電気分解し、水素を製造する。水電解装置124は、装置内部で交直変換設備を有しており、交流電力を入力することで稼働する。
【0022】
水電解装置124は、再生可能エネルギ発電システム110の交流電力を吸収して水素を生成できる装置に用いた例である。水電解装置124は、この他に直流電力を吸収して水素を生成できる装置を使用することもできる。ただし、この場合は、再生可能エネルギ発電システム110の交流電力を直流電力に変換するための電力変換装置を、再生可能エネルギ発電システム110と水電解装置124との間に設置する。また、水電解装置124は、吸収する電力を随時変更することはできるものの、電力の変更に対する応答性は仕様によって様々である。
本実施形態では、応答性が遅い水電解装置124を用いた場合を例に採る。制御方法については後記する。応答性が遅い水電解装置124に対応した制御方法を確立すれば、応答性が速い水電解装置124についても同じ制御方法を適用できる。なお、ここでの水電解装置124は、吸収電流または電力の増加または減少指令を受信した場合に、所定の傾きに従って、吸収電流または電力が増加または減少するものとする。
【0023】
<水素貯蔵タンク125>
水素貯蔵タンク125は、生成した水素を貯蔵する水素貯蔵設備(水素貯蔵体)である。水素貯蔵タンク125は、水素輸送手段126(例えば、水素配管)以外の取り出し口が具備されており、外部からの水素の受け入れ、もしくは外部への水素供給を可能とする。
【0024】
<水素輸送手段126>
水電解装置124で生成された水素は、水素輸送手段126を介して水素貯蔵タンク125に輸送および貯蔵される。水素輸送手段126は、例えば水素配管である。
【0025】
以下、上述のように構成された電力供給安定化システム100の動作について説明する。
[全体動作]
図2は、システムコントローラ121の全体動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS10でシステムコントローラ121は、電力系統への影響を抑制するため、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)の電力変動を平滑化する演算である平滑化フィルタ121Aを適用して平滑化電力の演算結果を得る。この平滑化電力の演算結果に基づいて、蓄電池122の充放電による平滑化を行うが(P_FLT)、この点は後記する(
図3参照)。
ステップS20では、システムコントローラ121は、水電解装置124が吸収する電力(P_WE)分だけ電力を吸収して水素を生成する制御を行う。
ステップS30では、システムコントローラ121は、P_WEの電力吸収後の余剰電力を電力系統に逆潮流させて本フローにおける処理を終了する。
【0026】
[P_GEN平滑化処理]
図3は、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)の平滑化のための処理を示すフローチャートである。
図3は、
図2のステップS10の詳細フローである。
まず、ステップS101でシステムコントローラ121は、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)に対して平滑化フィルタ121Aを適用することで、平滑化後の目標値となるP_TARを演算する。
ステップS102では、システムコントローラ121は、上記発電電力(P_GEN)と目標値となるP_TARとの差分P_BATを求める。
ステップS103では、システムコントローラ121は、上記差分P_BATの符号を判定する。
【0027】
P_BATが正の場合、ステップS104でシステムコントローラ121は、PCS_BAT123にP_BAT分の蓄電池122の充電指令を送信してステップS106に進む。
P_BATが負の場合は、ステップS105でシステムコントローラ121は、PCS_BAT123にP_BAT分の蓄電池122の放電指令を送信してステップS106に進む。
ステップS106では、PCS_BAT123が受信した指令に応じて蓄電池122を充放電(P_GEN⇒P_FLT)させて本フローにおける処理を終了する。平滑化後の実際の電力をP_FLTとしている。
これにより、P_BATが正の場合は、PCS_BAT123が蓄電池122をP_BAT分充電する動作が行われるため、平滑化後の目標値としたP_TARと一致する電力P_FLTを得ることができる。一方、P_BATが負の場合は、PCS_BAT123が蓄電池122をP_BAT分放電する動作が行われてP_TARと一致する電力P_FLTが得られる。
以上、システムコントローラ121による、P_GENの平滑化のための処理内容について説明した。
【0028】
図4は、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)の平滑化処理を説明する線図である。
図4の横軸に時間、縦軸に電力をとる。
図4の破線は、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)、
図4の実線は、平滑化後の実際の電力(P_FLT)である。
図4に示すように、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)が高くなる方向に変動した場合は蓄電池122への充電指令を蓄電池用パワーコンディショナ(PCS_BAT)123に送信し、P_GENが低くなる方向に変動した場合は蓄電池122への放電指令を蓄電池用パワーコンディショナ(PCS_BAT)123に送信する。これにより、平滑化電力(P_FLT)を得ることができる。このようにすることで、P_GENに存在する電力変動を抑制できるため、電力系統に悪影響を与えることなく、逆潮流させることができるようになる。
【0029】
[水電解装置124での電力吸収処理]
上述した通り、平滑化電力(P_FLT)が得られた後、水電解装置124でP_WE分を吸収する。吸収後の電力は、P_REVである。以下、
図5を用いて、この電力吸収の流れについて述べる。
図5は、水電解装置124での電力吸収処理を示すフローチャートである。
図5は、
図2のステップS20の詳細フローである。
まず、ステップS201でシステムコントローラ121は、平滑化後の実際の電力(P_FLT)と水電解装置124が吸収する電力(P_WE)の差分の電力(P_REV)を求める。
ステップS202では、システムコントローラ121は、上記差分の電力(P_REV)の符号を判定する。
【0030】
P_REVが正の場合、水電解装置124でP_WE分電力吸収しても、余剰電力があることを意味する。そこで、ステップS203でシステムコントローラ121は、水電解装置124にP_WEを更に増加させる指令を送信(発行)して本フローにおける処理を終了する。ここでは応答性が遅い水電解装置124を採用しており、吸収電流または電力は所定の傾きに従って増加していく。
【0031】
一方、P_REVが負の場合、水電解装置124の吸収電力P_WEが過剰であり、平滑化済みの供給電力P_FLTでは不足している状態である。ここでは応答性が遅い水電解装置124を採用しているため、P_FLTに見合った吸収電力となるよう、P_WEを即座に低下させることができない。このままでは、水電解装置124は想定した吸収電力が供給されないため、動作不良を起こす可能性がある。そこで、P_REVが負の場合は、P_REVを蓄電池122からの放電で賄うこととし、ステップS204でシステムコントローラ121は、P_REV分の放電指令をPCS_BAT123に送信する。
ステップS205では、水電解装置124にP_WEを減少させる指令を送信して本フローにおける処理を終了する。
【0032】
図6は、水電解装置124の電力吸収の処理内容をまとめた線図である。
図6の横軸に時間、縦軸に電力をとる。
図6の破線は、水電解装置124が吸収する電力(P_WE)、
図6の実線は、平滑化後の実際の電力(P_FLT)である。なお、システムコントローラ121は、平滑化フィルタ121Aのフィルタ係数を変えることで(P_FLT)の減少の傾きを変化させることができる。
【0033】
図6に示すように、上記P_FLTとP_WEの大小関係に従って、処理が2つに分かれる。すなわち、P_REVが正(P_FLT>P_WE)の場合は、P_REVが余剰電力となる(
図6の網掛部参照)。このため、システムコントローラ121は、更に水素を生成させるべく水電解装置124の吸収電流または電力の増加指令を送信する。
P_REVが負(P_FLT<P_WE)の場合は、P_REVが不足電力のため、これを蓄電池122から賄うための放電指令を送信しながら、水電解装置124の吸収電流または電力の減少指令を送信する(
図6のハッチング部参照)。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る電力供給安定化システム100は、再生可能エネルギを用いて発電する再生可能エネルギ発電システム110と、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)を蓄える蓄電池122と、水を電気分解して水素を発生させて電力を吸収する水電解装置124と、発電電力(P_GEN)を平滑化フィルタ121Aにより平滑化し、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)が平滑化電力(P_FLT)より高い場合は蓄電池122に充電し、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)が平滑化電力(P_FLT)以下の場合または吸収電力(P_WE)が平滑化電力(P_FLT)以上の場合は蓄電池122から放電するように制御するシステムコントローラ121と、を備える。
【0035】
システムコントローラ121は、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)に対して平滑化フィルタ121Aを施して目標電力を設定し、目標電力に合うよう蓄電池122を充放電させることで平滑化電力(P_FLT)を実現する。この平滑化電力(P_FLT)と水電解装置124の現在の吸収電力(P_WE)との差を求め、平滑化電力(P_FLT)の方が大きい場合は水電解装置124の吸収電力(P_WE)を所定の傾きで増加させ、水電解装置124で吸収できない余剰電力を電力系統130へ出力する。水電解装置124の現在の吸収電力(P_WE)の方が大きい場合は、蓄電池122から放電することで水電解装置124の現在の動作を維持させる。
【0036】
このように、発電電力(P_GEN)を平滑化することで水電解装置124を安定して運用することができる。また、水電解装置124の吸収電力の余剰分を蓄電池122で平滑化して出力することができる。再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)に存在する電力変動を抑制できるため、電力系統130に悪影響を与えることなく、逆潮流させることができるようになる。
また、再生可能エネルギ発電システム110で発電させた電力を、蓄電・水電解システム120によって安定化させ、発電電力から水素を生成できる。
【0037】
本実施形態では、システムコントローラ121は、平滑化電力(P_FLT)が吸収電力(P_WE)より大きい場合は吸収電力(P_WE)を増加させ、平滑化電力(P_FLT)が吸収電力(P_WE)以下の場合は吸収電力(P_WE)を減少させるように制御する。
【0038】
このようにすることで、水電解装置124の吸収電力(P_WE)を、平滑化電力(P_FLT)に応じて動的または適応的に変えられる。これにより、低応答の水電解装置124を用いて余剰電力吸収と系統安定化ができる。一般に、応答性の高い水電解装置は設備コストが高い。本実施形態では、低コスト(低応答)の水電解装置124を用いて余剰電力吸収と系統安定化を図ることができる。同様の理由で、水電解装置124の応答性能が異なる場合でも、共通の制御方法をそのまま適用することができ、汎用性のある電力供給安定化システムを実現することができる。
【0039】
以上、水電解装置124の応答性能が異なる場合でも共通に適用できる制御方法を確立するとともに、再生可能エネルギの発電電力を平滑化しながら電力系統130へ逆潮流し、同時に水素を生成することが可能な電力供給安定化システムを実現することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る電力供給安定化システムの構成は、
図1の電力供給安定化システム100と同様である。ただし、電力供給安定化システムが備えるシステムコントローラ121の処理内容が追加されている。
本実施形態のシステムコントローラ121は、蓄電池122の残存容量(放電可能容量)に基づいて、吸収電力(P_WE)の上限値を設定する。
また、システムコントローラ121は、蓄電池122のSOCに基づいて、吸収電力(P_WE)の上限値を設定する。例えば、システムコントローラ121は、蓄電池122の放電可能容量またはSOCが高い場合、吸収電力(P_WE)の上限値を高くし、放電可能容量またはSOCが低い場合、吸収電力(P_WE)の上限値を低くする。以降では、放電可能容量を用いた場合の、本発明の第2の実施形態を説明する。
【0041】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る電力供給安定化システムの蓄電池の必要放電容量を説明する線図である。
図7の横軸に時間、縦軸に電力をとる。
図7の一点鎖線は、水電解装置124が吸収する電力(P_WE)、
図7の実線は、平滑化後の実際の電力(P_FLT)である。
図7に示すように、時刻aまではP_FLTがP_WEよりも大きく、求められるP_REVは、余剰電力として逆潮流される。
P_FLTが急落し、時刻a以降ではP_WEよりも小さくなる。ここで、使用している水電解装置124は応答性が遅い場合、このP_FLTの急落に追従できず、所定の傾きで吸収電流若しくは電力を下げる制御を行うことになる。前記
図5および
図6で説明した通り、時刻a以降では、P_REV分の電力が不足するため、蓄電池122に不足電力分を放電させる。この時に必要な蓄電池122の放電容量が
図7のハッチング部の面積(符号b、c、dの3点を頂点とする三角形の面積)である。このハッチング部の面積分の容量は、何らかの事情でP_FLTが急落した場合に必要となるため、常時、確保しておくことが望ましい。
【0042】
そこで、本実施形態では、制御の簡単化と蓄電池122の容量に余裕を持たせるために、上記面積に替えて、
図7の符号a、b、cの3点を頂点とする三角形の面積分の必要放電容量を常時確保する制御を行う。
具体的には、システムコントローラ121(
図1参照)は、蓄電池122(
図1参照)の放電可能容量を確認し、続いて、システムコントローラ121は、現在、設定しているP_WEの上限値と水電解装置124の性能で定まる電流若しくは電力の傾きを用いて三角形の面積(必要放電容量)を求める。蓄電池122の放電可能容量の現在値と、三角形の面積(必要放電容量)との間で所定以上の乖離がある場合、システムコントローラ121はP_WEの上限値を変更する。例えば、蓄電池122の放電可能容量と比較して前述した三角形の面積(必要放電容量)が大きい場合、P_WEの上限値を小さくすることで三角形の面積(必要放電容量)を小さくする。蓄電池122の放電可能容量と比較して前述した三角形の面積(必要放電容量)が小さい場合は、P_WEの上限値を大きくすることで三角形の面積(必要放電容量)を大きくすることもできる。
【0043】
このように、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、低応答の水電解装置124を用いて余剰電力吸収と系統安定化を図ることができる。
また、本実施形態では、システムコントローラ121は、蓄電池122の放電可能容量に基づいて、吸収電力(P_WE)の上限値を設定することにより、P_FLTが急落してP_WEを下回り、不足電力分が発生して蓄電池122から賄う場合に、確実に放電容量が確保可能な電力供給安定化システムを実現することができる。
【0044】
[変形例]
システムコントローラ121は、蓄電池122の放電可能容量に基づいて、吸収電力(P_WE)の上限値を設定する。例えば、システムコントローラ121は、蓄電池122の放電可能容量が高い場合、吸収電力(P_WE)の上限値を高くし、放電可能容量が低い場合、吸収電力(P_WE)の上限値を低くする。これにより、水電解装置124の動作の維持を維持することができ、水電解装置124の劣化を抑制することができる。
【0045】
ここで、システムコントローラ121は、上述した蓄電池122の充放電指令、吸収電流または電力の増加指令、水電解装置124の吸収電力の減少指令などの発行に際し、所定ヒステリシス(判定閾値を複数設けるなど)を設けてもよい。このようにすれば、発電電力(P_GEN)と平滑化電力(P_FLT)との判定時、また平滑化電力(P_FLT)と吸収電力(P_WE)との判定時などにおいて、頻繁に制御切り替えが発生するハンチング状態を防止することができ、蓄電・水電解システム120の動作の安定化を図ることができる。
【0046】
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態に係る電力供給安定化システムの全体構成図である。
図1と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図8に示すように、電力供給安定化システム200は、再生可能エネルギ発電システム110と、蓄電・水電解システム220と、電力系統130と、これらを繋ぐ電力線140と、を備える。
蓄電・水電解システム220は、システムコントローラ221と、電気を蓄え放電可能な蓄電池122と、蓄電池122の直流電力を外部からの指令に応じて交流電力として出力する蓄電池用パワーコンディショナ(PCS_BAT)123と、交流電力を吸収して直流電力に変換して水素を生成する水電解装置124と、生成した水素を貯蔵するための水素貯蔵タンク125と、外部からの指令に応じて水素を活用した発電を行う水素発電機210と、水素発電機210と水素貯蔵タンク125の間との間で水素を輸送するための水素輸送手段211と、水電解装置124と水素貯蔵タンク125との間で水素を輸送するための水素輸送手段126と、を備える。水素輸送手段211は、例えば水素配管である。
【0047】
システムコントローラ221は、蓄電・水電解システム220が備える機器の状態監視や制御を行う。
図8の破線矢印に示すように、システムコントローラ221と各機器の間は、相互に指令を送受信するための通信線150で接続される。具体的には、システムコントローラ221と太陽光用パワーコンディショナ(PCS_PV)112は、通信線150Aで接続され、システムコントローラ221と蓄電池用パワーコンディショナ(PCS_BAT)123は、通信線150Bで接続される。また、システムコントローラ221と蓄電池122は、通信線150Cで接続され、システムコントローラ221と水電解装置124は、通信線150Dで接続される。さらに、システムコントローラ221と水素発電機210は、通信線150Eで接続される。
【0048】
システムコントローラ221が取得するセンサの測定情報は、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)と、蓄電・水電解システム220が備えるPCS_BAT123に出入する電力(P_BAT)と、水電解装置124が吸収する電力(P_WE)と、水素発電機210による発電電力(P_ENG)と、P_GENに存在する電力変動を平滑化した結果の平滑化電力(P_FLT)と、最終的に電力系統130に逆潮流させる電力(P_REV)である。これら電力情報から、各機器の状態や、システムコントローラ221が演算して制御した結果を把握できる。
システムコントローラ221は、前述した電力情報と機器が測定・演算した情報を用いて、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力を平滑化させるための制御と、水素を生成するための制御を実現している。
【0049】
システムコントローラ221は、再生可能エネルギ発電システム110の発電電力(P_GEN)が平滑化電力(P_FLT)以下の場合、または吸収電力(P_WE)が平滑化電力(P_FLT)以上の場合は水素貯蔵タンク125から供給される水素を用いて水素発電機210を動作させる。
水電解装置124で生成された水素は、水素輸送手段126を介して水素貯蔵タンク125に輸送および貯蔵される。水素輸送手段126は、例えば水素配管である。
水素貯蔵タンク125に貯蔵された水素は、必要に応じて水素輸送手段211を介して水素発電機210に輸送される。水素発電機210は、受け取った水素を用いて交流電力を発電する。
なお、水電解装置124で製造された水素は、配管126を通して水素貯蔵タンク125に貯蔵され、必要に応じて水素発電機210で再び電力(P_ENG)に変換され供給される。
【0050】
水素発電機210は、受け取った水素を用いて交流電力を発電する。
水素発電機210は、エンジン発電機、もしくはタービン発電機を用いることで交流電力を直接供給できる。燃料電池を利用した場合は、装置内部の交直変換設備によって交流変換し供給する。エンジン発電機もしくはタービン発電機の場合、システム上の問題により水素の供給が困難になった時に、別の燃料で発電することが可能である。このため、系統電力線130への電力安定供給の観点では、水素発電機210はエンジン発電機もしくはタービン発電機であることが好ましく、更にバックアップ用の燃料を備えていることが好ましい。バックアップ用の燃料は入手容易性から化石燃料を選択してもよく、環境性の観点からバイオマス燃料としてもよい。
【0051】
以下、上述のように構成された電力供給安定化システム200の動作について説明する。
図9は、水素発電機210の動作処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS301でシステムコントローラ221は、蓄電池122(
図8参照)の残存電力量(放電可能容量)が所定範囲内か否かを判別する。
蓄電池122の残存電力量が所定範囲内の場合(S301:Yes)、ステップS302でシステムコントローラ221は、平滑化電力(P_FLT)が吸収電力(P_WE)よりも小さい場合は蓄電池122から放電するよう制御する。そして、ステップS303でP_WEの上限値を上昇させて本フローにおける処理を終了する。
【0052】
一方、上記ステップS301で蓄電池122の残存電力量が所定範囲外の場合(S301:No)、ステップS304でシステムコントローラ221は、水素貯蔵タンク125の残存水素量が所定量あるか否かを判別する。
水素貯蔵タンク125の残存水素量が所定量ある場合(S304:Yes)、ステップS305でシステムコントローラ221は、P_FLTがP_WEよりも小さい場合は蓄電池122と水素発電機210から放電するよう制御して本フローにおける処理を終了する。なお、
図9のフローチャートには示していないが、蓄電池122の残存電力量が少ない、もしくは、蓄電池122から取り出せる電力が小さいなど、蓄電池122の利用ができない場合は、水素発電機210のみを用いた放電制御を実行すると良い。
水素貯蔵タンク125の残存水素量が所定量ない場合(S304:No)、ステップS306でシステムコントローラ221は、P_WEの上限値を低下させて本フローにおける処理を終了する。
【0053】
このように、本実施形態では、電力供給安定化システム200は、水素貯蔵タンク125(水素貯蔵設備)と、水素輸送手段126と、水素発電機210と、を備え、システムコントローラ221は、平滑化フィルタ121Aを施した後の発電電力(P_FLT)が吸収電力(P_WE)よりも低い場合に水素貯蔵タンク125から水素輸送手段126を介して供給される水素を用いて水素発電機210を動作させる。
これにより、低応答の水電解装置124で生成した水素の活用を図ることができる。
【0054】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【0055】
上記各実施形態は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。