特許第6802707号(P6802707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6802707優れた呈味を有する魚節類エキス及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802707
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】優れた呈味を有する魚節類エキス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/20 20160101AFI20201207BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20201207BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20201207BHJP
【FI】
   A23L17/20
   A23L17/00 A
   A23L27/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-513795(P2016-513795)
(86)(22)【出願日】2015年4月14日
(86)【国際出願番号】JP2015061477
(87)【国際公開番号】WO2015159885
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2018年2月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-84469(P2014-84469)
(32)【優先日】2014年4月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】鷲巣 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】江本 英司
(72)【発明者】
【氏名】平本 忠浩
【審査官】 高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−079614(JP,A)
【文献】 特開平10−262605(JP,A)
【文献】 特開2013−146196(JP,A)
【文献】 特開平02−219560(JP,A)
【文献】 特開平11−123052(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/113563(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
AGRICOLA/BIOSIS/BIOTECHNO/CABA/CAplus/FSTA/SCISEARCH/TOXCENTER/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イノシン酸を150ppm以上、700ppm以下、アンセリンを150ppm以上、1,870ppm以下、かつヒポキサンチンを300ppm以上、3,000ppm未満含有する魚節類エキス。
【請求項2】
魚節類が、カツオ節、宗田節、サバ節、イワシ節、ウルメ節、ムロ節、アゴ節、マグロ節から選択される1種以上である、請求項1に記載の魚節類エキス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の魚節類エキスを含む呈味改善剤。
【請求項4】
魚節類の懸濁液に、ヌクレアーゼ、デアミナーゼ、プロテアーゼの群から選択される1種類以上の酵素(但し、プロテアーゼ単独を除く)を用いて酵素処理を行う工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の魚節類エキスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた呈味を有する魚節類エキス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カツオ節をはじめとする魚節類は、塩、砂糖、醤油、味噌などとともに調味料の原料として用いられており、日本の生活に大変なじみ深い食材である。魚節類の中でも特にカツオ節は、昆布とともに、旨味などを目的に抽出した出汁として非常に多く用いられている。カツオ節にはカビ付けされていない荒節とカビ付けされた枯節とが存在する。カツオ節の出汁であるカツオ節エキスは価格的な制約からカビ付けを行わない原料である荒節を原料としているものが市場の大半を占めている。通常、カツオ節エキスをはじめとした魚節類エキスは出汁や出汁の素もしくは出汁濃縮物として市場に出回っている。荒節を原料にしたカツオ節エキスをはじめとした魚節類エキスは様々なものがすでに製品化され販売されているが、価格競争は続いており、現在においても安価で呈味力価の強い新しいエキスのニーズが存在している。
【0003】
魚節類及びその製造方法としては、以下のようなものが知られている。特開2006-288203号公報には、一番だし及び/二番だし抽出時に、冷却凝縮温度が70℃以上で留出する香気成分を選択的に回収する香気成分含有エキスの製造方法が記載されている。特開平10-57008号公報には、魚節類を含水アルコールの存在下で液化状態または亜臨界もしくは超臨界状態の二酸化炭素で抽出することにより魚節類の香味成分から成る、所望の魚節だしフレーバーが記載されている。特開平3-160971号公報には、魚節製造時の研磨粉と発酵調味料とを加熱反応後、ついで液化状態または亜臨界もしくは超臨界状態の二酸化炭素と接触させて共抽出して得られた香気成分からなる魚節だしフレーバーが記載されている。特開2006-094756号公報には、苦味のない呈味性の向上した酵素分解型調味料を高いエキス化率で得ることが記載されており、食肉または食肉由来の動物性タンパク質含有原料の水分散液を、pH2.0〜6.0、温度30〜70℃にてヒイロタケ産生酵素で分解し、エキス化してなる酵素分解型調味料が記載されている。特開2007-159550号公報には、酢酸水溶液を溶媒として魚節類を抽出した魚節類抽出液からなる魚節類エキスの製造方法が記載されている。特開2003-116484号公報には、魚節を1mm以下の粒径が90%以上に粉砕した後、1時間以上の酵素分解処理を施す工程、熱水中での抽出処理を施す工程のどちらか一方を先に行い、酵素分解工程及び抽出工程の処理時間の合計を10時間以内で行い調味料を得ることが記載されている。特開2000-279124号公報には、粉砕した節をカラムに充填し、水又はアルコール溶液を通液してエキスを回収した後、同じカラムを用いて抽出残渣に対してさらに蛋白分解酵素液を通液してエキスを抽出する方法が記載されている。特開平1-300872号公報には、一番だしを取った後の鰹節残渣に、酵素分解により旨みアミノ酸を生成する食品素材を特定量添加し、特定温度で酵素分解を行って、旨味、苦味、雑味等のバランスのとれた高品質のだしを得ることが記載されている。
【発明の概要】
【0004】
これまでにすでに多くの出汁、出汁の素もしくは出汁濃縮物が開発、販売されているが、出汁、出汁の素もしくは出汁濃縮物の市場においては、日々価格競争が行なわれており、現行の販売品よりも更に風味豊かで安価な出汁の素もしくは出汁濃縮物が求められているのが現状である。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、原料として高価な魚節類を用いることなく、短期間に、これまでになく高力価で呈味に優れた魚節類エキスを提供することを目的とする。
【0005】
本願発明者らは、所定量のイノシン酸及びアンセリンを含有する魚節類エキスとすることにより上記の課題を解決できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、イノシン酸を150ppm以上含有し、かつアンセリンを150ppm以上含有する魚節類エキスを提供する。また、本発明は、魚節類の懸濁液に、ヌクレアーゼ、デアミナーゼ、プロテアーゼの群から選択される1種類以上の酵素(但し、プロテアーゼ単独を除く)を用いて酵素処理を行う工程を含むことを特徴とする、上記の魚節類エキスの製造方法を提供する。
【0006】
本発明により、優れた呈味を有する魚節類エキスを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、イノシン酸を150ppm以上含有し、かつアンセリンを150ppm以上含有する魚節類エキスを提供する。本発明の魚節類エキスにおけるイノシン酸の量は、好ましくは150ppm以上、700ppm以下であり、より好ましくは200ppm以上、500ppm以下である。
本発明の魚節類エキスにおけるアンセリンの量は、好ましくは150ppm以上、3,000ppm未満であり、より好ましくは150ppm以上、2,500ppm未満である。例えば、アンセリンの量は、200ppm以上、3,000ppm未満、好ましくは200ppm以上、2,500ppm未満とすることができる。
【0008】
また、本発明の魚節類エキスは好ましくはさらにヒポキサンチンを含む。ヒポキサンチンは、魚節類エキスの製造中における他の成分の酵素反応によって生成されてもよいし、必要により外部から添加してもよい。本発明の魚節類エキスにおけるヒポキサンチンの量は、好ましくは200ppm以上、3,000ppm未満であり、より好ましくは200ppm以上、2,500ppm未満である。例えば、ヒポキサンチンの量は、300ppm以上、2000ppm未満、好ましくは500ppm以上、1500ppm未満とすることができる。
【0009】
本発明の魚節類エキスは、Brix値3.0〜8.0である場合において上記のイノシン酸及びアンセリンの量を有することが好ましい。好ましくは、本発明の魚節類エキスは、Brix値3.5〜6.5の条件下において、上記のイノシン酸及びアンセリンの量を有する。
同様に、本発明の魚節類エキスは、Brix値3.0〜8.0である場合において上記のヒポキサンチンの量を有することが好ましい。好ましくは、本発明の魚節類エキスは、Brix値3.5〜6.5の条件下において、上記のヒポキサンチンの量を有する。
【0010】
ここでいうBrix値とは、魚節類エキスの実測値から、魚節類エキスと同濃度の溶媒の実測値を引いたもの、もしくは魚節類エキスに塩が入っている場合、魚節類エキスと同濃度の溶媒に魚節類エキスに添加した塩と同濃度の塩を添加した際の実測値を引いたものの事である。尚、実測値は糖度計(屈折計)を用いて測定したときの測定表示値の目盛をいう。糖度計は光の屈折現象を利用する分析機器のひとつであり、光の屈折現象を応用して水溶液中の可溶性固形分を示したものである。
【0011】
本発明においては、魚節類エキスが、かつお節、宗田節、サバ節、イワシ節、ウルメ節、ムロ節、アゴ節、マグロ節から選択させる1種以上であることが好ましい。上記の中でも、かつお節、宗田節、マグロ節が好ましく、かつお節が特に好ましい。
【0012】
本発明の魚節類エキスは、魚節類の懸濁液に、ヌクレアーゼ、デアミナーゼ、プロテアーゼの群から選択される1種類以上の酵素(但し、プロテアーゼ単独を除く)を用いて酵素処理を行う工程を含む方法により製造してもよい。本発明で使用するヌクレアーゼ、デアミナーゼ、プロテアーゼは特に制限されるものではなく、カビ、酵母、細菌等の各種微生物由来のもの、植物由来のもの、動物由来のもののうちから選択して使用することができる。
【0013】
ヌクレアーゼとしてはヌクレアーゼ「アマノ」(天野エンザイム社製)やスミチームNP(新日本化学工業社製)などが挙げられるが、その他のヌクレアーゼであっても問題なく使用することができる。またデアミナーゼとしてはデアミザイム(天野エンザイム社製)やスミチームDEA(新日本化学工業社製)などが挙げられるが、その他のデアミナーゼであっても問題なく使用することができる。またプロテアーゼとしてはプロテアーゼN、プロテアーゼNL、プロテアーゼS、プロレザーFG-F、パパインW-40、ウマミザイム、ペプチダーゼR、プロテアーゼA、プロテアーゼP、プロテアーゼM(以上、天野エンザイム社)、ニュートラーゼ、プロタメックス、アルカラーゼ、フレーバーザイム(以上、ノボザイムズ社)、ブロメライン(以上、日本バイオコン社)、オリエンターゼ22BF、ヌクレイシン、オリエンターゼOP、ブロメライン、オリエンターゼ10NL、オリエンターゼ90、オリエンターゼ20A、オリエンターゼONS(以上、エイチビィアイ社)、デナプシン2P、デナチームAP(以上、ナガセケムテックス社)、スミチームBR、スミチームFL-G、スミチームACP、スミチームLP50D、スミチームAP、スミチームMP、スミチームFP、スミチームLP(以上、新日本化学工業社)などが挙げられるが、その他のプロテアーゼであっても問題なく使用することができる。複数の酵素を使用する場合、酵素添加順序は特に問わず、同時もしくは別々に添加してもよい。
【0014】
酵素処理を行う際のpH、温度、時間、酵素量等は、魚節の種類、量、酵素の種類等に応じて当業者が適宜設定することが可能である。例えば、ヌクレアーゼを使用する場合、酵素処理は、pHは4〜7、温度は40〜70℃、時間は0.5〜40時間、酵素量は0.005〜1.0%(w/v)等の条件を採用することができる。また、デアミナーゼを使用する場合、酵素処理は、pHは4〜8、温度は20〜60℃、時間は1〜40時間、酵素量は0.001〜1.0%(w/v)等の条件を採用することができる。また、プロテアーゼを使用する場合、酵素処理は、pHは4〜8、温度は30〜60℃、時間は1〜40時間、酵素量は0.001〜1.0%(w/v)等の条件を採用することができる。
【0015】
上記の酵素処理後、必要により懸濁液を加熱して酵素を失活させてもよい。このための加熱は、好ましくは85〜140℃の温度にて10〜120分間行うことができる。
【0016】
上記の酵素処理を行った後、必要により、懸濁液にさらに塩を添加しても良い。塩の濃度は、特別な制約はなく必要とする風味成分のバランスにより適宜決定できるが、好ましくは後述の追加溶媒を添加した最終懸濁液中に0〜29%(w/w)になるように添加することが望ましく、より好ましくは0〜20%(w/w)、さらに好ましくは0〜10%(w/w)になるように添加される。本発明における「塩」とは、好ましくは塩化ナトリウムを指すが、塩化ナトリウム以外の成分を含有するものも使用でき、精製塩や、にがり成分を含有する食塩や並塩も、好適に用いる事ができる。
【0017】
上記の酵素処理を行った後、必要により、懸濁液にさらに、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、トリアセチン又はこれらを適宜組み合わせた溶媒を添加することにより、魚節類からのエキスをさらに効率的に溶液中に抽出することが可能となる。溶媒としてはエタノール及び水の混合物が好ましく、例えば50%(w/w)以上、60%(w/w)以上、70%(w/w)以上、80%(w/w)以上、90%(w/w)以上のエタノールを使用することが好ましい。上記の操作において、懸濁液全体に対する追加溶媒(水を除く)の濃度は、特別な制約はなく必要とする風味成分のバランスにより適宜決定できるが、風味の観点からは好ましくは抽出した魚節類エキス中に0〜90%(w/w)になるように溶媒を添加することが望ましく、より好ましくは0〜70%(w/w)になるように添加される。
【0018】
上記の溶媒を添加した後、懸濁液を温度、時間、圧力等を適宜調整した環境下に置くことにより、エキスの抽出を促進することができる。その際の温度、時間、圧力等は特に限定されず、当業者が適宜決定することが可能である。溶媒の温度は、好ましくは4〜80℃、更に好ましくは30〜70℃が挙げられる。時間としては、好ましくは0.5〜24時間、更に好ましくは1時間〜5時間が挙げられる。圧力としては、常圧条件、減圧条件、加圧条件のいずれでも構わないが、好ましくは常圧条件が挙げられる。上記の操作の後、濾過等により固形分を除去することにより、最終の魚節類エキスを得ることができる。
【0019】
また、本発明の方法においては、得られた本発明の魚節類抽出物から香気成分を除去することもできる。
香気成分の除去方法としては特に限定されないが、一般的に使用される香気成分の除去方法を用いることができるが、その中でも好ましくは吸着処理、液液抽出、超臨界抽出、蒸留、膜分離等が挙げられる。さらに好ましくは吸着処理が挙げられる。
吸着処理に用いられる香気吸着剤としては特に限定はされないが、活性炭、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、合成吸着剤、イオン交換樹脂、多孔質ガラス、シクロデキストリン等が挙げられ、好ましくは活性炭や合成吸着剤、更に好ましくは合成吸着剤が挙げられる。
【0020】
液液抽出の方法としては、溶媒抽出物に水と有機溶媒を加え、有機溶媒層部分を除去することにより行なうことができる。有機溶媒としては特に限定されないが、酢酸エチルやヘキサン等を用いることができる。
また、蒸留の方法としては溶媒抽出物を蒸留し、留液を除去することにより行なうことができる。
【0021】
香気除去後の抽出物はさらに膜濃縮、減圧濃縮などの公知の濃縮手段により濃縮してもよく、また凍結乾燥、熱風乾燥など公知の乾燥手段により粉末化してもよい。
魚節類エキスは適当な希釈剤もしくは担体との混合物の形態であってもよい。そのような希釈剤もしくは担体として、例えばアラビアガム、デキストリン、グルコース、シュークロースなどの固体希釈剤もしくは担体、または水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリアセチン、界面活性剤などの液体希釈剤もしくは担体が挙げられる。本発明の呈味改善剤は、例えば、粉末状、顆粒状、液状、乳液状、その他適宜の剤形にしてもよく、また例えば、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリアセチンあるいはこれらの混合物に溶解させて液状の剤形にすることもできる。またデキストリンなどの賦形剤を適宜適量添加して粉末化することもできる。
【0022】
魚節類エキスの飲食品への添加量としては、本来の風味又は呈味を損なわない程度に添加することができ、好ましくは飲食品を基準として0.01〜30%(w/w)、さらに好ましくは0.1〜10%(w/w)の範囲である。
また、本発明の魚節類エキスは、あらゆる飲食品に添加することが可能である。かかる飲食品としては、 出汁、中華スープ、シチュー、カレーなどのスープ類、畜肉類、鶏肉、魚介類などを原料とする加工食品類、調味料類、ふりかけ類、インスタント食品、スナック食品類、缶詰食品類、乳製品類、菓子類、冷菓類等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【実施例】
【0023】
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0024】
[実施例1]
カツオブシアラブシソサイHU-MS(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去したものにエキス中のイノシン酸の濃度が200ppmになるようにイノシン酸を添加し、かつヒポキサンチンの濃度が200ppmになるようにヒポキサンチンを添加し、実施例1を得た。
【0025】
[実施例2]
カンナにて削った本枯節(指宿産)(山吉國澤百馬店製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去したものにエキス中のイノシン酸の濃度が200ppmになるように、更にエキス中のアンセリン濃度が200ppmになるように、更にエキス中のヒポキサンチン濃度が200ppmになるように、イノシン酸、アンセリンおよびヒポキサンチンを添加し、実施例2を得た。
【0026】
[実施例3]
カツオブシアラブシソサイHU-MS 05(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後の懸濁液にヌクレアーゼ「アマノ」(天野エンザイム社製)を0.1g添加し50℃にて20時間撹拌し反応を行った。反応後の反応液を105℃で30分間加熱失活を行った。酵素失活後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、実施例3を得た。
【0027】
[実施例4]
カツオブシアラブシソサイHU-MS(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後の懸濁液にデアミザイム(天野エンザイム社製)を0.1g添加し50℃にて20時間撹拌し反応を行った。反応後の反応液を105℃で30分間加熱失活を行った。酵素失活後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、実施例4を得た。
【0028】
[実施例5]
カツオブシアラブシソサイHU-MS(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後の懸濁液にヌクレアーゼ「アマノ」(天野エンザイム社製)およびデアミザイム(天野エンザイム社製)を各々0.1g添加し50℃にて20時間撹拌し反応を行った。反応後の反応液に精製塩(公益財団法人 塩事業センター製)を15g加え、105℃で30分間加熱失活を行った。酵素失活後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、実施例5を得た。
【0029】
[実施例6]
カツオブシアラブシソサイHU-MS(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後の懸濁液にヌクレアーゼ「アマノ」(天野エンザイム社製)およびプロテアーゼA「アマノ」G(天野エンザイム社製)を各々0.1g添加し50℃にて20時間撹拌し反応を行った。反応後の反応液を105℃で30分間加熱失活を行った。酵素失活後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、実施例6を得た。
【0030】
[実施例7]
カツオブシアラブシソサイHU-MS(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後の懸濁液にデアミザイム(天野エンザイム社製)およびプロテアーゼA「アマノ」G(天野エンザイム社製)を各々0.1g添加し50℃にて20時間撹拌し反応を行った。反応後の反応液を105℃で30分間加熱失活を行った。酵素失活後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、実施例7を得た。
【0031】
[実施例8]
カツオブシアラブシソサイHU-MS(イズミ食品社製)21gに、鰹節エキスB-60(株式会社マルハチ村松製)10gを加えたものに、62gの水を加え90℃,20分殺菌を行う。殺菌後の懸濁液にヌクレアーゼ「アマノ」(天野エンザイム社製)およびデアミザイム(天野エンザイム社製)およびプロテアーゼA「アマノ」G(天野エンザイム社製)を各々0.1g添加し50℃にて20時間撹拌し反応を行った。反応後の反応液に精製塩(公益財団法人 塩事業センター製)を15g加え、105℃で30分間加熱失活を行った。酵素失活後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、実施例8を得た。
【0032】
[実施例9]
サバ節粉末(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後の懸濁液にヌクレアーゼ「アマノ」(天野エンザイム社製)およびデアミザイム(天野エンザイム社製)およびプロテアーゼA「アマノ」G(天野エンザイム社製)を各々0.1g添加し50℃にて20時間撹拌し反応を行った。反応後の反応液を105℃で30分間加熱失活を行った。酵素失活後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、実施例9を得た。
【0033】
[実施例10]
ムロ節粉末(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後の懸濁液にデアミザイム(天野エンザイム社製)を0.1g添加し50℃にて20時間撹拌し反応を行った。反応後の反応液を105℃で30分間加熱失活を行った。酵素失活後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、実施例10を得た。
【0034】
[実施例11]
マグロ節粉末(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後の懸濁液にヌクレアーゼ「アマノ」(天野エンザイム社製)およびデアミザイム(天野エンザイム社製)を各々0.1g添加し50℃にて20時間撹拌し反応を行った。反応後の反応液を105℃で30分間加熱失活を行った。酵素失活後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、実施例11を得た。
【0035】
[実施例12]
宗田節粉末(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後の懸濁液にヌクレアーゼ「アマノ」(天野エンザイム社製)およびデアミザイム(天野エンザイム社製)を各々0.1g添加し50℃にて20時間撹拌し反応を行った。反応後の反応液を105℃で30分間加熱失活を行った。酵素失活後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、実施例12を得た。
【0036】
[比較例1]
カツオブシアラブシソサイHU-MS(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、比較例1を得た。
【0037】
[比較例2]
カンナにて削った本枯節(指宿産)(山吉國澤百馬店製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、比較例2を得た。
【0038】
[比較例3]
カツオブシアラブシソサイHU-MS(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後、プロテアーゼA「アマノ」G(天野エンザイム社製)を0.1g添加し50℃にて20時間撹拌し反応を行った。反応後の反応液を105℃で30分間加熱失活を行った。酵素失活後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、比較例3を得た。
【0039】
[比較例4]
カツオブシアラブシソサイHU-MS(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去したものにエキス中のイノシン酸の濃度が70ppmになるようにイノシン酸を添加し、比較例4を得た。
【0040】
[比較例5]
サバ節粉末(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、比較例5を得た。
【0041】
[比較例6]
ムロ節粉末(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、比較例6を得た。
【0042】
[比較例7]
マグロ節粉末(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、比較例7を得た。
【0043】
[比較例8]
宗田節粉末(イズミ食品社製)31gに62gの水を加え90℃,20分殺菌を行った。殺菌後、冷却を行い、95%エタノールを76.4g添加し、40℃で2時間撹拌抽出後に濾過にて固形分を除去し、比較例8を得た。
【0044】
[官能評価]
官能評価は専門パネル8名で行い、その平均値を算出した。官能評価はすべて以下の様な8段階評価(8〜0)で実施した。
【0045】
[官能評価1]
市販めんつゆ(鰹節屋のだし めんつゆ 濃縮2倍:ヤマキ株式会社製)49.9gにイオン交換水 49.9g加えて混合したものに対して実施例、および比較例のエキスを各々0.2 gを添加して、専門パネラー8人により官能評価をおこなった。結果を下記に示す。
【0046】
<結果1>
(イノシン酸、アンセリン及びヒポキサンチンの濃度は、官能評価用に希釈する前のエキスのものを示す。)
【0047】
[官能評価2]
市販レトルトカレー(海の幸レストラン Curry HOTATE:株式会社マルハニチロ食品製)95.0gに対して実施例、および比較例のエキスを各々5.0 gを添加して、専門パネラー8人により官能評価をおこなった。結果を下記に示す。
【0048】
<結果2>
【0049】
[官能評価3]
市販クリームシチュー(トップバリュ クリームシチュー:イオン株式会社製)96.0gに対して実施例、および比較例のエキスを各々4.0 gを添加して、専門パネラー8人により官能評価をおこなった。結果を下記に示す。
【0050】
<結果3>
【0051】
[官能評価4]
市販ノンカロリーコーラ(神戸居留地 LASコーラゼロ:富永貿易株式会社製)99.9gに対して実施例、および比較例のエキスを各々0.1 gを添加して、市販ノンカロリーコーラの呈味改善効果について専門パネラー8人により官能評価をおこなった。結果を下記に示す。
【0052】
<結果4>
【0053】
[官能評価5]
以下に示す処方の減塩めんつゆを作成し、減塩めんつゆ99.5gに対して実施例、および比較例のエキスを各々0.5gを添加し、減塩めんつゆの呈味改善効果について専門パネラー8人により官能評価をおこなった。処方と結果を下記に示す。
【0054】
<処方5>
【0055】
<結果5>
【0056】
[官能評価6]
市販めんつゆ(鰹節屋のだし めんつゆ 濃縮2倍:ヤマキ株式会社製)49.9gにイオン交換水 49.9g加えて混合したものに対して実施例、および比較例のエキスを各々0.2 gを添加して、専門パネラー8人により官能評価をおこなった。結果を下記に示す。
【0057】
<結果6>
【0058】
[官能評価7]
市販めんつゆ(鰹節屋のだし めんつゆ 濃縮2倍:ヤマキ株式会社製)49.9gにイオン交換水 49.9g加えて混合したものに対して実施例、および比較例のエキスを各々0.2 gを添加して、専門パネラー8人により官能評価をおこなった。結果を下記に示す。
【0059】
<結果7>
【0060】
[官能評価8]
市販めんつゆ(鰹節屋のだし めんつゆ 濃縮2倍:ヤマキ株式会社製)49.9gにイオン交換水 49.9g加えて混合したものに対して実施例、および比較例のエキスを各々0.2 gを添加して、専門パネラー8人により官能評価をおこなった。結果を下記に示す。
【0061】
<結果8>
【0062】
[官能評価9]
市販めんつゆ(鰹節屋のだし めんつゆ 濃縮2倍:ヤマキ株式会社製)49.9gにイオン交換水 49.9g加えて混合したものに対して実施例、および比較例のエキスを各々0.2 gを添加して、専門パネラー8人により官能評価をおこなった。結果を下記に示す。
【0063】
<結果9>