(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
セルロースアセテートは、セルロース誘導体であるセルロースの有機酸エステルの一つであって、その用途は、衣料品繊維、タバコフィルター・チップ、プラスチックス、フィルム、塗料、医薬品、食料、化粧品、建築用途など多岐にわたり、セルロース誘導体の中でも生産量が多く、工業的に重要なものである。
【0003】
特に、セルロースジアセテートと称される、酢化度52%以上59%以下程度のセルロースアセテートは、透明性に優れる;着色が自由である;艶・光沢が素晴らしい;耐衝撃性に優れる;強靱であり金属インサートをしてもクラックが発生しにくい;耐ガソリン性にすぐれ、耐油性が抜群である;帯電性が少なく、塵がつきにくい;感触、フィーリングが良い;切削などの二次加工が容易である;等のさまざまな特徴があり、特に人の肌などに触れる部材の材料として、押出成形などの熱可塑成形及びその後の切削加工、並びに真空・圧空成形等により成形され使用されている。
【0004】
代表的なセルロースアセテートの工業的製法としては無水酢酸を酢化剤、酢酸を希釈剤、硫酸を触媒とするいわゆる酢酸法が挙げられる。酢酸法の基本的工程は、(1)α−セルロース含有率の比較的高いパルプ原料(溶解パルプ)を、離解・解砕後、酢酸を散布混合する前処理工程と、(2)無水酢酸、酢酸および酢化触媒(例えば硫酸)よりなる混酸で、(1)の前処理パルプを反応させる酢化工程と、(3)セルロースアセテートを加水分解して所望の酢化度のセルロースアセテートとする熟成工程と、(4)加水分解反応の終了したセルロースアセテートとを反応溶液から沈澱分離、精製、安定化、乾燥する後処理工程より成る(特許文献1、非特許文献1)。
【0005】
以上のような方法で製造されるセルロースアセテートを素材として用い成形加工して得られるフィルム等の各種の成形体は、若干の各種の異物を含むことが多く、要求される他の諸性質を満足していても著しい商品価値の低下を招いている。
【0006】
それ故、異物を低減させたセルロースアセテートを得る方法が開発されてきた。例えば、セルロース混合脂肪酸エステルを有機溶媒に溶解し、これをろ過後、有機溶媒を気散し乾燥することで輝点異物の少ないセルロース混合脂肪酸エステルを得る方法(特許文献2)、セルロースの水酸基に対して過剰量の酸無水物含むエステル化剤を用いてセルロースのアシル化を行った後、反応混合物の温度を−30〜35℃に制御しながら、反応混合物に水を含む停止剤を混合して酸無水物を加水分解することで、微小異物を低減させる方法(特許文献3)、セルロースエステル溶液とアルコール類を混合した後、貧溶媒を用いてセルロールエステルを沈殿させることでゲル状異物を低減させる方法(特許文献4)があげられる。
【0007】
特許文献2には、輝点異物とは、直交状態(クロスニコル)で配置した2枚の偏光子の間にセルロースエステルフィルムを置き、一方の偏光子の外側から光を当て、他方の偏光子の外側から顕微鏡で観察すると、異物部分で光が漏れ、輝点となって見える異物であることが記載され、特許文献3には、微小異物は、その直径が1μm以上10μm未満で、クロスニコル下の偏光顕微鏡で観察されることが記載され、特許文献4には、「ゲル状異物」とは、二枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光は漏れてこないが、フィルム表面に凹凸として観測されて、透過型の顕微鏡で見たときに不定形である異物のことであると記載されている。
【0008】
近年、より優れた光沢やより高い透明性を生かしたファッション性が追求される等の理由から、ファッションに用いる成形体の材料となるセルロースアセテートにもより高い品質が求められるようになり、異物を十分に低減したセルロースアセテートが求められている。特許文献2〜4に記載される技術は、上記のとおり、クロスニコル状態で、また顕微鏡で確認する必要がある微小な異物である輝点異物またはゲル状異物を低減しようとするものであるが、セルロースアセテートに可塑剤をブレンドして熱可塑成形する際に生じ得る肉眼でも確認できるような異物(以下、ブツと称する場合がある)を十分に低減できるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好ましい実施の形態の一例を具体的に説明する。
本開示のセルロースアセテートは酢化度が52%以上59%以下であり、アセトン不溶解物量が0.04wt%以下であることを特徴とする。
【0021】
[酢化度]
本開示のセルロースアセテートの酢化度は、52%以上59%以下であるところ、酢化度の下限値としては、53%以上であることが好ましく、53.7%以上であることがより好ましく、54%以上であることがさらに好ましい。酢化度が52%未満であると、セルロースアセテートを含有する成形体の寸法安定性や耐湿性、耐熱性などが低くなる。一方、酢化度の上限値としては、57%以下であることが好ましく、56%以下であることがより好ましく、55.5%以下であることがさらに好ましい。酢化度が59%を超えると、セルロースアセテートを含有する成形体の強度に優れるが脆くなり、例えば、衣料用等の繊維材料、メガネやサングラスのフレーム等の成形品に用いる場合、適した伸度等やわらかさを得るために可塑剤を大量に添加するとブリードアウトを生じる可能性が高くなる。
【0022】
ここで、本発明の酢化度とは、セルロース単位重量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
【0023】
なお、上記の測定法に準じて求めた酢化度を下記式でアセチル置換度に換算することができる。これは、最も一般的なセルロースアセテートの置換度の求め方である。下記式によれば、例えば、酢化度52%はアセチル置換度で2.21、酢化度59%はアセチル置換度で2.71となる。
DS=162.14×AV×0.01/(60.052−42.037×AV×0.01)
DS:アセチル置換度
AV:酢化度(%)
【0024】
[アセトン不溶解物量]
本開示のセルロースアセテートは、アセトン不溶解物量が0.04wt%以下であるところ、アセトン不溶解物量の上限値としては、0.03wt%以下であることが好ましく、0.02wt%以下がより好ましく、0.01wt%以下であることがさらに好ましい。アセトン不溶解物量が0.04wt%を超えるとブツが急激に増えるため好ましくない。さらに、アセトン不溶解物量が増えすぎれば、測定時にガラスフィルターが目詰まりして測定不能となる場合がある。アセトン不溶解物量の下限値としては、より小さい方が好ましく、特に限定されるものではないが、例えば、製造コストの観点からは、0.001wt%以上であってもよい。
【0025】
アセトン不溶解物量は下記の方法により求めることができる。アセトンに、3wt%固形分濃度になるようにセルロースアセテートを溶解した溶液を、ガラスフィルターを使用して、30mmHgの減圧条件下、室温(25℃)にて減圧濾過する。ガラスフィルターとしては相互理化学硝子製作所製の1G−4(孔径5〜10μm)を用いることができる。その後、濾過残渣に付着しているドープをアセトンにて洗浄する。濾過残渣をガラスフィルターごと恒量になるまで乾燥する。これらの濾過前後でのガラスフィルター重量を測定し、次式よりアセトン不溶解物量を算出する。
アセトン不溶解物量(wt%)=〔濾過後ガラスフィルター重量(g)−濾過前ガラスフィルター重量(g)〕/セルロースアセテート重量(g)×100
【0026】
[6%粘度]
本開示のセルロースアセテートは、6%粘度が30mPa・s以上200mPa・s以下であることが好ましい。また、6%粘度の下限値は40mPa・s以上であることがより好ましく、50mPa・s以上であることがさらに好ましく、60mPa・s以上であることが最も好ましい。6%粘度が30mPa・s未満であると、成形体を得ようとする場合に、射出成型における流動性が高すぎ金型から洩れ出る可能性が高くなる。一方、6%粘度の上限値は180mPa・s以下であることがより好ましく、160mPa・s以下であることがさらに好ましく、140mPa・s以下であることが最も好ましい。6%粘度が200mPa・sを超えると、成形体を得ようとする場合に、射出成型における流動性が低く成形体の表面平滑性が悪化する可能性がある。
【0027】
6%粘度は、セルロースアセテートの製造における後述の酢化工程およびケン化熟成工程における反応時間、触媒量、反応温度、反応濃度を適宜調整することにより調整することができる。
【0028】
ここで、6%粘度は、セルロースアセテートを95%アセトン水溶液に6wt/vol%となるよう溶解させ、オストワルド粘度計を用いた流化時間により求められるものである。
【0029】
[構成糖比]
本開示のセルロースアセテートは構成糖分析において、グルコース、キシロースおよびマンノースのモル含量の和におけるグルコースのモル含量の割合が97%以上であることが好ましく、97.5%以上であることがより好ましく、98.0%以上であることがさらに好ましく、98.5%以上であることが最も好ましい。グルコース、キシロースおよびマンノースのモル含量の和におけるグルコースのモル含量の割合は97%未満であると、アセトン不溶解物量が多くなり、ブツ量が多くなる傾向があるため望ましくない。
【0030】
構成糖分析におけるグルコース、キシロースおよびマンノースのモル含量の和におけるグルコースのモル含量の割合は以下の方法により求めることができる。
【0031】
セルロースアセテートを硫酸によって加水分解し、炭酸バリウムによって中和し、ろ紙およびイオン交換フィルターによってろ過した後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法のうち、HPLC−CADによって得られたデータからグルコース、キシロースおよびマンノースのモル含量を算出し、グルコース、キシロースおよびマンノースのモル含量の和におけるグルコースのモル含量の割合を求めることができる。
【0032】
[Haze]
本開示のセルロースアセテートはHazeが10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましく、4以下であることが最も好ましい。アセトン不溶解物量が少ない程、Hazeは低くなる。また、Hazeがより低い程、成形品の透明性が高くなる。
【0033】
Hazeは、JIS K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)の方法に従って測定することができる。
【0034】
[ブツ]
本開示におけるブツとは、セルロースアセテートに可塑剤をブレンドして熱可塑成形する際に生じ得る肉眼でも確認できるような異物をいう。ブツは、セルロースアセテートと可塑剤とが十分に相溶せず、ブツ以外の部分と比較して可塑剤の割合が少ないか、可塑剤が含まれないことによって生じ得る。
【0035】
[セルロースアセテートの製造]
セルロースアセテートの製造方法について詳述する。本開示に係るセルロースアセテートの好ましい製造方法としては、原料セルロースに酢酸または1〜10重量%の硫酸を含む酢酸(含硫酢酸)を一段または二段に分けて添加して前処理活性化する活性化工程(i)と、硫酸触媒の存在下で、前処理活性化したセルロースを酢化する酢化工程(ii)と、前記硫酸触媒を部分中和し、硫酸触媒(又は残存硫酸)の存在下で熟成するケン化熟成工程(iii)と、精製及び乾燥処理(iv)と、粉砕工程(v)と、セルロースアセテートに含まれるアセトン不溶解物を低減する工程(vi)とを含む一連の工程を経ることが挙げられる。当該製造方法において、特に精製及び乾燥処理(iv)は、適宜その採否を選択できる、任意工程である。なお、一般的なセルロースアセテートの製造方法については、「木材化学」(上)(右田ら、共立出版(株)1968年発行、第180頁〜第190頁)を参照できる。
【0036】
(原料セルロース)
本開示のセルロースアセテートの原料となるセルロース(パルプ)としては、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)や綿花リンターなどが使用できる。これらのセルロースは単独で又は二種以上組み合わせてもよく、例えば、針葉樹パルプと、綿花リンター又は広葉樹パルプとを併用してもよい。
【0037】
リンターパルプについて述べる。リンターパルプは、セルロース純度が高く、着色成分が少ないことから、成形品の透明度が高くなるため好ましい。
【0038】
次に、木材パルプについて述べる。木材パルプは、原料として安定供給できるため及びリンターに比べコスト的に有利であるため好ましい。木材パルプとしては、例えば、広葉樹前加水分解クラフトパルプ等が挙げられる。また、木材パルプは、広葉樹前加水分解クラフトパルプ等を綿状に解砕した解砕パルプを用いることができる。解砕は、例えば、ディスクリファイナーを用いて行うことができる。
【0039】
また、原料セルロースのαセルロース含量は、90重量%以上であることが好ましく、92重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることがさらに好ましく、97重量%以上であることが最も好ましい。不溶解残渣を少なくし、成形品の透明性を損なわないため、また、得られるセルロースアセテートが、構成糖分析において、グルコース、キシロースおよびマンノースのモル含量の和におけるグルコースのモル含量の割合を97%以上とできるためである。
【0040】
原料セルロースがシート状の形態で供給されるなど、以降の工程で取扱いにくい場合は、原料セルロースを乾式で解砕処理する工程を経ることが好ましい。
【0041】
(活性化工程(i))
原料セルロースに酢酸または1〜10重量%の硫酸を含む酢酸(含硫酢酸)を添加して前処理活性化する活性化工程(i)において、酢酸及び/または含硫酢酸は、原料セルロース100重量部に対して、好ましくは10〜500重量部を添加することができる。また、セルロースに酢酸及び/または含硫酢酸を添加する方法としては、例えば、酢酸もしくは含硫酢酸を一段階で添加する方法、または、酢酸を添加して一定時間経過後、含硫酢酸を添加する方法、含硫酢酸を添加して一定時間経過後、酢酸を添加する方法等の酢酸または含硫酢酸を2段階以上に分割して添加する方法等が挙げられる。添加の具体的手段としては、噴霧してかき混ぜる方法が挙げられる。
【0042】
そして、前処理活性化は、セルロースに酢酸及び/または含硫酢酸を添加した後、17〜40℃下で0.2〜48時間静置する、または17〜40℃下で0.1〜24時間密閉及び攪拌すること等により行うことができる。
【0043】
(酢化工程(ii))
硫酸触媒の存在下で、前処理活性化したセルロースを酢化する酢化工程(ii)において、例えば、酢酸、無水酢酸、および硫酸からなる混合物に、前処理活性化したセルロースを添加すること、または前処理活性化したセルロースに、酢酸と無水酢酸の混合物および硫酸を添加すること等により酢化を開始することができる。
【0044】
またこれらの混合物には、酢酸と無水酢酸とが含まれていれば、特に限定されないが、酢酸と無水酢酸との割合としては、酢酸300〜600重量部に対し、無水酢酸200〜400重量部であることが好ましく、酢酸350〜530重量部に対し、無水酢酸240〜280重量部であることがより好ましい。
【0045】
酢化反応における、セルロース、酢酸と無水酢酸の混合物、および硫酸の割合としては、セルロース100重量部に対して、酢酸と無水酢酸の混合物は500〜1,000重量部であることが好ましく、濃硫酸は5〜15重量部であることが好ましく、7〜13重量部であることがより好ましく、8〜11重量部であることがさらに好ましい。
【0046】
酢化工程(ii)において、セルロースの酢化反応は、20〜55℃下で酢化を開始した時から30分〜36時間、攪拌することにより行うことができる。
【0047】
また、セルロースの酢化反応は、例えば、攪拌条件下、酢化を開始した時から5分〜36時間要して20〜55℃に昇温して行うこと、または、撹拌条件下、外部から反応系の内外には一切の熱は加えず行うことができる。酢化反応初期は固液不均一系での反応となり解重合反応を抑えつつ酢化反応を進ませ未反応物を減らすため可能な限り時間を掛けて昇温するのが良いが、生産性の観点からは、2時間以下、さらに好ましくは1時間以下で昇温を行うことが好ましい。
【0048】
また、酢化反応にかかる時間(以下、酢化時間ともいう。)は、30〜200分であることが望ましい。ここで、酢化時間とは、原料セルロースが反応系内に投入され、無水酢酸と反応を開始した時点から中和剤投入までの時間をいう。
【0049】
(ケン化熟成工程(iii))
前記硫酸触媒を部分中和し、硫酸触媒(又は残存硫酸)の存在下で熟成するケン化熟成工程(iii)において、前記酢化反応により、硫酸は硫酸エステルとしてセルロースに結合しているため、前記酢化反応終了後、熱安定性向上のためこの硫酸エステルをケン化して除去する。ケン化熟成に際して、酢化反応停止のために水、希酢酸、又は酢酸マグネシウム水溶液などの中和剤を添加する。そして、水を添加する場合、セルロースアセテートを含む反応混合物中に存在する無水酢酸と反応して酢酸を生成させ、ケン化熟成工程後のセルロースアセテートを含む反応混合物の水分量が酢酸に対し5〜70mol%になるように添加することができる。5mol%未満であると、ケン化反応が進まず解重合が進み、低粘度のセルロースアセテートとなり、70mol%を超えると、酢化反応終了後のセルロースエステル(セルローストリアセテート)が析出しケン化熟成反応系から出るため、析出したセルロースエステルのケン化反応が進まなくなる。
【0050】
ここで、希酢酸とは、1〜50重量%の酢酸水溶液をいう。また、酢酸マグネシウム水溶液は、5〜30重量%であることが好ましい。
【0051】
なお、セルロースアセテートを含む反応混合物とは、セルロースアセテートを得るまでの各工程におけるセルロースアセテートを含む混合物のいずれも指す。
【0052】
また、セルロースアセテートを含む反応混合物における硫酸イオン濃度が高いと効率よく硫酸エステルを除去することができないため、酢酸マグネシウム等の酢酸のアルカリ土類金属塩の水溶液又は酢酸−水混合溶液を添加して不溶性の硫酸塩を形成させることにより、硫酸イオン濃度を低下させることが好ましい。セルロースアセテート100重量部(セルロース換算)に対し、セルロースアセテートを含む反応混合物の硫酸イオンを1〜6重量部に調整することが好ましい。なお、例えば、セルロースアセテートを含む反応混合物に酢酸マグネシウムの酢酸−水混合溶液を添加することにより、酢化反応の停止とセルロースアセテート100重量部(セルロース換算)に対する硫酸イオンの重量比の低下とを同時に行うこともできる。
【0053】
ケン化熟成の時間(以下、熟成時間ともいう。)は、特に限定されないが、酢化度を52%以上59%以下に調整する場合、例えば、100〜300分間行うことが好ましく、目的の酢化度とするためにはその時間を適宜調整すればよい。ここで、熟成時間は、中和剤の投入開始からケン化反応停止までの時間をいう。
【0054】
また、ケン化熟成は、好ましくは50〜100℃、特に好ましくは70〜90℃の熟成温度で20〜120分間保持することにより行う。ここで、熟成温度とは、熟成時間における反応系内の温度をいう。
【0055】
ケン化熟成工程においては、水と無水酢酸との反応熱を利用することにより、反応系全体を均一でかつ適正な温度に保持することができるため、酢化度が高すぎるものや低すぎるものが生成することが防止される。
【0056】
(精製及び乾燥処理(iv))
精製及び乾燥処理(iv)のうち、精製は、セルロースアセテートを含む混合物と水、希酢酸、又は酢酸マグネシウム水溶液等の沈澱剤とを混合し、生成したセルロースアセテート(沈澱物)を分離して沈殿物を得、水洗により遊離の金属成分や硫酸成分などを除去することにより行うことができる。ここで、セルロースアセテートの沈殿物を得る際に用いる沈澱剤としては、水または希酢酸が好ましい。セルロースアセテートを含む反応混合物中の硫酸塩を溶解し、沈澱物として得られるセルロースアセテート中の硫酸塩を除去しやすいためである。
【0057】
特に、前記熟成反応の後(完全中和の後)、セルロースアセテートの熱安定性を高めるため、水洗に加えてさらに、必要に応じて安定剤として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物、特に水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物を添加してもよい。また、水洗の際に安定剤を用いてもよい。
【0058】
セルロースアセテートを含む反応混合物と沈澱剤を混合する具体的な手段としては、セルロースアセテートを含む反応混合物と沈澱剤とを業務用ミキサーを用いて撹拌する方法、またはセルロースアセテートを含む反応混合物に沈澱剤を添加し、二軸ニーダーを用いて練り込む方法などが挙げられる。例えば、業務用ミキサーを用いて撹拌する方法の場合、セルロースアセテートを含む反応混合物とセルロースアセテートを沈澱させるのに必要量の沈澱剤とを一度に混合し、撹拌する。二軸ニーダーを用いて練り込む方法の場合、沈澱剤を数回に分けてセルロースアセテートを含む反応混合物に添加することができるが、沈澱点を超える直前において、セルロースアセテートを含む反応混合物の0.5〜2倍量の沈澱剤を一度に添加することが好ましい。
【0059】
セルロースアセテート(沈澱物)の分離は、沈殿剤の混合の後、ろ過、遠心分離などにより行うことが好ましい。
【0060】
精製及び乾燥処理(iv)のうち、乾燥は、その方法としては特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、送風や減圧などの条件下乾燥を行うことができる。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥が挙げられる。
【0061】
精製及び乾燥処理(iv)のうち、乾燥は、その方法としては特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、送風や減圧などの条件下乾燥を行うことができる。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥が挙げられる。
【0062】
(粉砕工程(v))
粉砕工程(v)について、セルロースアセテートの沈殿物を粉砕する方法は限定されない。粉砕は、慣用の粉砕機、例えば、サンプルミル、ハンマーミル、ターボミル、アトマイザー、カッターミル、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ジェットミル、ピンミルなどを用いることができる。また、凍結粉砕、常温での乾式粉砕、または湿式粉砕でもよい。中でも、粉砕処理能力に優れることから、ハンマーミルまたはターボミルを用いることが好ましい。
【0063】
(アセトン不溶解物を低減する工程(vi))
本開示のアセトン不溶解物量が0.04wt%以下であるセルロースアセテートは一般的なセルロースアセテートの製造方法で取得することは困難であり、セルロースアセテートからアセトン不溶解物を低減する工程(vi)を経ることにより得ることができる。
【0064】
セルロースアセテートに含まれるアセトン不溶解物量を低減する工程(vi)において採用可能な方法は、アセトン不溶解物量が0.04wt%以下とすることができれば、特に限定されるわけではないが、例えばセルロースアセテートを溶媒に溶解し、ろ過処理を実施した後、ろ液からセルロースアセテートを沈殿物として取得する(沈殿処理)方法等が挙げられる。なお、セルロースアセテートに含まれる低分子量成分を低減する工程(vi)に係るセルロースアセテートは、種々の形態、例えば、粉末状、粒状、繊維状、フレーク状などのいずれであってもよい。
【0065】
溶媒としては、セルロースアセテートを溶解できる限り制限はされないが、アセトン不溶解物をろ過で低減させやすいアセトン、ジクロロメタン、酢酸、またはジメチルホルムアミドが好ましく、アセトン、ジクロロメタンがより好ましく、アセトンがさらに好ましい。
【0066】
ろ過処理に用いるフィルターについてはアセトン不溶解物を低減できるものであれば制限はされず、例えば、ガラスフィルター;濾布[近江織物株式会社製の金巾(仕様#4000)や東洋染色工業株式会社製の起毛ネル(仕様:縦20番手、横10番手 60本、120本打ち込み)など];濾紙;焼結金属[関西金網株式会社製のベキポアなど]等を用いることができる。
【0067】
また、アセトン不溶解物を効率的に除去するため、フィルターの濾過粒度は、1〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましく、5〜20μmがさらに好ましい。前記濾過粒度はASTM E128−61に基づいて測定することができる。
【0068】
沈殿処理は、ろ液にセルロースアセテートの貧溶媒を加えて実施できる。貧溶媒としては水、アルコールが好ましく、水がさらに好ましい。
【0069】
[成形体]
本開示のセルロースアセテートを含有する成形体は、本開示のセルロースアセテートを成形することにより得られる。成形方法としては、射出成形、押出成形、真空成形、異型成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形、ガス注入成形等が挙げられる。
【0070】
当該成形体の形状は特に制限されないが、例えば、ペレット、フィルム、シート、ファイバーなどであってよい。これらは、OA・家電機器分野、電気・電子分野、通信機器分野、サニタリー分野、自動車等の輸送車両分野、家具・建材等の住宅関連分野、雑貨分野等において適した形状である。
【0071】
本開示のセルロースアセテートを含有する成形体は、本開示のセルロースアセテートと可塑剤を混合、乾燥することにより、可塑剤が吸着したセルロースアセテート組成物を用いて成形することにより製造してもよい。具体的には、例えば、可塑剤が吸着したセルロースアセテートを、一軸又は二軸押出機などの押出機で混練してペレットに調製する方法、加熱ロールやバンバリーミキサー等の混練機で溶融混練して調製する方法が挙げられる。また、ペレットに調製した後、例えば、T−ダイを装着した一軸または二軸押出機を用いて、再溶解し、フィルム等を成形してもよい。
【0072】
本開示のセルロースアセテートに可塑剤を混合してセルロースアセテート組成物とする場合、セルロースアセテートと可塑剤との混合は、遊星ミル、ヘンシェルミキサー、振動ミル、ボールミルなどの混合機により行うことができる。短時間で均質な混合分散が可能であるため、ヘンシェルミキサーを用いることが好ましい。また、混合の程度は特に限定されるものではないが、例えば、ヘンシェルミキサーの場合、好ましくは10分〜1時間混合する。
【0073】
また、セルロースアセテートと可塑剤の混合後、乾燥を行うことができる。乾燥方法としては、例えば、50〜105℃下で、1〜48時間静置して乾燥する方法が挙げられる。
【0074】
可塑剤としては、例えば以下のものを挙げることができる。芳香族カルボン酸エステル[フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどのフタル酸ジC1−12アルキルエステル、フタル酸ジメトキシエチルなどのフタル酸C1−6アルコキシC1−12アルキルエステル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸C1−12アルキル・アリール−C1−3アルキルエステル、エチルフタリルエチレングリコレート、ブチルフタリルブチレングリコレートなどのC1−6アルキルフタリルC2−4アルキレングリコレート、トリメリット酸トリメチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシルなどのトリメリット酸トリC1−12アルキルエステル、ピロメリット酸テトラオクチルなどのピロメリット酸テトラC1−12アルキルエステルなど];リン酸エステル[リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニルなど];脂肪酸エステル[アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ブトキシエトキシエチル・ベンジル、アジピン酸ジブトキシエトキシエチルなどのアジピン酸エステル、アゼライン酸ジエチル、アゼライン酸ジブチル、アゼライン酸ジオクチルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチルなどのセバシン酸エステル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチルなど];多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど)の低級脂肪酸エステル[トリアセチン、ジグリセリンテトラアセテートなど];グリコールエステル(ジプロピレングリコールジベンゾエートなど)、クエン酸エステル[クエン酸アセチルトリブチルなど];アミド類[N−ブチルベンゼンスルホンアミドなど];エステルオリゴマー(カプロラクトンオリゴマーなど)などを含有してもよい。これらの可塑剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0075】
これらの可塑剤の中でも、セルロースアセテートと相溶性が良いため、フタル酸ジエチル、リン酸トリフェニルまたはトリアセチンを用いることが好ましい。
【0076】
本開示に係るセルロースアセテート100重量部に対し、これらの可塑剤を40重量部程度まで添加しても、成形体の製造工程通過性の低下が生じにくい。成形体の製造工程通過性の低下の例としては、例えば、セルロースアセテートの成形体製造工程において、可塑剤を添加したセルロースアセテートをホッパーを用いて押出機に送る場合に、ホッパー内でブリッジが生じること等が挙げられる。本開示に係るセルロースアセテート100重量部に対し、可塑剤の添加量は、20〜40重量部が好ましく、25〜38重量部がより好ましく、28〜36重量部がさらに好ましい。可塑剤の添加量が、20重量部未満であると、成形体のブツ(スポット状の斑)が生じやすくなり、40重量部を超えると、成形体の曲げ強さが低くなる。
【0077】
セルロースアセテートと可塑剤の混合時に、成形体の用途・仕様に応じ、慣用の添加剤、例えば、他の安定化剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、耐光安定剤など)、着色剤(染料、顔料など)、帯電防止剤、難燃助剤、滑剤、アンチブロッキング剤、分散剤、流動化剤、ドリッピング防止剤、抗菌剤などを含んでいてもよい。また、他のセルロースエステル(例えば、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどの有機酸エステル、硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロースなどの無機酸エステル)や他の高分子などを併用してもよい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
【0079】
後述する実施例に記載の各物性は以下の方法で評価した。
【0080】
<酢化度>
セルロースアセテートの酢化度は、ASTM−D−817−91(セルロースアセテートなどの試験方法)における酢化度の測定方法により求めた。乾燥したセルロースアセテート1.9gを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシドとの混合溶媒(容量比4:1)150mlに溶解した後、1N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを添加し、25℃で2時間ケン化した。フェノールフタレインを指示薬として添加し、1N−硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の水酸化ナトリウムを滴定した。また、上記と同様の方法でブランク試験を行い、下記式に従って酢化度を算出した。
酢化度(%)=[6.5×(B−A)×F]/W
(式中、Aは試料での1N−硫酸の滴定量(ml)、Bはブランク試験での1N−硫酸の滴定量(ml)、Fは1N−硫酸の濃度ファクター、Wは試料の重量を示す)。
【0081】
<アセトン不溶解物量>
乾燥したセルロースアセテート10.0gを精秤し、25℃のアセトン322.0gに溶解し、30mmHgの減圧条件下、室温(25℃)にてガラスフィルター(孔径5〜10μm:相互理化学硝子製作所製の1G−4)を使用して減圧濾過した。その後、濾過残渣に付着しているドープをアセトン200mLにて洗浄した。濾過残渣をガラスフィルターごと恒量になるまで乾燥した。これらの濾過前後でのガラスフィルター重量を測定し、次式よりアセトン不溶解物量を算出した。
アセトン不溶解物量(wt%)=〔濾過後ガラスフィルター重量(g)−濾過前ガラスフィルター重量(g)〕/セルロースアセテート重量(g)×100
【0082】
<6%粘度>
セルロースアセテートの6%粘度は、下記の方法で測定した。三角フラスコに乾燥試料3.00g、95%アセトン水溶液を39.90g入れ、密栓して約1.5時間攪拌した。その後、回転振盪機で約1時間振盪して完溶させた。得られた6wt/vol%の溶液を所定のオストワルド粘度計の標線まで移し、25±1℃で約15分間整温した。計時標線間の流下時間を測定し、次式(1)により6%粘度を算出した。
6%粘度(mPa・s)=流下時間(s)×粘度計係数 (1)
【0083】
粘度計係数は、粘度計校正用標準液[昭和石油社製、商品名「JS−200」(JIS Z 8809に準拠)]を用いて上記と同様の操作で流下時間を測定し、次式(2)より求めた。
粘度計係数={標準液絶対粘度(mPa・s)×溶液の密度(0.827g/cm
3)}/{標準液の密度(g/cm
3)×標準液の流下秒数(s) (2)
【0084】
<構成糖分析>
セルロースアセテートを硫酸によって加水分解し、炭酸バリウムによって中和し、ろ紙およびイオン交換フィルターによってろ過した後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法のうち、HPLC−CAD(Agilent1200シリーズシステム)から得られたデータを用いて、グルコース、キシロースおよびマンノースのモル含量を算出し、グルコース、キシロースおよびマンノースのモル含量の和におけるグルコースのモル含量の割合を求めた。
【0085】
HPLC測定条件は、以下のとおりである。
カラム:Asahipak NH2P−50 4E (4.6mmI.D.×250mm)
ガードカラム:Asahipak NH2P−50G 4A(4.6mmI.D.×10mm)
カラム温度:20℃
移動相:水/アセトニトリル=25/75(v/v)
移動相流速:1.0mL/min
【0086】
検出器:CoronaPlus CAD検出器(ESA Biosciences製)
窒素ガス圧力:35psi
ネブライザー:30℃
【0087】
<Haze分析>
セルロースアセテート溶液の透過光におけるHaze値を測定した。装置は日本電色工業製、商品名「Haze Meter NDH2000」を用い、測定条件は測定径30mm、C光源を選択した。乾燥させたセルロースアセテート12gに、メタノール8.8g、及び塩化メチレン79.2gを加えて溶解させ、脱泡しセルロースアセテート溶液を調製した。このセルロースアセテート溶液を45mm(L)×45mm(W)×10mm(D)ガラスセルに入れHaze値を測定した。
【0088】
<ブツ評価>
セルロースアセテートフィルムの表面に光を当てて観察される異物(ブツ:スポット状の斑)の個数を70cm
2(縦横7cm×10cm)当たりの個数を目視にて評価した。
【0089】
<比較例1>
αセルロース含量97.8wt%の針葉樹サルファイトパルプをディスクリファイナーで綿状に解砕し、解砕パルプを得た。100重量部の解砕パルプ(含水率8%)に26.8重量部の酢酸を噴霧し、良くかき混ぜた後、前処理として60時間静置し活性化した(活性化工程)。
【0090】
活性化したパルプを、323重量部の酢酸、245重量部の無水酢酸、13.1重量部の硫酸からなる混合物に加えた。当該混合物は予め5℃に冷却しておいた。40分を要して5℃から40℃の最高温度に調整し、パルプを混合物に加えた時点から90分間酢化した(酢化工程)。中和剤(24%酢酸マグネシウム水溶液)を、硫酸量(熟成硫酸量)が2.5重量部に調整されるように3分間かけて添加した。さらに、反応浴を75℃に昇温した後、水を添加し、反応浴水分(熟成水分)濃度を52mol%とした。なお、熟成水分濃度は、反応浴水分の酢酸に対する割合をモル比で表わしたものに100を乗じてmol%で示した。その後、85℃で100分間熟成を行ない、酢酸マグネシウムで硫酸を中和することで熟成を停止し、セルロースアセテートを含む反応混合物を得た(熟成工程)。
【0091】
得られたセルロースアセテートを含む反応混合物に希酢酸(10wt%)を二軸ニーダーを用いて練り込み、練込沈澱方式でセルロースアセテートを沈澱させた。このとき、セルロースアセテートを含む反応混合物に対し、3回に分け希酢酸を練り込んだ。セルロースアセテートを含む反応混合物に対し1回目に0.4倍量(重量比)の希酢酸(10wt%)を練り込み反応混合物が均一になった後、2回目に0.5倍量(重量比)、3回目に0.6倍量(重量比)、合計で1.5倍量(重量比)を添加した。希酢酸(10wt%)を3回目に0.6倍量(重量比)添加した際に沈澱が生じた。
【0092】
沈澱したセルロースアセテートを水洗し、希水酸化カルシウム水溶液(20ppm)に浸漬した後、濾別し乾燥し、マキノ式粉砕機(槇野産業株式会社製、型番:DD−2−3.7)を用いて粉砕した。粉砕条件は、回転速度2450rpm、スクリーン径φ5.0mmとした。
【0093】
得られたセルロースアセテートについて、酢化度、アセトン不溶解物量、6%粘度、構成糖比を測定した。結果は、表1に示した。
【0094】
得られたセルロースアセテート100重量部とDEP(フタル酸ジエチル)35重量部をヘンシェルミキサーによって混合し、80℃で12時間乾燥した後、二軸押出機(シリンダー温度:200℃、ダイス温度:220℃)に供給し、押し出してペレット化した。このペレットを用いて、150mm幅のT−ダイを装着した1軸押出機I(型番:GT−25A、(株)プラスチック光学研究所製)により、230℃で再溶解し200μmのフィルムを成形した。得られたフィルムのブツ異物数の結果を、表1に示した。
【0095】
<比較例2>
比較例1で得られたセルロースアセテート20重量部にアセトン80重量部を加えた後、3時間振盪して完全に溶解した。得られたセルロースアセテート溶液に蒸留水110重量部を加え、析出したセルロースアセテートを濾紙(有限会社 桐山製作所製、桐山ろ紙 No.5C 40φ)で濾過した。セルロースアセテートに蒸留水150重量部を加え、遠心脱水(回転数1000rpm、3分間)した。その後、80℃にて12時間乾燥しセルロースアセテートを取得し、マキノ式粉砕機(槇野産業株式会社製、型番:DD−2−3.7)を用いて粉砕した。粉砕条件は、回転速度2450rpm、スクリーン径φ5.0mmとした。
【0096】
得られたセルロースアセテートについて、酢化度、アセトン不溶解物量、6%粘度、構成糖比を測定した。結果は、表1に示した。
【0097】
得られたセルロースアセテート100重量部とDEP(フタル酸ジエチル)35重量部をヘンシェルミキサーによって混合し、80℃で12時間乾燥した後、二軸押出機(シリンダー温度:200℃、ダイス温度:220℃)に供給し、押し出してペレット化した。このペレットを用いて、150mm幅のT−ダイを装着した1軸押出機I(型番:GT−25A、(株)プラスチック光学研究所製)により、230℃で再溶解し200μmのフィルムを成形した。得られたフィルムのブツ異物数の結果を、表1に示した。
【0098】
<実施例1>
比較例1で得られたセルロースアセテート20重量部にアセトン80重量部を加えた後、3時間振盪して完全に溶解した。得られたセルロースアセテート溶液をフィルター(関西金網株式会社製、ベキポア15AL3、濾過粒度15μm)に加圧下(2kg/cm
2)で通した。得られたセルロースアセテート溶液に蒸留水110重量部を加え、沈殿したセルロースアセテートを濾紙(有限会社 桐山製作所製、桐山ろ紙 No.5C 40φ)で濾過した。セルロースアセテートに蒸留水150重量部を加え、遠心脱水(回転数1000rpm、3分間)した。その後、80℃にて12時間乾燥しセルロースアセテートを取得し、マキノ式粉砕機(槇野産業株式会社製、型番:DD−2−3.7)を用いて粉砕した。粉砕条件は、回転速度2450rpm、スクリーン径φ5.0mmとした。
【0099】
得られたセルロースアセテートについて、酢化度、アセトン不溶解物量、6%粘度、構成糖比を測定した。結果は、表1に示した。
【0100】
得られたセルロースアセテート100重量部とDEP(フタル酸ジエチル)35重量部をヘンシェルミキサーによって混合し、80℃で12時間乾燥した後、二軸押出機(シリンダー温度:200℃、ダイス温度:220℃)に供給し、押し出してペレット化した。このペレットを用いて、150mm幅のT−ダイを装着した1軸押出機I(型番:GT−25A、(株)プラスチック光学研究所製)により、230℃で再溶解し200μmのフィルムを成形した。得られたフィルムのブツ異物数の結果を、表1に示した。
【0101】
<実施例2>
比較例1で得られたセルロースアセテート16重量部にジクロロメタン80重量部とメタノール4重量部を加えた後、3時間振盪して完全に溶解した。得られたセルロースアセテート溶液をフィルター(関西金網株式会社製、ベキポア15AL3、濾過粒度15μm)に加圧下(3kg/cm
2)で通した。得られたセルロースアセテート溶液にメタノール289重量部を加え、沈殿したセルロースアセテートを濾紙(有限会社 桐山製作所製、桐山ろ紙 No.5C 40φ)で濾過した。セルロースアセテートに蒸留水150重量部を加え、遠心脱水(回転数1000rpm、3分間)した。その後、80℃にて12時間乾燥しセルロースアセテートを取得し、マキノ式粉砕機(槇野産業株式会社製、型番:DD−2−3.7)を用いて粉砕した。粉砕条件は、回転速度2450rpm、スクリーン径φ5.0mmとした。
【0102】
得られたセルロースアセテートについて、酢化度、アセトン不溶解物量、6%粘度、構成糖比を測定した。結果は、表1に示した。
【0103】
得られたセルロースアセテート100重量部とDEP(フタル酸ジエチル)35重量部をヘンシェルミキサーによって混合し、80℃で12時間乾燥した後、二軸押出機(シリンダー温度:200℃、ダイス温度:220℃)に供給し、押し出してペレット化した。このペレットを用いて、150mm幅のT−ダイを装着した1軸押出機I(型番:GT−25A、(株)プラスチック光学研究所製)により、230℃で再溶解し200μmのフィルムを成形した。得られたフィルムのブツ異物数の結果を、表1に示した。
【0104】
<実施例3>
αセルロース含量97.0wt%の針葉樹サルファイトパルプを使用し、85℃での酢化時間を100分とし、反応浴水分(熟成水分)濃度を39mol%と点以外は、実施例1と同様にしてセルロースアセテートを取得した。
【0105】
得られたセルロースアセテートについて、酢化度、アセトン不溶解物量、6%粘度、構成糖比を測定した。結果は、表1に示した。
【0106】
得られたセルロースアセテート100重量部とDEP(フタル酸ジエチル)35重量部をヘンシェルミキサーによって混合し、80℃で12時間乾燥した後、二軸押出機(シリンダー温度:200℃、ダイス温度:220℃)に供給し、押し出してペレット化した。このペレットを用いて、150mm幅のT−ダイを装着した1軸押出機I(型番:GT−25A、(株)プラスチック光学研究所製)により、230℃で再溶解し200μmのフィルムを成形した。得られたフィルムのブツ異物数の結果を、表1に示した。
【0107】
【表1】
実施例1〜3と比較例1〜2との対比から、アセトン不溶解物量が0.04wt%以下のセルロースアセテートより成形したフィルムはブツ異物数が少なく、極めてフィルム異物の少ない高品質フィルムであることが確認された。