特許第6802735号(P6802735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802735
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】流体漏れ検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20201207BHJP
   F15B 15/14 20060101ALI20201207BHJP
   F15B 20/00 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   G01M3/26 Z
   F15B15/14 355A
   F15B20/00 D
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-49917(P2017-49917)
(22)【出願日】2017年3月15日
(65)【公開番号】特開2018-155492(P2018-155492A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 貴宏
【審査官】 岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−045068(JP,A)
【文献】 特開2007−078514(JP,A)
【文献】 実開昭61−042403(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00−3/40
F15B 15/14
F15B 20/00
F16J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧力が加えられる密封空間をシールする第1シール部における流体漏れを検出する流体漏れ検出装置であって、
前記第1シール部に作用する第1荷重を検出する第1荷重検知部と、
前記密封空間に対して前記第1シール部よりも外側の位置において前記密封空間をシールする第2シール部に作用する第2荷重を検出する第2荷重検知部と、
前記第1荷重検知部で検知された前記第1荷重と前記第2荷重検知部で検知された前記第2荷重とに基づいて前記第1シール部の流体漏れを判定する判定部と、を備えることを特徴とする流体漏れ検出装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記第1荷重検知部で検知された前記第1荷重と前記第2荷重検知部で検知された前記第2荷重との差分が、予め定められた基準値を下回った場合に前記第1シール部の流体漏れと判定することを特徴とする請求項1に記載の流体漏れ検出装置。
【請求項3】
前記第1シール部及び前記第2シール部は、シャフトと前記シャフトを摺動支持するハウジングとの間をシールし、
前記第1荷重検知部は、前記第1シール部に作用する前記シャフトの軸方向または径方向の荷重を検出し、前記第2荷重検知部は、前記第1荷重検知部により検出される荷重と同じ方向の荷重であって、前記第2シール部に作用する荷重を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の流体漏れ検出装置。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記第1シール部を収容する第1環状溝と、前記第2シール部を収容する第2環状溝と、を有し、
前記第1荷重検知部は、前記第1シール部とともに前記第1環状溝内に収容され、前記第2荷重検知部は、前記第2シール部とともに前記第2環状溝内に収容されることを特徴とする請求項3の何れか1つに記載の流体漏れ検出装置。
【請求項5】
前記第1荷重検知部は、前記第1シール部と一体的に形成され、前記第2荷重検知部は、前記第2シール部と一体的に形成されることを特徴とする請求項1から4の何れか1つに記載の流体漏れ検出装置。
【請求項6】
前記第1荷重検知部及び前記第2荷重検知部は、一対の電極と、前記一対の電極間に挟まれた感圧導電性ゴムと、をそれぞれ有し、
前記第1シール部に作用する荷重に応じて前記第1荷重検知部の前記一対の電極間の抵抗値が変化し、前記第2シール部に作用する荷重に応じて前記第2荷重検知部の前記一対の電極間の抵抗値が変化することを特徴とする請求項1から5の何れか1つに記載の流体漏れ検出装置。
【請求項7】
前記第1荷重検知部及び前記第2荷重検知部は、前記第1シール部及び前記第2シール部に沿ってそれぞれ環状に設けられることを特徴とする請求項1から6の何れか1つに記載の流体漏れ検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧装置に用いられる流体漏れ検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軸方向に摺動又は回転摺動するシャフトを有する流体圧装置は、通常、シャフトの外周面を伝って流体が外部に漏れることを防止するために、シャフトの外周面に接するシール部材を備えている。このようなシール部材は、経時劣化等によりシール性能が低下し、流体漏れを生じさせることがある。
【0003】
特許文献1には、流体圧装置において流体漏れが生じたか否かを検知する流体漏れ検知装置が開示されている。この流体漏れ検知装置では、シリンダ端の下方に設けられた計量部に溜まる流体の単位時間当たりの量が基準値を超えた場合に流体漏れが発生していると判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−207608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の流体漏れ検知装置では、流体圧装置の外部に流体が漏れた後に流体漏れの判定が行われている。このように流体圧装置の外部に流体が漏れてからでは、流体圧装置の作動不良を回避することが困難となり、流体圧装置が用いられる機械装置の突発的な稼働停止を余儀なくされるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、流体圧装置において外部に流体が漏れる前にシール領域におけるシール機能の低下を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、流体の圧力が加えられる密封空間をシールする第1シール部に作用する第1荷重を検出する第1荷重検知部と、密封空間に対して第1シール部よりも外側の位置において密封空間をシールする第2シール部に作用する第2荷重を検出する第2荷重検知部と、第1荷重検知部で検知された第1荷重と第2荷重検知部で検知された第2荷重とに基づいて第1シール部の流体漏れを判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
第1の発明では、密封空間内の流体の圧力が直接作用する位置に配置される第1シール部に作用する第1荷重と、密封空間に対して第1シール部よりも外側の位置する第2シール部に作用する第2荷重と、に基づいて第1シール部において流体漏れが発生したか否かが判定される。このように、密封空間内の流体の圧力が直接作用する位置に配置される第1シール部がシール機能を発揮できているか否かについて監視することで、流体圧装置の外部に流体が漏れる前に、シール領域におけるシール機能の低下を検出することができる。
【0009】
第2の発明は、判定部が、第1荷重検知部で検知された第1荷重と第2荷重検知部で検知された第2荷重との差分が予め定められた基準値を下回った場合に第1シール部の流体漏れと判定することを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1荷重検知部で検知された第1荷重と第2荷重検知部で検知された第2荷重との差分が、予め定められた基準値を下回った場合に第1シール部において流体漏れが生じていると判定される。第1シール部において流体漏れが生じると、第2シール部に流体の圧力が作用する状態となり、第2荷重の大きさは、第1荷重に近い値まで上昇する。このため、第1荷重と第2荷重との差分である荷重差を、所定の基準値と比較することにより第1シール部において流体漏れが生じているか否かを判定することができる。
【0011】
第3の発明は、第1シール部及び第2シール部が、シャフトとシャフトを摺動支持するハウジングとの間をシールし、第1荷重検知部が、第1シール部に作用するシャフトの軸方向または径方向の荷重を検出し、第2荷重検知部が、第1荷重検知部により検出される荷重と同じ方向の荷重であって、第2シール部に作用する荷重を検出することを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、第1荷重検知部と第2荷重検知部とは、同じ方向に作用する荷重を検出している。このように、第1シール部において流体漏れが生じているか否かの判定に用いられる第1荷重と第2荷重とは、第1シール部及び第2シール部に対して同じ方向に作用する荷重である。このため、第1荷重と第2荷重との大きさの変化に基づいて第1シール部において流体漏れが生じたか否かを精度よく判定することができる。
【0013】
第4の発明は、ハウジングが、第1シール部を収容する第1環状溝と、第2シール部を収容する第2環状溝と、を有し、第1荷重検知部は、第1シール部とともに第1環状溝内に収容され、第2荷重検知部は、第2シール部とともに第2環状溝内に収容されることを特徴とする。
【0014】
第4の発明では、第1荷重検知部及び第2荷重検知部は、第1シール部や第2シール部を収容するために設けられた第1環状溝及び第2環状溝内にそれぞれ収容される。このため、各荷重検知部と判定部とを接続する配線を配索するための加工をハウジングに施すだけで、流体圧装置に対して流体漏れ検出装置を容易に組み付けることができる。
【0015】
第5の発明は、第1荷重検知部が、第1シール部と一体的に形成され、第2荷重検知部が、第2シール部と一体的に形成されることを特徴とする。
【0016】
第5の発明では、第1荷重検知部が、第1シール部と一体的に形成され、第2荷重検知部が、第2シール部と一体的に形成される。このため、流体圧装置に第1シール部及び第2シール部を組み付けることで第1荷重検知部及び第2荷重検知部も流体圧装置に組み付けられることから、流体圧装置に対して流体漏れ検出装置を組み付ける作業の効率を向上させることができる。
【0017】
第6の発明は、第1荷重検知部及び第2荷重検知部が、一対の電極と、一対の電極間に挟まれた感圧導電性ゴムと、をそれぞれ有し、第1シール部に作用する荷重に応じて第1荷重検知部の一対の電極間の抵抗値が変化し、第2シール部に作用する荷重に応じて第2荷重検知部の一対の電極間の抵抗値が変化することを特徴とする。
【0018】
第6の発明では、第1荷重検知部及び第2荷重検知部が、一対の電極と、一対の電極間に挟まれた感圧導電性ゴムと、をそれぞれ有する。このように、第1荷重検知部及び第2荷重検知部は、単純な構成を有するため、その成形が容易に行われる。したがって、第1荷重検知部及び第2荷重検知部が広範囲に設けられる場合であっても、流体漏れ検出装置の製造コストの上昇を抑制することができる。
【0019】
第7の発明は、第1荷重検知部及び第2荷重検知部が、第1シール部及び第2シール部に沿ってそれぞれ環状に設けられることを特徴とする。
【0020】
第7の発明では、第1荷重検知部及び第2荷重検知部が、第1シール部及び第2シール部に沿ってそれぞれ環状に設けられる。このため、第1荷重検知部及び第2荷重検知部では、各シール部に作用する流体の圧力が周方向においてばらついていても各シール部に作用する平均的な荷重が検出される。この結果、流体漏れ検出装置では、シール領域におけるシール機能の低下を精度よく判定することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、流体圧装置において外部に流体が漏れる前にシール領域におけるシール機能の低下を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る流体漏れ検出装置が用いられる油圧シリンダの断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る流体漏れ検出装置が設けられる部位を示す拡大断面図である。
図3】荷重検知部が設けられるシール部材を拡大して示す拡大断面図である。
図4】荷重検知部の断面図である。
図5図2のV−V線に沿う断面図である。
図6】荷重検知部で検出された荷重の一例を示すグラフである。
図7】荷重検知部で検出された荷重に基づく流体漏れの判定について説明するためのグラフである。
図8】荷重検知部の第1変形例を示す断面図である。
図9】荷重検知部の第2変形例を示す断面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る流体漏れ検出装置が設けられる部位を示す拡大断面図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る流体漏れ検出装置の荷重検知部が設けられるシール部材を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体漏れ検出装置について説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1〜7を参照して、本発明の第1実施形態に係る流体漏れ検出装置100及びこれを備える流体圧装置について説明する。
【0025】
以下では、流体圧装置が作動油を作動流体として駆動する油圧シリンダ1である場合について説明する。図1は、油圧シリンダ1を示す断面図である。図2は、流体漏れ検出装置100が設けられる部位の周辺を拡大して示した断面図である。なお、図1では、流体漏れ検出装置100の図示を省略する。
【0026】
油圧シリンダ1は、図1及び図2に示すように、筒状のシリンダチューブ2と、シリンダチューブ2に挿入されるシャフトとしてのピストンロッド3と、ピストンロッド3の基端(図1中右端)に連結されシリンダチューブ2の内周面に沿って摺動するピストン4と、を備える。
【0027】
シリンダチューブ2の内部は、ピストン4によって密封空間としてのロッド側室5と反ロッド側室6との2つの油圧室に仕切られる。油圧シリンダ1は、図示しない油圧源からロッド側室5または反ロッド側室6に導かれる作動油圧によって伸縮作動する。シリンダチューブ2の内周とピストン4の外周との間は、シール部材(図示省略)によって封止される。これにより、シリンダチューブ2の内周とピストン4の外周との間を通じたロッド側室5と反ロッド側室6との連通が遮断される。
【0028】
シリンダチューブ2には、シリンダチューブ2の開口端を閉塞すると共にピストンロッド3を摺動自在に支持するハウジングとしてのシリンダヘッド7が設けられる。シリンダヘッド7は、周方向に並ぶ複数の締結ボルト(図示省略)を介してシリンダチューブ2に締結される。
【0029】
シリンダヘッド7の内周には、図2に示すように、ブッシュ11、シール領域12、及びダストシール15が、ロッド側室5側から外部に向かって、この順で設けられる。
【0030】
ブッシュ11は、ピストンロッド3の外周面3aに摺接するように配置される。このため、ピストンロッド3は、ブッシュ11を介してシリンダヘッド7によって摺動支持され、シリンダチューブ2の軸方向に沿って移動可能である。
【0031】
シール領域12は、複数のシール部材によって、ロッド側室5内の作動油が外部に漏れることを防止する領域である。シール領域12には、ブッシュ11側に配置されロッド側室5内の作動油の圧力が直接作用する第1シール部としてのメインシール13と、ピストンロッド3の軸方向においてメインシール13と所定の間隔をあけて配置される第2シール部としてのサブシール14と、が設けられる。
【0032】
メインシール13及びサブシール14は、断面形状がU字状のUパッキンであり、ピストンロッド3とシリンダヘッド7との間に圧縮された状態で、シリンダヘッド7に形成された第1環状溝8及び第2環状溝9内にそれぞれ配置される。なお、シール領域12には、メインシール13及びサブシール14だけではなく、さらに複数のシール部材が設けられてもよい。
【0033】
ロッド側室5内の作動油は、通常、メインシール13によって、ロッド側室5から漏れ出すことが防止されている。しかし、メインシール13の劣化等によりメインシール13のシール機能が低下し、メインシール13とピストンロッド3との間の隙間を通じてロッド側室5から作動油が漏れた場合には、ロッド側室5に対してメインシール13よりも外側の位置に配置されるサブシール14によってロッド側室5内の作動油が外部に漏れ出すことが防止される。つまり、サブシール14は、バックアップ用のシール部材として機能し、メインシール13が正常に機能していれば、サブシール14に対してロッド側室5内の作動油の圧力が作用することはない。
【0034】
ダストシール15は、外部からシリンダチューブ2内へのダストの侵入を防止するものであり、メインシール13及びサブシール14と同様に、ピストンロッド3とシリンダヘッド7との間に圧縮された状態で、シリンダヘッド7に形成された溝内に配置される。
【0035】
上記構成の油圧シリンダ1において、ロッド側室5が油圧源に連通され、反ロッド側室6が図示しないタンクに連通されると、ロッド側室5に作動油が供給され、反ロッド側室6内の作動油がタンクに排出されることにより、油圧シリンダ1は収縮作動する。一方、反ロッド側室6が油圧源に連通され、ロッド側室5がタンクに連通されると、反ロッド側室6に作動油が供給され、ロッド側室5内の作動油がタンクに排出されることにより、油圧シリンダ1は伸長作動する。
【0036】
また、上述の油圧シリンダ1には、シール領域12においてシール機能が低下した場合に生じる作動油の漏れを検出する流体漏れ検出装置100が組み込まれている。
【0037】
以下に、図2〜5を参照して、流体漏れ検出装置100について説明する。図3は、後述の荷重検知部21,22が設けられる部位を拡大して示した拡大断面図であり、図4は、荷重検知部21,22の断面を示す断面図であり、図5は、図2のV−V線に沿う断面図であって、第1荷重検知部21が設けられる部分における油圧シリンダ1の断面をしめす断面図である。
【0038】
流体漏れ検出装置100は、図2に示すように、メインシール13とシリンダヘッド7との間に設けられメインシール13に作用する第1荷重を検出する第1荷重検知部21と、サブシール14とシリンダヘッド7との間に設けられサブシール14に作用する第2荷重を検出する第2荷重検知部22と、図2において破線で示される配線を介して第1荷重検知部21と第2荷重検知部22とが接続される制御部30と、を有する。
【0039】
ここで、上述のメインシール13及びサブシール14は、図3に拡大して示すように、シリンダヘッド7に形成された第1環状溝8及び第2環状溝9内にそれぞれ配置されており、環状に形成されるベース部13a,14aと、ベース部13a,14aから軸方向に延び環状溝8,9の底面8a,9aに接する第1リップ部13b,14bと、ベース部13a,14aから軸方向に延びピストンロッド3の外周面3aに接する第2リップ部13c,14cと、を有する。
【0040】
第1荷重検知部21は、図3に示されるように、メインシール13のベース部13aと第1環状溝8の側面との間に配置される。このように、第1荷重検知部21は、ピストンロッド3の軸方向においてメインシール13とシリンダヘッド7とに挟まれるように配置されるため、第1荷重検知部21には、メインシール13に作用する軸方向の荷重が作用することになる。
【0041】
同様に、第2荷重検知部22は、図3に示されるように、サブシール14のベース部14aと第2環状溝9の側面との間に配置される。このように、第2荷重検知部22は、ピストンロッド3の軸方向においてサブシール14とシリンダヘッド7とに挟まれるように配置されるため、第2荷重検知部22には、サブシール14に作用する軸方向の荷重が作用することになる。
【0042】
第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22は、図4に示すように、対向して配置される一対の電極25と、一対の電極25間に設けられた感圧導電性ゴム24と、一対の電極25と感圧導電性ゴム24とを包囲する絶縁材26と、を有する。
【0043】
感圧導電性ゴム24は、絶縁性を有するシリコンゴム等のゴム材にカーボンや金属粉といった導電性粒子が所定の割合で配合されたものである。このため、図5において矢印Aで示されるような力(圧力)が作用すると、力の大きさに応じて一対の電極25間の抵抗値が変化する。
【0044】
したがって、メインシール13とシリンダヘッド7との間に配置された第1荷重検知部21の一対の電極25間の抵抗値を検出することによって、メインシール13に作用する軸方向の荷重の大きさを把握することが可能となる。同様に、サブシール14とシリンダヘッド7との間に配置された第2荷重検知部22の一対の電極25間の抵抗値を検出することによって、サブシール14に作用する軸方向の荷重の大きさを把握することが可能となる。
【0045】
また、第1荷重検知部21は、図5に示すように、メインシール13に沿って環状に形成されており、メインシール13とともに第1環状溝8内に収容される。第2荷重検知部22も第1荷重検知部21と同様に、サブシール14に沿って環状に形成されており、サブシール14とともに第2環状溝9内に収容される。
【0046】
このように、第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22は、メインシール13やサブシール14を収容するために従来から設けられている環状溝8,9内に収容される。このため、第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22と、制御部30と、を接続する配線を配索するためのスリット等をシリンダヘッド7に形成するだけで、油圧シリンダ1に対して流体漏れ検出装置100を容易に組み付けることができる。
【0047】
また、第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22は、上述のように、一対の電極25と感圧導電性ゴム24という極めて単純な構成を有するため、その成形が容易である。このため、図5に示されるように、第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22が各シール13,14に沿って広い範囲に設けられる場合であっても流体漏れ検出装置100の製造コストの上昇を抑制することができる。
【0048】
また、第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22は、各シール13,14に沿って環状に設けられるため、第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22では、各シール13,14に対して軸方向に作用する作動油の圧力が周方向においてばらついていても、各シール13,14に作用する平均的な荷重が検出される。例えば、油圧シリンダ1の姿勢が変わることによって、ピストンロッド3の自重が作用する方向が変化すると、各シール13,14に作用する圧力も部分的に若干上昇したり低下したりするおそれがある。しかしながら、第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22では、各シール13,14に作用する平均的な荷重が検出されるため、油圧シリンダ1の姿勢の変化といった外的要因の影響が除去された荷重を検出することができる。
【0049】
次に、制御部30について説明する。
【0050】
制御部30は、第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22の一対の電極25間の抵抗値をそれぞれ検出する抵抗検出回路31と、抵抗検出回路31で検出された抵抗値に基づいてシール領域12における流体漏れを判定する判定部32と、を有する。
【0051】
判定部32は、マイクロコンピュータであり、抵抗検出回路31で検出された一対の電極25間の抵抗値に基づいてメインシール13の軸方向における荷重である第1荷重とサブシール14の軸方向における荷重である第2荷重とを演算する演算部33と、演算部33で演算された荷重を記憶可能であるとともに一対の電極25間の抵抗値と荷重との相関を示す演算マップや流体漏れの判定に用いられる基準値が記憶される記憶部34と、演算部33で用いられるプログラム等を記憶する図示しないROMやRAM等の補助記憶部と、図示しない入出力インタフェース(I/O インタフェース)と、を有する。
【0052】
演算部33では、さらに、演算された第1荷重と第2荷重との差分と、記憶部34に記憶された基準値と、の比較が行われ、比較結果に基づきシール領域12における流体漏れの有無の判定が行われる。
【0053】
演算部33は、いわゆる中央演算処理装置(CPU)であり、記憶部34は、書き換え可能なEEPROM等の不揮発性メモリである。なお、制御部30は、油圧シリンダ1の外部に設けられていてもよいし、第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22とともにシリンダヘッド7内に配置されていてもよい。また、制御部30は、油圧シリンダ1が設けられる機械装置の駆動を制御する制御部に組み込まれていてもよい。
【0054】
続いて、図6及び図7を参酌し、上記構成の流体漏れ検出装置100によるシール領域12における流体漏れ判定について説明する。図6は、メインシール13が正常に機能している状態からメインシール13において作動油漏れが生じるまでの第1荷重と第2荷重の時間変化を示したグラフであり、図7は、図6に示される第1荷重と第2荷重との差分の時間変化を示したグラフである。
【0055】
シール領域12に設けられるメインシール13やサブシール14は、ゴム材により形成されるため、経時劣化により徐々に硬化する。このような経時劣化によってリップ部13b,14bをピストンロッド3の外周面3aに押し付ける力である弾性復元力が徐々に低下すると、シール13,14のシール機能が低下する。また、作動油中に含まれるコンタミ等がリップ部13b,14bとピストンロッド3の外周面3aとの間に入り込むことによってもシール13,14のシール機能が部分的に低下する。流体漏れ検出装置100では、このようなシール機能の低下に伴って、メインシール13において作動油の漏れが生じているか否かが判定される。
【0056】
流体漏れ検出装置100では、油圧シリンダ1が設けられる機械装置が稼働している間、継続的にメインシール13に作用する第1荷重とサブシール14に作用する第2荷重とが検出される。具体的には、抵抗検出回路31において第1荷重検知部21の一対の電極25間の抵抗値が検出され、検出された抵抗値に基づき演算部33において、メインシール13の軸方向における第1荷重が演算される。同時に、抵抗検出回路31において第2荷重検知部22の一対の電極25間の抵抗値が検出され、検出された抵抗値に基づき演算部33において、サブシール14の軸方向における第2荷重が演算される。
【0057】
なお、機械装置の作動状態によって油圧シリンダ1の傾きが変化すると、ピストンロッド3の自重が第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22で検出される荷重に及ぼす影響が変わるおそれがあるため、第1荷重及び第2荷重の検出は、油圧シリンダ1の姿勢が毎回同じ状態となっているときに行われることが好ましい。
【0058】
さらに、演算部33では、演算された第1荷重と第2荷重との差分と、予め定められた基準値との比較が行われる。そして、第1荷重と第2荷重との差分が基準値を下回った場合には、メインシール13において作動油漏れが生じたと判定される。
【0059】
ここで、メインシール13に作用する軸方向の荷重は、主に、メインシール13に作用する作動油の圧力と、第2リップ部13cを介して伝わるメインシール13とピストンロッド3との間の摩擦力と、に起因する。メインシール13に作用する作動油の圧力は、ロッド側室5内の作動油の圧力であり、ロッド側室5が油圧源に連通されると、油圧源から供給される作動油の圧力にほぼ等しい大きさとなる。油圧源から供給される作動油の圧力に起因する荷重は、メインシール13とピストンロッド3との間の摩擦力と比較し非常に大きいことから、第1荷重検知部21により検出される荷重は、ほぼメインシール13に作用する作動油の圧力に起因する荷重となる。
【0060】
また、サブシール14に作用する軸方向の荷重も、メインシール13に作用する軸方向の荷重と同様に、主に、サブシール14に作用する作動油の圧力と、第2リップ部14cを介して伝わるサブシール14とピストンロッド3との間の摩擦力と、に起因する。しかし、メインシール13のシール機能が正常な状態にあれば、ロッド側室5内の作動油はサブシール14に至ることがないため、サブシール14に作用する作動油の圧力は、油圧シリンダ1の作動に関わらず、ほぼゼロである。このため、メインシール13が正常である場合、第2荷重検知部22により検出される荷重は、ほぼサブシール14とピストンロッド3との間の摩擦力である。つまり、メインシール13のシール機能が正常な状態にあれば、第2荷重検知部22により検出される荷重は、第1荷重検知部21により検出される荷重と比較し非常に小さな値となる。
【0061】
したがって、図6において、各荷重の検出が開始されてから、すなわち、メインシール13及びサブシール14が最初に組み付けられてから、あるいは、メインシール13及びサブシール14が交換されてから、しばらくの間は、メインシール13のシール機能が正常な状態にあることによって、第1荷重に比べて第2荷重は比較的小さい値となる。換言すれば、第1荷重と第2荷重との差分である荷重差は、図7に示されるように、基準値よりも大きい値となる。
【0062】
なお、メインシール13に作用する作動油の圧力は、ロッド側室5が油圧源に連通されると、油圧源から供給される作動油の圧力にほぼ等しい大きさとなる一方、ロッド側室5がタンクに連通されると、タンクの圧力である大気圧に近い大きさとなる。このため、第1荷重検知部21により検出される荷重は、油圧シリンダ1の作動に応じて大きく変動することになる。このため、第1荷重と第2荷重とを比較するにあたっては、油圧シリンダ1の作動方向の切り換えによる圧力の変動を考慮し、各荷重の平均値や最大値、実効値を用いることが好ましい。
【0063】
一方で、劣化等によりメインシール13のシール機能が低下し、メインシール13とピストンロッド3との間の隙間から作動油が漏れると、サブシール14にロッド側室5内の作動油の圧力が作用する状態となる。つまり、メインシール13のシール機能が低下した場合、サブシール14には、メインシール13に作用する作動油の圧力と同程度の圧力が作用することになり、第2荷重検知部22により検出される荷重は、第1荷重検知部21により検出される荷重と同程度の大きさとなる。
【0064】
このため、図6において各荷重の検出が開始されてから相当の時間が経過し、劣化等によりメインシール13のシール機能が徐々に低下すると、メインシール13において作動油の漏れが生じることによって、第2荷重の大きさは、第1荷重に近い値まで上昇し、第1荷重と第2荷重との差分である荷重差は、図7に示されるように基準値よりも小さい値となる。
【0065】
荷重差と比較される基準値は、サブシール14にロッド側室5内の作動油の圧力が作用する状態となったことが明らかであると判定される程度の大きさに設定されていればよく、例えば、各荷重の検出を開始した時点で検出された第1荷重の初期値と第2荷重の初期値とに基づいて設定される。具体的には、第1荷重の初期値と第2荷重の初期値との差分である初期荷重差の半分の値に設定される。
【0066】
このように第1荷重と第2荷重との差分が基準値を下回り、演算部33において、メインシール13で作動油漏れが生じたと判定されると、図示しない警告ランプ等の表示を介してオペレータにシール領域12においてシール機能が低下していることが通知される。
【0067】
また、抵抗検出回路31で検出された第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22の一対の電極25間の抵抗値や演算部33において演算された第1荷重及び第2荷重は、図示しない通信部を介して遠隔地に配置された機械装置メンテナンス用のサーバ等に無線送信されてもよい。この場合、遠隔地において、シール領域12における作動油漏れの有無を把握することが可能となり、作動油が油圧シリンダ1の外部に漏れ出す前に、メインシール13及びサブシール14の交換を指示することができる。
【0068】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0069】
流体漏れ検出装置100では、作動油の圧力が直接作用する位置に配置されるメインシール13に作用する第1荷重と、メインシール13からピストンロッド3の軸方向に離れて配置されるサブシール14に作用する第2荷重と、に基づいてメインシール13において作動油の漏れが発生したか否かが判定される。このように、作動油の圧力が直接作用する位置に配置されるメインシール13がシール機能を発揮できているか否かについて監視することで、油圧シリンダ1の外部に作動油が漏れる前に、劣化等によりシール領域12のシール機能が低下していることを検出することができる。
【0070】
また、油圧シリンダ1の作動油漏れが未然に防がれることにより、油圧シリンダ1が用いられる機械装置の突発的な稼働停止といった不測の事態を回避することができる。また、シール領域12における作動油漏れは、油圧シリンダ1に組み込まれた流体漏れ検出装置100により自動的に検知されるため、油圧シリンダ1を分解して、目視によりシール領域12における作動油漏れの有無を確認する必要がなくなることで、点検作業の効率を向上させることができる。
【0071】
次に、上記第1実施形態の変形例について説明する。
【0072】
上記第1実施形態では、流体圧装置が油圧シリンダ1である場合について説明した。これに限らず、流体漏れ検出装置100は、軸方向に摺動又は回転摺動するシャフトを有し作動流体が給排される流体圧装置として、緩衝器、液圧モータ、液圧ポンプ等に用いられてもよい。作動流体としては、作動油に限らず、例えば、水やその他の液体、気体等が用いられてもよい。
【0073】
また、上記第1実施形態では、メインシール13及びサブシール14がUパッキンである場合について説明した。これに限らず、メインシール13及びサブシール14は、ロッド側室5内の作動油の圧力が作用することで軸方向における荷重が変化するものであればどのような形式であってもよく、Oリングやオイルシールであってもよい。
【0074】
また、上記第1実施形態では、演算部33において、一対の電極25間の抵抗値から各荷重を演算し、演算された各荷重の差分を基準値と比較している。これに代えて、各荷重を演算することなく、第1荷重検知部21の一対の電極25間の抵抗値と第2荷重検知部22の一対の電極25間の抵抗値との差分を基準値と比較してもよい。
【0075】
また、上記第1実施形態では、演算部33において、メインシール13において作動油漏れが発生したと判定された場合にのみ、オペレータ等へ通知される。これに代えて、荷重差の初期値を0%、基準値を100%とし、検出された第1荷重と第2荷重との荷重差を百分率によりシール領域12のシール機能低下度合として常時表示してもよい。この場合、100%に近づくにつれて表示色や表示方法を変更することでオペレータ等にメインシール13及びサブシール14の交換を促すようにすることが好ましい。
【0076】
また、上記第1実施形態では、第1荷重と第2荷重との荷重差を基準値と比較することによって、メインシール13において作動油漏れが発生したか否か、すなわち、サブシール14にロッド側室5内の作動油の圧力が作用する状態となったか否かが判定される。上述のように、メインシール13において作動油漏れが発生した場合、サブシール14に作用する第2荷重は、メインシール13に作用する第1荷重と同様に油圧シリンダ1の作動に応じて大きく変動する状態となる一方、メインシール13において作動油漏れが発生していない場合、サブシール14に作用する第2荷重は、ほとんど変動しない。このことから、第2荷重のピークピーク値の大きさが第1荷重のピークピーク値に近づいた場合、すなわち、第1荷重のピークピーク値と第2荷重のピークピーク値との差分が所定の基準値を下回った場合に、メインシール13において作動油漏れが発生したと判定されてもよい。
【0077】
また、上記第1実施形態では、第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22は、一対の電極25と感圧導電性ゴム24とを有するものである。これに限定されず、第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22としては、シリンダヘッド7とシール13,14との間に作用する軸方向の力を検出することができるものであれば、どのような形式の荷重センサであってもよい。例えば、ひずみゲージや圧電素子を用いた荷重センサであってもよい。
【0078】
また、上記第1実施形態では、第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22は、各シール13,14とは別に設けられている。これに代えて、図8の第1変形例に示すように、第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22を各シール13,14と一体的に形成してもよい。この場合、油圧シリンダ1に各シール13,14を組み付けるだけで第1荷重検知部21及び第2荷重検知部22も油圧シリンダ1に組み付けられるため、組み付け作業の効率を向上させることができる。
【0079】
また、上記第1実施形態では、第1荷重検知部21は、メインシール13に沿って環状に設けられている。これに代えて、図9の第2変形例に示すように、メインシール13に沿って複数の第1荷重検知部21a〜21dが設けられた構成としてもよい。この場合、メインシール13のシール力が周方向において不均一となることを避けるために、各第1荷重検知部21a〜21dは、ピストンロッド3の中心に対して等角度間隔で配置されることが好ましい。なお、第2荷重検知部22についても同様である。
【0080】
また、上記第1実施形態では、第1荷重検知部21は、メインシール13に沿って環状に設けられている。これに代えて、メインシール13に沿って一部分に第1荷重検知部が設けられた構成としてもよい。この場合、メインシール13のシール力が周方向において不均一となることを避けるために、第1荷重検知部が設けられる位置に対してピストンロッド3の中心を挟んで対称となる位置にメインシール13を軸方向に支持する支持面を設けることが好ましい。なお、第2荷重検知部22についても同様である。
【0081】
また、上記第1実施形態では、メインシール13に作用する第1荷重とサブシール14に作用する第2荷重とは、油圧シリンダ1が設けられる機械装置が稼働している間、継続的に検出される。メインシール13及びサブシール14の劣化は比較的長い時間をかけて進行することから、劣化に起因するシール機能の低下を検出する場合には、第1荷重及び第2荷重の検出は、数週間や数カ月毎に行われてもよい。
【0082】
なお、油圧シリンダ1が設けられる機械装置が稼働している間、常時、第1荷重と第2荷重とを検出し、メインシール13における作動油漏れの有無を判定することで、リップ部13bとピストンロッド3の外周面3aとの間にコンタミ等が入り込むことによって突発的に発生する作動油漏れも検知することができる。
【0083】
<第2実施形態>
次に、図10及び図11を参照して、本発明の第2実施形態に係る流体漏れ検出装置200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
【0084】
流体漏れ検出装置200の基本的な構成は、第1実施形態に係る流体漏れ検出装置100と同様である。流体漏れ検出装置200では、第1荷重検知部121及び第2荷重検知部122が各シール13,14の径方向外側に配置されている点で流体漏れ検出装置100と相違する。
【0085】
流体漏れ検出装置200は、図10に示すように、メインシール13とシリンダヘッド7との間に設けられメインシール13に作用する第1荷重を検出する第1荷重検知部121と、サブシール14とシリンダヘッド7との間に設けられサブシール14に作用する第2荷重を検出する第2荷重検知部122と、図10において破線で示される配線を介して第1荷重検知部121と第2荷重検知部122とが接続される制御部30と、を有する。
【0086】
ここで、上述のメインシール13及びサブシール14は、上記第1実施形態と同様に、図11に拡大して示すように、シリンダヘッド7に形成された第1環状溝8及び第2環状溝9内にそれぞれ配置されており、環状に形成されるベース部13a,14aと、ベース部13a,14aから軸方向に延び環状溝8,9の底面8a,9aに接する第1リップ部13b,14bと、ベース部13a,14aから軸方向に延びピストンロッド3の外周面3aに接する第2リップ部13c,14cと、を有する。
【0087】
また、第1環状溝8及び第2環状溝9は、底面8a,9aよりも深さが深く、底面8a,9aに連続して各シール13,14のベース部13a,14a側に形成される第2底面8b,9bを有している。第1荷重検知部121及び第2荷重検知部122は、共に環状に形成され、第2底面8b,9bと、各シール13,14のベース部13a,14a寄りの部分と、の間に配置される。
【0088】
このように、第1荷重検知部121及び第2荷重検知部122は、第1リップ部13b,14bによるシール機能を阻害しないように、第1リップ部13b,14bとシリンダヘッド7との接触部よりも各シール13,14のベース部13a,14a寄りに配置されている。このため、第1荷重検知部121及び第2荷重検知部122が設けられていても、各シール13,14は、第1リップ部13b,14bが底面8a,9aに接し、第2リップ部13c,14cがピストンロッド3の外周面3aに接した状態となるため、環状溝8,9内に流入した作動油が外部に漏れ出すことを確実に防止することができる。
【0089】
また、第1荷重検知部121は、ピストンロッド3の径方向においてメインシール13とシリンダヘッド7とに挟まれるように配置されるため、第1荷重検知部121には、メインシール13に作用する径方向の荷重である緊迫力が作用することになる。なお、第1荷重検知部121により検出されるメインシール13の緊迫力は、メインシール13の第2リップ部13cがピストンロッド3の外周面3aに押し当てられて弾性変形することで生じる弾性復元力と、第1環状溝8内に流入した作動油の油圧により第2リップ部13cがピストンロッド3の外周面3aに押し付けられる押付力と、の合力に相当する。
【0090】
同様に、第2荷重検知部122は、ピストンロッド3の径方向においてサブシール14とシリンダヘッド7とに挟まれるように配置されるため、第2荷重検知部122には、サブシール14に作用する径方向の荷重である緊迫力が作用することになる。なお、第2荷重検知部122により検出されるサブシール14の緊迫力は、サブシール14の第2リップ部14cがピストンロッド3の外周面3aに押し当てられて弾性変形することで生じる弾性復元力と、第2環状溝9内に流入した作動油の油圧により第2リップ部14cがピストンロッド3の外周面3aに押し付けられる押付力と、の合力に相当する。
【0091】
第1荷重検知部121及び第2荷重検知部122は、上記第1実施形態と同様に、対向して配置される一対の電極25と、一対の電極25間に設けられた感圧導電性ゴム24と、一対の電極25と感圧導電性ゴム24とを包囲する絶縁材26と、を有する。
【0092】
したがって、メインシール13とシリンダヘッド7との間に配置された第1荷重検知部21の一対の電極25間の抵抗値を検出することによって、メインシール13に作用する径方向の荷重の大きさを把握することが可能となる。同様に、サブシール14とシリンダヘッド7との間に配置された第2荷重検知部22の一対の電極25間の抵抗値を検出することによって、サブシール14に作用する径方向の荷重の大きさを把握することが可能となる。
【0093】
制御部30の構成は、上記第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0094】
続いて、図6及び図7を参照し、上記構成の流体漏れ検出装置200によるシール領域12における流体漏れ判定について説明する。
【0095】
流体漏れ検出装置200では、油圧シリンダ1が設けられる機械装置が稼働している間、継続的にメインシール13に作用する第1荷重とサブシール14に作用する第2荷重とが検出される。具体的には、抵抗検出回路31において第1荷重検知部121の一対の電極25間の抵抗値が検出され、検出された抵抗値に基づき演算部33において、メインシール13の軸方向における第1荷重が演算される。同時に、抵抗検出回路31において第2荷重検知部122の一対の電極25間の抵抗値が検出され、検出された抵抗値に基づき演算部33において、サブシール14の軸方向における第2荷重が演算される。
【0096】
さらに、演算部33では、演算された第1荷重と第2荷重との差分と、予め定められた基準値との比較が行われる。そして、第1荷重と第2荷重との差分が基準値を下回った場合には、メインシール13において作動油漏れが生じたと判定される。
【0097】
ここで、メインシール13に作用する径方向の荷重は、上述のように、メインシール13の第2リップ部13cがピストンロッド3の外周面3aに押し当てられて弾性変形することで生じる弾性復元力と、第1環状溝8内に流入した作動油の油圧により第2リップ部13cがピストンロッド3の外周面3aに押し付けられる押付力と、の合力に相当する。第1環状溝8内に流入する作動油の圧力は、ロッド側室5内の作動油の圧力であり、ロッド側室5が油圧源に連通されると、油圧源から供給される作動油の圧力にほぼ等しい大きさとなる。油圧源から供給される作動油が第2リップ部13cをピストンロッド3の外周面3aに押し付ける押付力は、弾性復元力と比較して非常に大きいことから、第1荷重検知部21により検出される荷重は、ほぼ第1環状溝8内に流入する作動油に起因する押付力となる。
【0098】
また、サブシール14に作用する径方向の荷重も、メインシール13に作用する径方向の荷重と同様に、サブシール14の第2リップ部14cがピストンロッド3の外周面3aに押し当てられて弾性変形することで生じる弾性復元力と、第2環状溝9内に流入した作動油の油圧により第2リップ部14cがピストンロッド3の外周面3aに押し付けられる押付力と、の合力に相当する。しかし、メインシール13のシール機能が正常な状態にあれば、ロッド側室5内の作動油は、第2環状溝9内に至ることがないため、作動油が第2リップ部14cをピストンロッド3の外周面3aに押し付ける押付力は、油圧シリンダ1の作動に関わらず、ほぼゼロである。このため、メインシール13が正常である場合、第2荷重検知部122により検出される荷重は、ほぼ第2リップ部14cの弾性復元力である。つまり、メインシール13のシール機能が正常な状態にあれば、第2荷重検知部122により検出される荷重は、第1荷重検知部121により検出される荷重と比較し非常に小さな値となる。
【0099】
したがって、上記第1実施形態と同様に、図6において、各荷重の検出が開始されてから、すなわち、メインシール13及びサブシール14が最初に組み付けられてから、あるいは、メインシール13及びサブシール14が交換されてから、しばらくの間は、メインシール13のシール機能が正常な状態にあることによって、第1荷重に比べて第2荷重は比較的小さい値となる。換言すれば、第1荷重と第2荷重との差分である荷重差は、図7に示されるように基準値よりも大きい値となる。なお、第1荷重と第2荷重とを比較するにあたっては、上記第1実施形態と同様に、油圧シリンダ1の作動方向の切り換えによる圧力の変動を考慮し、各荷重の平均値や最大値、実効値が用いることが好ましい。
【0100】
一方で、メインシール13のシール機能が低下し、メインシール13とピストンロッド3との間の隙間から作動油が漏れると、サブシール14にロッド側室5内の作動油の圧力が作用する状態となる。つまり、メインシール13のシール機能が低下した場合、第2環状溝9内には、第1環状溝8に流入する作動油と同程度の圧力の作動油が流入することになる。このため、第2荷重検知部122により検出される荷重は、第1荷重検知部121により検出される荷重と同程度の大きさとなる。
【0101】
このため、上記第1実施形態と同様に、図6において各荷重の検出が開始されてから相当の時間が経過し、劣化等によりメインシール13のシール機能が徐々に低下すると、メインシール13において作動油の漏れが生じることによって、第2荷重の大きさは、第1荷重に近い値まで上昇し、第1荷重と第2荷重との差分である荷重差は、図7に示されるように基準値よりも小さい値となる。
【0102】
このように第1荷重と第2荷重との差分が基準値を下回り、演算部33において、メインシール13で作動油漏れが生じたと判定されると、上記第1実施形態と同様に、図示しない警告ランプ等の表示を介してオペレータにシール領域12においてシール機能が低下していることが通知される。
【0103】
以上の第2実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0104】
流体漏れ検出装置200では、作動油の圧力が直接作用する位置に配置されるメインシール13に作用する径方向における第1荷重と、メインシール13からピストンロッド3の軸方向に離れて配置されるサブシール14に作用する径方向における第2荷重と、に基づいてメインシール13において作動油の漏れが発生したか否かが判定される。このように、作動油の圧力が直接作用する位置に配置されるメインシール13がシール機能を発揮できているか否かについて監視することで、油圧シリンダ1の外部に作動油が漏れる前に、劣化等によりシール領域12のシール機能が低下していることを検出することができる。
【0105】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0106】
作動油の圧力が加えられるロッド側室5をシールするメインシール13における流体漏れを検出する流体漏れ検出装置100,200は、メインシール13に作用する第1荷重を検出する第1荷重検知部21,121と、ロッド側室5に対してメインシール13よりも外側の位置においてロッド側室5をシールするサブシール14に作用する第2荷重を検出する第2荷重検知部22,122と、第1荷重検知部21,121で検知された第1荷重と第2荷重検知部22,122で検知された第2荷重とに基づいてメインシール13の流体漏れを判定する判定部32と、を備える。
【0107】
この構成では、ロッド側室5内の作動油の圧力が直接作用する位置に配置されるメインシール13に作用する第1荷重と、メインシール13からピストンロッド3の軸方向に離れて配置されるサブシール14に作用する第2荷重と、に基づいてメインシール13において作動油の漏れが発生したか否かが判定される。このように、作動油の圧力が直接作用する位置に配置されるメインシール13がシール機能を発揮できているか否かについて監視することで、油圧シリンダ1の外部に作動油が漏れる前に、劣化等によりシール領域12のシール機能が低下していることを検出することができる。この結果、油圧シリンダ1の作動油漏れが未然に防がれることにより、油圧シリンダ1が用いられる機械装置の突発的な稼働停止といった不測の事態を回避することができる。
【0108】
また、この構成では、シール領域12における作動油漏れは、油圧シリンダ1に組み込まれた流体漏れ検出装置100により自動的に検知されるため、油圧シリンダ1を分解して、目視によりシール領域12における作動油漏れの有無を確認する必要がなくなることで、点検作業の効率を向上させることができる。また、シール領域12に設けられるメインシール13及びサブシール14を定期的に交換する場合、まだ劣化していないシール部材も交換されることになるが、上記構成の流体漏れ検出装置100,200によりシール領域12のシール機能が低下していると判定された場合にのみメインシール13及びサブシール14を交換することで、メンテナンス費用を低減させることができる。このように適切な時期にメインシール13及びサブシール14の交換が行われることにより、油圧シリンダ1が用いられる機械装置の突発的な稼働停止といった不測の事態を回避することができる。
【0109】
また、判定部32は、第1荷重検知部21,121で検知された第1荷重と第2荷重検知部22,122で検知された第2荷重との差分が、予め定められた基準値を下回った場合にメインシール13の流体漏れと判定する。
【0110】
この構成では、第1荷重検知部21,121で検知された第1荷重と第2荷重検知部22,122で検知された第2荷重との差分が、予め定められた基準値を下回った場合にメインシール13において流体漏れが生じていると判定される。劣化等によりメインシール13のシール機能が低下し、メインシール13において作動油の漏れが生じると、サブシール14に作動油の圧力が作用する状態となり、第2荷重の大きさは、第1荷重に近い値まで上昇する。このため、第1荷重と第2荷重との差分である荷重差を、所定の基準値と比較することによりメインシール13において作動油の漏れが生じているか否か、すなわち、シール領域12におけるシール機能が低下しているか否かを正確に判定することができる。
【0111】
また、メインシール13及びサブシール14は、ピストンロッド3とピストンロッド3を摺動支持するシリンダヘッド7との間をシールし、第1荷重検知部21,121は、メインシール13に作用するピストンロッド3の軸方向または径方向の荷重を検出し、第2荷重検知部22,122は、第1荷重検知部21,121により検出される荷重と同じ方向の荷重であって、サブシール14に作用する荷重を検出する。
【0112】
この構成では、第1荷重検知部21,121と第2荷重検知部22,122は、同じ方向に作用する荷重を検出している。このように、メインシール13において作動油の漏れが生じているか否かの判定に用いられる第1荷重と第2荷重とは、メインシール13及びサブシール14に対して同じ方向に作用する荷重である。このため、第1荷重と第2荷重との大きさの変化に基づいてメインシール13において作動油の漏れが生じたか否かをより正確に判定することができる。
【0113】
また、シリンダヘッド7は、メインシール13を収容する第1環状溝8と、サブシール14を収容する第2環状溝9と、を有し、第1荷重検知部21,121は、メインシール13とともに第1環状溝8内に収容され、第2荷重検知部22,122は、サブシール14とともに第2環状溝9内に収容される。
【0114】
この構成では、第1荷重検知部21,121及び第2荷重検知部22,122は、メインシール13やサブシール14を収容するために従来から設けられている第1環状溝8及び第2環状溝9内にそれぞれ収容される。このため、第1荷重検知部21,121及び第2荷重検知部22,122と、制御部30と、を接続する配線を配索するためのスリット等をシリンダヘッド7に形成するだけで、油圧シリンダ1に対して流体漏れ検出装置100を容易に組み付けることができる。
【0115】
また、第1荷重検知部21,121は、メインシール13と一体的に形成され、第2荷重検知部22,122は、サブシール14と一体的に形成される。
【0116】
この構成では、第1荷重検知部21,121が、メインシール13と一体的に形成され、第2荷重検知部22,122が、サブシール14と一体的に形成される。このため、油圧シリンダ1にメインシール13及びサブシール14を組み付けることで第1荷重検知部21,121及び第2荷重検知部22,122も油圧シリンダ1に組み付けられることから、油圧シリンダ1に対して流体漏れ検出装置100,200を組み付ける作業の効率を向上させることができる。
【0117】
また、第1荷重検知部21,121及び第2荷重検知部22,122は、一対の電極25と、一対の電極25間に挟まれた感圧導電性ゴム24と、をそれぞれ有し、メインシール13に作用する荷重に応じて第1荷重検知部21,121の一対の電極25間の抵抗値が変化し、サブシール14に作用する荷重に応じて第2荷重検知部22,122の一対の電極25間の抵抗値が変化する。
【0118】
この構成では、第1荷重検知部21,121及び第2荷重検知部22,122が、一対の電極25と、一対の電極25間に挟まれた感圧導電性ゴム24と、をそれぞれ有する。このように、第1荷重検知部21,121及び第2荷重検知部22,122は、極めて単純な構成を有するため、その成形が容易に行われる。したがって、第1荷重検知部21,121及び第2荷重検知部22,122が、メインシール13及びサブシール14に沿って広範囲に設けられる場合であっても、ひずみゲージや圧電素子等を広範囲に配置した場合と比較し、流体漏れ検出装置100,200の製造コストの上昇を抑制することができる。
【0119】
また、第1荷重検知部21,121及び第2荷重検知部22,122は、メインシール13及びサブシール14に沿ってそれぞれ環状に設けられる。
【0120】
この構成では、第1荷重検知部21,121及び第2荷重検知部22,122が、メインシール13及びサブシール14に沿ってそれぞれ環状に設けられる。このため、第1荷重検知部21,121及び第2荷重検知部22,122では、各シール13,14に作用する作動油の圧力が周方向においてばらついていても各シール13,14に作用する平均的な荷重が検出される。例えば、油圧シリンダ1の姿勢が変わることによって、ピストンロッド3の自重が作用する方向が変化すると、各シール13,14に作用する圧力も部分的に若干上昇したり低下したりするおそれがある。しかしながら、第1荷重検知部21,121及び第2荷重検知部22,122では、各シール13,14に作用する平均的な荷重が検出されるため、油圧シリンダ1の姿勢の変化といった外的要因の影響が除去された荷重を検出することができる。そして、流体漏れ検出装置100,200では、このように検出された平均的な荷重に基づいてシール領域12におけるシール機能の低下が判定されるため、判定精度を向上させることができる。また、第1荷重検知部21,121及び第2荷重検知部22,122に接続される配線が少なく、構造上シンプルとなることから、配線の取り回しといった組み付け作業を容易に行うことができるとともに、流体漏れ検出装置100,200の製造コストを低減させることができる。
【0121】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0122】
例えば、第1実施形態における変形例は、第2実施形態に対して適用されてもよい。また、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせることで、各シール13,14に作用する軸方向の荷重と径方向の荷重との両方を検出し、これらの荷重に基づいてメインシール13における流体漏れの有無が判定されてもよい。
【符号の説明】
【0123】
100,200・・・流体漏れ検出装置、1・・・油圧シリンダ(流体圧装置)、3・・・ピストンロッド(シャフト)、5・・・ロッド側室5(密封空間)、7・・・シリンダヘッド(ハウジング)、8・・・第1環状溝、9・・・第2環状溝、12・・・シール領域、13・・・メインシール、14・・・サブシール、21,21a〜21d,121・・・第1荷重検知部、22,122・・・第2荷重検知部、24・・・感圧導電性ゴム、25・・・一対の電極、30・・・制御部、32・・・判定部
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