(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記炉心構成要素では、前記進退部の進退により容積が増減する貯留部と、前記貯留部に前記液体を流入及び流出させる抵抗流路と、を有する減衰部を前記収容部に設けた請求項1に記載の原子炉。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、炉心構成要素の跳び上がりを抑制するためにダッシュポッド構造を設けた従来の原子炉では、連結管の嵌合面と炉心構成要素の嵌合面との間にダッシュポッド構造が形成されている。すなわち、連結管における上端側に立ち上り部などを設けて嵌合面を特定形状に形成するとともに、炉心構成要素におけるエントランスノズル側の嵌合面を特定形状に形成し、両者の相対形状を適切に設定することで、ダッシュポッド構造が形成されている。
そのため連結管と炉心構成要素とのそれぞれの形状に制約があり、炉心構成要素の跳び上がりを抑制するための構造を設け難く、特に、既存の原子炉に炉心構成要素の跳び上がりを抑制するための構造を追加することが容易でないという問題点があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、上下方向の振動による炉心構成要素の跳び上がりを抑制できる構造を容易に設けることが可能な原子炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様によれば、原子炉は、内部が液体で満たされる原子炉容器と、該原子炉容器内に設けられ、上下方向に延びる筒状をなすとともに水平方向に複数配列された連結管、及び、該連結管を支持して水平方向に延びる支持板を有する支持構造と、前記連結管に挿入される小径部、該小径部よりも上方に位置する大径部、及び、前記小径部と前記大径部との間に位置して前記連結管に上方から当接して支持される形状変化部を有する炉心構成要素と、を備え、前記炉心構成要素は、前記形状変化部に設けられて前記連結管と対向して開口した収容部と、前記収容部に下方に向かって突没可能に収容され、前記連結管に上方から当接することで減衰力を発生しつつ没する進退部と、を備えている。
【0009】
本発明によれば、収容部に突没可能に収容された進退部が、連結管に上方から当接することで減衰力を発生しつつ没するように構成されている。そのため炉心構成要素が支持構造から上方へ変位して、形状変化部から進退部が下方へ突出すると、再び下方へ変位して支持構造に当接した際、進退部が没して運動エネルギーを減衰できる。これにより炉心構成要素に上下方向の振動が負荷されても炉心構成要素が支持構造から跳び上がることを抑制できる。
【0010】
そして収容部及び進退部が炉心構成要素に設けられているので、支持構造の連結管に炉心構成要素の跳び上がりを抑制するための構造を設ける必要がなく、連結管の構造の自由度が大きい。例えば既存の原子炉の支持構造や連結管をそのまま利用して、炉心構成要素の跳び上がりを抑制するための構造を実現することも可能である。
【0011】
本発明の第二の態様によれば、上記第一の態様において、前記炉心構成要素では、前記進退部の進退により容積が増減する貯留部と、前記貯留部に前記液体を流入及び流出させる抵抗流路と、を有する減衰部を前記収容部に設けていてもよい。
【0012】
この構成によれば、進退部の進退により容積が増減する貯留部と、貯留部に液体を流入及び流出させる抵抗流路と、を有する減衰部を設けているので、進退部の進退により抵抗流路を流れる液体の流動抵抗により、進退部の進退速度に応じた減衰力を発生することができる。しかも減衰部を収容部に設けるので、炉心構成要素の跳び上がりを抑制できる構造を収容部に集約し易い。
【0013】
本発明の第三の態様によれば、上記第二の態様において、前記炉心構成要素は、前記進退部を下方へ付勢する付勢部を備えていてもよい。
この構成によれば、付勢部により進退部が下方に付勢されるので、炉心構成要素が支持構造から上方に変位した際、形状変化部から進退部が確実に突出することができる。そのため炉心構成要素に上下方向の振動が負荷された際に炉心構成要素が支持構造から跳び上がることを確実に抑制し易い。
【0014】
本発明の第四の態様によれば、上記第三の態様において、前記炉心構成要素は、内部が前記液体で満たされた筒状をなし、前記付勢部は、前記収容部を前記炉心構成要素内に開口させた連通開口部と、前記進退部に設けられて前記連通開口部を介して前記炉心構成要素内の圧力で下方に加圧される受圧部と、を有していてもよい。
【0015】
貯留部内へは連通開口部を通じて炉心構成要素の内部から液体が流入する。このため連通開口部での圧力損失によって、炉心構成要素の内部に比べて貯留部内の液体の圧力は低い。
そして上記構成によれば、付勢部が収容部を炉心構成要素内に開口させた連通開口部と進退部の受圧部とを有している。そのため炉心構成要素が上方へ変位した際、進退部の受圧部に炉心構成要素内の高い圧力が作用し、進退部の下端側に支持構造上方における炉心構成要素周囲の低い圧力が作用する。よって炉心構成要素の内部と貯留部の内部との間の差圧によって進退部を下方へ付勢することができる。
これにより炉心構成要素が上方へ変位した際、進退部を確実に下方へ突出させることができ、付勢するための機械部材等を設置する必要がなくて簡素化できる。
【0016】
本発明の第五の態様によれば、上記第三の態様において、前記収容部は、下向きに開口した有底形状をなし、前記収容部の底部と前記進退部との間に前記貯留部が設けられ、前記収容部の内周側面と前記進退部の外周側面との間の前記抵抗流路が設けられ、前記付勢部は、前記収容部内に配置された弾性部材であってもよい。
【0017】
この構成によれば、有底穴形状の収容部内に進退部及び弾性部材が配置されると共に貯留部及び抵抗流路が設けられている。そのため炉心構成要素の跳び上がりを抑制するための構造を収容部に集約しつつ、弾性部材によって形状変化部から進退部を確実に突出させて炉心構成要素の跳び上がりを抑制することができる。
【0018】
本発明の第六の態様によれば、上記第五の態様において、前記連結管には、前記収容部とは異なる位置で前記炉心構成要素に対向して下方から当接可能な突出部が設けられていてもよい。
【0019】
このような構成によれば、支持構造に炉心構成要素が着座した状態において、進退部の周りで収容部が設けられていない位置で突出部が炉心構成要素を下方から支持できる。このため進退部へ支持構造から全ての荷重がかかることを回避できる。よって弾性部材が振動し、着座状態が不安定となることを回避できる。また炉心構成要素が支持構造に着座した状態において、例えば弾性部材を過剰に圧縮するようなことを防止できる。
【0020】
本発明の第七の態様によれば、上記第五又は第六の態様において、前記進退部の上端面には、前記弾性部材を収容可能な凹形状の格納部が設けられていてもよい。
【0021】
このような構成によれば、進退部の上端面に格納部が設けられているので、炉心構成要素が支持構造に着座した状態において、弾性部材である付勢部を格納部内に収容できる。よって炉心構成要素が支持構造に着座した状態において、弾性部材を過剰に圧縮するようなことを回避できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上下方向の振動による炉心構成要素の跳び上がりを抑制できる構造を容易に設けることが可能な原子炉を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態について、
図1から
図6を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る原子炉1は、原子炉容器2と、炉心3と、支持構造4と、上部構造物5と、を備えている。
【0025】
原子炉容器2は、原子炉容器本体6と、遮蔽プラグ7と、冷却材入口配管8及び冷却材出口配管9と、隔壁10と、を有する。原子炉容器本体6の上部には開孔部11が形成され、上部とは反対側の底部を鉛直下方に向けて原子炉格納容器(図示省略)内に格納されている。遮蔽プラグ7は、原子炉容器本体6における上記開孔部11に配置されることで、該開孔部11を封止している。冷却材入口配管8及び冷却材出口配管9は、原子炉容器2内への冷却材C(一次主冷却材)の出入口を形成する。隔壁10は、中央部に開孔が形成された板状の部材である。隔壁10は、原子炉容器2の内部で水平方向に延びることで、原子炉容器2内を上下方向に区画している。また、この原子炉容器2の内部は液体としての冷却材Cによって満たされている。
【0026】
炉心3は、主として燃料棒集合体や、制御棒集合体を有し、原子炉容器2内の中央部に配置される。ここでは、燃料棒集合体や制御棒集合体など炉心3を構成する要素を総称して炉心構成要素14と呼ぶ。なお、本実施形態に係る支持構造4は、炉心構成要素14のうち、燃料棒15に対して特に好適に採用することができる。
【0027】
支持構造4は、
図1及び
図2に示すように、炉心構成要素14を下方から支持するために原子炉容器2内に設けられた構造物であり、上下方向から見て原子炉容器2の中央部に配置される。隔壁10は、この支持構造4と原子炉容器2とに固定されている。
支持構造4は、水平方向に延びる支持板12と、この支持板12に上方から挿通されて支持された複数の連結管13と、を有している。連結管13は上下方向に延びる筒状をなし、水平方向に配列されている。各連結管13には、炉心構成要素14が1つずつ配置されている(
図2参照)。
【0028】
上部構造物5は、例えば炉心構成要素14である制御棒を駆動するための駆動装置等を含む。この上部構造物5は、炉心3の上方に配置され、遮蔽プラグ7を上下方向に貫通するとともに、該遮蔽プラグ7によって原子炉容器2に対して固定される。
【0029】
次に、上記の支持構造4及び炉心構成要素14の構成について詳述する。
支持構造4は、水平方向に広がる支持板12と、支持板12によって支持される複数の連結管13と、を有している。支持板12は、軸線Ac方向(上下方向)に間隔をあけて配列された上側板部24及び下側板部25を有している(
図1参照)。上側板部24と下側板部25との間の空間には冷却材Cの一部が流通する。
【0030】
連結管13は、上側板部24及び下側板部25の挿入開孔26に上側から挿入されることで支持されている。本実施形態に係る連結管13は、筒状部28と、連結管側段差部30と、を有している。
筒状部28は、支持構造4に挿入される部位であり、連結管13に燃料棒15が挿入されている状態において、筒状部28の内周面とエントランスノズル16の外周面との間には間隙31が形成されている。この間隙31は、軸線Ac方向から見て円環状をなすとともに、当該軸線Ac方向にわたって広がる空間であり、エントランスノズル16の流入開孔20が配置されている。
【0031】
筒状部28における軸線Ac方向の中央部には、上側板部24と下側板部25との間の空間を臨む開孔32が形成されている。開孔32を経て、上側板部24と下側板部25との間の空間内を流通する冷却材Cの一部が間隙31内に取り込まれる。
【0032】
連結管側段差部30は、上側板部24の上側の面と当接する円環状のフランジ部36と、このフランジ部36の内周側に一体に設けられた段差部本体37と、を有している。
フランジ部36は挿入開孔26の開孔寸法よりも大きい。フランジ部36が上側板部24に対して上側から当接することで、当該連結管13が下方へ脱落することなく支持される。
【0033】
段差部本体37は、燃料棒15のノズル側段差部18を上方から当接させて支持する部位であり、燃料棒15におけるノズル側段差部18の外表面23に対して外周側から及び下方から対向する対向面38を有している。本実施形態では対向面38はノズル側段差部18の外表面23に対応して上方に向かうに従って拡径した略円錐台の外周面の形状をなしている。ここで対向面38は、略円錐台の外周面の形状をなす場合に限らず、球面状,
曲面状等をなしていてもよい。
【0034】
炉心構成要素14としての燃料棒15は、上下方向に延びる軸線Acを中心とする円柱状又は角柱状をなしている。具体的には燃料棒15は、水平方向の形状が相対的に小さいエントランスノズル16(小径部)と、このエントランスノズル16よりも上方に位置し、水平方向の形状が相対的に大きな断面形状を有する燃料棒本体17(大径部)と、エントランスノズル16および燃料棒本体17を上下方向に接続するノズル側段差部18(形状変化部)と、を有している。
燃料棒15の内側の領域は、上下方向にわたって中空に形成されている。当該中空部は、外部から流入した冷却材Cが下方から上方に向かって流通させる冷却材流路19の一部を構成している。
【0035】
エントランスノズル16は、燃料棒15の下端側に設けられ、連結管13に挿入されることで支持構造4内に挿入される部位である。エントランスノズル16には、周囲を流通する液体としての冷却材Cを冷却材流路19に取り入れるための複数の流入開孔20が形成されている。エントランスノズル16の下側の端部は、封止部材21によって封止されている。
燃料棒本体17は、核燃料等を内蔵することで、燃料棒15の主要部をなす部材である。燃料棒本体17は、軸線Ac方向から見て六角形の断面形状を有している。燃料棒本体17の内側の空間が冷却材流路19の一部を構成している。
【0036】
ノズル側段差部18は、エントランスノズル16と燃料棒本体17との間に位置し、エントランスノズル16と燃料棒本体17とを軸線Acに沿って同軸に連結する部位である。より具体的には、ノズル側段差部18は、エントランスノズル16側から燃料棒本体17側に向かうにしたがって次第に拡径する外表面23を有している。外表面23は円錐面状、球面状、曲面状等をなしていてもよい。
【0037】
燃料棒15のノズル側段差部18は、収容部40と、収容部40に収容された進退部41と、進退部41を付勢するように設けられた付勢部42と、進退部41の進退で減衰力を生じるように設けた減衰部43と、を備えている。
収容部40は、上下方向に延びる軸線Acに沿って燃料棒15に設けられた中空部位であり、ノズル側段差部18の連結管13と対向する外表面に開口して設けられている。収容部40は単数又は複数の孔としてもよいが、本実施形態では弧状又は環状に設けた間隙により構成されている。この収容部40では水平方向の断面形状が軸線Acに沿って略一定形状に連続するのがよい。
【0038】
本実施形態に係る収容部40は、ノズル側段差部18の外表面23周囲の空間、即ち、支持構造4上方における燃料棒15の外側周囲の空間と、燃料棒15内部の冷却材流路19と、の間を上下に連通している。
この収容部40は下端側の下部収容部44と上端側の上部収容部45とを有する。上部収容部45は下部収容部44より太く形成され、上端には冷却材流路19に開口した連通開口部46が設けられている。
【0039】
進退部41は、上下方向に延びる軸線Acに沿う形状を有し、収容部40に下方に向かって突没可能に収容されている。進退部41は、下端側の下部進退部47と上端側となる上部進退部48とを有している。
下部進退部47は収容部40の下部収容部44に応じた水平断面形状を有している。下部進退部47が下部収容部44よりも細く形成されることで、下部進退部47と下部収容部44との間に上下方向に延びる間隙からなる抵抗流路49が形成されている。
進退部41が上方に没した状態、即ち、最も上部に配置された状態で下部進退部47の上端側が上部収容部45内に配置され、下部進退部47と上部収容部45との間に貯留部50が形成される。
【0040】
下部進退部47の下端面には、下向きに突出した球面形状の球面座51が設けられている。球面座51は連結管13の対向面38と当接している。進退部41が最も上部に配置された状態で下部進退部47の下端面がノズル側段差部18の外表面23と略連続する位置に配置されている。
【0041】
進退部41の上部進退部48は、収容部40の上部収容部45に対応した水平断面形状を有して板状に形成されている。上部進退部48が上部収容部45に収容されることで、上部進退部48より下方に形成される貯留部50の上端が閉じられている。
上部進退部48と上部収容部45との間には微小な間隙が設けられている。
【0042】
付勢部42は、収容部40内に収容された進退部41を下方へ付勢する構造を有している。即ち本実施形態に係る付勢部42は、連通開口部46と、進退部41の上部進退部48に設けられた受圧部52を用いて構成されている。上部進退部48の上面に設けられた受圧部52には、後述するメカニズムによって燃料棒本体17内の冷却材流路19から圧力が負荷されている。また、連通開口部46は上部進退部48と上部収容部45との間に設けられた微小な間隙である。
【0043】
減衰部43は、進退部41の進退速度に応じて進退部41に受ける運動エネルギーに対する減衰力を発生する構造を有している。即ち本実施形態に係る減衰部43は、収容部40と進退部41との間に形成された抵抗流路49と貯留部50とを用いて構成されている。
【0044】
抵抗流路49は収容部40と進退部41との間の間隙に設けられているので、一端が支持構造4の上方における燃料棒15の外側周囲の空間に開口し、他端が貯留部50に開口している。抵抗流路49は、収容部40の進退位置に拘わらず、下部収容部44の上下方向の長さを有する。
【0045】
上部進退部48により貯留部50の上端が閉じられているため、進退部41の進退により貯留部50の容積が増減する。貯留部50の容積の増減により抵抗流路49及び連通開口部46を介して貯留部50に液体が流入又は流出する構成である。
減衰部43では、抵抗流路49を介して貯留部50に液体が流入又は流出する際の流動抵抗により進退部41が受ける運動エネルギーを減衰するように構成されている。また連通開口部46でも運動エネルギーが減衰されるようになっている。
【0046】
以上のような原子炉1では、
図3に示す通常の稼働時に炉心構成要素が支持構造に着座した状態では、炉心3(燃料棒15)での核分裂反応により、熱が発生する。さらに、冷却材Cが上記の冷却材入口配管8から原子炉容器2内の下部に供給された後、下方から上方に向かって流れる。冷却材Cは連結管13を経て燃料棒15の内部を通過しながら炉心3の熱を吸収する。高温となった冷却材Cは、冷却材出口配管9から原子炉容器2の外部に送出される。
【0047】
そして、収容部40の上部収容部45と進退部41の上部進退部48との間の間隙を通して、冷却材流路19の冷却材Cが貯留部50に流入し、貯留部50から抵抗流路49を通して燃料棒15の周囲に流出している。上部収容部45と上部進退部48との間の狭い間隙(連通開口部46)から貯留部50に冷却材Cが流入するため、その際の圧力損失により貯留部50内の液体は冷却材流路19より低圧に保たれている。
【0048】
よって貯留部50内の冷却材Cと冷却材流路19内の冷却材Cとの間の圧力差によって、付勢部42では受圧部52に下方へ向かう力が常時負荷されることで、進退部41が下方に付勢されている。
【0049】
進退部41が下方に付勢されることで、下部進退部47に設けられた球面座51は、連結管13の略円錐形状の対向面38に加圧状態で線接触する。冷却材流路19の圧力が受圧部52に負荷されて進退部41が下方に付勢されているため、その付勢力により燃料棒15が支持構造4に支持される。
【0050】
地震などにより上下方向の振動が原子炉1に負荷され、
図4に示すように、燃料棒15が支持構造4から上方へ変位し、例えば跳び上がると、冷却材流路19と貯留部50との圧力差により、進退部41がノズル側段差部18から下方へ突出する。
【0051】
その後、
図5及び
図6に示すように上方へ変位した燃料棒15が下方の支持構造4へ向かって変位し、例えば支持構造4上へ落下すると、減衰部43ではノズル側段差部18から下方へ突出した進退部41が先に支持構造4の連結管13に上方から当接し、収容部40へ収容される。
【0052】
この際、燃料棒15が支持構造4上へ変位して進退部41が没して後退することで、貯留部50の容積は増大し、抵抗流路49を流動して貯留部50に冷却材Cを吸引する。また抵抗流路49では進退部41の進退速度に対応して液体が流動して流動抵抗が生じるため、進退部41の進退速度に応じて進退部41の移動抵抗が生じる。またこの際には抵抗流路49及び連通開口部46を流動する冷却材Cの流速が急激に増加するため、進退部41がダッシュポットとして機能し進退部41が支持構造4から受ける運動エネルギーに対する減衰力が発生し、上方へ変位した燃料棒15が支持構造4上に変位する際の衝撃を緩和できる。
【0053】
以上のような原子炉1によれば、収容部40に突没可能に収容された進退部41が、連結管13に上方から当接することで減衰力を発生しつつ没するように構成されていることで、上下方向の振動が負荷されても燃料棒15が支持構造4から跳び上がることを抑制できる。
【0054】
即ち、本実施形態の原子炉1では、付勢部42により、冷却材Cの圧力差で進退部41が下方に付勢されるので、燃料棒15が支持構造4から上方に変位した際、ノズル側段差部18から進退部41を確実に突出させることができる。そして進退部41が再び支持構造4に接触して退避することにより、進退部41をいわゆるダッシュポットとして機能し、進退部41の進退により抵抗流路49を流れる液体の流動抵抗により、進退部41の移動速度に応じた減衰力を発生できる。
【0055】
よって進退部41を下方に付勢するための機械部材を別途設置する必要がなく、減衰部43を収容部40に設けるので燃料棒15の跳び上がりを抑制する構造を収容部40に集約し易い。構造を簡素化しつつ上下方向の振動が原子炉1に負荷された際に燃料棒15が支持構造4から跳び上がることを確実に抑制できる。
【0056】
そして、このような収容部40及び進退部41が燃料棒15に設けられているので、支持構造4の連結管13などには、燃料棒15の跳び上がりを抑制するための構造を設ける必要がなく、連結管13の構造の自由度が確保できる。例えば既存の原子炉の支持構造4や連結管13をそのまま利用して、燃料棒15の跳び上がりを抑制するための構造を実現することも可能である。
従ってこの実施形態の原子炉1では、上下方向の振動による燃料棒15の跳び上がりを抑制できる構造を容易に設けることができる。
【0057】
なお、上記の実施形態では、炉心構成要素14としての燃料棒15を支持構造4によって支持する場合について説明した。しかしながら、炉心構成要素14としては燃料棒15の他に、制御棒の上下動を案内する制御棒案内管を用いることも可能である。このような構成であっても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、
図7から
図10を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
第二実施形態の原子炉1Aでは、炉心構成要素14の構成が異なる他は、第一実施形態と同様である。
【0059】
第二実施形態に係る原子炉1Aの炉心構成要素14である燃料棒15では、燃料棒15のノズル側段差部18に、収容部40Aと、収容部40Aに収容された進退部41Aと、進退部41を付勢するように設けられた付勢部42Aと、進退部41の進退で減衰力を生じるように設けた減衰部43Aと、を備えている。
【0060】
第二実施形態では、収容部40Aが下向きに開口した有底の溝形状に設けられている。収容部40Aの水平断面形状は上下方向に延びる軸線Acに沿って略一定に形成されている。
進退部41Aは、上下方向に延びる軸線Acに沿う形状を有し、収容部40Aに下方に向かって突没可能に収容されている。
【0061】
進退部41Aが上方に没した状態で進退部41Aの上端と収容部40Aの上端の底部との間に貯留部50Aが設けられている。収容部40A内の貯留部50Aに配置されたバネ等の弾性部材53により付勢部42Aが構成されている。
【0062】
収容部40Aの内側内周側面と進退部41Aの内側外周側面との間、収容部40Aの外側内周側面と進退部41Aの外側外周側面との間の一方又は双方に上下方向に延びる間隙からなる抵抗流路49Aが設けられている。抵抗流路49Aはノズル側段差部18の外表面23周囲の空間と貯留部50Aとの間を上下に連通している。
【0063】
このような第二実施形態の原子炉1Aでは、
図7に示す炉心構成要素が支持構造に着座した状態の通常の稼働時には、弾性部材53により進退部41Aが下方に付勢されている。また貯留部50Aには冷却材Cからなる液体が充満している。
地震などにより上下方向の振動が原子炉1に負荷され、
図8に示すように、燃料棒15が支持構造4から上方へ変位すると、弾性部材53の付勢力により、進退部41Aがノズル側段差部18から下方へ突出する。
これに伴い、貯留部50Aの容積が増大して、例えばノズル側段差部18の周囲の空間や冷却材流路19から冷却材Cが流入する。
【0064】
そして
図9及び
図10に示すように、上方へ変位した燃料棒15が下方の支持構造4へ向かって変位すると、減衰部43Aではノズル側段差部18から下方へ突出した進退部41Aが先に支持構造4の連結管13に上方から当接して収容部40Aへ没し、収容部40Aに収容される。
【0065】
燃料棒15が支持構造4上へ変位して進退部41が没して後退することで、貯留部50Aの容積が減少し、抵抗流路49Aを流動して貯留部50Aから冷却材Cを流出する。抵抗流路49Aでは、冷却材Cの流速が急激に増大し、進退部41Aの進退速度に対応して液体が流動して流動抵抗が生じるため、進退部41Aの進退速度に応じて進退部41Aの移動抵抗が生じる。
これにより進退部41Aが受ける運動エネルギーに対する減衰力が発生し、上方へ変位した燃料棒15が支持構造4上に変位する際の衝撃を減衰できる。その結果、地震等により上下方向の振動が負荷されても燃料棒15の跳び上がりを抑制することができる。
【0066】
この第二実施形態の原子炉1Aにおいても、第一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
即ち、収容部40Aに突没可能に収容された進退部41Aが、連結管13に上方から当接することで減衰力を発生しつつ没するように構成され、支持構造4の連結管13などに燃料棒15の跳び上がりを抑制するための構造を別途設ける必要がない。そのため、連結管13の構造の自由度が確保しつつ燃料棒15が支持構造4から跳び上がることを抑制できる。
【0067】
また進退部41Aの進退で容積が増減する貯留部50Aと、貯留部50Aに冷却材Cを流入及び流出させる抵抗流路49Aと、を有する減衰部43Aを設けているので、冷却材Cの流動抵抗により進退部41Aの進退速度に応じた減衰力を発生できる。
さらに弾性部材53である付勢部42Aにより、進退部41Aが下方に付勢されているので、支持構造4から上方に変位した際、ノズル側段差部18から進退部41Aを確実に突出させることができる。
【0068】
しかも、第二実施形態の原子炉1Aでは、有底穴形状の収容部40A内に進退部41A及び付勢部42Aの弾性部材53が配置されると共に貯留部50A及び抵抗流路49Aが設けられていても、燃料棒15の跳び上がりを抑制するための構造を収容部40Aに集約できる。
【0069】
ここで、本実施形態では、収容部40Aの上面と冷却材流路19とを連通する連通路(例えば第一実施形態の連通開口部46等)を設けてもよい。これにより、第一実施形態と同様に冷却材Cの圧力差によっても、進退部41Aを下方に付勢することができる。
【0070】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について、
図11を参照して説明する。なお、上記第二実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
第三実施形態の原子炉1Bでは、連結管13の上端面の構成が異なる他は、第二実施形態と同様である。
図11に示すように、第三実施形態の原子炉1Bでは、連結管13の連結管側段差部30に上方に突出した球面座54(突出部)が設けられている。
球面座54は軸線Acを中心とした環状に設けてられており、ノズル側段差部18における収容部40A及び進退部41Aとは異なる位置に対向して配置されている。
【0071】
このような第三実施形態の原子炉1Bにおいても第二実施形態と同様の作用効果が得られる。
さらに本実施形態では、炉心構成要素14が支持構造4に着座した状態において、球面座54がノズル側段差部18に当接することで、燃料棒15と連結管13との上下方向の位置を規制することができる。
【0072】
よって炉心構成要素14が支持構造4に着座した状態において、弾性部材53が振動し、着座状態が不安定となることを回避できる。
また炉心構成要素14が支持構造4に着座した状態において、例えば弾性部材53を過剰に圧縮するようなことを防止でき、進退部41Aへの支持構造4からの荷重が直接作用することも回避できる。
ここで球面座54は連結管13側に設けられる場合に限定されず、ノズル側段差部18側に設けられていてもよい。即ち、球面座54は炉心構成要素14に収容部40とは異なる位置で連結管13(連結管側段差部30)に対向して、連結管13に上方から当接可能に設けられていてもよい。この場合であっても支持構造4の着座状態が不安定となることを回避でき、弾性部材53を過剰に圧縮するようなことを防止できる。
【0073】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について、
図12を参照して説明する。なお、上記第二実施形態及び第三実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
第四実施形態の原子炉1Cでは、進退部41の構成が異なる他は、第二実施形態と同様である。
図12に示すように、第四実施形態の原子炉1Cでは、進退部41Cの上端面から下方に凹むことで弾性部材53を収容する凹形状の格納部55を設けている。これにより進退部41Cの上端面には、径方向外側及び内側の端部の位置で上方に突出するように突出縁部56が設けられている。軸線Acに沿う断面を見た時に、径方向外側及び内側の各々の突出縁部56は、上方に向かって徐々に肉厚が薄くなっていく。即ち格納部55は軸線Acに沿う断面を見た時に、上方に向かって径方向の寸法が徐々に大きくなる断面台形状をなしている。ただし格納部55はこのような形状に限定されず、単に弾性部材53を収容可能な形状をなしていればよい。
【0074】
このような第四実施形態の原子炉1Cにおいても第二実施形態と同様の作用効果が得られる。
特に本実施形態では、進退部41Cの上端面に格納部55が設けられているので、炉心構成要素14が支持構造4に着座した状態において、突出縁部56の上端が有底形状の収容部40Aの上端部に当接することで、弾性部材53である付勢部42Aを格納部55内に収容できる。
そのため炉心構成要素が支持構造に着座した状態において、弾性部材53を過剰に圧縮するようなことを防止できる。
【0075】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して説明した。なお、上記の各実施形態は一例に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更を加えることが可能である。
例えば各実施形態では、収容部40と進退部41(41A、41C)との間の間隙に付勢部42(42A)や減衰部43(43A)を設けた例について説明したが、特に限定されるものではなく、収容部40内に収容された進退部41に付勢力や減衰力を与えるように構成することも可能である。