(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の払拭面上に対向配置され、該払拭面上に設定された下反転位置と上反転位置との間で往復払拭動作を行うワイパブレードと、前記ワイパブレードを前記払拭面上にて往復動させるための電動モータと、を備え、
前記ワイパブレードの動作形態として、払拭動作速度を異にする高速作動モードと低速作動モードを有し、
前記高速作動モードにおける前記上反転位置は、前記低速作動モードにおける前記上反転位置よりも前記下反転位置寄りに設定されてなる対向払拭型ワイパ装置の制御装置であって、
前記動作形態を切り替えるワイパスイッチの状態を示すスイッチ情報が入力されるスイッチ情報入力部と、
該スイッチ情報入力時における現在のワイパブレード動作状態を判定するワイパ状態判定部と、
前記ワイパブレードの現在位置を示すブレード位置情報を算出するブレード位置情報算出部と、
前記ワイパブレードの払拭動作中に、前記ワイパブレードの動作形態が前記高速作動モードから前記低速作動モードに切り替えられた場合、動作形態切り替え後に到達する反転位置からの前記ワイパブレードの反転動作において、先行側の前記ワイパブレードの動作開始後、後続側の前記ワイパブレードを当該反転位置にて待機させ、所定期間経過後に該後続側の前記ワイパブレードの動作を開始させる始動遅延制御の実施を指示する遅延指示部と、
前記スイッチ情報や現在のワイパブレード動作状態、ブレード位置情報に基づいて、前記電動モータの制御形態を決定するモータ制御決定部と、
前記モータ制御決定部と前記遅延指示部の指示の下、前記電動モータの動作を制御するモータ動作制御部と、を有することを特徴とするワイパ制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような対向払拭型のワイパ装置では、往路(下反転位置→上反転位置)動作中に、動作モードがHIからLOに切り替わると、ワイパブレードの動作は、復路(上反転位置→下反転位置)からLO作動に切り替わる。つまり、この場合、ワイパブレード51a,51bは、往路中はHI作動モードにて制御され、上反転位置UHにて動作方向が切り替えられると、その後はLO作動モードにて復路動作を行う。その結果、DR側とAS側の各ワイパブレード51a,51bは、通常のLO作動時(上反転位置ULにて反転)よりも下反転位置に近い場所(上反転位置UH)から復路動作を開始する。
【0006】
ところが、対向払拭型のワイパ装置は、左右のワイパブレードの動作範囲が広い範囲で重なっており、しかも、DR側とAS側の往復動作が同じタイミングで行われる。前述のように、往路HI作動中に速度切替指示があった場合、復路動作は上反転位置UHから開始され、通常のLO作動時よりも両ブレード間の距離が近い状態で作動する。このため、先行するAS側ワイパブレード51bの動作が、ガラス面の負荷によって遅れると、ブレード間距離が近く作動距離も短いため、ブレード動作の補正制御が間に合わず、払拭動作中にブレード同士が干渉してしまうおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、対向払拭型ワイパ装置にて、HI作動中に速度切替指示があった場合、その後のワイパ動作においてブレード同士が干渉するのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワイパ制御方法は、車両の払拭面上に対向配置され、該払拭面上に設定された下反転位置と上反転位置との間で往復払拭動作を行うワイパブレードを備え、前記ワイパブレードの動作形態として、払拭動作速度を異にする高速作動モードと低速作動モードを有し、前記高速作動モードにおける前記上反転位置は、前記低速作動モードにおける前記上反転位置よりも前記下反転位置寄りに設定されてなる対向払拭型ワイパ装置の制御方法であって、前記ワイパブレードの払拭動作中に、前記ワイパブレードの動作形態が前記高速作動モードから前記低速作動モードに切り替えられた場合、動作形態切り替え後に到達する反転位置からの前記ワイパブレードの反転動作において、先行側の前記ワイパブレードの動作開始後、後続側の前記ワイパブレードを当該反転位置にて待機させ、所定期間経過後に該後続側の前記ワイパブレードの動作を開始させる始動遅延制御を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明にあっては、ワイパブレードの払拭動作中にワイパブレードの動作形態が高速作動モードから低速作動モードに切り替えられた場合、その後の反転動作において、先行側のワイパブレードの動作開始後、後続側のワイパブレードを反転位置にて待機させ、所定期間経過後に該後続側のワイパブレードの動作を開始させる始動遅延制御を行うので、反転後のブレード間距離を従来のワイパシステムよりも大きく確保できる。このため、先行側のワイパブレードの動作が遅れても、ブレード間距離が大きいため両ブレードが干渉しにくく、また、ブレード動作を補正制御するための時間も確保しやすくなり、反転後の払拭動作中におけるブレード同士の干渉を抑えられる。
【0010】
前記ワイパ制御方法において、前記後続側の前記ワイパブレードを、先行側の前記ワイパブレードの動作開始後、該先行側の前記ワイパブレードとの角度差が所定値以上となったとき動作を開始させるようにしても良い。また、前記始動遅延制御を、前記ワイパブレードが下反転位置から上反転位置に向かって作動する往路払拭動作において、前記ワイパブレードの動作形態が前記高速作動モードから前記低速作動モードに切り替えられた場合に実施するようにしても良い。
【0011】
本発明のワイパ制御装置は、車両の払拭面上に対向配置され、該払拭面上に設定された下反転位置と上反転位置との間で往復払拭動作を行うワイパブレードと、前記ワイパブレードを前記払拭面上にて往復動させるための電動モータと、を備え、前記ワイパブレードの動作形態として、払拭動作速度を異にする高速作動モードと低速作動モードを有し、前記高速作動モードにおける前記上反転位置は、前記低速作動モードにおける前記上反転位置よりも前記下反転位置寄りに設定されてなる対向払拭型ワイパ装置の制御装置であって、前記動作形態を切り替えるワイパスイッチの状態を示すスイッチ情報が入力されるスイッチ情報入力部と、該スイッチ情報入力時における現在のワイパブレード動作状態を判定するワイパ状態判定部と、前記ワイパブレードの現在位置を示すブレード位置情報を算出するブレード位置情報算出部と、前記ワイパブレードの払拭動作中に、前記ワイパブレードの動作形態が前記高速作動モードから前記低速作動モードに切り替えられた場合、動作形態切り替え後に到達する反転位置からの前記ワイパブレードの反転動作において、先行側の前記ワイパブレードの動作開始後、後続側の前記ワイパブレードを当該反転位置にて待機させ、所定期間経過後に該後続側の前記ワイパブレードの動作を開始させる始動遅延制御の実施を指示する遅延指示部と、前記スイッチ情報や現在のワイパブレード動作状態、ブレード位置情報に基づいて、前記電動モータの制御形態を決定するモータ制御決定部と、前記モータ制御決定部と前記遅延指示部の指示の下、前記電動モータの動作を制御するモータ動作制御部と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、ワイパ制御装置に、ワイパブレードの払拭動作中にワイパブレードの動作形態が高速作動モードから低速作動モードに切り替えられた場合、その後の反転動作において、先行側のワイパブレードの動作開始後、後続側のワイパブレードを反転位置にて待機させ、所定期間経過後に該後続側のワイパブレードの動作を開始させる始動遅延制御を行わせる遅延指示部を設けたので、反転後のブレード間距離を従来のシステムよりも大きく確保できる。このため、先行側のワイパブレードの動作が遅れても、ブレード間距離が大きいため両ブレードが干渉しにくく、また、ブレード動作を補正制御するための時間も確保しやすくなり、反転後の払拭動作中におけるブレード同士の干渉を抑えられる。
【0013】
前記ワイパ制御装置において、前記モータ制御決定部は、先行側の前記ワイパブレードの動作開始後、該先行側の前記ワイパブレードと前記後続側の前記ワイパブレードとの間の角度差が所定値以上となったとき前記後続側の前記ワイパブレードの動作を開始させるようにしても良い。また、前記始動遅延制御を、前記ワイパブレードが下反転位置から上反転位置に向かって作動する往路払拭動作において、前記ワイパブレードの動作形態が前記高速作動モードから前記低速作動モードに切り替えられた場合に実施するようにしても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明のワイパ制御方法は、ワイパブレードの払拭動作中に、ワイパブレードの動作形態が高速作動モードから低速作動モードに切り替えられた場合、その後の反転動作において、先行側のワイパブレードの動作開始後、後続側のワイパブレードを反転位置にて待機させ、所定期間経過後に該後続側のワイパブレードの動作を開始させる始動遅延制御を行うようにしたので、反転後のブレード間距離を従来のワイパシステムよりも大きく確保することが可能となる。このため、先行側のワイパブレードの動作が遅れても、ブレード間距離が大きいため両ブレードが干渉しにくく、また、ブレード動作を補正制御するための時間も確保しやすくなり、反転後の払拭動作中におけるブレード同士の干渉の可能性を低く抑えることが可能となる。
【0015】
本発明のワイパ制御装置は、ワイパブレードの払拭動作中にワイパブレードの動作形態が高速作動モードから低速作動モードに切り替えられた場合、その後の反転動作において、先行側のワイパブレードの動作開始後、後続側のワイパブレードを反転位置にて待機させ、所定期間経過後に該後続側のワイパブレードの動作を開始させる始動遅延制御を行わせる遅延指示部を設けたので、反転後のブレード間距離を従来のワイパシステムよりも大きく確保することが可能となる。このため、先行側のワイパブレードの動作が遅れても、ブレード間距離が大きいため両ブレードが干渉しにくく、また、ブレード動作を補正制御するための時間も確保しやすくなり、反転後の払拭動作中におけるブレード同士の干渉の可能性を低く抑えることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態であるワイパ制御方法・装置が適用されるワイパシステムの全体構成を示す説明図である。
図1のワイパシステムは対向払拭型の構成となっており、互いに向かい合う形で上反転位置と下反転位置との間を往復動するワイパブレード1a,1b(以下、ブレード1a,1bと略記する)を有している。なお、
図1のワイパシステムにおける符号中の「a,b」は、それぞれ運転席側と助手席側に関連する部材や部分等であることを示している。
【0018】
ブレード1a,1bは、それぞれワイパアーム2a,2b(以下、アーム2a,2bと略記する)の一端側に取り付けられている。アーム2a,2bには、図示しないばね部材等が内装されており、ブレード1a,1bは、このばね部材等によってウインドシールド3に弾性的に押し付けられている。アーム2a,2bの他端側は、車体のウインドシールド左右両端側に配置されたワイパ軸(ピボット軸)4a,4bにそれぞれ取り付けられている。ワイパ軸4a,4bは、電動モータ5a,5b(以下、モータ5a,5bと略記する)によって回転駆動される。アーム2a,2bはワイパ軸4a,4bの回転に伴って揺動し、これにより、ブレード1a,1bは、ウインドシールド3上にて往復払拭動作を行う。
【0019】
図1のワイパシステムにおいても、ブレード1a,1bの動作形態として、高速(HI)作動と低速(LO)作動の2つの速度モードが設定されている。前述のように、ワイパブレード1a,1bは、上反転位置と下反転位置との間を往復動するが、HI作動時とLO作動時とでは異なる上反転位置が設定されている。この場合、下反転位置La,Lbは速度モードによって変動しないが、上反転位置には、HI作動時の上反転位置UHa,UHbと、LO作動時の上反転位置ULa,ULbが設定されている。HI作動時の上反転位置UHa,UHbは、LO作動時の上反転位置ULa,ULbよりも下反転位置La,Lb側に設定されている。
【0020】
モータ5a,5bは、モータ本体6と減速機構7とによって構成されており、ワイパ制御装置10a,10bによるPWM duty制御によって正逆回転する。モータ5aを駆動制御するワイパ制御装置10aは、車両側のコントローラであるECU11と車載LAN12を介して接続されている。ECU11からワイパ制御装置10aに対しては、ワイパスイッチのON/OFFや、LO,HI,INT(間欠作動)などのスイッチ情報やエンジン起動情報などがLAN12を介して入力される。ワイパ制御装置10a,10b同士の間は通信線13にて接続されている。
【0021】
モータ5a,5bは、ブレード1a,1bの位置情報に基づいてフィードバック制御(PI制御)される。ここでは、ブレード1a,1bの位置に対応して、両ブレードの目標速度が設定されており、予めMAP等の形でワイパ制御装置10a,10b内に格納されている。モータ5a,5bには、フィードバック制御を行うため、モータ軸14に多極着磁マグネット15、ケースフレーム16内に相対位置検出用のホールIC17が設けられており、モータ軸14の回転に伴ってパルス信号が出力される。また、ワイパ軸4a,4bが取り付けられた減速ギヤ18には絶対位置検出用マグネット19が取り付けられており、ケースフレーム16にはこのマグネットに対向してホールIC20が設けられている。
【0022】
絶対位置検出用マグネット19は、ブレード1a,1bが基準位置(例えば、上反転位置ULa,ULbと下反転位置La,Lbの中間地点)に来たときホールIC20と対向し、ワイパ制御装置10a,10bは、その出力信号により、ブレード1a,1bの絶対位置を認識する。また、ワイパ制御装置10a,10bは、ホールIC17からのパルス信号を用いて、モータ軸14の回転数や回転速度を把握し、ブレード1a,1bの移動速度や、基準位置からの角度(現在位置)を検出する。そして、現在のブレード1a,1bの速度と、当該位置におけるブレード1a,1bの目標速度とを比較し、目標速度と現在速度との差に応じて、適宜、モータ5a,5bを制御する。その際、両モータ5a,5bの制御情報は、通信線13を介してワイパ制御装置10a,10bの間で交換され、モータ5a,5bは、双方のブレードの位置関係に基づいて同期制御される。
【0023】
このようなワイパシステムにおいても、往路動作中に、動作モードがHIからLOに切り替わると、ワイパブレードの動作は、復路からLO作動に切り替わる。すなわち、ワイパ制御装置10a,10bは、往路HI作動中にECU11から速度切替指示があった場合、復路動作を通常のLO作動時よりも下反転位置に近い上反転位置UHa,UHbから開始する。前述のように、従来のワイパシステムでは、この際、AS側のブレード1bの動作がガラス面の負荷によって遅れると、ブレード間距離が近く作動距離も短いため、払拭動作中にブレード同士が干渉してしまうおそれがある。
【0024】
そこで、当該ワイパシステムにおいては、往路動作中に動作モードがHIからLOに切り替わった場合、AS側のブレード1bの動作開始を遅らせ、DR側のブレード1aとの間の距離が所定値以上となった時点で動作させることにより、ブレード同士の干渉を抑えている。
図2は、ワイパ制御装置10a,10bにおいて、このような遅延始動制御を行うための制御系の構成を示すブロック図、
図3は、動作モード切替時における遅延始動制御の流れを示すフローチャートである。なお、ワイパ制御装置10a,10bは同様の構成のため、ワイパ制御装置10aのブロック図のみを示す。
【0025】
図2に示すように、ワイパ制御装置10a(前述のように10bも同様)には、ECU11から、動作形態を切り替えるワイパスイッチの状態を示すワイパスイッチ情報が入力されるスイッチ情報入力部21と、スイッチ情報入力時における現在のワイパ動作の状態(LO,HI,INT)を判定するワイパ状態判定部22が設けられている。また、ワイパ制御装置10aには、ホールIC20からの絶対位置信号と、ホールIC17からのパルス信号に基づいて、ブレード1a,1bの現在位置や移動速度を示すブレード位置情報を算出するブレード位置情報算出部23が設けられている。
【0026】
スイッチ情報入力部21、ワイパ状態判定部22、ブレード位置情報算出部23の後段には、スイッチ情報や現在のワイパ動作、ブレード位置に基づいて、モータ5a,5b(ブレード1a,1b)の制御形態を決定するモータ制御決定部24が設けられている。さらに、ワイパ制御装置10aには、前述の遅延始動制御の実施を指示する遅延指示部25と、モータ制御決定部24や遅延指示部25の指示の下、モータ5a,5bの動作を制御するモータ動作制御部26が設けられている。ワイパ制御装置10a,10bの各モータ動作制御部26は、通信線13によって接続されている。
【0027】
図3は、遅延始動制御の流れを示すフローチャートである。
図3に示すように、ワイパ制御装置10a,10bでは、ワイパスイッチが切り替えられると(ステップS1)、スイッチ情報入力部21にてそれを把握し、ワイパ状態判定部22にて、切替パターンが「HI→LO」であるかどうかが判断される(ステップS2)。このとき、切り替えパターンが「HI→LO」でない場合は、モータ制御決定部24は、遅延始動制御は行わない旨決定し、当該ルーチンを抜ける。これに対し、「HI→LO」の場合は、ステップS3に進み、往路での切り替えか否かが判断される。この際、切り替えが「往路」にて行われた場合は、モータ制御決定部24は遅延指示部25に指示を行い、ステップS4にて「始動遅延フラグ」をONさせた上で、ステップS5に進む。一方、切り替えが「復路」にて行われた場合は、遅延始動制御は行わないため、「始動遅延フラグ」はONせず、ステップS5に進む。
【0028】
ステップS5では、ブレード位置情報算出部23により、ブレード1a,1bが、上反転位置UHa,UHb又は下反転位置La,Lbに到達しているかどうかが判断され、各位置に到達した場合は、ステップS6に進み、「始動遅延フラグ」の有無が判断される。このとき、「始動遅延フラグ」がない場合(始動遅延フラグ:OFF)は、ステップS7に進み、DR側・AS側のモータ5a,5bを共にONさせ、ブレード1a,1bを共に反転動作させる。すなわち、復路動作中に「HI→LO」となった場合は、下反転位置La,Lbは動作モードに関わらず一定であるため、モータ制御決定部24は、特に遅延始動制御は行わず、下反転位置La,LbからLO作動モードにて動作を開始させる。
【0029】
これに対し、「始動遅延フラグ」が存在する場合(始動遅延フラグ:ON)、ステップS8に進む。ステップS8において、モータ制御決定部24は、先行側となるAS側モータ5bのみを作動させてブレード1bのみを反転動作させる一方、後続側となるDR側モータ5aは停止状態とし、ブレード1aの動作を遅延(待機)させる。その後、DR側(後続側)を遅延待機させつつ、ステップS9にて、ブレード位置情報算出部23からのブレード位置情報に基づいて両ブレードの角度差を判定する。そして、角度差が所定値以上(例えば、20°以上)となったとき、ステップS10に進み、モータ制御決定部24は、遅延指示部25に働きかけて「始動遅延フラグ」をOFFした後、ステップS11に進んでDR側モータ5aの作動を許可し、待機していたブレード1aの動作を開始させてルーチンを抜ける。このとき、ブレード1aは、既に所定値以上の間隔をあけて先行しており、従来の制御形態に比して、両ブレード1a,1b間の角度差を大きく確保できる。
【0030】
図4は、遅延始動制御時のブレード位置関係やモータ動作を示すタイムチャートである。
図4に示すように、「始動遅延フラグ」が立っているとき(
図4の矢示P1)、上反転位置UHbにてAS側モータ5bが作動し、ブレード1bが反転作動したとき、DR側モータ5aは停止状態となり、上反転位置UHaにてブレード1aは遅延待機する(
図4のX部:
図3のS6→S8)。その後、両ブレード1a,1b間の角度差が所定値(
図4の矢示Q)以上となったとき、「始動遅延フラグ」をOFFし(
図4の矢示P2:
図3のS9→S10)、DR側モータ5aを作動させ、待機していたブレード1aの動作を開始させる(
図4のY部:
図3のS9→S11)。
【0031】
このように、本発明によるワイパシステムにおいては、往路動作中に作動モードがHI→LOに切り替えられたとき、「始動遅延フラグ」をONとし、先行側モータ(AS側モータ5b)のみを出力ONとし、後続側モータ(DR側モータ5a)の出力をOFFのまま待機させる。そして、DR−AS角度差が所定値となるまでの期間、後続側を待機させ、角度差が所定値以上になったとき、「始動遅延フラグ」をOFFとし、後続側モータの出力ONとし、払拭を開始させる。その結果、復路のLO動作が上反転位置UHa,UHbから開始されても、ブレード1a,1b間の距離を従来のシステムよりも大きく確保することが可能となる。従って、先行側ブレード1bの動作が遅れても、ブレード間距離が大きいため両ブレードが干渉しにくく、また、ブレード動作を補正制御するための時間も確保しやすくなるため、払拭動作中におけるブレード同士の干渉の可能性を低く抑えることが可能となる。
【0032】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施形態では、往路動作中に作動モードがHI→LOに切り替えられたときのみ始動遅延制御を行っているが、復路動作中にHI→LOとなった場合も、始動遅延制御を行うことも可能である。この場合、往路始動位置は下反転位置La,Lbにて変動はないが、両ブレード1a,1bがほぼ同位置からスタートするため、先行側遅延により干渉が生じるおそれがあるが、当該始動遅延制御により、反転始動時にブレード間距離が確保され干渉発生が抑えられる。
【0033】
また、往路動作中に作動モードがHI→LOとなった場合のみならず、往路動作中に作動モードがHI→OFFとなった場合にも始動遅延制御を行っても良い。さらに、制御負担を軽減すべく、後続側ブレードの作動開始タイミングを、両ブレード間の角度差ではなく、時間差によって行っても良い。例えば、ブレード1bが反転作動した後、1秒間待機し、ブレード1bの1秒後にブレード1aを作動開始するようにしても良い。なお、始動遅延制御に代えて、往路動作中にHI→LOの場合は、先行ブレードと後続ブレードの間が広がるような速度MAPに変更するという制御形態も可能である。