(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記メインスプールにおける前記鍔状抵抗要素に対応する領域の内径は、前記メインスプールにおける前記摺動部に対応する領域の内径よりも大きいことを特徴とする請求項2〜5の何れか一項記載の産業車両の油圧駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態に係る産業車両の油圧駆動装置を示す油圧回路図である。
図1において、本実施形態の油圧駆動装置1は、産業車両であるフォークリフト2に搭載されている。
【0019】
油圧駆動装置1は、タンク3と、油圧ポンプ4と、パワーステアリングシリンダ(PSシリンダ)5と、パワーステアリングバルブ(PSバルブ)6と、リフトシリンダ7と、ティルトシリンダ8と、アタッチメントシリンダ9と、荷役用バルブユニット10とを備えている。
【0020】
タンク3は、作動油を貯留する。油圧ポンプ4は、作動油を吸い込む吸込口4aと、作動油を吐出する吐出口4bとを有している。吸込口4aは、作動油流路11を介してタンク3と接続されている。作動油流路11には、タンク3側から油圧ポンプ4側への作動油の流れのみを許容する逆止弁12が配設されている。油圧ポンプ4は、電動機13により駆動される。
【0021】
PSシリンダ5は、油圧ポンプ4の吐出口4bから吐出される作動油により駆動される両ロッド式の油圧シリンダである。PSバルブ6は、油圧ポンプ4及びタンク3とPSシリンダ5との間に配置され、ステアリングホイール(図示せず)の操作状態に応じて作動油が流れる方向を切り換える方向切換弁である。
【0022】
リフトシリンダ7は、油圧ポンプ4の吐出口4bから吐出される作動油により駆動され、フォーク14を昇降させる油圧シリンダである。ティルトシリンダ8は、油圧ポンプ4の吐出口4bから吐出される作動油により駆動され、マスト(図示せず)を傾動させる油圧シリンダである。アタッチメントシリンダ9は、油圧ポンプ4の吐出口4bから吐出される作動油により駆動され、アタッチメント(図示せず)を動作させる油圧シリンダである。
【0023】
荷役用バルブユニット10は、油圧ポンプ4及びタンク3とリフトシリンダ7との間に配置されたリフトバルブ15と、油圧ポンプ4及びタンク3とティルトシリンダ8との間に配置されたティルトバルブ16と、油圧ポンプ4及びタンク3とアタッチメントシリンダ9との間に配置されたアタッチメントバルブ17とを有している。
【0024】
リフトバルブ15は、リフト操作レバー18の操作状態に応じて作動油が流れる方向を切り換える方向切換弁である。リフト操作レバー18は、リフトシリンダ7を伸縮動作させることでフォーク14を昇降させるための操作手段である。リフトバルブ15については、後で詳述する。
【0025】
ティルトバルブ16は、ティルト操作レバー(図示せず)の操作状態に応じて作動油が流れる方向を切り換える方向切換弁である。アタッチメントバルブ17は、アタッチメント操作レバー(図示せず)の操作状態に応じて作動油が流れる方向を切り換える方向切換弁である。
【0026】
リフトシリンダ7のボトム室とリフトバルブ15とは、作動油流路19を介して接続されている。作動油流路19は、リフトバルブ15とリフトシリンダ7との間で作動油が双方向に流れる共通作動油流路を構成する。作動油流路19には、自然落下防止弁20が配設されている。自然落下防止弁20は、リフトシリンダ7が自然に収縮することでフォーク14が自然に落下することを防止するバルブである。
【0027】
油圧ポンプ4の吐出口4bとリフトバルブ15とは、作動油流路21を介して接続されている。作動油流路21は、油圧ポンプ4からリフトバルブ15に作動油が流れる第1作動油流路を構成する。作動油流路21には、油圧ポンプ4側からリフトバルブ15側への作動油の流れのみを許容する逆止弁22が配設されている。作動油流路21における油圧ポンプ4と逆止弁22との間には、分流弁23が配設されている。分流弁23は、油圧ポンプ4からの作動油をPS側と荷役側とに分流するバルブである。
【0028】
作動油流路21における逆止弁22と分流弁23との間の部分は、作動油流路24を介してタンク3と接続されている。作動油流路24には、作動油流路24の圧力が設定圧以上になると開くリリーフ弁25が配設されている。
【0029】
リフトバルブ15とタンク3とは、作動油流路26を介して接続されている。作動油流路26は、リフトバルブ15からタンク3に作動油が流れる第2作動油流路を構成する。リフトバルブ15と作動油流路11とは、作動油流路27を介して接続されている。作動油流路27の一端は、作動油流路11における油圧ポンプ4と逆止弁12との間に接続されている。作動油流路27と作動油流路11の油圧ポンプ4側の部分とは、リフトバルブ15から油圧ポンプ4に作動油が流れる第3作動油流路を構成する。
【0030】
ティルトシリンダ8のボトム室及びロッド室とティルトバルブ16とは、作動油流路28,29を介してそれぞれ接続されている。作動油流路21における逆止弁22と分流弁23との間の部分は、作動油流路30を介してティルトバルブ16と接続されている。作動油流路30には、分流弁23側からティルトバルブ16側への作動油の流れのみを許容する逆止弁31が配設されている。ティルトバルブ16は、作動油流路32,24を介してタンク3と接続されている。
【0031】
アタッチメントシリンダ9のボトム室及びロッド室とアタッチメントバルブ17とは、作動油流路33,34を介してそれぞれ接続されている。作動油流路21における逆止弁22と分流弁23との間の部分は、作動油流路35を介してアタッチメントバルブ17と接続されている。作動油流路35には、分流弁23側からアタッチメントバルブ17側への作動油の流れのみを許容する逆止弁36が配設されている。アタッチメントバルブ17は、作動油流路37,24を介してタンク3と接続されている。
【0032】
図2は、リフトバルブ15の断面図である。
図1及び
図2において、リフトバルブ15は、手動式の方向切換弁である。リフトバルブ15は、ボデー38と、このボデー38に対して移動可能に配置されたメインスプール39と、このメインスプール39の内部に配置されたフローレギュレータ40とを有している。
【0033】
ボデー38には、上記の作動油流路19,21,26,27の一部と、作動油流路19と接続された通路41とが設けられている。作動油流路21,26,27は、メインスプール39を挟んで作動油流路19の反対側に配置されている。ボデー38とメインスプール39との間には、2つのシールリング42が介在されている。
【0034】
メインスプール39は、円柱状のベース部43と、このベース部43から軸方向(
図2のG方向)に延びる筒状部44とを有している。筒状部44の先端部は、プラグ45で塞がれている。メインスプール39には、上記のリフト操作レバー18が機械的に連結されている(
図1参照)。メインスプール39は、リフト操作レバー18の操作状態に応じて軸方向に移動する。
【0035】
ベース部43の周面には、作動油流路21と通路41とを連通させる連通溝46が設けられている。筒状部44には、通路41とメインスプール39の内部とを連通させる連通口47と、作動油流路19とメインスプール39の内部とを連通させる連通口48と、作動油流路26とメインスプール39の内部とを連通させる連通口49と、作動油流路27とメインスプール39の内部とを連通させる連通口50とが設けられている。連通口48は、絞り部51を構成している(
図1参照)。
【0036】
メインスプール39は、
図1に示されるように、作動油流路19と作動油流路21とを連通すると共に作動油流路19と作動油流路26,27とを遮断する全開位置39aと、作動油流路19と作動油流路26,27とを連通すると共に作動油流路19と作動油流路21とを遮断する全開位置39bとの間で移動可能である。全開位置39a,39b間には、作動油流路19と作動油流路21,26,27とを遮断する中立位置(全閉位置)39cが存在する。
【0037】
メインスプール39が中立位置39cにある状態(
図2の状態)では、油圧ポンプ4及びタンク3とリフトシリンダ7との間で作動油の流れは生じない。メインスプール39が中立位置39cにある状態から、リフト操作レバー18によりメインスプール39を全開位置39a側(
図2の右側)に移動させると、油圧ポンプ4の吐出口4bから吐出された作動油が作動油流路21、連通溝46、通路41及び作動油流路19を流れてリフトシリンダ7に供給される。このため、リフトシリンダ7が伸長することで、フォーク14が上昇する。このとき、連通溝46及び通路41は、油圧ポンプ4側からリフトシリンダ7側に作動油が流れる作動油流路52(
図1参照)となる。また、メインスプール39のストロークに応じて作動油流路21の流路面積が変化する。
【0038】
メインスプール39が中立位置39cにある状態から、リフト操作レバー18によりメインスプール39を全開位置39b側(
図2の左側)に移動させると、フォーク14の自重により収縮したリフトシリンダ7から出た作動油が作動油流路19及び連通口48を流れてメインスプール39の内部に入り込む。そして、その作動油は、連通口49及び作動油流路26を流れてタンク3に排出されると共に、連通口50及び作動油流路27を流れて油圧ポンプ4の吸込口4aに供給される。このとき、メインスプール39のストロークに応じて作動油流路26,27の流路面積が変化する。作動油が油圧ポンプ4の吸込口4aに供給されると、作動油により油圧ポンプ4が回転させられる、いわゆる油圧ポンプ4の荷役回生が行われる。
【0039】
フローレギュレータ40は、リフトシリンダ7からタンク3に流れる作動油の流量を制御する。フローレギュレータ40は、メインスプール39に対してメインスプール39の移動方向(G方向)に移動可能なフローレギュレータスプール53と、このフローレギュレータスプール53とプラグ45との間に配置されたスプリング54とを有している。
【0040】
フローレギュレータスプール53は、メインスプール39に対して摺動する円柱状の摺動部55,56と、これらの摺動部55,56同士を連結する円柱状のロッド部57とを有している。摺動部55は、ベース部43側に配置されている。摺動部56は、プラグ45側に配置されている。摺動部56には、作動油が通る通路56aが設けられている。ロッド部57は、メインスプール39の移動方向に延びている。連通口48〜50は、摺動部55,56間に配置されている。
【0041】
摺動部55の周面には、連通口47と連通する環状の切欠部58が設けられている。通路41、連通口47及び切欠部58は、リフトシリンダ7からタンク3に作動油が流れるときに、フローレギュレータスプール53を閉じる側(
図2の右側)に作用する圧力を与える第1パイロット通路であるパイロット通路59(
図1参照)を構成している。つまり、パイロット通路59は、メインスプール39の連通口49を閉じる側に作用する圧力を与える。パイロット通路59は、絞り部51の上流側に接続されている。
【0042】
メインスプール39の内部における摺動部55,56間の空間は、リフトシリンダ7からタンク3に作動油が流れるときに、フローレギュレータスプール53を開く側(
図2の左側)に作用する圧力を与える第2パイロット通路であるパイロット通路60(
図1参照)を構成している。つまり、パイロット通路60は、メインスプール39の連通口49を開く側に作用する圧力を与える。パイロット通路60は、絞り部51の下流側に接続されている。
【0043】
スプリング54は、摺動部56とプラグ45との間に配置されている。スプリング54は、フローレギュレータスプール53を開く方向に付勢する。摺動部56は、スプリング54を受ける。
【0044】
このようなフローレギュレータ40は、メインスプール39で生じる圧力差、具体的にはメインスプール39の連通口48(絞り部51)の上流側及び下流側の圧力差により駆動され、その圧力差を一定に保つように作動油流路26を流れる作動油の流量(バイパス流量)が制御される。
【0045】
以上のように本実施形態にあっては、リフトシリンダ7からタンク3に流れる作動油の流量を制御するフローレギュレータ40が、リフト操作レバー18の操作状態に応じて移動するメインスプール39の内部に配置されている。このため、メインスプール39を制御するパイロット用の電磁比例弁等をメインスプール39の外部に配置しなくて済む。これにより、リフトバルブ15を含む荷役用バルブユニット10の体格を小型化し、荷役用バルブユニット10の省スペース化を図ることができる。また、荷役用バルブユニット10の低コスト化を図ることができる。
【0046】
また、本実施形態では、作動油が作動油流路27,11を通って油圧ポンプ4の吸込口4aに供給されることで油圧ポンプ4が回転する、いわゆる油圧ポンプ4の荷役回生を実施することができる。
【0047】
図3は、本発明の第2実施形態に係る産業車両の油圧駆動装置を示す油圧回路図である。
図3において、本実施形態の油圧駆動装置1は、上記の第1実施形態におけるリフトバルブ15に代えて、リフトバルブ70を備えている。
【0048】
図4は、リフトバルブ70の断面図である。
図3及び
図4において、リフトバルブ70は、上記のボデー38及びメインスプール39と、このメインスプール39の内部に配置されたフローレギュレータ71とを有している。フローレギュレータ71は、メインスプール39に対してメインスプール39の移動方向に移動可能なフローレギュレータスプール72と、上記のスプリング54とを有している。
【0049】
フローレギュレータスプール72は、上記の摺動部55と、この摺動部55からプラグ45側に延びる円柱状のロッド部73とを有している。ロッド部73の周面には、鍔状抵抗要素74が突設されている。鍔状抵抗要素74は、メインスプール39の内部を作動油流路19から作動油流路27に流れる作動油に圧力損失を発生させる。鍔状抵抗要素74は、連通口48,50間に配置されている。スプリング54は、鍔状抵抗要素74とプラグ45との間に配置されている。鍔状抵抗要素74は、スプリング54を受ける。このため、鍔状抵抗要素74の径は、スプリング54の径よりも大きい。
【0050】
メインスプール39の内部における摺動部55と鍔状抵抗要素74との間の空間、つまりメインスプール39の内部における鍔状抵抗要素74の上流側の空間は、リフトシリンダ7からタンク3に作動油が流れるときに、フローレギュレータスプール72を開く側(
図4の左側)に作用する圧力を与える第2パイロット通路であるパイロット通路75(
図3参照)を構成している。メインスプール39の内部における鍔状抵抗要素74とプラグ45との間の空間、つまりメインスプール39の内部における鍔状抵抗要素74の下流側の空間は、リフトシリンダ7からタンク3に作動油が流れるときに、フローレギュレータスプール72を開く側に作用する圧力を与える第2パイロット通路であるパイロット通路76(
図3参照)を構成している。
【0051】
ところで、上記の第1実施形態では、リフト操作レバー18によりメインスプール39を全開位置39b側(
図2の左側)に移動させることで、作動油流路27を流れる作動油の流量(回生流量)が増えたときに、フローレギュレータスプール53を開く側に作用する圧力が低下しないため、フローレギュレータスプール53が閉じにくい。このため、回生流量が増えても、作動油流路26を流れる作動油の流量(バイパス流量)が減りにくい。従って、
図5の破線Qで示されるように、回生流量とバイパス流量との合計であるシリンダ流量(作動油流路19を流れる作動油の流量)は、回生流量が増えるに従って増加する。なお、
図5は、回生流量とシリンダ流量との関係を表すグラフである。
【0052】
一方、本実施形態では、鍔状抵抗要素74によって作動油流路19から作動油流路27に流れる作動油の流量に応じた圧力損失が発生する。従って、作動油流路19から作動油流路27に流れる作動油の流量が増えるほど、鍔状抵抗要素74によってパイロット通路76の圧力が低下し、フローレギュレータスプール72を開く側に作用するトータル圧力が低下するため、フローレギュレータスプール72が閉じやすくなる。このため、
図5の実線Pで示されるように、油圧ポンプ4の使用回転数範囲においては、回生流量が増えても、バイパス流量が減るため、回生流量とバイパス流量との合計であるシリンダ流量を一定に保つことができる。これにより、例えばフォーク14の下降中にティルトシリンダ8を動作させるために、油圧ポンプ4の回転数を変化させるような制御を行った場合でも、リフトシリンダ7の収縮速度を一定に保つことができるため、フォーク14の下降速度を一定に保つことができる。
【0053】
また、本実施形態では、フローレギュレータスプール72に鍔状抵抗要素74が設けられているため、メインスプール39に抵抗要素を設ける必要がなく、既存のメインスプール39に余計な加工を施さなくて済む。
【0054】
また、本実施形態では、鍔状抵抗要素74は、作動油流路19から作動油流路27に流れる作動油に圧力損失を発生させる機能に加え、スプリング54を受ける機能を有する。このため、スプリング54の受け部をフローレギュレータスプール72に別途設けなくて済む。これにより、フローレギュレータ71の構造を簡単化することができる。
【0055】
図6は、
図4に示されたリフトバルブ70の変形例を示す断面図であり、
図4に対応する図である。
図6において、本変形例のリフトバルブ70は、フローレギュレータスプール72の鍔状抵抗要素74の構造のみが上記の第2実施形態と異なっている。鍔状抵抗要素74の外周縁74aは、摺動部55側からスプリング54側に向けて先細りとなるようなナイフエッジ形状を呈している。なお、鍔状抵抗要素74の外周縁74aのナイフエッジ形状としては、特にそれには限られない。
【0056】
本変形例においては、作動油の温度低下によって作動油の粘度が高くなっても、鍔状抵抗要素74とメインスプール39との間を作動油が流れにくくなることが抑制される。従って、作動油の温度変化によって作動油流路19を流れる作動油の流量特性(シリンダ流量特性)が変化してしまうことが抑制される。
【0057】
図7は、
図4に示されたリフトバルブ70の他の変形例を示す断面図である。
図7は、フローレギュレータスプール72をプラグ45側から見たときの断面図である。なお、
図7では、ボデー38及びスプリング54を省略している。
図7において、本変形例のリフトバルブ70も、フローレギュレータスプール72の鍔状抵抗要素74の構造のみが上記の第2実施形態と異なっている。
【0058】
鍔状抵抗要素74には、メインスプール39の移動方向に貫通する複数(ここでは4つ)の断面円形状の貫通孔77が鍔状抵抗要素74の周方向に沿って等間隔に設けられている。なお、貫通孔77の数、寸法及び形状等については、特に限定されない。
【0059】
本変形例においては、貫通孔77の数または寸法を変えると、鍔状抵抗要素74を通過する作動油の流量が変化するため、フローレギュレータスプール72を開く側に作用する圧力が変化し、フローレギュレータスプール72の閉じ状態が変化する。従って、貫通孔77の数または寸法を調整することにより、シリンダ流量特性を調整することができる。これにより、シリンダ流量を確実に一定に保つことができる。
【0060】
図8は、本発明の第3実施形態に係る産業車両の油圧駆動装置におけるリフトバルブを示す断面図である。
図8において、本実施形態の油圧駆動装置1は、上記の第2実施形態におけるリフトバルブ70に代えて、リフトバルブ80を備えている。リフトバルブ80は、上記の第2実施形態と同様に、メインスプール39及びフローレギュレータ71を有している。
【0061】
メインスプール39は、上記のベース部43と、このベース部43から軸方向(G方向)に延びる筒状部81とを有している。筒状部81の先端部は、プラグ45で塞がれている。筒状部81は、ベース部43側に位置し、フローレギュレータスプール72の摺動部55に対応する摺動部領域81aと、プラグ45側に位置し、フローレギュレータスプール72の鍔状抵抗要素74に対応する抵抗要素領域81bとを有している。
【0062】
抵抗要素領域81bの厚さは、摺動部領域81aの厚さよりも小さい。このため、抵抗要素領域81bの内径A
3は、摺動部領域81aの内径A
1よりも大きい。これに伴い、鍔状抵抗要素74の径A
2は、上記の第2実施形態に比べて大きくなっている。例えば、鍔状抵抗要素74の径A
2は、摺動部領域の内径A
1よりも大きくてもよい。
【0063】
ここで、荷役用バルブユニット10に必要な特性は、以下の通りである。即ち、まずフォーク14に積荷が無い(ノーロード)状態でも、フォーク14の十分な下降速度が確保可能である必要がある。
図9は、リフトシリンダ7のボトム室の圧力(シリンダ圧力)とシリンダ流量との関係を表すグラフである。具体的には、ノーロード時には、
図9における動作点NLで表されるシリンダ流量が必要である。
【0064】
また、フォーク14に最大荷重の積荷があり(フルロード)かつ油圧ポンプ4が停止している状態でも、フォーク14の十分な下降速度が確保可能である必要がある。
図10は、回生流量とシリンダ流量との関係を表すグラフであり、
図5に対応している。フルロードかつ油圧ポンプ4の停止時には、
図10における動作点FL1で表されるシリンダ流量が必要である。
【0065】
さらに、フルロードかつ油圧ポンプ4を回転させた状態でも、上記の動作点FL1と同程度の下降速度が確保可能である必要がある。フルロードかつ油圧ポンプ4の回転時には、
図10における動作点FL2で表されるシリンダ流量が必要である。
【0066】
以上の要件を満たすために必要なフローレギュレータスプール72の開口面積は、
図11で示される通りとなる。
図11は、フローレギュレータスプール72のストロークとフローレギュレータスプール72の開口面積との関係を表すグラフである。なお、フローレギュレータスプール72の開口面積は、具体的にはメインスプール39の連通口49の開口面積である。
【0067】
ノーロード時には、シリンダ圧力が低いため、フローレギュレータスプール72のストロークXを少なくすることで、フローレギュレータスプール72の開口面積Sを大きくする必要がある(
図11中のS
NL)。フルロードかつ油圧ポンプ4の停止時には、シリンダ圧力が高いため、フローレギュレータスプール72のストロークXを多くすることで、フローレギュレータスプール72の開口面積Sを小さくしてもよい(
図11中のS
FL1)。フルロードかつ油圧ポンプ4の回転時には、フローレギュレータスプール72のストロークXを多くすることで、フローレギュレータスプール72を全閉してもよい(
図11中のS
FL2)。
【0068】
ところで、フローレギュレータスプール72に鍔状抵抗要素74が設けられていない場合には、上述したように、回生流量が増えてもバイパス流量が減りにくいため、回生流量が増えるに従ってシリンダ流量が増加する。その結果、
図10に示されるように、シリンダ流量偏差ΔQ
c1が生じる。この場合には、フォーク14の下降中に他の荷役動作を行うために油圧ポンプ4の回転数を変化させると、フォーク14の下降速度が変動するため、操作者が違和感を感じてしまう。
【0069】
本実施形態では、フローレギュレータスプール72に鍔状抵抗要素74が設けられている。このため、鍔状抵抗要素74によってメインスプール39の内部を流れる作動油に圧力損失が生じることで、フローレギュレータスプール72に作用する圧力が適正化され、シリンダ流量偏差ΔQ
c1が低減される。しかし、鍔状抵抗要素74に必要な圧力損失が大きいと、油圧ポンプ4の回生効率が低下してしまう。
【0070】
そこで、フローレギュレータスプール72の受圧面積とスプリング54のバネ力との力の釣り合いから、鍔状抵抗要素74に必要な圧力損失ΔP
Roriを導出すると、下記式で表される。
【数1】
k:スプリングのバネ定数
x
0:スプリングの初期たわみ
x
NL:ノーロード時におけるフローレギュレータスプールのストローク
x
FL1:フルロードかつ油圧ポンプ停止時におけるフローレギュレータスプールのストローク
x
FL2:フルロードかつ油圧ポンプ回転時におけるフローレギュレータスプールのストローク
A
1:フローレギュレータスプールの受圧面積1(メインスプールの摺動部領域の内径)
A
2:フローレギュレータスプールの受圧面積2(フローレギュレータスプールの鍔状抵抗要素の径)
ΔP
mainNL:ノーロード時におけるメインスプールの圧力損失
ΔP
mainFL1:フルロードかつ油圧ポンプ停止時におけるメインスプールの圧力損失
ΔP
mainFL2:フルロードかつ油圧ポンプ回転時におけるメインスプールの圧力損失
F
jetNL:ノーロード時におけるフローレギュレータの流体力
F
jetFL1:フルロードかつ油圧ポンプ停止時におけるフローレギュレータの流体力
【0071】
本実施形態においては、メインスプール39の筒状部81において抵抗要素領域81bの内径A
3は摺動部領域81aの内径A
1よりも大きいため、その分だけ鍔状抵抗要素74の径A
2を大きくすることができる。鍔状抵抗要素74の径A
2を大きくすることにより、上記式によって鍔状抵抗要素74に必要な圧力損失ΔP
Roriが小さくなるため、油圧ポンプ4の回生効率を向上させつつ、シリンダ流量偏差ΔQ
c1を小さくすることができる。これにより、フォーク14の下降中に他の荷役動作を行うために油圧ポンプ4の回転数を変化させても、フォーク14の下降速度を一定に保つことができる。その結果、操作者が違和感を感じることを抑制できる。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記の第2及び第3実施形態では、フローレギュレータスプール72に設けられた鍔状抵抗要素74は、作動油流路19から作動油流路27に流れる作動油に圧力損失を発生させる機能と、スプリング54のバネ力を受ける機能とを有しているが、特にその形態には限られない。例えば、フローレギュレータスプールは、2つの摺動部と、これらの摺動部同士を連結するロッド部とを有し、スプリングのバネ力を一方の摺動部で受けると共に、ロッド部の周面に鍔状抵抗要素を設けてもよい。
【0073】
また、上記の第2及び第3実施形態では、フローレギュレータスプール72に鍔状抵抗要素74が設けられているが、作動油流路19から作動油流路27に流れる作動油に圧力損失を発生させる抵抗要素としては、特にその形態には限られず、例えばメインスプール39の内周面に設けられた突起等であってもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、リフトバルブは、リフト操作レバー18がメインスプール39に機械的に連結された手動式の方向切換弁であるが、リフトバルブとしては、特にその形態には限られず、例えば電磁パイロット式の方向切換弁であってもよい。
【0075】
図12は、
図1に示された油圧駆動装置の変形例として、電磁パイロット式のリフトバルブを備えた油圧駆動装置を示す油圧回路図である。
図12において、本変形例の油圧駆動装置1の荷役用バルブユニット10は、電磁パイロット式のリフトバルブ90と、減圧弁91とを有している。
【0076】
リフトバルブ90は、メインスプール39の全開位置39a,39b側にそれぞれ設けられた電磁パイロット操作部92a,92bを有している。電磁パイロット操作部92a,92bには、コントローラ(図示せず)からのリフト操作レバー(図示せず)の操作状態に応じた電気信号が入力される。
【0077】
減圧弁91は、作動油流路93を介して作動油流路21と接続されている。減圧弁91は、作動油流路21を流れる作動油の圧力を減圧して一定の圧力を作るバルブである。減圧弁91は、パイロット通路94a,94bを介して電磁パイロット操作部92a,92bとそれぞれ接続されている。メインスプール39には、リフト操作レバー(図示せず)の操作状態に応じたパイロット圧が与えられる。
【0078】
また、上記実施形態では、油圧ポンプ4の荷役回生が行われるが、本発明は、荷役回生機能が無い荷役制御用バルブユニットにも適用可能である。
【0079】
図13は、
図1に示された油圧駆動装置の他の変形例として、荷役回生機能が無い荷役制御用バルブユニットを備えた油圧駆動装置を示す油圧回路図である。
図13において、本変形例の油圧駆動装置1の荷役用バルブユニット10は、リフトバルブ99を有している。リフトバルブ99と油圧ポンプ4の吸込口4aとは、上記の作動油流路27を介して接続されていない。リフトバルブ99のメインスプール39には、
図14に示されるように、連通口47〜49は設けられているが、作動油流路27とメインスプール39の内部とを連通させる上記の連通口50は設けられていない。この場合でも、フローレギュレータ40がメインスプール39に内蔵されているため、荷役用バルブユニット10の省スペース化及び低コスト化を図ることができる。
【0080】
また、上記実施形態では、油圧ポンプ4及びタンク3とリフトシリンダ7との間に、メインスプール及びフローレギュレータを有するリフトバルブが配置されているが、本発明は、油圧ポンプ及びタンクと油圧シリンダとの間に方向切換弁が配置されているフォークリフト以外の産業車両にも適用可能である。