(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送信部は、前記第1無線信号による無線通信をBLE(Bluetooth Low Energy)を用いて行い、前記第2無線信号による無線通信をWi−Fiを用いて行う、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の無線給電装置。
前記制御部は、前記第1端末からの給電要求信号と、前記第2端末との通信データトラフィックと、に基づいて給電するタイミングを制御する、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の無線給電装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施の形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1実施形態)
低消費電力デバイスは、ISM(Industrial, Scientific and Medical)帯のように混雑した周波数帯で無線通信を行うことが多い。このため、無線通信と同じ周波数を用いて無線給電を行うと、給電信号が周囲の機器への干渉源となる可能性がある。また、帯域が混雑しているために、給電に係るタイミングの制御も難しく、所望の給電効果が得られないという問題もある。そこで、本実施形態では、無線通信に用いる周波数とは異なる周波数を用いて無線給電を行う無線給電装置について説明する。以下の説明において、位置推定、方向推定及び方位推定の単語をそれぞれ使用しているが、文脈により使い分けているだけであり、本実施形態の説明として実質的に異なるものではない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る無線給電システム1を示す図である。この
図1に示すように、無線給電システム1は、無線給電装置10と、受電端末20(第1端末)と、を備える。受電端末20は、無線給電装置10から無線による給電を受けることにより、内蔵されている蓄電池等に充電をすることが可能である。
【0011】
無線給電装置10と、受電端末20とは、第1周波数100の電波を用いて無線通信(第1無線通信)をする。無線通信を行う一方で、無線給電装置10は、第2周波数102の電波を用いて受電端末20へ給電を行う。このように、第1周波数100により無線通信を行うとともに、第2周波数102により無線給電を別々のタイミング、あるいは、同じタイミングにおいて行う。
【0012】
図2は、無線給電装置10及び受電端末20の機能を概略的に示すブロック図である。無線給電装置10は、通信部12と、制御部14と、位置推定部16と、を備える。
【0013】
通信部12は、受信部120と、送信部122とを備え、無線給電装置10の無線通信を行う。この通信部12は、第1周波数で通信を行うアンテナ18A及び第2周波数で通信を行うアンテナ18Bと接続されていてもよい。使用する周波数帯によっては、アンテナ18Aとアンテナ18Bとは同じ構成とし、第1周波数帯及び第2周波数帯に対して共用の1本のアンテナで構成することも可能である。別の例としては、同じ周波数帯であっても、受信部120用のアンテナと、送信部122用のアンテナとをさらに別々に備えていてもよい。
【0014】
受信部120は、外部から送信された無線信号を受信する。送信部122は、外部へと無線信号を送信する。外部へ送信する信号は、給電用の信号を含むものであるとする。なお、以下において、制御部14及び位置推定部16は、送信部122とは別の構成として説明しているが、位置推定及びビームパターンの形成等、給電に関する信号の生成も、この送信部122が行ってもよい。
【0015】
制御部14は、無線給電装置10の制御を行う。制御とは、例えば、信号の送受信及び第2周波数帯を用いて行う受電端末20への給電のためのビームパターンの形成等を含む。また、アンテナ18A、18Bと、受信部120、送信部122とのスイッチング等を制御部14が行ってもよい。
【0016】
電波による無線給電は、給電できる電力量が小さくなることが課題となる。例えば、2.4GHz帯で給電する場合、給電側から送信された電力は空間で大きく減衰し、伝播距離1mで電力レベルが1%以下にまで減少してしまう。このような課題への対策として、送信ビーム制御がある。これは、無線給電を行う無線給電装置10側で、電波の放射ビームパターンを制御することにより、受電端末20における受信電力レベルを向上する技術である。受電端末20に指向性が向くように送信ビームパターンを形成する方法として、2つの手段が例として挙げられる。
【0017】
第1手段は、無線給電装置10が受電端末20の位置又は方向を検知し、その方向に指向性を向けるものである。第2手段は、無線給電装置10と受電端末20との間の伝搬路特性を把握し、伝搬路の影響を打ち消すようなビームパターンを形成するものである。無線給電装置10の制御部14は、このようなビームパターンの形成の制御を行う。一般に無線通信の伝搬路特性は、使用する周波数帯によって特性が異なるため、第2手段を用いる場合は、無線給電に用いる周波数帯の伝搬路特性を把握する必要がある。本実施形態においては、このような伝搬路特性を把握する必要がないビームパターンを形成する例について説明する。
【0018】
位置推定部16は、受電端末20の位置を推定する。位置の推定は、例えば、受電端末20がGPS(Global Positioning System)のような位置検知手段を介して自己の位置情報を取得し、その結果を無線給電装置10に送信することにより、位置推定部16が、無線給電装置10からの受電端末20の相対的な位置を推定するようにしてもよい。受電端末20が自己の位置情報を取得できない場合には、無線給電装置10の受信部120が受信した受電端末20からの無線信号を用いて、受電端末20の存在する方向を推定する。
【0019】
一方の受電端末20は、通信部22と、制御部24と、内蔵電池26と、を備える。
【0020】
通信部22は、受信部220と、送信部222とを備え、受電端末20の無線通信を行う。この通信部22は、第1周波数で通信を行うアンテナ28A及び少なくとも第2周波数の電波の受信を行うアンテナ28Bと接続されていてもよい。無線給電装置10のアンテナ18A、18Bと同様に、使用する周波数帯によっては、アンテナ28Aとアンテナ28Bとは同じ構成とし、第1周波数帯及び第2周波数帯に対して共用の1本のアンテナで構成することも可能である。
【0021】
制御部24は、受電端末20の制御を行う。受電端末20としては、様々なデバイスが考えられるが、例えば、センサである場合、当該センサの感知に関する制御を行ってもよい。例えば、ビーコン等の通信デバイスである場合、当該ビーコン等の通信を行う制御を行ってもよい。もちろん、無線給電装置10と通信を行う通信部22の制御を行ってもよい。また、受信部220が給電信号を受信している場合には、内蔵電池26を充電する制御を行ってもよい。
【0022】
内蔵電池26は、受電端末20の電力を蓄電する電池である。この内蔵電池26に充電されている電力を用いて、受電端末20は、機能を果たす。内蔵電池26は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニカド電池等の充電可能であり、比較的小型化に向いている電池である。上記には限られず、受電端末20の消費電力に対して十分な電力を蓄えられる電池、あるいはキャパシタであってもよい。
【0023】
図3は、本実施形態に係る無線給電装置10及び受電端末20の処理の流れを示すフローチャートである。
【0024】
無線給電装置10と、受電端末20は、第1周波数帯で通信を行っている(S100、S200)。例えば、受電端末20がセンサである場合には、受電端末20が感知したセンサ情報等を無線給電装置10へと送信するような通信を行っている。このタイミングにおいて、無線給電装置10は、第1周波数帯で通信をしながら、受電端末20の位置推定を行う情報を収集している。
【0025】
次に、位置推定部16は、受電端末20の位置推定を行う(S102)。受電端末20が位置検知手段を備えている場合には、受信部220を介し、位置検知手段が検知した受電端末20の位置情報を無線給電装置10へと送信し、無線給電装置10は、受信した位置情報に基づいて受電端末20の位置の推定を行う。受電端末20が位置検知手段を備えていない場合、位置推定は、例えば、以下のような方法で行われる。
【0026】
図4は、位置推定を行う一例を示す図である。
図4においては、無線給電装置10がアンテナ18Aとして、アレーアンテナを備える場合である。このようなアレーアンテナを備えることにより、受電端末20から送信された電波の到来方向を推定する。
【0027】
すなわち、無線給電装置10が備える第1周波数用のアレーアンテナのアンテナ素子間距離をdとし、方位θからの電波が到来したとすると、d・cos(θ)=c・ΔTの式が成り立つ。ここで、cは光速であり、ΔTはアンテナ素子間での受信時間差である。アンテナ素子間の受信信号の位相差をΔΨとおくと、ΔΨ=2π・f・ΔTの式が成り立つ。ここで、fは受信した信号の周波数である。これらの式より、受電端末20からの第1周波数の電波の到来する方向θは、θ=Arccos(c・ΔT/d)=Arccos(f・λ・ΔT/d)=Arccos(λ・ΔΨ/(2π・d))となる。ここで、λは到来信号の波長を表し、Arccos(・)は逆余弦関数の主値を表す関数である。
【0028】
信号の周波数が単一、すなわち、電波がCW(Continuous Wave)である場合は、波長は周波数から一意に求めることができる。一方、変調された信号の場合、信号の帯域幅が広いほど、取り得る波長が拡がり、上記の式で算出される到来方向も広がりを持つこととなる。このことから、方向の推定精度を向上させるためには、狭い帯域幅の信号を用いることが好ましい。また、上記の式より、方向推定の処理に必要となる情報は、信号の波長、位相差及びアンテナ素子間の距離となる。すなわち、このような推定を行う場合、方向推定のために特別な信号を送る必要がなく、通常の無線通信における受信信号の位相差を利用して副次的に方向を推定することが可能である。
【0029】
図5は、位置推定を行う別の例を示す図である。
図5の例においては、無線給電装置10は、アンテナとして、指向性可変アンテナを備えている。この場合、無線給電装置10は、電子的又は機械的にアンテナの指向性を切り替えることが可能である。例えば、図に示すように、指向性100A、100B、100C、100Dのように、異なる方向から発信された電波に対応した指向性を有するアンテナで信号を受信する。
【0030】
そして、特性のよい指向性に対応した方向に、受電端末20が存在すると判断する。ここで、特性とは、受信感度、受信電力、又は、他の通信特性を意味する。例えば、第1周波数に対する指向性アンテナを備えておくことにより、受電端末20から送信された第1周波数の電波に対して、その方向を検出することが可能となる。なお、方向は、図に示されている方向だけではなく、様々な方向に変化させることが可能である。
【0031】
図6は、位置推定を行うさらに別の例を示す図である。
図6の例においては、受電端末20が複数のアンテナを有し、無線給電装置10が単一のアンテナを備えている。このような場合、以下のように電波が放射された方向θを推定することが可能である。
【0032】
受電端末20は、第1周波数を送受信する複数のアンテナ280A、280Bを備え、アンテナ切り替えスイッチ280SWをさらに備える。受電端末20は、既知のタイミングで第1周波数の電波を送信するアンテナを切り替える。無線給電装置10は、各アンテナ素子からの信号を順番に受信し、電波の放射方向θを算出する。ここで、無線給電装置10は、アンテナ素子間の距離d及びそれぞれの素子からの信号の送信間隔の情報を有しているものとする。
【0033】
この場合に、d・sin(θ)=c・ΔT’という関係式が成り立つ。ここで、ΔT’は、アンテナ280Aからの信号と、アンテナ280Bからの信号の伝搬時間差である。アンテナ280Aからの信号と、アンテナ280Bからの信号の位相差をΔΨ’とすると、ΔΨ’=2π・f・ΔT’という関係式が成り立つ。
【0034】
これらの2つの式から、θ=Arcsin(c・ΔT’/d)=Arcsin(f・λ・ΔT’/d)=Arcsin(λ・ΔΨ’/(2π・d))と算出できる。ここで、Arcsinは、逆正弦関数の主値をとるものとする。
【0035】
以上のような手段により、無線給電装置10は、受電端末20の方向を推定することが可能である。このように、位置情報の推定は、受電端末20の位置そのものを、受電端末20に搭載されている位置情報検出デバイス等の出力結果から推定するものであってもよいし、無線給電装置10からの受電端末20の方向を推定するものであってもよい。すなわち、無線給電装置10から、適切に受電端末20へと給電信号が送信できるような受電端末20の位置に関する情報であれば構わない。
【0036】
図3に戻り、次に、無線給電装置10は、位置推定が完了したか否かを判断する(S104)。位置推定が完了していない場合(S104:No)、例えば、
図4においては位相差ΔΨが測定できるまで、
図5においては特性のよい方向を見つけるまで、
図6においては位相差ΔΨ’が測定できるまでは通信が行われ、位置推定処理が行われる。
【0037】
一方、位置推定が完了した場合(S104:Yes)、制御部14は、ビームパターンの形成を行う(S106)。このビームパターンは、第2周波数による電波により形成され、推定された方向に向けて指向性を有するように生成される。
【0038】
そして、無線給電装置10の送信部122は、制御部14により形成されたビームパターンにしたがった第2周波数の電波を受電端末20へと向けて発信することにより、受電端末20へと給電を行う(S108)。この制御は、機械的又は電子的手段により行われる。
【0039】
無線給電装置10からの第2周波数の電波を受信した受電端末20の受信部220は、制御部24により、内蔵電池26が充電されるように制御される(S202)。なお、
図3のフローチャートにおいては、第1周波数による通信は、最初のステップで行われているがこれには限られず、常時通信、又は、必要な頻度に応じて通信を行っていてもよい。この通信を行っている間に、給電を行う場合に、このフローチャートにある処理を行う。
【0040】
図7は、このような無線通信と無線給電とを同じタイミングで行っている様子を示す図である。無線給電装置10は、給電をするタイミングの前に、無線給電装置10に対する受電端末20の位置(方向)を推定する。この位置推定は、上述したように、第1周波数100の電波を用いて行う。
【0041】
位置推定がされた後、無線給電装置10は、受電端末20と第1周波数100の電波で無線通信をするのと併せて、第2周波数102の指向性を持ったビームパターンによる電波により、受電端末20へと給電を行う。受電端末20は、第1周波数100の電波で無線通信するのと同じタイミングで、第2周波数102の電波により受電し、内蔵電池26の充電をすることが可能となる。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、無線通信を行う第1周波数と、無線給電を行う第2周波数とが異なる周波数であるため、無線通信を行いながら無線給電を行うことが可能となる。また、周波数が異なるため、無線給電による電波が無線通信への干渉の原因となることを軽減することができる。さらに、無線通信を利用して受電端末20の方向を推定し、その方向に対して指向性を有する無線給電を行うため、給電効率を高めることも可能となる。
【0043】
(第2実施形態)
前述した第1実施形態においては、無線給電装置10は、受電端末20とのみ通信をしていることを説明したが、これには限られない。例えば、無線給電装置10は、無線LAN(Local Area Network)等の基地局として動作していてもよく、この場合、受電端末20のみと通信をしているわけではない。本実施形態では、複数の端末と通信を行う無線給電装置10について説明する。
【0044】
図8は、本実施形態に係る無線給電装置10と受電端末20との通信を示す図である。前述したように、無線給電装置10と受電端末20とは、第1周波数100の電波を用いて無線通信をするとともに、第2周波数102の電波を用いて、給電及び受電を行う。本実施形態においては、第2周波数102の電波を用いて、他の通信端末30、32(第2端末)等と第2無線通信をしながら、前述した実施形態における無線給電を行おうとするものである。
【0045】
この
図8においては、通信端末は、通信端末30及び通信端末32の2台であるが、これは一例として挙げたものであり、通信相手となる端末は、1台であってもよいし、3台以上の複数台であってもよい。また、受電端末20との無線通信及び各通信端末30、32との無線通信は、同時に行われるものであってもよいし、順番に行われるものであってもよい。
【0046】
図9は、本実施形態に係る無線給電装置10について、
図2に示した無線給電装置10の通信部12及び制御部14の機能を示すブロック図である。
図2に示すように、通信部12は、受信部120及び送信部122を備えるが、
図9に示すようにこれらの受信部120及び送信部122は、第1受信部120A、第2受信部120B、第1送信部122A、第2送信部122Bに分けられる。さらに、アンテナとこれらの送受信部との接続を切り替える第1スイッチ(SW)124Aと、第2スイッチ124Bと、を備える。
【0047】
第1受信部120A、第1送信部122A、第2受信部120B、第2送信部122Bは、それぞれ制御部14に接続され、制御部14がこれらの制御を行う。例えば、第1周波数100の電波を用いて受電端末20と通信を行う場合、制御部14が第1受信部120A及び第1送信部122Aを制御することにより通信が行われる。第1スイッチ124Aは、外部から第1受信部120Aへの通信及び第1送信部122Aから外部への通信を受信し、アンテナ18Aを適切に切り替える。第2受信部120B、第2送信部122B、第2スイッチ124B、アンテナ18Bについても同様に通信が行われる。
【0048】
このように制御部14が制御することにより、無線給電装置10は、
図8に示すように、第2周波数102を用いて受電端末20へ無線給電を行い、通信端末30、32と無線通信(第2無線通信)を行うとともに、第1周波数100を用いて受電端末20と無線通信を行う。なお、制御部14が制御をするとしているが、通信部12内に通信用のコントローラを備え、当該コントローラが通信部12に係る制御を行うようにしてもよい。
【0049】
アンテナ18A及びアンテナ18Bは、単一のアンテナとして図示されているがこれには限られず、複数のアンテナ素子から構成されるアレーアンテナであってもよい。前述のいずれかの位置推定を行う場合には、当該位置推定に合わせたアンテナの構成としてもよい。
【0050】
図10は、本実施形態に係る無線通信及び無線給電のタイミングを示す図である。この
図10において、白い矢印は、第1周波数100における無線通信を表し、斜線の入った矢印は、第2周波数102における無線給電又は無線通信を表す。
【0051】
無線給電装置10は、受電端末20との間で第1周波数100を介した無線通信を行い、受電端末20の位置又は方向情報を推定する。一方で、無線給電装置10は、通信端末30A、30Bとの間で第2周波数102を介した無線通信を行う。無線給電装置10は、通信端末30A、30Bとの間のトラフィックや電波環境に応じて、各端末との通信量や通信タイミングを制御する。各端末との通信は、シリアルに行ってもよいし、同時に多重通信を行ってもよいし、又は、ブロードキャストによる通信を行ってもよい。
【0052】
無線給電装置10は、通信端末30A、30Bとの間で無線通信を行いつつ、その空き時間に受電端末20に対して第2周波数102の電波で無線給電を行う。この場合、第1周波数100での無線通信を介して推定された位置情報に基づき、受電端末20に指向性を向けて無線給電を行う。このような処理により、周波数利用効率の優れた無線通信及び無線給電システムを実現することが可能となる。すなわち、受電端末20との間の無線通信を妨害することなく、受電端末20へ指向性を向けた高効率の無線給電を行うことが可能となる。
【0053】
さらに、通信端末30A、30Bとの無線通信を行いつつ、受電端末20への給電タイミングをスケジューリングすることにより、第2周波数を介した無線通信及び無線給電を効率よく行うことができる。無線通信と無線給電の時間は、完全に分離している必要は無く、無線給電装置10は、受電端末20に無線給電をしつつ、通信端末30A、30Bと無線通信を同じタイミングで行ってもよい。
【0054】
この場合、より具体的な状況として、無線給電装置10と受電端末20との間の第1周波数100を介した無線通信は、第2周波数102を介した無線通信よりも低消費電力かつ狭帯域の無線通信であることが望ましい。電波を用いた無線給電においては、給電可能な電力量が限られたものであるため、低消費電力なデバイスほど相対的に恩恵を受けやすくなり、また、無線通信を行う周波数の帯域幅が狭いほど、方位推定の分解能が向上するという利点があるためである。他方、第2周波数102を介した通信は、方位推定を行うことなく無線給電を行うため、第1周波数100を介した通信よりも相対的に大電力な通信であることが望ましい。
【0055】
一例として、第1周波数100は、2.4GHz帯の周波数帯であり、第2周波数102は、5GHz帯の周波数帯であってもよい。2.4GHz帯は、ISM帯として、世界各国で共通して使用可能であり、数多くの低消費電力デバイスが対応している。低消費電力デバイス向けの周波数帯としては、900MHz帯等のさらに低い周波数帯も考えられるが、その場合、方位推定のためのアンテナサイズが大きくなるため、方位推定を行う場合は、2.4GHz帯の方がより適している。一方、5GHz帯は、現状、2.4GHz帯ほど混雑をしていないため、広い帯域が利用可能であり、他の通信機器への干渉も比較的少ないという利点がある。受電端末20の無線通信の受信処理、及び、無線給電の受電処理を考慮した場合、2.4GHz帯と5GHz帯であれば、アンテナを共用することも可能である。
【0056】
通信方式の例としては、2.4GHz帯は、BLE(Bluetooth Low Energy:登録商標)、5GHz帯は、無線LAN、例えば、Wi−Fi(登録商標)を用いた通信を利用することが考えられる。BLEは、低消費電力デバイス向けの無線通信として広く普及している。帯域幅は1MHzであり、高精度な方位推定を行うことが可能である。
【0057】
さらに、BLEの技術使用を含む標準規格Bluetooth5.0では、BLEによる方位推定機能が規定されている。一方、無線LANはBLE以上に広く普及した無線通信であり、その標準仕様として複数のアンテナを用いたビームフォーミング技術が規定されている。そのため、特定方向への指向性制御も容易に実現することが可能である。
【0058】
一方、Wi−Fiの規格では、複数のアンテナを用いたMIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)方式が規定されているため、特定のビームパターンを形成することが容易である。そこで、本実施形態においては、第1周波数100を用いる第1無線通信としてBLEを用い、第2周波数102を用いる第2無線通信としてWi−Fiを用いることにより、給電対象の受電端末20の位置を正確に推定しつつ、効率的なビームパターンの形成により無線給電を行うことが可能となる。
【0059】
上述は、一例としての記載であり、これに限られるものではない。将来的により帯域の制限が変更された場合には、上記以外にもより適した周波数帯を用いたより適した通信方式の無線通信、無線給電を行うことも可能である。
【0060】
図11は、BLE及び無線LANの両方に対応した無線給電装置10の利用例である。無線給電装置10の例として、工場内の情報収集端末を想定している。工場内の機器をモニタリングするセンサ200、202は、センシング結果をBLEで無線給電装置10へと送信する。一方で、無線給電装置10は、工場内の作業者34、監視カメラ36等との間で無線LANによる大容量通信も行う。無線給電装置10は、BLEによる通信を介して、センサ200、202の位置、方位を推定し、その方向へと向かって無線LANベースで無線給電を行う。無線LANによる通信はパケット通信であり、間欠的に行われる。無線給電装置10は、作業者34又は監視カメラ36とのトラフィックを考慮しつつ、各センサ200、202への無線給電のタイミングをスケジューリングすることにより、無線通信と無線給電との両方を効率よく両立して実現することができる。
【0061】
以上のように、本実施形態によれば、第1周波数100を介して受電端末20と無線通信をしつつ、第2周波数102を介して受電端末20へ給電するとともに他の通信端末30、32と無線通信を行う無線給電装置10を実現することが可能となる。
【0062】
センサ200、202のように、受電端末20は、比較的消費電力の小さいデバイスである。一方で、第2周波数102を介して無線通信を行う通信端末30は、例えば、作業者34が所持しているタブレットや品質管理用の通信端末であってもよく、これらは無線給電を行う必要が無いので、消費電力は受電端末20に比べて大きなものであってもよい。無線給電装置10を用いることにより、このように、消費電力の小さいセンサ等であって、充電がしづらく、かつ、充電が切れることが望ましくない端末に対して、無線給電を行うことが可能となる。
【0063】
なお、本実施形態において、第1周波数100と第2周波数102の周波数帯及び消費電力について記載したが、これは、前述した第1実施形態についても同様のことが言える。すなわち、第1実施形態においても、第1周波数100を2.4GHz帯に属する周波数とし、第2周波数102を5GHz帯に属する周波数とすることにより、上述した効果と同様の効果を得ることが可能である。
【0064】
(第3実施形態)
前述した第2実施形態では、受電端末20及び通信端末30、32の位置関係に依存せずに無線通信及び無線給電をするものであったが、本実施形態においては、受電端末と通信端末との位置に応じ、効率よく無線通信と無線給電とを行うとするものである。
【0065】
図12は、本実施形態に係る無線通信及び無線給電の利用例を示す図である。無線給電装置10は、受電端末20の位置を推定するとともに、受電端末20の近傍、又は、同じ方向に存在する通信端末を識別する機能をさらに備える。この場合、受電端末20以外に無線通信を行う端末としては、通信端末30Aと、通信端末30Bとが存在する。
【0066】
例えば、受電端末20と通信端末30Aが近傍にあるとする。無線給電装置10は、通信端末30Aと第2周波数102の電波を介して無線通信をするとともに、受電端末20に無線給電を同じ電波を介して行う。すなわち、前述した第2実施形態とは異なり、無線給電装置10は、同一の電波を介し、一方では受電端末20へと無線給電をし、他方では通信端末30Aと無線通信を行う。
【0067】
図13は、本実施形態に係る無線通信及び無線給電のタイミングを示す図である。白い矢印及び斜線の入った矢印の意味は、
図10と同様である。無線給電装置10は、第1周波数100の電波を介して受電端末20の位置を推定し、続いて、第2周波数102の電波を介して通信端末30A、30Bと無線通信を行うとともに、通信端末30A、30Bの位置推定を行う。ここで、
図12に示すように、受電端末20と通信端末30Aが近傍にあったとする。
【0068】
この場合、無線給電装置10は、受電端末20、通信端末30A、30Bの位置推定結果に基づいて、受電端末20への無線給電と、通信端末30Aとの通信とを同じビームを用いて行う。
図13中、破線で囲った第2周波数102の電波を介した無線給電及び無線通信は、同じビームで行っていることを示す。
【0069】
以上のように、本実施形態によれば、無線給電装置10は、受電端末20への無線給電と、近傍にある通信端末との無線通信とを同じビームを用いて行うことが可能となり、電波の利用効率、すなわち、周波数利用効率を向上させることが可能となる。受電端末20の近傍に通信端末が存在しない場合には、前述した第2実施形態と同様の動作を行えばよい。
【0070】
なお、
図10においても、受電端末20への無線給電と、通信端末30Bとの無線通信とを同じタイミングで行っている様子が示されているが、これは、別々のビームを用いているものであって、本実施形態に係る無線通信及び無線給電とは異なるものである。
【0071】
(第4実施形態)
本実施形態においては、受電端末20が自らの電力が不足しているか否かを判断し、無線給電装置10へと給電要求を行う無線給電システムについて説明する。
【0072】
受電端末20は、自らが備えているバッテリーの残量、又は、受電量に基づいて給電要求信号を出すか否かを判断する。給電要求信号の内容は、給電要求の有無を示す1ビットの情報であってもよいし、バッテリーの残量を示す情報であってもよい。又は、給電を望む場合のみ、無線通信のフォーマットを変更するようにしてもよい。例えば、無線通信としてBLEを用いて第1周波数100で通信をする場合、給電が必要なときには、方向推定用に規定されているSupplementalフィールドを含むパケットを送信し、給電が不要な場合には、Supplementalフィールドを含まないパケットを送信するといった通信を行ってもよい。
【0073】
図14は、本実施形態における無線給電システムの処理を示すフローチャートである。受電端末20は、第1周波数100を介して無線給電装置10と無線通信を行っている。無線給電装置10は、任意のタイミングにおいて、第1周波数100を介して受電端末20の位置の推定を前述の各実施例のように行っているものとする。
【0074】
受電端末20は、所定のタイミングで電力が不足しているか否かを判断する(S300)。電力が不足していない場合、引き続き、無線給電装置10と第1周波数100を介した無線通信を続行する。
【0075】
一方で、電力が不足していると判断した場合(S300:Yes)、受電端末20は、無線給電装置10へと給電する旨のリクエスト信号を発信する(S302)。このリクエスト信号は、上述したように、第1周波数100の電波を介して行う。給電リクエストを発信しているのにも拘わらず給電がされない場合には、給電リクエストの発信の頻度を増加させるなどしてもよい。なお、給電リクエストではなく、上述したバッテリー残量等により受電端末20の給電状況を把握する場合には、S300を省略し、所定のタイミングでS302の処理としてバッテリー残量を無線給電装置10へと送信してもよい。
【0076】
給電リクエストを受信した無線給電装置10は、給電の優先度が他の処理の優先度よりも高いか否かを判断する(S400)。他の処理とは、例えば、他の通信端末30との第2周波数を介した無線通信等の処理のことである。なお、受電端末20が自らのバッテリー残量等の情報を送信している場合、このバッテリー残量等の情報に基づいて優先度を決めるようにしてもよい。給電リクエストを発信している場合には、予め決められた給電リクエストの優先度を用いてもよいし、給電リクエストが発信される単位時間あたりの頻度等の情報に基づいて優先度を決定するようにしてもよい。
【0077】
給電の優先度よりも、例えば、通信端末30との無線通信の優先度が高い場合(S400:No)には、無線給電装置10は、まず、通信端末30との通信を行う(S402)。
【0078】
通信端末30との通信後、あるいは、給電の優先度の方が他の処理よりも優先度が高い場合(S400:Yes)、無線給電装置10は、第2周波数102を介して受電端末20へと無線給電を行う(S404)。このように、受電端末20から何かしらの給電に関する情報を取得して、無線給電装置10が無線給電を行うようにしてもよい。
【0079】
上述の給電のタイミングは、無線給電装置10により給電リクエストによって通知される情報、及び、通信端末30とのデータトラフィックに基づいて無線給電のタイミングを制御されてもよい。例えば、受電端末20のバッテリーが枯渇しそうであると判断した場合には、優先的に無線給電を行い、そうで無い場合には、通信端末30との無線通信をした後に受電端末20に対して無線給電を行う。
【0080】
以上のように、本実施形態によれば、無線給電と無線通信等の他の処理との間の公平性を考慮しながら無線給電を行うタイミングを決定することにより、受電端末20のバッテリーを枯渇させることなく、他の処理、例えば、他の通信端末30からの通信要求にも最大限に対応することが可能となる。
【0081】
これらの実施形態によれば、小型かつ低消費電力であることが求められる低消費電力デバイスに対して、そのバッテリー寿命を延ばす手段、又は、バッテリーレス駆動を実現手段として無線給電装置10を用いることが可能となる。
【0082】
なお、本実施形態の無線給電装置10の構成要素は、プロセッサなどを実装しているIC(Integrated Circuit:集積回路)などの専用のハードウェアにより実現されてもよい。例えば、無線給電装置10は、受信部120を実現する受信回路と、送信部122を実現する送信回路と、制御部14を実現する制御(処理)回路と、を備えていてもよい。制御部14の内部構成も、専用の回路で実現されてもよい。あるいは、構成要素がソフトウェア(プログラム)を用いて実現されてもよい。ソフトウェア(プログラム)を用いる場合は、上記に説明した実施形態は、例えば、汎用のコンピュータ装置を基本ハードウェアとして用い、コンピュータ装置に搭載された中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)等のプロセッサにプログラムを実行させることにより、実現することが可能である。機能の一部をソフトウェアで構成する場合には、無線給電システム1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0083】
また、無線給電システム1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0084】
本実施形態で用いられる用語は、広く解釈されるべきである。例えば用語“プロセッサ”は、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、コントローラ、マイクロコントローラ、状態マシンなどを包含してもよい。状況によって、“プロセッサ”は、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム可能論理回路(PLD)などを指してもよい。“プロセッサ”は、複数のマイクロプロセッサのような処理装置の組み合わせ、DSPおよびマイクロプロセッサの組み合わせ、DSPコアと協働する1つ以上のマイクロプロセッサを指してもよい。
【0085】
別の例として、用語“メモリ”は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を包含してもよい。“メモリ”は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、フラッシュメモリ、磁気または光学データストレージを指してもよく、これらはプロセッサによって読み出し可能である。プロセッサがメモリに対して情報を読み出しまたは書き込みまたはこれらの両方を行うならば、メモリはプロセッサと電気的に通信すると言うことができる。メモリは、プロセッサに統合されてもよく、この場合も、メモリは、プロセッサと電気的に通信していると言うことができる。
【0086】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。