【文献】
製品紹介 UV硬化型剥離剤のご紹介,日立化成株式会社,2011年,全3頁,URL,http://www.hitachi-chem.co.jp/japanese/products/aprm/files/catalog_uv_agent.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔セラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム〕
図1に示すように、本実施形態に係るセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム1(以下単に「剥離フィルム1」という場合がある。)は、基材11と、基材11の一方の面(
図1では上面)に積層された剥離剤層12とを備えて構成される。
【0021】
1.剥離剤層
本実施形態に係る剥離フィルム1の剥離剤層12は、1分子中に少なくとも1個の水酸基、ならびに、1分子中に少なくとも1個の、ポリエステル基およびポリエーテル基から選択される1種類以上の有機基を有するポリオルガノシロキサンと、当該ポリオルガノシロキサンと縮合反応可能なメラミン樹脂とを含有する剥離剤組成物から形成されたものである。
【0022】
なお、一般的に、「メラミン樹脂」とは、複数種のメラミン化合物および/または当該メラミン化合物が縮合してできる多核体を含む混合物を意味する。本明細書においては、「メラミン樹脂」という語句は、上記混合物または1種のメラミン化合物の集合物を意味するものとする。さらに、本明細書では、当該メラミン樹脂が硬化したものを「メラミン硬化物」というものとする。
【0023】
本実施形態に係る剥離フィルム1では、ポリオルガノシロキサンが上記有機基を有することにより、剥離剤組成物を調製する際に、ポリオルガノシロキサンとメラミン樹脂とが良好に混合する。この剥離剤組成物を基材11上に塗工すると、塗工された剥離剤組成物の層においてポリオルガノシロキサンとメラミン樹脂とが厚み方向に分離する。続いて、メラミン樹脂における反応基同士が縮合反応することにより、メラミン硬化物の形成が進行する。さらに、この反応とともに、メラミン樹脂中の反応基(メチロール基またはアルコキシメチル基)とポリオルガノシロキサンの水酸基との反応も進行する。これにより、メラミン硬化物とポリオルガノシロキサンとが一体となった構造を有する剥離剤層12が形成される。このようにして得られた剥離剤層12では、基材11側の面から、剥離剤層12における基材11とは反対側の面(セラミックスラリー・セラミックグリーンシートと接する面;以下「剥離面」という場合がある。)に向かってポリオルガノシロキサン由来の成分が漸増する傾斜構造が形成されている。
【0024】
剥離剤層12が上記傾斜構造を有することで、剥離剤層12の剥離面にポリオルガノシロキサン由来の成分が適度に存在することとなる。また、剥離剤層12が、メラミン樹脂の硬化によって形成されるメラミン硬化物を含むことで、剥離剤層12の貯蔵弾性率が向上する。これらの結果、セラミックグリーンシートから剥離フィルム1を剥離する際の剥離力が適度に低下する。さらに、前述の通り剥離剤層12がメラミン硬化物を含むことで、剥離剤層12の剥離面の表面自由エネルギーが高まり、剥離面に対して極性の高いセラミックスラリーを塗工した場合においても、ハジキやピンホールの発生が抑制される。また、剥離剤層12において、上記のようにメラミン硬化物とポリオルガノシロキサンとが一体となった構造が形成されることにより、セラミックグリーンシートから剥離フィルム1を剥離する際において、セラミックグリーンシートに対するポリオルガノシロキサンの移行が低減される。
【0025】
上記メラミン樹脂は、下記一般式(a)で示される化合物を含有することが好ましい。
【化2】
【0026】
式(a)中、Xは、−H、−CH
2−OH、または−CH
2−O−Rを示す。これらの基は、メラミン化合物同士の縮合反応における反応基を構成する。具体的には、XがHとなることで形成される−NH基は、−N−CH
2−OH基および−N−CH
2−R基との間で縮合反応を行うことができる。また、Xが−CH
2−OHとなることで形成される−N−CH
2−OH基およびXが−CH
2−Rとなることで形成される−N−CH
2−R基は、ともに、−NH基、−N−CH
2−OH基および−N−CH
2−R基との間で縮合反応を行うことができる。また、−CH
2−OHおよび−CH
2−O−Rで示される基は、ポリオルガノシロキサンとメラミン化合物との間の縮合反応に寄与する反応基を構成する。メラミン化合物が当該反応基を有することで、前述した効果を発揮する剥離剤層12が形成される。式(a)中、全てのXが−Hとならないことが好ましく、具体的には、少なくとも1個のXは、−CH
2−OH、または−CH
2−O−Rであることが好ましい。
【0027】
上記−CH
2−O−Rで示される基において、Rは、炭素数1〜8個のアルキル基を示す。当該炭素数は、1〜4個であることが好ましく、特に1〜2個であることが好ましい。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0028】
上記Xは、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、上記Rは、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0029】
縮合反応が効率よく生じるという観点から、式(a)中、−HとなるXの数は、2個以下であることが好ましく、特に1個以下であることが好ましく、さらには0個であることが好ましい。−HとなるXの数が0個となるメラミン化合物の例としては、全てのXが−CH
2−O−CH
3であるヘキサメトキシメチルメラミンが好ましく挙げられる。
【0030】
上記ポリオルガノシロキサンは、下記の一般式(b)で示されるケイ素含有化合物の重合体である。
【化3】
【0031】
式(b)中、mは1以上の整数である。また、式(b)中、R
1〜R
8の少なくとも1個は、ポリエステル基およびポリエーテル基から選択される1種類以上の有機基である。1分子中にポリエステル基およびポリエーテル基の両方が存在していてもよい。ポリオルガノシロキサンが当該有機基を有することで、剥離剤組成物中においてポリオルガノシロキサンとメラミン樹脂とが良好に混合し、さらに剥離剤組成物を基材11上に塗工した際に分離が良好に進行し、その結果、前述した効果を発揮する剥離剤層12が形成される。また、上記有機基はエポキシ変性有機基であってもよい。
【0032】
また、R
1〜R
8のうち、上記有機基以外の少なくとも1個は、水酸基または水酸基を有する有機基である。ポリオルガノシロキサンが水酸基を有することで、当該水酸基とメラミン樹脂の反応基との間で縮合反応が生じ、その結果、前述した効果を発揮する剥離剤層12が形成される。特に、R
3〜R
8の少なくとも1個が水酸基または水酸基を有する有機基であることが好ましく、すなわち、水酸基または水酸基を有する有機基の少なくとも1個は、ポリオルガノシロキサンの末端に存在することが好ましい。水酸基がポリオルガノシロキサンの末端に存在することで、ポリオルガノシロキサンがメラミン樹脂との間で縮合反応し易くなり、前述した効果を発揮する剥離剤層12が効果的に形成される。
【0033】
式(b)中、R
1〜R
8のうち、上述した基以外の基は、炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましい。炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0034】
R
1〜R
8は同一であっても異なっていてもよい。また、R
1およびR
2が複数存在する場合、R
1およびR
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0035】
上記ポリオルガノシロキサンの質量平均分子量は500〜10000であることが好ましく、特に1000〜8000であることが好ましく、さらには1000〜5000であることが好ましい。なお、本明細書における質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0036】
剥離剤組成物中におけるポリオルガノシロキサンの含有量は、メラミン樹脂100質量部に対して、2〜20質量部であることが好ましく、特に3〜15質量部であることが好ましく、さらには5〜10質量部であることが好ましい。
【0037】
剥離剤組成物は、酸触媒をさらに含有することが好ましい。酸触媒の例としては、塩酸、p−トルエンスルホン酸等が好ましく、特にp−トルエンスルホン酸が好ましい。剥離剤組成物が酸触媒を含有することにより、上記メラミン樹脂における縮合反応が効率よく進行する。
【0038】
本実施形態に係る剥離剤組成物中における酸触媒の含有量は、メラミン樹脂100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましく、特に2〜15質量部であることが好ましく、さらには4〜10質量部であることが好ましい。
【0039】
本実施形態に係る剥離剤組成物は、上記成分の他、架橋剤、反応促進剤、反応抑制剤等を含有していてもよい。反応促進剤としては、エチレングリコール、プロパンジオールといったグリコール系化合物を使用してもよい。
【0040】
剥離剤層12の厚さは、0.01〜3μmであることが好ましく、特に0.03〜1μmであることが好ましく、さらには0.1〜0.5μmであることが好ましい。剥離剤層12の厚さが0.01μm以上であることで、剥離剤層12としての機能を効果的に発揮することができる。また、剥離剤層12の厚さが3μm以下であることで、剥離フィルム1をロール状に巻き取った際に、ブロッキングが発生することを抑制することができる。
【0041】
2.剥離剤層の物性
本実施形態に係る剥離フィルム1では、剥離剤層12の剥離面の表面自由エネルギーが、25.0〜30.0mJ/m
2であることが好ましく、特に25.0〜28.0mJ/m
2であることが好ましく、さらには25.0〜26.0mJ/m
2であることが好ましい。表面自由エネルギーが、25.0mJ/m
2以上であることで、上記面に極性の高いセラミックスラリーを塗工した場合であっても、ハジキやピンホールの発生を効果的に抑制することができる。また、表面自由エネルギーが、30.0mJ/m
2以下であることで、成形されたセラミックグリーンシートから剥離フィルム1を剥離する際の剥離力を適度な強さに抑えることができる。なお、表面自由エネルギーの測定方法は、後述する試験例に示すとおりである。本実施形態に係る剥離フィルム1では、剥離剤層12が、前述のポリオルガノシロキサンと、当該ポリオルガノシロキサンと縮合反応可能なメラミン樹脂とを含有する剥離剤組成物から形成されていることにより、25.0〜30.0mJ/m
2という表面自由エネルギーを達成することができる。
【0042】
本実施形態に係る剥離フィルム1では、剥離剤層12の23℃における貯蔵弾性率が、4.0〜6.0MPaであることが好ましく、特に4.0〜5.5MPaであることが好ましく、さらには4.5〜5.0MPaであることが好ましい。貯蔵弾性率が4.0MPa以上であることで、成形されたセラミックグリーンシートから剥離フィルム1を剥離する際の剥離力を適度に低下させることができ、優れた剥離性を達成することができる。また、貯蔵弾性率が6.0MPa以下であることで、成形されたセラミックグリーンシートから剥離フィルム1を剥離する際の剥離力が過度に低下することが抑制され、意図しない剥離が発生することを防止することができる。なお、貯蔵弾性率の測定方法は、後述する試験例に示すとおりである。本実施形態に係る剥離フィルム1では、剥離剤層12が、メラミン樹脂を含有する剥離剤組成物から形成されていることにより、4.0〜6.0MPaという貯蔵弾性率を達成することができる。
【0043】
本実施形態に係る剥離フィルム1では、剥離剤層12の剥離面の剥離力が、20.0〜50.0mN/20mmであることが好ましく、特に21.0〜40.0mN/20mmであることが好ましく、さらには22.0〜30.0mN/20mmであることが好ましい。剥離力が20.0mN/20mm以上であることで、剥離フィルム1上に成形されたセラミックグリーンシートから当該剥離フィルム1が意図せず剥離することを防止することができる。また、剥離力が50.0mN/20mm以下であることで、剥離する際の作業性を向上させることができ、また、セラミックグリーンシートのヒビ、破断等の剥離不良を抑制することができる。なお、剥離力の測定方法は、後述する試験例に示すとおりである。
【0044】
3.基材
本実施形態に係る剥離フィルム1の基材11は、剥離剤層12を積層することができれば特に限定されるものではない。かかる基材11としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニルなどのプラスチックからなるフィルムが挙げられ、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。これらの中でもポリエステルフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、さらには二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、加工時、使用時等において、埃等が発生しにくいため、例えば、埃等によるセラミックスラリー塗工不良等を効果的に防止することができる。さらに、ポリエチレンテレフタレートフィルムに帯電防止処理を行うことで、有機溶剤を使用するセラミックスラリーを塗工する際の静電気による発火を防止したり、塗工不良等を防止する効果を高めることができる。
【0045】
また、この基材11においては、その表面に設けられる剥離剤層12との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にコロナ放電処理法が効果及び操作性の面から好ましく用いられる。
【0046】
基材11の厚さは、通常10〜300μmであればよく、好ましくは15〜200μmであり、特に好ましくは20〜125μmである。
【0047】
4.セラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムの製造方法
本実施形態に係る剥離フィルム1は、基材11の一方の面に、前述した剥離剤組成物及び所望により有機溶剤を含有する塗工液を塗工した後、乾燥し、硬化させて剥離剤層12を形成することにより得られる。塗工方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法などが使用できる。
【0048】
上記有機溶剤としては特に制限はなく、様々なものを用いることができる。例えばトルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素化合物をはじめ、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びこれらの混合物等が用いられる。特に、イソプロピルアルコールとイソブチルアルコールとの混合液(質量比4:1)を使用することが好ましい。
【0049】
上記のように塗工した剥離剤組成物は、熱硬化させることが好ましい。この場合の加熱温度は90〜140℃であることが好ましく、加熱時間は10〜120秒程度であることが好ましい。特に、120℃で1分間加熱することが好ましい。
【0050】
5.セラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムの使用方法
本実施形態に係る剥離フィルム1は、セラミックグリーンシートを製造するために使用することができる。具体的には、剥離剤層12の剥離面に対し、チタン酸バリウムや酸化チタンなどのセラミック材料を含有するセラミックスラリーを塗工した後、当該セラミックスラリーを乾燥させることでセラミックグリーンシートを得ることができる。塗工は、例えば、スロットダイ塗工方式やドクターブレード方式等を用いて行うことができる。
【0051】
本実施形態に係る剥離フィルム1に対して使用されるセラミックスラリーは、極性が高いセラミックスラリーであってもよい。極性が高いセラミックスラリーは、従来の剥離フィルムの剥離面に塗工した場合、ハジキやピンホールを発生させ易いが、本実施形態に係る剥離フィルム1に対して使用した場合、ハジキやピンホールの発生が効果的に抑制され、良好な塗工を実現することができる。
【0052】
極性が高いセラミックスラリーとしては、例えば、バインダー成分としてアクリル系樹脂を使用して調製されたセラミックスラリーが挙げられる。一般的に、セラミックスラリーは、バインダー成分としてブチラール系樹脂またはアクリル系樹脂が使用して調製されるが、より極性が高いアクリル系樹脂を使用することで、極性が高いセラミックスラリーを得ることができる。また、極性が高いセラミックスラリーの他の例としては、溶媒として水系溶媒を使用して調製されたセラミックスラリーが挙げられる。
【0053】
本実施形態に係る剥離フィルム1によれば、極性の高いセラミックスラリーを塗工する場合であっても、ハジキやピンホールの発生が抑制される。さらに、セラミックグリーンシートから剥離フィルム1を剥離する際の剥離力が適度なものとなり、特に、強度の低い薄膜のセラミックグリーンシートを剥離剤層に成形した場合でも、ヒビ、破断等の剥離不良を発生させることなく剥離することができる。このように、本実施形態に係る剥離フィルム1によれば、セラミックスラリーの塗工性に優れるとともに、セラミックグリーンシートの剥離性にも優れ、セラミックグリーンシート製造における歩留まりが向上する。
【0054】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0055】
例えば、基材11における剥離剤層12の反対側の面や、基材11と剥離剤層12との間には、帯電防止層等の他の層が設けられてもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0057】
〔実施例1〕
メラミン樹脂(主成分:ヘキサメトキシメチルメラミン,MTアクアポリマー社製,商品名:サイメル303,固形分100質量%)90質量部と、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン社製,商品名:BYK−370,固形分25質量部%)10質量部と、酸触媒としてのp−トルエンスルホン酸5質量部とからなる剥離剤組成物を、イソプロピルアルコールとイソブチルアルコールとの混合溶剤(質量比率4:1)中にて混合し、固形分30質量%の塗布液を得た。
【0058】
得られた塗布液を、基材としての二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:38μm)の片面上にバーコーターにより均一に塗布した。次いで、120℃で1分間加熱乾燥し、剥離剤組成物を硬化させ、基材上に厚さ1.0μmの剥離剤層が積層された剥離フィルムを得た。
【0059】
〔実施例2および3〕
剥離剤層の厚さを表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして剥離フィルムを得た。
【0060】
〔実施例4〕
剥離剤組成物中におけるポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサンの含有量を表1に示すように変更した以外は、実施例3と同様にして剥離フィルムを得た。
【0061】
〔比較例1〕
ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサンを使用しないこと以外は、実施例3と同様にして剥離フィルムを得た。
【0062】
〔比較例2〕
ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン10質量部の代わりに、両末端水酸基変性ジメチルシロキサン(信越化学工業社製,商品名:KF―9701)5質量部を使用した以外は、実施例3と同様にして剥離フィルムを得た。
【0063】
〔比較例3〕
ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン10質量部の代わりに、ポリジメチルシロキサン(信越化学工業社製,商品名:KF―96−50cs)5質量部を使用した以外は、実施例3と同様にして剥離フィルムを得た。
【0064】
〔比較例4〕
ステアリル変性アルキド化合物とメチル化メラミンとの混合物(日立化成ポリマー社製,商品名:テスファイン303,固形分20質量%)100質量部と、酸触媒としてのp−トルエンスルホン酸3質量部とからなる剥離剤組成物を、イソプロピルアルコールとイソブチルアルコールとの混合溶剤(質量比率4:1)中にて混合し、固形分30質量%の塗布液を得た。
【0065】
得られた塗布液を、基材としての二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:38μm)の片面上にバーコーターにより均一に塗布した。次いで、120℃で1分間加熱乾燥し、剥離剤組成物を硬化させ、基材上に厚さ0.1μmの剥離剤層が積層された剥離フィルムを得た。
【0066】
〔比較例5〕
シロキサン結合を主骨格としビニル基を有するオルガノポリシロキサンおよびオルガノハイドロジェンポリシロキサンからなる付加型オルガノポリシロキサン(信越化学工業社製,商品名:シリコーンKS−847H,固形分30質量%)100質量部をトルエンによって希釈し、この希釈液に対して白金触媒(信越化学工業社製,商品名:PL−50T)2質量部を添加し混合することにより、固形分1.5質量%の剥離剤組成物の塗布液を得た。
【0067】
得られた塗布液を、基材としての二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:38μm)の片面上にバーコーターにより均一に塗布した。次いで、130℃で1分間加熱乾燥し、剥離剤組成物を硬化させ、基材上に厚さ0.1μmの剥離剤層が積層された剥離フィルムを得た。
【0068】
〔試験例1〕(剥離力の測定)
チタン酸バリウム(BaTiO
3;堺化学工業社製,BT−03)100質量部、アクリル系バインダー樹脂(三菱レイヨン社製,商品名:ダイヤナールBR-106)7質量部、およびジオクチルフタレート(関東化学社製,フタル酸ジオクチル 鹿1級)3質量部に、トルエンとエタノールとの混合液(質量比5:5)80質量部を加え、ボールミルにて混合分散させて、セラミックスラリーを調製した。
【0069】
実施例および比較例にて製造してから常温で48時間保管した剥離フィルムにおいて、剥離剤層の剥離面に、ドクターブレード法により上記セラミックスラリーを均一に塗工し、その後、乾燥機にて80℃で1分間乾燥させた。これにより、剥離フィルム上に厚さ3μmのセラミックグリーンシートが得られた。このようにして、セラミックグリーンシート付剥離フィルムを製造した。
【0070】
このセラミックグリーンシート付剥離フィルムの、セラミックグリーンシートにおける剥離フィルムとは反対側の面に対し、アクリル粘着テープ(日東電工社製,商品名:31Bテープ)を貼付した。その状態で、室温23度、湿度50%の雰囲気下に24時間静置した後、20mm幅に裁断した。
【0071】
裁断したサンプルの粘着テープ側を剛板に固定し、引張試験機を用いて180°の剥離角度、100mm/分の剥離速度でセラミックグリーンシートから剥離フィルムを剥離し、剥離するのに必要な力(剥離力;mN/20mm)を測定した。結果を表1に示す。
【0072】
〔試験例2〕(スラリー塗工性の評価)
実施例及び比較例にて製造してから常温で48時間保管した剥離フィルムにおいて、剥離剤層の剥離面に対し、上記の通り製造したセラミックスラリーを、ダイコーターを用いて幅250mm、長さ10mにわたって塗工し、その後乾燥機にて80℃で1分間乾燥させることで、剥離フィルム上に厚さ1μmのセラミックグリーンシートを成形した。このようにして、セラミックグリーンシート付剥離フィルムを製造した。
【0073】
得られたセラミックグリーンシート付剥離フィルムについて、剥離フィルム側を蛍光灯で照らしながら、セラミックグリーンシート全体を目視で検査し、以下の基準に基づいてスラリー塗工性を評価した。結果を表1に示す。
A:セラミックグリーンシートにピンホールが発生しなかった。
B:セラミックグリーンシートに1〜5個のピンホールが発生した。
C:セラミックグリーンシートに6個以上のピンホールが発生した。
【0074】
〔試験例3〕(表面自由エネルギーの測定)
実施例および比較例で得られた剥離フィルムについて、剥離剤層の剥離面に対する各種液滴の接触角を測定し、その値をもとに北崎・畑理論により、表面自由エネルギー(mJ/m
2)を求めた。接触角は、接触角計(協和界面科学社製,DM−701)を使用し、静滴法によってJIS R3257に準じて測定した。液滴については、「分散成分」としてジヨードメタン、「双極子成分」として1−ブロモナフタレン、「水素結合成分」として蒸留水を使用した。結果を表1に示す。
【0075】
〔試験例4〕(貯蔵弾性率の測定)
実施例および比較例で得られた剥離フィルムを、室温23度、湿度50%の雰囲気下に24時間静置した後、10mm×10mmサイズに裁断した。次に、アルミニウム製の台座に接着したガラス板上に、裁断した剥離フィルムの基材裏面を2液系のエポキシ接着剤で固定した。そして、微小硬度評価装置(MTS社製,Nano Indenter SA2)を使用して、圧子の最大押し込み深さ100nm、歪速度0.05sec
−1、変位振幅2nm、振動周波数45Hzにてナノインデンテーション試験を行い、上記剥離フィルムの剥離剤層の貯蔵弾性率(MPa)を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
〔試験例5〕(シリコーン移行性の評価)
アクリル系バインダー樹脂(三菱レイヨン社製,商品名:ダイヤナールBR−106)を、トルエンとエタノールとの混合溶媒(混合比50:50)にて希釈し、固形分濃度20質量%のアクリル樹脂溶液を得た。このアクリル樹脂溶液を、実施例および比較例で得られた剥離フィルムの剥離面に35μmアプリケーターを用いて均一に塗工し、その後、乾燥機にて60℃で1分間乾燥させた。これにより、厚さ4μmのアクリル樹脂シートが積層された剥離フィルムを得た。
【0077】
このアクリル樹脂シートから剥離フィルムを剥離し、当該アクリル樹脂シートにおける剥離面と接触していた面について、X線光電子分光分析法(XPS)によって測定されるケイ素原子(Si)、炭素原子(C)及び酸素原子(O)の量(XPSカウント数)に基づき、下記の式によりケイ素原子比率(原子%)を算出した。結果を表1に示す。なお、材料としてオルガノポリシロキサンを使用していない比較例1および4については、当該試験を行わなかった。
ケイ素原子比率(原子%)=[(Si元素量)/{(C元素量)+(O元素量)+(Si元素量)}]×100
【0078】
さらに、得られたケイ素原子比率に基づいて、以下の判断基準でシリコーン移行性を評価した。結果を表1に示す。
○…ケイ素原子比率が1.00atom%未満
×…ケイ素原子比率が1.00atom%以上
なお、ケイ素原子比率が1.00atom%以上である場合、スラリー塗工時におけるピンホールが発生や、グリーンシートを積層する工程における積層ズレが生じ、得られる積層セラミック製品において製品不良となるおそれがある。
【0079】
表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
・ポリエステル変性水酸基含有PDMS:ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン社製,商品名:BYK−370,固形分25質量部%)
・水酸基含有PDMS:両末端水酸基変性ジメチルシロキサン(信越化学工業社製,商品名:KF―9701)
・PDMS:ポリジメチルシロキサン(信越化学工業社製,商品名:KF―96−50cs)
・テスファイン303:ステアリル変性アルキド化合物とメチル化メラミンとの混合物(日立化成ポリマー社製,商品名:テスファイン303,固形分20質量%)
・シリコーンKS−847H:シロキサン結合を主骨格としビニル基を有するオルガノポリシロキサンおよびオルガノハイドロジェンポリシロキサンからなる付加型オルガノポリシロキサン(信越化学工業社製,商品名:シリコーンKS−847H,固形分30質量%)
【0080】
【表1】
【0081】
表1から明らかなように、実施例で得られた剥離フィルムは、極性の高いスラリーの塗工性に優れており、さらに、セラミックグリーンシートから剥離する際に適度な剥離力で剥離することが可能であった。また、セラミックグリーンシートへのシリコーンの移行が殆ど生じないことがわかる。
【0082】
一方、比較例1で得られた剥離フィルムは、表面自由エネルギーが高い値を示し、セラミックグリーンシートから剥離する際に、ヒビ、破断等の剥離不良が発生した。また、比較例2および3で得られた剥離フィルムでは、シリコーン移行量が多かった。また、比較例4で得られた剥離フィルムは、表面自由エネルギーが比較的高い値を示し、セラミックグリーンシートから剥離する際に、比較的強い剥離力を要した。また、比較例5で得られた剥離フィルムは、表面自由エネルギーおよび貯蔵弾性率がともに低い値を示し、ハジキやピンホールが発生してスラリーの塗工性が悪く、セラミックグリーンシートから剥離する際に強い剥離力を要し、さらにシリコーン移行量が多かった。