(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記牽引プーリが、前記ワイヤの張力によって、前記回転軸線を通り前記合力の方向に延びる直線と前記揺動軸線との間の距離が増大する方向に移動可能に前記第2の把持片に支持されている請求項1に記載の把持機構。
前記牽引プーリよりも他端側において前記第1の把持片に前記揺動軸線に平行な回転軸線回りに回転可能に支持され、前記牽引プーリから他端側へ延びる前記ワイヤが巻き掛けられることによって、前記牽引プーリから他端側へ延びる前記ワイヤの方向を、前記牽引プーリの回転軸線を通り前記合力の方向に延びる直線と前記揺動軸線との間の距離が増大する方向に変更する調整プーリを備える請求項1または請求項2に記載の把持機構。
前記牽引プーリよりも他端側において前記第1の把持片に前記揺動軸線に平行な回転軸線回りに回転可能に支持され、前記牽引プーリから他端側へ延びる前記ワイヤが巻き掛けられることによって、前記牽引プーリから他端側へ延びる前記ワイヤの方向を、前記牽引プーリの回転軸線を通り前記合力の方向に延びる直線と前記揺動軸線との間の距離が増大する方向に変更する調整プーリを備え、
下記の関係式を満足する請求項2に記載の把持機構。
α<β+γ
θ>90
ここで、
αは、前記揺動軸線と前記調整プーリの回転軸線との間の距離、
βは、前記揺動軸線と前記牽引プーリの回転軸線との間の距離、
γは、前記牽引プーリの回転軸線と前記調整プーリの回転軸線との間の距離、
θは、前記調整プーリの回転軸線と前記揺動軸線から最も離れた位置における前記牽引プーリの回転軸線とを結ぶ線分と、前記牽引プーリの移動方向とが成す角度
である。
前記牽引プーリが、前記揺動軸線に最も近い位置における該牽引プーリの回転軸線、前記揺動軸線および前記調整プーリの回転軸線を通過する円の外側へ向かって、かつ、前記調整プーリの回転軸線を中心とし前記揺動軸線に最も近い位置における前記牽引プーリの回転軸線を通過する円の内側へ向かって移動可能に前記第2の把持片に支持されている請求項4に記載の把持機構。
前記調整プーリが、前記揺動軸線から最も離れた位置における前記調整プーリの回転軸線、前記牽引プーリの回転軸線および前記揺動軸線を通過する円の内側へ向かって、かつ、前記牽引プーリの回転軸線を中心とし前記調整プーリの回転軸線を通過する円の内側へ向かって、前記ワイヤの張力によって移動可能に前記第1の把持片に支持されている請求項6に記載の把持機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の把持機構においては、一対の把持片の開き角度が一対のリンクによって構造的に制限されるため、開き角度を大きくすることができないという問題がある。
本発明は、一対の把持片の開き角度を大きく確保しつつ、把持力を増大させることができる把持機構および把持具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、第1の把持片と、該第1の把持片と並列に配置され、一端側が開閉するように前記第1の把持片との配列方向に交差する揺動軸線回りに揺動可能に連結された第2の把持片と、前記揺動軸線に平行な回転軸線回りに回転可能に前記第2の把持片に支持された牽引プーリと、前記第1の把持片および前記第2の把持片のうちの一方に対して固定された先端および前記第2の把持片よりも他端側に配置された基端を有し、前記牽引プーリに先端部が巻き掛けられたワイヤとを備え、該ワイヤは、前記基端が牽引されることによって前記回転軸線を挟んだ前記牽引プーリの両側において略同一方向の張力を発生し、かつ、前記牽引プーリの前記回転軸線に作用する張力の合力が前記揺動軸線回りの前記第2の把持片の閉方向の回転モーメントを発生させるように、前記牽引プーリに巻き掛けられ
、該牽引プーリが、前記合力によって前記第2の把持片を揺動させる前記回転モーメントを発生させる位置に配置されると共に、前記回転軸線と同軸のシャフトを有し、前記第2の把持片の他端側に、前記回転軸線を通り前記合力の方向に延びる直線と前記揺動軸線との間の距離が増大する方向に前記牽引プーリが移動可能なように前記シャフトを支持するスロットが設けられている把持機構である。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、ワイヤの基端に牽引力が与えられたときに、ワイヤが巻き掛けられた牽引プーリおよび該牽引プーリを支持している第2の把持片に牽引力が伝達され、牽引力のうち、第2の把持片の揺動軸線回りの接線方向の成分が閉方向の回転モーメントとして第2の把持片に作用し、第1の把持片の一端部に対して第2の把持片の一端部が押し付けられる。これにより、第1の把持片の一端部と第2の把持片の一端部との間に挟まれた物体に対する把持力を発生することができる。
【0007】
この場合に、先端が固定されているワイヤの基端に牽引力が与えられたときに、ワイヤには、牽引プーリの回転軸線を挟む両側において略同一方向の張力が発生し、該2つの張力の合力が牽引プーリに作用する。すなわち、ワイヤの基端に与えられた牽引力は約2倍に増幅されて牽引プーリおよび第2の把持片に作用する。これにより、把持力を増大させることができる。また、第1の把持片に対する第2の把持片の開方向の揺動角度は構造的に制限されないので、第1の把持片と第2の把持片との間の開き角度を大きく確保することができる。
【0008】
上記第1の態様においては、前記牽引プーリが、前記ワイヤの張力によって、前記回転軸線を通り前記合力の方向に延びる直線と前記揺動軸線との間の距離が増大する方向に移動可能に前記第2の把持片に支持されていてもよい。
このようにすることで、合力が発生する回転モーメントの大きさは、牽引プーリの回転軸線を通り合力の方向に延びる直線と揺動軸線との間の距離に比例するので、該距離が増大する方向に牽引プーリが移動することによって、第2の把持片に作用する閉方向の回転モーメントをさらに増幅し、把持力をさらに増大させることができる。
【0009】
上記第1の態様においては、前記牽引プーリよりも他端側において前記第1の把持片に前記揺動軸線に平行な回転軸線回りに回転可能に支持され、前記牽引プーリから他端側へ延びる前記ワイヤが巻き掛けられることによって、前記牽引プーリから他端側へ延びる前記ワイヤの方向を、前記牽引プーリの回転軸線を通り前記合力の方向に延びる直線と前記揺動軸線との間の距離が増大する方向に変更する調整プーリを備えていてもよい。
このようにすることで、牽引プーリの回転軸線を通り合力の方向に延びる直線と揺動軸線との間の距離が増大する方向に合力の方向が調整プーリによって調整されることによって、第2の把持片に作用する閉方向の回転モーメントをさらに増幅し、把持力をさらに増大させることができる。
【0010】
上記第1の態様においては、前記牽引プーリよりも他端側において前記第1の把持片に前記揺動軸線に平行な回転軸線回りに回転可能に支持され、前記牽引プーリから他端側へ延びる前記ワイヤが巻き掛けられることによって、前記牽引プーリから他端側へ延びる前記ワイヤの方向を、前記牽引プーリの回転軸線を通り前記合力の方向に延びる直線と前記揺動軸線との間の距離が増大する方向に変更する調整プーリを備え、下記の関係式を満足していてもよい。下記関係式において、αは、前記揺動軸線と前記調整プーリの回転軸線との間の距離、βは、前記揺動軸線と前記牽引プーリの回転軸線との間の距離、γは、前記牽引プーリの回転軸線と前記調整プーリの回転軸線との間の距離、θは、前記調整プーリの回転軸線と前記揺動軸線から最も離れた位置における前記牽引プーリの回転軸線とを結ぶ線分と、前記牽引プーリの移動方向とが成す角度である。
α<β+γ
θ>90
このようにすることで、ワイヤが牽引されたときの牽引プーリの移動方向を一定方向に安定させ、大きな把持力を安定的に発生させることができる。
【0011】
上記第1の態様においては、前記牽引プーリが、前記揺動軸線に最も近い位置における該牽引プーリの回転軸線、前記揺動軸線および前記調整プーリの回転軸線を通過する円の外側へ向かって、かつ、前記調整プーリの回転軸線を中心とし前記揺動軸線に最も近い位置における前記牽引プーリの回転軸線を通過する円の内側へ向かって移動可能に前記第2の把持片に支持されていてもよい。
このようにすることで、ワイヤが牽引されたときに、牽引プーリの回転軸線を通り合力の方向に延びる直線と揺動軸線との間の距離が増大する方向に牽引プーリが移動することによって、第2の把持片に作用する閉方向の回転モーメントをさらに増幅し、把持力をさらに増大させることができる。
【0012】
上記第1の態様においては、前記ワイヤが、前記牽引プーリおよび前記調整プーリを取り巻くように1周以上巻き掛けられていてもよい。
このようにすることで、ワイヤの基端に与えられた牽引力をさらに増幅して牽引プーリおよび第2の把持片に伝達し、回転モーメントおよび把持力をさらに増大させることができる。
【0013】
上記第1の態様においては、前記調整プーリが、前記揺動軸線から最も離れた位置における前記調整プーリの回転軸線、前記牽引プーリの回転軸線および前記揺動軸線を通過する円の内側へ向かって、かつ、前記牽引プーリの回転軸線を中心とし前記調整プーリの回転軸線を通過する円の内側へ向かって、前記ワイヤの張力によって移動可能に前記第1の把持片に支持されていてもよい。
このようにすることで、ワイヤが牽引されたときに、牽引プーリの回転軸線を通り合力の方向に延びる直線と揺動軸線との間の距離が増大する方向に調整プーリが移動することによって、第2の把持片に作用する閉方向の回転モーメントをさらに増幅し、把持力をさらに増大させることができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、上記いずれかに記載の把持機構と、該把持機構の他端側に設けられ、前記ワイヤの前記基端を牽引する駆動部とを備える把持具である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一対の把持片の開き角度を大きく確保しつつ、把持力を増大させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る把持機構および該把持機構を備える把持具について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る把持具1は、把持鉗子のように生体組織を把持する機能を有する医療用器具である。把持具1は、
図1に示されるように、体内に挿入可能な細長い胴部2と、該胴部2の先端に設けられた把持機構3と、胴部2の基端に接続された駆動部4とを備えている。
【0018】
把持機構3は、
図2に示されるように、第1の把持片5と、該第1の把持片5に揺動可能に連結された第2の把持片6と、該第2の把持片6に支持された牽引プーリ7と、該牽引プーリ7を介して第2の把持片6に把持力を発生させるワイヤ8とを備えている。
図2は、第1の把持片5および第2の把持片6が閉じていて、駆動部4によってワイヤ8が牽引されていない閉状態を示している。
【0019】
第1の把持片5は、胴部2の本体を構成する円筒状のシースと一体に形成されている。
第1の把持片5は先端側に第1の把持面5aを有し、第2の把持片6は先端側に第2の把持面6aを有している。第1の把持片5および第2の把持片6は、胴部2の長手軸に沿う方向にそれぞれ配置され、把持面5a,6a同士を対向させて互いに並列している。以下、第1の把持片5および第2の把持片6の配列方向を上下方向と定義し、第1の把持片5側を下側と定義し、第2の把持片6側を上側と定義する。
【0020】
第2の把持片6は、第1の把持面5aおよび第2の把持面6aよりも基端側において、上下方向および胴部2の長手軸に直交する揺動軸線A1回りに揺動可能に第1の把持片5にヒンジによって連結されている。第2の把持片6が揺動軸線A1回りに揺動することによって、第1の把持片5および第2の把持片6の先端側が開閉するようになっている。
【0021】
牽引プーリ7は、該牽引プーリ7の回転軸線A2と同軸に形成されたシャフト9を有している。第2の把持片6には、揺動軸線A1と平行な方向に深さを有し、揺動軸線A1に対して基端側かつ下側へ向かって略半径方向に延びるスロット10が形成されている。牽引プーリ7は、スロット10内にシャフト9が挿入されることによって、揺動軸線A1に平行な回転軸線A2回りに回転可能に、かつ、スロット10の長手方向に沿って揺動軸線A1に接近および離間する方向に移動可能に第2の把持片6に支持されている。ここで、スロット10は、揺動軸線A1よりも基端側かつ下側に形成されている。
【0022】
ワイヤ8は、胴部2の内部に長手方向に配線され、先端部が牽引プーリ7の先端側の外周面に約半周巻き掛けられている。ワイヤ8の先端は、牽引プーリ7よりも基端側において胴部2に固定され、ワイヤ8の基端は、駆動部4に接続されている。また、牽引プーリ7の下端から基端へ延びるワイヤ8の一部分と、牽引プーリ7の上端から基端へ延びるワイヤ8の一部分とは、互いに略平行に配置されている。
駆動部4は、ワイヤ8の基端が接続されたモータ(図示略)を有し、該モータの作動によってワイヤ8を基端側へ牽引してワイヤ8に張力を発生させるようになっている。
【0023】
次に、このように構成された把持機構3および把持具1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る把持具1によれば、駆動部4の作動によってワイヤ8が基端側へ牽引されると、
図4に示されるように、揺動軸線A1回りの閉方向の回転モーメントM’が第2の把持片6に作用し、回転モーメントM’によって第2の把持片6が第1の把持片5へ向かって押し付けられる。これにより、第1の把持面5aと第2の把持面6aとの間に挟まれた生体組織(図示略)を把持する把持力を発生することができる。
【0024】
より詳細には、駆動部4によってワイヤ8の基端が牽引されると、ワイヤ8には、
図3に示されるように、牽引プーリ7の上下両側において、駆動部4からワイヤ8の基端に与えられた牽引力と略等しい大きさを有し、基端側へ向かう略同一方向の張力f1,f2が発生する。牽引プーリ7は、張力f1と張力f2との合力F=f1+f2によって基端側へ牽引され、スロット10の最も先端側の位置からスロット10の最も基端側の位置まで、揺動軸線A1から離間する方向に移動する。
【0025】
スロット10の最も基端側まで牽引プーリ7が移動した状態において、ワイヤ8には、
図4に示されるように、牽引プーリ7の上下両側において基端側へ向かう略同一方向の張力f1’,f2’が発生し、牽引プーリ7には張力f1’と張力f2’との合力F’=f1’+f2’が作用し、さらに該合力F’は牽引プーリ7を支持している第2の把持片6にも作用する。ここで、揺動軸線A1に対して下側に位置する牽引プーリ7の回転軸線A2に作用する合力F’は、揺動軸線A1と回転軸線A2とを結ぶ線分S1と交差する方向を有する。したがって、合力F’は、揺動軸線A1回りの接線方向の成分、すなわち第2の把持片6を揺動軸線A1回りの閉方向に揺動させる回転モーメントM’を発生させる。
【0026】
このように、本実施形態によれば、牽引プーリ7は、第2の把持片6を基端側へ牽引する動滑車を構成しており、駆動部4からワイヤ8に与えられた牽引力を約2倍増幅して第2の把持片6に伝達する。これにより、胴部2の長手軸に沿う方向に真っ直ぐに配置された1本のワイヤ8のみを用いて第2の把持片6を牽引する構造に比べて、約2倍の回転モーメントM’を発生させ、把持片5,6による把持力を約2倍増大させることができるという利点がある。
【0027】
さらに、合力F’が発生する回転モーメントM’の大きさは、揺動軸線A1と合力Fとの幾何的な関係によって決まり、牽引プーリ7の回転軸線A2を通り合力F’の方向に延びる直線と揺動軸線A1との間の距離D’に比例する。把持状態においては、牽引プーリ7がスロット10内を先端側から基端側へ移動することによって、閉状態における距離Dに比べて距離D’が増大する。これにより、より大きな回転モーメントM’が得られ、把持力をさらに増大させることができるという利点がある。
また、第2の把持片6の開方向の揺動範囲は、牽引プーリ7およびワイヤ8によって構造的に制限されないので、第1の把持片5と第2の把持片6との開き角度を大きく確保することができるという利点がある。
【0028】
なお、本実施形態においては、牽引プーリ7が距離Dが増大する方向に移動可能に第2の把持片6に支持されていることとしたが、これに代えて、牽引プーリ7が移動せずに同一位置で回転可能に第2の把持片6に支持されていてもよい。
このようにしても、駆動力からワイヤ8に与えられた牽引力を牽引プーリ7によって約2倍に増幅し、第2の把持片6に作用する回転モーメントおよび把持力を増大させることができる。
【0029】
また、本実施形態においては、
図5に示されるように、把持機構3が、牽引プーリ7の基端側に、回転軸線A2に平行な回転軸線A3回りに回転可能に設けられ、牽引プーリ7の上端から基端側へ延びるワイヤ8の方向を調整する調整プーリ11を備えていてもよい。調整プーリ11は、合力F’の方向を、距離D’が増大する方向、すなわち回転モーメントM’が増大する方向に変更するように、設けられている。これにより、ワイヤ8を同一の牽引力で牽引したときに発生する回転モーメントM’をさらに増大させることができる。
【0030】
具体的には、調整プーリ11は、揺動軸線A1と回転軸線A2との間の線分S1と、回転軸線A2と回転軸線A3との間の線分S2とが成す角度がより90°に近づくように、牽引プーリ7よりも上側に設けられ、ワイヤ8は調整プーリ11を介して牽引プーリ7の上端から基端側へ延びている。これにより、牽引プーリ7の上端と調整プーリ11の上端との間のワイヤ8の一部分が線分S1と成す角度が、より90°に近づき、距離D’が増大する。
【0031】
図5の把持機構3においては、把持片5,6が閉じた位置に配置されているときに、
図6に示されるように、揺動軸線A1、回転軸線A2および回転軸線A3の位置関係が、下記の関係式(1)および(2)を満足している。さらに、合力Fによる牽引プーリ7の移動方向と、回転軸線A2および回転軸線A3の位置が、下記の関係式(2)を満足している。関係式(1)および(2)を満足することによって、ワイヤ8を牽引したときに牽引プーリ7をスロット10内において確実に揺動軸線A1から離間する方向へ移動させることができ、強い把持力を安定的に発揮することができる。関係式(1)および(2)において、αは、揺動軸線A1と調整プーリ11の回転軸線A3との間の距離、βは、揺動軸線A1と牽引プーリ7の回転軸線A2との間の距離、γは、牽引プーリ7の回転軸線A2と調整プーリ11の回転軸線A3との間の距離である。関係式(2)において、θは、牽引プーリ7の移動方向であるスロット10の長手方向と、揺動軸線A1から最も離れた位置における牽引プーリ7の回転軸線A2と回転軸線A3とを結ぶ線分とが成す角度(deg)である。
(1) α<β+γ
(2) θ>90
【0032】
α=β+γである場合、揺動軸線A1と回転軸線A2と回転軸線A3とが同一直線上に位置する。この配置の場合、調整プーリ11によって合力F’の方向を回転モーメントM’が増大する方向へ変更することが難しい。
θ=90である場合、牽引プーリ7はスロット10内を移動せず、回転モーメントM’の増大は得られない。θ<90である場合、牽引プーリ7がスロット10に沿って、揺動軸線A1に接近するため、回転モーメントM’は減少する。
【0033】
さらに、
図5の把持機構3においては、ワイヤ8が牽引されたときに、牽引プーリ7が、
図7に示されるように、第1の円C1の外側へ向かって、かつ、第2の円C2の内側へ向かって移動するように、スロット10が形成されている。第1の円C1は、揺動軸線A1、揺動軸線A1に最も近い位置における牽引プーリ7の回転軸線A2および調整プーリ11の回転軸線A3を通過する円である。第2の円C2は、調整プーリ11の回転軸線A3を中心とし、揺動軸線A1に最も近い位置における牽引プーリ7の回転軸線A2を通過する円である。ここで、回転軸線A2の位置は、把持片5,6が閉じた位置に配置されているときの位置である。
このようにすることで、ワイヤ8が牽引されたときに、牽引プーリ7を距離D、すなわち回転モーメントMが増大する方向に移動させ、把持力を増大させることができる。
【0034】
また、本実施形態においては、牽引プーリ7に約半周だけワイヤ8を巻き掛けることとしたが、これに代えて、
図8および
図9に示されるように、牽引プーリ7および調整プーリ11を取り巻くようにワイヤ8を1周以上牽引プーリ7および調整プーリ11に巻き掛けてもよい。
第2の把持片6に作用する牽引力の大きさは、牽引プーリ7を介して間接的に、または直接的に、第2の把持片6に接続されたワイヤ8の見かけの数が多い程、増大する。したがって、牽引プーリ7と調整プーリ11との間のワイヤ8の巻き数を増やすことによって、第2の把持片6に作用する牽引力および回転モーメントM’をさらに増幅し、把持力をさらに増大させることができる。
【0035】
例えば、
図8に示されるように、ワイヤ8の先端を第2の把持片6に固定し、ワイヤ8の先端部を牽引プーリ7および調整プーリ11に1周半巻き掛けた場合には、
図5の場合の約1.5倍の回転モーメントが得られる。
図9に示されるように、ワイヤ8の先端を胴部2に固定し、ワイヤ8の先端部を牽引プーリ7および調整プーリ11に約2周巻き掛けた場合には、
図5の場合の約2倍の回転モーメントが得られる。
【0036】
図8および
図9の把持機構3においては、
図10に示されるように、ワイヤ8が牽引されたときに、調整プーリ11が、ワイヤ8の張力によって揺動軸線A1に接近する方向に移動可能に設けられていてもよい。
図10において、ワイヤ8の図示は省略されている。
この場合、ワイヤ8が牽引されたときに、調整プーリ11が、第3の円C3の内側へ向かって、かつ、第4の円C4の内側へ向かって移動するように、調整プーリ11の回転軸線A3を案内するスロット14が第1の把持片5に形成される。第3の円C3は、揺動軸線A1、該揺動軸線A1から最も遠い位置における牽引プーリ7の回転軸線A2および揺動軸線A1から最も遠い位置における調整プーリ11の回転軸線A3を通過する円である。第4の円C4は、揺動軸線A1から最も遠い位置における牽引プーリ7の回転軸線A2を中心とし、揺動軸線A1から最も遠い位置における調整プーリ11の回転軸線A3を通過する円である。ここで、回転軸線A2の位置は、把持片5,6が閉じた位置に配置されているときの位置である。
【0037】
このようにすることで、ワイヤ8が牽引されたときに、調整プーリ11は、線分S1と線分S2とが成す角度がより90°に近づく方向に移動し、距離D’および回転モーメントM’がさらに増大する。これにより、把持力をさらに増大させることができる。
【0038】
また、本実施形態においては、把持力を発生するための機構についてのみ説明したが、第2の把持片6を開方向に揺動させるための任意の機構が揺動機構に設けられる。
例えば、
図11に示されるように、揺動軸線A1よりも上側かつ先端側において第2の把持片6に先端が固定され、胴部2の長手軸に沿う方向に略真っ直ぐに延びるもう1つのワイヤ12が設けられていてもよい。もう1つのワイヤ12の基端が牽引されることによって第2の把持片6に開方向の回転モーメントを作用させることができる。または、
図12に示されるように、先端が第1の把持片5に固定されたもう1つのワイヤ12を、第2の把持片6に形成された揺動軸線A1を中心とする円弧状の溝13内を介して基端側へ配線し、開方向の回転モーメントが増幅されるようにしてもよい。
図11および
図12において、ワイヤ8の図示は省略されている。
あるいは、ワイヤ12に代えて、第2の把持片6を閉方向に付勢するバネのような弾性部材(図示略)を採用してもよい。