【実施例】
【0042】
実施例1
【0043】
本実施例は、本開示によって提供される例示的なアジュバントの製造方法を示す。
【0044】
材料及び方法
【0045】
使用する材料は以下の通りである。
A.LABRAFAC(商標)Lipophile WL1349(Gattefosseカタログ番号3139)
B.CARBOPOL(商標)974P NF Polymer(Lubrizolカタログ番号CBP974PNF)
C.カルシウムまたはマグネシウムを含まないダルベッコのリン酸緩衝食塩水(Cellgroカタログ番号21−031−CV)または同等品
D.植物由来コレステロール(Avantiカタログ番号700100P)
E.100%のエタノール溶液(Acrosカタログ番号61509−0010)または同等品
F.Quil−A(Brenntagカタログ、精製サポニンQuil−A、凍結乾燥)
G.5Nの水酸化ナトリウム(VWRカタログ番号BDH3225−1)または同等品
【0046】
表1.アジュバント06原液の調製
【0047】
コレステロール原液
【0048】
次に、コレステロールをエタノールに添加することによりコレステロール原液を調製した。更に溶解するまで混合した。次に、0.2μmのフィルターを使用して溶液を滅菌濾過した。その後、溶液を2〜7℃で保存した。
【0049】
Quil−A原液
【0050】
次に、Quil−AサポニンをRO/DI水に添加し、溶解するまで混合することにより、Quil−A原液を調製した。次に、0.2μmのフィルターを使用して溶液を無菌濾過した。その後、溶液を2〜7℃で保存した。Quil−Aが5倍原液であるとき、この原液は4%であった。
【0051】
アジュバント06の調製
【0052】
アジュバント06原液を使用して、Quil A原液の1:5希釈液を調製するため、20mLのQuil Aを80mLのアジュバント06原液に添加し、かき混ぜて混合した。次に、56mLのコレステロール原液をバルクのアジュバント06原液に添加した。更に、100mLの1:5希釈したQuil Aを、既に56mLのコレステロール原液が含有された残留バルクのアジュバント06原液に添加した。このアジュバント混合物を更に約15分間混合した。アジュバントを混合しながら、滅菌された60mLのPETG瓶に50mLアリコートずつ無菌的に分取した。次に、各瓶を上部スクリューキャップで密封した。その後、アジュバント06の瓶を2〜7℃で、2年以下の期間保存した。
【0053】
使用上の指示
【0054】
抗原と混合するアジュバント06の量を計量した。1部のアジュバント06と4部の抗原を使用する。これは1:9の比率でも行われた。ただし、1:10または1:20の比率を使用すると容易に実施できた。
【0055】
アジュバント06の容器は、使用前に完全にかき混ぜておく必要がある。少量のアジュバント06を、滅菌シリンジ及び18ゲージ針で無菌的に吸い上げた後、シリンジからすべての空気が除去されるまで排気した。続いてアジュバント06の目的量をシリンジ内に徐々に引き上げた。次に、計量した量のアジュバント06を抗原に添加し、完全に混合した。
【0056】
実施例2
【0057】
本試験の目的は、それぞれ本開示の個別の実施形態である2種類のアジュバント製剤が、ワクチンでの使用を目的とした濃度に希釈されたときマウスで検証可能かどうかを判定することである。
【0058】
材料及び方法
【0059】
2通りの死滅K99 E.coliワクチン(一方はアジュバントあり、もう一方はPBSで調製)も試験に加え、同じアジュバント製剤が単独で試験された場合と比較して、抗原の添加がマウスに異なる影響を及ぼすかどうかを判定した。
【0060】
最終濃度1倍に希釈した、それぞれ0.5mlの5種類のアジュバント製剤を、平均体重27g、約6週齢の成熟雌性CF−1マウスに接種した。マウスには、それぞれ0.5mlの死滅K99 E.coliワクチンも接種した。アジュバント化した死滅K99 E.coliワクチンの調製に使用するアジュバントは、カタログ番号70X0106と同じ製剤であり、その製剤の全成分を最高濃度で含有する。8匹のマウスからなる各処置群に、首後部の皮下注射によって、または腹腔内注射によって接種した。全マウスを接種後7日間収容し、健康状態を観察した。
【0061】
首後部の皮下注射により接種したマウスはすべて、接種後7日は健康に見えたが、アジュバント化した死滅K99 E.coliワクチンを与えた8匹のうち3匹には、試験の7日目までに注射部位に病変が生じた。腹腔内注射により接種した各群の8匹のマウスのうちの少なくとも6匹は、接種後24〜48時間で死亡した。
【0062】
動物
【0063】
Charles River Laboratoriesから入手した64匹の雌性CF−1マウスは、試験用物品投与時に約6週(44日)齢であった。受領時のマウスの体重は平均19グラムであった。マウスの体重を試験用物品の投与前(0日目)に再度計量し、その体重は平均27グラムであった。
【0064】
試験用物品
【0065】
アジュバント
【0066】
VaxLiantカタログ70X0005―5倍、ロット00003、使用期限2015年10月7日
【0067】
VaxLiantカタログ70X0106―5倍、ロット00003、使用期限2015年10月7日
【0068】
ダルベッコのリン酸緩衝食塩水(DPBS);Cellgro、カタログ:21−031−CV、ロット:21031439、使用期限2016年9月30日
【0069】
死滅K99 E.coliワクチン
【0070】
アジュバントC VaxLiantカタログ番号708101、K99線毛を発現している死滅E.coliを含有するワクチン−ロットK9928Dec12A
【0071】
PBS、K99線毛を発現している死滅E.coliを含有するワクチン−ロットK9928Dec12B
【0072】
方法
【0073】
試験予定表
【0074】
表2.試験予定表
【0075】
試験計画
【0076】
表3.試験計画
1SC−首後部への皮下注射;IP=腹腔内注射
【0077】
動物の受領、馴化及び無作為化
【0078】
受領時にマウス5匹を同時に計量し、各マウスを別々のケージに収容した。ケージ当たり4匹のマウスが配置されるまで、このプロセスを繰り返した。
【0079】
日々の健康状態の観察を7日間の馴化中に実施した。
【0080】
ケージ1〜16を処置群T01〜T08に無作為に割り付けるため、容器から2つのケージ番号を引き、T01群に割り付けた。次に引いた2つのケージ番号をT02群に割り付け、全ケージが処置群に割り付けられるまでこれを繰り返した。各処置群に割り付けられたケージ番号は表4を参照のこと。
【0081】
表4.各処置群に割り付けられたケージ番号
【0082】
試験用物品の調製
【0083】
すべての試験用物品の調製は、投与日に無菌的に実施した。
【0084】
アジュバント製剤
【0085】
該当する5倍アジュバント原液の瓶を室温まで温めた後、最低30回、上下を逆にして混合した。該当するアジュバントをDPBSで1:5に希釈(4部のDPBS+1部のアジュバント)して、最低30回、上下を逆にして混合した。調製した試験用物品を5mlの滅菌移送チューブに2等分に分取し、該当する処置群に応じてラベルで標識した。
【0086】
死滅K99ワクチン
【0087】
死滅K99+PBSワクチンは2012年12月28日に調製し、この試験に使用するまで2〜7℃で保存した。ワクチン瓶を室温まで温めた後、上下を逆にして混合してから、ワクチンバイアル瓶から直に成分を移して、該当する処置群に接種した。
【0088】
治療投与
【0089】
試験用物品の投与前にマウスの健康状態を検査した。2つのケージの合計8匹のマウスに、0.5mlの各試験用物品を投与した。皮下(SC)注射は、25g、5/8”針または25g、1”針いずれかを3mlシリンジに使用して首後部に投与した。腹腔内(IP)注射は、25g、5/8”針を3mlシリンジに使用して投与した。すべての治療投与及び時間を記録した。
【0090】
体重
【0091】
マウスは受領時に5匹の群ごとに卓上型天秤を使用して計量し、その群の平均体重を求めた。
【0092】
0日目(試験用物品の投与)直前に、受領時と同じ天秤を使用してマウスごとの体重を測定した。各ケージを計量した。そのケージの記録値をそのケージのマウス数(4)で除算した。報告した値は、ケージ平均であった。
【0093】
健康状態の観察
【0094】
マウスの健康状態の観察は、7日の試験期間を通じて少なくとも1日1回、実施した。すべての健康状態の観察を記録した。
【0095】
マウスの健康状態は、最後の試験用物品の投与後、約82〜89分後に、0日目の観測結果との比較で観察した。
【0096】
測定可能な基準
【0097】
7日の試験期間中の、試験用物品に起因する有害事象の有無を主要な変量または結果とした。アジュバント及び投与経路ごとに、この変量を測定した。次の2つの観察結果を記録した。
【0098】
注射部位の有害事象:7日の生存段階中に注射部位に観測された病変を記録した。
【0099】
死亡:死亡は、マウスの死亡を発見した場合、または罹患のため殺処分した場合に記録した。
【0100】
結果及び結論
【0101】
試験用品投与時点の全マウスの平均体重は、26.87gであった。
【0102】
健康状態の観察
【0103】
いずれかのアジュバントまたは死滅K99+PBSワクチンをSC注射によって接種されたマウスはいずれも、7日の試験期間を通じて有害反応を示さなかった。いずれかのアジュバントをIP注射によって接種された各群の8匹のマウスのうちの少なくとも6匹は、接種後24〜48時間以内に死亡した。死滅K99+PBSワクチンをIP注射によって接種されたマウスのみ、7日の試験期間を通じて健康なままだった。表5は、試験期間中に死亡したマウスを示す。
【0104】
表5.試験期間中のマウス死の概要
*マウスは、試験期間を通じて健康だったが、7日目までに注射部位に病変を発現した。
【0105】
考察
【0106】
この試験結果に基づけば、本試験で試験した5つのアジュバント製剤のいずれで調製したワクチンも、最終製品が首後部へのSC注射によって投与された場合、9CFR 113.33によるマウス安全性試験に適合でき得ることは明らかである。
【0107】
抗原と混合されたアジュバントをこの経路で投与した場合に、注射部位病変の発現が起こり得たが、それ以外にいかなる有害反応も観察されなかったため、この病変が原因で安全性試験に不適合となる可能性は低い。
【0108】
ただし、多重抗原の添加によって生じる注射部位の有害反応については、この試験で検討しなかった。
【0109】
マウスは必ず所定体重の22gを上回るが、7週齢は超えないように留意した。
【0110】
アジュバントをIP注射によって接種された各群の8匹のマウスのうちの少なくとも6匹は、接種後48時間より長く生存しなかった。これは、この方法で投与されたとき、アジュバントがマウスにとって有毒であることを示す。種々のアジュバント製剤間に共通する成分は1つのみ存在しており、この成分が観察された毒性の原因であり得ることを示唆している。PBSで調製された死滅K99 E.coliワクチンを同様の方法で接種されたマウスに、有害反応がなかったことにより、IP注射による投与時のアジュバントの毒性を裏付けている。
【0111】
結論
【0112】
カタログ番号70X0005及び70X0106で表されるVaxLiant,LLCアジュバント製剤で調製されたアジュバント化ワクチンは、首後部への皮下注射により投与されたとき、9CFR 113.33に従って試験した場合にマウス安全性結果に適合可能であり得る。
【0113】
この試験結果に基づけば、最終濃度1倍に希釈されたアジュバント製剤はすべて、首後部に皮下注射により投与されたとき、マウス安全性試験に適合する結果を生じ得ることは明らかである。しかしながら、アジュバント製剤の少なくとも1つが抗原とともに試験されたとき、注射部位に有害反応が起こり得る。この試験で試験された2つのアジュバント製剤のいずれかで調製した最終ワクチン製品で行われる処置は、首後部の皮下注射による投与によって実施することを推奨する。
【0114】
実施例3
【0115】
本実施例では、特許請求するアジュバント組成物をトリインフルエンザH5 DNAワクチンに用いた場合の有効性を示す。
【0116】
材料及び方法
【0117】
160羽の病原体のない雌雄のニワトリをこの試験に利用した。試験計画は以下の表6の通りであった。
【0118】
表6.
1本試験では、処置群(TG)の表記によりニワトリ及び試験用物品を特定する。
2IM−筋肉内注射。
3各ニワトリの左胸部の筋肉に0.2ml量を、右胸部の筋肉に0.2ml量を接種する。
【0119】
表7.試験予定表
【0120】
試験方法
【0121】
無作為化及び馴化
【0122】
馴化段階中、ニワトリの日々の健康状態の観察を、すべての試験用トリについて記録した。トリは最低3日間で馴化する。臨床観察は、毎日実行して記録した。
【0123】
投与経路
【0124】
左右の側胸部への筋肉内注射により、すべてのトリに試験用物品を投与した。
【0125】
試験用物品の投与−0日及び14日
【0126】
0日目にトリを検査し、通常の健康状態及び外観のものを試験に登録した。1つのケージが1つの処置群に相当する。
【0127】
T01の10羽のトリは接種せず、陰性対照として使用した。残りの各処置群(T05〜T16)の10羽のトリには、試験0日目及び14日目に、該当する試験用物品を筋肉内注射により接種した。
【0128】
サンプルの採取及び試験
【0129】
部位の手順に従って、14日目(14日目の試験用物品のブースター投与前)及び28日目に、各トリから血液を採取した。血液は凝固していることがあり、その場合には遠心分離して血清を採取した。更に血清は、採取後48時間以内に試験を実施しない場合には試験するまで、及び/または血清の試験後、−18±5℃で保存した。次に、赤血球凝集阻害アッセイ(HAI)によって、血清の血清変換レベルを分析した。
【0130】
健康状態の観察及び有害事象
【0131】
試験用物品の投与に続いて、試験終了(28日目)まで少なくとも1日1回臨床観察を記録した。すべての臨床観察を記録した。
【0132】
結果の評価/データ解析
【0133】
BBL SOP LP−054を使用したHAIによって、血清サンプルの血清変換を分析した。次に、HAI力価を各処置群の血清サンプルごとに求めた。更に、1.00倍(20%)のアジュバントを接種したトリのHAI力価を、0.50倍(10%)及び0.25倍(5%)の各アジュバント製剤を接種したトリの力価と比較して、各アジュバントのどの濃度が最も有効であるかを決定した。
【0134】
試験用物品の調製
【0135】
試験用物品は、投与日に調製して臨床現場へ輸送した。
【0136】
試験用物品の調製は、無菌技術を使用しているバイオセーフティキャビネットで実行した。全試験用物品の最終製剤は、トリに投与する30±5分前に室温でインキュベートした。
【0137】
試験用物品
【0138】
AIV H5プラスミドDNA、ロット番号DNA130414TKWI;純度及び品質試験済み。
【0139】
ダルベッコのリン酸緩衝食塩水(DPBS);Cellgro、カタログ:21−031−CV、ロット:21031439。
【0140】
表8.アジュバント原液の識別
2BBL SOP QAU−053−01 Attachment II,Lot Testing Summary(LTS)での参照番号
3各アジュバント5.00倍原液は純度及びpH試験済みであった。試験用物品はすべて、調製時に無菌的に処理される;最終的な試験用物品には、更なる試験は施さない。
【0141】
表9.処置群ごとの試験用物品の調製
1アジュバント原液の5.00倍濃縮である。アジュバントの1.00倍(20%)濃度を標準濃度と見なす。
2TBD=未定;形式:NBHO2502(処置群の名称)(調製日);0日目及び14日目は調製日によって区別する。
【0142】
CaCl沈殿物:最終濃度:
プラスミドDNA:75ug/mL
塩化カルシウム:2.68mM
リン酸ナトリウム:2.68mM
クエン酸ナトリウム:0.669mM
【0143】
結果及び結論
【0144】
表10.血清変換試験の結果
【0145】
この試験は、本発明のアジュバントをDNAベースのワクチンに用いたとき有効であることを示した。
【0146】
実施例4
【0147】
本試験では、本発明のアジュバントが18か月にわたり安定性であることを示す。
【0148】
材料及び方法
【0149】
試験用物品
【0150】
安定性試験用物品の調製
【0151】
目的濃度の50ugのBSA(ウシ血清アルブミン)/用量になるように、2種類のアジュバント製剤をBSAと混合した。調製した試験用物品はすべて、ゴム栓のある滅菌ガラスバイアルに無菌的に分取し、圧着封止した。
【0152】
試験用物品PBO/coldは、記載のようなバイアルに市販のリン酸緩衝食塩水(PBS)を分取して調製し、冷蔵温度で保存した。試験用物品BSA/PBS/RT及びBSA/PBS/coldは、目的濃度の500ug/ml(50ug/0.1mL用量)になるように4部のBSA及び1部のPBSを添加することにより調製し、周囲温度または冷蔵温度で保存した。試験用物品BSA/Adj01/RT及びBSA/Adj01/coldは、目標濃度の500ug/ml(50ug/0.1mL用量)になるように4部のBSA及び1部のアジュバント01を添加することにより調製し、周囲温度または冷蔵温度で保存した。試験用物品BSA/Adj06/RT及びBSA/Adj06/coldは、目的濃度の500ug/ml(50ug/0.1mL用量)になるように4部のBSA及び1部のアジュバント06を添加することにより調製し、周囲温度または冷蔵温度で保存した。
【0153】
試験方法
【0154】
馴化
【0155】
馴化段階中、日々の健康状態の観察を、すべての試験動物について記録した。動物は最低6日間で馴化した。
【0156】
試験時の配置手順
【0157】
マウスを区別するため耳刻した。ケージ当たり5匹のマウス配置で、試験用ケージにマウスを入れた。マウスはまた、6か月の試験期間中、体重を計量した。
【0158】
治療投与
【0159】
マウスを検査し、通常の健康状態及び外観のものを試験に登録した。それぞれ処置群を代表するマウス5匹を2つのケージに収容し、マウスを処置群に応じて管理した。プラセボ(PBO)を受けるマウスは例外として、5匹のマウスを収容した1つのケージで構成した。
【0160】
0日目の時点で、「貯蔵条件」を問わず、各処置群の1つのバイアル瓶を3つのアリコートに無菌的に分取した。1アリコートを直ちにマウスに投与した(0日目)。第2のアリコートは、14日目にマウスに投与するまで2〜7℃で保存した。これは「安定性」サンプルとは見なさなかった。第3のアリコートを保持サンプルとして2〜7℃に維持した。これも「安定性」サンプルとは見なさなかった。試験用物品はすべて、マウスの両肩間の背面に皮下投与した。
【0161】
健康状態の観察及び有害事象
【0162】
有害事象を含め、臨床観察を試験完了まで毎日記録した。
【0163】
投与経路
【0164】
すべてのマウスに試験用物品を両肩間の背面への皮下注射によって投与する。
【0165】
−4日〜0日目の採取サンプルのプレスクリーニング(基準マウス限定)
【0166】
−4日〜0日目に1回、基準マウス(試験に使用しないマウス)から血液を採取してプールし、プレスクリーニング用の血清を得た。この時点のマウスの平均体重に基づいて全血量の10%以下を採取した。血液は凝固していることがあり、その場合には遠心分離して血清を採取した。血清をプールし、2〜7℃または−18±5℃で保存した後、ELISA法で試験して、研究に使用されるマウスがBSAに対して血清陰性であることを確認した。
【0167】
表11.処置群の説明
【0168】
表12.安定性試験用物品の概要
10日目及び14日目の接種に使用した各アリコートの残量は使用日に廃棄する。残存する保持アリコートはそのまま保管する。
【0169】
表13.アジュバント原液の識別
3各アジュバント5.0倍原液は純度及びpH試験済みであった。試験用物品はすべて、調製時に無菌的に処理される;最終的な試験用物品には、更なる試験は施さない。
【0170】
表14.安定性試験用物品の内容
1500ug/mlのBSA原液、50ug BSA/用量
2各処置群の記述語
【0171】
表15.新鮮な試験用物品の内容
1500ug/mlのBSA原液、50ug BSA/用量
2処置群の記述語
3新鮮な試験用物品の調製に使用する成分の貯蔵温度
55倍アジュバント原液を安定性サンプルと同じ保存場所に、同じ18〜27℃の温度で保存した。
【0172】
表16:臨床試験計画
1本試験では、処置群(TG)の表記によりマウス及び試験用物品を特定する。
2マウスの両肩間の背面に皮下注射によって接種する。
3追加マウスには試験用物品を接種せず、基準血液サンプルの採取に使用した。
418か月試験は14日目に終了した。
【0173】
表17:試験計画
*18か月試験はブースター投与をせずに14日目に終了した。
【0174】
治療投与―0日目
【0175】
マウスを検査し、通常の健康状態及び外観のものを試験に登録した。各ケージが処置群に相当した。
【0176】
各処置群の1つのバイアル製剤を3つのアリコートに無菌的に分取した。1つのアリコートを直ちにマウスに投与した(0日目)。1つのアリコートは、14日目にマウスに投与するまで2〜7℃で保存した。最後のアリコートは保持サンプルとして2〜7℃に維持した。試験計画に従って、全処置群製剤を(TGごとに)、マウスの両肩間の背面に皮下投与した。
【0177】
サンプル採取−1日〜28日目(基準マウスのみ)
【0178】
1日目〜28日目に必要に応じて基準マウス(試験に使用しないマウス)から血液を採取してプールした。3〜4週間以内にマウスの平均体重に基づいて全血量の10%以下を採取した。血液は凝固していることがあり、その場合には遠心分離して血清を採取した。その後、ELISA法で陰性対照として使用するまで、血清をプールし、2〜7℃または−18±5℃で保存した。
【0179】
サンプルの採取及び試験
【0180】
13日目及び28日目に接種された動物からそれぞれ血液を採取した。3〜4週間以内にマウスの平均体重に基づいて全血量の10%以下を採取した。血液は凝固していることがあり、その場合には遠心分離して血清を採取した。採取後、試験するまで血清を2〜7℃または−18±5℃で保存した。次に、ELISA法によって血清の血清変換レベルを分析した。
【0181】
治療投与―14日目
【0182】
試験計画に従って、全処置群製剤を(TGごとに)、マウスの両肩間の背面に皮下注射により投与した。
【0183】
健康状態の観察及び有害事象
【0184】
臨床観察は、試験予定表に示すように試験用物品の投与後、毎日記録した。
【0185】
マウスは、以下を含み得る注射部位の反応など、何らかの有害反応を試験中に示す可能性がある:膿瘍(身体組織内に蓄積した膿の集合体)、1.5未満〜1.5cmの腫脹、脱毛症(抜け毛)、紅斑(過剰な部位発赤)、肉芽腫(触診可能な硬結節)、出血または潰瘍(皮膚に痛み)。観察された有害反応はすべて記録に残した。
【0186】
分析の評価/データ解析
【0187】
BBL SOP AN−084を使用したELISA法によって、血清サンプルの血清変換を分析した。処置群ごとの各血清サンプルでの抗体産生レベルを測定した。アジュバント+BSAを投与したマウスの抗体産生を、BSA陽性対照を投与したマウスの抗体産生と比較した。種々のアジュバント製剤を投与したマウスの抗体産生を比較した。安定性分析のために保存された試験用物品を投与したマウスの抗体産生を、本試験の0日目に新しく調製された試験用物品を投与したマウスと比較した。
【0188】
本試験での接種マウスの抗体産生レベルを、最初に実施された安定性試験で産生された抗体レベルと比較した。
【0189】
必要に応じて記述統計学を使用して、陰性対照と比較した全処置群の有効性を判定した。両側スチューデントt検定または他の適切な方法を実施することにより、幾何平均及び統計的有意差を決定する。
【0190】
結果及び結論
【0191】
表18−6か月にわたるin vivo安定性試験
*採血は未完了(2014年7月24日予定)
**アジュバント調製時のマイクロフルイダイザーの圧力は13,000または18,000psiを使用
「Yes」=安定性試験のサンプル;「No」=6か月時点の0日目に新しいサンプルを調製した
【0192】
表19.6か月間の安定性試験時のBSA+ENABL 06のELISA結果から得たマウスの安定性GMT値
表20.18か月間の安定性試験時のBSA+アジュバント06のELISA結果から得たマウスの安定性GMT値
*対応するBSA単独のGMT値により正規化
【0193】
表21:採取した血液から得たデータ
1血清変換されたマウス数/処置マウス数
2血清変換以外に使用された10匹の値
3幾何平均BSA/Adj06÷幾何平均BSA/PBS
4実施せず
【0194】
表22:6か月時点のデータ
1血清変換されたマウス数/処置マウス数
2血清変換以外に使用された10匹の値
3幾何平均BSA/Adj06÷幾何平均BSA/PBS
【0195】
表23.18か月時点のデータ
1血清変換されたマウス数/処置マウス数
2血清変換以外に使用された10匹の値
3幾何平均BSA/Adj06÷幾何平均BSA/PBS
【0196】
表24.6か月目の幾何平均
【0197】
表25.幾何平均=18か月
【0198】
データは、本発明のアジュバントが18か月間にわたって安定性であったことを示している。データからわかるように、アジュバント06のサンプルはすべて、18か月後に安定性であった。このデータは、本発明のアジュバントが少なくとも18か月間、周囲温度で貯蔵安定性であったことを示している。これにより、抗原とアセンブリされているか否かを問わず、アジュバントの輸送、貯蔵及び使用が容易になる。
【0199】
実施例5
【0200】
材料及び方法
【0201】
71日齢の産卵雛鶏に、0.2mlのDNAワクチンまたは0.2mlのPBSのいずれかを皮下投与により接種した。DNAワクチンは、GyrFalcon/Washington/41088−6/2014由来のHA遺伝子を含んでいるDNAワクチン用の真核プラスミド骨格であった。合計60羽の雛鳥にDNAワクチンを投与し、10羽の雛鳥を対照として使用した。最初の予防接種後2週間で、20羽の雛鳥に0.2mlのDNAワクチンをブースター投与し、20羽の雛鳥に0.2mlのGyrFalcon/Washington/41088−6/2014のリバースジェネティクス法による死滅ワクチンをアジュバントとともに接種した。トリが4週齢に達したとき(最後の接種から2〜4週間後)に、10
6.5/EID50用量のA/Turkey/Minnesota/12582/2015(H5N2)を用量0.5mlで、後鼻孔の接種経路により投与して負荷を誘発した。負荷ウイルスは最近のアウトブレイクに由来したものであり、負荷用量は過酷な負荷として1000羽のニワトリ致死用量
50を与えるように設計した。
【0202】
ウイルス排菌の決定。ニワトリの口咽頭スワブによるサンプルを、1倍抗生物質/抗真菌剤(Mediatech、Herndon,VA)を含有する2mlの無菌ブレインハートインフュージョン(BHI)ブロス(Sigma−Aldrich、St.Louis,MO)中に懸濁し、RNAを抽出するまで−70℃で凍結した。250ulのサンプルからの総ウイルスRNAをTrizolに添加し、クロロホルム添加後、水相をMagMAX−96 AI/ND Viral RNA Isolation Kit(Ambion,Inc.,、Austin,TX)に使用した。RNA単離のための手順は、KingFisher磁性粒子精製システム(Thermo Scientific、Waltham,MA)を使用して実施した。
【0203】
定量的リアルタイムRT−PCR(RRT−PCR)は、A型トリインフルエンザマトリックス遺伝子に特異的なプライマー及びプローブを使用して実施した(2)。AgPath−ID RT−PCR Kit(Invitrogen、Carlsbad,CA)を8μlのRNAサンプルに使用し、ヌクレアーゼフリー水を添加して、最終容積を25μlにした。逆転写反応は、50℃30分と、それに続く95℃15分を1サイクルとして構成した。PCR反応では、94℃1秒の変性と、それに続く60℃20秒のアニーリングを40サイクル実施した。いずれの反応も、Smart Cycler II(Cepheid、Sunnyvale,CA)リアルタイムPCR装置で実施した。使用した負荷ウイルスの既知量のRNAから生成した検量線を使用して、サイクル閾値に基づいて、スワブサンプルからのウイルスのEID
50sを推定した(1)。サイクル実行回数に相当するサイクル閾値を設定して、検量線に基づいて各RRT−PCR操作の検出限界を算出した。統計目的として、本試験のRRT−PCR−陰性であったサンプルに、検量線の最低検出ポイント未満の1サイクルのサイクル閾値を割り当てた。
【0204】
次に、赤血球凝集阻害(HI)試験を実施した。AIVに対する血液凝集阻止抗体価を、HI試験を使用して測定した(3)。相同性ベータプロピオラクトン失活抗原(Ag)をPBSで希釈し、4濃度のHAユニットにした。同一源のAgは、ウイルスの抗原性に影響を及ぼさない低病原性切断部位を有するようにRP遺伝子が改変されている以外は、RPワクチンに使用されるものと同じ赤血球凝集素遺伝子であるA/gyrfalcon/Washington/41088−6/2014 H5N8ウイルスを指す。50マイクロリットルのAgを96ウェルプレートの各ウェルに添加し、試験用血清を順次2倍に希釈した。プレートを15分間室温でインキュベートした後、0.5%のニワトリ赤血球細胞を各ウェルに添加した。プレートを15秒間振盪して、45分間室温でインキュベートした。赤血球凝集活性を完全に阻害した最後のウェルの逆数として結果を解析した。統計目的として、4つの力価の逆数を最低陽性結果と見なした。
【0205】
結果及び結論
【0206】
最後のワクチン接種後2週または4週で、接種したトリ及び対照トリにA/Turkey/Minnesota/12582/2015(H5N2)を投与した。すべての対照トリは、投与後3日までに重度の臨床疾患または死亡を呈し、平均致死時間(MDT)は2.1日であった。重度の臨床疾患を有するトリはIACUCプロトコルの要件に従って安楽死させ、翌日死亡として記録した(
図1)。
【0207】
負荷日、生後4週、及びワクチン接種後2週または4週に採取した血液で血清検査を実施した。対照トリまたはDNAワクチンを単独接種したトリのいずれも、検出可能なHI抗体価を有しなかった。ワクチン接種したトリのうち、2回のDNAワクチン接種群では20羽のうちの7羽が、4〜32の範囲の検出可能な抗体価を有し、DNA/RG群では20羽のトリのうちの19羽が抗体価を有した。血清変換したトリの幾何平均力価は、それぞれ8.8(2
3.14)及び16.6(2
4.05)であった。(表26)
【0208】
攻撃後のウイルス排菌。すべての対照トリは攻撃後3日で死亡するか、または安楽死させたが、生死を問わず、2日目にすべてのトリの口咽頭内をスワブした。ワクチン接種したトリはすべて、2日目にスワブし、それ以外のトリはすべて攻撃後4日目にサンプル採取した。対照トリは、2日目に10
7.1/EID
50の排菌をし、トリの排菌はすべてウイルス力価と類似性があった。2日目にDNAを単独接種したトリは10
6.6/EID
50を排菌し、2回のDNAワクチンを接種した群は、10
5.4/EID
50対数のウイルスを排菌し、DNA/RGのワクチン接種群は、それぞれ10
2.9/EID50対数のウイルスを排菌した(
図1)。対照及び2回のDNAワクチン接種群と、2日目にDNA/RGワクチンを接種したトリ間には、ウイルス排菌の量に、マンホイットニー順位和検定を使用した統計学的差があった(P=<0.001)。
【0209】
2用量のDNAワクチンを与えた処置群が、ワクチン接種されたトリの55%に防御をもたらしたのに対して、1日齢でDNAワクチンを、2週目でブースターを用いるプライムブーストワクチン手法は攻撃に対して95%有効であった。HI試験の血清変換で少なくとも力価4であったトリは攻撃後も生存し、排菌の減少と極めて相関性が高かった。これらの結果は、単独接種試験にも併用接種試験にもDNAワクチンを使用できることを示している。
【0210】
表26.ワクチン接種された個々のトリによる赤血球凝集阻害力価。
【0211】
ワクチン接種された個々のトリによる赤血球凝集阻害力価。最小の陽性HI力価が4であったため、計算上、測定力価2を0に変換した。幾何平均力価では、陰性力価であるトリは計算に包含しなかった。
【0212】
実施例6
【0213】
シチメンチョウにおける、本開示のアジュバントを混合したDNAワクチンの血清学的評価のための有効性試験
【0214】
本試験の目的は、本開示のアジュバントを使用した高病原性トリインフルエンザ(HPAI)DNAワクチンにおいて有効性の合理的予測を立証することであった。これを達成するため、シチメンチョウの免疫応答を誘発するワクチンの能力を評価した。この目的のため、高病原性トリインフルエンザウイルス、A/gryfalcon/WA/41088−6/2014 H5N8の赤血球凝集素(HA)タンパク質の改変遺伝子を含んでいるプラスミドDNAをVaxLiantアジュバントと混合して、皮下及び鼻腔内経路によって投与した。
【0215】
改変プラスミド、NTC8685−eRNA41H−KP307984.1−HA−Modifiedは、高病原性(HP)トリインフルエンザウイルス(AIV)株A/gyrfalcon/Washington/41088−6/2014(H5N8)由来のHA遺伝子をコードする。H5配列を改変して、HP多塩基の切断部位(PLRERRRKRGLF)を一塩基の切断部位に変更した。改変H5遺伝子を合成的に生成し、NTC8685−eRNA41Hの最適化された真核発現ベクターにクローニングして、その構築物をE.coli株NTC4862に形質転換した。
【0216】
赤血球凝集阻害アッセイを使用して、非改変HA遺伝子を含んでいる失活ウイルスへの血清変換を検査し、有効性を測定した。
【0217】
材料及び方法
【0218】
pHA DNA(IVP 1及び2)を加えたENABL 1、及び0.5倍ENABL(商標)5またはpHA DNA(MPC)を加えたリン酸緩衝食塩水(PBS)を各トリに皮下(SC)投与した。各IVP処置群に最低22羽のトリを、MPC群に10羽のトリを含め、0日目に接種した。試験全体を通じてトリの総合的な全身健康状態を観察した。試験0日目にすべてのトリに接種した。各接種の約2週後に血液を採取して、血清変換を検査した。
【0219】
表27.試験の内容
【0220】
1SC−首の付け根の皮下;IN−鼻腔内
【0221】
表28.試験用物品
【0222】
表29.試験予定表
【0223】
投与経路。首後部への皮下注射または鼻孔内への鼻腔滴下のいずれかにより、試験用物品をトリに投与した。試験用物品は0日目及び14日目に投与した。T01のトリにSC経路によってPBSを投与し、MPC−1と表示した。残りのトリに試験計画の記載に従って接種した。14日目にT01群、T02群のトリに製品を投与した。これはブースターであった。T03群のトリにはブースターを投与しなかった。
【0224】
サンプル採取及び試験部位に関する手順に従って、試験用物品のブースター投与の前日及び試験最終日に、T01群、T02群の各トリから血液を採取した。T03群のトリは21日目及び試験最終日に採血した。血液は凝固していることがあり、その場合には遠心分離して血清を採取した。血清を2〜7℃または−18±5℃で保存した。BBL SOP LP−054に従って、ウイルスA/gyrfalcon/WA/41088−6/2014 H5N8 BEIの4〜8単位の赤血球凝集素の阻害による血清の血清変換レベルを分析した。
【0225】
結果の評価/データ解析。BBL SOP LP−054に従って、非改変HA遺伝子を含んだ失活ウイルスA/gyrfalcon/WA/41088−6/2014 H5N8 BEIの赤血球凝集素の阻害による血清の血清変換レベルを分析した。各処置群の血清サンプルそれぞれの赤血球凝集阻害(HAI)力価を測定した。簡潔には、段階希釈した血清を4〜8単位の赤血球凝集素とともにインキュベートし、完了後、トリの赤血球に添加した。HAI力価は、全複製にウイルス特異的な赤血球凝集の100%阻害が存在する最後の希釈剤の逆対数として報告した。種々のアジュバント製剤を投与されたトリのHAI力価を比較した。
【0226】
表30.結果.シチメンチョウでの有効性
【0227】
結果は、シチメンチョウに1日齢でHPAI DNA/アジュバントを組み合わせたワクチンを接種できることを示している。更に、本試験で試験した製剤をSC投与したとき、血清変換されたトリは、2つの用量計画による同一源の攻撃から保護された。
【0228】
実施例7
【0229】
本シチメンチョウ試験で研究用動物医薬品(investigational veterinary product、IVP)として試験される本開示のアジュバント成分は、高病原性(HP)トリインフルエンザウイルス(AIV)株、A/gyrfalcon/Washington/41088−6/2014(H5N8)由来の改変型赤血球凝集素(HA)遺伝子を含有するプラスミドDNA(pHA)とともに製剤化されたENABL(登録商標)1及び6であった。H5配列を改変して、HPの多塩基切断部位(PLRERRRKRGLF)(配列番号1)を一塩基切断部位に変更した。改変H5遺伝子を合成的に生成し、NTC8685−eRNA41Hの最適化された真核発現ベクターにクローニングした。同じpHAをリン酸緩衝食塩水(PBS)と混合し、本試験の照合用プラセボ対照(MPC)として利用した。
【0230】
本試験の目的は、ENABL(登録商標)1及びENABL(登録商標)6を接種したシチメンチョウにおいてDNAワクチンの休薬期間が21日間であることを立証することであった。
【0231】
材料及び方法
【0232】
試験計画
【0233】
pHA DNA(IVP 1及び2)を加えたENABL 1、及びENABL(商標)6またはpHA DNA(MPC)を加えたリン酸緩衝食塩水(PBS)を各トリに皮下(SC)投与した。各処置群を最低10羽のトリで構成し、0日目に接種した。21日間、トリの総合的な全身健康状態を観察した。部位に限定した観察は、1日目〜7日目、14日目及び21日目に実施した。試験0日目〜21日目までに罹患のため安楽死させたトリ、または死亡が発見されたトリをすべて部検して、死亡がIVPまたはMPCの結果であったかどうかを判定した。21日目に残りすべてのトリの肉眼病変検査と組織検査を行った。試験計画を表31にまとめる。
【0234】
表31.試験の内容
【0235】
*各製品は割り当てたロット番号によって区別する。0.2mL用量の最終製品を首に皮下投与する。
【0236】
試験用物品は以下に記載する。試験に使用する前に、試験用物品を物品A〜Cと命名し、試験中に適切な盲検を維持するように区別した。
【0237】
表32.ENABL(登録商標)1(研究用動物医薬品#1)を含んでいるpHA DNA
【0238】
表33.ENABL(登録商標)6(研究用動物医薬品#2)を含んでいるpHA DNA
【0239】
表34.pHA DNA+PBS(照合用プラセボ対照)
【0240】
表35.試験予定表
【0241】
治療投与―0日目
【0242】
健康状態の評価、臨床観察、及び提案された注射部位の観察を処置日に記録した。各トリの首後部の中央部分の皮下領域に、指定された製品を1回注射した。用量は1部位当たり0.2mLであった。
【0243】
臨床観察、注射部位の観察及び有害事象
【0244】
試験予定表に示すように、試験用物品の投与以降、すべてのトリの全身の健康状態を毎日観察した。Veterinary Dictionary for Drug Regulatory Activities(VEDDRA)により策定された標準的な下層語に従って、臨床的徴候を分類した。
【0245】
注射部位を1〜7日目及び14日目に触診、観察して記録した。21日目に、安楽死及び剖検直前に、最終的な注射部位の触診及び検査を全注射部位に行った。
【0246】
サンプル採取
【0247】
組織学的データ収集のために、組織サンプルを注射部位及び周辺組織から採取した。病理学者が、注射部位異常に関連した肉眼病変がないか注射部位を検査した。
【0248】
注射部位の検査及び採点
【0249】
注射部位を触診して所見を記録した。皮膚を切開して下部組織を検査した。部検時の注射部位のスコアは、排液路、膿瘍形成、浮腫、出血または壊死の存在に基づいて病理学者が定めた。任意の注射部位に表れた最も重篤な徴候によって、病理学者が注射部位ごとに定めた単一注射部位のスコアを決定した。単一の注射部位に複数の徴候が観察される場合、重篤でない方(スコア判定が低い、またはスコア対象外)の徴候は、記録はしたが、この重篤性の少ない所見によって、最も重篤な徴候に基づいて定められたスコアを下げることはしなかった。
【0250】
注射部位の組織学的採点
【0251】
部位反応の組織学的エビデンスを得るため、採取した各組織を検査した。肉眼での剖検所見と同様、最重篤(MOST SEVERE)度を注射部位ごとに定め、部位に対する組織学スコアとして使用した。
【0252】
結果及び結論
【0253】
処置群ごとに14羽のトリが、初期配置から試験期間後まで生存し、馴化時の健康状態に基づいた本試験への算入基準を満たした。部位観察及び剖検での肉眼/組織病理学の結果を以下の表に示す。
【0254】
表36.観察及び肉眼/組織病理学の結果
121日の観察期間終了までに、目視できる腫脹を有した動物数
2剖検での顕著な炎症反応(軽度から中度)を有した動物数。
3剖検で顕微鏡的にのみ観察可能な生理学的反応を有した動物数。
【0255】
部位観察。プラセボを接種されたトリはいずれも、部位観察または剖検レベルのいずれにおいても何らかの異常反応があると採点されず、どのトリも、ワクチンに対するいかなる種類の臨床的徴候または病変と関連する損傷に対して陰性であると採点された。処置群T01及びT02では、14羽のトリのうちの3羽のみ(合計6羽のトリ)が、21日間の最後に、接種部位に触診可能な若干の腫脹を示した。残りのトリ(22羽のトリ)は正常であった。
【0256】
剖検。剖検ではT01群に対する全身の肉眼病変の観察から、14羽のトリのうちの6羽は21日目にいかなる種類の病変、または注射部位に付随する病変を有せず、残りの8羽のうち2羽のみがより重篤な炎症反応を有し、残りは中度から軽度であったことがわかった。全身の組織学的結果は、14羽のトリのうちの7羽が21日目に炎症または免疫応答を表す目視可能な浸潤を有しなかったことを示した。残りの7羽のトリの観察結果は中度であった。いずれのトリにも、注射部位に目視可能な挫傷または損傷に随伴した出血はなかった。
【0257】
T03処置群に対する全身の肉眼病変観察では、14羽のトリのうちの7羽は21日目にいかなる種類の病変、または注射部位に付随する病変を有せず、その群の残りの7羽は概して軽度の反応であった。全身の組織学的結果から、14羽のトリのうちの3羽は21日目に炎症または免疫応答を表す目視可能な浸潤を有しなかったが、残りの11羽は免疫応答または炎症を表す何らかの軽度から中度の浸潤を示したことがわかった。
【0258】
本実施例で試験されたアジュバントは、21日の観察期間中、目視可能な部位反応はごくわずかしか示さず、動物は健康を維持し、いかなる不快感もなかった。一部の病変は熟練した病理学者によって剖検でのみ発見できた。これは、組織切片の顕微鏡検査によっても明らかであった。21日目(試験最終日)に剖検で肉眼所見により観察された反応はいずれも、養鶏処理における食肉解体ラインに混乱を来すほど重篤であるとは見なされなかった。剖検時にスコアを記録できた病変はいずれも軽度から中度であり、自然に消散すると思われた。これは期間内(数日)で組織が正常な外観に戻ることを示している。これらの結果は、本アジュバントが、ワクチン製剤でのアジュバントの使用に関してUSDAが許容した最短時間である21日の休薬期間の安全性承認が得られると見なし得ることを示している。