(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体含有層を有する第一の導電性支持体、該半導体含有層と対向電極とが所定の間隔で対向する位置に設けられた対向電極を有する第二の導電性支持体、第一及び第二の導電性支持体の間隙に挟持された電荷移動層、並びに第一及び第二の導電性支持体の周辺部に設けられ、電荷移動層を包囲するシールを含む光電変換素子であって、該シールが請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光電変換素子用シール剤から形成されたシールである、光電変換素子。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の光電変換素子用シール剤(以下、単に「シール剤」ということもある)は、(a)エポキシ樹脂及び(b)熱硬化剤としてアミン類を含有する光
電変換素子用硬化性樹脂組成物である。このシール剤は、好ましくは、半導体含有層を有する第一の導電性支持体、該半導体含有層と対向電極とが所定の間隔で対向する位置に設けられた対向電極を有する第二の導電性支持体、第一及び第二の導電性支持体の間隙に挟持された電荷移動層、並びに第一及び第二の導電性支持体の周辺部に設けられ、電荷移動層を包囲するシールを含む光電変換素子において、該シールの原料として使用される。
本発明のシール剤は、別途言及しない限り、熱硬化プロセスにかける前の状態の組成物を指す。
【0014】
本発明で用いられる(a)エポキシ樹脂としては、通常、一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を持つエポキシ樹脂が用いられる。このようなエポキシ樹脂としては、例えばノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。更に具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロ
ロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのエポキシ樹脂は、本発明の光電変換素子用シール剤の粘度を下げるのに有益で、常温での貼り合わせ作業を可能とし、且つギャップ形成を容易にする作用を有し得る。これらのエポキシ樹脂の中でも、ノボラック型エポキシ樹脂、及び/又はビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂の使用が好ましく、また、ノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノールA型エポキシ樹脂の併用も好ましい。また、エポキシ当量の異なる2種のエポキシ樹脂を併用することも好ましい。一実施形態として、30〜300g/eq
.のエポキシ樹脂と、200〜600g/eq
.のエポキシ樹脂との混合物を用いてよい。また、一実施形態として、30〜300g/eq
.のノボラック型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂と、200〜600g/eq
.のノボラック型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂との混合物を用いてよい。
【0015】
本発明のシール剤は、電荷移動層に対するシール剤による汚染をできるだけ小さくするために、シール剤中に含有される加水分解性塩素が可能な限り少ない方が好ましい。従って(a)エポキシ樹脂についても、これに含まれる加水分解性塩素量が600ppm以下のものが好ましく、500ppm以下のものがより好ましく、400ppm以下のものが更により好ましく、300ppm以下のものが更により好ましく、200ppm以下のものが更により好ましく、100ppm以下又は実質的にゼロであることが最も好ましい。加水分解性塩素量は、例えば、約0.5gのエポキシ樹脂を20mlのジオキサンに溶解し、1NのKOH/エタノール溶液5mlで30分間還流した後、0.01N硝酸銀溶液で滴定すること等により定量することができる。
【0016】
本発明のシール剤中における(a)エポキシ樹脂の含有量は、通常5〜80質量%、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%である。
【0017】
本発明のシール剤は、(b)熱硬化剤としてアミン類を含有する。これらアミン類としては、特に限定されるわけではないが、分子中に2個以上のアミノ基を有する多官能アミン類が好ましく使用される。分子中に2個以上のアミノ基を有する多官能アミン類の好ましい具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、アミンアダクト等が挙げられる。特に好ましいアミン類の1つは、アミンアダクト類である。
なお、本願における熱硬化剤としては、120℃未満でシール硬化を可能とする硬化剤が好ましく使用できる。より好ましくは、110℃未満でシール硬化を可能とする硬化剤が使用できる。更に好ましくは105℃未満で、最も好ましくは100℃前後で(又は100℃以下で)、シール硬化を可能とする硬化剤が使用できる。
【0018】
上記のアミンアダクトとは、多官能アミン類にエポキシ樹脂を化学反応させることによって得られるアミン化合物である。アミンアダクトの具体例として、製品名、ハードナーX−3661S、ハードナーX−3670S(エー・シー・アール株式会社製)、アミキュアPN−23、PN−31、PN−40、MY−24(味の素ファインテクノ株式会社製)、ノバキュアHX−3742、HX−3721、HX−3722、HX−3088、HX−3741(旭化成イーマテリアルズ株式会社製)等の市販品が挙げられる。
なお、ここで言及される本発明のシール剤の成分としての「アミンアダクト」は、シール剤を熱硬化プロセスにかけることで得られる(a)エポキシ樹脂と(b)アミン類との反応生成物の一つとしてのアミンアダクトを含まない。理論に拘束される意図はないが、このアミンアダクトは、主に熱硬化の温度を低下させる目的で添加されるので、熱硬化にかける前にアダクトの形態である必要がある。
【0019】
これらのアミンアダクトは、潜在性硬化剤として作用するように、粒径を細かくして(a)エポキシ樹脂中に均一に分散させて用いるのが好ましい。多官能アミン類またはこれとエポキシ樹脂とを化学反応させて得られたアミンアダクトの平均粒径が光電変換素子のセルギャップ(第一の導電性支持体と第二の導電性支持体との間隔)に比べて過度に大きくならないようにすることで、光電変換素子の2枚の基板(導電性支持体)を貼り合わせる際に首尾良くギャップ形成することができる。そのため、その平均粒径は通常セルギャップ以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下、さらに好ましくは9μm以下であってよい。これらアミン類の粒径は、例えばレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(LMS−30、(株)セイシン企業製)により測定することが可能である。
【0020】
本発明のシール剤が含有する(b)熱硬化剤として、グアナミン類及び/又はイミダゾール類の少なくとも1種と、それ以外のアミン類(好ましくは上記のアミンアダクト)の少なくとも1種とを併用してもよい。併用できるグアナミン類としては、特に限定されず、例えば、ジシアンジアミド、o−トルイルビグアニド、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、フ
ェニルアセトグアナミン等が挙げられる。
【0021】
併用できるイミダゾール類としては、特に限定されず、例えば、2−エチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジシアノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジシアノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン等が挙げられる。この中でも、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールであることが好ましい。低温における硬化性、ポットライフ、硬化後のシール特性等から、2−ウンデシルイミダゾールであることが更に好ましい。(b)熱硬化剤として、アミンアダクトとグアナミン類又はイミダゾール類との併用が好ましく、アミンアダクトとイミダゾール類との併用がより好ましく、アミンアダクトと2−ウンデシルイミダゾールとの併用が最も好ましい。
【0022】
また、その他の併用できる熱硬化剤としては、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド重縮合物、クレゾール−ホルムアルデヒド重縮合物、ヒドロキシベンズアルデヒド−フェノール重縮合物、クレゾール−ナフトール−ホルムアルデヒド重縮合物、レゾルシン−ホルムアルデヒド重縮合物、フルフラール−フェノール重縮合物、α−ヒドロキシフェニル−ω−ヒドロポリ(ビフェニルジメチレン−ヒドロキシフェニレン)等の多官能ノボラック類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、チオジフェノール、4,4’−ビフェニルフェノール、ジヒドロキシナフタレン、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、テルペンとフェノール類の縮合物等の多価フェノール系硬化剤、或は無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の酸無水物系硬化剤、炭素数5以下の脂肪族ヒドラジド類等が挙げられる。これらの併用できる熱硬化剤は、いずれか1種を用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
これらの併用できる熱硬化剤の使用量は、本発明のシール剤中の(b)熱硬化剤の総量に対して通常0質量%以上50質量%以下、好ましくは30質量%以下である。一実施形態において、シール剤は、これらの併用できる熱硬化剤(アミン類以外)を含まない。別の実施形態において、シール剤の熱硬化剤は、アミン類(特に好ましくはアミンアダクト類)のみ、又は、グアナミン類もしくはイミダゾール類及びそれ以外のアミン類(特に好ましくはアミンアダクト類)のみからなってよい。
【0023】
本発明の光電変換素子用シール剤に使用される(b)熱硬化剤の含有量は、本発明の光電変換素子用シール剤に用いられる(a)エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して(b)熱硬化剤中の活性水素が通常0.8〜3.0当量、好ましくは0.8〜2.5当量、より好ましくは0.8〜2.0当量、更により好ましくは0.9〜2.0当量、最も好ましくは0.9〜1.8当量となる量である。尚、ここでいう活性水素とは、エポキシ樹脂が有するエポキシ基と反応できる熱硬化剤のヘテロ原子と結合する水素原子を意味する。
一実施態様として、本発明の光電変換素子用シール剤は、硬化剤として、分子内にチオール基を2個以上有するポリチオール化合物及び分子内にヒドラジド基を2個以上有するポリヒドラジド化合物のいずれか又は両方を含まないものであってよい。
【0024】
本発明の光電変換素子用シール剤には、必要により(c)充填剤を含むことができる。用いられる(c)充填剤の具体例としては、溶融シリカ、結晶シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、含水硅酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、ガラス繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられる。これらのうち、好ましいものとしては含水硅酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、結晶シリカ及び溶融シリカ等が挙げられる。これらは化学処理等による表面処理を施していてもよい。表面処理は、例えば、シランカップリング剤等の有機化合物によって行うことができる。これらの充填剤はいずれか1種を用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。本発明のシール剤が含有できる(c)充填剤は、平均粒径が50μm以下のものが好ましく、平均粒径が40μm以下のものがより好ましく、平均粒径が30μm以下のものが更により好ましく、平均粒径が20μm以下のものが更により好ましく、平均粒径が10μm以下のものが更により好ましく、平均粒径が5μm以下のものが最も好ましい。平均粒径が50μm以下であることにより、光電変換素子の製造時における上下基板貼り合わせの際に、適切なギャップ形成が可能になる。なお、ここでの充填剤の平均粒径は、例えば、レーザー回折・散乱式粒度分析計を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。
【0025】
(c)充填剤を用いる場合の含有量は、本発明の光電変換素子用シール剤中に通常0〜60質量%以下、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは15〜50質量%である。充填剤の含有量が60質量%以下であることにより、光電変換素子の作成時、電荷移動層を保持するための適切なセルギャップの形成が可能になる。
【0026】
本発明の光電変換素子用シール剤には接着強度を向上させるために、(d)シランカップリング剤を用いることができる。(d)シランカップリング剤としては、シール剤と導電性支持体との接着強度を向上させるものであれば何れも使用できる。使用できるシランカップリング剤の具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラ
ン等のグリシジルメトキシシラン類、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラ
ン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジルエトキシシラン類等が挙げられる。これらの中でも、グリシジルエトキシシラン類またはグリシジルメトキシシラン類が好ましい。また、これらのうち、アミノ基を有するシランカップリング剤は良好な接着強度を得る上で好ましい。上記のシランカップリング剤のうちより好ましいものとしては、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラ
ン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン塩酸塩等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は1種を用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。本発明に用いられるシランカップリング剤の含有量は本発明の光電変換素子用シール剤中、通常0〜2質量
%、好ましくは0.1〜2質量%、より好ましくは0.2〜1.5質量%である。また、一実施形態において、本発明に用いられるシランカップリング剤は、(a)エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0〜20質量部であり、典型的には0.1〜10質量部であり、好ましくは0.5〜10質量であり、より好ましくは1〜10質量部であり、更により好ましくは1質量部を超えて10質量部までであり、最も好ましくは1.5〜8質量部である。
【0027】
本発明の光電変換素子用シール剤は、必要に応じて、有機溶媒、有機充填剤、応力緩和剤等を含んでよい。また、シール剤には、更には顔料、レベリング剤、消泡剤、粘度調整剤等の添加剤を配合することができる。配合できる添加剤は、特に限定されるものではなく、その添加量も目的に応じて適宣選択すればよい。これらの添加剤は、電荷移動層に対する汚染性の低いものが好ましい。
【0028】
本発明の光電変換素子用シール剤は、前記(a)エポキシ樹脂、(b)アミン類を含む熱硬化剤、任意に、(c)充填剤、(d)シランカップリング剤及び各種添加剤を、任意の順序で、好ましくは前記の各含有量になるように、必要により撹拌下に混合し、次いで、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル等の混合装置により均一に混合することにより製造することができる。必要により、混合が終わったあと夾雑物を除く為に、濾過処理を施してもよい。
【0029】
本発明の光電変換素子用シール剤は、2枚の基板(導電性支持体)を貼り合わせた後に注入口から電荷移動層を注入する光電変換素子の作成法に適している。2枚の基板に挟まれた本発明のシール剤の堰を加熱硬化させることにより、シールを行うことが出来る。本発明のシール剤を基板に塗布する方法としては、バーコーター法、ディップコーティング法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、ディスペンス法等の塗布法が挙げられ、基板の種類、形態により適宜選択あるいは併用することが可能である。生産性の観点から、スプレー法、スクリーン印刷法、ディスペンス法を用いることが好ましい。本発明の光電変換素子用シール剤は、一般的に光エネルギーを電気エネルギーに変換できるいかなる光電変換素子にも適用できる。光電変換素子から発生した電流を取り出せるようにリード線を配置し、閉回路としたものを太陽電池とする。本発明の光電変換素子用シール剤は、特に色素増感型光電変換素子及び該光電変換素子を有してなる太陽電池の製造に最適である。
【0030】
以下、本発明の光電変換素子用シール剤を用いて製造される光電変換素子及び太陽電池について詳細に説明する。以下の具体的な実施形態は、単なる例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
一般に、色素増感型光電変換素子は、色素で増感された半導体含有層を表面に有する第一の導電性支持体(酸化物半導体電極)、対向電極としての第二の導電性支持体、及び電荷移動層を主要な構成要素として構成される。本発明の光電変換素子用シール剤は、第一と第二の導電性支持体を接着し、かつ両支持体間に電荷移動層を保持する目的で用いられる。導電性支持体としては、例えばFTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ITO(インジウムドープ酸化スズ)に代表される導電性物質を、ガラス、プラスチック、ポリマーフィルム、石英、シリコン等の基板の表面に薄膜化させたものが用いられる。基板の厚みは、通常0.01〜10mmであり、その形状はフィルム状から板状まで様々な態様を取り得るが、2枚の基板のうち少なくとも一方には光透過性のある基板が用いられる。導電性支持体の導電性は、通常1000Ω/cm
2以下、好ましくは100Ω/cm
2以下である。
【0031】
半導体含有層の調製に用いられる酸化物半導体としては、金属カルケニドの微粒子が好ましい。その具体例としてはTi、Zn、Sn、Nb、W、In、Zr、Y、La、Ta等の遷移金属の酸化物、Alの酸化物、Siの酸化物、SiTiO
3、CaTiO
3、BaTiO
3等のペロブスカイト型酸化物等が挙げられる。これらの中でTiO
2、ZnO、SnO
2が特に好ましい。また、これらは混合して用いても良く、SnO
2−ZnO混合系が好ましい例として挙げられる。混合系の場合は、微粒子の状態で混合したり、以下に述べるスラリーもしくはペースト状態で混合したり、各成分を層状に重ねて用いてもよい。スラリーまたはペースト中の酸化物半導体の濃度は通常1〜90質量%、好ましくは5〜80質量%である。用いられる酸化物半導体の一次粒径は通常1〜200nm、好ましくは1〜50nmである。
【0032】
半導体含有層の調製方法は、酸化物半導体からなる薄膜を蒸着により直接基板上に作製する方法、スラリーまたはペーストを基板上に塗布またはコートした後、圧力を加えることで作製する方法、基板を電極として電気的に析出させる方法、スラリーまたはペーストを基板上に塗布またはコートした後、乾燥し、硬化もしくは焼成する方法等がある。塗布またはコート法としては、バーコーター法、ディップコーティング法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、ディスペンス法等が挙げられる。これらの方法は、基板の種類、形態により適宜選択あるいは併用することが可能である。酸化物半導体電極の性能上、スラリーまたはペーストを用いる方法が好ましい。スラリーは、例えば、2次凝集している酸化物半導体の微粒子を、分散剤を用いて分散媒中に平均1次粒子径が通常1〜200nmになるように分散させることにより、又は、ゾルゲル法にて酸化物半導体の前駆体であるアルコキサイド等を加水分解することにより得られる。また、粒径分布の異なる酸化物半導体の微粒子を混合して用いてもよい。
【0033】
スラリーを分散させる分散媒としては、酸化物半導体の微粒子を分散できるものであれば特に限定されない。分散媒として、水、エタノール、ターピネオール等のアルコール、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン等の炭化水素等の有機溶媒が用いられる。これらは混合して用いても良い。水を用いることはスラリーの粘度変化を少なくするという点で好ましい。
【0034】
安定した一次微粒子を得る目的で、スラリーに分散安定剤等を加えてもよい。用いられる分散安定剤の具体例としては、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、フェノール、オクチルアルコール等の1価アルコール等の自己またはこれら相互間の共縮合物;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリルアミド;アクリルアミド、(メタ)アクリル酸若しくはその塩、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等)等の自己または相互間の共縮合物;アクリルアミド、(メタ)アクリル酸若しくはその塩、(メタ)アクリル酸エステル等とスチレン、エチレン、プロピレン等の疎水性モノマーとの共重合体で水溶性であるポリアクリル酸系誘導体;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩;ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩;高分子量のリグニンスルホン酸塩;塩酸、硝酸、酢酸等の酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの分散安定剤は単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0035】
これらの内、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、フェノール、オクチルアルコール等の自己またはこれら相互間の共縮合物、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸リチウム、カルボキシメチルセルロース、塩酸、硝酸、酢酸等が好ましい。
【0036】
導電性支持体上に塗布したスラリーを乾燥した後、導電性支持体に用いた基板の融点(または軟化点)以下の温度で焼成処理を行うことができる。焼成温度は、通常100〜900℃、好ましくは100〜600℃である。また、焼成時間は特に限定はないが、概ね4時間以内である。導電性支持体上に設けられる半導体含有層の膜厚は、通常1〜50μmである。
【0037】
表面平滑性を向上させる目的で、半導体含有層に2次処理を施してもよい(非特許文献1参照)。例えば、半導体含有層の調製に用いたのと同一の金属のアルコキサイドもしくは塩化物、硝化物、硫化物等の溶液に、前記の手法で調製された半導体含有層の薄膜が設けられた導電性支持体を直接浸漬して乾燥することにより、または任意選択で更に前記と同様に焼成(再焼成)することにより、半導体含有層の平滑性を高めることができる。ここで、金属アルコキサイドとしては、チタンエトキサイド、チタンイソプロポキサイド、チタンt−ブトキサイド、n−ジブチル−ジアセチルスズ等が挙げられ、そのアルコール溶液が用いられる。塩化物の場合には、例えば、四塩化チタン、四塩化スズ、塩化亜鉛等が挙げられ、その水溶液が用いられる。この様にして得られる酸化物半導体微粒子から成る半導体含有層の比表面積は、通常1〜1000m
2/g、好ましくは10〜500m
2/gである。
【0038】
次に、半導体含有層に増感色素を担持する工程について説明する。増感色素としては、半導体含有層を構成する半導体微粒子と共に光吸収を増感させる作用を有するものであれば特に限定はない。増感色素として、ルテニウム等の金属元素を含んだ金属錯体色素や金属を含まない有機色素を単独で用いてもよく、また数種類を任意の割合で混合して用いてもよい。混合して用いる場合は、複数種の金属錯体色素同士、複数種の有機色素同士、及び金属錯体色素と有機色素との組み合わせのいずれであっても構わない。吸収波長領域の異なる複数種の色素同士を混合することにより、幅広い吸収波長を用いることができ、変換効率の高い太陽電池が得られる。
【0039】
担持できる金属錯体色素に特に制限は無いが、フタロシアニンやポルフィリン等が好ましく、ルテニウム錯体であることがより好ましい。また、担持できる有機色素にも特に制限は無く、例えば無金属のフタロシアニン、ポルフィリンやシアニン、メロシアニン、オキソノール、トリフェニルメタン系、アクリル酸系色素、ピラゾロン系メチン色素等のメチン系色素や、キサンテン系、アゾ系、アンスラキノン系、ペリレン系等の色素が挙げられる。国際公開特許WO2002−001667号公報、国際公開特許WO2002−011213号公報、国際公開特許WO2002−071530号公報、特開2002−334729号公報、特開2003−007358号公報、特開2003−017146号公報、特開2003−059547号公報、特開2003−086257号公報、特開2003−115333号公報、特開2003−132965号公報、特開2003−142172号公報、特開2003−151649号公報、特開2003−157915号公報、特開2003−282165号公報、特開2004−014175号公報、特開2004−022222号公報、特開2004−022387号公報、特開2004−227825号公報、特開2005−005026号公報、特開2005−019130公報、特開2005−135656号公報、特開2006−079898号公報、特開2006−134649号公報、国際公開特許WO2006−082061号公報等に記載の色素であることが好ましい。メロシアニンや上記のアクリル酸系等のメチン系色素等であることがさらに好ましい。複数種の色素を混合して用いる場合の各色素の比率は特に限定し無いが、一般的にはそれぞれの色素を少なくとも10モル%程度以上使用することが好ましい。2種以上の色素を溶解した溶液もしくは分散した分散液を用いて半導体含有層に色素を担持させる場合、溶液中の色素合計の濃度は1種類のみ担持させる場合と同様でよい。複数種の色素を混合して使用する場合の溶媒としては、酸化物半導体に関して前記したような溶媒が使用可能であり、使用する各色素用の溶媒は同一でも異なっていてもよい。
【0040】
増感色素を担持させる方法としては、色素を溶媒に溶解した溶液または色素を溶媒に分散した分散液に、上記の半導体含有層が設けられた導電性支持体を浸漬する方法が挙げられる。溶液または分散液中における色素の濃度は、色素の種類や溶解度によって適宜決めればよい。浸漬温度は概ね常温から溶媒の沸点迄であり、また浸漬時間は1時間〜72時間程度であってよい。増感色素を溶解させるのに使用できる溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、t−ブタノール、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、また複数を任意の割合で混合して用いてもよい。溶液中の増感色素の濃度は通常1×10
−6M〜1M、好ましくは1×10
−5M〜1×10
−1Mである。この様にして酸化物半導体電極として用いられる、色素で増感された半導体含有層を有する導電性支持体が得られる。
【0041】
半導体含有層に色素を担持する際、色素の粒子の会合を防ぐために、包接化合物の共存下で色素を担持することが効果的である。ここで包接化合物としては、コール酸等のステロイド系化合物、クラウンエーテル、シクロデキストリン、カリックスアレン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。好ましいものとしては、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、コール酸メチルエステル、コール酸ナトリウム、ウルソデオキシコール酸等のコール酸類、ポリエチレンオキサイド等である。これらの包
接化合物の使用形態としては、色素溶液に添加してもよく、予め包
接化合物を溶媒に溶解させた後に色素を溶解または分散させてもよい。これらの包
接化合物は2種類以上を組み合わせて用いることも可能であり、その割合は任意に選択することも可能である。
また、色素を担持させた後、4−t−ブチルピリジン等のアミン化合物で半導体含有層を処理しても良い。処理方法は、例えばアミン化合物のエタノール溶液に色素を担持した半導体含有層が設けられた導電性支持体を浸す方法等が採られる。
【0042】
対向電極には、FTO導電性ガラス等の導電性支持体の表面に、酸化還元系電解質の還元反応に触媒的に作用する白金、カーボン、ロジウム、ルテニウム等の導電性微粒子を蒸着、またはこれらの導電性微粒子の前駆体を塗布、焼成したもの等が用いられる。
【0043】
次に、前記のようにして得られた色素で増感された半導体含有層を有した導電性支持体(酸化物半導体電極)及び対向電極を、本発明の光電変換素子用シール剤を用いて張り合わせる方法について説明する。
まず、スペーサー(間隙制御材)を添加した本発明のシール剤を、いずれか一方の導電性支持体の導電面の周辺部に、電荷移動層の注入口を残してディスペンサー、スクリーン印刷機等により堰状に塗布した後、第一と第二の導電性支持体の導電面が対面するように他方の導電性支持体を重ね合わせ、加熱してシール剤を硬化させることができる。ここでスペーサーとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等、さらには金パール、銀パール等の金属コーティングした微粒子等が用いられる。その平均直径は、目的に応じて異なるが、通常1〜100μm、好ましくは10〜40μmである。その使用量は、本発明のシール剤100質量部に対し通常0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部、更に、好ましくは1〜2.5質量部である。シール剤の加熱硬化の条件は、通常80〜120℃で1〜3時間である。尚、加熱硬化の方法としては、熱盤を2枚有する熱プレス機でサンドイッチ上に挟んで行う方法、冶具で固定した後オーブン中で行なう方法等が採用できる。第一と第二の導電性支持体の間隙は通常1〜100μm、好ましくは4〜50μmである。
【0044】
本発明の色素増感光電変換素子は、上記のようにして貼り合わせた一対の導電性支持体の間隙に電荷移動層を注入して完成される。電荷移動層としては、酸化還元系電解質対や正孔輸送材料等を溶媒や常温溶融塩(イオン性液体)中に溶解させた溶液が用いられる。用いられる酸化還元系電解質としては、ハロゲンイオンを対イオンとするハロゲン化合物及びハロゲン分子からなるハロゲン酸化還元系電解質、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオン、コバルト錯体等の金属錯体等の金属酸化還元系電解質、アルキルチオール−アルキルジスルフィド、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等の有機酸化還元系電解質等を挙げることができる。ハロゲン酸化還元系電解質が好ましい。ハロゲン酸化還元系電解質におけるハロゲン分子としては、例えばヨウ素分子や臭素分子等が挙げられ、ヨウ素分子が好ましい。また、ハロゲン化合物としては、例えばLiI、NaI、KI、CsI、CaI
2、CuI等のハロゲン化金属塩、あるいはテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド、1−メチル−3−アルキルイミダゾリウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド等のハロゲンの有機4級アンモニウム塩等が挙げられる。ヨウ素イオンを対イオンとする塩化合物が好ましい。その具体例としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化トリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
また、電荷移動層が酸化還元系電解質を含む溶液で構成されている場合、その溶媒としては電気化学的に不活性なものが用いられる。用いられる溶媒の具体例としては、アセトニトリル、バレロニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニトリル、3−ブトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジメトキシエタン、ジエチルカーボネート、ジエチルエーテル、ジメチルカーボネート、1、2−ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、1,3−ジオキソラン、メチルフォルメート、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルオキサゾリジン−2−オン、γ−ブチロラクトン、スルフォラン、テトラヒドロフラン、水等が挙げられる。これらの中で、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、3−メチルオキサゾリジン−2−オン、γ−ブチロラクトン等が好ましい。これらは単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶液中の酸化還元系電解質の濃度は、通常0.01〜99質量%、好ましくは0.1〜90質量%である。
【0046】
また、電荷移動層が酸化還元系電解質を含む組成物の形で構成されている場合、溶媒的に用いるものに常温溶融液(イオン性液体)がある。用いられる常温溶融液の具体例としては、1−メチル−3−アルキルイミダゾリウムヨーダイド、ビニルイミダゾリウムテトラフルオライド、1−エチルイミダゾールスルフォネート、アルキルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホニルイミド、1−メチルピロリジニウムアイオダイド等が挙げられる。また、光電変換素子の耐久性向上の目的で、例えば、電荷移動層に低分子ゲル化剤を溶解させて増粘させることにより、あるいは、反応性成分を併用した電荷移動層を注入後に反応させてゲル化させることにより、あるいは、あらかじめ高分子化したゲルに電荷移動層をしみこませることにより、ゲル電解質とすることが可能である。
【0047】
一方、完全固体型の電荷移動層の場合は酸化還元系電解質の替わりに正孔輸送材料やP型半導体を用いることもできる。用いられる正孔輸送材料としてはアミン誘導体やポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性高分子等が挙げられる。また、P型半導体としてはCuI、CuSCN等が挙げられる。
【0048】
一対の導電性支持体の間隙に電荷移動層を注入した後、電荷移動層の注入口を封止することにより光電変換素子を得ることができる。電荷移動層の注入口を封止する封止材(封口剤)としては、イソブチレン樹脂、エポキシ樹脂、UV硬化性のアクリル樹脂等が使用できる。
【0049】
一方、光電変換素子の別の作製法として、以下の方法も採用できる。すなわち、いずれか一方の導電性支持体の導電面の周辺部に、電荷移動層注入口を設けることなくシール剤の堰を設け、次いで前記と同様の電荷移動層をシール剤の堰の内側に配置し、減圧下において第一と第二の導電性支持体の導電面が対面するように他方の導電性支持体を載置し貼り合わせると同時にギャップ形成を行い、その後シール剤を硬化させることにより光電変換素子を得ることができる。
【0050】
図1は、本発明のシール剤を用いて調製された色素増感光電変換素子の構造を説明する要部断面模式図である。図中、1は内側が導電性を有する導電性支持体であり、2は色素によって増感された半導体含有層であり(1と2を併せて酸化物半導体電極という)、3は導電性支持体の内側の導電面の上に白金等を配置した対向電極であり、4は一対の導電性支持体の間隙に配置されている電荷移動層であり、5は本発明のシール剤であり、6はガラス基板である。このようにして得られた光電変換素子の正極と負極にリード線を配置し、その間に抵抗成分を挿入することにより本発明の太陽電池を得ることができる。
【0051】
本発明のシール
剤は、平面的に配置された複数の色素増感太陽電池が、電気的に直列に接続された大面積の色素増感太陽電池モジュールの作製にも適用できる。大面積化した色素増感太陽電池のモジュール構造はいくつかの種類が知られている。本発明のシール剤はいずれの種類のモジュール構造にも使用可能である。例えば、国際公開特許WO2009/057704号公報等に記載の直列接続構造を有する色素増感太陽電池モジュールにも使用することができる。
【0052】
本発明の光電変換素子用シール剤は、光電変換素子の製造工程において、基板への塗布作業性、貼り合わせ性、接着強度、室温での使用可能時間(ポットライフ)、低温硬化性に優れ、電荷移動層に対する汚染性が極めて低い。従って、該シール剤を用いて得られた本発明の光電変換素子は、電荷移動層の汚染による作動不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れている。そして、該光電変換素子を用いて調製される太陽電池は、効率的製造が可能で、その耐久性にも優れている。
【実施例】
【0053】
以下に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
[実施例1]
(a)エポキシ樹脂としてRE−310S(商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、エポキシ当量185g/eq.、加水分解塩素量400ppm以下)90質量部にEP−1001(商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製、エポキシ当量475g/eq.)10質量部を添加して加熱溶解させた。このエポキシ樹脂を室温まで冷却後、(c)充填剤としてSSP−07DM(商品名、表面処理シリカ、最大粒径が0.7μm)90質量部、(d)シランカップリング剤としてKBM−403(商品名、エポキシシランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越シリコーン株式会社製)1質量部を添加して3本ロールにより混合分散し、(b)熱硬化剤としてPN−31(商品名、エポキシ樹脂アミンアダクト、味の素ファインテクノ株式会社製、平均粒径8.8μm)20質量部を添加してさらに3本ロールにより混合分散して、本発明の光電変換素子用シール剤(1)を得た。このシール剤(1)の25℃における粘度をE型粘度計で測定したところ、73Pa・sであった。
【0055】
[比較例1]
(a)エポキシ樹脂としてRE−310Sの70質量部、EPPN−501H(商品名、トリスフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、エポキシ当量165g/eq.、加水分解塩素量550ppm以下)20質量部及びYD−017(商品名、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、東都化成工業株式会社製、エポキシ当量1900g/eq.)10質量部、(b)熱硬化剤としてPN−152(商品名、フェノールノボラック樹脂、日本化薬株式会社製、活性水素当量100g/eq.)7.5質量部、(d)シランカップリング剤としてKBM−403の1質量部、を溶剤としてエチレングリコールジブチルエーテル30質量部に加熱溶解させた。この溶解液を室温まで冷却後、さらに、(b)熱硬化剤としてイソフタル酸ジヒドラジドのジェットミルで微粉砕したもの(融点224℃、活性水素当量48.5g/eq.、平均粒径1.7μm、最大粒径7μm)19質量部、(c)充填剤として平均粒径が0.5μm以下のアルミナを90質量部及びフュームドシリカを3.5質量部、を添加して3本ロールにより混合分散し、ここに硬化促進剤として平均粒径が3μm以下の2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物の5質量部を添加して光電変換素子用シール剤(2)を得た。このシール剤(2)の25℃における粘度をE型粘度計で測定したところ47Pa・sであった。
【0056】
[実施例2]
実施例1における(a)RE−310Sの90質量部を80質量部に変更し、新たに多官能エポキシ樹脂EPPN−501(商品名、トリスフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、エポキシ当量165g/eq.、加水分解塩素量550ppm以下)10
質量部を添加し、(d)シランカップリング剤としてKBM−403の1質量部を3質量部に変更し、(b)熱硬化剤としてC11Z(商品名、2−ウンデシルイミダゾール、四国化成株式会社製)3質量部を加えること以外は実施例1と同様にして、本発明の光電変換素子用シール剤(3)を得た。このシール剤(3)の25℃における粘度をE型粘度計で測定したところ278Pa・sであった。
【0057】
[実施例3]
実施例1における(a)RE−310Sの90質量部を80質量部に変更し、新たに多官能エポキシ樹脂EPPN−501(商品名、トリスフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、エポキシ当量165g/eq.、加水分解塩素量550ppm以下)10
質量部を加えること以外は実施例1と同様にして、本発明の光電変換素子用シール剤(4)を得た。このシール剤(4)の25℃における粘度をE型粘度計で測定したところ443Pa・sであった。
【0058】
[実施例4]
実施例1における(d)シランカップリング剤としてKBM−403の1質量部を3質量部に変更する以外は実施例1と同様にして、本発明の光電変換素子用シール剤(5)を得た。このシール剤(5)の25℃における粘度をE型粘度計で測定したところ31Pa・sであった。
【0059】
[実施例5]
実施例1における(b)熱硬化剤としてC11Z(商品名、2−ウンデシルイミダゾール、四国化成株式会社製)3質量部を加えること以外は実施例1と同様にして、本発明の光電変換素子用シール剤(6)を得た。このシール剤(6)の25℃における粘度をE型粘度計で測定したところ80Pa・sであった。
【0060】
[評価試験1]
実施例1、3、4、5及び比較例1で作製した各シール剤の性能評価として、せん断接着強度を測定した。また、実施例2及び比較例1で作製した各シール剤の性能評価として、対溶媒膨潤度測定を実施した。
【0061】
せん断接着強度は下記の方法により測定した。
各シール剤100質量部にスペーサーとして直径50μmのグラスファイバー1質量部を添加して混合撹拌を行った。このシール剤を50mm×50mmの導電性支持体(FTOガラス基板)上にディスペンサーで塗布し、ホットプレートによる加熱で溶剤を揮発させた後、導電性支持体上のシール剤上に2mm×2mmのガラス片を貼り合わせて100℃下1時間の条件で硬化させ、得られた試験片のせん断接着強度を測定した。
【表1】
【0062】
対溶媒膨潤度(膨潤度)は下記の方法により測定した。
各シール剤をアプリケーター(膜厚200μm)を用いて耐熱フィルム上に塗布し、100℃下1時間の条件で硬化させた。得られた硬化膜に対して3cm×3cmのパンチ刃を適用して打ち抜き試験片を4枚作製した。各試験片の質量(浸漬前質量)を測定した後、3−メトキシプロピオニトリル(3MPN)と共に耐圧容器に入れ,耐圧容器を85℃下2時間加熱した。加熱終了後、耐圧容器を室温まで冷却し、取り出した試験片に付着している3MPNをふき取り、試験片の質量(浸漬後質量)を測定した。{(浸漬後質量/浸漬前質量)−1}×100の計算から溶媒浸漬前後の質量増加率を求め、4枚の質量増加率の平均値を膨潤度(%)とした。
【表2】
【0063】
表1及び表2の結果が示すように、本発明のシール剤(1)、(4)、(5)、(6)はシール剤(2)と比較して高い接着強度を示した。一方の本発明のシール剤(3)はシール剤(2)と比較して低い溶媒膨潤度を示した。これらの結果は、本願シール剤が低温(100℃)での色素増感太陽電池素子の作製に有用であり、低温で素子作製ができるため、省エネルギーでかつ高信頼性を有する素子製造に有効であることを示唆している。